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Vol.268 結城浩/再発見の発想法/ロマンティック数学ナイト/老いに備える知的生活/
2017-05-16 07:00220ptVol.268 結城浩/再発見の発想法/ロマンティック数学ナイト/老いに備える知的生活/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年5月16日 Vol.268
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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新刊の話。
先週は『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 のカバーイラスト打ち合わせがありました。 結城とデザイナーさんと編集長さんとで話し合って、 カバーのイラストをどんなイメージにするか、 色合いをどうするかという意識合わせと方針決めをする場です。
いっぽう原稿は出版社で組版を行っており、 今週中には編集部から初校ゲラが届く予定。 初校ゲラを繰り返し読み、 みっちり校正をしていくプロセスに入ります。
ここまで来れば本が出版されることはほぼ確実ですが、 あとは品質をどこまで上げられるかですね。 時間も能力も限られているわけですので、 配分を考えつつしっかりいきたいと思います。
そういえば打ち合わせの中でデザイナーさんから、 「数学ガールは大河小説になりつつありますね」 とコメントをいただきました。 形式上、大河小説といえるかは不明ですが、 それなりの冊数も集まりいろんな題材を扱っていますから、 ボリュームがあるシリーズになっているのは確かです。
各巻を読んでくださる読者さんだけではなく、 全体を「シリーズ」として応援してくださる読者さんもたくさんいます。 だからこそ、一冊一冊を大切に作り上げていかなくてはね。 がんばろう!
◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 https://bit.ly/girlnote09
この結城メルマガ執筆中に、 上記のアマゾンリンクをチェックしたところ、 なんと微積分・解析カテゴリで第一位になっていました。 応援ありがとうございます!
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Gitを通した学びの話。
ここしばらく結城はマストドンのインスタンスをいじって楽しんでいます。 マストドンはオープンソースなので誰でも(それなりの経験と技術があれば)、 自分でインスタンスを立ち上げることができます。
マストドンは他の多くのオープンソースのプログラムと同じように、 バージョンに追従したりするときにはGitの知識が不可欠です。
結城は執筆作業やプログラミングにGitをずっと使っていますが、 ふだんは一人で作業をしているので、ブランチ機能はそれほど使いません。 本家のソフトウェアに追従するというのもあまりやったことがありませんでした。
しかし、ここしばらくマストドンをいじっている関係上、 ブランチの理解が急激に深まり、 コマンドも直観的に使えるようにスキルアップしました。
ネットで公開されているPro Gitの本をあらためて読んでみました。 ブランチ機能の部分もさくさく読めます。 きっと頭の中に(手の中に?)自分が体験した例がたくさんできたからですね。
◆Pro Git 第2版(日本語) https://git-scm.com/book/ja/v2
◆Pro Git - Chapter 3 Git のブランチ機能 http://bit.ly/git-doc-branch
以下の記事は、本家のリポジトリに追従したり、 新規機能を追加したりするためのGitコマンド列を書いたものです。
◆gitコマンドのメモ(本家リポジトリに追従・新規機能の追加) https://snap.textfile.org/20170509104726/
また、以下の記事は、 本家のマストドンをforkして自分のリポジトリを作る話です。 ここまで書いて私はようやく「理解した」と実感できました。
◆本家のマストドンをforkして自分のリポジトリを作る話 https://snap.textfile.org/20170509111842/
◆Forking Mastodon (図版)
ちなみにこの図版はMacのOmniGraffleで作りました。 描くのに掛かった時間はたぶん一時間くらいだと思います。 図を描いた後は、そこに描かれている要素をひとつひとつ指さして、 それが何であるかの説明を試み、 その説明をブログ記事の文章にします。 それは自分に対する「理解度テスト」です。
ふだん私たちは「きちんと学ぶと実践できる」と考えがちですが、 実はそんなに単純な話ではないのかもしれません。
見よう見まねで体験を重ねてから本を読んだり、 本を読んでる途中でも自分でやってみたり、 インプットとともにアウトプットもしたり…… そんなふうに「並行して学びが進む」側面もあるんじゃないんでしょうかね。
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わかばちゃんの話。
Gitといえば、湊川さんの 『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門』が、 アマゾンの開発技法カテゴリでずっと一位を続けているようです。
◆『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門〈GitHub、Bitbucket、SourceTree〉』 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4863542178/hyuki-22/
結城もKindle版を買い、ぱらぱらと読ませていただきました。 やさしい内容ですが、図解が多いのと後半部分に出てくる事例や、 追跡ブランチの話などは自分の理解の確認になりました。
この「わかばちゃん」の本がこれだけ人気になったのは、 プログラマ向けのツール(と考えられがちな)Gitを、 Webデザイナーさんなどの新しい層に紹介したという面も大きそうです。
ファイルの修正を任意の時点まで戻したり、 他の人の修正と混ぜ合わせたり、 どこを修正したのか調べたりするのは、 プログラマに限った作業ではありません。
バージョン管理ツールが広く浸透し、作業をしている人たちが、 無駄な時間を使わなくなるようになればいいですね!
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新たなマストドンアカウントの話。
結城は、いわゆる「おひとりさまマストドンインスタンス」を動かしています。 以下のURLでアクセスできます。
◆social.hyuki.net https://social.hyuki.net
そこに hyuki というアカウントを作って投稿しているのですが、 実験的に別のアカウントも作ってみました (何しろ自分のサーバなので好きなidが作り放題なのです)。
新しく作ったのは、 結城がはてなブックマークでブックマークしたURLを投稿するbotです。
◆結城浩のブックマーク https://social.hyuki.net/@bookmark
◆結城浩のブックマーク(スクリーンショット)
自分がブックマークしたページを投稿するだけなので、 特に新しい情報が増えたわけではありません。 でも、自分でこういうbotを作ってみると 「なるほど」と感じ入るものがあります。
自分が「こういうものを作れるんじゃないかな?」と思い、 実際にそれを作ってみて動かす。ちゃんと動いたならば、 自分は理解している。ちゃんと動かなかったら、理解していない。 まさに《例示は理解の試金石》です。
ブックマークを投稿するアカウントを作るというのは、 それほど難しい話ではありません。でも「自分の手でやってみる」 というところに私は意味を感じています。 自分でやった経験があると、世の中のbotを見たときに、 「おそらく背後ではこんな感じの仕組みが動いているんだろうな」 と想像することが容易になるからです。
そしてまた、具体的に何かを作ると「次のステップ」も見えてきます。 今回は「結城浩のブックマーク」を投稿するアカウントを作りましたが、 何か定期的に情報を流すようなアカウントを作ることもできそうですよね。 メルマガとも違う、ニュースレターとも違う、ブログとも違う、何かです。
プログラムの助けを借りると、ネット上ではいろんな活動ができますね!
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いろんな活動。
◆いろんな結城浩(イメージ図)
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雨の音。
ここ数日、結城は「雨の音」を聞きながら仕事をしています。 iPhoneで以下のSimplyRainというアプリを使っているのです。
◆SimplyRain https://rain.simplynoise.com
SimplyRainとSimplyNoiseという二種類のアプリがあり、 SimplyRainでは雨の音、SimplyNoiseではホワイトノイズが聞けます。
雨の音や波の音など、自然界の音を聞いてリラックスするというのは、 それほどめずらしくはありません。 結城も以前、眠るときに波の音を聞いていたことがありました。 SimplyRainはシンプルなデザインで、 選択肢があまりないにも関わらず、 しっくりとくる音になっています。
◆SimplyRain(スクリーンショット)
SimplyRainは仕事中に聞くようにしています。 ほら、雨の日って妙に落ち着いて、 しっとりした気分になりますよね。 じっくりと腰を落ち着けて考えごとをする。 その環境を音を使って作っているわけです。
雨の音と、ときおり遠くで聞こえる雷の音。 いまこの文章もSimplyRainを聞きながら書いています。
結城は執筆時にバッハを聞くのが好きですが、 雨の音もなかなかいいものです。 終わりが来ず無限に聞いてられるのもいいですね。
◆SimplyRain https://rain.simplynoise.com
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比較の話。
結城は、こんなふうに思っています。
勝ち負けを気にしたり、 他と比べたりすると、 かぐわしさは失われる。
誰でも、どんな分野においても当てはまることですが、 「自分より優れている人」より自分は劣っています。 「自分より劣っている人」より自分は優れているでしょう。 だとすると、基準を他者との比較に置くのはむなしいことです。 もっとも、他者とつい比べて一喜一憂するのが人間の姿でもありますけれど。
ところで、 結城はよく「アマゾンランキング」について言及します。 あれは比較じゃないんでしょうか(と自問)。
確かにランキングは他者との比較にほかなりませんが、 結城は「○○という本よりも自分の本がランキング上位だからすごい」 というふうに考えることは少ないみたいです。
結城の関心は、他の本よりも読者さんにあります。 ランキング上位になるくらい、 たくさんの読者さんが私の本を応援してくださっている! そのポイントに喜びと感謝を感じるのです。
人は多様なものです。画一的に扱うことはできません。 人が読む本も多様なものです。同じ題材を扱っていても、 ある人にとってはAという本が役に立つし、 別の人にとってはBという本が役に立つというのはよくあることでしょう。
せっかくの自分の活動を「他者との比較」で台無しにしたくありません。 多くの人の応援を「他者との比較」でむげにするのはよくありません。
勝ち負けを気にしたり、 他と比べたりすると、 かぐわしさは失われる。
結城は、そんなふうに思っています。
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それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
はじめに
再発見の発想法 - Branch(ブランチ)
倉庫ができれば中身もできる
忘却と戦う代わりにスクリプトを書く - 老いに備える知的生活
ロマンティック数学ナイトへの出題、結城浩の《挑戦状》
おわりに
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