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  • 一問一答「あなたが、最近他人と意見がぶつかったのはどんな時でしたか?」【無知の力】

    2023-03-04 12:00  
    330pt
    あなたが、最近他人と意見がぶつかったのはどんな時でしたか?

    今回は、友達に結婚の報告をしたらそっけなくなってしまったという方の相談をもとに、どんな意見の人とも衝突することなくコミュニケーションを取れるようになる無知の力について解説させてもらいます。

    「Q. 結婚の報告をしてから反応がそっけなくなってしまった友達がいるのですが、どうすればいいのでしょうか?」

    結婚の報告をしたことで、連絡をしてこなくなるとかそっけなくなるというのであれば、それは友達ではなかったということだと思います。
    友達のふりをしているだけの他人が減ったわけですから、それは良いことではないでしょうか。
    余計なコストも減ったと考えて、新しい友達を作ったらいいと思います。

    無駄な衝突を避けるための話し方について紹介したこともありますが、はっきり言って、人間は今ある人間関係にしがみつくから苦しくなるということがあります。

    基本的に、今の人間関係がなくなったとしても自分は大丈夫だと考えることができるようになると、人はかなり強くなります。
    大事なのは、自分は新しい友達をいつでも作ることができるという感覚を持つことができることだと思います。

    ですから、無駄な敵はできるだけ作らないように話し方なども学んでもらった上で、離れていく人たちは追わない、あるいは、攻撃してくるような人たちは切り捨てるということをちゃんとしてもらい、それに加えて新しい人間関係を作るということを同時に行なっていただけたらと思います。
    それができるようになれば人間関係は全く怖くなくなりますので、まずは自分を変えるということから取り組んで頂けたら良いのではないでしょうか。

    以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。

    無知の力で相手の態度を変える

    説得や交渉の場面では、まるで聞く耳をもってくれない取り付く島もないような相手もいたりします。
    このような相手と対峙するとどうすればいいのか悩むと思いますが、そんな相手の態度を変えるための方法を紹介させてもらいます。

    例えば、陰謀論を信じている人や反ワクチン派の人を相手に、皆さんが営業をしなくてはならないとなった時に、皆さんの商品やサービスを頭ごなしに否定してきたとします。
    頭が固い相手が皆さんの商品やサービスを全否定してきた時に、一生懸命良さを説明したり理解してもらおうと努力したのに、残念な結果になってしまうこともあると思います。

    そんな取り付く島もない相手の態度を変える方法についてです。
    取り付く島もなく話も聞いてくれない状態の人を交渉可能な状態にするための方法です。

    コロラド大学のフィリップ・ファーンバック博士の研究で、間違った考えを持っている人の態度を軟化させるための方法について調べてくれています。
    この博士は『知ってるつもり』という素晴らしい本を書かれた方で、無知の力で相手の態度を変えることができると言われています。


    知ってるつもり――無知の科学

    研究では、遺伝子組み換え食品に対して強い嫌悪感を示している人について調べています。
    遺伝子組み換え食品は地球に対しても人類に対しても優しい技術で、実際には問題が起きることはほぼありません。

    遺伝子組み換え穀物で育った動物たちを調べた研究を見てみると、特に悪影響はなかったとか、6年間の家畜に対するデータを調べても遺伝子組み換え食品の悪影響はなかったというデータもあります。
    83件の論文を調査して遺伝子組み換え食品の健康リスクを調べた研究でも、悪影響は特になかったとされています。

    科学者は断言はしないので引き続きの調査が必要だとは思いますが、どうやら遺伝子組み換え食品の健康リスクはないようです。
    危険性が指摘されたのはマウス実験だけで、質が高い研究などを見てみると問題ないのではないかと考えられます。

    人体に対してさらに深く調べられた研究もあり、2012年のアメリカ科学振興協会のレポートを見てみると、ここでも科学的に見て問題はないということが認められています。
    2013年に出た研究を見てみると、2002年から2012年の間に出された1783件の研究データをまとめた系統的レビューですが、ここでも遺伝子組み換え作物は科学的にみても安全で、環境に対しても人体に対しても問題がないとされています。

    遺伝子組み換え作物が人間の体内に取り込まれた時に、人間の遺伝子に取り込まれて問題が起きてしまうのではないかということを言っている人もいますが、当然ですが、食べ物の遺伝子が人間の遺伝子に取り込まれることはありません。
    結局のところ、遺伝子組み換え反対派が馬鹿げた指摘をしているだけだと言われている研究もあります。
    確かに、フカヒレを食べたからといって翌日鮫肌になったりはしません。

    認可された遺伝子組み換え作物をチェックしても、特殊なアレルギーや毒物になり得るような異常なタンパク質が見つかったという事実もないそうです。
    生態系を乱す特徴も今のところないらしいので、どうやら安全なようです。

    遺伝子組み換えがいいか悪いかの議論は置いておいて、遺伝子組み換えにより虫に強くなるということもあるので、農薬の量を減らすことができて、肥料を過剰に与える必要もなくなり環境にもいいのは確かです。総合的に見た場合には、遺伝子組み換え食品はいいのではないかと言われています。
    そういうこともあり、今更遺伝子組み換えについて議論することは、科学的にはナンセンスだと言われていますが、それでも根強く遺伝子組み換えを批判する人たちがいるわけです。
    博士の研究では、このような人たちがなぜいつまでも拘って批判し続けるのかということを調べたものです。

    つまり、事実がすでに塗り変わっていて結果が出ているにもかかわらず、それを否定し続けて、自分の考えが正しいと言い続ける頑固で無知な人たちは、どのような人なのかということを調べてくれたものです。

    2,500人を超える男女に遺伝子組み換え食品についてアンケートを行っています。それと合わせて、一般的な基礎的科学知識を問うテストを行いました。
    これにより、正しく科学知識を持っている人が批判しているのか、それとも、科学知識はないのに自分の中の思い込みで断言しているのかということを調べました。

    その結果、遺伝子組み換えに対する反対レベルが高い人ほど、科学の知識がなかったということです。
    反対している人ほど客観的に見た科学の知識が欠けているわけです。
    ところが、なぜか自分の知識は正しく科学に詳しいと言い始めてしまいました。

    遺伝子組み換えに対して、根拠のない反対をしている人たちには、ふたつの傾向が見られました。

    1. 自分から正しい情報を積極的に探さないように行動する
    正しい情報があるかもしれないということがわかっているのに、それをあえて無視しようとします。自分にとって都合の悪い情報は、それが事実であっても全て無視しようとしてしまいます。

    2. 正しい情報を伝えると否定的な態度が更に強くなる
    このような人たちに正しい情報を伝えると、根拠のない否定をしてしまい、最後には開き直るということまで起きてしまいます。
    正しい情報を出せば出すほど、余計に頑固になってしまいます。

    これらの傾向は、文化の差に限らず起きているということも分かっています。ただし、話題によって違うということもわかっています。食事やスポーツであれば反論しないような人も、最新のテクノロジーの分野などでは反論しやすいということです。

    このような人たちは、自分はそのことについて既に知っていると考えるので、新しいことを学ばなくなってしまいます。これが頑固なバカの正体です。
    自分が知っていると思っているからこそ、それを学ばない。学ばないからこそ、既に変わっていたり覆って便利になっていても、それを認めることができないわけです。

    では、このような人たちにどう対処すればいいのでしょうか。

    正しい情報を出せば出すほど頑固になるわけですから、彼らの自分は既に知っているから学ばないという姿勢を打ち砕く必要があります。

    正しいことを伝えるのではなく、「自分は意外と知識がないかもしれない。この人は本当に色々なことを勉強していて知っているな。」と思い込ませておいてから、話を聞きたいと感じさせるしかありません。
    おだてれば余計に自分は正しいと調子に乗りますし、否定すれば、さらに頑固になってしまいます。

    皆さん自身が頭がいいと思わせるわけです。そうして初めて相手は話を聞くようになります。
    仮に、遺伝子組み換えについて正しい情報を知ってほしいのであれば、遺伝子組み換えについてはひとまず触れないようにして、例えば、食品の知識や栄養の知識について色々と話します。それにより、色々なことを知っていると思ってくれば、徐々に心を開いてくれます。それから初めて、遺伝子組み換えについての正しい情報を伝えると、まともに聞いてくれるようになります。

    正しい情報を一生懸命伝えるよりも、「意外と自分は知識がないのではないか?」と相手に思わせる方が効果的です。

    アウトソーシング戦略

    相手に「意外と自分は知識がないのではないか?」と思わせるために、お互いの議論の内容以外のテーマに話題を移行させたり、外部の第三者や権威を利用して、相手の信頼感を高める方法があります。
    全く反対の意見を持っている相手と議論する時に使えるのがアウトソーシング戦略です。
    その9つのポイントについて解説していきます。

    ポイント1 :相手の反論の最後にアウトソーシングを使う
    相手が強く反論してきた時には、それを冷静に傾聴して、相手が話し終えたら冷静に質問します。
    例えば、その相手の反論が終わったら、「私はあなたの意見を詳しく理解できていないので、信頼できるデータを見せていただければ自分も意見が変わるかもしれませんし、良ければ次回そのようなデータを見せていただけるでしょうか?」という感じです。

    信頼できる客観的なデータを見せてもらえれば、自分はすぐに態度を変えるということを伝えます。
    自分はまだよくわかっていないという姿勢で、賛成していないけれど反論もしていないスタンスです。

    これによって相手がそれ以上にヒートアップしなくなります。
    これには「ゴールデンブリッジ」と「無知のモデル化」と「ラーニングフレーム」のテクニックが使われています。

    ゴールデンブリッジは、基本的に、会話をしている最中にその相手に対して、社会的な恥をかかせないためのテクニックです。
    いかに相手の面目を保ち、恥をかかせることなく会話を進めるかということが基本になります。
    難しい相手との会話でいかに信頼関係を勝ち取るかということは、相手に恥をかかせることなく、「この人は自分の面目を保ってくれる人だ」と思わせることが必須条件になります。

    無知のモデル化は相手の考え方を改めて詳しく説明してもらうテクニックです。
    例えば、相手の意見が間違っていると感じた時に「それは間違っているのではないですか?」と言うと、相手は「そんなことはない。自分は正しい!」と反論したくなってしまいます。
    それを防ぐために、「詳しく理解できていないので、その部分をもう一度説明してもらっていいですか?」と伝えます。

    相手に改めて詳しく説明してもらうわけですが、人は他の人に説明すればするほど理解が深まります。
    説明していることの理解が深まると、自分が言っていることの矛盾に気づけるようになります。
    相手に詳しく説明させることで、「自分が意外と無知だった」ということに気づかせるテクニックです。

    自分が詳しくないから相手に教えてくださいと言うと、特に男性は自分が負けたかのように考えてしまう人が多いですが、相手に教えてくださいとお願いすれば、相手は自分の無知に向き合うしかなくなります。

    ラーニングフレームは、相手を説得したり相手の意見を変えることを目的に色々な会話をするのではなく、その目的を「お互いが学び合うこと」とするテクニックです。
    どちらが上か下かという話ではなく、議論することによって理解が増えて学びが増えるというスタンスです。

    このようなマインドセットで相手と対峙することによって相手と関係を築くことができます。
    自分が専門家だとか相手よりも詳しいというスタンスでは相手は抵抗するだけです。
    相手が誰であってもコミュニケーションにより学びに繋がることが多いです。
    相手から学ぼうとする姿勢で向き合うだけでも、相手はそういう人に譲ってくれる可能性が高くなります。

    相手を説得したり、自分の商品やサービスを売り込みたいと思うのであれば、常に自分が学習するスタンスで質問するようにしてください。
    例えば、相手が競合他社の商品を使っていて、それが絶対に間違いないからと話を聞いてくれないのであれば、自分の商品の良さを一生懸命アピールするのではなく、相手が使っている商品のメリットについて教えてもらってください。
    相手が説明していると、話している中でそれほどメリットがないということに気づくこともあります。

    「アドバイス・シーキング」も効果的です。
    アドバイス・シーキングのテクニックを使うだけで、8%しか売れていなかったものが42%も売れるようになったという研究もあります。
    セールスのプロであればアドバイスを与える側の人間のイメージがあると思いますが、お客さんに対して「どれぐらいの価格や納期であれば買いたいと思うのか」「どのような点がわかりやすくて、どのような機能がついていれば、どんなサービスがついていれば買いたいと思うのか」というように、相手にサービスを良くするための方法を質問します。
    このように相手にアドバイスを求めるという行為を行うだけで、成約率がこんなにも高くなるということです。

    アドバイスを与えた相手に対する好感度が上がり、人間関係が良くなったり助けてくれる関係になったりして、セールスの場合であれば商品を買ってあげるという選択が自然と起こります。

    トップ企業の CEO や役員、大金を稼いでいるビジネスエリートたちは、このアドバイス・シーキングをコミュニケーションの中で頻繁に使っているということが、ミシガン大学の研究によりわかっています。
    多くの成功している経営陣たちが組織の中でのし上がるためにどんなテクニックを使ったのかということを調べた研究があり、これによるとアドバイス・シーキングのテクニックを使うことにより彼らはのし上がっていました。
    アドバイス・シーキングというものは、要するに、説得力の高いお世辞です。

    ポイント2 :中立的な人は何で納得するのかを聞く
    学ぶ姿勢でうまく質問して相手が会話をしてくれる姿勢になったら、次は中立的な姿勢の人であれば、どのような情報で納得するのかということを質問してみてください。

    例えば、商品やサービスを売り込もうとしているとして、その商品を使っている人でも競合の商品を使っている人でもない、全く関係のない第三者がいたとしたら、どのような情報や要素を信用して購入する商品を選ぶと思うかということを質問します。

    人は誰でも自分の意見が正しいと思うので相手と衝突します。
    そこで意見をぶつけると議論がヒートアップするだけですが、中立的な立場の第三者がどう思うかという質問をすると、冷静に物事を見ることができるようになります。

    もちろん相手が明確な根拠を持って自分の意見を信じている場合には、意見が変わらない場合もありますが、曖昧な情報や間違った情報を信じている場合には、第三者の視点を持つことによって態度が変わる可能性もあります。

    例えば、自分の恋愛については人は永遠に悩み続けますが、友達の恋愛の問題に対しては、どうするべきか即答でアドバイスすることができます。
    第三者視点になると余計な思い込みから抜け出して冷静に判断できるようになります。

    これは「アウトサイダー・クエスチョン」に近いと思います。アウトサイダー・クエスチョンは、相手に自分の信念や自分が出した結論を第三者の視点から考えさせるための質問です。

    例えば、相手が全ての人間は◯◯だ!と偏った意見を持っている人であれば、「全ての合理的な同じ結論を出すでしょうか?」と質問してください。
    それに相手がイエスと答えたら、「それなのにどうしてこんなにも多くの意見の違いがあるのでしょうか?」と質問します。
    「誰の信念が正しくて、誰の信念が間違っているのか、それはどのようにして見極めるのでしょうか?」というように続けていきます。
    「他の人ならどう考えるか?」それを考えさせるような質問です。

    夫婦喧嘩でも同じですが、相手と口論になったら「全く関係のない第三者がいたらどう思うか?」と質問してみてください。
    そうすれば自分も一歩引いて問題を見ることができるようになります。
    どちらが正しいかではなく、第三者から見た時にどこを見て判断するか考えてみてください。

    ここから先は残り7つのポイントについて解説していきます。
    無駄な衝突を避けるためにも、頑固な相手を上手く説得するためにも、ぜひ続きもチェックしてみてください。
     
  • 一問一答「あなたが自分の想いを理解してもらえなかったのはどんなときですか?」【敵を味方にする話術】

    2023-02-14 12:00  
    330pt
    あなたが自分の想いを理解してもらえなかったのはどんなときですか?

    今回は、親に都会に出ることを反対されているという方の相談をもとに、反発する相手すら味方にしてしまう話術について解説させてもらいます。

    「Q. 都会に移住して仕事をしたいのですが親が許してくれません。そのような親の心理状態はどのようなものなのでしょうか?」

    親の心理を理解しようとするよりは説得を学んだ方がいいと思います。親はずっと子供でいて欲しいと思っていたり変わって欲しくないものです。そういう意味では、自分が変わったという証拠を見せるか説得するしかありません。
    人間は理解し合えることができない生き物です。大切なのは理解し合うことができない中でも、どのようにしたら一緒に生きていくことができるかということを考えることです。
    それができない相手に対しては説得して進んでいくしかありません。

    以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。

    敵も味方にする技術

    プロの人質交渉人に学ぶ、反発してくる可能性が高い相手にさえも商品やサービスを売る話術について解説させてもらいます。
    営業やビジネスだけでなく、日常会話の中でもお願い事や頼み事をする時にも使えます。

    イエスと言わせるというよりは、ノーと言わせない方法です。
    多くの人は相手にイエスと言わせようとします。
    まずこれが間違いです。

    想像してみてください。
    あなたにイエスと言わせようとする人がいたとしたら、その人にどんな印象を感じるでしょうか?
    おそらく押しつけ感が強い印象を持つと思います。
    ですから、イエスと言わせようとする必要はなく、ただノーと言わせなければいいだけです。

    相手のNoを封じる言葉遣い
    セールスマンを対象に、どんな言葉遣いをしている人の営業成績が良いのかということを調べた研究があります。
    それによると、いかに相手の否定を封じるかということに特化したセールスマンの方が成績が良く、そんな言葉遣いが営業成績を決めるということが確認されています。

    イギリスで飛び込み営業をしているセールスマンの1ヶ月にわたる営業成績を集めて、どんな言葉遣いをすると営業成績が良くなるのかということを調べています。
    その結果、説得が上手なセールスマンは、相手にノーと言わせない言葉遣いが多かったそうです。

    相手が否定しづらい言葉遣いをすることが重要です。
    例えば、電話営業であれば、一度電話したけれど留守電でもう一度電話をしたら相手が出てくれたという時に、「今お電話よろしいですか?」「◯◯のサービスに興味はありませんか?」と質問すれば、ほとんどが即答で「結構です!」「間に合ってます!」と拒絶されて終わります。

    そうではなく「先日お電話させていただいたものです」「その際には弊社のサービスについての説明を留守電に残させていただきました」「今回は弊社のサービスの中でも◯◯について…」と話を続けると、相手は間違ったことを言われているわけではないのでノーとは言えません。

    つまり、相手にイエスかノーかの選択をさせない、とりあえず相槌を打ってくれそうな言い回しを最初に立て続けに話すわけです。
    別に相手の話を承諾したわけではなくても、思わず相槌を打ちながら話を聞いていると、なんとなく相手の申し出を承諾した気分になってしまいます。

    そして、ある程度話を聞いてくれたら、営業成績の良いセールスマンは、詳しく営業かけるためのスケジュールを調整します。
    興味があるかないか、買う気があるかないかとなると、いきなりイエスかノーかの選択を迫るようになってしまいます。
    いきなりスケジュールの話になると、相手がスケジュールを確保することに同意してくれたかのように持って行くことができます。

    例えば、「◯月◯日は空いていますか?」と質問すれば断られますが、「都合のよい日は頭に浮かんでますか?」と質問すると、その相手はその流れに承諾しているかのようになります。

    前置きの部分で相手がノーと言いづらい話を立て続けにした後で、上手にスケジュールの話に持って行きます。
    これによって前提として直接会って話をする流れかのように話を持っていくわけです。

    研究チームによると、見込み客がこちらの発言にノーと言うスタンスを制限すると、ネガティブな結果につながる可能性を少なくできると言われています。

    ですから、相手に営業したり交渉する時の話術を上手になりたいのであれば、機会があれば自分の話している会話を録音してみてください。
    自分の営業トークが冷静に考えて相手にノーと言わせる話し方になっていないかチェックしてみてください。

    例えば、女性をデートに誘うとしたら皆さんはどんな誘い方をしますか?

    「◯月◯日にデートに行こう」と誘うと断られやすいですが、まず最初に「イタリアンとフレンチだったらどっちが好き?」「来週と再来週だったらどっちの方が都合いい?」と誘うと相手は断りにくくなります。

    営業でもデートの誘いでも、選択肢にノーを入れないような話し方をするだけで、成功率は圧倒的に高くなります。

    絶対にNoを言わせない交渉術

    今回は人質交渉をしているような人たちについての研究をもとにしています。
    人質交渉では、当然ですが人命がかかっている状況です。
    そんな研究をもとに、相手にノーと言わせない交渉術の3つのポイントについて解説させてもらいます。

    ポイント1 :二人称の禁止
    人質交渉において人質の安全を確保するためには、犯人と交渉人の間に、協力関係があるかのように思わせる必要があります。

    商品やサービスを売る場合も同じです。
    モノを売る側と買う側となった瞬間に対立してしまいます。
    そうではなく、あくまで見込み客の相談者として、より良い結果を手に入れるために寄り添う姿勢を見せなくてはなりません。

    そのために使えるのが、夫婦関係も良くなるWeトークです。
    二人称を避けて、相手と相手の考え方を切り離して会話をします。
    「その考え方は〜」は構いませんが、「あなたは〜」と話すと関係もできていない中で人格を否定するような印象になります。

    実際にベテランの交渉人ほどWeを使うそうです。
    それによって犯人との間に協力関係があるような印象を持たせます。
    「あなた」と「私」ではなく、「我々がどうすれば一番良い結果にたどり着けるか考えましょう」というスタンスです。

    例えば、自分の商品を売り込む際に「あなたの使っている商品よりも私たちの商品の方がいいです」と言ってしまうと反感を持たれるだけです。
    「御社の売り上げを伸ばすために、できることがあれば協力したいし、ニーズを話していただければ、そのために役に立つ良いアイデアが生まれると思います」というように、一緒に考えるスタンスで話すためにWeトークを多用します。

    特に日本語では主語を曖昧にしてしまう会話が多いです。
    曖昧にすることで誰と誰が仲間なのかがわからなくなりますので、はっきりとわかりやすく使うようにしてください。

    ポイント2 :中立的ワード
    二人称の代わりに中立的ワードを使うのも効果的です。

    例えば、「あなたは〜」ではなく、「この状況では〜」「一般的には〜」というように、所有格をつけないことで相手ではなく世間の常識に物申すような印象を持たせます。

    ポイント3 :レッテルを貼らない
    相手の考えや信念というものは必ず自分とは違います。
    一部同じところはあるかもしれませんが、考えや信念が全く同じ人なんていません。
    ですから、相手の考えや信念に対してレッテルを貼るのは対立を生むだけです。

    例えば、「Aさんは誰もが医療を無料で受けることができるようにするべきだと考えているし、教育も全て税金で賄うべきだと考えている」ではなく、「Aさんは反資本主義だ」と言ってしまうと細かい部分が見えなくなります。
    レッテルを貼る行為は細かい部分が見えなくなるだけです。
    目の前の相手に対しても他人に対しても、レッテルを貼る行為は、それによって人を切り捨てることが平気でできる人だと思われます。
    その印象によって相手に抵抗感が生まれます。

    レッテルを貼る行為は物事を単純に見すぎる行為です。
    それによって、目の前の相手に対して細かいニーズにも気づけなくなります。
    簡単に他人にレッテルを貼っていれば楽に生きることはできるかもしれません。
    「反ワクチン派の人は〜」というようにレッテルを貼れば楽ではあるでしょうが、それは人を切り捨てる人と思われるだけでなく、自分自身の観察力が減ってしまいます。

    ポイント4 :「懐疑的」という言葉を使う
    相手の意見に反対しなくてはならない場合もあると思いますが、「私は反対です」「私は違います」ではなく「私は懐疑的です」という言葉を使ってください。
    もちろん安易に同調すると、後々足元を救われたりしますので反対しなくてはいけない時もあると思います。
    「私は反対です」と言ってしまうと取り付く島がないような印象を与え、相手は余計に態度を変えなくなってしまいます。

    「懐疑的です」「断言はできません」という言葉は、相手の考えや心をそこまでこじらせることはありません。
    例えば、政治の話になるとなかなか面倒なこともあると思いますが、その場合も同調したり反対するわけでなく「それについては懐疑的で〜」と答えると、そこから議論が始まって考えは違っても親しくなれることもあります。

    視点を変える会話のリフレーミング

    相手との会話を別の言葉で表現してお互いの視点を変えるテクニックです。

    会話のテーマによって人の意見は変わります。
    例えば、「女性が家事や育児をするべきだ」という意見を聞くと、間違いなく叩かれますし批判したくもなります。
    同じような意見だったとしても、「女性は男性よりも観察力に優れているので、家事や育児では男性よりも高い能力を発揮することが多い」という意見であれば、納得することもできると思います。

    同じようなことを言っているにも関わらず、ほんの少しテーマや視点を変えるだけで、人は考えや態度が変わります。
    それを上手に使うのが会話のリフレーミングです。

    例えば、アメリカで銃規制の話題になると、多くの人が人権や安全についての議論を始めます。
    人が銃を持つことに賛成だという考えの人がいたとして、その人が子供を持っているとしたら、「あなたは子供を愛している良い親だと思いますが、もし子供が銃を持っていたとしたら心配になりますよね?それについてはどのように考えますか?」と質問すると、銃規制の問題から「良い親の子供に対する責任」という問題に話をすり替えるテクニックです。
    そうなると強硬な意見を持っていた人も、さすがに子供に銃を持たせるのは問題なのではないかと態度が変わってきます。

    相手を一生懸命説得しようとするよりも、話題のテーマを変えたり会話をリフレーミングする方が相手は態度を変えやすくなることが多いです。
    会話のリフレーミングのための3つのポイントを紹介しておきます。

    ポイント1 :共通点を中心話題に
    例えば、大麻の合法化についての議論をしているとしたら、大麻を禁止するべきだと主張している人は多くの場合は乱用による問題を不安視していて、合法化するべきだと主張している人は、それによって医療的に助かる人がいるということを中心に考えています。
    ここで考えていただけると、どちらも「節度を守って使う」という点では同じことを言っています。

    このような意見がぶつかっている状況で、お互いの意見が違う部分に注目しては対立が強くなるだけです。
    お互いのポジションが全く違うように見えたとしても、実際には一部に共通点があることがほとんどです。
    その共通点を中心に議論していくことが大切です。

    大麻によって助かる命があるということと同時に、若者たちの濫用が問題なのであれば、若者たちの大麻の濫用を防ぎながら、本当に必要な人に届ける方法はないだろうかという議論ができれば、病院だけでは使えるようにするとか処方箋を必要にするなど、建設的な意見が生まれることだってあります。

    共通点を話題の中心にして、どうすれば共通点の部分を同時に叶えることができるかと考えられるようになると、相手の態度は一気に変わり一緒に話し合って解決していこうとするようになります。

    自分の意見を押し付けて相手の態度を変えようとしても変わりません。
    反対意見との間にある共通点を見つけて、その共通点について根本的な議論をするようにしてください。

    ポイント2 :公共の利益を話題に
    議論の内容や衝突している部分をリフレーミングして 、「より社会の役に立つ」「より公共の利益につながる」内容として視点を変えていきます。

    例えば、皆さんがサービスを売り込みに行ったとして、相手がコストも上がるし渋っていたとしたら、「このサービスを使ってくれれば御社の顧客満足度はこれぐらい上がるはずです。そうなればお客さんは喜んでくれるのはもちろんですが、それによってもっと社会は良くなると思いませんか?」というような言い方をします。

    コストの問題に執着している相手に対して、価格の部分に注目して議論しても平行線ですが、それによってより多くの人が喜んで公共の利益につながるとなると効果的です。
    特にこのタイプのリフレーミングは、相手が強い抵抗を示している時や不機嫌になっている時に効果的です。

    特に、ここ最近では原材料が高騰して値上げを要求しなくてはならない状況も多いと思います。
    例えば、「他社は値上げができないから質を落としてでも価格を維持しようとする企業が多いですが、御社が理解を示してくれたら質を担保することができるので、ユーザーはそれを理解してくれて、結果的に世の中を変えることができるはずです」と言われると、社会に貢献できるという感情が芽生えてイライラした感情も落ち着いてきます。

    人は社会的な繋がりを感じるとモチベーションが上がったり、自己コントロール能力が高まります。
    それを感じさせるのがこのタイプのリフレーミングです。

    ポイント3 :ポジティブに変換する
    相手に「その通りです」と同意させるためには、どうするべきなのかを考えてリフレーミングする方法です。
    これはネガティブな話題をポジティブにリフレーミングすると効果的です。

    例えば、家庭の中でお父さんとお母さんのどちらが子供の送り迎えをするべきかという議論が行われていたとしたら、時間を取られることとか仕事との兼ね合いばかりで議論しがちです。
    そうではなく「送り迎えで子供との時間が生まれる」という視点で、「どちらが子供との会話のチャンスを手にするか」という議論にリフレーミングします。

    よく言われることですが、これもあっという間に大きくなってしまい、親が子供と一緒に過ごすことができる時間なんて限られています。
    このようにポジティブにリフレーミングすると、今のうちに子供と接する機会をしっかり作っておかないと、大きくなった時に口を聞いてもらえなくなるのではないかと考え始めたりします。

    手間や面倒などを議論の中心にすると対立する問題であっても、そこから生まれる体験や時間にリフレーミングすると、相手が簡単に態度を変えてくれることもあります。

    人を動かすためのおすすめ本
    今回のおすすめの本としては説得にまつわる本を紹介しておきます。
    まずは説得力としてはやはりこちらの本は必読です。

    影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
    そして、人間というものは愚かな思い込みや今回の滑り台効果のようなどうしても抗うことができない本能を持っています。
    この人間の本能を利用するととても強力な説得力を生み出すこともできます。
    その人間が持っている本能を教えてくれる本がこの本です。

    この本は人間の判断や意思決定に関する研究を基にして、人の判断がどのようにして行われているのかということを解説してくれています。

    ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 文庫 (上)(下)セット

    ここから先は、交渉の場面から日常の会話まで、相手の態度を変えさせるためのテクニックをさらに解説していきます。
    ぜひ続きもチェックしてみてください。
     
  • 一問一答「あなたのこれはやらかしたなぁと思うネタはどんなことですか?」【ゴールデンブリッジ戦略】

    2023-01-26 12:00  
    330pt
    あなたのこれはやらかしたなぁと思うネタはどんなことですか?

    今回は、同僚の退職を踏みとどまらせる方法についての相談をもとに、相手の意見や判断を変えるための会話術について紹介させてもらいます。
    奥さんや旦那さんの考えを変えたい、親や家族の考えを変えたい、身近な人の考えや態度を変えたいという相談もよくあります。
    相手の考えや態度を変えさせるための会話術についてです。

    「Q. 人間関係を理由に辞めようとしている同僚の退職を上司に止めるように言われて悩んでいます。どうすればいいでしょうか?」

    無理だと思います。
    人間関係を理由に退職しようとするということは、結局、自分のことを理解してくれる人がいないから辞めるわけですから、自分が理解者になってあげるくらいしか方法はないと思います。

    ということは、上司からの指示で退職を止めようとしているということがバレた瞬間に、その人から見たら敵になってしまいます。
    会社を辞めようとしている人を止めるのは難しいものです。

    上司の方もおそらくしていると思いますが、そのような説得をする時に、ほとんどの人は理由を尋ねます。
    Whyで質問をすると、人は今自分が考えていることを正当化する理由を探そうとするものです。なぜ辞めるのかと尋ねると辞める理由を色々と考えると思います。
    そのようにして相手に辞める理由をいろいろと考えさせてしまうと、それにより人間は自分の考えに固執するようになってしまいます。

    では、どのような質問をすればいいのかと言うと、Whatの質問です。辞める目的を尋ねてください。
    例えば、もっと良い人間関係の会社に行きたいとか、もっと会社の中での裁量権が欲しいなど、目的が色々とあるはずです。

    理由ではなく目的を尋ねて、会社を辞めて何をしたいのかということを質問して、その目的が会社にいてもできるのではないかということに相手に気づかせると、意見を変える可能性も出てくる場合もあります。

    以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。

    ゴールデンブリッジ戦略

    ハーバード・ネゴシエーション・プロジェクトというものがあり、交渉術について研究してくれています。
    交渉や説得、営業などを成功させる必須条件として「ゴールデンブリッジ」を作り出せるとされています。
    それによって相手との関係が極めて良くなり、抵抗している相手に対しても信頼関係を作って意見を変えることもできます。
    まさに、自分と相手の間に黄金の橋渡しをするイメージです。
    相手との間に強力な信頼関係ができていたら、かなり気心が知れた友達と同じぐらいに信頼感を与えることができます。

    これは相手の信念に介入するテクニックになりますので、かなりのレベルのセルフコントロール能力が必要になります。
    自分をちゃんとコントロールして、相手との間に黄金の橋渡しをするところまで頑張らなくてはなりません。

    基本的には、会話をしている最中にその相手に対して「社会的な恥をかかせない」ということがポイントになります。
    いかに相手の面目を保ち、恥をかかせることなく会話を進めるかということが基本になります。

    難しい相手との会話でいかに信頼関係を勝ち取るかということは、相手に恥をかかせることなく、「この人は自分の面目を保ってくれる人だ」と思わせることが必須条件になります。
    これができれば、相手が無駄なプレッシャーを感じたりすることがなくなります。

    プレッシャーを感じることもなく気心が知れた相手であれば、皆さんも自分の残念な話や失敗談、どうでもいいバカ話なども気軽にできるものです。
    自分の無知を認めることができたり、自分の信念を変えることさえもできます。

    つまり、態度を変えてくれない人、説得に応じてくれない人は、説得に応じるのが嫌というよりも、自分が間違っているということを認めてしまったら、それによって自分はダメージを受けてしまうのではないかという恐怖心を持っています。
    人が自分の無知を認めることができず間違いを認めるのも苦手なのは、それによって自分が恥をかきたくないからです。

    ということは、逆に考えれば、皆さんが相手を説得したり交渉する際に、「自分は絶対にあなたに恥をかかせない人間だ」ということをちゃんと伝えることができれば、相手は自分が間違っていることに気づいて、自分の考えを変えることができます。

    多くの人は会話をしていると自分が間違っていることに気づきます。
    それに気づいているけれど認められないだけです。
    だから交渉も進まないし、誰が考えても考えを変えるべきようなことであっても、相手が納得してくれない状況が生まれてしまうわけです。

    これは人の恥をかきたくないという思いがあるからです。
    新しいことに挑戦するのが怖いという人も失敗した時に恥をかきたくないからです。
    日本人の新しい語学を学ぶことに対する抵抗が強いのも、ちゃんと喋らないといけないと考え変な英語で恥をかきたくないからです。
    そんな恥をかきたくないという感情を上手にコントロールしてあげれば、相手はこちらが求める合理的な判断をしてくれるようになります。

    今回は皆さんが相手との間に黄金の架け橋をするための7つのポイントについて解説させてもらいます。

    1. 自分のされたいことをせよ
    相手に恥をかかせないように会話をしようとすると、丁寧に伝えようとしたり、礼儀正しく会話をすることが重要だと考える人も多いと思います。
    社会的なルールやマナーを守ろうとする人も多いでしょうが、それでは相手の恥をかきたくないという感情を払拭することはできません。
    むしろ、礼儀やマナーをガチガチに気にしていると、相手も余計に緊張したりプレッシャーを感じてしまいます。

    失敗や間違いを認めざるを得なくなった時に、それが自分だったとしたら皆さんはどのように相手にしてもらいたいと考えますか?

    想像してください。
    自分が相手と同じ状況になった時に、どんな言動をしてもらいたいのかということを考えてください。

    自分が追い詰められて謝らなくてはならなくなった時、自分の間違いを指摘されて間違いを認めざるを得なくなった時、皆さんはどのように声をかけてもらいたいですか?
    これだけでも相手に伝えるべきことが想像できます。

    自分でも間違ったり言い過ぎたことは理解しています。
    それでも一度感情的になった手前素直に謝ることができないわけです。
    そんな皆さんを否定したり反発している人ばかりの中で、皆さんの気持ちに寄り添って理解を示してくれた人がいて、その人がそっと声をかけてくれたとしたら、素直に自分の考えていたことを話したりすることもできると思います。

    ちなみに、上級者になると、あえて相手を追い込む状況に持っていってプレッシャーをかけた上で、最後に助け舟を出して間違いを認めさせるという方法もありますが、これはかなりレベルが高いのでやめておいた方がいいと思います。

    皆さんがもし相手を追い詰めてしまった場合も同じように考えてください。
    もし自分が追い詰められた状況であれば、どんな声をかけてもらいたいだろうかと想像して、その言葉を相手にかけてあげてください。

    間違っている人に、それは間違いだと反論したり自分の意見をぶつけても相手は変わりません。
    ですが、本音で優しく理解を示してくれた上で、「でもね…」と正論を話してくれる人は、相手を反省させた上で行動を変えさせることができます。
    頭ごなしに自分の意見をぶつけてくる人は、余計に相手の態度を固くしてしまうだけです。

    自分が苦しい時に救われた名言を覚えておくこともおすすめです。
    相手が苦しい時には、自分の経験やその名言について触れながらやさしく解きほぐすことも効果的です。

    「意固地な者とは他人に受け入れられなかった弱者であり、また他人の評判などを気にしない強者のみが、凡人には弱さと見られるようなあの優しさを持つことができる。」/マルセル・プルースト

    2. 外交的手榴弾の禁止
    人は相手が間違っていることが確定したと思った瞬間に、その相手に罰やペナルティを課すべきだと考えます。
    それを外交的手榴弾と言います。

    「ほら、やっぱり!」
    「だから言っただろ!」
    「やっぱり自分の言った通りになった!」
    「そんなこともわからなかったの?」
    「そんなことも想像できなかったの?」
    このような発言をして相手を追い詰めた経験はありませんか?

    これが自分の上司であれば、追い詰められたらその場では謝るかもしれませんが、心の中では絶対にやり返してやろうと考えています。

    相手の意見を変えたいと思っているのに、相手の間違いを認めさせるような言葉を投げつけてしまうと、相手は結局抵抗しかしなくなります。
    重要なのは相手が自分の間違いに気づいて考えを変えてもらうことです。

    相手の意見を変えたいと思うのであれば、間違いには自分で気づいてもらうしかありません。
    より詳細な内容を聞くための質問を投げかけたりしながら、矛盾や間違いに自分で気づいてもらうようにするしかありません。
    他人の意見を変えるのが上手な人は、論破ではなく質問が上手な人です。

    つまり、相手の代わりにクリティカルシンキングをしてあげます。
    いろんな角度から相手に質問を投げかけてあげて、その質問に答えながら自分で気づくようにしてあげてください。

    そして、相手が間違いに気づきはじめたと感じたら、未来志向の会話で話題を変えてください。
    例えば、「これからどうすれば良くなるか一緒に考えよう」と話題を変えていくのが良い方法です。

    相手の意見を変えるのであれば、相手を責めることはNGです。
    相手が意見を変えても、相手を責める必要はありません。

    「相手を黙らせたからといって、相手の意見を変えさせたわけではない。」/バーナード・ショー

    3. 雰囲気の描写
    相手とのやり取りが険悪になったり意見が衝突して平行線になることもあると思います。
    お互いに譲ることができない状況で雰囲気が悪くなることもあると思います。

    会話が白熱しすぎてしまった時には、「会話がヒートアップして雰囲気が悪くなりましたね」と、その場の雰囲気を描写するようにしてください。
    その場の雰囲気を描写するだけで、会話のヴィパッサナー瞑想のような効果があります。

    人は感情に飲まれてしまう生き物です。
    感情に飲まれて自分たちが話していることに夢中になってしまいます。
    それによって雰囲気が悪くなってしまったことにもほとんどの人は気づくことができません。

    そこで雰囲気が悪くなったことを描写すると、相手もそれに気づくことができて、本当に大事な話題や本題について話そうとすることができます。
    雰囲気が悪くなったら、その雰囲気をそのまま描写するということを覚えておいてください。

    特にこの方法は、皆さんが第三者で他の人同士が白熱しすぎた状況で役に立ちます。
    どちらの側にも応援になるような言葉をかけることができない状況の中では、その場の雰囲気を描写してください。
    どちらに対しても「落ち着いて話してください」などと言う必要はなく、その場の雰囲気を描写するだけです。
    特に目上の人に落ち着いてくださいと言ったところで、余計にヒートアップするだけですから、ただ雰囲気を描写するだけにしてください。
    これも指摘するのではなく相手に自然と気づかせるだけです。

    「議論から最大の利益を得る 唯一の方法は、 議論を避けることである。」/デールカーネギー

    4. 明示的同意
    これは普通の会話でも大切にしてもらいたいポイントですが、相手の意見に同意しているということを明示してください。

    例えば、相手が「みんなが脱税なんてせずに公平に税金を納めることを望んでいる」と言っていたとしたら、実際には公平というのがどう定義されるかによっても変わってくるとしても、自分にとっての定義や自分の意見は別として、普通に考えて同意できる内容ですから、「私もそう思います、私と同意見ですね」と逐一言葉にして伝えてください。

    お互いが同じ意見を持っている、お互いには共通点がある、そう感じられることを都度言葉にしてはっきりと伝えてください。

    最近「私もそう思います」「私も同じ意見です」などと、はっきり言ったことを思い出しますか?
    人は相手と自分が同じ意見だということをわざわざ言わないのに、「私は違うと思う」「私はあなたとは違う」ということははっきりと言ってしまいます。

    明示的同意はしないのに反論ばかりしている人が多いです。
    今日からは、同意は明示して、反論は暗示してください。

    反論や疑問が思い浮かんだら、詳細を尋ねる質問を投げかけて、暗に自分から気づくようにしてあげるだけです。
    相手との同意や共通点ははっきりと明示してください。

    過去に見つけた共通点を再度明示するというのも使えるテクニックです。
    そして、共通点について相手に質問するというのも使えます。
    例えば、以前に動物が好きという話で盛り上がっていたとしたら、「そういえば…」と思い出したかのように、共通点に触れる話を振ります。

    「垣根は相手がつくっているのではなく、自分がつくっている。」/アリストテレス

    説得のためのおすすめ
    『影響力の武器』シリーズの共著者の方の本ですが、人に影響を与え心を動かす情報発信者の共通点について教えてくれる本です。

    情報発信者(メッセンジャー)の武器:なぜ、人は引き寄せられるのか

    ここから先の残りのポイントと、皆さんが実際に説得や交渉だけでなく、日常の会話でゴールデンブリッジ戦略を使えるようになるための方法について知りたい方は、ぜひ続きもチェックしてみてください。
     
  • 一問一答「あなたが最近つい惑わされてしまった情報とはどんなものですか?」【欠陥理論の見抜き方】

    2022-07-14 13:20  
    330pt
    あなたが最近つい惑わされてしまった情報とはどんなものですか?

    今回は、コロナワクチンについての相談をもとに、論理的に物事を考え話し合いや議論をするための「欠陥理論」の見抜き方について解説させてもらいます。
    自分の考えに同調して欲しくて自分の強い思いや極論をぶつけてくる人がいます。
    世の中には間違った情報も溢れています。
    今回は、何が正しいのか? ということではなく、その情報を冷静に捉えて自分の頭で考えるために参考にしていただけたらと思います。

    Q. コロナのワクチンについてどのように考えていますか?海外では義務化になっている国もあったりしますが、ワクチンで死んでいる方もいると聞きます。

    そもそもマスコミのことはそんなに信じていませんが、ワクチンで死んだかどうかということはなかなか断定が難しいです。
    仮にですが、10万人ワクチンを接種して200人死んだとしても、それでコロナを抑え込むことができるのであればいいのではないかというのが残念ながら全体的に見た世の中の考え方です。

    これが民主主義でもありますし、皆さんも多数決で決めることがあると思います。
    これは多数の人の幸せを優先して少数の人の幸せを諦めることです。多数決は多数派による独裁とも言えますので、ワクチンを打った方がいいという人が多数派になれば義務化されることもあるかもしれません。

    ワクチンの危険性という点では、過去に子宮頸がんのワクチンの問題がありました。
    このワクチンを接種した後に女の子がギランバレー症候群になるということが起きました。
    これもメディアが当時かなり騒ぎましたが、その後に日本人のみを対象にした名古屋スタディという研究によって相関性がなかったということが証明されています。
    この名古屋スタディはこのワクチンの危険性を証明しようと思い始まった研究でしたので、その点では信用できるものだとも思います。

    もちろん、そのギランバレー症候群になった女の子はかわいそうだと思いますし治って欲しいと思います。
    ただ、それはたまたまワクチンを打ったタイミングと発症したタイミングが重なっただけで、そこに因果関係はなかったということです。

    その事実がどうなのかはわかりません。ただ、それを安易に結びつけてテレビがネガティブキャンペーンを行いました。
    その結果、先進国では子宮頸がんで死ぬ人はほとんどいないのに日本ではまだいます。
    結果的に、死ななくてもいい命がたくさん死んでいます。
    個人的には、助かる命が多いのであれば採用するべきだと思いますし、僕はワクチンも打っています。

    以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。

    論理的な思考のためのおすすめ本
    論理的な思考について学ぶのであれば有名なのがこちらの本です。
    仕事にも使えるような論理的な思考を身につけるために役に立つと思います。

    イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」

    世の中にはおかしなことはたくさんあります。
    それをクリティカル・シンキングによって違う視点で見ることで、自分を守るためにも役に立つのがこちらの本です。
    多角的な視点を持ち、お金や投資や人生の大切な判断で間違わないためにとても参考になります。

    まどわされない思考 非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために The Irrational Ape (角川書店単行本)

    論破や詭弁のテクニックについて参考になる本も紹介しておきます。
    何か言われた時に言い返すことができないという人は、反論の技術を学んでおくことで対応できるようになります。
    そのためにはこちらの2冊が役に立つと思います。

    レトリックと詭弁 ─禁断の議論術講座 (ちくま文庫)

    反論の技術―その意義と訓練方法 (オピニオン叢書)

    「欠陥理論」:論理の穴の見抜き方

    皆さんが会話をしたり議論をしたりする時に、冷静に考えればおかしいことなのに、なぜかそのまま話が進んでいくという状況を経験したこともあると思います。
    冷静に考えればわかるはずなのに、なぜか皆が納得したまま話が進んでいってしまいます。

    このような状況を生み出す話し方について解説させてもらいます。
    この話し方の癖を皆さんが持っていたとしても、それを改善する必要はおそらくありません。
    なぜかと言うとほとんどの人が気づかないからです。

    これは論破のテクニックとして使うこともできると思います。
    自分の発言に説得力を持たせたり信憑性を持たせることが難しい時に使える話し方です。

    ですが、これを議論の中で相手が仕掛けてきた場合には、それに気づくことができれば、そこはウィークポイントですから対処することができるようになります。
    あるいは、世の中や会社の中の議論や話し合いの中で、もしこれが使われているのであれば、これもそこがウィークポイントということですから、その部分を狙って自分が論を組み立てることもできます。

    もしビジネスアイデアでこれが使われていたら、その部分を補うようなアイデアを考えることで、ビジネスをより強く育てることもできます。

    つまり、論理的に弱い部分を見つけるための方法が「欠陥理論」というテクニックになります。
    論理的に物事を考え発言することができれば、周りからは頭がいい人だと思われ、ビジネスであれば優秀な人だと判断されやすくなります。
    論理の穴を知っていると説得力を持たせた話し方もできます。

    多くの議論では論理に穴が開いたまま話が進むものです。
    皆さんが仕事をしている中でも、世の中で議論されていることでも、証拠が提示されているわけでもないのに、なんとなく言われてみればそれっぽいと理解したりします。
    化粧品の広告でもニュースでも、このような情報は世の中に溢れています。
    それを見抜くためにも役に立つテクニックです。

    「欠陥理論」7つのパターン

    パターン1 :矛盾
    同じ議論の中で正反対の情報が示されるパターンを欠陥理論では矛盾と言います。

    同じ議論や同じ人の発言の中で、真逆の情報が提示されていることは結構あります。
    なぜか僕たちはそれに気づきません。

    例えば、参考にしている文献で出てくる事例としては、「今学校は人員過剰で教員はそんなにいらない」と言いながら、その話の中で「スクールカウンセラーを増やす必要があります」というような発言です。

    会社であれば、「人が足りない」と言いながら、「人件費にお金をかけすぎだ」というような発言をする人も結構いると思います。

    これは直後に発言するのであれば、明らかに気づくことができると思います。
    ところが、会議の仲や議論の中の違うタイミングで出してくる人が結構います。

    例えば、「国は税金を取り過ぎだから私が無駄を削って税金を減らす」と選挙で発言していた政治家がいたとします。
    ところが、当選した後には、「税収を増やして福祉を拡充しなければいけない」と言い始めます。

    いわゆる手のひら返しのようなものですが、これを同じ議論の中で平気でしてくる人がいます。
    これが矛盾というものです。

    これは日常の中でも結構あります。
    例えば、彼氏や旦那さんに対して「私と仕事のどちらが大事なの?」とか「私の気持ちは何でわかってくれないの?」と言う女性は男性の気持ちはわかっていません。
    仕事を頑張っている男性の気持ちはわかっていないのに、自分の気持ちはわかってくれないと主張するわけです。
    もちろん、男性も女性に対して同じようなことをしていることは結構あります。

    これは間違わないでもらいたいことですが、この矛盾がない人はいません。
    よほど自分の信念をしっかり持っていたり、それぞれの物事に対して自分の判断基準を明確にしている人でなければ、誰でも少なからず矛盾はあります。

    自分にとってそんなに大切ではない部分や、普段から価値基準を明確にするほどではないと考えている部分に関しては、人は誰でも一貫性はないこともあります。
    基本的には矛盾が多いのが人間です。
    それを殊更に指摘することで議論を有利に進めることができるテクニックです。

    パターン2 :偶然
    その議論が例外に基づいていることを認識していない、あるいは、それを認識しながらもそれを隠しているパターンです。

    偶然その結果が出ているだけなのに、それをあたかも因果関係があるかのように主張するというものです。

    例えば、テレビに広告を出したからその商品が売れたかどうかはわからないのに、テレビに広告を出した後に商品の売上が上がっているから広告の効果があったという発言です。
    データで検証しない限りは、本当にそれが効果があったのかどうかはわかりません。
    偶然、どこかの有名人が SNS で紹介していただけかもしれません。

    それを単純に捉えて因果関係があると主張してしまうパターンです。
    あるいは、それに気付いていながら因果関係があるかのように表現する手法です。

    これはあまり質が良くない論文でもよくあります。
    例えば、運動能力と成績が良い学生を標準として使い、スポーツ訓練がすべての学生の学力向上に必要不可欠だと主張するような論文です。
    もちろん、心肺機能が学力につながるということはありますが、元々運動能力と成績が良い学生を集めているだけなのに、それをもとにそこに関連性があるとまで主張するのは間違っています。
    母集団の中にあった偶然をあたかも因果関係があるかのように見せるパターンです。

    ここから先は、欠陥理論の続きについて解説させてもらいます。
    ぜひ続きもチェックしてみてください。