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  • リモートコミュニケーションをハックする|簗瀨洋平・消極性研究会 SIGSHY

    2021-03-16 07:00  
    550pt

    消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。今回は簗瀨洋平さんの寄稿です。いまや当たり前になりつつあるリモートコミュニケーションですが、プライベートな姿や部屋の中を見られることに抵抗を感じる方も多いはず。今回は「自分アバター」や音声合成アプリなどを用いて、消極的な人がより気軽に会話に参加できる方法について考察します。
    消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。第21回 リモートコミュニケーションをハックする
     消極性研究会の簗瀨です。
     前回に引き続き今回もリモートワークにおけるコミュニケーションについていろいろと書いていきたいとおもいます。
     さて、新年に入ってだいぶ経ちますが、昨年末は会社でオンライン懇親会がありました。懇親会のメインはオンラインビンゴのシステムを使い、社員とその家族、総勢80名ほどで会社や有志から様々な物品やサービスの争奪戦を行いました。それぞれこれが欲しい、あれが欲しいという話が事前にされており、当日は悲喜こもごもでなかなか盛り上がったかと思います。
     ビンゴゲームの良いところは毎回の偶然ではなく、ステップを踏んで徐々に当たりに近づいていくというワクワク感ですよね。あと一つでビンゴというリーチ状態になった時はだいぶテンションも上がっているかと思います。  しかしスタートダッシュに遅れると、当たった人たちやリーチがかかった人たちがエキサイトしているのを眺めるばかりでむしろ醒めてしまうということもあるのではないでしょうか。いやありますね。私はまさにそれで、最後の一人がビンゴとなった時にはまだ一つもリーチがないという状態でした。
     これを解決するにはどうすれば良いでしょうか?  一つはビンゴと並行して、別なくじ引きを実施することです。参加者それぞれが一つの当選番号を持っていて、引いた数字がそれだったらビンゴの景品とは別な何か軽いもの(例えばAmazonギフト券など)が当たるようにしておくわけです。こうするとリーチが出ていなくても何かが当たる可能性は常に出てきます。
     もう一つ考えついたのは、特定の数字(例えば0)が出たらそれまで開けたマスを逆転させるという方式です。つまりリーチ状態だとその列は一つだけ開いた状態、一つもマス目が開いていなければ即座にビンゴということもあります。

     あまり前半で出ても意味がないので、半分くらいの数字が引かれたところで逆転数を投入するみたいな運用がいいですね。ほとんど開いていない人はチャンスが出てきますし、逆にリーチになっている人は逆転数が出ないように毎回ドキドキすることになります。全員が最後まで興味をうしなわない、とはならなくても前半で脱落してしまう人は減るのではないでしょうか。  途中でヒエラルキーが覆るルールとしてはトランプの大富豪における革命ルールなどが存在します。
     この二つ目のルール、実はこの原稿を書いた時に考えついたのでまだ試したことはありません。物理的なビンゴでは実施がなかなかむずかしそうですので何かしらデジタルなシステムを作る必要はありますが、2021年の懇親会がまたオンラインだったら試してみるつもりです。
    オンライン会議で油断を可能にする自分アバター
     私はもともとスーツを着て仕事をするスタイルではないのですが、仕事に行く時は襟のある服を着て髭も剃って出かけていました。しかし、昨年の3月から新型コロナの影響で出勤が禁止となり、家で仕事をするようになってからは部屋着のまま仕事をするのが普通です。こうなると毎日なにかしら発生するオンライン会議のために着替えたり髭をそったりするのがなかなか億劫です。弊社は割と緩い社風なので、無精髭にTシャツ、トレーナーみたいな服装でも特に何か言われることはないのですが、私個人としてはあまりプライベートな姿を見せたくないという感覚があったりします。  また、前回も書いたように我が家は会社への通勤を優先した結果として非常に狭く、リビングと寝室しかないため私の仕事スペースはキッチンの一角にあり、玄関を背にしているためカメラに映ると不都合です。Zoomなどは人物を自動的に切り抜いてバーチャル背景を適用してくれますが、そうではないシステムの場合、家族やキッチンが映り込まないよう衝立を使うなどして対処しています。
     その手間をなんとかしようと考えたのが「自分アバター」でした。  ZoomやGoogle Meets、Microsoft Teamsなどのビデオ会議システムはカメラを選ぶことができます。さらにWindowsにもMacにもカメラとして振る舞ってくれるソフトウェアがいくつかあります。例えばSnap Cameraなどを使って画面に強いエフェクトをかけるなどは常套手段ですね。私が利用したのはOBS(Open Broadcaster Software)というフリーの録画、配信用ソフトです。もともとはカメラやPC上の映像などをミックスし、録画したり配信したりするためのものですが、Virtual Cameraという機能を使うことによりビデオ会議システムに直接映像を送ることができます。  例えばZoomの会議で身だしなみを整えた自分が人の話を聞いている様子を一定時間記録し、動画ファイルにしてからOBSでループ再生しておけば実際の私がどんな格好をしていようとも、画面の向こうの参加者には私がきちんとした格好で真面目に話を聞いているように見えるわけです。
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  • コミュニティを発生させるリモートワークでのチャット活用|簗瀨洋平・消極性研究会 SIGSHY

    2020-11-24 07:00  
    550pt

    消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。今回は簗瀨洋平さんの寄稿です。コロナ禍でリモートワークが定着し、チャットツールでのコミュニケーションが広がりました。その一方で、対面に比べてコミュニティが生まれにくくなってしまうという問題も生じています。自ら「褒めるチャンネル」などを生み出し、社内でのコミュニティ創出を促進してきた簗瀬さんが、チャットツールの活用法について考察します。
    消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。第19回 コミュニティを発生させるリモートワークでのチャット活用
     消極性研究会の簗瀨です。
     私はメンバーの中では唯一の会社員です。組織に属して仕事をする、という点では研究所勤務でも大学勤務でも同じですが、少しは読者の皆さんに近い立場ではないかと思っています。
     さて、コロナ禍と言われる状態でだいぶ長い日々が過ぎました。「新しい生活様式」などの言葉も使われていますが、現在の状態を普通の日常と思えるまでには慣れておらず、COVID-19流行以前の状態が戻ってくるとも思えず、先が見えないなんとなく不安な毎日を過ごしている方は多いのではないかと思います。
     私自身はもともと週2〜3日程度出社をし、他は講演や学会などに出かけたり在宅で仕事をしたりという生活スタイルでしたが、3月の初旬に会社の海外オフィスで感染者が出てから出張などでの行き来は基本的に禁止となり、世界中のオフィスで出勤も取りやめ、在宅ワークが基本となりました。会社のオフィスはどこの国にいても一定水準の環境で仕事ができるように気を使って作られていますが、住宅環境はそれぞれなので、急に家で仕事をしろと言われても困るスタッフも多くいます。
     私自身もその一人です。なぜなら我が家は50平米の1LDKで寝室とリビングダイニングキッチンしかなく、仕事用のデスクはキッチンに置かれており、家でちょっとした仕事を片付けると言うような場合しか想定していなかったからです。なぜそんな環境なのかというと、会社の東京オフィスが引っ越した際に横浜の賃貸一軒家から距離が離れ、通勤に一時間以上かかるようになってしまい、近いところ(ついでに犬が飼える賃貸物件)に引っ越そうと考えたからでした。オフィスまではドア・ツー・ドアで30分程度で、自転車なら20分という好立地なので仕事したかったら会社に行けばよかったわけです。また、私は客員研究員として所属している大学の研究室もありますので気分転換も兼ねて大学で仕事をすることもできました。 これが完全に裏目に出て、会社にも大学にも行けない今、自宅のキッチンですベての仕事をする羽目になっています。 出勤禁止になった時に自宅での仕事環境を整えるために一定額の購入支援が出て、夏にさらに支援が追加されたのでワーキングデスクに棚を追加したりディスプレイやスピーカーを買ったり、椅子を良いものに変えたりということはできましたが、部屋を増やすことはできないので、講演や講義の時にはパーティションを立てて緑の布をかけ、バーチャル背景で乗り切ったり、ごはん時など家族に息を潜めていてもらうのが難しい時には日帰りプランを駆使してホテルの部屋で遠隔講演したりというようなことをしています。


     こういった問題はそれぞれの方が抱えているかと思います。Twitterなどを見ていても、リモートワークにしても変わらなかった、生産性が落ちた、むしろ上がったなど様々な意見が溢れています。私自身で言えば、私の仕事はたまたまリモートワーク向きだったという点ではラッキーでしたが、住宅環境がそれに追いついていないというところです。私のいる会社はもともとデンマークで起業され、資金を米国で得て今は米国に本社があります。世界中でコアなユーザーを見つけては現地にオフィスを作るという方式で拠点を増やしてきたため、世界中に少人数のオフィスが散らばっており、仕事をする相手が遠い、時差があるのが当たり前だったためチャット文化が発達しています。今やチャットツールとしてメジャーとなったSlackを使っていて、5,000人のアクティブユーザーが参加し、6,500のチャンネルがあり、1ヶ月で350万以上のメッセージが交わされているようです。 グローバルなチャンネルは英語ですが、オフィスごとに例えば#tokyo-xxxxというようなチャンネルがあり、現地語でのやりとりも問題ありません。社員はチャンネルを自由に作って良いので、カテゴリとして一番多いのはおそらく雑談チャンネルです。こちらもなかなか豊富で、グローバルでも#talk-animeや#japanese-exchangeなど日本のアニメや日本語学習を扱うチャンネルがあり、英語での情報交換が活発に行われています。その他、考えつく限りあらゆる話題のチャンネルがあるようです。
     このように自由なのは良いですが、積み上げてきた文化には弊害もあります。それは新しく外から入ってきた人が膨大なチャットチャンネルの中で迷子になってしまうことです。現在、私の会社は拡大傾向にあって、私が入社した時には10人だった東京オフィスも、今や80人となりました。すでに全員の顔と名前は一致していません。ましてや現在、新しく入社してきても東京オフィスの全体チャンネルで人事のスタッフから紹介され、その後は月1の全体ミーティングで挨拶をしただけ、となり放っておくとその後は忘れてしまいます。
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