• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 1件
  • 一問一答「音楽や映画をどのように楽しんでいますか?」【音楽と映画の心理学】

    2021-05-29 21:00  
    330pt
    あなたは日々の生活の中で音楽や映画をどのように楽しんでいますか?

    今回は、音楽の好みで感情や性格が変わることはあるのかという相談をもとに、音楽や映画などの作品が人に与える影響についてまとめてみたいと思います。

    Q. 「音楽の好みやよく聴く曲で感情や性格が変わることはありますか?」

    性格に関しては何とも言えませんが、音楽というものは容易く人の感情を変えるものです。
    ですから、僕は自分がこうなりたいという時に合わせて聴く音楽を決めています。例えば、テンションを上げたい時や冷静になりたい時、集中力を上げたいという時など色々あると思いますが、自分のそんな感情に合わせてプレイリストをフォルダ分けしています。
    これは人により違うと思いますので、自分で試してみてください。
    例えば、この曲を聴いた後には仕事がはかどったと感じたら、それを仕事がはかどる音楽のフォルダに入れるわけです。
    自分の感情を誘発するプレイリストを持っておくといいと思います。

    DaiGo師匠の答えは以上のような内容でした。

    音楽と人間の感情

    音楽や映画にまつわる言及はいろいろとありますが、僕たちの感情と音楽というものは密接に結びついているものです。
    例えば、特定の感情と特定の音楽が結びついているということも結構あると思いますし、歌詞を聴かなくてもなんとなく曲調を聴くだけでも、悲しい気分になる曲だと感じたり楽しそうな気分になる曲だと感じたりすると思います。
    音楽から感情を勝手に読み取っているということもありますので、音楽を使うと特定の感情を思い浮かべさせることもできたりするわけです。

    人は自分の感情に向き合うことがとても重要で、その感情に向き合うために役に立つのが音楽です。
    例えば、自分が何か失敗して落ち込んでいる時に、やたらと明るく無神経な人にただただ元気を出せと言われるとイラっとくると思います。
    このイラっとくるのは自分の感情と乖離しているからです。

    ですから、人間は自分の気持ちや感情に合った曲を聴いた方が辛い感情を乗り越えたり力を発揮することができたりするわけです。
    もちろん、自分の気分を上げたいという時にテンポの速い曲やノリのいい曲を聴くのもいいです。

    師匠が紹介していた感情でプレイリストを作るための参考になるように、その時々でどんな曲を聴くとどんな感情になりやすいのか、どんな感情の時にどんな曲を聴くといいのかということを紹介していきます。

    モチベーションを上げたい時

    まず、モチベーションが上がる曲が分かっています。
    聴くだけで気分がポジティブになり、活動的になり行動力も高まり、意欲的になったり建設的な議論ができるようになるなど、人間をポジティブな方向に引き上げてくれる曲が見つかっています。

    それは壮大な曲です。
    音楽の効果について調べた研究では、勇壮で視界がひらける壮大な曲を聴いた参加者は、その大半が思考がよりポジティブに前向きに物事を考えるようになり、かつ行動力が上がり、自分の仕事や勉強に意欲的で建設的なムードになっていたということが確認されています。

    ですから、もし皆さんが仕事に対してやる気が出なかったり、朝起きて今日は頑張りたいと思った時には、そんな壮大でヒロイックな曲を聴くことによってモチベーションを高めることができる可能性が示されたわけです。
    朝に聴く音楽やアラームの曲をなんとなく好きな曲で決めている人も多いと思いますが、例えば、朝が弱いのであれば朝はヒロイックな曲を聴くようにしたり、通勤や通学でヒロイックな曲をプレイリストにしておくなど、自分のメンタルをコントロールするためのプレイリストを作っておくと良いのではないでしょうか。
    モチベーションを高めるためのヒロイックな曲のプレイリストを作っておきましょう。
    ヘビメタを聴くとポジティブになる?!
    別の研究で、ヘビメタには人間の心をポジティブにするかもしれないということも分かっています。
    クイーンズランド大学の研究で、ヘビメタやハードコアなどの激しい音楽が人間にどのような効果を与えるのかということを調べたものです。
    その結果、ハードな音楽を聴いていた人たちの方が、ストレスやイライラの感情レベルが大幅に低下していたということが分かっています。

    実験の参加者はもともとヘビメタやハードコアが好きな人達だったからということもあるかもしれませんが、研究者によると、敵意や興奮、ストレスがハードな音楽を聴くことによって減少するということが確認されていて、そんな中でも、最も変化した感情がやる気のレベルだったということです。
    このようなヘビメタやハードコアなどの激しい音楽は、ネガティブな感情を減らしポジティブな感情を増やす効果があるということです。

    ですから、新しい何かを始める時やなかなかやる気が出ないというような時には、このようなハードな音楽が使えるのではないかということです。
    やる気を出したい時には10分間ぐらいヘビメタを聴いてみるのもいいかもしれません。

    自分の感情に合わせた曲を聴くことの効果
    人間は、感情を遠ざけようとするよりも、自分の感じている感情をより詳細に分析したり言葉にして、感情に向き合ったほうがより上手にその感情をコントロール出来るようになるものです。

    ヘビメタやハードコアはかなり死や悲しみ、怒りというようなネガティブな感情を歌っていることが多いと思います。
    自分が怒りやネガティブな感情を感じている時に、このようなネガティブな感情を激しく歌っている曲を聴くことによって、自分が感じている感情を客観的に見ることが出来るようになります。
    自分の感情を一歩引いて客観的に見ることができることに対して、ヘビメタやハードコアの曲が役立っていて、そのおかげでネガティブな感情をコントロールすることができるようになり、その結果ポジティブな感情が生まれてくるようになり、やる気が高まったり集中力も上がるのではないかとされています。

    ですから、この実験ではヘビメタやハードコアを使っていますが、このようなジャンルの曲があまり好きでないという人は、おそらく、自分の感情にあった曲を聴けば同じような効果が出るのではないかと考えられます。
    とはいえ、このようなジャンルには怒りや悲しみをテーマにした曲が多いので、ネガティブな感情のコントロールにはうまく使えるのではないでしょうか。
    逆に、気分が高まっている時に楽しい曲を聴くと冷静になることもあります。そのあたりは上手に使っていただけたらと思います。

    感情に合わせた曲を聴くことによって、人間は感情を客観的に見ることができるようになります。それにより、ネガティブな感情にも対処できるようになります。
    これは、認知行動療法などでも使われる手法でもあります。

    緊張したりストレスを感じた時
    そして、最初の研究では悲しい響きの曲を聴いた参加者は、リラックスした思考または憂鬱な思考が起きる傾向があったそうです。

    ですから、悲しい響きを感じる曲を聴くことでリラックスできる可能性もあるわけですが、憂鬱な気分になってしまう可能性もありますので、悲しい響きの曲は選択が難しいということになります。
    自分なりに色々試してみて、悲しい響きだけれど気分が落ち着くリラックスできる曲を探してみてください。
    スイッチをオフにしたりストレスを上手に発散するために使えると思います。
    緊張したりストレスを感じた時には、そんな曲を聴くことによって自分のメンタルをリラックスする方向にコントロールすることができます。

    悲しい曲を聴くとリラックスするか、むしろ凹んでしまうとなると、怖くて悲しい曲を聴けなくなるという人もいると思いますが、ただ単に悲しい曲ではなく楽しいけれど美しさを感じるような曲の重要性についても分かっています。
    このような悲しいだけでなく美しさを感じるような曲は、悲しみを感じている人の気分を改善する効果があると言われています。

    確かに、失恋ソングでもただただ悲しいだけではなく綺麗なイメージを感じる曲を聴くと、なんとなく気分が落ち着いたり、余計な感情に振り回されず気分が安定することがあると思います。

    自発的ネガティブ体験でストレス発散
    ホラー映画はとてもストレス発散にいいです。
    怖いしドキドキするして嫌だと感じる人も多いと思いますが、単にホラー映画を観ればいいということではなく条件があります。
    自分から望んで観る場合に限ります。
    罰ゲームや無理やり誘われて嫌々観るのではなく自分から望んでホラー映画を観る場合はストレス発散にとても良いということがわかった研究があります。

    これは自発的ネガティブ体験といい、絶叫マシンなども同じです。
    怖い体験というものは本来生物は避けるはずです。怖いホラー映画や絶叫マシーンをなぜわざわざ望んで体験しようとするのかというと、他人から強制されたり怖いことをされるのは嫌ですが自分から望んでそのような体験をするのを自発的ネガティブ体験といい、これがメンタルに良いのということが言われています。

    さらに、ストレスに強くなるという効果も確認されています。
    頭の中ではわかっているけれど生物としての恐怖を感じるとストレスへの耐性ができるということです。
    ちなみに、そういうことであればホラー映画も観てみようかと思った人は、自分が望んでやってみようと思うことが大事ですからそう思えるぐらいの程度の軽いところから始めてみるのが良いのではないでしょうか。

    人間関係の問題で気持ちが落ち込んだ時
    別の音楽や映画に関する研究では、人間関係の問題で気持ちが凹んだ時に、なんと暗い音楽や暗い映画の方が落ち込んだメンタルを回復させる効果が高かったということが分かっています。

    ですから、これは失恋をした時に失恋ソングを聴いた方がいいということと同じように、対人関係の問題で凹んだ時には、暗い音楽を聴いたり暗い映画を見て、自分の悲しみを代弁してくれるような作品に触れた方が、やはり、ストレスから回復し立ち直りスピードは早かったということです。

    対人関係の問題というものは何かと根深いものですし、そこにはいろいろな問題があると思います。
    例えば、恋人にフラれたとか信じていた人に裏切られたとか、上司からひどいことを言われたとか、そんな人間関係の問題の場合には、暗い音楽や暗い映画に触れた方が自分のメンタルは落ち着きやすくなります。

    人間関係以外の問題で気持ちが落ち込んだ時
    一方で、仕事上の問題や今のような経済的な問題などの人間関係以外の問題で気持ちが凹んだ場合には、明るい音楽やコメディ映画などの明るい作品やコンテンツに触れた方が、その気分から回復するのが早かったということです。

    自分の今抱えている問題が、人間関係によるものなのか、それとも別のものなのかということによって、聴く音楽や見る映画は変えた方がいいということです。

    メンタルが落ち込みやすい人は、このように人間関係の問題とそれ以外の問題に分けて音楽や映画を上手に使ってもいいと思います。

    ちなみに、映画や音楽を使って立ち直るということもいいですが、そもそも凹みにくいメンタルを作った方がいいということもあります。
    メンタルが凹む理由には大きく分けて2つあります。
    ひとつは、もともとメンタルが落ち込みやすい神経症的傾向が高い性格特性の人で、もうひとつは、自分のことを嫌っていたり自分に対するコンプレックスが強く、自分を認めることができていない人です。
    落ち込みやすい性格を直すというのであれば、神経症的傾向の低さを改善するための方法として、エクスプレッシブライティングや人に感謝の気持ちを伝えるというようなテクニックから、毎日の運動や瞑想まで色々あったと思いますし、自己嫌悪が強くて自分を認めることができないという人は、もちろんセルフコンパッションです。

    メンタル弱い自分を変える10の行動のマインドマップも参考にしてください。


    筋トレをする時
    筋トレの効果を上げてくれる音楽というものも分かっています。
    男性と女性で効果が違います。同じ曲でも男性が聞いた場合と女性が効いた場合では筋トレの効果が変わります。

    男性は無音かノイズキャンセリング
    男性は音楽を聞かない方がいいです。男性の場合はある特定の音楽を除いた場合、音楽を聴くとテストステロンが下がります。
    男性ホルモンが下がるということですから筋肉の合成も弱くなりますので筋トレの効果が下がってしまいます。耳栓かノイズキャンセリングのヘッドホンをお勧めします。
    女性の場合は逆にほぼ全ての曲でテストステロンの値が上がるということが分かっています。

    つまりポイントとしては、
    男性は音楽を聴かない
    女性は音楽を聴く
    となります。

    音楽は男性の場合は男性ホルモンを下げて、女性の場合は男性ホルモンをあげるので人を中性的にします。
    音楽にも映画にも性別の壁も文化の壁も関係ないと言われますが、ある意味音楽は人間を中性的なところに持っていく可能性があると言われています。

    音楽の筋トレ効果ランキング
    奈良教育大学の研究で、70名の参加者に様々なタイプの音楽を30分間聴いてもらい、参加者たちの唾液からテストステロンの値を測るという実験があります。
    その結果、いろいろなタイプの音楽を聴いてもらいましたが、男性は全体的にテストステロンの値が下がっていました。
    テストステロンは筋肉の発達には欠かせないホルモンです。ちなみにこのテストステロンが著しく下がると、メンタルが悪化したりやる気が出なくなったり慢性疲労が起きるということが分かっています。
    筋トレ中に男性の場合は音楽を聴くのはあまりおすすめできないということになります。

    実際に実験に使われた音楽をテストステロンの数値が下がった順に紹介します。
    男性のテストステロンの数値を下げる音楽ランキング
    1位 自分の好きな曲
    2位 ポピュラー音楽
    3位 ジャズ
    4位 モーツァルト
    5位 グレゴリオ聖歌
    女性のテストステロンの数値を上げる音楽ランキング
    1位 ジャズ
    2位 自分の好きな曲
    3位 モーツァルト
    4位 ポピュラー音楽
    5位 グレゴリオ聖歌

    つまり、男性の場合は、好きな曲とか普段よく聴いているような曲を聴けば聴くほど男性の場合はテストステロンの数値が下がってしまったということです。

    女性の場合は、好きな音楽を聴いても大丈夫です。
    どんな音楽を聴いてもテストステロンの数値が上がりました。
    男性と真逆の結果になりました。
    音楽というものは男性を女性っぽくして女性を男性っぽくする効果があるということが推測できます。

    HIITのようなハードな運動をする時
    運動をする時に聴く音楽だけでトレーニングが楽になる方法はあるのかということを調べてくれたブリティッシュコロンビア大学の行った研究があります。

    その結果としては、なんとなく想像がつくとは思いますが、ハイテンポの音楽を聴きながら運動してもらったグループが運動効率が高くなるということが確認されています。
    ですから、普段はスローテンポな音楽が好きな人でも、運動をする時にはハイテンポな音楽をかけた方が効率は良いということになります。
    自分のトレーニング用のプレイリストを作るのもいいと思います。

    しんどい運動の効果をより高めてくれるハイテンポな音楽だったというのが今回の研究の示すところですが、研究チームのコメントによると、音楽というものは通常は隔離戦略として使われるとされています。
    音楽には注意をそらす効果があるので、自分の注意を運動のしんどさや体の反応から音楽の方に注意をそらしてくれます。
    そうなると、心拍数や筋肉痛や疲労感などから注意をそらすことができます。

    運動する時にもしんどいとか辛いとばかり考えていると、体の疲れに対して余計に気づいてしまい、そのせいで余計に辛くなり挫折してしまうという人もいます。
    ですから、思わずそちらに気を取られてしまうようなテンポが速い曲を聴きながら運動を行うことによって、注意を自分の体から音楽に対して向けることができるようになります。
    そうなるとマルチタスクになって疲れが軽減され疲れづらくなり、しんどい運動も楽にこなすことができるようになります。
    それにより運動効率が上がるということです。

    特に、精神的な辛さや身体的な負荷の高いHIITのようなハードな運動を行う時には音楽が非常に効果的な戦略になるということを研究チームは言われています。
    ですから、皆さんもそんなハードな運動を行ったり新しい運動を取り入れるという時にはハイテンポな音楽を聴きながらしてみるのが良いのではないかということが言える研究でした。

    単純作業を行う時
    先ほどの筋トレと音楽に関しては、男性は音楽を聴きながら筋トレすると意味がなくなってしまうということでした。
    では、男性は音楽を聴くとやばいのかというと音楽を聴く場合のメリットもあります。筋肉を分解すると言われているストレスホルモンのコルチゾールの分泌を下げてくれたりもします。
    そして、音楽は単純作業の効率を上げてくれます。
    単純な繰り返しの作業や掃除や書類の整理といったあまり判断能力を使わなくてもいいような繰り返し作業の場合はその効率を高めてくれるということが分かっています。

    音楽は全く聴かないよりは聴いた方がいいということも分かっています。音楽は認知機能や生産性を高めてくれるという研究もあります。
    そういう意味では、男性は筋トレの前後に音楽を聴くのもいいかもしれません。筋トレが終わってプロテインを飲みながら自分の好きな音楽を聴くのがいいと思います。
    もしくは、グレゴリオ聖歌を聴きながら筋トレでしょうか 笑。
    筋トレを効率よくされたい方は参考にしていただけたらと思います。

    寝る時
    寝ながら聴くと記憶力が上がってしまうかもしれない音楽というものもあります。
    以前、モーツァルト効果といってモーツァルトを聴くと頭が良くなると言われていました。
    これ自体は実際には効果はないか、ほとんどないというぐらいだと言われています。
    ですから、モーツァルトをいくら聴いても頭は良くならないということです。

    だからといって、音楽というものが人間の脳や記憶に与える影響がないのかと言うとそういうわけではありません。
    これに関しては新しい可能性が最近浮上していて、クラシック音楽を聴くと頭が良くなるということは否定されてはいますが、睡眠中にクラシック音楽を聴いた場合に関しては効果が出るのではないかという興味深い研究が出ています。

    その方法としては、まずは勉強をしたり本を読みながらクラシック音楽を聴きます。これはベートーヴェンでもモーツァルトでも構いませんが、この実験ではベートーヴェンが使われています。
    そして、その夜に寝る時にも同じクラシック音楽をかけて眠るようにします。
    つまり、クラシック音楽を勉強する時にも聴いて、その日の夜に寝る時にも聴いています。
    これによって学んだ内容が脳に定着しやすくなるということがこの研究では示されています。

    授業の間に、クラシックを厳かな美術館で流れているぐらいの聴き取ることはできるけど静かに流れているという程度の音量でかけておいて、その授業を受けた学生たちが眠る時に、眠りに着いてから35分ぐらいでその曲をかけています。

    その結果、その翌日に学んだ経済学に関するテストを受けてもらったところ、なんと夜にクラシック音楽を聴いていた学生たちはそうでない学生よりもそのテストをパスする確率が高くなっていたということです。
    睡眠中の音楽が記憶を強化してくれるのではないかということが確認されたわけです。

    そのテストのスコアの上がり方としては、なんと女性の方が効果が大きかったということです。
    睡眠中に音楽を聴くことによる記憶のメリットは女性の方に多く現れていました。

    この睡眠中の音楽は暗記問題には違いはあまりもたらさなかったということも分かっています。
    ですが応用問題の成績はアップしてくれているので、単純に記憶力というよりは、覚えた記憶を上手に使う力を高めてくれるということなのではないかということがなんとなく分かる内容です。
    そして、その9ヶ月後にもう一度経済学のテストを行ったところ、9ヶ月後にはその音楽の効果は消えていたということです。

    このような睡眠中のクラシック音楽の効果というものは、いろいろな先行研究でも確認されてはいましたが、この研究の興味深いポイントとしては、男性よりも女性の方が記憶の効果が高いということと、短期的に記憶を強化してくれるというところです。
    このような効果が起きるのは、人間が何かをインプットしているときにはその周りの環境も同時にインプットしているということがあるからです。
    ですから、勉強をしている間にクラシック音楽を聴くので、その勉強の内容と音楽は脳の中で結びつき一緒に記憶されます。
    そして、眠っている間に音楽を聴くと、脳の中ではその音楽と勉強の内容が結びついているので、自然と勉強していた時の記憶が思い出されるわけです。
    これによって睡眠中に復習ができているということです。

    仕事や勉強をする時
    基本的には、音楽を聴きながら仕事や勉強をするということは、あらゆる環境の中でネガティブな影響があるものです。つまり、作業中の音楽というものは、気が散るだけでなく脳の処理能力も下げてしまうということが分かっています。
    脳の情報処理を行っている部分の一部が音楽の方に注意を持って行かれ、それにより、新しいことを発想しようとしたり新しいことを頭に入れようとしたり、目の前の作業に集中しようとしても一部の能力を音楽に持っていかれることになるので、結局効率が悪くなるわけです。
    基本的には、音楽は聴かず無音の方が捗るということです。

    ところが、人によっては音楽を聴いている時の方がはかどるという人が結構います。これは実際の作業効率を測定していないからそう思えるだけです。
    とはいえ、音楽を聴きながら勉強したり仕事をしている人が多いのは事実です。これは何故でしょうか。
    音楽をかけていると人間は気分が良くなります。気分が良くなったこの高揚感は達成感ととても似ていて、実際には仕事や勉強が進んでいないにも関わらず、やり遂げたような感覚を持ってしまいます。結局、ただ気分が良くなっているだけにもかかわらず、作業効率が上がっているように勘違いしてしまうわけです。

    では、音楽聴かないほうがいいのでしょうか。
    音楽を聴くことで気分は良くなります。自分が仕事や勉強をしたり、やるべきことをする10分から15分程度前に好きな音楽を聴いてください。そして、いざ開始する時には音楽を止めて無音にしてください。
    音楽を聴くことでいい気分になるのはドーパミンが出ているからです。これが達成感を生み出したり僕たちのやる気を引き出してくれます。

    そして、休憩中には音楽ではなく自然の音をかけてみるのも良いと思います。
    自然の音には様々な周波数の音が混ざっていますので癒し効果が高いと言われています。人間の注意は一点に集中してしまうと疲れてしまいますから、それがほどよく分散することで人間を癒してくれるということです。

    音楽がソーシャルスキルに役に立つ?!

    昔からピアノなどの楽器を学ぶことによって認知機能が良くなるという話はありましたが、どうやらソーシャルスキルを高める可能性もあるのではないかということが分かってきています。
    昔からピアノが特に効果が高いとされていますが、楽器を学ぶことによって IQ が上がるということが分かっています。
    ですが、それによって上がった IQ が学校の成績や社会に出た時に、本当に役に立つのかということはあまり分かっていませんでした。

    2020年にロンドン大学の研究チームが、音楽のトレーニングをすることによって子供の認知能力が上がるのか、そして、学校の成績が良くなるのかということを調べたメタ分析があります。
    研究では、1986年から2019年の間に行われた54件の様々な子供の認知能力と成績と音楽に関する研究のデータを再分析しています。
    合計で6984人の子供を対象にして、本当に音楽教育というものが認知能力が上がり成績が良くなるのかということを調べようとしたものです。
    その結果意外なことが分かっていて、音楽教育が認知能力や学校の成績の上昇に及ぼす効果というものはなかったということです。

    よく言われているような音楽が IQ を上げるとか学校の成績を上げるということに関しては、今回の研究に限っていうのであればなかったということです。
    もちろん、音楽を否定するものではありませんが、それによって頭が良くなることはないというのが今回の研究が示すところでした。
    言語スキルや非言語スキル、スピード関連スキルというような頭の回転を示すことに関しては、音楽を習っているかどうかということがそれほど関係はしていなかったということです。

    ですが、実際には他の部分に効果があったということです。
    音楽のトレーニングを行うことによって社会的なスキルが向上していたということです。
    いわゆるソーシャルスキルや自尊心を向上させる可能性があるのではないかということがこのデータから分かっています。

    ソーシャルスキルと自尊心の向上!
    これは意外なことではないでしょうか。
    ピアノを習ったりバイオリンを習ったりすることで、頭が良くなるのではないかと言われていたわけです。
    ところが、実際にはその効果はないのかもしれないけれど、社会に出てから役に立つであろうソーシャルスキルを高めてくれたり、自分の自信がなくなってしまうと言いたいことも言えなくなり、生きづらくなってしまうこともありますが、ありのままの自分を受け入れて自分をちゃんと誇れるような自尊心を高めてくれるという効果があったということです。
    そんな性格を身につけるために音楽が役に立つというわけです。

    これは音楽の新しい可能性なのかもしれません。
    子供に音楽を習わせたり子供の頃から音楽を学ぶことによって、社会に出てからコミュ力が無駄に低下してしまったり、それによって困るリスクを下げることができるかもしれないということがこの研究が示してくれることです。

    大人の場合には・・・
    では、大人になってから音楽を学ぶ意味はないのかと言うとそういうこともなく、大人になってからも音楽を学ぶことや言語を習得するということは脳に良い影響を及ぼすということも分かっています。
    脳の老化を防いだり認知能力を上げる可能性があるという研究もあります。

    大人になってからになると、どうしても新しいものを習うということが少なくなります。
    ですが、音楽を習ったり新しい言語を習うというのは脳にも良い影響があるので大人になってからもそのようなことはしたほうがいいということです。
    子供の場合にはそもそも新しいことが世界に溢れていますので、音楽を習ったり言語を習ったりすることももちろん将来的にそれが役に立つこともあるでしょうし素晴らしいことだと思います。

    頭の回転の早さや認知能力を鍛えるということを目的とするのであれば音楽を習うというのは大人になってからの方が効果が高いのかもしれないし、子供の頃に習っておくと将来大人になってから役に立つ人間関係力や自尊心を鍛えてくれるということになります。

    ですから、子供に将来コミュ障になってもらいたくないとか自分に自信を持てない人になってほしくないと思うのであれば、音楽は積極的に習わせてあげてもいいのではないのかということになります。

    音楽の力についてより学ぶために
    音楽に関しては、こちらの音楽と脳科学の専門家の本がとても面白いと思います。

    芸術的創造は脳のどこから産まれるか?

    師匠の友達の一流の研究者の方の本ですが、東大の医学部からオックスフォードに進み、マックスプランク研究所を経てケンブリッジに行き東大にいるというような素晴らしい経歴を持ちながら、ピアニストとしても活躍しながら脳科学者として研究もされているという方です。
    実際に音楽にも携わりながら音楽の効果について研究している人はそんなにいないでしょうから、音楽にまつわる研究も含めてとても面白い視点で書かれた本で楽しめると思います。
    是非音楽に関する最新の研究にも触れてみてください。

    ここまでは、音楽や映画を日常生活にどのように取り入れればいいのかというような話を中心にまとめさせてもらいました。
    ここから先は、音楽や映画が与える人間の性格に対する影響や、好きな音楽や映画からその人の性格を見抜く方法について紹介していきます。
    音楽や映画を使って人間関係をより良くしていきたいという方は是非続きをどうぞ。