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記事 28件
  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第17回「男と男6」【毎月末配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.607 ☆

    2016-05-31 07:00  
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    脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第17回「男と男6」【毎月末配信】 
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.31 vol.607
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第17回です。「祭りに行くぞ」と言われ、プロデューサーSに秩父祭りへと連れて行かれた敏樹先生。目の前で始まった痴話げんかを仲裁していると、そこにSが入り……。

    【発売中!】井上敏樹 新作小説『月神』(朝日新聞出版)
    ▼内容紹介(Amazonより)
    「仮面ライダーアギト」「仮面ライダー555」をはじめ、
    平成ライダーシリーズの名作を送り出した脚本家による、
    荒唐無稽な世界を多彩な文体で描き出す、異形のエンターテインメイント! 
    (Amazonでのご購入はこちらから!)
    PLANETSチャンネル会員限定!入会すると視聴できる井上敏樹関連動画一覧です。
    (動画1)井上敏樹先生、そして超光戦士シャンゼリオン/仮面ライダー王蛇こと萩野崇さんが出演!(2014年6月放送)
    【前編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
    【後編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
    (動画2)井上敏樹先生を語るニコ生も、かつて行なわれています……!仮面ライダーカイザこと村上幸平さんも出演!(2014年2月放送)
    【前編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
    【後編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
    (動画3)井上敏樹先生脚本の「仮面ライダーキバ」「衝撃ゴウライガン!!」など出演の俳優、山本匠馬さんが登場したニコ生です。(2015年7月放送)
    俳優・山本匠馬さんの素顔に迫る! 「饒舌のキャストオフ・ヒーローズ vol.1」
    (動画4)『月神』発売を記念し行われた、敏樹先生のアトリエでの料理ニコ生です!(2015年11月放送)
    井上敏樹、その魂の料理を生中継!  小説『月神』刊行記念「帝王の食卓――美しき男たちと美食の夕べ」
    ■井上敏樹先生が表紙の題字を手がけた切通理作×宇野常寛『いま昭和仮面ライダーを問い直す』もAmazon Kindle Storeで好評発売中!(Amazonサイトへ飛びます)
    これまでPLANETSチャンネルのメルマガで連載してきた、井上敏樹先生によるエッセイ連載『男と×××』の記事一覧はこちらから。(※メルマガ記事は、配信時点で未入会の方は単品課金でのご購入となります) 
    ▼執筆者プロフィール
    井上敏樹(いのうえ・としき)
    1959年埼玉県生まれ。大学在学中の81年にテレビアニメの脚本家としてのキャリアをスタートさせる。その後、アニメや特撮で数々の作品を執筆。『鳥人戦隊ジェットマン』『超光戦士シャンゼリオン』などのほか、『仮面ライダーアギト』『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー555』『仮面ライダー響鬼』『仮面ライダーキバ』など、平成仮面ライダーシリーズで活躍。2014年には書き下ろし小説『海の底のピアノ』(朝日新聞出版)を発表。
    前回:脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第16回「男と男5」
       男 と 男 6   井上敏樹
                               
    さて、前回は私が刑事に職務質問をされた話を書いて寄り道をしてしまった。話を本題に戻そう。本題と言うのは、つまり大手映画会社のプロデューサーのSのせいで私が喧嘩に巻き込まれた話だ。まず思い出すのは祭りの場での喧嘩である。
    『祭りに行くぞ』ある日、打合せに行くとSは私の脚本を放り出してそう言った。
    『お前のクソつまらないホンを読んでいると鬱になる。気分直しに祭りだ』
    『はあ。と、言いますと? どこのお祭りで?』
    『秩父祭りだ。男の祭りよ』
    確か『男と酒』で祭りの場のエピソードを書いたと思うが、その時、一緒にいたのがSだったのである。
    とにかく私はわけがわからずぼ〜っとした状態でSの車で秩父に向かった。Sと知り合ってから私はよくぼ〜っとするようになった。短気で我が儘で気まぐれなSと付き合うにはぼ〜っとしてなければやってられないのである。

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  • 月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」5月23日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.606 ☆

    2016-05-30 18:00  
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    月曜ナビゲーター・宇野常寛J-WAVE「THE HANGOUT」5月23日放送書き起こし!
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.30 vol.606
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    大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!

    ▲先週の放送はこちらからご覧いただけます!

    ■オープニングトーク
    宇野 時刻は午後11時30分を回りました。みなさんこんばんは、宇野常寛です。そして松岡茉優さん、今夜も本当にお疲れさまでした。どうやら、まだまだマンガの話を語り足りないようなので、よければいつでもこっちに来てくださいね。松岡さんとマンガの話ができるんだったら、僕は90分まるまる差し出しますよ。「THE HANGOUT 松岡茉優 with U」で構いません。「U」は宇野のことですね。ちなみに、最近僕が好きなマンガは、末次由紀さんの『ちはやふる』です。中でも好きなキャラクターは、当然かるたクイーンです。ということで、毎週恒例の僕と松岡さんの心の交流が終わったところで、本題に入ってこうと思います。
    楽しい話をした直後にこんなことを言うのもあれですが、今夜は全国のアラサー&アラフォー女子、特に婚活中のみなさんへのメッセージから始めたいなと思うんですよ。いま、中谷美紀さん主演で『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』というドラマが放映されてるじゃないですか。実は僕、あれに超ハマってるんですよ。どんなドラマかちょっと説明しますね。ヒロインの中谷美紀さんは、39歳アラフォーの美人女医なんです。開業医で、メディアにも「カリスマ美容皮膚科医」のように取り上げられたりと、社会的に成功している才色兼備な女性なんですよ。でも、もう5年間ぐらい彼氏がいないんです。そんな彼女がさすがに焦ってきて婚活を始めるんですね。結婚相談所に行ったり、同窓会で再会した昔の想い人にアタックしたりするんですが、若い頃は黙っていてもわんさか男子が寄ってきていたタイプだったから、男心をぜんぜんわかっていないんですよ。プライドも高すぎたりして、まったくうまくいかないんですね。その悩みを、近所の和風カフェに同じアラフォーの独身女子3人で集まって「男の方に見る目がない」「自分たちはなにも悪くない、世の中が悪い」といった具合に愚痴りまくるわけですよ。
    その話を、店の主人の藤木直人が黙々と料理をしながら聞いていたんですね。だんだんと藤木直人の怒りのゲージが溜まってきて、ある瞬間についに爆発して、いきなり「いいか、お前たちはなにもわかっていない」「こんなことをやっていたら男が逃げていくのは当たり前だ!」とか、もう怒涛のように説教し出すんですよ。「いいか、俺がお前に珠玉のアドバイスをくれてやる。理想の男性と結婚するのに必要なのは容姿や年齢じゃない。真実と向き合う勇気だけだ!」とか、無限に中谷美紀にダメ出ししていくんです。それで中谷美紀のプライドは完全に粉砕されて、最初は反発していたものの、気がつくと完璧に藤木直人の言う通りに行動するようになっていくんですよね。「いいか、いますぐケータイを出せ。そしてすぐにメールしろ。文面はこうだ!」「はい」とか言われるままになっちゃうんです。

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  • ☆新企画☆「東京5キロメートルーー知ってる街の知らない魅力」第1回 目白ーー高級住宅街で見つけた自然と癒しスポット【毎月配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.605 ☆

    2016-05-30 12:00  
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    ☆新企画☆「東京5キロメートルーー知ってる街の知らない魅力」第1回 目白ーー高級住宅街で見つけた自然と癒しスポット【毎月配信】
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    2016.5.30 vol.605
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    今月から、宇野常寛とPLANETS編集部・学生スタッフによる、街歩きの企画が始まります。「実際に
  • 大見崇晴『イメージの世界へ 村上春樹と三島由紀夫』第4回 記憶・小説・人間【不定期連載】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.604 ☆

    2016-05-30 07:00  
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    大見崇晴『イメージの世界へ 村上春樹と三島由紀夫』第4回 記憶・小説・人間【不定期連載】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.30 vol.604
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガでは大見崇晴さんの連載『イメージの世界へ 村上春樹と三島由紀夫』第4回をお届けします。近代が生み出した〈記憶〉の小説家であるプルーストとベケット。その系譜を受け継ぐ村上春樹もまた、三島由紀夫という時代の記憶を作品の中に封じ込めていた。『ノルウェイの森』において巧妙に配置された固有名と、その意味について論じます。
    ▼プロフィール
    大見崇晴(おおみ・たかはる)
    1978年生まれ。國學院大学文学部卒(日本文学専攻)。サラリーマンとして働くかたわら日曜ジャーナリスト/文藝評論家として活動、カルチャー総合誌「PLANETS」の創刊にも参加。戦後文学史の再検討とテレビメディアの変容を追っている。著書に『「テレビリアリティ」の時代』(大和書房、2013年)がある。
    本メルマガで連載中の『イメージの世界へ』配信記事一覧はこちらのリンクから。
    前回:『イメージの世界へ 村上春樹と三島由紀夫』第二章 終わりと記憶
     近代以降の文学、特に小説は記憶を題材とする。
     多くの論者に繰り返し書かれ読み飽きられていることであるが、カントの『純粋理性批判』が十八世紀後半に登場して、時間と空間が主観的なものでしかないと人々は気付かされた。客観そのものである世界に対して、人間はその一端しか知りうることは叶わない。人間が知りうるのは主観的なものであり、世界の一部に過ぎないとする考えが広まっていくのである。
     しかし、言い換えれば主観を介して世界はその一端を描き得る。英文学者イアン・ワットは、小説に影響を及ぼしたものとして、経験の個別性について論じた。デカルト、ロックといったカントに先行した哲学者が広めた、経験とは普遍的なものではなく、経験は個別的なものであるという考えが、「個人が把握した現実を小説が具象化できるようになる」のでる。
     してみれば、カントの学説は、人間の認識(自己)を介して世界の一端を把握すると読み替えられることもあった。カントの研究者として知られる坂部恵――彼のカント研究が柄谷行人の初期批評に影響を与え、日本現代文学批評に間接的ながら影響を及ぼしたことは周知の事実である――は、日本近代文学に現れるカント理解について、次のように取り上げる。以下の引用は「普請中」の作者としても知られ、近代日本の持つ国民国家という虚構性を重々承知していた医師・森林太郎、筆名・森鴎外の短編小説「かのやうに」からである。

     「小説は事実を本当とする意味に於いては嘘だ。併しこれは最初から事実がらないで、嘘と意識して作つて通用させてゐる。そしてその中に性命がある。価値がある。尊い神話も同じやうに出来て、通用して来たのだが、あれは最初事実があつた丈違ふ。君のかく絵も、どれ程写生したところで、実物ではない。嘘の積りでかいてゐる。人生の性命あり、価値あるものは、皆この意識した嘘だ。第二の意味の本当はこれより外には求められない。かう云ふ風に本当を二つに見ることは、カントが元祖で、近頃プラグマチスムなんぞ余程卑俗にして繰り返してゐるもの同じ事だ」

     引用したのは、鴎外がドイツの哲学者ハンス・ファイヒンガーの『かのようにの哲学』を鴎外が要約したものである。「かのやうに」が書かれたのは一九一二年のことである。ここにおいてカントが亡くなり百年近く経過して、人生(=自己)に価値があるのは本人にとって都合が良い虚構(=記憶)であると暴露される。
     とはいえ、これは二十世紀前半においては後進国であった日本の都合である。
     「個人」であるとか「主体」といった概念は近代を他地域より先行して受け入れた欧州から輸入したものである。それら見慣れない概念を、さもある「かのやうに」近代日本の土台を構築しなくてはならないと考えた。まさしく国家「普請中」にあった鴎外という人物なりの要約と言えよう。
     プラグマティズムも謂わばアメリカにおけるカント的な世界観の改版として開始されたものである。それはヨーロッパから距離をとりつつ「近代」を迎えた地域で始められた。『メタフィジカル・クラブ 米国100年の精神史』などでも紹介されているように、カント的な(簡略して説明すれば、人間が理性的に行動すれば、道徳的な結果が得られるという)世界観は信用ならなくなっていた。すでに奴隷制を巡って国内で南北戦争が勃発し、六十万という人命が失われていた。この時期について、二十世紀を代表する詩人T・S・エリオットはこのように述べる。

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  • 【特別対談】國分功一郎×宇野常寛「哲学の先生と民主主義の話をしよう」前編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.603 ☆

    2016-05-27 07:00  
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    【特別対談】國分功一郎×宇野常寛「哲学の先生と民主主義の話をしよう」前編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.27 vol.603
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガでは、政治論集『民主主義を直感するために』(晶文社)を刊行したばかりの哲学者・國分功一郎さんと本誌編集長・宇野常寛の対談をお届けします。今回配信する前編では「保育園落ちた日本死ね」ブログ問題や、反原発・反安保運動について語りました。
    毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。
    ※本記事は、4月26日に放送されたニコ生の内容に加筆修正を加えたものです。

    【発売中!】國分功一郎『民主主義を直感するために (犀の教室)』晶文社
    ▼プロフィール

    國分功一郎(こくぶん・こういちろう)
    1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。高崎経済大学経済学部准教授。専攻は哲学。著書に『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『統治新論』(共著、太田出版)、『来るべき民主主義──小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎新書)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波書店)など。英国キングストン大学での留学を経て今年4月に帰国し、政治論集『民主主義を直感するために』(晶文社)を刊行。
    ▼放送時の動画はこちらから!
    http://www.nicovideo.jp/watch/1462950394
    放送日:2016年4月26日
    ◎構成:中野慧
    ■民主主義を根付かせるためのキーワードは「直感」
    宇野 今回は、1年ぶりにイギリスから帰国した哲学者の國分功一郎さんをお招きして、現在の日本の政治・社会状況について語っていこうと思います。國分さんが、まあ一言で言えば「悪い場所」になりつつある日本から遠く離れているあいだ、僕のほうもこの1年、いわゆる「論壇」的なものとは距離をおいて、毎週木曜朝の「スッキリ!!」以外はほとんど引きこもって自分のメディアからの発信に注力してきたつもりでいます。と、いうことで今回は、そんな二人がこの1年考えてきたことを率直にぶつけあう対談にできたらと思います。
     とりあえずはまず、國分さんの新著『民主主義を直感するために』(晶文社)が発売されたわけですけど、その話からしたいなと。
    國分 『民主主義を直感するために』で言いたかったことは、本当にタイトルそのままですね。巻末に、辺野古に行ったときのことを書いた「辺野古を直感するために」というルポが載っているんだけど、その「直感」という言葉がキーワードだと思って本のタイトルにも使うことにしたんです。俺は哲学をやっているから理論的なことをよく話すし、理論はもちろん大切だと思っているけど、「現場を通じて具体的に『直感』する」というのもそれと同じぐらい大切だと思っているんだよね。これまでに色んな場所で書いた文章をまとめた本ですが、結果的にとてもいいものになったと思ってます。
     「直感」という言葉にはちょっとしたこだわりが込めてあって、まず、「直感」と「直観」という同じ読みの2つの言葉がありますよね。哲学では「直観」のほうを使うことが多いけれど、こちらは非常に理知的なイメージの単語ですね。それに対し「直感」は感覚的です。多くの場合、英語で言う"intuition"は「直観」の方に対応すると思うんですね。すると、「直感」は英語には翻訳不可能だということになる。こう考えると、この言葉は特殊な身体性が織り込まれているというか、「具体的に体で感じ取る」というイメージのとてもいい日本語じゃないかと思うんです。そういう感覚が民主主義をやっていく上で大事なんじゃないかということをこのタイトルに込めました。
    宇野 このタイトルに関して僕もいろいろ思うところがあるんですけど、結論から先に言うと「今のこの2016年の日本では民主主義を直感させないほうがいい」と思っています。
    國分 いきなり直球が来たね(笑)。さっそく話をはじめましょうか。

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  • 京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第2回 サブカルチャーから考える戦後の日本【完全版】(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.601 ☆

    2016-05-25 18:00  
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    京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録第2回 サブカルチャーから考える戦後の日本【完全版】(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.25 vol.601
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    今回は、2016年5月20日にお届けした宇野常寛の講義録「京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第2回 サブカルチャーから考える戦後の日本」の完全版をお送りします。20世紀前半に普及した〈自動車〉と〈映像〉が、いかにして現代社会を作り上げたのか。そして、戦後この2つをアメリカから輸入し独自発展させた日本が、同時に抱え込んでいる〈ネオテニー性〉について考えます(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年4月15日の講義を再構成したものです)。
    毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。
    前回:京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第1回 〈サブカルチャーの季節〉とその終わり(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
    ■ いま、サブカルチャー的な思考を経由する意味
     前回は60年代の「政治の季節」の終わりから70年代以降のサブカルチャーの時代、そして2000年代以降のカリフォルニアン・イデオロギーの台頭までの流れを、駆け足で見てきました。1970年代から20世紀の終わりまでは世界的に人口増加=若者の時代であり、そして若者の世界は脱政治化=サブカルチャーの時代だった、とおおまかには言える。もちろん、サブカルチャーと政治的な運動の関係は内外でまったく異なっているし、一概には言えない。しかし重要なのは、マルクス主義の衰退からカリフォルニアン・イデオロギーの台頭までは「世界を変える」のではなく「自分の意識を変える」思想が優勢な時代であって、そこに当時の情報環境の変化が加わった結果としてサブカルチャーが独特の機能を帯びていた、ということです。そして、そのサブカルチャーの時代は今終わりつつある。
     普通に考えれば、サブカルチャーの時代が終わろうとしているのなら、僕はとっとと話題を変えてカリフォルニアン・イデオロギー以降の世界を語ればいい。情報技術の進化と、その結果発生している新しい社会について語っているほうが有益なのは間違いない。僕は実際にそういう仕事もたくさんしてます。
     でも、ここではあえて古い世界の話をしたい。それはなぜかというと、皮肉な話だけれど、いま急速に失われつつあるサブカルチャーの時代に培われた思考のある部分を活かすことが、この新しい世界に必要だと感じることが多いからです。
     かつてサブカルチャーに耽溺することで自分の意識を変え、さらには世界の見え方を変えようとしていた若者たちは、いま市場を通じて世界を変えることを選んでいる。実際に、僕の周囲にもそういう人が多い。学生時代の仲間とITベンチャーを起業して六本木にオフィスを構えているような、いわゆる「意識高い系」の若者たちですね。彼らは基本的に頭もいいし、人間的にも素直です。付き合っていて不快なことはないし、仕事もやりやすい。だけど、話が壊滅的に面白くない。
     なぜ彼らの話が面白くないのか、というとたぶんそれは彼らが目に見えるものしか信じていないからだと思うんですね。彼らはたとえば、うまくいっていない企画があって、それに対して予算や人員を再配置して最適化するような仕事はとても得意です。しかし、今まで存在していなかったものを生み出すような仕事は全然ダメな人がすごく多い。もちろん、そうじゃない人もちゃんといて、彼らはものすごく創造性の高い仕事をやってのけているのだけど、その反面これだけ賢い人なのになんでここまで淡白な世界観を生きているんだろう、という人もすごく多い。ブロックを右から左に移動するのはものすごく得意で効率的なのだけど、そのブロックを面白い形に並べて人を楽しませることが苦手な人がとても多い。正確にはそれができる人とできない人の落差があまりにも激しくてびっくりするわけです。

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  • 『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』ーー“月9史上最低視聴率”の9文字で烙印を押すな!「他者のために生きること」を描いた良作(岡室美奈子×宇野常寛)【月刊カルチャー時評 毎月第4水曜配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.600 ☆

    2016-05-25 07:00  
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    『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』ーー“月9史上最低視聴率”の9文字で烙印を押すな!「他者のために生きること」を描いた良作(岡室美奈子×宇野常寛)【月刊カルチャー時評 毎月第4水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.25 vol.600
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    今朝のメルマガは、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』をめぐる岡室美奈子さんと宇野常寛の対談をお届けします。ドラマファンの心をつかんだ一方で、平均視聴率は9.4%と振るわなかった『いつ恋』。同作が描こうとしたたものと、テレビドラマを取り巻く状況について語りました。(初出:「サイゾー」2016年5月号(サイゾー))


    (出典)
    ▼作品紹介
    『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』
    プロデューサー/村瀬健 脚本/坂元裕二 演出/並木道子ほか 出演/高良健吾、有村架純、高畑充希、坂口健太郎、森川葵、西島隆弘ほか 放映/16年1~3月、フジテレビ月曜21:00
    故郷・福島から上京し、引っ越し屋で働く練(高良)は、友人の晴太(坂口)が持ち帰ってきてしまったカバンに入っていた手紙を返しに、北海道へ向かう。持ち主は、母を亡くし養父母のもとで暮らす音(有村)だった。出会ってしまった2人を中心に、現在の東京を舞台にそれぞれが生きる群像ラブストーリー。
    ▼対談者プロフィール
    岡室美奈子 (おかむろ・みなこ)
    早稲田大学演劇博物館館長、文化構想学部教授。専門はベケット論、テレビドラマ論、現代演劇論など。
    ◎構成:橋本倫史
    『月刊カルチャー時評』過去の配信記事一覧はこちらのリンクから。
    岡室 『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(以下、『いつ恋』)は、とても良いドラマでした。坂元裕二さんの月9だけに「王道ラブストーリー」を期待した人も多かったと思いますが、実は本作で一番大事にされていたのは「他者のために生きられるか」ということだったと思う。なぜ音ちゃん(有村架純)と練君(高良健吾)の恋愛がすんなり成就しないかというと、2人とも他者を優先してしまって、自分のことを後回しにするからなんですよね。若年層の貧困やブラック企業、介護の現場などいろんな社会問題を盛り込んで、何も持たない人たちが、いろんなところでつらい目に遭いながらも、どこまで他者のために生きられるのかを描こうとしていた。そして音ちゃんと練君は互いにそうであることがわかるから、つながっている。恋愛ドラマではあるんだけど、一緒にいるとか2人で幸せになることよりも優先されることがあるんだ、というのがすごく強いメッセージだったと思うんです。それは坂元作品の『それでも、生きてゆく』【1】との連続性を感じる部分で、あの作品は最後まで2人は結ばれないけど、でも心はつながっている、という終わり方だった。それと似ている。
     でもたぶん今はそういうことが理解されにくいから、『いつ恋』の視聴率は振るわなかったんじゃないかと思います。自分のことは置いておいて他者を大切にする人という存在がほとんど絶滅危惧種になっていて、そういう人たちへの想像力がうまく働かないせいで、あの2人の恋愛が成就しないことがなかなか理解されなかったんじゃないでしょうか。普段からドラマを観ている人でも「なんかイライラする」と言っていて、そこがすごく切なかった。

    【1】『それでも、生きてゆく』:出演/瑛太、満島ひかりほか 放映/11年7~9月(フジ)
    子どもの頃に妹を殺された洋貴(瑛太)と、その犯人であり洋貴の友人だった少年の妹・双葉(満島)が、悲劇を越えてどうにか生きてゆこうとする姿を描く。平均視聴率は9・3%だったが、ギャラクシー賞ほかを受賞。


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  • 落合陽一自身が読み解く『魔法の世紀』 第4回〈表層〉と〈深層〉の魔術的融合(毎月第4火曜配信『魔法使いの研究室』)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.599 ☆

    2016-05-24 07:00  
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    落合陽一自身が読み解く『魔法の世紀』 第4回〈表層〉と〈深層〉の魔術的融合(毎月第4火曜配信『魔法使いの研究室』)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.24 vol.599
    http://wakusei2nd.com


    今朝の「魔法使いの研究室」では、『魔法の世紀』の第4章「新しい深層と表層」を取り上げます。コンピュータが社会に普及したことで、世界は再び魔法で覆われました。その過程で「芸術」や「技術」という概念も変容していきます。表層(デザイン)と深層(エンジニアリング)の歴史を辿りながら、現在の世界で求められるキーワードとして両層に精通した「デザインエンジニアリング」が浮かび上がってきます。
    ▼『魔法の世紀』第4章の紹介
    「第4章 新しい表層/深層」では、「芸術」(アート)と「技術」(テクノロジー)の概念、その両者が再び接近しつつある状況を論じます。産業革命以降の大量生産時代の到来と、アーツ・アンド・クラフツ運動やバウハウを端緒とする「デザイン」という概念の登場。そしてコンピュータによる「デザイン」と「エンジニアリング」の接続に至るまで、時代ごとの「表層」と「深層」の関係の変遷から、今後の世界にインパクトを与えるクリエイティビティの可能性を探ります。

    【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)
    ☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
    (紙)/(電子)
    取り扱い書店リストはこちらから。
    ▼プロフィール
    落合陽一(おちあい・よういち)
    1987年東京生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年より筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。
    音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」が経済産業省「Innovative Technologies賞」受賞,その他国内外で受賞多数。
    『魔法使いの研究室』これまでの連載はこちらのリンクから。
    前回:落合陽一自身が読み解く『魔法の世紀』第3回 イシュードリブン時代のプラットフォーム論(毎月第4火曜配信『魔法使いの研究室』) 
    ▼放送時の動画はこちらから!
    http://www.nicovideo.jp/watch/1458301532
    放送日:2016年3月9日
    ◎構成:長谷川リョー

    ◼︎コンピュータによって社会は再び魔術化する
    今日取り上げるのは『魔法の世紀』の第4章「新しい深層と表層」です。
    これまではテクノロジーの歴史やメディアアート作品などの具体例を示しながら話をしてきましたが、「新しい深層と表層」の章のテーマはデザインです。「デザインが世の中でどう変わってきたのか」について見ていきたいと思います。
    「芸術」や「技術」という言葉がありますよね。これは明治時代に、西周(にし・あまね)という哲学者が外来語から新たに作り出した日本語なんです。

    ▲西周(1829-1897)(出典)
    芸術は「リベラルアーツ」、技術は「メカニカルアート」という言葉が元になっています。古代から中世にかけて、ヨーロッパの教養人たちは、哲学に代表される当時の知性の集大成であるリベラルアーツを重要視していました。一方で、建築学や測量学に代表されるメカニカルアーツは「手の技」ですね。


    現代であれば、リベラルアーツは「アート」、メカニカルアーツは「テクノロジー」と言い換えることもできます。この二つの概念が20世紀の社会においては、非常に重要なキーワードになってきました。
    コンピュータの大きな特徴の一つは、入出力の関係が自由に切り替わるところにあります。たとえばプログラマーのAさんは「LEDが光ってるときはオンにする」、プログラマーのBさんは「LEDが光ってるときはオフにする」というように設定できる。コンピュータのロジックは、コードを書いた人が考えた通りに動作するということです。
    当たり前と言えば当たり前ですが、物理世界でこんなことができる例はなかなかないですよね。入力次第で全然違う結果が出てくる。しかも中で何が起こってるのか全く分からない箱なんて、コンピュータ以外にないわけです。こういう機械が世の中に出てくると、モノとモノの関係性が変わってくるのではないか。

    1981年にモリス・バーマンという学者が『デカルトからベイトソンへ:世界の再魔術化』(The Reenchantment of The World)という本を書いています。「科学技術の進歩は呪い(まじない)を脱魔術化してきた」というのはマックス・ウェーバーの論ですが、さらに高度に専門化した科学技術が世の中に普及することによって、科学は呪いに変わりつつある。これがモリス・バーマンが著した80年代当時の社会情勢です。
    そして、これから先、コンピュータが世界中にもっと増えていけば、呪いはますます強化され、やがて「魔法」に至るのではないか。これが『魔法の世紀』全体のテーマです。

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  • 月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」5月16日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.598 ☆

    2016-05-23 18:00  
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    月曜ナビゲーター・宇野常寛J-WAVE「THE HANGOUT」5月16日放送書き起こし!
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.23 vol.598
    http://wakusei2nd.com


    大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!

    ▲先週の放送はこちらからご覧いただけます!
    ■オープニングトーク
    宇野 時刻は午後11時30分を回りました。みなさんこんばんは、宇野常寛です。そして松岡茉優さん、今夜も生放送、本当にお疲れさまでした。「AVALON」が理想に近づいたかどうかは僕にはわかりません。ただひとつはっきりしていることがあります。松岡さん、あなたの存在自体が、僕にとって理想です。そのことは忘れないでください。
    ということで、今日は先週の話から入ろうと思います。今日はリスナーの皆さんに告白することがあるんです。先週の月曜日は、就職活動応援スペシャルということで、カタリストの尾原和啓さんという、楽天やGoogleの幹部を歴任したスーパーサラリーマンをゲストにお迎えして、みなさんの働き方やキャリアプランの悩みにひたすら2人で答え続けるっていう放送をやりました。それがおかげさまですごく好評だったんですよ。たぶんメールも過去最高にたくさん来ました。Twitterのハッシュタグもトレンドに入ったりと、すごく手応えのある、もう最高の放送だったと思うんです。でも、実は僕はあの日、めちゃめちゃ体調が悪かったんですよ。気づいた人はほとんどいないと思うんですけれど、尾原さんが半分喋ってくれていなかったら完全にバテてましたね。倒れていたかもしれない。もうめちゃめちゃ疲れていたんですよ。
    でも風邪気味だったとか、お腹が痛かったとか、そういうのじゃないんですよ。本当に単に疲れていてグロッキーだっただけなんですよね。その理由も明確なんです。いいですか?
    ちょっと聞いてくださいね。僕がなぜ先週の月曜日バテバテだったか。

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  • 議論手続きとリサーチクエスチョン (井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第5回)【不定期配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.597 ☆

    2016-05-23 07:00  
    220pt
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    議論手続きとリサーチクエスチョン(井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第5回)【不定期配信】 
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.23 vol.597
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは井上明人さんの『中心をもたない、現象としてのゲームについて』の第5回です。今回は、「ゲーム」という日常語の定義不可能性について、帰納的、言語的な限界を明らかにすることで、ゲームの概念をより深く議論するための土台を構築します。
    ▼執筆者プロフィール
    井上明人(いのうえ・あきと)
    1980年生。関西大学総合情報学部特任准教授、立命館大学先端総合学術研究科非常勤講師。ゲーム研究者。中心テーマはゲームの現象論。2005年慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。2005年より同SFC研究所訪問研究員。2007年より国際大学GLOCOM助教。2015年より現職。ゲームの社会応用プロジェクトに多数関っており、震災時にリリースした節電ゲーム#denkimeterでCEDEC AWARD ゲームデザイン部門優秀賞受賞。論文に「遊びとゲームをめぐる試論 ―たとえば、にらめっこはコンピュータ・ゲームになるだろうか」など。単著に『ゲーミフィケーション』(NHK出版,2012)。
    本メルマガで連載中の『中心をもたない、現象としてのゲームについて』配信記事一覧はこちらのリンクから。
    前回:「ゲームとは何か」をめぐる交わらない答えたち(井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第4回)
    第二章:議論手続きとリサーチクエスチョン
     
     <ゲーム>という現象には理性の領域にとどまらない学習や複雑な構造理解といった要素と深く関わるような興味深い要素がありつつも、一方でその全体像を描き出そうとしはじめると、途端にひどく曖昧なものになってしまう。――ここまでの議論を短くまとめればそういうことだ。
     本章はそのようなゲームのような曖昧な現象に対して、一体どのような手続きで議論をした場合に、これをさらに明らかにしたと言えるのだろうか?
     
     「ゲームとは◯◯だ」というごく短い答えを本稿が与えることはない。本稿を読むことによって理解が促進されうるとすれば、ゲームのような曖昧な現象が、どのようにその曖昧さを保ちながらも、あたかもひとつのまとまった概念であるかのような振る舞いをしてみせているのか、というこの構造について理解をすすめることになるだろう。
    だが、これについてもいくつもの注意をした上で、議論をすすめていく必要がある。日常言語や日常概念の問題をどう考えていくのか? 学際的な議論をどう扱うか? 創発的な現象をどう扱うか? 分類についてどう考えるか? というような方法論的な問題について答えておく必要があるだろう。
    2-1 日常概念を考えるということ
    2-1-1.日常概念は揺らぐ?:ヴィトゲンシュタインの「言語ゲーム」
     まず、前章ですでに述べたとおり、ヴィトゲンシュタインの有名な議論で、「ゲーム」という言葉は日常概念の曖昧さの代表例として挙げられた。チェス、ボーリング、ポーカーといったものはそれぞれゲームと呼ばれるが、それらに共通したしっかりとした性質があるというよりは、それらはぼんやりと類似している(家族的類似)にすぎないという議論だった。
     「ゲーム」について何かしら明らかにしようと試みるとなると、「ゲーム」という日常概念の曖昧性を論じようとするこのヴィトゲンシュタインの議論と対立してしまうように見える。「ゲーム」とは何かと論じようと思うと、まずここで躓く。
     これについての、筆者の立場は簡単で、「ゲーム」という語が日常語であるということについては、まったく何の異論もない。日常語であるということは、確定した意味を記述することが極めて困難であり、複数の概念が合成され、曖昧に結びついた何かであるということだ。
     この複数の概念が曖昧に結びついた何か、について筆者は考えたいと思っている。そして、また複数の概念の結びつきが、その概念にとって本質的(欠かすことができない/それ抜きでは成立しない)ものだというつもりもない。ただし、複数の概念の結びつき方にそれなりの再現性をもった、安定性のある振る舞いが見られるだろうとは考えている。
     「ゲーム」という概念自体を厳密な概念に仕立てあげていくことは難しい。これが曖昧さをもった日常語であるという実態はなかなか覆しがたいことで、それに挑戦しようというつもりはない。これは政治的な運動や商品のパッケージとしてはよいかもしれないが、概念的な厳密さをもった学術的な述語として通用させようと思うと、かなり困難なものだろうと考えている。
     ただし、その一方で「ゲーム」に関わる現象のいくつかを分析的概念として用いることは不可能ではないと考えているが、それは日常語としてのゲームという概念をいちど切り崩して、そのうえで、ゲームにかかわるいくつかの現象を分解しようとしたときに初めて見えてくるようなものだろう。たとえば、「ゲームの楽しさ」といったとき、そこには、ゲームを遊びはじめる前のワクワク感や、ゲームに習熟していくときの上達感、ゲームに習熟したもの同士の対戦で生まれる際どい駆け引きの楽しさ、コンピュータ・ゲームをクリアし終わったあとの達成感など、さまざまな楽しさが含まれている。そして、ゲームを構成している、ルール、インターフェイス、映像、音楽などそれぞれの構成物に細かく名前を与えていくことはできるだろう[1]。

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