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  • Vol.275 結城浩/新刊刊行/仮想通貨でトレーディング/小学生と数学ガール/

    2017-07-04 07:00  
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    Vol.275 結城浩/新刊刊行/仮想通貨でトレーディング/小学生と数学ガール/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年7月4日 Vol.275
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』が無事に刊行されました! アマゾンの微積分・解析でもランキング第1位になりました! みなさんに感謝です。

    出版社からは、紙と電子の同時配信となりました。ただ、 電子書店さんによっては実際に配信されるのが遅くなる場合があります。 もうしわけありません。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://note9.hyuki.net
    また、Webブラウザですぐに読める《立ち読み版》も、 出版社から届いています。目次から第1章までまるまる読めます。 立ち読み版ですので、もちろん無料。登録も要りません。 よろしければ、ごらんください。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』《立ち読み版》  http://ul.sbcr.jp/MATH-plQaU
    恒例の先行販売となっている《サイン本》や、 《メッセージカード》が同梱されている本についても、 読者さんがたくさんツイートをしてくださいました。 ほんとうにありがたいことですね。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』サイン本&メッセージカード 取り扱い店舗一覧  https://bit.ly/note9msg
    結城の本が入荷したことは、 多くの書店員さんもツイートしてくださっていました。 現代では、多くの書店さんがTwitterのアカウントを持っていらっしゃるのですね。 お忙しいところ、ツイートありがとうございます。
     * * *
    思い出話。
    書店員さんのツイートを見ながら、 結城はむかしのことを思い出していました。
    結城が書いた最初の本が出版されたとき、 私は妻と二人であちこちの書店に電話を掛け、 書店員さんに「入荷していますか?」と確認したのです。 家の固定電話だったか、 電話ボックスだったかは忘れましたが、 ともかく妻と私は受話器に耳をくっつけて書店員さんの「ありますよ」 や「いや、ないですね」という返事を聞いたのです。 結婚して数年目、いまから四半世紀も前の話。 とてもなつかしい思い出です。
    現在はTwitter経由で書店員さんのツイートを見ることができます。 技術は変化し、環境も変化しました。 でも、新刊が出るときの喜びと感謝は変化しません。
    みなさん、いつもありがとうございます。
     * * *
    《サイン本》の話。
    結城の書籍は毎回《サイン本》が先行販売されます。 一冊一冊、書籍の奥付に「スレッドお化け坊や」という結城のキャラクタと、 Enjoy!というメッセージ、それに結城浩という名前を書くのです。 多くの読者さんは、結城の《サイン本》ゲット!を 「お楽しみ」として喜んでくださっています。 ありがとうございます。
    でも、《サイン本》に関しては、いつも申し訳なく思っております。 それは、《サイン本》の冊数が少なく、 どうしても首都圏への配本が多くなってしまう点です。
    いちおう「北海道から沖縄まで」《サイン本》は送られています。 ですが、途中の地域がたくさんスキップされていますので、 ご不満を抱かれる方もいらっしゃるはずです。 「《サイン本》を手に入れたいのに、近くで売ってないよ!」 というお気持ちは、ごもっともです。ごめんなさい!
    どの書店さんに何冊ずつ配本するかについては、 書店さんと出版社さんのやりとりになりますので、 結城はノータッチです。 読者さんが書店さんにご要望を出していただければ、 もしかしたら、配本の割合が変化するかもしれません。
    限られたリソースではあるものの、 読者さんにいろんな意味で喜んでいただけるよう頑張っております。 不行き届きな点も多数ありますが、ご寛恕ください。 新しい本が出ることを通して、また新たな方が、 数学ガールの、そしてとりも直さず、 数学そのものの面白さに出会っていただければうれしいです。
     * * *
    「自分の数学」の話。
    新刊『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』が刊行されたこともあり、 結城は連日「数学ガール」のことをツイートしています (まあ、いつものことかもしれませんが)。
    そんな中、くちもちとくらさん(@kutimotitokura)のツイートで、 結城は涙が出てきました。このツイート(と写真)です。
     --------  数学ガールの話題がよくTLに流れてきたから出してみた。  このノート全部中学校のときに書いた、  授業外の数学のノートなんだけど8割数学ガールから派生したノートなんだよな…  それほど数学ガールは面白かった。  この正五角形の作図も数学ガールにひかれて1ヶ月考えたもの。  ほんとに凄い。感謝!!  --------
     https://twitter.com/kutimotitokura/status/878558059068506112
     ◆ノートの写真1(@kutimotitokuraさん)
     ◆ノートの写真2(@kutimotitokuraさん)
    この方のツイートによれば「授業外のノート」ということ。 中学生が、授業とは別に、 本を読んで自分の興味でこれだけ書いたということですよね。 いわば「自分の数学」をしたといえるでしょう。
    自分の本が、中学生の学ぶ大きなきっかけになったこと、 これは著者として感謝な経験だと思います。
    結城は本当に感動しています。
    この方からはさらに「冒険できるような本書いてください!」 というリプライがやってきました。
     「冒険できるような本」(!)
    すごい課題をいただきました!
     * * *
    言葉が内包しているものの話。
    結城は子供の頃、母親のひとことに驚嘆したことがあります。
     結城「ねえ、お母さん。『食べ過ぎ』って良くないの?」  母親「あのね、浩ちゃん。『〇〇過ぎ』というのは、    すでに『悪い』という価値観が含まれた表現なのよ」  結城「!!」
    なるほど、確かに!
    良し悪しとは限らないけれど、 「○○過ぎ」や「○○し過ぎ」というからには、 何らかの基準があって、それを越えているわけですね。
    大げさにいうなら、概念は言葉で表現された時点で、 いろんなものを内包してしまうのかもしれません (差別的な表現の例をいくつか思い浮かべました)。
     * * *
    「なぜ私が怒っているかわかる?」の話。
    Twitterで「なぜ私が怒っているかわかる?」 という問いかけが話題になっていました。
    このような問いかけは実際には質問ではありません。 相手への非難だったり、相手への圧力だったり。 質問の形式なんだけれど、実際には別の目的があり、 それは程度によっては「暴力」になるという話題です。
    これも、レトリカル・クエスチョン(修辞疑問) の一種なのでしょう。
    結城は、言葉とコミュニケーションの話題に関心があります。 「暴力」は困りものだなあ……と考えているうちに、 コミカルなシーンがいくつか頭に浮かんできました。 特に、火に油を注ぐようなシーンです。
    シーンその1。
     「なぜ私が怒っているかわかる?」  「怒っていることはその問いでわかったけど、理由はまだわからない」
    シーンその2。
     「なぜ僕が怒っているかわかる?」  「それはオープンクエスチョンといって、会話が広がるいい問いよ」
    シーンその3。
     「なぜ私が怒っているかわかる?」  「君が怒っている理由はわからないけど、   僕が恐れている理由は君のその問いだ」
    シーンその4。
     「なぜ私が…」  「あーっと、ごめんごめん!」  「なぜ私が怒って…」  「怒ってるんだよね!だよねー。悪かった!   全部僕が悪い!ごめーん!すまん!」  「怒ってるか、わかる?」  「だから謝ってるじゃん(怒)」  「そういう態度に怒ってるの(怒)」
    まじめな話をしましょう。 「なぜ私が怒っているかわかる?」 のような問いかけは、 コミュニケーションの品質を落とすことが多いと思います。 なので、もしも口癖になっている人がいたら、 注意した方がいいですよ。
    恋人同士や夫婦での「じゃれあい」ならまだしも、 仕事でこの種のレトリカル・クエスチョンを多用するのは、 特によくないと思います。
     ◆『私がなんで怒ってるかわかる?』はモラハラ(精神的DV)?  https://togetter.com/li/1122316
    シーンその5。
     「どうして私が笑ってるか、わかる?」  「わからない…」  「あなたと一緒にいるから!」  「(はーと)」  「(はーと)」
    こういう対話なら、平和でいいんですけどね。
     * * *
    質問。
    「懐の深さ」は、どんなところにあらわれますか?
    回答。
    自分がとっくに知っていることを、 他人から訳知り顔に言われたときの応対にあらわれます。
    「そ、そんなことはボクも知ってたもん!」 というのは大人げないですね。
    (でも、結城はよく言いたくなる……)
     * * *
    「Yahoo!カテゴリ」の話。
    「Yahoo!カテゴリ」が終わりになるとのニュースがありました。
     ◆日本のヤフーが1996年開始のディレクトリ検索を終了へ、時代の変遷を象徴するニュースだ  http://jp.techcrunch.com/2017/06/29/yahoo-to-shut-down-directory-search/
    むかしからネットを使った身としては、感慨深いものがあります。
    Yahoo!JAPANのディレクトリに掲載されるというのは、 Webサイトにとって自慢できることの一つでした。 もちろんSEOの上でも重要です。 結城も当時、 自分のWebページをYahoo!JAPANにせっせと登録しようと試みました。
    でも、その手続きはなかなかアナログ(?)でした。 自分のWebページのURLをYahoo!JAPANに送ると、 Yahoo! JAPANのサーファー・チームが見て、 適切なサイトなら登録するという作業を行っていたからです。 何だか牧歌的な話ですね。
    このたびYahoo!カテゴリが終了になるということで、 結城のサイトが掲載されているところを、 記念撮影(スクリーンショット撮り)しておきました。
     ◆Yahoo!カテゴリに登録されている結城のページ
    一つの時代が終わる感覚があります。
     * * *
    トレーディングの話。
    VALUというサイトが話題になっていました。 あまり詳しくは知らないのですが、 株式のように個人の人気を売り買いするサイトのようです。 おもしろそうなので登録しかけたのですが、 何となく「うーん」と感じたので登録を取り消しました。
    何が気になったかというと「責任」の所在です。 自己責任で気軽に試すネットサービスとは大きく異なり、 株式公開に近い「責任」を不特定多数に対して負いそうだと感じたのです。 そんなことは結城にはできないので、登録は中止。 VALUは有名ですので、特にリンクはしません。
    そんなこんなしているうちに、 NILUというVALUのパロディサイトが登場しました。 こちらも形の上では同じなのですが、 実際のお金はやりとりされず、「無」を売り買いします。 NTCという名前のまったく価値のない通貨(?)をやりとりするのです。
    これだけでも十分に楽しいですね。
     ◆結城浩のNILU  http://bit.ly/hyuki-nilu
     ◆結城浩のNILU(スクリーンショット)
    なお、リアルなトレーディングのお話はまた後ほど。
     * * *
    モナとミナの話。
    仮想通貨モナコインの「モナ」という単位を見るたびに、 聖書に出てくる「ミナ」という単位を思い出します。 こんな場面です。以下、新改訳聖書からの引用。
    さて、最初の者が現れて言った。 『ご主人さま。あなたの一ミナで、十ミナをもうけました。』 主人は彼に言った。 『よくやった。良いしもべだ。 あなたはほんの小さな事にも忠実だったから、 十の町を支配する者になりなさい。』 (新約聖書ルカによる福音書19章17節から18節)
    この聖書箇所で「ミナ」というお金はたとえ話として使われています。 いろんな解釈がありえますが、 結城は、神さまが自分に与えてくださった能力や機会をどう活かすか、 という観点で考えることが多いです。
    人によって天与の能力は異なります。 そこはまったく平等じゃありません。 能力が高い人もいれば、低い人もいます。 それを、与えられた分に応じて活かすことが必要。 天与の能力が少ないからといってそれを活かさず、 ふろしきに包んでしまっておいてはいけません。
    この聖書箇所を読むたびに、そんなふうに思います。
    私は「ほんの小さなこと」にも忠実だろうか?
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    仮想通貨でトレーディング
    小学生の子供に『数学ガール』を読ませるのは早いでしょうか? - Q&A
    恨みと羨みに代わるもの
    おわりに
     
  • Vol.274 結城浩/カクノ/仮想通貨「モナコイン」/「芽」を育てよう

    2017-06-27 07:00  
    220pt
    Vol.274 結城浩/カクノ/仮想通貨「モナコイン」/「芽」を育てよう結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月27日 Vol.274
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    いよいよ今週、 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 が刊行になります。
    いよいよです! 自分で言うのも何ですが、 本を一冊書き上げるというのは、本当に時間と手間が掛かるものです。 ようやく、ようやく一冊できました。 どうか、この本を必要としている読者にこの本が届きますように!
    この結城メルマガが配信される火曜日、 結城は編集部に出かけて、「お化け坊や」のキャラクタを描きます! 要は、いくつかの店舗で先行販売される《サイン本》にするのです。
    《サイン本》は三桁の冊数がありますが、 各書店さんに配本になると、どうしても数が少なくなってしまいます。 もうしわけありません。
    また、《サイン本》とは別に、チェーン書店さん経由で 《メッセージカード》が同梱された本も発売されます。
    詳しい日程や《サイン本》取り扱い書店さん、 《メッセージカード》同梱のチェーン書店さん一覧については、 以下のページをご覧ください。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』サイン本&メッセージカード 取り扱い店舗一覧  https://bit.ly/note9msg
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://note9.hyuki.net
    応援よろしくお願いします!
     * * *
    「継続は力なり」の話。
    今週は、結城が「継続は力なり」を実感する週になります。 どういうことかといいますと、今週は……
     『数学ガール』が刊行してからちょうど十年目で、
     Web連載「数学ガールの秘密ノート」が第200回を迎えて、
     「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第9冊目、  『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』が刊行される。
    そのような節目となる週だからです。 これはひとえに、読者さんのおかげです。
    そういえば、2012年4月に開始したこの結城メルマガも、 いつのまにか6年目に入っていました。 購読者さんも、少しずつ増えていき、ほんとうに感謝です。
     ◆結城メルマガ購読者数のグラフ
    購読者数のグラフを作るたびに、 結城は、しばしこれを見つめてしまいます。 文字通り、じっと見つめます。
    グラフを全体として眺めるなら、 購読者数がじわじわ増えていることがわかります。 でも、ある一部分だけを区切って眺めるとどうでしょう。 そうすると、 購読者数ががくっと減っているところが多々ありますね。 そのタイミングで「ああ、もうやめよう」 と思う可能性もあったわけです。 そして、もしそこで結城メルマガ執筆を止めていたならば、 グラフはそこで終了していたことになります。
    ですから、購読者数のグラフをこれだけ長く描けたというのは、 それだけで大きな意味があることじゃないかと思うのです。
    もちろん、 購読者数の増減を意識して改善することは必要です。 でも、それはそれとして、まずは継続する。 継続してみる。長く続ける。続ける。 何年も継続する、そのことを通して、 結城は自分の中に大事な土台を作っているように思います。
    うまくいくときもある。うまくいかないときもある。 でも続けていけば、グラフは伸びる。 そして、新たに描かれるグラフの背後には、 結城の文章を読んでくれる読者さんがしっかり存在している。
    結城がこのグラフを見つめてしまうのは、 そんなことを考えるからです。
    継続は力なり。
    これは結城の父親が繰り返し語っていた言葉でもあります。
     * * *
    Draftの話。
    以前から「数式をさっとメモするWebアプリDraft」を作り、 少しずつ改良を続けています。 Web連載のアイディアを練るときも、 ちょっとLaTeXの書式を確かめたいときも、 結城はDraftを便利に使っています。
    今回「複数シート」対応を行ってみました。 その結果、7枚の「シート」があって、 それぞれ独立に数式が保存されるようになりました。 感覚としては、7ページ分のノートが手元にある気分です。
    神経を使ったのはユーザインタフェースです。 もともとDraftは「Distraction Free」を売りにしています。 つまり、執筆している最中に「気が散らない」ということ。 でも新たな機能を入れちゃうと、 そこを使うための情報が表示されてしまいます。
    まず、7枚の「シート」に番号を付けました。 そして、メニューバーには7個の番号が並んでいて、 好きな番号をクリックすればそのシートが表示されるようにしました。 まあ、そこまではいいでしょう。 でも、常に7個の数字がピカッと光っているのは気になりますね。
    ということで、 数字を暗く表示するようにCSSを調整し、 目立たないようにしました。 ユーザ(自分)の気を散らさないように。
    しばらく使っていると、 「あの文章は7枚のどこに書いたっけ?」 という現象が起きるようになりました。 順番にシートをめくっていかなきゃいけないのはナンセンス。 でも内容の一部がいつも表示されているというのも気にくわない。
    ということで、 「シート」が空っぽかどうかを判断しやすくしました。 「シート」が空っぽなら、番号を暗く表示する。 「シート」に何か書いてあれば、番号を明るく表示する。 これなら許せる範囲でしょう。
    Draftで「複数シート」を使っている動画を作ってみました。
     https://twitter.com/hyuki/status/874624399713775617/photo/1
    数式をさっとメモできるDraftは、 なかなかいいですよ。
     * * *
    不自由律短歌の話。
    先日、Twitterを眺めていたら「不自由律短歌」というハッシュタグを見つけました。
    不自由律……短歌?
    そのハッシュタグに続いて、
     729796
    のような謎の数列が書かれています。 どうも、その数列に従って「短歌」を作る試みのようです。 つまり、
     7 2 9 7 9 6
    という音数で短歌を作るのです。
    なるほどね! 通常の短歌なら57577になるところを、 別の数列を使うという試みだと理解しました。
    こういうのを見ると、とりあえずやってみたくなるのが人情。 ということで、729796で作ってみました。
     夜きみと会い  朝  きみと別れる日々  地球の自転  背負い投げしていま  森を抜ける  (結城浩)
    いかがでしょう。
     ◆Twitterで「不自由律短歌」を検索  http://bit.ly/2sHheYI
    こういう試みを見ると「文字数の制約」というのは、 いわゆる制約にはならず、 むしろ創造性を発揮する源になるように感じます。 不思議なことですね。
    形が決まっている方が、自由になれる。
     * * *
    「それな」の話。
    先日、こんなツイートを見かけました。
     ◆【緩募】「それな」「わかる」に該当する論理記号  https://twitter.com/fujisyu/status/875596188426289154
    おもしろい発想! と思いました。
    「それな」というのは、 正確にニュアンスを表現するのは難しいですが、 「そのとおり! そうだよね!」に近い表現です (乱用するとうるさがられます)。
    「それな」を表す記号って何でしょう。
    数学で使う記号にはいろいろあります。
     ◆数学で使う記号いろいろ
    「したがって」や「なぜならば」は手書きでは使いますが、 あまり本の中では使いませんね。まあ、それはさておき…… 結城は先ほどのツイートを見て、
     「それな」に該当する記号を考案せよ
    という問題を見出しました。そして考えたのがこれです。 残念ながら「論理記号」とはいいがたいですけれど。
     ◆「それな」を表している数式?
    (x-μ)/σというのは形として、人が指をさして「それな」 というようすを表しています。そしてそれと同時に、 この数式自体に数学的な意味があります。
    xを自分の試験の点数とし、 μを平均点とし、σを標準偏差を表すとします。 すると、(x-μ)/σの値は、
     自分の点数が平均点からどれだけ「すごい」位置にあるか
    を教えてくれる場合があります。 この値に10を掛けて50を足すと、 いわゆる「偏差値」になりますね。
    それな。
     * * *
    TeX2imgとimgcatの話。
    結城は書籍の図版をTeX2imgというツールで作っています。 LaTeXやTikZで書いたソースをTeX2imgで変換すると、 epsやpdfやpngなどの好きなフォーマットにしてくれるのです。 「数学ガール」シリーズの執筆でも欠かせないツールになっています。
     ◆TeX2img - TeX Wikiのページ  https://texwiki.texjp.org/?TeX2img
    ところでTeX2imgとは別にimgcatというツールがあります。 これは、MacのターミナルソフトiTerm2の画面内で画像を表示するためのもの。
     ◆iTerm2 - Images  https://www.iterm2.com/documentation-images.html
    結城はこの両方を知っていたのですが、 あるときふと、
     TeX2imgとimgcatを同時に使えば便利じゃね?
    と気づきました。 つまり、
     (1)LaTeXでソースを書く  (2)TeX2imgで画像に変換する  (3)imgcatで画像を表示する
    という流れで作業するということです。 具体的には、
     tex2img input.tex output.png   imgcat output.png 
    という二つのコマンドを実行することになります。
    いままでは、TeX2imgで変換した画像を、 Macのプレビュー.appを使って表示していました。 そのため、プレビューのウインドウがたくさん開き、 画面がうるさくなっていました。
    関心があるのは、最後に作った画像だけです。 それをチェックしたいだけなのに、 ひとつ前、ふたつ前の画像がちらちらしているのは無駄です。
    imgcatを使ってターミナル上に画像を流し、 そこで確認すればとてもすっきりします。
    なぜこんな簡単なことに気づかなかったんだろう!
    簡単な実行のようすを動画にしてみました。
     https://twitter.com/hyuki/status/874790731767980032/photo/1
    たくさんの画像をLaTeXで作り、 しょっちゅう確認する作業をしている人にはとても便利です。 書籍の図版を作っているときの結城のことですが……
     * * *
    勉強の話。
    数学の本を読んで勉強していました。 それほど長くない証明だったので、 これは自分にも読めるかな……と思って進んでいきました。
    一ページの証明を、具体例を作って一歩一歩読んでいきます。 確かめつつ読んでいくので時間がかかります。
    苦労しつつも最後まで来て、 最後の最後に「ここで明らかに定理が成り立つ」と書かれていてショック。 その最後のステップが理解できなかったから。
    「なぜ? なぜ成り立つの?」
    夜道を歩いてきて、ようやく玄関前まで来たのに、 ポケットに鍵がないみたいな気分……わーん!
    そんな話をしていたら、ある数学者さんから、 「それは、その証明を書いた人が悪いですよ」 と慰めていただいた。
    ありがとうございます……でも、 この証明を書いたのはガウスなんです……
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    仮想通貨「モナコイン」のポータルサイト
    カクノで書くの?
    芽を育てよう
    おわりに
     
  • Vol.273 結城浩/結城タスクと進捗コマンド/仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」/

    2017-06-20 07:00  
    220pt
    Vol.273 結城浩/結城タスクと進捗コマンド/仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月20日 Vol.273
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』は、 2017年6月末に刊行の予定です。
    表紙の画像がやってきたので、新刊が出るたびに作っている 「書籍紹介ランディングページ」 も作りました。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://note9.hyuki.net/
     ◆ランディングページ(スクリーンキャプチャ)
    ランディングページというのは、 自分の著書を紹介・宣伝するときの必須ツールのひとつです。
    メールでも、SNSでも、自分の本を他の人に伝えるときに、 「こんな本が出ます。詳しくはこちらのページをみてくださいね」 と簡潔に紹介することができるからです。
    また著者自身が紹介するときだけではなく、 読者さんが検索するときにも有効です。
    たとえば、2016年に結城が刊行した統計の本を 試しに検索してみましょう。 「数学ガールの秘密ノート やさしい統計」 を検索したときの順位は、
     (1)アマゾン(紙の本)  (2)アマゾン(Kindle)  (3)ランディングページ  (4)シリーズのページ
    となりました(スクリーンショット参照)。
     ◆「数学ガールの秘密ノート やさしい統計」の検索順位
    このような順位になるのは著者にとってはうれしいことです。
    ランディングページは、結城メルマガでも何回か紹介した 「でんでんランディングページ」 をもとに作っています。
     ◆でんでんランディングページ  http://lp.denshochan.com
     ◆書籍のランディングページの作り方(結城浩ミニ文庫)  https://note.mu/hyuki/n/n75de4c371507
    結城は書籍一冊ごとにランディングページを作っています。 そうすると共通点が非常に多くなるので、 どうしてもコピー&ペーストが多くなってしまいます。 それを避けるため、erbというプログラムを使って、 決まり切った部分をプログラムで生成するようにしています。 以前作ったerbファイルは以下で公開しています。
     ◆erbファイル(make-landing-page-for-note6.erb)  https://gist.github.com/hyuki0000/469aa65677849265c4e2
    使い方については、 結城メルマガのVol.205で詳しく紹介しました。
    ランディングページは、結城が個人的に管理している、
     hyuki.net
    という独自ドメインのサブドメイン上に作っています。 新刊の『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の場合は、
     note9.hyuki.net
    になります。独自ドメインに作っておくのはとても大事です。 ランディングページを実際に運用するサーバが変化したとしても、 URLが変化しないからです。
    実際、結城は以前自分のランディングページを Tumblrというサービスを使って公開していました (Tumblrには独自ドメインを使う機能があります)。
    ある時点で、TumblrからさくらVPSのWebサーバに切り換えたのですが、 その場合でもURLは変わりません。 ドメインを考えてWebページを公開するというのは、 検索順位を落とさないため、 またリンク切れを防ぐために大事なことですね。
    ともあれ、新刊刊行までもう少し。 ぜひ応援ください!
     * * *
    はてなダイアリーの話。
    「はてなダイアリー」の新規開設受付終了というアナウンスが出ました。
     ◆ はてなダイアリーの新規開設受付を2017年7月3日をもって終了します  http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20170605/1496643809
    このアナウンスには時代の移り変わりというものを感じます。
    結城は「はてなダイアリー」でたくさんの記事を書きました。 「はてなブログ」が出てからも、 メインの軸足をそちらに移すことはありませんでしたね。
     ◆結城浩のはてな日記  http://d.hatena.ne.jp/hyuki/
    はてなダイアリーをせっせと更新していたときは、 Perlで作った「はてなダイアリーライター」 というスクリプトを使っていました。 2004年〜2009年ころの話題になります。
     ◆はてなダイアリーライター(略称:はてダラ)  http://www.hyuki.com/techinfo/hatena_diary_writer.html
    このツールは、自分の手元にあるテキストをアップロードし、 はてなダイアリーの記事にするという簡単なものです。 現在の「はてなブログ」でいえばAtomPubに相当する機能を、 自前でごそごそ作っていたことになります。
     ◆はてなブログAtomPub - Hatena Developer Center  http://developer.hatena.ne.jp/ja/documents/blog/apis/atom
    このときに考えていたことの根底には、
     ・Web上で入力したものをマスターにしたくない  ・テキストは自分のエディタで書きたい
    という感覚があったように思います。 はてなダイアリーのUIを使って入力したテキストは、 自分の手元に残りません。 またテキストを書くときのUIもはてなダイアリーに縛られます。 それが嫌だったため、 手元にあるテキストファイルをマスターとし、 それをWebにアップロードするツールを作ったのです。
    時代は流れ、現在の結城の感覚はやや変化しています。 それは、
     ・場合によってはローカルにあるよりもWeb上にあった方が残る  ・Web上で入力しようが、自分のエディタで書こうがかまわない
    というものです。
    結城は、 Twitterで連続的なツイート(連ツイ)を行い、 それをテキストにして自分の手元に持ってくるツール(autogetter) を使っていますが、 その「連ツイ」の発想は「はてなダイアリーライター」 とはほぼ反対になっていますね。 Webで書いたものを手元に持ってきているわけですから。
     ◆AutoGetter - Twitterで自分のツイートから自分へのリプライをまとめるRubyスクリプト(連ツイまとめ作成用)  https://gist.github.com/hyuki0000/85989bcf78d1476d74d3
    時代が変わればツールも変わります。 でも、ツールが変わっても「文章を書く」 という行為についてはあまり変わらないように感じます。
     * * *
    PR表記の話。
    数日前に「広告記事やタイアップ記事のタイトルにPR表記するべきか」 という話題が出ていました。
    いかにも、論点が多岐にわたりそうな話題ですし、 発言者の立ち位置(広告主側、ライター側、読者側) で紛糾しそうなテーマです。
    以下で書くのは、あくまで結城の限られた観点での意見です (他の人に押しつけたり、声高に主張したいわけではないの意)。
    結城は《読者のことを考える》という原則に照らすのが好きです。 《読者のことを考える》ならば「タイトルにもPR表記する」 方に軍配を上げたくなります。
    必ずしもタイトルの一部に文字列として入れる必要はありません。 それは方法にすぎません。 大事なことは、読者に対して記事を見せる前に (リンクをたどってジャンプする前に)、 「これは広告記事である」と知らせる方が読者に喜ばれそうだ、 という点です。
    タイトルにPR表記するとガクッとPVが減るとしたならば、 なおさら、タイトルにPR表記した方がいいと思います。 なぜなら、PR表記するとPVが大きく減るとしたならば、 PR表記は読者にとって、 「見るか否かを定める有効な判断材料になっている」 わけですから。
    「記事の先頭でPR表記されていれば、 広告記事を見ない人はすぐ戻るからいいのでは」 という意見も考えられます。もちろん、 記事の先頭でPR表記するのは大事だと思いますが、 でも、なんだか「PVを詐称したい」 といってるみたいに聞こえてしまいます。
    もっとも、 最近の広告記事にはコンテンツとして楽しいものもあります。 最後まで楽しんでから「これ、広告記事だったのか! でも楽しかったなあ、なかなかうまい!」 という場合もたまにありますね。 そのようなコンテンツをねらった広告記事の場合、 タイトルにPR表記するのは「ネタバレ」になりそうなので、 なかなか一概にはいえないのかもしれません。
    とはいえ、 ふつうの記事だと思って最後まで読んできたけれど、 最後で広告記事だとわかった場合「がっかり」 することの方が多いと結城は感じます。 「がっかり」といいますか、 「誤認させられた」感といいますか。 いかにもネタやジョークっぽい記事ならばまだしも、 情報提供の形をした記事の場合には不快感は増します。 「だまされた」というと言い過ぎかもしれませんが。
    そして、読者に不快感を与えるとしたら、 広告としては失敗ではないのでしょうか。
    結城はそんなふうに思っています。
     * * *
    学習効果と「対話」の話。
    「自己学習の効果をより高める4つのポイント」 というWeb記事をぱらぱらと読んでいました。
     ◆自己学習の効果をより高める4つのポイント  http://www.dhbr.net/articles/-/4863
    原文の題名は、 "Talking to Yourself (Out Loud) Can Help You Learn" 「(声を出して)自分と話すのは学ぶ助けとなる」 ですね。
    この記事には、 以下のような4つのポイントが書かれていました。
     ・ひとりごとを言う  ・なぜかと尋ねる  ・要約する  ・関連づける
    これを読みながら、結城はこれらのポイントが、 「数学ガール」シリーズに登場する「テトラちゃん」 にぴったり当てはまる!と思っていました。
    テトラちゃんはいつも元気で熱心で、 好奇心が旺盛です。でもそれだけではなく、 学び方がとてもうまいのです。
    そして、上に挙げた4つのポイントのほとんどを、 テトラちゃんは日々の学習で実践していますね。 彼女の学び方は読者さんにもよく注目されています。
    結城は「対話」というのが学びにおいて重要だと思っています。 古くはソクラテスやプラトンの時代から、 対話は重要な役目を担っています。特にその中でも、 《問いかけ》は重要です。 『いかにして問題をとくか』に出てくる《問いかけ》 も有名ですね。
    自分で「ひとりごと」をいうのは、 自分自身を相手に対話を行っていることになります。 問いを自分に投げかけることによって、 人はそれに答えようと試みます。 そこが「学び」にとって重要なのでしょう。
    プログラマの中にも、 「ひとりごと」をいう人が多いと思います。 プログラムを書きながら、
     「どうしてそうなるんだ?」  「xが0のときでもうまくいくか?」  「この条件のとき、ここに来るかなあ?」
    そんなことを誰にともなく言うプログラマは、 決してめずらしくありません。
    あなたは考えるとき、自分自身と「対話」しますか?
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    結城タスクと進捗コマンド - 仕事の心がけ
    仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」
    おわりに