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Vol.152 結城浩/構造の伝達と「核になるもの」/信頼の価値/
2015-02-24 07:00220ptVol.152 結城浩/構造の伝達と「核になるもの」/信頼の価値/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年2月24日 Vol.152
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』を読み直しています。 今年は「紙に手書き」を大事にしようと思っていますので、 読み返すときもプリントアウトして手を使って校正です。 赤ペンを持って、じっくり読み込んでいきます。
レビューアさんからの指摘もメールでたくさん来ているので、 そちらもプリントアウトして読みながら、 原稿のほうに反映しています。
プリントアウトして紙に向かっていると、 何というか直接「文章に向かっている」という感覚が強くなります。 紙というモノの持つ力なんでしょうかね。 単純に「残りの分量」が直観的にわかるからかもしれませんけれど。
微分を学校で習ったのはずいぶん昔のことです。 おそらく習った直後は「いったい何を言っているのだ?」 と思ったはずです。極限の概念とあいまって、 わかったようなわからないような……。
でもやがて、何かのタイミングで、 「あ、こういうことかも」 と「悟り」のようなものが開けます。 微分の概念が飲み込めたなら、 あとは便利な道具という感じで、 高校時代の微分と楽しくおつきあいできたはずです。 大学に入るとまた別の姿が現れるのですが……
ともかく、その「悟り」のところをうまく表現できないかな、 と思って『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』を書いています。 どうぞ、ご期待くださいね!
◆『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797382317/hyuki-22/
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カフェの話。
結城はカフェで仕事をしています。 結城メルマガの原稿も、Web連載「数学ガールの秘密ノート」も、 カフェで書くことが多いですね。
先日は「変幻ピクセル」という記事をカフェで書いていました。 めずらしくコンピュータに関連する回で、コンピュータガールのリサちゃんが登場し、 ビット反転(0を1に、1を0に変換する操作)についての話題になりました。
ディスプレイに表示される光の点や、プリンタで印字されるインクの点は、 ビット反転が起きると、白黒が反転します。 コンピュータでは、画像の処理がビットの処理に置き換えられるのです。
と、そこで、トイレに行きたくなりました。 トイレに行こうとしたら、目の前で他のお客さんがさっと入ってしまったので、 入り口前でしばらく待つことに。
やがて、その人は外に出るためにドアを開けようとして……ガタガタしています。 ドアが開きません。実はその人、入ったときに「鍵を掛ける」のを忘れ、 出るときに開けるつもりで「鍵を掛けて」しまったのでした。
それを見たとき、私は「あ、ビット反転だ」と思わず言いそうになりました。
「鍵を開ける」操作のつもりが、 単にビット反転して「鍵を掛けて」しまったわけですね。
* * *
なごむ動画の話。
先日Facebookで見かけた、 「鮫のかぶりものをした猫がルンバに乗っている動画」です。 教訓とか、学びとか、知見とか、 そういうものとはまったく無関係に「なごむ動画」です。 ネコが淡々とした態度でルンバに乗って等速度運動をしている様子がよい。
◆猫の動画 https://www.facebook.com/video.php?v=10152600949487140
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もう一つ動画の話。
これも先日話題になった動画です。
それっぽく格好を付けたり、間合いを持たせたり、 数字を出したりするという表面的なことだけで、 いかにも賢そうなプレゼンテーションができますよ、 というジョーク動画です。たいへんおもしろい。
◆頭良さそうにTED風プレゼンをする方法 http://www.aoky.net/articles/will_stephen/how_to_sound_smart_in_your_tedx.htm
しかしながら、こちらの方は猫動画とは違い、 笑いつつも考えさせられるものがありました。
今週のフロー・ライティングにも登場する「信頼」についてです。 上記の「頭良さそうなTED風プレゼン」を見て笑うのはいいけれど、 ふだん見ているTEDのプレゼンは、本来どこまで信頼できるんだろう。 自分は視聴者として単純にテクニックだけを見て判断しているのではないか。
そんなことを、ちょっと考えさせられました。
* * *
内容の信憑性・信頼度の続きで、 決まり文句と判断の話。
TwitterやWebの記事を読んでいて、 「決まり文句」について思うときがあります。
以下の「決まり文句」をみてください。 こういうの、よく見かけますよね。
・絶対に認められない。 ・満場一致が必要だろう。 ・反対者が一人でもいてはならない。 ・百パーセント確実なのかね。 ・ゼロにしなくては。 ・是々非々で。 ・広く意見を聞いて判断しよう。 ・ケースバイケースじゃないの? ・多様性を尊重。 ・許容範囲だよ。
この決まり文句《だけ》を見て、何かを判断できるでしょうか。 「何の話」なのか、あるいは「状況がどうか」をはっきりさせないと、 何も判断できませんよね(できる人もいるのかな)。
でも、これらの「決まり文句」を多用する人がいて、 これらの「決まり文句」に敏感に反応する人もいる。
偉そうに書いていますが、私自身も実際の状況を知りもせずに、 これらの「決まり文句」に反応してしまうことがあります。
これらの言葉狩りをしたいわけではありません。
・自分は本当に分かって言ってるのかな? ・単に決まり文句に反応しているだけじゃないのかな?
そういう反省をしないとまずいな、と思っているのです。
* * *
考えるということの話。
以前、以下の対談記事を読みました。
◆【石井裕vs江渡浩一郎】 「ニコニコ学会β」にイノベーションとアーキテクトはいかにして生まれるかを語る https://codeiq.jp/magazine/2015/01/20915/
対談の中で石井教授がこのような発言をしていました。
-------- 石井:研究というのは、どこかの段階で、 抽象化(アブストラクション)、 原理原則化(プリンシプル)、 一般化(ジェネライゼーション)、 そしてグローバル化していく作業が求められます。 そうすることで、他の人もその研究成果や方法論を 自分の分野の問題解決に 応用することができるようになる。 --------
結城は、これに「なるほど」と思うと同時に、 「研究だけではなく、人に何かを伝えたり、 教えたり学んだりするプロセスに通じる考え方だ」 とも思いました。
ベタな知識をたくさん持っていることや、 誰も知らないことを知っているだけじゃない。 そこから、抽象化、原理原則化、一般化、グローバル化していく。
そこで思い出したのが、数学ガールに登場する「僕」 というキャラクタのことです。 彼は従妹のユーリや、後輩のテトラちゃんに数学を教える。 その際には、いくつか例を挙げた後、《一般化》をすることが多い。 一般化して、抽象化して、原理・原則を述べて、 さらには、自分の知っている世界以外へ適用する… こういう思考の進め方というのは、きっと大事なことなんだろうな。
そんなふうに改めて思いました。
あなたは、何かを学んだり、教えたりするとき、 どんなふうにその考えを進めていきますか。
* * *
不思議な立体の話。
筑波大学でCGの研究をなさっている三谷純さんがデザインした、 「見る方向によって正三角形・正四角形・正五角形が現れる立体」 だそうです。
言葉で聞いただけだと意味がわからないかもしれませんが、 以下の動画をご覧ください。 確かに、見る方向で「正三角形」「正四角形」「正五角形」が現れます。
◆A polyhedron which has regular triangle, square, and pentagon projection. https://www.youtube.com/watch?v=DMtMqBb5Z38
さらに、以下では展開図が公開されていますので、 実際に作ることもできます(!)。
https://twitter.com/jmitani/status/562613434936619008/photo/1
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今週は「フロー・ライティング」のコーナーで「信頼の価値」 という話題をお届けします。 著者と読者の間にある「信頼」について考えましょう。
また、「数学文章作法のスケッチ」のコーナーでは、 「構造の伝達」という表現を練りながら、 文章を書く上で「核になるもの」の重要性を考えます。
それではお楽しみください!
目次
はじめに
フロー・ライティング - 信頼の価値
数学文章作法のスケッチ(8) - 構造の伝達と「核になるもの」
考えて、書いて、公開する楽しみ
おわりに
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Vol.149 結城浩/数学文章作法のスケッチ(6)/フロー・ライティング - 自分のために書く時間/
2015-02-03 07:00220ptVol.149 結城浩/数学文章作法のスケッチ(6)/フロー・ライティング - 自分のために書く時間/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年2月3日 Vol.149
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
現在、結城は「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第五弾、
『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』
の第5章に取り組んでいます。 本来は1月末に全体を脱稿するはずだったのですが、 どうにも間に合わず、第1章から第4章までを編集部に送った状態。 がんばって第5章やエピローグなどを終わらせなくては。
* * *
ありがたいことに、継続的に『数学文章作法 推敲編』は人気のようです。 何名かの読者さんから、
「推敲編の電子書籍はまだですか?」
という問い合わせをもらっています。 正式なアナウンスはありませんが、結城が得ている情報からの推測ですと、 今年の4月までには『数学文章作法 推敲編』 の電子書籍版も刊行になるのではないかと思います。 正式な情報ではないので、予定が変わる可能性もありますが、 引き続き応援いただければ感謝です。
◆『数学文章作法 推敲編』 http://mw2.textfile.org/
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仕事の話。
結城は自分のタスク管理ツールを「結城タスク(YukiTask)」として公開しています。 といっても非常に単純なツールの集まりで、 しかもコマンドラインで主な作業をする人にしか有用ではありませんけれど……
◆結城タスク http://yukitask.textfile.org/
以前は手動で「色つき星取表」として管理していたものが、 現在は自動的にグラフになって表示されます。
◆結城タスクで自分の毎日の活動を「グラフ」で見る
これは確かに便利です。 自分は、意識しているよりも多くのタスクをこなしているなあ、 と感じることもありますし、逆に、 うわ、このプロジェクトにぜんぜん手が着いていない! と気付いて焦ることもあります。
自動化されて便利にはなったのですが、その反面、 意識の度合いが変化していると感じることもあります。 手動で自分のタスクの記録をつけたときの方が、 「仕事全体に目配りできていた」かもしれないという意味です。
ふと思ったのですが、もしかするとタスク管理やプロジェクト管理というのは、 「慣れてはいけない」ものだったりしませんかね。 いつも何らかの新鮮味というか、驚きが必要なのではないかということです。 慣れてしまったら、意識がそれてしまう。見逃してしまう。
適切なゆさぶりを自分に掛けて、 「新鮮な目」を持って自分の仕事を見直すというのは、 プロジェクト管理の上で大事な要素かもしれないな、と思いました。
あなたは、自分の仕事に「慣れていたために失敗した」という経験はありますか。 そして「慣れないようにする工夫」をしていますか。
* * *
言葉の話。
「偶然短歌bot」というTwitterのbot(自動的にツイートするプログラム)を知りました。 ウィキペディアの記事の中でたまたま「五・七・五・七・七」 になっているフレーズを切り出してツイートするbotだそうです。 おもしろいことを考える方がいますねえ……
◆偶然短歌bot https://twitter.com/g57577
以下「偶然短歌bot」のツイートから「偶然短歌」をいくつかご紹介します。
アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、中央アジア、およびシベリア (ウィキペディア日本語版「モロカン派」より)
底にある振動板を高速で振動させて汚れを落とす (ウィキペディア日本語版「洗濯機」より)
その直後、直子は部屋を引き払い、僕の前から姿を消した (ウィキペディア日本語版「ノルウェイの森」より)
空洞になっているため、大きさを支えきれずに壊れてしまう (ウィキペディア日本語版「マリモ」より)
フクロウが鳴くと明日は晴れるので洗濯物を干せという意味 (ウィキペディア日本語版「フクロウ」より)
* * *
教師の話。
結城はよく、カフェで書き物をしています。
先日のこと、カフェで仕事をしているときに、 隣の席でマンツーマンの英語レッスンが始まりました。 これはよくあることです。
どういう仕組みになっているかは知りませんが、 日本人と外国人が二人ペアでやってきて、 世間話から始まり、日本人が自己紹介の練習や、 最近興味を持っていることなどの話をするのです。
講師役の外人さんは、日本人の表現をときどきチェックしたり、 たまにテキストを取り出して説明したり。
ところで、先日の講師役の先生、英語が非常に聞きやすくて説明もうまい。 無関係な仕事をしている結城も、講師の説明につい聞き入ってしまうほどでした。 教え方がうまい教師というのは魅力的なものだなあ……と感服しました。
何が「うまい」のかを観察してみると、「変化」がうまいようですね。
・声の大きさの変化 ・話のスピードの変化 ・話題の変化
それらを駆使して、生徒の注意をそらさない。 現在のトピックに意識を集中させる。 そして「次は何?」という気持ちを絶やさない。
なるほどなあ、と思いました。
……などと感心していては、結城自身の仕事が進まないので、 その日はそうそうに引き上げることにしたのですけれどね。
* * *
数学の話。
大学入試センター試験の数学に《平均変化率》の話題が出ました。 これは、ちょうどいま書いている『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』 に登場する話題でもあるので、興味深く読みました。
以下問題文。
◆2015年センター試験 数2B 第2問 http://www.toshin.com/center/sugaku-2b_mondai_2.html
読んだついでに手書きで解答を作りました。以下の通り。
◆2015年センター試験 数2B 第2問(1)
TwitterでつぶやいたらたくさんRTしていただきました。 問題そのものは《平均変化率》や《微分》の定義をよく理解していれば簡単で、 理解していなければ難しいものだと思います。 時間制限なしで一問だけ解くのと、 たくさんの問題を限られた時間内で解くのとでは状況はまったく違いますし。
特に、(1)が解けないと先がまったく進まなくなるので、 出鼻をくじかれてしまって焦った受験生もいるのではないでしょうか。
毎年、受験生はこの寒い季節に受験するわけですが、 なんとかみんなが実力を十分に発揮できますように!
* * *
「ゆるす」ということについて。
以下は結城の連続ツイート(連ツイ)です。 最初のツイートが「キリスト教とは関係のない話」となっていますが、 内容的にはばっちり関係があるので、 そういう話が嫌いな方はスルーしてください。
◆人をゆるすとか、ゆるさないとかいうときに、結城個人が考えていること。 http://rentwi.textfile.org/?557166681206689795
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は、最近連載中の「数学文章作法のスケッチ(6)」をお届けします。 アウトラインをいじるだけではなく、 「ベタ」な文章の部分を書くときに「何をどう考えるか」という話題です。
そして、数学文章作法に相反するような、相反しないような、 そんな内容の「フロー・ライティング」をお送りします。
Q&Aのコーナーでは、 購読者さんからの質問「結城さんの蔵書は何冊ですか?」 にお答えします(答えているかどうかは微妙ですが……)。
自己矛盾をはらみつつも進む今週の「結城メルマガ」。 どうぞ、お読みください!
目次
はじめに
数学文章作法のスケッチ(6) - 一つの文から始まる展開
フロー・ライティング
Q&A - 結城さんの蔵書は何冊ですか?
おわりに
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Vol.147 結城浩/フロー・ライティング - 熱い気持ち/「数学文章作法のスケッチ(4)/
2015-01-20 07:00220ptVol.147 結城浩/フロー・ライティング - 熱い気持ち/「数学文章作法のスケッチ(4)/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年1月20日 Vol.147
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
ある朝、ふとこんなフレーズが閃いた。
今日のあなたは、 自分史上最高に経験豊かであるとともに、 これから出会う自分の中で最も若々しい。
なるほど。確かにそうだな、と私は自分で思った。
今日の自分というものは、過去の自分に比べて一番経験豊か。 そりゃそうだ。 そしてまた、未来の自分に比べたら一番若い。 確かにその通り。
ふむふむ、なかなか元気が出る発想だな、 と私は思ってTwitterでつぶやいた。 しかし、その直後、私は気付いてしまった。
今日の自分は、 自分史上最高齢であるとともに、 これから出会う自分の中で最も未熟……
つまり、さっきのフレーズを逆にして考えたわけですね。 ま、まあ、元気が出るほうのフレーズに注目することにしましょう。
* * *
ダイエットの話。
いや、ダイエットというほどではないのですが。 昨年2014年は、食事に注意し、定期的に運動をしてきました。 「習慣の力」を生かそうとしてきたのです。
その結果、昨年一年間で、おおよそ5キロ体重が減りました。 体脂肪率も少し減りました。体重が毎月どのように変化したか、 グラフで見てみましょう(実際の数字はさておきます)。
これはiPhoneのRecStyleというアプリで表示したものです。 このアプリは、週単位、月単位の平均でグラフを描いてくれますし、 毎日指定した時刻に「入力しましょう!」と励ましてくれます。
週平均・月平均でグラフを描いてくれるのはいい機能だと思います。 毎日測っていると、体重は意外に変化するものです。 そして変化があるとつい一喜一憂してしまいます。 一喜一憂するくらいならいいんですが、 つい「今朝は体重が減っていたから、ちょっと多めに食べよう」 という気の緩みに繋がってしまうのです。 その点、週単位のグラフを使って変化をにらむと、 (なかなか減らないので)気が緩むことが少なくなります。
体重の記録を取るのは、いつも朝の着替えの時です。 私の生活パターンでは、夜に測ると時刻のバラツキが大きくなってしまうため、 朝に測るようにしています。 もっとも、先ほどのグラフによれば、2014年の9月と10月には記録を忘れていますね。
グラフを詳しく見てみますと、
・最初の一ヶ月の体重は微減し、その後にぐっと下がっている。 ・二ヶ月目と三ヶ月目で効果が見えて手応えあり。 ・六ヶ月目で油断したのかいったん上昇した。 ・でもまた二ヶ月かけて減らしていった。
そんな流れが見えてきます。 はじめの一ヶ月で嫌にならず、六ヶ月目であきらめず、が良かったのかもしれません。 継続は力なりですね。
結城が一年やってきたことは単純です。
・ご飯・そば・うどん・パスタをあまり食べない。 (まったく食べないと言ったら嘘になるというくらいしか食べない) ・野菜・果物を中心に食べる。 ・特に野菜はいろんな種類をたっぷり食べる。 ・ドレッシングをかけすぎない。 ・筋トレをしっかり行う。 (さもないと、脂肪ではなく筋肉が減ってしまう) (また、筋肉を増やすと基礎代謝が高くなる効果もある)
一年で5キロ減だとそれほどつらくはないし、 身体が軽くなるのも実感できてよいですね。 定期的に体重を測り、自分の体調の変化を見るのは、 一種ゲーム感覚でもあります。 いわゆる「育てゲー」に近い感覚でしょうか。
そのように考えると、ダイエットでも楽しくできるかも。
なお、健康や命に関わることなので、 この文章を読んで、自分で何かをやろうとする方は、 自己責任でお願いします。
* * *
「数学文章作法」シリーズの話。
「数学文章作法」シリーズは、 ちくま学芸文庫のアマゾンランキングでずっと上位に入っています。 先日は2位、4位、6位でした。 みなさん応援ありがとうございます。
「数学文章作法」シリーズは、文章をふだん書いている人の「当たり前」 を書いており、文章を継続的に書く人が当然知っておくべき常識としてお勧めしています。 また、文章を指導する立場の人には、生徒に「このくらいは常識として読みなさい」 という感じに使える副読本としてお勧めしています。
文章を指導する立場の人には、現在注目している分野固有の内容や、 生徒固有の重要ポイントを教えるところに時間を使っていただきたい、 と思っています。つまり、「読者のことを考える」や、 「適切な言葉を選ぶ」といった基礎体力の部分については、 「数学文章作法を読んでおきなさい」としていただければいいな、と願っています。 リアルタイムで先生が生徒に教えるのは人的・時間的なコストがかかるものですから、 先生の時間を有効活用し、個別指導に力を注いでいただけるようにするため、 拙著をお使いいただければと思っています。
◆『数学文章作法 基礎編』 http://mw1.textfile.org/
◆『数学文章作法 推敲編』 http://mw2.textfile.org/
そして、今年はこの第三弾を書こうとしています。 今回の結城メルマガではその執筆のようすを「数学文章作法のスケッチ」として、 読み物にしようとしています。どうぞお楽しみください。
* * *
ちょっと真面目な話。
ネットを見ていて、ふと思ったこと。 ネットを見ていると、二つの矛盾した感慨を抱くことがある。
・人は互いに絶対分かり合えない。 ・人は深いレベルで分かり合える。
この両方の例をときおり見かけるからである。
相手とほんとうに分かり合えたかどうかを知ることはできない。 直接見ることができる心のサンプル数は1だ。 すなわち、人は自分の心しか見ることができない。 他の人の心は想像することしかできない。 しかも、直接見ることができる自分の心すら、いつもふらふら動いている。
自分と相手とでは、経験したことも、言葉の使い方も違う。 相手との対話で使える時間も限られている。 しかし、ほんとうに分かり合えたかどうかを知ることはできないけれど、 ときおり「分かり合えたかも?」と感じる瞬間がある。 これは奇跡と言えるかもしれない。
多くの人は、自分を平均的で標準的な存在と思う(のではないかな)。 よくあるのが「自分が育った家庭」というのが「普通」だと思っていたのに、 他の人と話してみたら違っていてびっくり!というケース。
多くの人は、自分を多数派だと思う。
・自分は話が通じる側 ・自分は常識を持っている側 ・自分は正統派に属している ・自分は普通である ・自分がいるのは安全な側
と考える。でも、よく考えてみると分かる通り、そんな保証はどこにもない。 自分がどちら側にいるのか、 そもそも「どちら側」なんてものがあるかどうかもわからない。
先日ある方から聞いた話。
会社で、自分はリストラする側だと思っていた。 でも、ふたを開けてみたら、自分はリストラされる側だった。
自分は大丈夫と笑っていたら、 ぜんぜん大丈夫じゃなくて、会社の同僚から「かわいそうに」と言われたという。 そのときになって初めて「少数派であることのつらさと孤独」を味わう。
誰でも、健康を崩すことがある。大失敗することもある。 他の人とは違う考えを抱くことだってある。 誰でも、ひょんなことから少数派になる(少数派であることに気付く) 可能性がある。そのとき初めて、 氷のように冷たい「現実という壁」に初めて手を触れることになる。
そして、そのとき初めて、
ああ、私があわれみつつ笑っていた、 あの少数派の人たちはこういう気持ちを抱いていたのか。
ということを知るのだろう。涙とともに。
そんなことを、ネットを見ながらふと思った。
* * *
note(ノート)の話。
結城はnoteというサイトに文章を書いています。
◆結城浩 - note(ノート) https://note.mu/hyuki
しかし、このサイトでは「自分の書いた文章の一覧」を簡単に得る方法がありません。 ですので、結城は自分の文章へのリンクを手動で作ってまとめていました。
◆結城浩 - note(ノート) http://www.hyuki.com/note/
それはそれでいいんですが、 コンピュータが目の前にあるのに手動で作らなくちゃいけないというのがどうも…… どうも、気になります。
そこで、Rubyとcurlというプログラミング言語を使って、 「指定されたURLから順繰りに過去へのリンクをたどっていき、 各ページのタイトルとURLを表示するプログラムを作りました。 以下です。
◆note-prevs https://note.mu/hyuki/n/ndd1eca584b0e
細かいところで手抜きをしていますので、 サイトの構成がちょっと変わると動かなくなりますが、 現在のところは、Rubyとcurlがある環境ならば動くはずです。
ところで、実際にこれを作ったら、もうなんだか満足してしまって、 実際に「自動的に自分のノート一覧」を作る気分が失せてしまいました……
* * *
Vimの話。
結城はメインのテキストエディタとしてVimを使っている。 Vimはちょっとくせのあるエディタで、いくつかのモードを持っている。 コマンドモード(ノーマルモード)では、 入力したキーがそのまま文字として入力されるのではなく、 コマンドとして解釈される。
たとえば x というキーは「一文字削除」というコマンドになるし、 Dというキーは「行末まで削除」というコマンドになる。 jは「次の行に移動」で、/というキーは「下方向への検索文字列入力開始」である。 nは「最後に検索した文字列をカーソル位置から下に向かって再検索」だ。
強力なのは . (ピリオド)というコマンド。 これは「最後に行ったひとまとまりの編集を再度行う」というものである。
たとえば、/textrm[ENTER]と入力すると、textrmという文字列を検索する。 次にcwtextbf[ESC]と入力すると、それをtextbfという文字列に置換する(編集)。 この状態で、nを入力すると「次のtextrmを検索」し、 ピリオド.を入力すると再度textbfに置換する。
つまり、n.n.n.n.というキーシーケンスで「textrmを検索してはtextrmに置換する」 という編集作業を行うことになる。
くどくど書いたけれど、編集作業中はこのような操作は半ば無意識に行っている。 適当に編集作業して、n.n.n.n. という具合。
興味深いのは、こういった決まったキーシーケンスを、 まるで英語のイディオムのように次第に身につけていくということ。
・xpで「二文字の交換」を行う。 ・ddpで「二行の交換」を行う。 ・V]:norm .で「現在のカーソル位置から次の空行までを範囲選択して、 最後に行った編集を再度実行する」を行う。
このようなイディオムは、本を読んだり、他の人のブログ記事を読んだりして知る。 でもときには、自分自身で気付き、見つけ出すこともある。
編集作業で自分がよく使うイディオムというものは、 Vimに限らずどんなエディタにもあるだろう。 ただ、コマンドモードを持っているVimの場合にはよく目立つように思う。
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は、「夢中になって書く」ことについての読み物、 連載「フロー・ライティング」をお送りします。 PDFをダウンロードしてお読みください。
それから、前回に続き「数学文章作法のスケッチ」をお送りします。
どうぞ、お読みください!
目次
はじめに
フロー・ライティング - 「熱い気持ち」で書くとはどういうことか
数学文章作法のスケッチ(4) - 章立て
おわりに
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Vol.141 結城浩/フロー・ライティング - 最も《痛かった》ことを書け/Web連載100回/長距離走と貝殻/
2014-12-09 07:00220ptVol.141 結城浩/フロー・ライティング - 最も《痛かった》ことを書け/Web連載100回/長距離走と貝殻/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年12月9日 Vol.141
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
結城は、Twitterでやさしい数学の問題をときどき出題します。 たとえばこんな問題。
中学生向けの問題。 1000以下の素数をすべて掛け、その結果を十進法で表記したとき、 末尾に何個の0が並ぶか。
答えは後ほど。
* * *
『数学文章作法 推敲編』がいよいよ発売です! 筑摩書房さんのツイートによりますと、結城のサイン本は、
書泉グランデ 三省堂書店神保町本店 丸善津田沼店及び丸の内本店 紀伊國屋書店新宿本店
の各書店さんに、12月10日(水)午後から12月11日(木)にかけて 並ぶとのことです。よろしくお願いいたします。
◆『数学文章作法 推敲編』 http://mw2.textfile.org/
数学文章作法を題材に、 倉下忠憲さん(@rashita2)がブログエントリを書いてくださいました。
◆『数学文章作法 基礎編』から良質の自問をインストールする http://cyblog.jp/modules/weblogs/16493
結城がずっと注目している「自問自答」に関して書かれており、 とってもうれしくなりました。 ありがとうございます。
* * *
久しぶりにCodeIQでプログラミング(アルゴリズム)の問題を出しています。 今回は「サルベジオン問題」というタイトル。 Web APIを使って、データを救出(サルベージ)するという問題。
現在142名が挑戦してくださっています。いつもたくさんの解答者がいて、 ほんとうにうれしいです。例によって難易度の設定が難しかったのですが、 まずまずちょうどいい感じに収まったかな……と思っています。
来週月曜日、2014年12月15日が〆切です。 最高得点者には抽選で『数学文章作法 推敲編』がプレゼントされますので、 ぜひ挑戦してください!
◆サルベジオン社で宇宙船のデータを救え! https://codeiq.jp/ace/yuki_hiroshi/q1215
結城はCodeIQへの出題を《お仕事》として行っています。 つまり、出題と採点に対して報酬をいただくということです。 解答者の人数が変わっても報酬は変わりません。
でも、こういうネットでのお仕事は、 単純にお金だけに換算できるものではありません。 おもしろい問題で盛り上がることは、 私自身がとても楽しいし、学ぶことも多い。
それに、CodeIQの出題を通じて、 ふだんなら結城と出会う接点のない人にも、 私のことを認知していただける。 それは個人で活動する身としては大事なことです。
結城ががんばっておもしろい問題を作り、 技術者さんがそれを見つけて楽しみつつ答える。 その盛り上がりはもちろんCodeIQさんもうれしい。 だって、技術者に認知されることは、 CodeIQさんのビジネスで重要だから。
いつも結城は、 自分に関わる人の多くが楽しんでくれたらいいな、と思う。 確かにお仕事はお仕事なのだけれど、 毎日が楽しくなり、喜びがある活動につなげたいな、 とよく思うのです。
* * *
さて、先日も紹介しましたが、 プレジデントファミリー「算数が得意になる」特集号に記事を書きました。 発売になったので改めてご紹介します。
◆プレジデントファミリー2015年1月号 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00PUSTBX4/hyam-22/
それほど長い記事ではありませんが、 小学生向けに、お手紙形式で書いた文章です。
編集部からの依頼は、 「本は好きだけれど算数はちょっと……という小学生向け」 というものでした。プレジデントファミリー誌では、
「読む算数」
というコーナーになっています。 結城以外には、清水義範さんと、榊邦彦さんが書いておられます。
◆榊邦彦さんのブログ http://s-kunihiko.at.webry.info/201412/article_1.html
* * *
次の話題。
結城はnote(ノート)で「古今和歌集を読む」というマガジンを更新しています。 少しずつ読んで、現在は「恋の歌」を中心に三十首を越しています。
◆古今和歌集を読む(結城浩) https://note.mu/hyuki/m/mfa4fe40c022b
古今和歌集の原文を読むのはもちろんのこと、 参考書を見たり、古語辞典を調べたりしていると、 いつもとはちょっと違う時間を過ごしている気分になりますね。
まあ「言葉を扱う」という意味では、 いつもの仕事と同じなのですが、コンピュータのプログラムを扱ったり、 数学の問題を解くのとはまた違う味わいがあります。
そこで、「古今和歌集を読む」のキャッチフレーズとして、
古今和歌集(こきんわかしゅう)から親しみやすい歌を読みます。 やさしい解説付き。ちょっぴり優雅な言葉の時間をあなたに。
と、マガジンの表紙に書いています。 「ちょっぴり優雅な言葉の時間」て大事ですよね。
待てよ。「優雅な言葉の時間」はいささか曖昧な表現だな。
「優雅な言葉」の時間なのか? 優雅な「言葉の時間」なのか?
ま、まあ、それはともかく、このマガジンは、 現在62人の方がフォローしてくださっています。 あなたもぜひどうぞ。
◆古今和歌集を読む(結城浩) https://note.mu/hyuki/m/mfa4fe40c022b
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コスプレの話題。
以下のリンクは、 数学ガールの「痛車」で有名なしょいんさん(@shoin39)さんが、 神奈川県庁で痛車展示をなさっているところのツイートです。 今回はちゃっぴぃさん(@chappy_0411)が、 ミルカさんのコスプレをなさっています。
https://twitter.com/shoin39/status/536712875515973632/photo/1 https://twitter.com/chappy_0411/status/536713322632994817/photo/1 https://twitter.com/shoin39/status/539043361349328896/photo/1
しょいんさん、ちゃっぴぃさん、ありがとうございます!
以下のサイトにも記事がありました。
◆痛車とコスプレイヤーが入り乱れる!『2.5じげんネ申祭り』 http://www.rbbtoday.com/article/2014/11/25/125812.html
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さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は「フロー・ライティング」のコーナーで、 「最も《痛かった》ことを書け」というお話をお送りします。
その他には、Web連載の第100回を迎えて思うこと。 それに「文章を書く心がけ」をお読みください。
あ、そうだそうだ。さっきのクイズの答え!
中学生向けの問題。 1000以下の素数をすべて掛け、その結果を十進法で表記したとき、 末尾に何個の0が並ぶか。
すべて掛けた結果は416桁の数になりますが、 末尾に並ぶ0の数は「1個」です。
195903406449990834...080581207891125910
たった1個なんですね!
「末尾に並ぶ0の個数」は「10で何回割れるか」を意味します。 「10で割れる」というのは「2と5で割れる」ということです。 ところが素数には2と5は一つずつしかありません。 ですから、末尾に並ぶ0の数は「1個」だけなんですね。
もちろん、1000以下だろうが1000億以下だろうが、 素数を掛けたとき、末尾に並ぶ0は「1個」です。
ではあらためて、結城メルマガをどうぞ!
目次
はじめに
フロー・ライティング - 最も《痛かった》ことを書け
Web連載「数学ガールの秘密ノート」第100回を迎えて
長距離走と貝殻 - 文章を書く心がけ
おわりに
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Vol.135 結城浩/フロー・ライティング - 《夢中》の作り方、《夢中》の見つけ方/原稿料/
2014-10-28 07:00220ptVol.135 結城浩/フロー・ライティング - 《夢中》の作り方、《夢中》の見つけ方/原稿料/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年10月28日 Vol.135
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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以下は、あくまで一般論です。
ブログの記事で「◯◯するn個の理由」というタイトルをときどき見かけます。 「パターン化されたタイトル」の一種だと思いますが、 ためになりそうな、整理されているような印象を与えるようです。
このタイトルは、2 < n < 8 くらいならば妥当だと思うんですが、 ときどき「○○する、たったひとつの理由」というタイトルもあります。 でも、たったひとつの理由しかない記事なら、 その理由をタイトルに書いてくれたらいいのに、と思ってしまいます。
「タイトルに書くのが難しければ、せめて冒頭に書いてくれたらいいのにな。 そうすれば読むかどうかの判断ができるから」……そんなふうにも思います。
逆に、n > 20 だったりすると、 「もう少し数を整理した方がいいんじゃないかなあ」 と思ったりして。
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心が歳を取るという話。
「心が歳を取る」というフレーズが落合陽一さん(@ochyai)のツイートに出てきました。 (いま検索していたら、以下にまとめられていました。感謝)
◆「心が歳をとる」前に http://togetter.com/li/734635
自分を振り返ってみても、 「心が歳を取る」という表現がぴったりする感覚を味わう経験があります。
すごく単純にいうなら「心が歳をとる感覚」というのは、 「物事全般に興味を失っていく感覚」といえるかもしれません。 新しいものを見て感動したり、興味を持ったりすることが次第に減っていって、 心が動かなくなるということです。
歳を取って身体が動かなくなるというのは外から見てもよくわかります。 足もとがふらついたり、よたよたするからですね。 それに比べると、心が動かなくなるようすを見分けるのはちょっと難しいかも。 でも、心が動かなくなるのは、歳をとって身体が動かなくなるのと同じことです。
外から見えないからむしろ、心が動かないほうがこわいかもしれません。 外から見えないどころか、本人も気付かない恐れもあります。 なまじっか経験を積んでいるため、
「私は、あれもこれもわかっているんだ」
と勘違いする恐れですね。
「あれもこれもわかっているから、 いまさらこんなことで感動もしないし驚きもしない」
と自分で思っているけれど、 実際には心が歳を取っているだけとか。 それは、こわいなあ。
自覚があったとしても、もう私は歳を取ってしまったからいいや、 と最初からチャレンジしなくなることもあるでしょうね。 もちろんそれがすべて悪いというわけじゃありませんけれど……
歳を取ると、恥をかいたり人から笑われたりするのが恐くなる人もいるでしょう。 結城自身は、そうなりたくないと思っています。
いろんなことをやって、新しいことにもチャレンジして、 若い人から「結城さん、これ違いますよ。こうじゃないですか」 などと突っ込まれたい。
そして「あ!そうなんだ。てへ。やっちゃった。よしもう一度チャレンジする!」 と返したい。
若い人から無視されるのも嫌だし、突っ込まれなくなるのも嫌ですね。 いつまでも心を若くしておきたいものです。
* * *
それに関連して、誤りの指摘について。
文章やコードを公開していると、 他の人から「ここ、まちがってますよ」と指摘を受けることがある。 それはとてもありがたいことである。
文章やコードに対する指摘は、必ずしも改善案を必要とはしない。 「ここは誤りである」「ここは読みにくい」という指摘だけでも有益だ。 必ずしも「こう直すべき」という改善案はいらない。 改善案がなければ指摘してはいけないという主張は(もしそういうのがあるなら) 誤りである。改善案がなくても、書き手はうれしい。
もっというなら「ここは誤りである」とまで言い切らない指摘でもありがたい。 つまり「ここは?」と指さすだけでもいいということ。
また、「指摘を受ける」ことと「その指摘をどう反映させるか」は、 明確に別のプロセスである。この両者を混同しない方がいい。 指摘をどう反映させるか、そもそも反映させるか否かは、著者の判断である。
……という話は年末刊行の『数学文章作法 推敲編』にも詳しく書いている。 結城はこの話が大好きで、ことあるごとに書いているような気がする。 何しろ私は日々文章を書き、日々多くの人から指摘を受けている。 (要するに、しょっちゅうまちがっているってことですね!) だから、自分の経験から確信を持っていえるのだろう。
◆『数学文章作法 推敲編』 http://mw2.textfile.org/
* * *
この結城メルマガではよく「文章を書く心がけ」や「本を書く心がけ」や 「教えるときの心がけ」という内容を書きます。
でも最近は「仕事の心がけ」というくくりにしたほうがいいような内容を よく書いているような気がします。
結城の場合には文章を書いたり本を書いたりするのはそのまま仕事なのですが、 そこで考えていることは「お仕事全般」に通じることが多いんじゃないか、 と思うのです。
結城は仕事をしながら、「仕事をしている自分を見る」というのが好きです。 仕事の内容を考えつつ、仕事の進め方を考える。 内容を考えることと、進め方を考えることはちょっと違いますよね。
自分の仕事の進め方をていねいに考えて言語化することは意味があると思います。 そのことによって効率も上がるし、同じ失敗を繰り返さない効果もあるからです。 組織でいうなら暗黙知を形式知にするという話ですが、 それを個人レベルでやろうというのに似ていますね。
あなたは、自分の「仕事の心がけ」を持っていますか?
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『数学文章作法 推敲編』の再校ゲラを読んでいると、 編集者からの鋭い指摘に「なるほどなあ」とうなることがある。 そういう経験を繰り返していると、自分の言語能力も少しずつアップするのかな。
たとえば、「高い視野から見る」という表現は正しいだろうか。 これは、視野というのは高い低いではなく、広い狭いではないかという疑問です。 だって、見える範囲のことなんですから。「視野を広くする」のように。
どうしても高いという表現を使いたかったら「高い視野から見る」ではなく、 「高い視座から見る」のほうがいいのではないか、と思った次第。
ところで「高い視野から」と書こうとしたら、 「高石やから」と変換されてしまい、 謎の知り合い高石さんが登場する関西弁の会話になってしまいました。 「そんなまちがい、しかたないわなあ。高石やから」
そして「広い視野から」と書こうとしたら、 今度は「広石やから」と変換されてしまい、謎の知り合い広石くんが登場……
……おっと、冗談はこのへんにしておきます。 後で、もう少し真面目な校正の話をしましょう。
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イワトコナマズさん(@biwako_wataka)が読書メーターにお書きになっていた 『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』の感想を読んでふと思ったこと。
◆イワトコナマズさんの感想 http://bookmeter.com/cmt/42129377
この感想では『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』について、 関係のない話が急に出てこないという趣旨のことが書かれていました。 おそらく、話に一つの流れがあるということなのだと思います。
この感想を読んで、今年の春頃に受けたインタビューを思い出しました。 千葉県で数学を教えている先生方からインタビューを受けて、 「高校数学で気になること」を答えました。
自分の経験から話しているので、現在とはずれがあるかもしれませんが、 気になっているのは「単元の扱い」です。 単元ごとに学ぶ個々の知識は必要なのだけれど、 そこで学んだことがバラバラなままだと学ぶ人はつまらないだろうな、という話。
来週の結城メルマガで三回目の配信となる「数学ガールの特別授業(教師編)」 の中でも同じような話をしたかもしれません。 こちらは新潟で数学を教えている先生相手の講演会。
もちろん、教える側の気持ちになってみると、 とても大変だと思います。 単元を一つ一つ教えるのすら大変なのに、 さらにそれらの関係を繋がるように教えるなんて。 先生の力に依存する部分も大きそうだし、 「わかる生徒」と「そうでない生徒」の 落差が大きくなってしまう危険性もあるでしょうか。
結城は「数学ガール」シリーズのような物語は大好きです。 いわゆる物語としてのストーリーはなくてもいいから、 ストーリーのように自然な流れがある文章は好きです。 つまり、必然性を持って次の話題が出てくるように編まれている文章のことです。 知識の羅列や、どこからか話題が出し抜けに振ってくる状況はつらい。
その流れというのは、論理的な流れでもいいし、歴史的な流れでもいい。 何でもいいのだけれど、 一つ一つの話題が出てくる必然性を求めてしまいます。
いまにして思えば、高校時代の授業に感じていた不満はそこにあったかも。 微分方程式で出し抜けに三角関数が出てきて、 私の中のテトラちゃんが「どうしてそこで三角関数が出てくるんでしょうか」と 声を上げていましたね。 私の記憶では、その授業で教師はうまく説明していなかったように思います。
必然性というのは、たとえば、 「いろいろやっていて、これがけっこううまくいったから」 というのでもいいんです。説明されれば。 でも、説明がないと、学習者は、
「どうしてこれが出てくるの? その必然性を私は理解できない。 ということは、 ほんとうには私は理解していないんだ!」
と焦るように思います。 少なくとも、私は焦りました。
ストーリー。必然性。自然な流れ……こんな話は、 ベテランの先生は百も承知のはずですよね。 講演会で先生に向かって結城がことさらに話すまでもないことです。 でも、新潟の講演会では若い先生がたくさんいらして、 それなりにお役に立てたようです。
招いてくださった校長先生からは「若い先生方が、 ベテランの先生からいつも言われていることと同じことを、 違う世界の結城先生からも言われると納得感が違います。 若い先生にとって、とてもいい機会となりました」 と喜ばれました。やさしい言葉に感謝です。
「数学ガールの特別授業(教師編)」の第三回は来週配信する予定です。 お楽しみに。
◆数学ガールの特別授業(教師編) http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
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それでは、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は久しぶりに「フロー・ライティング」をお送りします。 これは、文章を書くことに関する連作読み物です。 今回は、
「《夢中》の作り方、《夢中》の見つけ方」
というタイトルの読み物をPDFでお送りします。 これまでの記事のバックナンバーは以下にあります。
◆フロー・ライティング http://www.hyuki.com/flow-writing/
お楽しみください!
目次
はじめに
フロー・ライティング - 《夢中》の作り方、《夢中》の見つけ方
原稿料について - 仕事の心がけ
本を書く心がけ - 再校ゲラを読みながら
次回予告 - 数学ガールの特別授業(教師編)(3)
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Vol.124 結城浩/フロー・ライティング - 思いを巡らす/対話を描く/試験について/
2014-08-12 07:00220ptVol.124 結城浩/フロー・ライティング - 思いを巡らす/対話を描く/試験について/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年8月12日 Vol.124
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
Vol.122は「購読者向けサイン本プレゼント号」でした。 当選者さん全員から返信をいただき、2014年8月9日(土)に四人分を発送しました。 また先日8月11日(月)に最後のお一人分を発送しました。 ご応募いただきありがとうございます。 残念ながら当選しなかった方、ごめんなさいね。
結城はこれまで二年以上結城メルマガを継続してきましたが、 今回のように、体調不良で発行が困難になったことが何回かありました。 購読者の方には申し訳ありませんが、 今回のような「プレゼント企画」で穴埋めさせていただいております。 ご寛恕いただければ感謝です。
* * *
だいぶ体調も戻ってきて『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』も、 ようやく脱稿することができました。ボールはいったん編集部に渡っています。 ちょうどこの結城メルマガが刊行された日、 いつもの「表紙・イラスト」の打ち合わせが行われる予定です。
結城はこれまで何冊も本を書いてきましたが、 何冊目であっても、新しい本が生まれるのはほんとうにうれしいです。 毎回毎回新しい感動があります。 このような仕事ができるのはひとえに応援してくださる読者さんのおかげです。 ありがとうございます。
新しい本が生まれるときに感じるのは、 自分の著作が増える喜びや収入が入る喜びだけではありません (もちろんそれは大きな喜びですが)。 自分が書いたとか、自分の本という気持ちをすこし越えて、 楽しい読み物がまた一冊増えたよ!という気持ちなんです。
私は、自分の本を読むのが大好きです。 何かを確かめるためにうっかり読み始めたら、 ずるずると最後まで読んでしまうこともよくあります。
いったん書き終えてしまえば、自分の書いた本であっても、 私は一読者として読むことができます。 そして、楽しい読み物が手元に増えることは大きな喜びですよね。
そんな気持ちで、今回も新しい本の誕生を喜びたいと思っています (といいつつも、これから初校・再校と続きますので気は抜けませんが)。
* * *
さて、体調を崩して、ペースを崩してしまった『数学文章作法 推敲編』の方も、 少しずつ復調してきました。もう一度全体を読み直し、 抽象的すぎる部分を手直しし、例を書き換え、図を少し入れています。 これもがんばって仕上げたいと思っています。 現在は今年中に出版の予定ですが……さてどうなりますか。
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執筆といえば、最近のお仕事BGMは"Quell"というゲームの音楽です。 この結城メルマガでも"Quell"を紹介したことがありますね。 水滴を指で移動させて解くという、静謐な雰囲気を持つパズルゲームです。
◆Quell - iTunes https://itunes.apple.com/jp/app/quell+/id383027157?mt=8
このBGMが別途販売されています。 ノスタルジックな音楽で、何度繰り返してもちっとも飽きない曲集となっています。 こちらのページで試聴&購入ができます。
◆"The Quell Collection" http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00AG74AQM/hyam-22/
いまも、この音楽を聴きながら書いています。
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ではそろそろ、結城メルマガを始めましょうか。
今回は久しぶりに「フロー・ライティング」という、 文章を書くことに関する連作読み物をお送りします。
それから「本を書く心がけ」のコーナーでは、「対話を描く」という文章を、 また「教えるときの心がけ」のコーナーでは、「試験について」をお送りします。
それでは、お楽しみください!
目次
はじめに
フロー・ライティング - 思いを巡らす
対話を描く - 本を書く心がけ
試験について - 教えるときの心がけ
おわりに
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Vol.119 結城浩/フロー・ライティング/フリーランス/息子から「文章を書く仕事がしたい」といわれたら?/
2014-07-08 07:00220ptVol.119 結城浩/フロー・ライティング/フリーランス/息子から「文章を書く仕事がしたい」といわれたら?/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年7月8日 Vol.119
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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台風が近づいているということで、 関東近郊はとてもどよんとした天気です。 いかがお過ごしですか。
結城は相変わらず本を書く仕事をしています。 佳境に入っているのは、
『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』 『数学文章作法 推敲編』
の二冊ですね。毎日のようにそれぞれの原稿を読み、 加筆したり削除したり……いつもの生活といえばそうなのですが。
「数列の広場」はまだ第3章と奮闘中です。 読み返すとどうしても荒いところが見つかるので、 やすりを掛けたり磨いたりと奮闘中。
文章を読んでいるときに大敵なのは眠気です。 特に、曇天の日の食後というのはとても眠くなってしまいます。 どうしても眠いときにはアイマスクを付けて十分くらい仮眠を取ることもあります。
それからよく体験するのは、 文章を読んでいてどうも調子がでないときには、 別の種類の作業(たとえば図版を整理する作業)をすると、 うまく頭が切り替わるということです。 時間が効率的に使え、しかも疲れも少なくなるようです。
天気の「どよん」に負けずにがんばろう!
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言葉が登場するところでは、ときどきおもしろい工夫が見られます。 先日「感想.zip」という言葉を見かけました。
◆言いたいことを一言に圧縮する「感想.zip」とは…? http://togech.jp/2014/07/02/99400
言いたいことがありすぎてしょうがないときに、 「おもしろかったです.zip」のように表現するというもの。 .zip というのは圧縮ファイルに使う拡張子で、このファイルを展開すると、 もっと大きなファイルが出てきますよというニュアンスでしょうね。
「おもしろかったです」だけじゃなくて、 もっとたくさん感想言いたいんだけど、もうおもしろすぎて、 わあああっとなってしまって、表現しきれないときに「.zip」をつけて、 「もっと言いたいことはたくさんあるんですが、言葉になりません!」 というニュアンスを付け加えるとのこと。
なるほどな、と思いました。
もちろん、「どう」おもしろかったのか、「どんなところが」おもしろかったのか はまったく伝わらないわけですが、 「おもしろかったです」の背後にたくさんの気持ちがあるんだよ!という熱意は ちょっぴり伝わるかもしれませんね。
* * *
もう一つ言語表現上の工夫の話。
複数人が同時に同じ発言をする様子を、 カギ括弧を重ねて表現する技法があります。 主にライトノベルで使われているものですが、 それについてTwitterで話題になっていました。
◆ラノベでカギ括弧を重ねて使うのはズルなのか技法なのか http://togetter.com/li/686586
どういう技法かというと、たとえば複数人が同時に「はい!」と返事をするのを、
「「「はい!」」」
と表記するというものです。
結城はこれを初めて見たとき「すごい!」と思ったのを覚えています。 すごい発明ですよね。何がすごいって、何が起こっているか説明不要なところ。 新しい記号を使うのではなく既存の「 」という記号を利用して、 新しい表現を作り出したんだなあと思いました。
どんな場合にも使えるかというと難しいですし、 自分で使うかというとよくわかりませんが、 少なくとも一つの技法ではある、と思いましたね。
* * *
先日、立教大学公認フリーペーパーSt.Paul's Campus(セントポールズキャンパス) さんからインタビューを受けました。二ページほどの短いインタビューですが、 学ぶことや「謎」を中心に答えたものがこのフリーペーパーの105号に掲載されています。 残念ながらWebからは読めないようですね。
このフリーペーパーは、 基本的には立教大学キャンパスでの配布と池袋で配布されるものです。 もしも希望する方には送料を負担していただく形で郵送もできるということなので、 ご興味のある方は、 @spc_rikkyo さんか、以下のアドレスからコンタクトを取ってください。
◆立教大学公認フリーペーパーSt.Paul's Campus(セントポールズキャンパス) http://spc-rikkyo.wix.com/st-pauls-campus
* * *
毎日本を書く仕事をしていると、「継続性」についてよく思う。
現代流行の何かに振り回されそうになったとき、 私はよくこんなシンプルな問いかけをする。
「昨年流行していたもの、今年はどうなった?」
とっても流行っていて、いかにもすごいという多くのものが、 あっというまに見えなくなってしまう。諸行無常である。
自分の時間を何に投資しようか。 来年消え去るものに投資するか、三年もつものに投資するか、永遠に投資するか。
答えは単純ではないし、予想が外れることもある。 でも、現代の何かに振り回されそうになったとき、
「昨年流行していたもの、今年はどうなった?」
と問いかけるのはそれほど悪い習慣ではない。 今年流行したものも、来年はほぼ同じ運命をたどるだろうから。
『ナルニア国物語』の作者C.S.ルイスが言ったこんな言葉が好きだ。
「永遠につながっていないものは、永遠に時代遅れである」
そして、永遠につながるためには現在につながっていなければならない。 現在こそが永遠に通じているゲイトウエイである。
過去に縛られている人は多い。 現在をないがしろにして未来だけを夢見ている人も多い。 もちろん、過去に学ばないのは愚かであり、未来を夢見ないのは虚しい。 でも、リアルな行動は現在にしか起こせない。 一歩を進められるのは今しかない。
過去に縛られている人は現在の自分を殺している。 未来だけを見ている人は現在の自分を無視している。 そして、現在の自分を殺し、現在の自分を無視してなにができるというのか。
毎日本を書く仕事をしていると、「継続性」についてよく思う…… それはきっと亡き父の口癖が「継続は力なり」だったからだろう。
今日も、現在の、目の前の小さな仕事に向かおう。 過去に学びつつも。未来を夢見つつも。
ささやかな、今日の一歩を進めよう。
* * *
ではそろそろ、結城メルマガを始めます。
今回は「フロー・ライティング」のコーナーで、「深く潜る」という読み物をお届けします。
また「Q&A」のコーナーでは「息子さんから「文章を書く仕事がしたい」といわれたら?」 というユニークな質問に答えます。
では、結城メルマガをどうぞ!
目次
はじめに
フロー・ライティング - 深く潜る
フリーランスで働くということ
Q&A - 息子さんから「文章を書く仕事がしたい」といわれたら?
おわりに
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Vol.114 結城浩/メディアごとに変わる文章/noteで本を売る/フロー・ライティング - よく知らないけど、気になること/
2014-06-03 07:00220ptVol.114 結城浩/メディアごとに変わる文章/noteで本を売る/フロー・ライティング - よく知らないけど、気になること/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年6月3日 Vol.114
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 いかがお過ごしですか?
* * *
「数学ガールの秘密ノート」シリーズは、年二回の刊行を目指しています。
今年の秋刊行を予定している第四弾は、
『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』
です。作業は始動しているのですが、そろそろ本格的に進めなくては。 ということで、レビューア候補となっている方々に先日メールを送りました。
結城は毎回、自分の本をボランティアのレビューアさんにレビューしてもらっています。 一つの章ができるごとに、レビューアさんにPDFを送付し、コメントをいただくのです。
今回はレビューア候補の33名にメールを送りました。 〆切は今週の金曜日なのですが、 うれしいことにさっそくたくさんのお返事をいただきました。
無償のレビューなのに、みなさん快く引き受けてくださり、 ありがたいことです。
「数学ガール」本編のシリーズとは違い、 「数学ガールの秘密ノート」シリーズは物語中に明確な時間経過はなく、 毎回、一つのテーマをめぐって繰り広げられる「数学トークの連作」という趣になっています。
系統立てて一から積み上げて学ぶのとは違い、 散発的な印象もなくはないのですが、内容は基本的なところから説明しており、 中学生・高校生が読む数学物語としては最適かもしれませんね。
これから行うのは第四弾の書籍化で、 連載の第31回〜第40回の10回分が一冊にまとまる計算です。
一方、Web連載の方は現在第78回までが終了したところですから、 現在連載中の分が書籍化されるのは第八弾、2016年ということになります。 ……さてどうなりますか。
* * *
それはさておき、早いものでもう6月ですね!
気持ちのよい気候と思っていたら、いきなり暑い日が続きました。 体調を崩さないようにしなくては。
結城は week.textfile.org というページを作って、 「今年のうち何パーセント過ぎたか」が簡単に調べられるようにしています。 たとえば、結城メルマガを書いている今日アクセスすると、 こんなふうに表示されます。
2014年6月2日 第23週目、月曜日 今年の約41.8%が過ぎました。 #ぐぬぬ http://week.textfile.org/
まさに「ぐぬぬ。今年はもう41.8%も過ぎたの?」と言いたくなります。 結城はこれを毎日見て「ぐぬぬ。がんばらなくちゃ!」と思っています。 そしてときどきTwitterに流しています。
* * *
とはいえ「がんばる」といっても限界がありますよね。
結城は作業記録がてら、まとまった作業の開始と終了をツイートしています。 そうすると「自分が連続して仕事できる時間」というのがどのくらいかだいたいわかります。
文章執筆・推敲・校正などの仕事を何時間も連続で(休憩なしで)行うのは不可能です。
・朝から午前中に掛けて元気がいい時間なら、一時間半〜二時間。 ・午後に入ると一時間〜一時間半。 ・そして夕方になると、三十分〜一時間。
当然ながら、疲れてくれば来るほど連続して作業できる時間は短くなります。
時間帯で最も有効に使えるのは「9:00〜11:00」の二時間ですかね。 ここは「黄金の時間」といえます。 すっきりした頭で深く考えることができるし、意欲もある時間帯です。
でも、経験上「文章書き」と「図版描き」は性質が違うようです。 図版を描く作業は、夕方から夜に掛けても連続二時間くらい続けることができます。
文章を書く頭と、図版を描く頭は、まるで別のような動きをしていますね。
* * *
コミックをご紹介。
◆『ひきだしにテラリウム』(九井諒子) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00E59A03O/hyam-22/
内容を説明するのは難しいのですが、 ひとことでいえば「多彩な短編集」ですね。
短編というかショートショートのようなコミック集です。 でも、一人で描いているとは思えないほど多彩なジャンルを扱っています。 新鮮な刺激を味わえる不思議な作品ですので、機会があれば。
雰囲気は星新一のショートショートに近いかもしれません。
* * *
そんなところでそろそろ、結城メルマガを始めましょう。
今回は「フロー・ライティング」のコーナーで、 結城が最近悩みつつ考えている「よく知らないけど、気になること」 という読み物をお送りします。
それから、この4月からときどき書いているnote(ノート)の話。 また「文章を書く心がけ」では「メディアごとに変わる文章」をお届けします。
それではどうぞ!
目次
はじめに
フロー・ライティング - よく知らないけど、気になること
noteで本を売る - 本を書く心がけ
メディアごとに変わる文章 - 文章を書く心がけ
おわりに
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Vol.112 結城浩/フロー・ライティング - 流れとバッファと呼び水と/「色つき星取表」と作業パターン/書き写す作業の意味/
2014-05-20 07:00220ptVol.112 結城浩/フロー・ライティング - 流れとバッファと呼び水と/「色つき星取表」と作業パターン/書き写す作業の意味/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年5月20日 Vol.112
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 いかがお過ごしですか?
* * *
先日刊行した結城の最新刊、 『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』では、 三角関数と円、三角関数とサインカーブなどの関係がたくさん描かれています。
ツイッターを見ていたら、Web上で円周上の点を実際に動かして 遊べるページを作っている方がいらっしゃいましたのでご紹介。
◆@sonicdaw さんによるページ http://entatonic.net/mathgirl/secret_note/sincos/chapter1/
直角三角形の一点が固定され、マウスで別の一点を動かすと、 sinやcosの値が表示されるというものです。ボタンで設定を変えると、 円が描かれたりサインカーブが描かれたりします。
楽しいですね。ありがとうございます。
* * *
「数学ガール」シリーズの表紙絵や本文イラストを描いてくださっている たなか鮎子さんのインタビュー記事がWebにありましたのでご紹介します。
絵本を作ったり、版画を作ったり、絵やイラストを描いたり……というのは あこがれのお仕事といえると思いますが、このインタビュー記事の中では、 たなかさんの進路選択などについても触れられています。
「就活がターニングポイントだったなと思います」というたなかさんの決断。 何をどう考えて進路選択をし、どんな努力をしてきたのか……ぜひお読みください。
◆PEOPLE 05 たなか鮎子(絵本作家、銅版画家) - ORDINARY http://ordinary.co.jp/people/2223/
* * *
数学ガールといえば、今月の初め、 英語版『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』が刊行されました。 日本のアマゾンの洋書ランキングでは、 少年向け数学本ベストセラー商品ランキング1位にまでなったようですね。 みなさんの応援を感謝します!
◆Math Girls Talk about Equations & Graphs http://www.amazon.co.jp/dp/1939326192
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あるりさん(@aruri_n)が、結城のアイコン(スレッドお化け坊や)のクッキーを 作ってくださったのでご紹介。かわいい!
◆結城おばけ先生もつくった - @aruri_n https://twitter.com/aruri_n/status/467936403129499648/photo/1
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先日、筑摩書房の編集者さんと打ち合わせがありました。
『数学文章作法 基礎編』は、昨年2013年の春に刊行されてから、早いもので一年。 第5刷になりました。現在結城は続編の『数学文章作法 推敲編』を執筆中です。
推敲編はこの結城メルマガでも連載をしてきて、 先日いちおう最終章までたどり着きました。 ただ、一冊の本にまとめるにはまだあちこち欠けている部分がありますので、 そこを補って書籍化していこうと思っています。楽しみです。
* * *
ところで、結城は打ち合わせの前には、 できるだけ現状をまとめて進捗を報告するように心がけています。 状況整理をしたり、自分の考えを前もって先方に伝えておくと、 「会う」という貴重な時間を有効に使えるように思うからです。
メールで済ませられることはメールでできるだけ済ませ、 会わなければできないことを会ったときにやるというのは、 とても合理的だと思っています。
しかしながら、何をメールでやりとりすべきか、 何を直接会って話すべきかというのは、 人によって(あるいは業種・世代によって?)考えは違います。
たとえば(一般論ですが) ある人は「謝罪をメールで行うのは失礼」と考えます。 でも別の人は「こちらが謝罪をするのに、 わざわざ直接会おうとして相手の時間を奪うのは失礼」と考えます。 ここには絶対的な正解はないのだろうなと思います。
それは、人と人との「間合い」のようなものです。 相手との距離感ですね。そして距離感は価値観にもつながる。 お互いにちょうどよい距離感で話せる相手とつきあえるのは心地よいものですが、 いつもいつもそういうわけにも行かないですね。
めんどうといえばめんどう、 おもしろいといえばおもしろいことです。
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先日、「若者よ、選択は重要だぞ」というツイートをしました。
◆結城浩の「若者よ、選択は重要だぞ」という話 http://togetter.com/li/666350
幸いに多くの人に読んでいただけたようで、 賛同のメッセージを多数ちょうだいしたのですが、 反論のメッセージももらいました。 反論のメッセージをもらうということは、 それだけ多くの人に届いたことの印かもしれません。
たとえば「選択が大事だといっても、 自分には選択できないことだってあるだろう」という反論。 これには「ごもっとも」と答えるしかないですね。 人生には選択可能なことも不可能なこともある。
ただ、結城が思うのは、一見選択不可能に見えるところにも、 選択の余地は意外にあったりするということ。 それから、過去に起きたことはもう変えられないのですが、 それでも、過去に起きたことや現状を受容するかどうかもまた、 一つの選択とはいえるだろうということ。
もう少し具体的に書くと、だれしも「後悔をする場合」というのはあるでしょう。 後悔が反省につながれば、次の改善になるかもしれませんが、 もしも、何年も何年も後悔し続けているとしたら、 それは必ずしも健全な状態ではないだろうとは思います。
「あのとき、こうしていれば」って何年も何年も悔やんでいるのは、 現状を受け入れる選択を拒否しているともいえる。 そして後悔によって自分の現在という時間を使いつぶしているともいえる。 何年後かに「あのときあんなに後悔しなければよかった」と言わなければいいのだけど。 そんなことしたら後悔したことを後悔するというメタ後悔になってしまいます (冗談抜きでそれは悲しいことです)。
「気持ちの切り換え」や「自分の意識をどちらに向けるかの判断」というのは、 毎日を健康に生きるために大切なことじゃないかなと思います。
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ツイートといえば、 次のツイートもたくさんの人から反応をいただきました。
ルビについて。
−−−− よく思うこと。 子供が読む本だからと言って難しい漢字をひらがなにするのではなく、 大人が普通に使う表記にしてルビ(ふりがな)を振るのがいいと思う。 結城はルビが振られた本でたくさんの言葉を覚えました。 技術ってそういうところに使うべきだよね。 −−−−
結城が子供のころに読んだ本は、物語でも漫画でも、 難しい言葉(もちろん漢字)にたいていルビが振られていて、 それを読んでいるうちにずいぶん語彙が増えたと思っています。 ここでいう語彙は「書けはしないけど意味と読みを知っている言葉」ですけれど。
語彙がある程度増えてくると、本を読むのが楽しくなり、 さらに語彙が増えていく。小学校からずっと、やたら本を乱読しました。 その最初の起爆剤というかきっかけは、もしかしたらルビにあったかも。
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そんなところでそろそろ、結城メルマガを始めましょう。
今回は久しぶりに「フロー・ライティング」をお届けします。 「流れとバッファと呼び水と」というタイトルで、 文章を書くときに結城がいつも感じていることを言葉にしてみました。
それではどうぞ!
目次
はじめに
フロー・ライティング - 流れとバッファと呼び水と
「色つき星取表」から作業パターンを読み取る
書き写す作業の意味 - 本を書く心がけ
おわりに
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Vol.106 結城浩/新学期/フロー・ライティング/Q&A - 夢/
2014-04-08 07:00220ptVol.106 結城浩/新学期/フロー・ライティング/Q&A - 夢/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年4月8日 Vol.106
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 いかがお過ごしですか?
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春ですね!
今週から新年度という方も多いのではないでしょうか。
新しい学校、新しい住まい、新しい学び、新しい仲間…… そのような一歩を踏み出したみなさま、おめでとうございます。 新しい一年が豊かで実り多きものとなりますように!
ところで、そのような方々のご多幸は当然お祈りするとして……
結城はこういう季節になると、 さまざまな事情で「不本意な場所」で 春を迎えることになった方のことも思い、 そしてそのような方のためにこそ祈りたいと思います。
めげずいじけず、新しい季節に気持ちをうまく切り換え、 次のステップに進んでいけるようにと心から祈ります。
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春。
今年の4月1日、結城は家内とお花見に行きました。 二人で桜で有名な千鳥ヶ淵を回りました。 桜が満開で、人もたくさん。 みんなスマートフォンや携帯を使って撮影です。
そんな中に、三脚を立てて本格的に撮影している人もちらほら。 そういう方々は、桜を撮るいいスポットを知っています。 自然と三脚の周りには、一般の方々がいっぱい集まって、 スマートフォンを掲げるというちょっとユーモラスな光景が広がっていました。
今日は、たくさんの人のカメラロールが桜色に染まる日なのですね。
幸い、風もなくていい天気だったので、 ゆっくり皇居の周りをまわって春を楽しみました。
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春。
結城の最新刊『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』は2014年4月末に刊行です。 アマゾンではすでに予約が始まっております。 アマゾンでの刊行日は、現在4月25日となっていますが、 書店さんの店頭に並ぶのもだいたい同じ頃になるはずです。
◆『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』(アマゾン) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/479737568X/hyuki-22/
ただし、いつものパターンから推測すると、都内では23日頃から、 それ以外でも24日頃から書店さんの店頭に並ぶ可能性がありますね。 実際に並ぶ日時については書店さん次第という部分もありますので、 ご了承ください。
また、もしかしたら一部書店さんではそれに先だって、 結城の《サイン本》が店頭販売される可能性もあります。
詳しくはご利用になっている書店さんへお尋ねください。
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ところで肝心の執筆状況ですが、 すでに『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』に関しては、 結城の手からほとんど離れています。
現在は編集部の方で最終調整をしている段階ですね。 今週過ぎれば編集部でもいわゆる責了となり、 あとは印刷を待つばかりということになります。
何冊本を作っても「新しい本が生まれる直前」というのはわくわくします。 特に現在のように結城の手が離れたあとは、うきうき・にやにやの連続です。
「どんな方が読んでくれるかなあ」 「どんなふうに楽しんでくれるかなあ」
などと想像しては悦に入っているのです。
何度も書いているエピソードですが、 結城が処女作『C言語プログラミングのエッセンス』を刊行したときは、 ハイになったあまり、家内と二人でわざわざ紀伊國屋書店さんに電話しましたよ。
「あ、あのう…『C言語プログラミングのエッセンス』という本、売ってますか?」
発売日過ぎているんですから当然売ってるに決まっているんですが。
あれは遠い1993年のこと。でも2014年のいまでも同じようなどきどきを感じます。 さすがに書店さんに電話はしませんが(しないと思いますが)、 発売日前後にはきっとTwitterでしょっちゅう検索を掛けるでしょうね。
本が一冊生まれるのはほんとうにうれしいものです!
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検索といえば、結城はしょっちゅう「数学ガール」で検索しています。
最近よく気付くのは、Twitterの「自己紹介」の欄に、 読書対象として「数学ガール」と書いたり、 自分のアイデンティティとして「数学ガール」と書いたりする人が増えたということ。 とてもうれしいです。
数学の専門家になるわけではないけれど数学を好む人、 それから自分の趣味を特徴づける大きな要素として数学を掲げる人が増えるのはうれしいですね。
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春。
感謝を込めて、 『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』のサイン本プレゼントを実施しました。 今回はトータルで89名の申し込みがありました。
厳正な抽選の結果、7名の当選者さんに当選メールを送り、送り先住所の確認をしています。 月曜日(4月7日)現在、6名様の住所が確認できました。
住所が確認できていない方が「1名」いらっしゃいます。 メールベースでやりとりをするので、 毎回この住所確認がどうしてもネックになります(再送しているのですが)。 送り先住所をご返信いただけないと結城はどうしようもないからです。
応募時点で住所を書いてもらうという手もあるのですが、 結城はあまり個人情報を持ちたくないので、 当選者だけに「改めて住所を確認する」を取ることになるんですよね。
もっと良い方法があればいいのですけれど。
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さて、CodeIQでプログラマ向けに出題していた《暗号解読クリプタン問題》が終了し、 評価&フィードバックを挑戦者にお返ししました。
今回は問題がかなり難しく、解答者の推理力に期待する部分が大きくなってしまいました。 挑戦者そのものの人数もなかなか伸びず、胃が痛くなるような日々を送りました。
特に、最高評価5をゲットした人の中から抽選で10名に、 書籍『数学ガールの誕生』をプレゼントするという企画だったため、 最高評価5を取る人が10名未満だったらどうしようと悩みました。
しかしながらフタを開けてみますと、挑戦者は全員で92名にものぼり、 そして驚くことに、暗号を二問とも解読して最高評価5を取った方が「14名」に達しておりました。 本当にほっとしました!
いつもみなさんから好評をいただいていたので、 今回は「慢心せずに精進せよ」ということなのかもしれません。 これからもがんばってよい問題を作っていかなくてはとつくづく思いました。
◆CodeIQの問題に挑戦しよう! http://www.hyuki.com/codeiq/
* * *
実は先週、結城は何となく体調がすぐれない日々を過ごしていました。 天気の変化や気圧の変化でお腹が痛くなったり、頭がぼんやりしたり。 いわゆる「季節の変わり目」で身体がまだ春を受け入れていないのかもしれません。 もう春は来ているのにね。
自分の年齢も考えて、調子がよくないときにはあまり無理せず、 スローペースで進むように心がけています。
年齢が進むにつれ、 自分が「できること」と「できないこと」について考える機会が多くなります。
若いときから、
「年を取ると、昔できていたことができなくなる」
というのは理解していたつもりなのですが、いざ自分が年を取ってくると、 その表現はずいぶん雑だなあと思うようになりました。
現実というのはもっと微妙です。 あえて表現するなら、次のようになります。
「年を取ると、昔100できていたことが99しかできなくなる。 しかもそれに気づいているのは自分しかいない」
けっこうこれは厳しいなあと感じます。 若いときのチャレンジと、 年を取ってからのチャレンジは質が違うのですね。
簡単にいえば、年を取れば能力は落ちていくものです。 だから、そこをどう補ったり、やりくりをするかが問われてきます。 速球投手から変化球投手への転身をするようなものでしょうか。
そこには若い人以上の「柔軟さ」が求められるのかもしれませんね。
* * *
がらっと話題は変わって「フォント」の話。
先日、こんなページを読みました。
◆商用でも無料で使える2種類の日本語フォント「刻明朝」「刻ゴシック」 - GIGAZINE http://gigazine.net/news/20140327-koku-min-koku-go/
無料で使える日本語フォントはそれほどめずらしくはないのですが、 この日本語フォントは「かな」と「漢字」の大きさをずいぶん変えているのです。 不思議な雰囲気を出していますね。
さっそくMacBook Airにインストールしてみました。 ついでに最近プログラマがよく使っている Sublime Text 3 に設定してみます。
◆Sublime Text 3 http://www.sublimetext.com/3
「基本設定」→「基本設定 - ユーザ」で、以下のように設定します。
|{ | "font_face": "刻明朝 Regular", |}
すると、エディタのフォントが以下のように切り替わり、 「刻明朝 Regular」フォントで編集できる状態になります。
◆刻明朝 Regularでエディタ Sublime Text 3 を使う
フォントが変わるだけで、テキストを編集するときの気分がまったく変わりますね。
昨年WindowsからMacに変えましたけれど、いまはあまり元に戻りたいとは思いません。 そのもっとも大きな理由の一つは「文字」(フォント)の美しさですね。 結城の仕事の性質上、一日の大半を文字を見て過ごすことになるので、 フォントが美しいのは重要な要素なのです。
実はWindows環境で生活していたときも、いろんなフォントをインストールしていました。 なので、秀丸エディタ+LaTeX+Acrobatだけを使っている範囲では、 現在のMac環境とほとんど変わらない生活だったと思います。
でもMacの場合にはそれ以外のソフトを使っているときもフォントが美しい。 これは精神衛生上よいことですね。その他MacBookに移行したときの話は、 以下のページの途中にある「Vimで快適執筆環境」というPDFに詳しく書きました。
◆『再発見の発想法』 http://www.hyuki.com/discover/
Macに移るまではWindowsから離れられないと思っていたのですが、 意外と環境って変えても大丈夫なものなんだなあと実感します。
フォントの美しさ、重要です。
* * *
「マガジン航」での短期集中連載が終了しました。全三回です。
有料メルマガを発行しようという方はもちろんのこと、 文章やコンテンツ作成に関心のある方には興味深い内容になっていると思いますので、 ぜひお読みください(この連載そのものは無料で全文Webで読めます)。
第一回 皮算用編では、 私が「結城メルマガ」を始めようとした経緯と、始めたばかりの頃に起きたことについて書きました。
第二回 転換編では、初期の体験から自分が考えたこと、 そしてそれを踏まえて行った「結城メルマガ」の方針変更を書きました。
第三回 継続編では、現在の私が考えていることを中心に、 メルマガ執筆を継続させることの意味、継続させるために工夫していることなどを書きました。
◆「私と有料メルマガ」第一回「皮算用編」 http://www.dotbook.jp/magazine-k/on_my_paid_email_magazine_01/
◆「私と有料メルマガ」第二回「転換編」 http://www.dotbook.jp/magazine-k/on_my_paid_email_magazine_02/
◆「私と有料メルマガ」第三回「継続編」 http://www.dotbook.jp/magazine-k/on_my_paid_email_magazine_03/
なお「マガジン航」は、文章を書くことや編集することに関心のある人には 興味深い記事がたくさん掲載されていますのでお勧めします。
◆マガジン航 http://www.dotbook.jp/magazine-k/
最近、たくさんのインディーズ作家さんを集めて同人雑誌を毎月刊行している 「月刊群雛 (GunSu)」の編集ノウハウ記事を興味深く読みました。
◆同人雑誌「月刊群雛 (GunSu)」の作り方 - 鷹野 凌 http://www.dotbook.jp/magazine-k/2014/03/31/how_to_make_gunsu/
ここでは、Google+ や Google Drive を駆使して編集者と作家がどのように 雑誌を仕上げていくかが具体的に書かれています。 一回出して終わりではなく、毎月毎月出すというところがすごいです。
複数人の力をうまく協調させてこのような出版活動をしたい人というのは、 たくさんいるんじゃないかなあと思います。
* * *
体調がすぐれずベッドでごろごろしていたとき、 iPhoneでパズルゲームをやっていました。
まずはThrees!というゲーム。
ちょっぴり計算要素も入っているけれど、難しくはありません。
・画面をスワイプして数を動かす。 ・スワイプするごとに画面の外から数字が入ってくる。 ・1と2を重ねると3ができる。 ・3と3を重ねると6ができる。 ・6と6を重ねると12ができる……
という単純なルールなのですが、とてもおもしろくて、やめられなくなります。
有名な「テトリス」と少し似ている感覚があります。 テトリスはリアルタイムに反応しなければいけませんけれど、 このThrees!はじっくり好きなペースで解いていくことができます。
結城はしばらくプレイして「まずい……仕事ができなくなる」と思って、 三回削除しました。
三回削除?
削除して(やめられなくて)復活させ、 削除して(やめられなくて)復活させ、 削除したのです。
◆Threes! http://asherv.com/threes/
なお、このThrees!はあまりにも人気が高いために、 類似ゲームがたくさん出ているらしいです。
先ほどのThrees!が計算的なパズルゲームだとすれば、 Monument Valley は図形的なパズルゲームです。
◆Monument Valley http://bit.ly/mvgame
これはエッシャーの「だまし絵」の世界を歩き回ってゴールを目指すという、 新感覚のゲームです。第1章から第10章まであって、 第10章以外はそれほど難しくありません。
◆Monument Vally(第7章)
三次元の世界を歩き回るのですが、 この世界では、普通の三次元ならあり得ないような動きも可能なのです。 しかもそのすべての世界が美しいアートのように仕上げられています。
以下に動画つきの詳しい紹介記事があります。
◆Monument Valley: あなたの視覚をあざむく、だまし絵パズルゲーム。 - AppBank http://www.appbank.net/2014/04/04/iphone-application/787847.php
* * *
さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は「フロー・ライティング」で「着陸しない強さ」という読み物をお送りします。 また「Q&A - 夢」も合わせてお読みください。
それではどうぞ!
目次
はじめに
フロー・ライティング - 着陸しない強さ
Q&A - 夢
おわりに
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