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Vol.172 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(3)/「お言葉ですから」というキーフレーズ/
2015-07-14 07:00220ptVol.172 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(3)/「お言葉ですから」というキーフレーズ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年7月14日 Vol.172
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
新刊の話。
来月刊行になる、
『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』 http://www.hyuki.com/cr/
の初校がやってきました。 今週は楽しい初校読みになりそうです。
前回の版に比べて、 今回の第3版ではざっくり40ページも増加していました。 ビットコインの話や楕円曲線暗号の話などの加筆があるからでしょう。
暗号というと何だかうさんくさい、 アングラというイメージがあるかもしれませんが、
・情報を特定の人だけに伝えたい ・情報を誰かに書き換えられずに受け取りたい ・自分が対話している相手は確かに本人か知りたい ・約束したことを反故にされたくない
というのは私たちの生活で自然な要求です。 ネットワーク社会で生きる私たちは、 これらの要求を満たすために暗号技術に頼らざるを得ません。
たまたま先日、テレビで映画「サマーウォーズ」の放送がありました。 あの映画でもセキュリティと暗号解読が、 ときに命に関わるものだという場面が随所に出てきます。
技術者以外の人でも、 暗号技術に対するある程度のリテラシーが必要になるでしょう。 今回の私の本が少しでもその役に立つことを願っています。
* * *
セキュリティの話。
情報処理推進機構(IPA)が2015年7月の呼びかけとして、
「その秘密の質問の答えは第三者に推測されてしまうかもしれません」
というフレーズを提示しています。
◆2015年7月の呼びかけ(IPA) https://www.ipa.go.jp/security/txt/2015/07outline.html
さまざまなWebサイトで、パスワードを忘れたときの備えとして、 「秘密の質問と答え」をユーザに設定させています。 でも、この仕組みはたいへん危険なものをはらんでいます。
「秘密の質問」の性質上、 悪意のある人から予測されてしまう答えでは困るのですが、 「母親の旧姓は?」と言われて正直に答えてしまうと、 「佐藤」や「高橋」や「鈴木」になる可能性が高いですよね。 ということは、いくら強いパスワードを設定しても、 「秘密の質問」に安易な解答を書いていたら、 それを悪用されてアカウントが盗まれてしまう可能性がある。
結城は、この「秘密の質問」の答えとして、 ほんとうのことを《書かない》ようにしています。 パスワードと同じ価値を持つわけですから、 パスワードと同様に、ランダムな文字列を使って作成し、 それを「鍵」と同じように大切に管理するようにしています。
それに関連して、 ランダムな文字列を自分で作成しやすいサイトを作ってみました。
◆hash.textfile.org http://hash.textfile.org
このサイトでMessageのところに自分でキーボードを乱打して、 非常に長い文字列を入力します。たとえば、 すると、その文字列をSHA-1やSHA-2などの ハッシュ関数で変換した文字列が表示されます。
たとえば、
「母親の旧姓は?」
という秘密の質問に対して、
「Zr8RPbxDBIgYoQ22a+nqNn5EqjpinS」
を答えにするのです。
なお、セキュリティに関わることなので、 上記サイトのご利用は自己責任でお願いします。
* * *
エディタの話。
結城はふだんテキストエディタとしてVimを使っています。 「カッコ開き」つまり "(" を入力したときに、 自動的に「カッコ閉じ」")" を入力させるようにしたいな、 とTwitterでつぶやいていたら、Leximaというプラグインを紹介してもらいました。
◆Lexima https://github.com/cohama/lexima.vim
デフォルトがよくできていますね。 入力した "(" に対して ")" が自動入力されるのは当たり前だけれど、 開きカッコに続けて手がつい ")" まで打ってしまっても大丈夫。 ちゃんと "()" となってくれます。 つまり、"())" のような不格好なことにはならないのです。
通常のカッコ () だけではなく、{} や "" も自動的に閉じてくれる。 結城はLaTeXを使っていて、数式の範囲である $$ をしょっちゅう使う。 "Vim Lexima LaTeX"で検索して、$もカッコのように自動的に閉じてくれる設定を見つけました。
Leximaを作った作者さんがユーザの質問に答えていたのです。
https://github.com/cohama/lexima.vim/issues/9
こういう質問はたいへんありがたいですね。
開きカッコを入力すると自動的に閉じカッコを入力してくれるというのは、 うまくはまるとたいへん便利なので、 結城もしばらくは嬉々として楽しんでいました。
しかし、しばらく使っているとユーザインタフェースはそれほど単純じゃないんだな、 と気付くようになりました。
というのは、こういうことです。 普通にテキストを頭から入力しているときには、 "{"を入力して"}"が自動的に入るのはとてもいいのだけれど、 文章がすでにあって、そこにカッコを付けたいときには不都合なのですね。
たとえば、
This is Japan.
という文章で "is" の部分を強調したいとき、LaTeXでは
This \textbf{is} Japan.
と書きます。すでに This is Japan. という文章があるとき、 isのところで、
This \textbf{is Japan.
と入力すると、自動的に "}" が入力されてしまうので、
This \textbf{}is Japan.
という悲しいことになってしまう。
テキスト入力やテキスト編集はほとんど反射的に手が動くものだから、 こういう予想外の動きにはリズムを崩されてしまいます。
なかなか難しいものですね。
* * *
フォントの話。
三重大の奥村先生のサイトに「数式フォントの比較」というページがありました。
◆数式フォントの比較 http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texfaq/mathtime/comparison.html
ひとことで「数式フォント」といっても、 いろんな種類があることがよくわかります。 結城はこういうフォントが大好きなので、ついつい見入ってしまいます。
こうやって比べてみると、数学ガールで使っているEuler + Concrete という組み合わせはなかなかユニークであるのがわかります。
どういうところがユニークかというと、 たとえばシグマ(Σ)にセリフ(端の跳ねた部分)がないところや、 ゼロ(0)の上のほうがとがっているところ。 それから、変数名がそもそも斜字体になっていないところなどですね。
結城はこのEulerフォントが好きなのですが、 困ったこともありました。 『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』では、 フォントの違いを利用して意味の違いを表現する局面があるのですが、 Eulerフォントが斜字体でないため、その違いを明確にするのがちょっと難しかったのです。
まあ、細かい話といえば細かい話なんですけれどね。
* * *
多様性の話。
多様性という言葉を見ると、こんな聖書の言葉を思い出します。
そこで、目が手に向かって、 「私はあなたを必要としない」と言うことはできないし、 頭が足に向かって、 「私はあなたを必要としない」と言うこともできません。 それどころか、からだの中で比較的に弱いと見られる器官が、 かえってなくてはならないものなのです。 (第1コリント12章から)
相手を自分の姿と同じにするのがいいわけではありません。 また、相手を自分の価値観で裁くのがいいわけでもありません。 違っていても一つになることはできるし、 違っていなければならないこともある。
身体中が手になったり、 身体中が目になったりするのは恐い。 多様性という言葉を見ると、 私はそんなことを思います。
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は、
「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
の第三回目をお送りします。 先日結城が国際基督教大学高等学校(ICUHS)で行った講演を、 読み物形式にしたものです。 「問題と解答」という概念を軸にして、 数学に限らない「考えること」や「学ぶこと」の意味を問いかけます。
なお、過去の「数学ガールの特別授業」は以下からバックナンバーをたどれます。
◆数学ガールの特別授業 http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
では、どうぞごゆっくりお読みください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業(ICUHS編)(3)
Web連載を本にまとめる工夫 - 本を書く心がけ
夢中になることの大切さ - 仕事の心がけ
「お言葉ですから」というキーフレーズ - 仕事の心がけ
おわりに
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Vol.170 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(2)/学ぶときの心がけ/仕事の心がけ/
2015-06-30 07:00220ptVol.170 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(2)/学ぶときの心がけ/仕事の心がけ/
結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年6月30日 Vol.170
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
新刊の話。
先日刊行をアナウンスした結城の最新刊、
『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』
の話題です。先週末から早くもアマゾンで予約が始まりました。
◆『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797382228/hyuki-22/
ありがたいことに、予約開始早々に、 暗号理論カテゴリでランキング第一位となりました! みなさんの応援に感激です。
原稿の大半は編集部に渡っており、 これから校正作業に入るという状況です。 最後まで気を抜かずがんばりますので、どうぞご期待ください!
* * *
まちがいの話。
先日、国語の教科書に「まちがい」があったため、 出版社が自主的に一万冊を回収するというニュースがありました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150623/k10010124651000.html
小学校一年生の国語の教科書のイラストで、 下書きを消し忘れて、手が三本あるように見えるのだそうです。
教科書がまちがっているのは確かによくないことだし、 出版社としても恥ずかしいことなので回収する気持ちはわかります。 出版社が自主回収することが悪いわけではありません。
でも、その一方でふと思うこともあります。 「人はまちがうものだし、国もまちがうものだ」 ということを伝えるいいチャンスだったのではないかということです。
国語で言葉のまちがいがあったわけではないし、 美術でイラストのまちがいがあったわけではない。 「まちがいましたけど、資源を大切にしたいので、回収しません。 すみませんでした」という解決法ではだめなのかな、と思いました。
まあ、もちろん、まちがいがあるのに「まちがいじゃない」 と抗弁するよりはずっといいと思うのですけれど。
* * *
Twitterの話。
結城はまだ試していないのですが、 Privatter(プライベッター)というサービスに興味があります。
◆Privatter http://privatter.net/
これは、Twitterのフォロー関係を利用して、 「Twitterのフォロワーさんにだけ見られるテキスト・画像」 を公開できるようにするサービスのようです。
「全体公開・ログイン限定公開・フォロワー限定公開・ 相互フォロワー限定公開・リスト限定公開・パスワード限定公開・非公開」 という七段階の公開範囲が設定可能らしいですね。
テキストや画像を限られた人だけに見せたいという気持ちは確かにあるので、 Twitterのフォロー関係や、ログインの有無などを使うというのは名案です。 そのうち試してみたいものです。
ただ、結城は基本的に「限定公開」に依存した公開方法はとらないようにしています。 その理由の一つは「管理が複雑になるから」です。 「これは誰に見せるか」というのを考え始めると、 複雑なことを覚えておかなくちゃいけなくなります。 頭はできるだけクリアにしておきたいので、 限定公開を使うことは少ないのです。
別の理由として「誰かのミスやバグで公開されると困るから」もあります。 限定公開するということは、 そのサービスに依存して何かを守っているわけですよね。 でもどんなサービスも万全ではない。だから、 万一そのサービスが破綻したとしてもひどいことにならないようにしたい。 そういう気持ちが働くのです。
なので、結城としては「公開なら公開」「非公開なら非公開」 という管理方法がいちばんいいバランスかなと思っています。
* * *
素朴な疑問。
アマゾンの電子書籍(Kindle本)って、 Kindleの機械を買わなくてもスマートフォンやタブレットで読めますよね。 つまり、スマートフォンやタブレットに「Kindleアプリ」があるので、 それをインストールすればふつうに読めます。
この事実は、知っている人にとっては「あたりまえ」のことですけれど、 意外と知られていないようです。 つまり、Kindleの機械を買わないと読めないと思っている人は意外に多い。
アマゾンが積極的にこのことを宣伝しないのは、 Kindleの機械を売りたいからなんでしょうかね。
* * *
イノベーションの話。
会社でも社会でも、本当に有効なイノベーションを起こす人って、 多数から嫌われたり疎まれたり非難されるんじゃないだろうか。 そんなことをふと思った。
イノベーションというのは見方を変えると、 「既存の何か」を壊すわけだから、その「既存の何か」 を頼りにして生きている人は必死で抵抗するはずだ。
会社や社会をちょこっと改善するならみんなニコニコしてくれるかもしれないが、 本気で会社や社会を変えようとする人は多数の抵抗にあう、と想像できる。 みんなから嫌われているから正義の人だとはいえないが、 みんなから嫌われているから悪い人だとも言えない。
大きな改革を行なう人と、 単に破壊だけして終わる人を見分けるのはかなり難しいはずだ。 改革が失敗したらきっと「ほら、やっぱりね」と言われるだろうが、 そう言っている人の反対がなかったら成功していたかもしれない。
紙、印刷機、電話、自動車、インターネット。 何を想像してもいいけど、きっとそれらが世に出始めるとき、 大きな抵抗があったはずだ。
新しいものが常に善とは限らない。 言いたいのは、あとから考えるとあたりまえのものでも、 変化の最中には抵抗があるだろうということ。
イノベーションは良いものとみなされることが多いが、 総論賛成各論反対にあうことも多いはずだ。 多くの人は、そんなに変化を求めていない。
会社や組織で「イノベーションを求める」を掲げるところは少なくないが、 ほんとうにイノベーションを求めているのだろうか、と思うことがある。
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は、
「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
の第二回目をお送りします。 先日結城が国際基督教大学高等学校(ICUHS)で行った講演を、 読み物形式にしたものです。 「問題と解答」という概念を軸にして、 数学に限らない「考えること」や「学ぶこと」の意味を問いかけます。
では、どうぞごゆっくりお読みください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業(ICUHS編)(2)
《問いかけ》について - 学ぶときの心がけ
《問いかけ》を言葉にする意味 - 仕事の心がけ
おわりに
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Vol.168 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(1)/どんなふうに生きていこうか/いつもと違う選択をする週/
2015-06-16 07:00220ptVol.168 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(1)/どんなふうに生きていこうか/いつもと違う選択をする週/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年6月16日 Vol.168
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
講演会の話。
先週の結城メルマガで「国際基督教大学高等学校(ICUHS)」 で講演会をした話をちょっと紹介しました。
今週から、そのときの講演を文章に起こして、 結城メルマガで連載いたします。題して、
「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
です。数回に分けてお届けすることになります。 どうぞお楽しみください。
なお、過去の「数学ガールの特別授業」は、 以下のページにまとめてあります。
◆数学ガールの特別授業 http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
* * *
未来大の話。
講演会といえば、 結城は三年前に「公立はこだて未来大学」で講演会をしました。
ちょうど先日、以下のビデオを教えていただいたのでご紹介。 公立はこだて未来大学のバーチャルツアーです。 ご存じない方はぜひご覧ください。 まるでSF映画みたいなキャンパスですね。
◆公立はこだて未来大学バーチャルツアー https://www.youtube.com/watch?v=FIVITZaZen8
ここでの講演会は、
◆『数学ガールの誕生』 http://www.hyuki.com/girl/birth.html
という書籍になりました。
* * *
組み合わせの話。
結城は見ていないのですが、テレビで、 「四桁の暗証番号の組み合わせは十万通り以上ある」 なんてことを言っていたそうだ。
もちろんこれは計算違い。 暗証番号の一桁が0,1,2,3,4,5,6,7,8,9の十通りあるとすると、 四桁なら、
10×10×10×10 = 10000
とちょうど一万通りになる。十万通りは多すぎます。 掛け算の理屈がわからない人でも、
0001, 0002, 0003, 0004, ...
と順番に暗証番号を作っていけば、 最初の0001から9999までで九千九百九十九通りあって、 もう一つ 0000 があるので全部で一万通り作れることがわかるでしょう。
と、ここまで考えて、簡単な算数の問題を作ってみました。
【問題】 ある星の暗証番号は数字四桁で「104976通り」 の組み合わせがあるという。 この星の数字一桁は何通りか。
つまり、もとのニュースを誤りだというのではなく、 もとのニュースの説明を「正しい」と仮定した場合、 数字一桁は十通り以上あるはず。それは何通りか。 と、そういう問題ですね。
答えは目次の前に!
* * *
Web連載の話。
先日、結城がCakesで行っているWeb連載「数学ガールの秘密ノート」が、 第120回を迎えました。みなさんの応援を感謝します! 連載が10回を迎えるたびに数週間のお休みをいただいており、 次回の更新は2015年の7月3日になります。
連載が10回を迎えるたびにお休みをいただいているのは、 頭のリフレッシュのためもありますし、次の10回のテーマ探しの意味もあります。 このWeb連載は10回分で一冊の単行本にしていく予定なので、 だいたい10回ごとにまとまるように構成しているのです。
先日終了した第111回〜第120回までは「行列が描くもの」というテーマでした。 高校から行列が外されるということもあって、どうかなあと思っていましたが、 想像よりも反響が多かったので、やってよかったと思いました。
次の10回のテーマはいくつか考えているのですが、 まだ「これ」とは決まっていません。 もしなにかよいアイディアがあったら教えてくださいね。
* * *
書籍刊行の話。
そのWeb連載は毎年二冊のペースで書籍化しています。 これまでに五冊書籍化しており、今後の予定と題材は次の通りです。
2015年秋「ベクトル」 2016年春「場合の数」 2016年秋「指数と対数」 2017年春「踊る曲線」 2017年秋「不等式」 2018年春「ビットとパターン」 2018年秋「行列が描くもの」
と書き上げていつも思うのですけれど、 Web連載のペースが書籍刊行のペースよりも早いために、 だんだんストックが多くなってしまっていますね。 それに「来年のことをいえば鬼が笑う」というのに、 「2018年秋」なんて話をしていていいのでしょうか。 ともあれ、一冊一冊ていねいに作っていきますよ〜!
本編(数学ガール6)もがんばって書いていますが、 「数学ガールの秘密ノート」シリーズもよろしくお願いします!
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めます。
今回の結城メルマガは「数学ガールの特別授業」シリーズの第三弾として、
「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
の第一回目をお送りします。 先日結城が国際基督教大学高等学校(ICUHS)で行った講演を、 読み物形式にしたものです。 「問題と解答」という概念を軸にして、 数学に限らない「考えること」や「学ぶこと」の意味を問いかけます。
どうぞ、ゆっくりお楽しみください!
あ、そうだ。先ほどのクイズの答え。
【問題】 ある星の暗証番号は数字四桁で「104976通り」 の組み合わせがあるという。 この星の数字一桁は何通りか。
【解答】 18通り。 18×18×18×18 = 104976通り
もともと、10通りより多いのはすぐ分かりますし、 あとは順番に11, 12, 13 ,... で試せばいいことです。
直接計算したければ、4乗して104976になる数を求めるので、 電卓を使って、
104967 √ √
と入力すれば求められますし、 Googleの検索窓に、
sqrt(sqrt(104976))
と入力しても求められます。
ある方は、104976は偶数で3の倍数だから、 結局6の倍数だけ試せばいいと考えて、 すばやく18にたどり着いたようです。
ちょっとした問題でも、いろんな解き方ができるものですね。
では、結城メルマガをどうぞ!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業(ICUHS編)(1)
他人を馬鹿にする心理
どんなふうに生きていこうか - 仕事の心がけ
五つのパンと二ひきの魚
いつもと違う選択をする週 - 仕事の心がけ
おわりに
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Vol.143 結城浩/数学ガールの特別授業(教師編)/学びについて/Q&A - 本との付き合い方/
2014-12-23 07:00220ptVol.143 結城浩/数学ガールの特別授業(教師編)/学びについて/Q&A - 本との付き合い方/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年12月23日 Vol.143
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
まずは嬉しいニュース。
この「結城メルマガ」が、 まぐまぐ大賞2014の有料部門(恋愛・心理)に入賞しました!
◆まぐまぐ大賞2014有料部門(恋愛・心理) http://www.mag2.com/events/mag2year/2014/pay/ren.html
恥ずかしながら「まぐまぐ大賞2014」を開催しているということ、 結城は気付いておらず、運営さんから入賞の連絡をいただいて、 はじめて知りました。
ご推薦くださったみなさま、ありがとうございます!
* * *
英語版「数学ガールの秘密ノート」の話。
"Math Girls Talk About..."シリーズを翻訳出版している Bento BooksのWebサイトでは、PDFでサンプルチャプターを読むことができます。 つい先日、第三巻の"Trigonometry"(三角関数) のサンプルチャプターが公開されました。 ぜひご覧ください。もちろん無料、登録不要で読むことができます。
◆"Math Girls Talk About..." (Bento Books) http://bentobooks.com/math-girls-talk-about/
アマゾンにもページはできていますが、12月22日現在、 まだ購入可能な状態にはなっていないようです。
◆"Math Girls Talk About Trigonometry" (アマゾン) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1939326257/hyuki-22/
* * *
仕事したくないときの話。
結城はたいてい嬉々として文章を書く仕事をしているのですが、 そんな私でも「何となく仕事がしたくない」ときがあります。 そういうときに口ずさむお気に入りのフレーズは、
「さて、だらだら仕事しよう」
です。「だらだら仕事する」というのは良くないイメージがありますけど、 なぜか、こんなふうに口で言うと、仕事に取りかかりやすいのです。
結城が想像するに「しっかり仕事しよう」という表現は、 自分が元気に満ちているときにはいいけれど、 何となく仕事がしたくないときには向かないのかもしれません。
「だらだら仕事しよう」だと、何だかやってもやらなくてもいいから、 気楽に始められるみたいです。そして実際仕事に取りかかってしまえば、 いつものように楽しく執筆が進む。
「だらだら仕事しよう」という表現によって、 自分の「何となく仕事したくない」という無意識クンを、 うまく出し抜くことができるのかもしれませんね。
* * *
もう少し真面目に話してみよう。
本を書いていると、こんな気分になることがある。
大きな波が自分に押し寄せて来る。 ゆっくりゆっくりやって来る。
それを受け止めるのは自分一人だ。 自分は両手を上げて、大きな波に対峙している。
私は、その波を防ごうとしているのだ。 その波を防ぎ、押し返そうとしているのだ。
……そういう気分になることがある。
でも、実は、それは単なる錯覚である。
大きな波が押し寄せるように感じるのは、 実は睡眠不足が理由かもしれない。 押し寄せてきているのは波ではなく、 ただの低気圧なのではないか。
大きな波を一人で防ごうとしているなんて、 そんなふうに劇的に考えるもんじゃない。
自分の仕事を必要以上にドラマティックにするな。
淡々と今日の作業をしよう。
仕事は、呼吸である。
劇的な呼吸など、ない。
* * *
さて。
本の紹介で思うこと。
結城は毎日のように自分の本の書名で検索をしています。 いわゆる「エゴサーチ」ですね。
いろんな方が、いろんな表現で結城の本を紹介してくださっているのを見ると、 とてもうれしくなります。
結城は自分の本を書くときに、
「教師や先輩や親が、生徒や後輩や子供に紹介したくなる本」
を目標の一つにしているようです (「ようです」と書いたのはそれほど意識してねらっているわけではなく、 自然とそうなっていると感じるからです)。
「紹介したくなる本」にはいくつかの意味が含まれています。
・内容的に良い本 ・形式的に良い本 ・当たり前のことを紹介者がわざわざ伝えなくても、 これを読んでもらえれば伝わるという本 (「まずはこれを読んでごらん」と言える本)
それに加えて「紹介することで世界が広がる本」という意味もありますね。 ここでいう「世界」というのは、 紹介する人と紹介される人の間にある世界のことです。
つまり、紹介することで、人間関係によい刺激が生まれ、 相互に深い知的対話が生まれるような本。 そのような意味で、
「紹介したくなる本」
を書きたいと思っているのです。
望みすぎかしら?
* * *
次は、インタビューの話。
先日結城は、「千葉県高等学校教育研究会数学部会」さんからインタビューを受けました。 千葉県の高校数学の先生ですね。
その結果が「部誌」という形にまとめられ、 ネットでも読めるようになりましたのでご紹介いたします。
結城が話した内容を担当の先生がまとめて文章にしてくださったものです。 この結城メルマガをお読みの方には既知の内容もあると思いますが、 よろしければお読みいただけると感謝です。
◆数学部会誌「α−ω」 - 千葉県高等学校教育研究会数学部会(第52号) http://math.sakura.ne.jp/index.php?key=joh18kzt3-27
* * *
「因果関係の錯誤」について。
結城は「因果関係の錯誤」を見つけるのが好きです。 因果関係の錯誤というのは、
AとBが同時に起きている
ことから、
AがBの原因である
と決めつけることです。 でも、もしかしたら「AはBの結果」なのかもしれないし、 「AもBも、全く別のCの結果」かもしれませんよね。
例を挙げましょう。
満員電車の中で、マスクを着けずに咳をしている人がいます。 咳をするならマスクを着けなくちゃ。 「咳をする人に限って、マナー悪い!」 ……でも、それは「因果関係の錯誤」かも。 「咳をする人に限ってマナー悪い」のではなく、 「マスクを着けていないから咳が出る」のかもしれませんね。
別の例。 「カフェにいる人を観察していると、 太っている人ほど、甘ーいスイーツを大量に食べてるみたい。 太っている人は甘いもの好きなんだね!」 ……それは「因果関係の錯誤」のような。 「太っている人ならば甘いもの好き」なのではなく、 「甘いものが好きだから太っている」のではないでしょうか。
雑談レベルの話ならば問題はありませんが、 自分の意志決定や重要な判断のときに 「因果関係の錯誤」をしていないかどうかは要注意ですね。
つまり「○○が足りないのが●●の原因だ」と判断して、 ○○を増やすという行動を行う場合、 本当に原因と結果(因果関係)を正しく把握しているかは、 大事なポイントになるでしょう。
* * *
『数学文章作法 推敲編』の話。
おかげさまで、『数学文章作法 推敲編』は、 多くの方に楽しんでいただけているようです。
ある日のランキングではアマゾンの「ちくま学芸文庫」で、 第1位、第4位、第7位に「数学文章作法」シリーズが入っておりました。 みなさんの応援に感謝します!
◆『数学文章作法 推敲編』 http://mw2.textfile.org/
「数学文章作法」シリーズはまだ基礎編と推敲編の二冊しか出ていないのに、 どうして三つにランキング入りするかと言いますと、 基礎編は文庫版とKindle版の二種類があるからですね。
「数学文章作法」シリーズは、 執筆途中からこの「結城メルマガ」で連載をしてきました。 いわばこの結城メルマガの読者さんに育てていただいたようなシリーズですね。 このようにして多くの方にお届けできるようになったこと、 本当にうれしく思っています。
また、今年結城は2014年度の数学会出版賞をいただきましたが、 その受賞理由の中には『数学ガール』だけではなく、 『数学文章作法』についても触れられていました。 多くの方からの支援ならびに評価を感謝します!
◆2014年度日本数学会賞出版賞(日本数学会) http://mathsoc.jp/publicity/pubprize2014.html
◆2014年度日本数学会出版賞受賞者のことば(「数学通信」第19巻第2号) http://mathsoc.jp/publication/tushin/index19-2.html
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は「数学ガールの特別授業(教師編)」の第6回をお届けします。 数学の先生向けに結城が行った講演会の様子です。 今回で講演はいよいよ最終回。 最後にクイズが出ますので、考えてみてくださいね。
それから「学びについて思うこと」という読み物。
「Q&A」のコーナーでは、「本との付き合い方」についてお答えします。
では、お読みください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業(教師編)(6)
学びについて思うこと
Q&A - 本との付き合い方について知りたい
おわりに
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Vol.140 結城浩/数学ガールの特別授業(5)/YukiTaskで自分の「文化」を知る/学校で学ぶということ/
2014-12-02 07:00220ptVol.140 結城浩/数学ガールの特別授業(5)/YukiTaskで自分の「文化」を知る/学校で学ぶということ/
結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年12月2日 Vol.140
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
早いもので今年も12月ですね。 今年も一年、みなさんに大変お世話になりました。 心から感謝いたします。
……というのは社交辞令ではありません。 結城メルマガをご購読くださっている方は、 結城の生活を大きく支えてくださっているからです。 フリーランスの収入は不定期になりがちなものです。 その中で、有料メルマガは多少の上下はあるものの、 毎月コンスタントに入ってくる貴重な定期収入なのです。 深く感謝いたします。
* * *
クリスマス限定ですけれど、 今年一年の「よかったこと」を探す企画をやっています。
◆よかった探しリース http://www.hyuki.com/ring/
参加者は少しずつ増えて、リースも少し大きくなりました。 「よかった探しリース」にあなたも参加しませんか?
* * *
「ロリポタッチ」という、 すごく単純なブログシステムが話題になっていたので、 試しに使っています。
iPhoneから更新することができ、 文章と画像を配置することができるブログシステム。 凝ったことは何もできませんから、 もどかしいこともあるのですが、 割り切れば楽ですね。
つい文章が中心になってしまう私には、 かえって新鮮かも。 綺麗な画像は unsplash.com のものを使い、 聖書の言葉を中心に更新しています。
◆たいせつな言葉 http://hyuki.lolipotouch.jp
* * *
すごく久しぶりにCodeIQの出題アイディアが浮かんだので、 「サルベジオン問題」として出題しています。
◆サルベジオン問題 - CodeIQ https://codeiq.jp/ace/yuki_hiroshi/q1215
問題を公開してから三日で88人の挑戦者になりました。 みなさんに感謝です。
いつものように、プログラミング言語によらないアルゴリズムの問題です。 中にはプログラミングをほとんどせずに「電卓」で解いた方もいるとか。 なかなかすごい人もいらっしゃいますね。
もしあなたがプログラミングにご興味があるなら、 ちょっと問題を「チラ見」してみてくださいね。
最高点を取った人の中から抽選で10名さまに、 『数学文章作法 推敲編』がプレゼントされます。
* * *
先日、会計の作業をしていました。11月も終わりになってくると、 今年度の入金総額がほぼ見えてくるので、やりくりをいろいろ考える。 先日は暖房器具が壊れたからそれを振り込んで……と、 コンピュータのキーボードをパタパタ叩いていました。
すると奥さんが私の後ろから 「あなたって本当にえらいわねえ」と頭をなでてくれました。
いくつになっても、ほめられるって嬉しいものですね!
自分の子供も奥さんもたくさんほめようと心に思いました。
* * *
さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は、「数学ガールの特別授業(教師編)」の(5)をお届けします。 「感動を生む発見」についての話題になります。
それから「仕事の心がけ」のコーナーは、 YukiTask(結城タスク)で自分の「文化」を知るというお話を。
また「学校で学ぶということ」という読み物もお送りします。
どうぞ、お楽しみください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業(教師編)(5)
YukiTaskで自分の「文化」を知る - 仕事の心がけ
学校で学ぶということ
おわりに
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Vol.138 結城浩/数学ガールの特別授業(教師編)/テキストエディタの良さ/
2014-11-18 07:00220ptVol.138 結城浩/数学ガールの特別授業(教師編)/テキストエディタの良さ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年11月18日 Vol.138
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
夜、十時ぐらいになると、考え始める。
「もうひと仕事しようかな。それとも、寝ようかな」
特にまだ眠くはないし、書きたいプログラムも少しある。 本も読みたいな。Webの整備も楽しいし、メールの返事でも書こうか……
やりたいことがいつもたくさんあるのは幸せなこと。 でも、ここ数週間はできるだけ眠ることを優先させている。
睡眠優先。
睡眠優先というのは、早く寝て明日に備えるということである。 睡眠をしっかりとった次の日は気力も十分あるし、 頭もよく回転する。ふだん気付かないような細かなことにも気がつくようになるし、 感情も安定する。
つまり、「睡眠優先で時間の品質が上がる」ともいえる。
睡眠優先という考え方はなかなかいいな、と思っている。 一日の満足度が高くなるので、自信にも繋がる。 また「もっと作業したいという気持ちを自分で制御して眠れた」ということで、 自己コントロール感が高まる。 この感覚は無意識に「自分はうまくいってる」というメッセージを送る役に立つ。
睡眠優先で、生活の好循環が始まるともいえる。
睡眠優先と似ているのが食事の制御である。 食べ過ぎないことが大事だ。
あれ?
何のことはない。
「早寝早起き腹八分目」ということわざ通りじゃないか。
* * *
「数学ガール」シリーズを翻訳・出版しているBento Booksさんが、 UGA Math Tournamentのツイートをしていました。 University of Georgiaで開催している高校生向けの 「数学の問題を解くコンクール」のようですね。
◆UGA Math Tournament http://www.math.uga.edu/mathmeet/
Bento Booksさんのツイートには、Winnerとなった子の記念写真が映っていました。 とてもうれしそう!
◆Congratulations to the UGA Math Tournament winners! https://twitter.com/BentoBooks/status/531664240503828480
また、問題文中に"Tetra and Yuri"(テトラちゃんとユーリ)が登場したようです! 楽しいですね。
◆問題に登場したTetra and Yuri https://twitter.com/BentoBooks/status/531990931184967680
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「よかった探しリース」について。
結城は毎年クリスマスシーズンの企画として、 「よかった探しリース」を開催しています。 これは、今年一年の「よかったこと」を探しましょうという企画です。 自分の個人的な「よかったこと」でかまわないので、 それをWebページに書いて、みんなでリース状に(輪のように)リンクするのです。
人が参加するためにいちいちリンクを張り替えるのはたいへんなので、 その仕組みは結城が提供しています。 参加者は、登録を済ませたときに表示されるIDをリンクに埋め込むだけ。 それで自動的にリースに加わることになります。
もしよろしければ、あなたもご参加しませんか?
◆よかった探しリース http://www.hyuki.com/ring/
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コンピュータのバックアップ、どうしてますか。
結城はメインでMacBook Airを使っています。
外付けのUSBハードディスクを二台持っていて、 Mac付属のTimeMachineというバックアップツールでまるごとバックアップしています。
それから、TimeMachineとは別に、プロジェクト単位でファイルzipにまとめ、 それをDropboxでクラウドに保存しています。
また、それとも別に、いくつかのプロジェクトはバージョン管理システムGitを使って、 リモートサーバ上でバージョン管理をしています。
つまり、重要なプロジェクトに関しては別の場所に、 三重で管理していることになりますね。
・1. ローカルなUSB HDD ・2. Dropboxサーバ ・3. Gitを導入しているサーバ
最初の1.は安心感があります。たとえMacBookがいきなり壊れても、 ネットが繋がらなくても生き残っているまるごとバックアップですから。
次の2.はプロジェクト単位でのバックアップですから、 そのプロジェクトは少なくとも確実に生き残っていると確信できます。
最後の3.はバージョン履歴が残っていますから、 過去の差分を取ったり、どこでどんな変更を行ったかまで把握できます。
しかしながら、おもしろいもので、 これだけ念入りにバックアップを取っていても(取っていると?)、 それを必要とするトラブルはめったに起きないのですよね……
* * *
『数学文章作法 基礎編』が重版となりました!
昨年2013年に刊行されたばかりの本書ですが、今回で第6刷(!)になります。 みなさんの応援に心から感謝します。
来月12月に続編の『数学文章作法 推敲編』が刊行されるので、 筑摩書房さんは在庫を見据えてこのタイミングで増刷したのだろうと思います。 いずれにせよ、ありがたいことです。
本を書いている身としては、増刷というのは本当にうれしいものです。 直接的に生活を支えてくれる出来事でありますし、 また読者さんが応援してくださっているのだなあと感謝するときでもあるからです。
増刷はとてもうれしいことですから、 自分以外の書き手さんのことでも「増刷」という文字を見るとうれしくなりますね。
◆『数学文章作法 基礎編』 http://mw1.textfile.org/
そしてその『数学文章作法 推敲編』ですが、先日三校のゲラの最終確認を終え、 責了(すべての責任を果たして完了)となりました。 あとは結城は書籍ができたタイミングで、出版社でサイン本を作りにいくだけです。
来月12月12日の刊行がとても楽しみです!
◆『数学文章作法 推敲編』 http://mw2.textfile.org/
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でんでんランディングページの話。
先日この結城メルマガでも紹介した、 書籍のランディングページを作るためのテンプレート「でんでんランディングページ」 ですが、次第に利用例が増えてきたようです。 以下のページからリンクが張ってありますね。
◆でんでんランディングページ利用事例 https://github.com/denshoch/LandingPages/wiki/Examples
みんな、でんでんランディングページのNarrativeというテーマを使っていますから、 レイアウトや構成要素は似たり寄ったりなのですが、 色遣いや言葉の使い方で印象がずいぶん違いますね。 とても興味深くながめています。
* * *
プレジデントファミリーに記事を書いた話。
プレジデントファミリーは、教育に関心のある親御さんはよく知っている雑誌です。 季刊誌なのかしら。 来月2014年12月5日に刊行される号では「算数特集」が組まれますが、 そこに記事を書きました。
読書は好きだけれど算数はちょっと……という小学生向けに書いた読み物です。
中学生ならまだしも、 小学生向けの文章というのは勝手がわからず頭をひねりましたが、 いつもの原則《読者のことを考える》を思い出してするすると解決。 小学生への「お手紙」を書くことにしました!
もしも書店などで見かけましたらぜひお読みください。
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先週は結城のiPhone 5をiPhone 6にした話をしました。 その後、妻のiPhone 5もiPhone 6に機種変更しました。
同じ手順なので、前回書いた自分のブログが役に立つぜ! と、いそいそとバックアップ&復元を実行しました。
◆iPhone 5からiPhone 6にバージョンアップ http://blog.textfile.org/20141105/iphone/
「簡単簡単。ふっふっふ……」と思っていたら、 妻のGmailの2013年時点以降のすべてが、 復元されていないことに気付きました。
え?
・SMS/MMSメッセージは復元されている。 ・アプリも復元されている。 ・予定表も復元されている。
それなのにGmailが復元されていない。 全部復元されていないならまだしも、2013年までの分は復元されている。 うーん……これは難しい謎です。
まちがって古いバックアップを使って復元してしまったのだ、 と最初は思いました。なぜならGmailが2013年に戻っていたから。 でも、それでは他のものがすべて正しく復元されている理由がわかりません。
「iPhone 復元 メール」などで検索して調べてもなかなか解決は見つかりません。
結城「Gmail、少し時代をさかのぼってもいい?」 家内「どういう意味?」 結城「2013年より後のメールなくなってもいい?」 家内「だめ」 結城「ですよねえ!」
iPhone 6の設定をじっくり見返してみるとExchangeと書かれている。 「iPhone 復元 Exchange」で検索してみると、 以下の記事が見つかりました。2013年だ!
◆iPhoneの機種変で「メールを取得できません」エラー http://mymemopad.blogspot.jp/2013/04/iphone.html
結論は、
・GmailではExchange対応をしなくなっていた(2013年)。 ・でも、すでに設定していた機種は使える。 ・機種変更すると新たには使えなくなる。
ということでした。これで時代が2013年に戻った理由も判明。
Exchangeの設定はやめて、 再度Gmailのアカウントで設定し直したらあっさりとメールが復元できました (復元といっても、サーバにあるメールを見ているわけですが)。
これでようやく妻のiPhoneも6になりました。 めでたし、めでたし。
それにしても、iPhoneの機種変更(バックアップと復元)をやっていると、 けっこう大変です。いわゆる普通のユーザさんは、このプロセスをどうしのいでいるのだろう? と考えたけれど、そういう人はオンラインショップでは買わないのかもしれませんね。
そういえば、オンラインショップで買うときには 「自分でアクティベーションなどの設定をすることになりますけど、いいですね?」 という確認に「はい」と答える欄があったような気がします。
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さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は、Vol.132から始まった新連載「数学ガールの特別授業(教師編)」の第四回目です。 結城が先日新潟で行った講演会を読み物にし、 講演スライドを交えたPDFの形でお送りします。 今回も、教えることや文章を書く人には興味のある内容になっています!
それから「Q&A」のコーナーでは、 使っているエディタのことをお話しします。
そして、先週お話しした「朝一番の自動書記」について、 その(2)をお届けします。 ちょっと不思議な現象が起きているという話題。
どうぞ、お楽しみください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業(教師編)(4)
Q&A - 使っているエディタの良さを教えて
朝一番の自動書記(2) - 文章を書く心がけ
おわりに
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Vol.136 結城浩/数学ガールの特別授業(教師編)/毎日書くということ/
2014-11-04 07:00220ptVol.136 結城浩/数学ガールの特別授業(教師編)/毎日書くということ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年11月4日 Vol.136
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
突然ですが、今週iPhone 6が届くはずなんです。楽しみ!
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新刊の話。
『数学文章作法 推敲編』がアマゾンで予約可能になり、 ありがたいことにたくさんの人に予約していただいているようです。 先日は、ちくま学芸文庫のランキングで、
第1位『数学文章作法 基礎編』Kindle版 第2位『数学文章作法 推敲編』文庫版 第5位『数学文章作法 基礎編』文庫版
となっていました。たくさんの方々の応援に心から感謝いたします。 『数学文章作法 推敲編』の刊行は2014年12月12日の予定です。
◆『数学文章作法 推敲編』 http://mw2.textfile.org/
再校ゲラはもう編集部に返送したので、 結城の作業はほとんど終了です。あとは刊行を待つばかり……
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言葉の話。
言葉遊びが好きです。
大げさなものでなくてもいいんです。 たとえばこんな一言でも十分たのしい。
秋の朝の雨。
「あきのあさのあめ」って「あ」の音が重なりますよね。 こんな言葉を(雨が実際に降っている秋の朝に)思いついたりすると、 何だか楽しくなります。
そして、もう少し続けたくなる。「あ」の音を重ねながら。
秋の朝の雨。明日もあなたに会いたいな。
美味しいものもいいし、動画も楽しい。 でもこんなささやかな言葉遊びでも楽しくなれると思いませんか。
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ブログの話。
技術的なTipsの記事でブログを更新することがある。 たとえば、先日MacをYosemiteにバージョンアップしたときの記事を書いた。
◆MacBook AirをYosemiteにバージョンアップ http://blog.textfile.org/20141019/yosemite/
内容はそれほど大したことはなくて、 自分がバージョンアップで行った手順を書き、注意したことをメモしておくくらい。 それから、自分が参考にしたWebページへのリンク。 その程度である。
こういう記事を書くのはそれほど時間は掛からないから、 スキマ時間にちゃっと書いてしまう。
一つには「社会への恩返し」の意味もある。 自分が作業するときに他の誰かのWebページを読んで助かったから、 それを他の方へお伝えする、お裾分けするという感覚である。
もう一つは「自分自身の備忘録」という意味もある。 技術的なTipsは、もう一度同じことを自分で体験する際の重要な情報になるからだ。 MacBook AirをYosemiteにバージョンアップすることはないだろうけれど、 「/usr/localに大量のファイルがあると時間が掛かる」という情報は、 将来役に立つかもしれない。 テキストエディタVimでコマンドを作る方法などは今後も役立つかもしれない。
◆文字コードをutf-8にし、改行コードをunixにするVimのコマンドを作る http://blog.textfile.org/20141101/setuu/
おもしろいもので、自分用の備忘録のつもりで書いたのに、 書いたことによって記憶が定着したために覚えてしまうという効果もある。
それから、技術Tipsのブログ記事を書くのはコンパクトで読みやすい説明文を 書く練習にもなる。特に用語の使い方。自分が文章を読んで理解するのと、 人が読んで理解できるような文章を書くことはずいぶん違う。 短い文章でも「他人が読む」と考えると「読みやすい文章を書かなきゃ」 と自然に考える。それが文章の練習にいいのである。
先日作った「結城のアイコン用のフォント」の作り方も、 自分の備忘録として書いた。 人に読ませるためにまとめると、結局自分のためになる。
◆自分用のWebフォントでアイコンを作る http://blog.textfile.org/20141031/font/
技術Tipsのブログは、 ずっと「結城浩のはてな日記」に書いてきたが、 最近は「結城浩のブログ」の方に軸足を移してきている。
◆結城浩のはてな日記 http://d.hatena.ne.jp/hyuki
◆結城浩のブログ http://blog.textfile.org/
* * *
数の話。
「オーダーの感覚」というのは重要だと思う。
「オーダーの感覚」というのは、ざっくりいえば大きな数を扱うときの感覚のこと。 たとえば「93万4152円」と言われたときに「おおよそ100万円」だな、 と思うようなもの。「100万円のオーダー」などと言う。
「値段はいくらくらい?」と聞かれたとき、 「93万4152円」までわからないと答えられないとしたら困るときがある。 気が短い人は「だいたい1万円? 10万円? 100万円?」などと畳みかけたりする。
作業量を見積もるときでも似たような話がある。 「期間はどのくらい?」と聞いたとき、 「いやあ、やってみないとわからないんで」という答えでは困ってしまう。 「1日でできるのか、1週間なのか、1ヶ月なのか、1年なのか?」 と再度聞きたくなることもあるだろう。
先日「公立校の35人学級を40人学級に戻すべき」というニュースが話題になっていた。 「人件費の国負担分を年間約86億円削減できる」という話。
◆35人学級の見直し要請 15年度予算で財務省 文科省反発、調整難航 http://www.47news.jp/47topics/e/258601.php
そんな中、木村先生(@iwaokimura)の「億は 10^8, 兆は 10^12 です」 という以下のツイートを見かけた。
https://twitter.com/iwaokimura/status/525124003972014080
これを読んで、結城も考えた。 「国の歳出は95兆8823億円」で、削減できるのが「約86億円」とすると、 それはいったいどれほどの効果があるのか。
◆国の収入と支出の内訳は?(財務省) http://www.mof.go.jp/gallery/201305.htm
約95兆をざっくりと100兆のオーダーとしてみる。 そして、約86億もざっくりと100億のオーダーとしてみる。 すると、100兆のうち100億削減。1万分の1が削減できる。
たとえば、年間の支出が400万円の家庭にたとえれば、 約1万分の1の削減というと、400円に相当することになる。
「約86億円削減」というのと「支出400万円の家庭の400円相当」というのでは、 ずいぶん印象が違うなあ。
* * *
note(ノート)の話。
先月の話になりますが、note(ノート)に「サポート機能」が実装されました。 これはノートの読者がクリエイターを金銭的にサポートする機能です。
◆クリエイターを金銭的に支援できる「サポート機能」が実装されました。 https://note.mu/hyuki/n/n1d656ae8dcb6
以前から結城は「投げ銭」スタイルで公開するノートを書いてきました (全部ではありません)。 「投げ銭」スタイルというのは、ノート全文は公開しておいて、 気に入った方が「購入」するというスタイルのことです。
今回公式に導入された「サポート機能」は、 実質上すべてのノートを「投げ銭」スタイルにできる機能ともいえます。 なにしろ、設定でオンにしておけば、すべてのノートの最下部に 「クリエイターをサポート」というボタンが表示されるのですから。 ボタンを押せば、クリエイターに送金する金額を選ぶダイアログが表示されます。
当初からnote(ノート)は、ネットでのお金のやりとりが簡単にできるようにし、 クリエイターと読者とを直接結びつける機能に積極的に取り組んでいます。 今回の「サポート機能」もその方向に沿ったものになりますね。
Webでは作品を公開したり閲覧したりすることが非常に低コストでできます。 これは個人のクリエイターが力を発揮する可能性を大いに高めてくれます。 しかし、どうしてもネックとなるのはお金のやりとりです。
これから売り出そうとする人はじっくり作品を作りたい。 しかし作品が売れていないから別の仕事でお金を稼がなくてはいけない。 そのために作品に取り組む時間が取れない。 note(ノート)での「サポート機能」はその助けになるかしら。
皮算用してみると、なかなか大変であることがわかりますが、 それでも、こういうチャネルがあるのはいいことだと思います。
* * *
iPhoneアプリの話。
PhotoMathというおもしろいアプリがニュースになっていました。 iPhoneにPhotoMathをインストールし、カメラで「数式」を撮影すると、 計算をしたり方程式を解いたりするというものです。
実際にやってみました。 撮影というか、カメラをかざすだけで簡単な計算をしてくれます。
◆PhotoMathで計算をする
一次方程式ならすぐに解いてしまうようです。
◆PhotoMathで方程式を解く
計算も方程式も、単に結果を出すだけではなく、 丁寧な式変形もしてくれるので、 (範囲は非常に限られていますが)自学自習にも使えるかもしれません。
いますぐこのPhotoMathによって世界が変わるということはないでしょうけれど、 技術によって機械ができることはちゃくちゃくと増えていきますね。 PhotoMathの背後ではきっと画像認識の技術と数式処理の技術が使われているはずで、 通信を使うならさらに進化させることもできるはず。何だか楽しみです。
PhotoMath公式サイトはこちらにあります。
◆PhotoMath.net https://photomath.net
こちらには動画もあります。
◆動画:カメラで撮った数式を解くアプリ PhotoMath リリース。途中経過も表示 http://japanese.engadget.com/2014/10/21/photomath/
* * *
とってもうれしいお知らせ。
刊行されたばかりの『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』を使って、 実際に数学の授業を行った先生がいらっしゃいます。
その先生から授業の報告レポートをいただきました。 いただいたのは、
・授業の様子 ・授業で配布したプリント ・生徒さんからの感想
などをPDFにまとめたものです。
この授業で使われたのは、 『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』の第二章「驚異のシグマ」の一部分です。 本文の一部を生徒さんに読ませ、 書籍に出てきた「クイズ」や「問題」を先生がアレンジして生徒さんに解かせるという形式でした。
結城は本を書くだけなのですが、 このような形で実際の授業に活用していただけるなんて、 本当に感動しました。実際、涙が出るほどうれしいです。 感謝します。
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それでは、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は、Vol.132から始まった新連載「数学ガールの特別授業(教師編)」の第三回目です。 結城が先日新潟で行った講演会を読み物にしてお届けいたします。 講演スライドを交えたPDFでお送りします。 教えることや文章を書く人には興味のある内容になっていますよ。
お楽しみください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業(教師編)(3)
毎日書くということ - 文章を書く心がけ
おわりに
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Vol.134 結城浩/数学ガールの特別授業(2)/古今和歌集を読む(3)/
2014-10-21 07:00220ptVol.134 結城浩/数学ガールの特別授業(2)/古今和歌集を読む(3)/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年10月21日 Vol.134
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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新刊の話。
予定通り、先週『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』が刊行されました。
◆『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』 http://note4.textfile.org/
書店に展開されたサイン本をご購入なさった方、 店頭やネット書店でご購入なさった方などからツイートやメールをいただき、 私はとても幸せな時を過ごしています。
ありがたいことに、 アマゾンさんの数学書ランキング、 書泉ブックタワーさんのコンピュータ書ランキング(10/12-10/18)、 ブクログ新刊ランキング(10/18)などで第1位になりました。 みなさんの応援に感謝いたします。
◆たくさんのサイン本(出版社編集部にて)
それはさておき、ひと仕事終わって安心したせいか、 あるいは単に急に冷え込んだからか、 たくさんの本にサインした次の日から数日寝込んでしまいました。 家内からは「ここ数日夜更かしが続いていたから」と指摘を受けました。 体調管理の点で反省することしきりです。
* * *
ところで、新刊が発売になったということは、 次の本の仕込みをさらに進める必要があるということになります。
今年の12月12日に刊行の『数学文章作法 推敲編』は、 すでに再校に入り順調に進んでいますが、 それ以外の、新たに書き始める本の進捗を進める必要があります。 いまのところはざっくり、こういった本が進行中。
・コードネーム:note5(『数学ガールの秘密ノート』第5弾) ・コードネーム:グラタン ・コードネーム:ii ・コードネーム:crm
校正の段階まで来れば文章のテクニカルな修正が中心になってくるのですが、 本の書き始めの段階では、 とにかく書き進む部分と、方針決めの部分が絡み合います。 このあたりをどう進めるかは、後ほど「本を書く心がけ」で詳しく書きますね。
* * *
先日、ふと思ったこと。
結城メルマガの中では「教えること」「学ぶこと」「伝えること」 などの話題がよく出てきます。でも、たとえば「男性だから何々が得意」や 「女性だから何々が得意」という性別の話はほとんど出てこないように思います。 どう思いますか。
結城メルマガがいわゆる「ポリティカリー・コレクト」だと、 ことさらに主張したいわけではありません。 そうではなくて、結城は男性・女性をあまり意識していないのかなあ、 と思っただけなんです。
(いま検索してみたら、Vol.098でちょこっと書いていました)
数学ならば、概念を理解できるかどうか、 問題を解けるかどうかというのがポイントであって、性別は直接問題にならない。 プログラミングでも、コードを書けるかどうか、 バグを取れるかどうかがポイントであって、性別は直接問題にならない。 ……というのが私の理解です。
まあ、でも、この話題は微妙なのでこの辺で。
* * *
それでは、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は、Vol.132から始まった新連載「数学ガールの特別授業(教師編)」の第二回目です。 結城が先日新潟で行った講演会を読み物にしてお届けいたします。 前回と同様、講演スライドを交えたPDFでお送りします。 「読者の理解を生み出す」という話題で、 教えることや文章を書く人には興味のある内容になっていますよ。
また、Vol.133に続き「古今和歌集を読む」の話を書きます。 今回も、言葉に取り組むときのメタな話題になっています。
お楽しみください!
目次
はじめに
本を書く心がけ - ぜんぶ文章にしてしまえ
古今和歌集を読む(3)
数学ガールの特別授業(教師編)(2)
MacBookを家に忘れた話
おわりに
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Vol.132 結城浩/数学ガールの特別授業(教師編)/有給の話から、働くということを考えた/
2014-10-07 07:00220ptVol.132 結城浩/数学ガールの特別授業(教師編)/有給の話から、働くということを考えた/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年10月7日 Vol.132
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』が店頭に並ぶのは、 来週(2014年10月17日)頃になりそうです。 これは編集さんから聞いた日付なのでまちがってはいないのですが、 実際に店頭に並ぶときには、書店さんの都合がありますので、 多少日付が前後する可能性があります。ご了承ください。
なお『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』のサイン本も、 刊行予定日前後にいつもと同じくらいの冊数が店頭に出ます。
今回のサイン本を扱う書店さんリストを結城は持っていませんが、 今年四月の『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』のときの 【サイン本を扱った書店さんリスト】は以下にありますので、 サイン本ゲットをねらっている方は、ご参考になさってください。
◆(書店リスト)『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』サイン本情報 https://note.mu/hyuki/n/nf47948d22b7f
(あくまで参考です)
* * *
ランディングページの話。
さて、新刊が出るということで、 「ランディングページ」というものを作ってみました。 ランディングページ(landing page)というのは、 一言でいえば、ある商品専用のPRページですね。
『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』のランディングページは、 こんな感じになりました。
◆『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』 http://note4.textfile.org/
このページは「でんでんランディングページ」というサイトを利用して作りました。 おおざっぱな手順はこうです。
(1)でんでんランディングページへ行く。
◆でんでんランディングページ http://lp.denshochan.com
(2)でんでんランディングページの「デモサイト」を見てどんな感じかをつかむ。
◆デモサイト http://lp-narrative.tumblr.com
(3)でんでんランディングページの「つかってみる」からGithubのページへ行き、 Narrativeテーマを見る。
◆Narrativeテーマ - Github https://github.com/denshoch/LandingPages/tree/gh-pages/narrative
(4)このNarrativeテーマのところに書いてある使い方に従う。
『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』の他にも、 『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』や、 電子書籍『幸福の王子』のランディングページも作ってみました。
◆『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』 http://note1.textfile.org/
◆『幸福の王子』 http://prince.textfile.org/
きれいなページが簡単にできるので、とても楽しいです。
いわゆるレスポンシブWebデザインに対応しているので、 PCやタブレット、それにスマートフォンなど、 画面の大きさが異なるデバイスでも最適な表示になります。
こういう便利なものを作って公開してくださった ろすさん(@lost_and_found)さんに感謝します。
作り方の詳細は後日、結城メルマガでも書きたいと思います。
* * *
このランディングページを作っていて思ったのは、 ふだんから《遊んでおく》のは大事だなということ。
遊んでおくというと語弊がありますが、
・Tumblr.comのテーマを入れ換えて遊ぶ。 ・独自ドメインを取得しておきDNSを切り換えて遊ぶ。 ・HTML5のテンプレートとして使われるBootstrapで遊ぶ。 ・興味のある文章を翻訳して遊ぶ。 ・Kindle Direct Publishingで自己出版して遊ぶ。
「仕事で利用するために研究しておく」という方が正しいのかもしれませんが、 結城の感覚としては「楽しいものを見つけたら一通り遊んでみる」に近いです。
何だか「遊び」の方が深いレベルで理解できるみたい。 そして、あれこれ楽しんでいると、 たまたま新刊が出るタイミングで「でんでんランディングページ」が公開された。
ふだんから遊んでいなかったら、 この「でんでんランディングページ」の意味もわからなかっただろうし、 すぐに試してみようとも思わなかっただろう。
その意味で《遊んでおく》のは大事だと改めて思いました。
* * *
新連載の話。
今回から結城メルマガでの新連載、
「数学ガールの特別授業(教師編)」
を始めたいと思います。 これは結城が先日高等学校の数学の先生向けに行った講演をベースにした読み物です。
結城は2014年10月3日、新潟県の先生62名に向けて、
「学ぶ喜び、伝える喜び」
という演題で講演を行いました。
そのときの録音をもとに、講演のライブ感を再現しつつ、 読みやすく整えてお送りします。 毎回PDFになりますので、ダウンロードしてお読みください。
なお、すでに配信した生徒編については、 以下から結城メルマガの過去ログをご覧ください。
◆数学ガールの特別授業 http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
* * *
言葉遊びの話。
アンビグラムを作っている、いがときしん(@igatoxin)さんが、 こんなパングラム(五十音をひとつずつ使って作った文章)を公開していました。 数学ガールに登場するユーリという女の子の特徴を読み込んだパングラム (ここでは48文字)です。
- - - - - - - - - - 僕を「おにいちゃん」って呼ぶね 後ろ結びヘアー揺れ 狭き謎見つけたら 燃える目は理逃さぬ
ほくをおにいちやんってよふね うしろむすひへあーゆれ せまきなそみつけたら もえるめはことわりみのかさぬ - - - - - - - - - - https://twitter.com/igatoxin/status/411299456898703360
こういうものを見ると、すごくわくわくします! 言葉が持っている意味と制約と形式がタイトに結びつくように感じるからです。
* * *
オバケの話。
結城はアイコンとして、 「スレッドお化け坊や」というオバケキャラを使っています。
◆結城のアイコン「スレッドお化け坊や」
ハロウィーンの季節のせいか、 この「スレッドお化け坊や」に似たオバケの 「発見ツイート」がときどき流れます。三つほどご紹介。
◆横浜のドンキホーテにて(@kiyotaka_akkyo さんのツイートより)
◆@kiyotaka_akkyo さんのツイート https://twitter.com/kiyotaka_akkyo/status/515853108811812865/photo/1
◆あれは……結城浩先生!? (@mugicha_7 さんのツイートより)
◆@mugicha_7 さんのツイート https://twitter.com/mugicha_7/status/517200423506018304/photo/1
◆あ、結城先生!(@natuki333 さんのツイートより(部分))
◆@natuki333 さんのツイート https://twitter.com/natuki333/status/517606763751682048
みなさん、楽しいツイートありがとうございます!
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英語版『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』の話。
先日ご紹介したように『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』の英訳本が出ています。 しばらく日本で購入できなかったのですが、現在は日本のアマゾンで購入できます。
英語版『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』は、 "Math Girls Talk about Integers"(数学ガールが整数についておしゃべりする)という タイトルになっています。
◆Math Girls Talk about Integers (アマゾン) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1939326230/hyam-22/
◆Math Girls Talk about Integers (表紙)
以下のページでは、サンプルとして初めの章をPDFで読むことができます。 "Download a sample!"のリンクをたどってください。
◆Math Girls Talk about ...(Bento Books) http://bentobooks.com/math-girls-talk-about/
発売以来ずっとChildren's Advanced Math Booksのジャンルで、 Math Girls Talk about... シリーズの二冊が第一位と第二位になっているようです! みなさんの応援を感謝します。
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英訳といえば、先日アメリカの方からメールでのインタビューを受けました。 質問事項がいくつかあり、それに対して結城が答えを日本語で書く。 それをトニーさんが英語に翻訳するという流れです。
それに答えながら思ったことは、 数学の先生の悩みも、数学ガールを読んで抱く驚きと喜びも、 日本の先生もアメリカの先生も大きくは違わないということ。
数学ガールと結城のインタビューの答えを読んだアメリカの生徒さん(中学生)は、 学校の先生に「数学の宿題をもっと出して!」とお願いしたそうです(!)
そのインタビュー記事も、公開されたらご紹介しますね。
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庭に作る家の話。
これ、書き物をする人の多くは「おおっ」と思うんじゃないでしょうか。
◆自宅の庭にも隠れ家を、作家のための物語の家 http://yadokari.net/minimal-life/14946/
自宅の庭に創作の場所としての家を建て、 そこで集中して書き物をするという話題です。
結城は、自宅で書き物をすることはあまりありません。 日記やブログやツイートなどは書きますが、 本のための文章を書くことはめったにないです。 それは集中が途切れるのがいやだからです。
最近書いていませんが、 連載「フロー・ライティング」に通じる話ですね。 自宅の庭にこんな家があったら……って、 そもそも庭がなかった(あらら)。
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文体の話。
以下の記事では「インタビュー文体」が四通り紹介されています。
◆オウンドメディアの空気を決める、4つの「インタビュー文体」活用方法 http://www.infobahn.co.jp/ib_column/4047
同じインタビュー記事をまとめる場合でも、 文体が違うと印象もずいぶん異なるものだと思います。
そしてまた、インタビュー記事以外でも、 ここで紹介されているインタビュー文体に乗せることで、 「インタビュー風の紹介記事」のようなものが書けそうですよね。
結城は以前、自分の本を紹介するために自分で自分にインタビューしたことがあります。 たとえば、これです。
◆『数学ガール』出版記念インタビュー http://www.hyuki.com/girl/interview.html
このようなインタビュー形式は読みやすいものです。 対話の形でさくさくと話が進むからでしょうか。
対話の形といえば、ラジオ番組のような形式にしたこともあります。 たとえば、これです。
◆『数学ガール』トークイベント http://www.hyuki.com/girl/talk.html
ここでは、数学ガールのキャラクタが話し合うことで、 内容紹介と同時にキャラクタ紹介を行っていますね。
と、ここまで書いてきて思うのは、 必ずしもインタビュー形式でなくても、
「読者が親しんでいる既存の形式」
に落とし込むのがいいのかもしれないと気付きました。
たとえば、四コマ漫画風にしたり。
◆ギコ猫と暗号技術入門 http://www.hyuki.com/cr/cat_index.html
たとえば、2ちゃんねるのスレッド風にしたり。
◆【暗号】結城さんの暗号本を紹介するスレ【認証】 http://www.hyuki.com/cr/crself.html
既存の形式に乗せることで、読みやすくなるのかもしれません。
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それでは、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は先日10月3日に結城が行った講演を読み物にリライトした、 新連載第一回をお届けします。 題して、
「数学ガールの特別授業(教師編)」
です。
お楽しみください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業(教師編)
有給の話から、働くということを考えた
おわりに
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Vol.097 結城浩/数学ガールの特別授業/確定申告/違いを認めるコミュニケーション/環境改善の基準/
2014-02-04 07:00220ptVol.097 結城浩/数学ガールの特別授業/確定申告/違いを認めるコミュニケーション/環境改善の基準/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年2月4日 Vol.097
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 いかがお過ごしですか?
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確定申告の季節です。
フリーで働いている人はもちろんのこと、 最近ではアフィリエイトなどで副収入を得ている会社員などにも 深く関わるイベント(?)ですね。
毎年のことなので、結城の準備は万端……のはずだったのですが、 いざ準備を揃えてみると帳簿のあちこちに漏れがあったり、 誤りがあったりして結局大騒ぎになっています。 困ったものです。
大ざっぱに言いますと、2014年に行う確定申告は、2013年の収入と経費を 計算して必要な税金の額を定める手続きです。 単純ですけれど、一年分の集計というのは意外にたいへんなものです。
会社員ですと、会社の経理の方がすべて計算し、 給料から税金を天引きし、年末に年末調整をしてもらえるので楽といえば楽です。 個人で仕事をしている人は全部じぶんでやる必要があります。
まあ、でも、結城の仕事は特に複雑な仕入れがあるわけでもないし、 在庫管理があるわけでもないですから、文句を言ったら怒られます。 言ってみれば「とっととやればいい」話です。
しかしながら人生はトラップに満ちているもので(大げさ)、 細かい困難があります。
・クレジットカードの記録を再確認するために、 CSVファイルをダウンロードしようとしたら、 過去3ヶ月しかダウンロードできなくて、 再度書類取り寄せになった。
・取り寄せたものはプリントアウトしたもの(紙)なので、 そこからCSVファイルを手で入力し直した。
・レシートの額を確かめようと思ったら、 レシートが感熱紙タイプで、黒くなって読めなかった。
・入力したはずのファイルが壊れていて、 一ヶ月分を再入力した。
結城は手間の掛かる処理を行うときには、 PerlやRubyのスクリプトを書いてコンピュータに任せることが多いです。 でも、会計処理の場合はそれが微妙にうまくいかないことがあります。
コンピュータが得意なのは、
・一貫した形式のデータを、 ・一貫したルールで、 ・大量に処理する
という場合です。しかし、個人で行った仕事の一年分の会計データというのは、
・あちこちに例外がたくさんあるデータを、 ・個別処理を考慮しながら、 ・たかだか千個くらい処理する
ことになります。なので、スクリプトを書くよりも腕まくりをして、 「よっしゃあ!」と手入力した方が早く済んでしまうことも多いのです。
プログラムを書く身としては、そこに余計なストレスが掛かります。 つい、
・このサイトの会計データがそろってさえいれば…… ・なんで定期的に購入しなかったのか…… ・ここを境に税率が変わるのか……
などという思いを抱く。 そして、スクリプトを書くべきか手入力すべきかの間で 心が揺れ動くのですね。
一年、三百六十五日というのはちょうど自動/手動判断の臨界点にあるようです。
とはいうものの、落ち着いて考えてみますと、 毎月それなりに「会計の日」を作り、その時点での集計をしていましたから、 それほど焦る必要があるわけではありません。 ただ、ミスが多かったというだけですね。
などといってないで、早く終わらせなければ……
* * *
ところで確定申告の作業ではたくさんの細かい作業を進める必要があります。 一日では終わらないので何日かに分解するわけですが、 そこで便利になるのが「TODOリスト」です。
・自分のやるべきこと(TODO)をリストアップして、頭に□を書いておく。 ・そしてそれが済んだら□にチェックマークを入れる。
というただそれだけなのですが、とても有効です。 個別に「残っている作業は何かな」を把握するにも有効ですが、 ぱっと見たときに「終わるまでまだまだ作業がたくさんあるなあ」と、 全体の進捗を把握するのにも有効です。
チェックマークを入れるのは、気持ちの「一区切り」としても有効です。 「はい、この作業は終わったよ!」という感覚ですね。
チェックマークを入れたTODOリストがあれば、任意の時点で作業の中断ができます。 「ここまでは終わったから、残りは後でやろう」ということができる。 言い換えれば、スキマ時間を使って少しずつでも作業が進められるのです。 そういう意味ではチェックマークはまとめてつけないほうがいいですね。 一つの作業を終えるたびにチェックマークをつけたほうがよさそうです。
参考までに結城が確定申告で使っているTODOリストはこんな感じです。 いろいろ差し障りがあるのでモザイクを掛けています。 これはEvernoteを使っています。
◆確定申告のTODOリスト
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さて、結城は今年「習慣の力を身につけたい」と思っています。 そのために「インクリメンタルな環境改善」を心がけています。 自分の作業を改善するというのは大きいものから小さいものまで思いつきますが、 やみくもに進めることはしません。 何を改善するかについては、いちおう基準を持っています。
・何かがとにかく「改善」されるもの。 (変えればいいというものではないから)
・改善結果が具体的に見えるもの。 (結果が見えるとさらに改善したくなるから)
・改善が大がかりにならないもの。 (小さい改善を積み重ねたいから)
・さらに改善が見込めるもの。 (一回限りの改善で終わらせないようにしたいから)
・過去の環境をうまく生かせるもの。 (ご破産にしてゼロから始めるのはもったいないから)
・自分の習慣を壊さないもの。 (他の人に良くても、自分に良いとは限らないから)
・自分のやる気や記憶に依存しないもの。 (やる気がなくてもうまくいく、忘れてもうまくいく方向へ向かいたいから)
・楽しいもの。 (楽しさ重要だから!)
おおよそ、以上のようなことを考えつつ改善に取り組んでいます。
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結城はTODOリストだけではなく、作業の「色つき星取表」も使っています。 「色つき星取表」は前回の結城メルマガでも詳しく書きましたし、 以下のブログでも簡単に説明しています。
◆最近の自分がどんな活動に力を入れているのかを簡単に把握する方法(「色つき星取表」を使う) http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20140118/cal
ここに小さな改善を加えて楽しんでいます。 先週からさらに改善しましたよ。
まず、各作業ごとに「〆切」を入力できるようにしました。 具体的には、セルに -1 を入れたら赤で表示できるようにしたのです。 これで作業を単に記録するのではなく「先を見越した活動」ができるようになりました。
◆〆切を赤くした「色つき星取表」
また「一行日記」を書けるようにしました。自分に無理がかからないように、 「書かなくちゃいけない」とはせずに「書きたければ書けるよ」としてあります。 具体的には、各行の一番右のセルを横に長くしただけですけれど。
◆一行日記を付けた「色つき星取表」
ここで行った改善はささやかなものですが、
・具体的に改善結果が目に見える ・自分のアイディアが形になるので楽しい ・毎日の「色つき星取表を更新する習慣」を壊さない
となっており、私の「改善する基準」に合致していますね。
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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。 今回は、結城が昨年高校で行った特別授業の様子を文章にした 「数学ガールの特別授業」の最終回をお送りします。 それからコミュニケーションに関して「違いを認める」というお話しをします。
どうぞお楽しみください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業
違いを認める - コミュニケーションについて
次回予告
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