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記事 5件
  • 野球道とは負けることと見つけたり:その5(1,968字)

    2024-11-15 06:00  
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    いきなりドラマの構成を考えるのはとても骨が折れることなので、その前段階として、第一話に描くエピソードの背景というものをあらためて書き出していきたい。
    蔦文也は徳島商業に入学する。それは徳島商業監督、稲原幸雄に請われたからでもあった。当時の甲子園はまだ小規模で、四国からは一校しか出られなかった。そして四国には高松商、松山商という二大強豪校があった。だから徳島商は、県下一の強豪校ではあったものの、1915年に全国中学校野球選手権大会が始まって以来、一度も甲子園に出られていなかったのだ。
    その負の歴史を覆そうともがいていたのが徳島商業稲原監督だった。稲原は1907年の生まれで、徳島商を卒業後、関西学院大学を経て東京で就職した。しかし1932年、徳商OBから監督就任を強く要請され、これを引き受ける。25歳のときであった。
    そこから稲原の指導が始まるのだが、それは「猛特訓」そのものだった。練習は朝か

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  • 野球道とは負けることと見つけたり:その4(1,937字)

    2024-11-08 06:00  
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    第一話「死ねなかった男」構成
    1945年、22歳の蔦文也が酒をあおっている。場所は鹿児島県の知覧。特攻隊の基地があるところだ。隊員宿舎の自室で、文也は一人、どこからか手に入れた酒をあおりにあおっている。
    翌朝。目覚める文也。起きて早々、二日酔いの頭痛を覚える。ふと時計を見ると、大遅刻したと分かる。「ありゃ……」と嘆き、慌てて宿舎を飛び出す。
    川沿いの土手を駆ける文也。すると、その足下に野球のボールが転がってくる。拾って飛んできた方を見る。すると、河川敷のグラウンドを、二人の少年が逃げていく。「こりゃ、待て!」呼び止める文也。「どうして逃げるんじゃ」。すると少年たちは項垂れて、「兵隊さん。敵国アメリカの野球をして申し訳ありませんでした!」と頭を下げる。
    それに対して、文也は相好を崩し「よかよか。よしそこにおれ」と言う。そして、だいぶ離れた少年に向かって、矢のような遠投。ボールは、音を立てて少

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  • 野球道とは負けることと見つけたり:その3(2,052字)

    2024-11-01 06:00  
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    前回に続き、蔦文也を主人公とした5話完結のドラマの構成について書いていく。
    第四話「手も足も出せなかった男」
    星稜対箕島は、延長18回と二度の奇跡的な同点ホームランという劇的な内容の末、箕島がサヨナラ勝利した。そうして箕島は、なんとそのまま決勝戦まで勝ち進み、同じく勝ち上がった蔦の池田と当たるのだ。
    この決勝戦も、なんの因縁かまた雨。そして蔦は、またしても指示をミスし、負けてしまう。そうして、三度目の雨中の敗戦を経験するのだ。
    この試合に負けたことで、蔦はほとほと自分の指導力のなさ、特に采配の下手さ加減に嫌気が差す。
    そうして再び監督を辞めようと決意するが、そこで一種の奇跡が起こる。池田の敗戦を見て意気に感じた徳島中学野球界の大スター、畠山準が入学してくるのだ。これで「5回の甲子園出場」は間違いなく、それどころか初の甲子園優勝も成し遂げられるかと思われた。
    ところが、そこからなかなか勝てな

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  • 野球道とは負けることと見つけたり:その2(1,656字)

    2024-10-25 06:00  
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    今回は、蔦文也を主人公とした5話完結のドラマの、構成について書いてみたい。
    第一話「死ねなかった男」
    蔦文也は、特攻隊員だった。
    徳島県三好市池田町の素封家の息子として生まれた文也は、何不自由なく甘やかされて育った。そのため心が弱かった。
    幼い頃から野球が得意で、徳島商業に入学すると、見事甲子園出場を果たす。その後同志社大学に進むも、折からの戦争で学徒出陣をする。そうして特攻隊員になり、出撃を命じられる。
    死の恐怖から、酒ばかり飲んで酔っ払い、数々の失態をくり返す。そうした中でも仲間たちが次々と死んでいき、いよいよ自分の番が来たかと思ったそのとき、不意に終戦を迎える。
    そうして彼は、とうとう死ねなかった。特攻隊では、隊員たちに葉隠の一節「武士道とは死ぬことと見つけたり」をくり返し説いていたが、蔦はとうとう死ぬことを見つけられなかった。
    第二話「サインを出せなかった男」
    終戦後、蔦はすぐに郷

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  • 野球道とは負けることと見つけたり:その1(1,451字)

    2024-10-18 06:00  
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    I found that the path of baseball means losing.
    大谷翔平選手の活躍や、その前のイチロー選手や松井秀喜選手の活躍、あるいはWBCでの三度の優勝などで、世界野球における日本の地位はいやがうえにも向上した。野球は、他のメジャースポーツに比べると人気そのものは下降気味ではあるものの、それでもまだまだ十分メジャーで、アメリカを中心に世界中にファンがいる。
    そこでこの連載では、そんな世界的スポーツで特異な地位を築いてきた「日本野球」とは何なのか――ということについて考えてみたい。それを通じて、日本の文化や歴史、あるいは世界とのかかわり、そして何より野球というものについて描けたらと思う。
    これを書こうと思ったきっかけは、Netflixのドラマ『極悪女王』を見たことだ。女子プロレス――つまり女性がするプロレスというのは、1980年当時日本にしかなかった。アメ

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