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記事 37件
  • お金にまつわる思考実験:その27(1,629字)

    2023-05-04 06:00  
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    もう何度目かの問いになるが、そもそも「経済」とはなんだろう? それは、本質的には「価値の交換」のことだが、なぜそれが発生するのか?
    それは、「自分が欲しいものを相手が持っているから」である。それを手に入れる対価として、自分の持っているお金や物を差し出す。そうして、経済が発生する。
    そんなふうに、経済の根底には「欲しい」という気持ち、つまり「物欲」がある。あるいは、単なる「欲」がある。
    そのため、これは多くの人が見落としがちなことだが、経済が活性化するときは人々の「欲」が豊かなのだ。その逆に、経済が落ち込むのは人々の「欲」が落ち込んでいるからである。このように、欲と経済とは密接な相関関係にある。
    だから、経済について考えるとき、「欲」を抜きにはできない。「欲」についてきちんと考察を深めてこそ、初めて経済を理解できるようにもなるのだ。
    ところが、最近では「欲がないこと」を逆に自慢げに語る人もい

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  • お金にまつわる思考実験:その26(1,845字)

    2023-04-27 06:00  
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    「トランスポート」という言葉がある。「物を動かす」という意味だが、古来よりトランスポートは経済の鍵を握ってきた。
    「ロジスティック」という言葉もあって、これは日本語では「物流」と訳される、トランスポートの中心的な概念だ。ただ、元々はローマ時代の戦争で、前線の兵士に武器や食料を届けることを意味した。日本語だと「兵站」だが、これが「戦争に勝つか負けるか」の鍵になったのでローマは、ロジスティック――いかに物資を前線に運ぶかを研究し尽くした。
    その結果、出てきた答えが「道を作る」というものだった。そこでローマは、道を作るための技術をこれでもかと積み重ねた。
    そうしてやがて土木大国となるのだが、それが巨大な帝国を作ることにもつながった。道を作るということが、国を作る上でも大きな役割を果たしたのである。
    なぜかというと、道は「一石三鳥」だからだ。まず、上記のように前線に物資を運ぶのに役立つので、戦争に

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  • お金にまつわる思考実験:その25(1,449字)

    2023-04-20 06:00  
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    ぼくは一時期カメラの骨董的なレンズ(オールドレンズという)にハマったことがあって、取り分け「アンジェニュー(angenieux)」というフランスのメーカーの25mmのものが好きだった。これで動画を写すと、画面の周囲になんともいえない魅力的な「歪み」が発生し、それがまさにフランス映画みたいでかっこいいのだ。
    アンジェニューで映した映像 – YouTube
    アンジェニューはもともと映画撮影用のレンズメーカーだった。だから動画を撮るのに向いているということもある。それで近年、動画用のカメラが安価になり、利用者が増えたことで、俄然注目を浴びるようになったのだ。
    面白いことに、「カメラ」というのは日進月歩で、古いものを使っている人はほとんどいない。ところが「レンズ」はそうではない。古いもの――それこそ半世紀以上前の骨董品でも、今でも十分使えるのだ。そのため、中古価格が下がらない。
    その中で、製造数が

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  • お金にまつわる思考実験:その24(1,701字)

    2023-04-13 06:00  
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    多くの人はいまだに国家という共同幻想にとらわれている。この状況はこの先、どうなるのか?
    ぼく自身の経験から考えると、昔はぼくも「国家」という共同幻想を何の疑いもなく信じていた。特にオリンピックなどでは自分が日本人であるということを強く意識した。日本に住み日本語を話すぼくの人格には、日本という国家の影響が絶大であると感じていた。
    しかし長じるに連れ、その意識は徐々に薄れていった。なぜ薄れていったかといえば、やはり「知識」を得たからだろう。人間の成り立ちや構造、歴史、あるいは科学的な生命としての在り方を知ることによって、国家が幻想であるということに徐々に気づかされていったのだ。
    そうして今では、「日本人」という自覚はほとんどない。意識的には、人間という自覚もなくなった。単に宇宙の一部なのだと感じるのみである。
    そういうふうに、知識を得ることによって日本人という意識はおろか人間であるという意識す

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  • お金にまつわる思考実験:その23(1,657字)

    2023-04-06 06:00  
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    お金の特性として、両替や関税はなるべく少なくした方が経済が活性化し、結局人々のためになる――ということがある。しかし通貨だけ統一し、そこに政治的な国家の壁が残ったままだと、ドイツとギリシアのように格差が生まれてしまう。ドイツが得をし、ギリシアが損をしてしまう。
    これを回避するには、通貨を別々にするか、国家を統一するかしかない。しかし、ドイツとギリシアが国家として統一し、同じ国民になるというのはなかなか現実的ではない。
    なぜか?
    それは、人々が国家という共同幻想を信じているからだ。その枠組みをいまだに必要としている。
    本来、国家なるものは物理的には存在しない。それはあくまでも幻想だ。
    しかし今なお、多くの人がそれを認識できない。こちらはお金と違って、幻想を抱いたままの人が少なくない。
    お金の方は、共同幻想が解けつつある。だから、クレジットカードやキャッシュレス決済などの信用取引が拡大した。

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  • お金にまつわる思考実験:その22(1,555字)

    2023-03-30 06:00  
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    お金は共同幻想として機能し、人間同士の信用を担保する。これのおかげで、我々は初めて行く国でも信用を得られる。ぼくが初めて行ったジョージアで普通にタクシーに乗ってホテルに泊まることができたのも、お金の信用があったからだ。これはなかなかにすごいことだ。
    その意味で、「お金」という共同幻想はすでにほぼ「世界統一」しているといっていいだろう。もちろん、各国の「通貨」は統一されておらず、そこには「両替の壁」もある。ただ、それでも世界中で通じるのである。
    では、逆になぜ通貨は世界統一されないのか?
    それにはいろんな理由があるが、最も大きいのはやはり「不都合がある」ということだろう。その不都合は、ユーロの例を見ると分かりやすい。
    ユーロはEU各国が採用している。その中で、一番豊かなのはドイツで、一番貧しいのはギリシアだ。
    このとき、貧しいギリシアで不都合が起こる。どういう不都合かというと、どれほど貧しく

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  • お金にまつわる思考実験:その21(1,491字)

    2023-03-23 06:00  
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    お金の価値というのは基本的に「幻想」である。しかし面白いことに、その幻想を多くの人が幻想とは分かっていながらなお、信じることができる。これを「共同幻想」という。人間には、共同幻想を抱く力が備わっている。
    この「共同幻想力」ともいうべき特性が、人が巨大な社会を作る上での大きな推進力となった。お金、国家、宗教――全てこの能力に基づいて作られたし、それらがあったからネアンデルタールとの地球上の覇権をかけた争いにも勝利できた。ネアンデルタール人には「共同幻想力」がなかった。だから巨大な組織を構成することができず、我々ホモ・サピエンスに殺し合いによって敗れ去った。
    この共同幻想力は、今後も人間が失うことは基本的にないだろう。ホモ・サピエンスがこの世に存続する限り、ともにあり続ける。
    ところで、この共同幻想力には「限界」もある。というのも、当たり前といえば当たり前だが、規模が大きくなればなるほど、社会

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  • お金にまつわる思考実験:その20(1,761字)

    2023-03-16 06:00  
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    大局的に見ると、世の中は概ね「便利」な方向へと流れている。江戸時代のように「あえて不便にする」という施策が採られることもあるが、それらは最終的には潰えてきた。便利さの前に敗れ去った。そうして、より便利な方へ流れてきた。それがこれまでの人類の歴史だった。
    その歴史を踏まえると、これからもずっと(それこそ人類が絶滅するまで)人は便利さを希求するのではないかと予測する。それを踏まえた上で、今世の中の「不便さ」として立ちはだかっているものを考えると、一番に浮かび上がるのは「国家」である。あるいは、お金に関していえば各国の通貨だ。それが、現代の便利さを阻む最大の壁となっている。
    例えば、国家があるおかげで「関税」が存在する。関税は、競争力のない自国の産業を守るために設けられる。そのため、国が守ろうとする産業は、競争力がないまま存続してしまう。そうして国民は、適切なサービスを得ることができない。もっと

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  • お金にまつわる思考実験:その19(1,763字)

    2023-03-09 06:00  
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    信用が担保されれば、取引は活性化する。そして取引が活性化すれば、経済は伸張し、人間ひとりひとりの生活レベルが向上する。
    そのためコンピューター(とインターネット)は、人々の信用を担保するよう進化してきた。その結果、取引は見事に活性化し、経済は全世界的に一段と拡大したのだ。
    しかし、その伸張はここに来て足踏みしている。なぜかというと、そのネットワークの規模が国家レベルにまで拡大したからだ。そうして、国家という既存の枠組みに突き当たった。そこに抵抗が生まれ、拡大のスピードが鈍化したのだ。
    去年、いわゆるGAFAはどこも売上げを落とした。それは、コロナで業績が急拡大したことの反動が一番の理由だと考えられている。
    しかしぼくは、もう一つの理由の方が、実は大きいと思っている。その「もう一つの理由」とは、GAFAの拡大が国家の壁に突き当たったということだ。つまり、国家に邪魔をされ、これ以上人々の信用を

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  • お金にまつわる思考実験:その18(1,688字)

    2023-03-02 06:00  
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    コンピューターは20世紀の後半から世界経済をさらに伸張させた。
    なぜか?
    一番の理由は、コンピューターが世界の人々の「信用」を担保したからだ。それによって、取引がより安全・便利になった。そうして、取引がより活性化した。
    思えば、取引というのは難しいものだ。そこには「信用」が不可欠である。以前にも書いたが江戸時代、幕府は各藩の経済を伸張させないため、通貨を藩ごとに制定して、頻繁な両替を必要とさせた。おかげで両替商は儲かったが、各藩の経済は伸びず、結果的に江戸幕府を倒すだけの資金力がなかなか得られなかった。
    このように、「取引の活性化」は「経済伸張の鍵」である。そして、その活性化を最も阻害するのが「信用の欠如」だ。
    取引は、信用が欠如していると成立しない。そのため、昔からその信用を担保する「人」が存在した。そういう保険を必ず掛けていた。
    しかしおかげで、その「信用を担保する人」にお金を払う必要

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