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記事 23件
  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第11回「男と酒3」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.378 ☆

    2015-07-31 07:00  
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    脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』 第11回「男と酒3」
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.31 vol.378
    http://wakusei2nd.com



    今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第11回です。今回も「男と酒」をテーマに語ります! 敏樹先生が人生で二度だけ出会った「この世のものとは思えない、とても美しい目」とは――?
    井上敏樹エッセイ連載『男と×××』これまでの連載一覧はこちらから。
        
    男 と 酒  3
                 井上敏樹
     私はその目に二度出会った事がある。
     こんな風に書くとなにやら大仰な出だしだが私にとってそれは大変印象的な出来事だった。誰でも人生においてハッとするような出会いを経験した事があるだろう。それも偶然の出会いである。たとえば電車に乗ったら隣にもの凄い美人が座った、或いは街角で擦れ違った男の顔が忘れられず後で手配中の殺人者に酷似していたと判明する、そんな出会いだ。それは進展する事のない刹那的な出会いだが、なぜかふとした瞬間に繰り返し心の底から浮かび上がる。浮かび上がったらそれで終わりだ。少々の感情の揺らぎはもたらすかもしれないが人生に影響を与えるわけでもない。
     それが私にとって目なのである。とても美しい目なのである。美しい目などというのは表現として恥ずかしい。だが、それを躊躇いなく書けるような美しい目なのだ。そしてその目を作ったのはまず間違いなく酒であった。なぜならその目の持ち主はふたりともアル中だったからだ。
     最初の出会いは私が釣りに凝っていた頃だったから学生時代だった。私は友達と釣りに行く事になり朝早く起きて駅に向かった。釣りと言えば早起きが常識である。それも本気の釣り人なら夜が明けるか明けないかの頃に行動を始める。友達との待ち合わせまでまだ時間があったので私は駅前の牛丼屋で朝飯を食べた。通勤の人影はまだまばらで街は静かである。客は私ひとりだった。
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  • 私は如何にして執筆するのを止めてアイドルを愛するようになったか――濱野智史が語る『アーキテクチャの生態系』その後 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.377 ☆

    2015-07-30 07:00  
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    私は如何にして執筆するのを止めてアイドルを愛するようになったか――濱野智史が語る『アーキテクチャの生態系』その後
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.30 vol.377
    http://wakusei2nd.com


    2008年に出版され、その後のネットカルチャー分析に多大な影響を与えた情報環境研究者・濱野智史さんの著書『アーキテクチャの生態系』。その名作がこのたび文庫化されたことを記念して、現在はアイドルグループ「PIP」のプロデューサーとして活躍する濱野さんにその問題意識の変遷を聞きました。
    現在のアイドルブームだけでなく、Facebookの日本での流行、そしてISIS問題まで、2015年現在の視点から幅広く語ってもらいました。

    【発売中!】濱野智史『アーキテクチャの生態系: 情報環境はいかに設計されてきたか』ちくま文庫
    mixi、2ちゃんねる、ニコニコ動画、ケータイ小説、初音ミク…。なぜ日本には固有のサービスが生まれてくるのか。他の国にはない不思議なサービスの数々は、どのようにして日本独自の進化を遂げたのか。本書は、日本独自の「情報環境」を分析することで、日本のウェブ社会をすっきりと見渡していく。ウェブから生まれた新世代の社会分析、待望の文庫化。(Amazon内容紹介より)
    ▼プロフィール
    濱野智史〈はまの・さとし〉
    1980年生、情報環境研究者/アイドルプロデューサー。慶應義塾大学大学院政策•メディア研究科修士課程修了後、2005年より国際大学GLOCOM研究員。2006年より株式会社日本技芸リサーチャー。2011年から千葉商科大学商経学部非常勤講師。著書に『アーキテクチャの生態系』(NTT出版)、『前田敦子はキリストを超えた 宗教としてのAKB48』(ちくま新書)など。2014年より、新生アイドルグループ「PIP」のプロデュースを手掛ける。
    ◎構成:稲葉ほたて
    ■『アーキテクチャの生態系』その後
    ――今日は『アーキテクチャの生態系』の文庫化にあわせて、この本が出た当時のことや濱野智史さんの現在の考えについてお聞かせいただきたいと思います。まず、この本を久々に読み返してみて、実はもう今のネット文化とはだいぶかけ離れた世界の話を書いているな、と思いました。
    濱野:僕としても、過渡期のことを書いた自覚がある本なんですよ。
    初音ミクも、すごく立派な存在になったものだと思うのですが、もうあの頃のハチャメチャさは失われてしまった。マネタイズを考えるとなると、既存の手法に近づくのは仕方ないですよね。だって、今やミクなんて最も使いづらいIPになっていて、近年のアイドル文化以前のアイドルみたいでしょう(笑)。生身の人間でないだけにコントロールしやすかったということの裏返しなんですが。
    ニコニコ動画にしても、今思えば僕にとっては初期の、ニコニコ生放送を始める前の時期が面白かったんですね。
    その後のドワンゴさんの動きで大きかったのは、確かにニコニコ生放送です。あれにプレミアム会員は優先的に視聴できる権利をつけることで、会員数が一気に伸びて成功した。ただ、その結果として運営がそういう方向に寄ってしまった。もちろん、生放送は生放送で、頭のおかしい配信者ばっかりで神がかって面白かった時期もあったんです。それに、技術的にもストリーミングのほうが伸びしろがあって、何よりもユーザーも面白がったのも事実です。
    だから、こうなったのは必然ではあるのですが、やはりこの本を書いた時点での「ニコニコ動画」の絵は、ニコニコ自身が捨てたということになるとは思います。まあ、完全に捨てたというのは言いすぎなんですけど。
    ――淫夢動画のようなアングラな場所では、匿名のN次創作だって健在ですしね。ただ、表に見せられるカルチャーとしては、実は地下アイドルという文化の勃興と並行するかたちで、歌い手やゲーム実況者みたいなステージ文化が大きく台頭していったというのが、その後のニコニコ動画の歴史であるように思います。
    濱野:YouTuberなんかも、そういう流れの延長線上で「お金になるから」という理由で登場してきた人たちですよね。
    2年くらい前に、月刊カドカワさんのニコニコ動画特集に寄稿したとき、「ドワンゴは早くアイドルを作れ」と書いたんです。その時点で、アイドルにとっての劇場文化の重要性はわかっていたので「ニコファーレをとっととアイドルのための劇場にすればいい」と書いたのですが、結果的にはニコニコ超会議がある種アイドルと会える場所として機能していきましたね。
    ただ、ドワンゴさんは、やはり自分たちでコンテンツを作るのには抵抗があるんでしょう。KADOKAWAと組んだことからも分かるように、コンテンツは属人性を大きくしたほうが強くなるのは理解していると思うんです。でも、そのときに自分たちの趣味のようなものが反映されるのには抵抗があるんだろうな、と。川上さんのようなネット技術畑出身の人は、プラットフォームとしての中立性にこだわっていて、特定のコンテンツに肩入れするのは避ける、どうもそういう感覚がある気がします。在特会のチャンネルが開かれるのを拒まなかったのだって、そういう発想が根底にあるんじゃないかな、と。
    ■ 2007年に起きたオタク文化の変貌
    ―― 一方で読み返してみて驚いたのが、当時は「Webの未来を書いた本」に見えたこの本が、むしろ今読むと、あの時期に表に出てきたゼロ年代前半のネット文化の秀逸な解説本に見えてしまったことです。
    濱野:目次を見れば分かるのですが、この本は過去の話をひたすら書いてる本ですからね。
    実際、ニコニコ動画の盛り上がりにしてもいくつかの歴史的要因がありますからね。2000年代までのオタク文化の積み重ねがあり、ブロードバンドやパソコンの浸透率があり、動画まで含めた一通りのマルチメディアがウェブに揃った時期だったというのがあって……という、その文脈をひと通り解説しようとした結果、「アーキテクチャの生態系」というまとめ方になったのかなと思います。
    ――今となってはニコニコもネット有名人たちの集まりのようになっているし、あの頃に匿名のN次創作があれほど盛り上がっていた文脈も、年々見えづらくなっている気もします。N次創作だって、実はゼロ年代前半のネットの同人文化で流行していたものですよね。別にニコニコ動画で急に生まれたものではないんですよね。
    濱野:はい、もちろんそうですよね。それでいうと、90年代後半から2000年代前半くらいまでのいわゆる「ホームページ」って、同人活動の一環として自分のイラストを公開したりするような場所としても機能していましたよね。実際、2000年代にこの本を書いていた頃、会社で大学生のネット利用実態の調査をすると、ホームページを作る人は腐女子だとかのオタクばかりだったんですよ。アニメのキャラクターのイラストを描いたり、ドリーム小説を書いたり、掲示板を置いてコミュニケーションしたり、という。
    まあ、ブログもない時代の、リア充なライトオタクが出てくる以前の話です。学校でおおっぴらにオタク趣味を言えない人が、ネットで仲間を探したり、作品を公開していて、そういう大学生たちの半年に一回のオフ会としてコミケがあった……そういう時代です。
    ――たぶん、そういう空気の中でゼロ年代前半を通じて、HPや2ちゃんねるで、M.U.G.E.NやBMSやAAやMADなどが盛り上がっていき、ニコニコ動画の登場で最盛期を迎えたというのが、2015年から振り返ったときのN次創作の歴史だと思います。実はあの2007年頃って、そういうマグマのように溜まっていたゼロ年代前半のオタク文化が一気に噴出した時期でもありますよね。
    濱野:そうそう、あの2006年から2007年の頃って、ちょうど「涼宮ハルヒの憂鬱」が大ヒットして、明らかにぱっと見がオタクではない子たちが、「私、オタクなんです」と言い出した時期なんです。ちょうど動画サイトが登場して、アニメをネットで見られるようになり、10代の暇を持て余している層の共通のネタ元としてアニメが機能してはじめたんです。
    そのときに、4,5人でパッと集まって盛り上がれるコンテンツを作るときに、アニメはとても「便利」なものだと発見されたんですね。というのも、「踊ってみた」や「コスプレ」のような、何かのテンプレをもとに真似したりアレンジするためのデータベースが、オタク文化には豊富にあったんです。その構図は現在の「MixChannel」に至るまで変わらないですね。
    ――二次元のオタク文化が市民権を得た背景には、動画サイトの存在があった。まあ、そこでみんなが見ていたのは、違法にアップロードされたものでしょうけど(笑)。
    濱野:しかも、「涼宮ハルヒの憂鬱」って、当時としては作り手も若くて、それまでのアニメとは雰囲気も違っていたんです。なにしろ、当時の我々は「えっ、萌え要素って極限すれば3つでいいんだ」と驚きましたからね(笑)。別に10人とか20人なんて要らない、意外とツンデレとドジっ子とクールキャラくらいでイケる。これが衝撃だった。そういう話も含めて、新しい空気をまとっていたアニメでした。
    実際、2007年に高校生を調査したときには、すでに「私たち、学校に"SOS団"を作ってるんです」みたいなことを言う子たちがかなりいました(笑)。ニコニコ動画でも「踊ってみた」をいろんな大学のサークルがやってましたよね。
    ――こういうゼロ年代前半の深夜アニメブームやネット文化の文脈を押さえた上で、硬派なネット論を語れる人材として、濱野さんが必要とされた瞬間だったのかなと思いました。
    濱野:当時は世界的にフラッシュモブが話題になっていた時期でもあって、みんなで簡単に参加して同期する娯楽がネット文化全体としても流行っていました。そういう文脈を踏まえて書かれた本でもありますね。
    ■ アイドルへの興味に連続性はあったのか?
    ――それにしても、ここまでゴリゴリとアーキテクチャだけで議論を進めていく硬派な本は、このあと出てこなかったですね。最近になると、もうプラットフォームの運営者が表に出てくるので、そうなると中の人の「運営思想」を直接聞いていく発想の方が強いですよね。Facebookやニコニコ動画も、今だったらザッカーバーグや川上さんなんかの発言から分析しようと思うのが普通でしょうし。
    濱野: まあ、そりゃ創業者にインタビューした方が話も早いですよね(笑)。Facebookの本にしたって、結局はザッカーバーグに取材したものになる。でも、僕はそういうのには関心がないんです。だって、「運営」の本って、結局は「その人がそう思いました」という話にしかならないでしょう。日本人が好む歴史って、戦国時代にしても幕末にしても、人物伝ばかり。でも、そういう属人的な話には興味がないんですよ。
    ――でも、その後に濱野さんが興味を向けたグループアイドルって、まさに仕組みをいかに運用していくかという「運営」の力が勝負を決める場所ですよね。
    濱野:確かに。アイドルって要は人間そのものがコンテンツですから、「運営」すらも消費対象として重要になる。
    AKBもそう。AKBがここまで大きくなったのは、巨大化してもいまだに「運営≒秋元康」が2ちゃんねるを見ていることだと思うんですよね。運営は2ちゃんねるが燃えると分かって燃料を投下して、2ちゃんねるのユーザーも「秋元の野郎」と返していく。いわゆる理想の民主主義の形というか、市民が討議しあって世論が熟して、政治家が選ばれて……というハーバーマスが理想とするような「公共圏」的な結託ではなくて、そこでは運営とオタクがともに文脈をズラしてツッコミ続ける「ネタ的コミュニケーション・システム」としての結託と連鎖が、今でも行われているんですよ。そこは、運営が2ちゃんねるを一切見ないふりをしたと言われているハロプロとの大きな違いですね。あっちは、DVD化の際にオタのコールを全てカットして販売したりしてたそうですから。
    ――その辺のテクニックって、やはり秋元康さんなんでしょうか?
    濱野:秋元さんが「2ちゃんねるまとめ」をプリントしたものを会議なんかで見ていた、という話は聞きますね。少なくともオタは運営もメンバーも見ていると思うからこそ、「イエーイ見てるー?」状態になってモチベ高く2ちゃんねるとかに書き込みをするわけで、非常に独特の空間になっている。
    そもそも秋元さんはラジオの放送作家上がりの人で、ハガキ職人的な世界観をよく知っているわけですよね。ああいうハガキ職人の文化は、匿名性がとても強くて、そのコミュニケーションもディスクジョッキーと真正面から語るよりは、延々とハシゴ外しを繰り返して、ズラし続ける感じ。
    ――つまり、深夜ラジオみたいな場所は、視聴者と番組の運営スタッフの距離が非常に近い"プレ・インターネット"になっていて、そこで秋元さんはネット的な感受性を鍛えられていた……という感じですか。
    濱野:そうですね。『前田敦子はキリストを超えた』(編注:2012年に出版された濱野さんの著書/ちくま新書)では、そうした運営論というか、秋元康論は一切書かなかったですけど、実はAKBが成功した理由への僕なりの回答は、そこにあるんですよね。それどころか、秋元康という人は、ずっとそれだけをやってきた人なんじゃないか、と。AKBは、彼が80年代からやってきたことが、2ちゃんねるやTwitterが大きな力を持ってしまう時代に、突然マッチしてしまっただけなんです。
    ただ、大きくなっても運営がそういうコミュニケーションを恐れなかったのは、本当に凄いですけどね。実はこういう文化を作ったのはハロプロだったのだけど、さっきも言ったように彼らは受け手の意見は聞かないふりをした。まあ、2ちゃんねるの話なんてまともに聞くわけないですから、別にそれって悪いことでもなんでもないですよ(笑)。それに対して、逆にAKBは運営が明らかに「聞いてまーす!」という態度で、悪ノリ的にユーザーと結託しようとした。そこが凄かった。
    ――この『アーキテクチャの生態系』が登場した当時、クリエイティビティが宿っているのは、ユーザーなのかアーキテクチャなのか、みたいな議論がありましたが、それに対して、いまこの場で濱野さんがおっしゃっているのは、両者をコーディネートする媒介としての「運営」が肝になってくるという話にも聞こえますが……。
    濱野:それはそうなのですが……やっぱり、僕がそういう話をやりたくはないんですよ、うん。
    ――でも、そうなるとウェブサービスに対して「運営」から分析していく流れにも、必ずしも話がわかりやすいからだけでない、理論的な根拠があると言えませんか。
    濱野:確かにそうなんですけどね……。でもその一方で、「これじゃあ、秋元さんが死んだら終わりじゃん」とも思ってしまうんですね。それは日本文化のある種の弱さというか弱点でもあって、要するに一代限りのワンマン社長で文化が終わっていくのではダメだと思うんです。そこはアーキテクチャに落としこむ必要があると思うんです。普遍化したい、という欲求が社会学者としてある、というのかな。
    ――いや、この話を掘り下げたいのは、濱野さんのその後の活動とこの本の連続性を聞いてみたいからなんです。それこそニコニコ動画なんてその後、実況者や歌い手の疑似恋愛と結びついた文化が大きく台頭して、社員たちが「もうイベント会社だよね」と自嘲するくらいにイベントドリブンのサービスになってしまい、さらに当時は裏に隠れていた川上さんがニコニコの運営論を自ら話すようになったわけですよ。今思えば、これってアイドルブームと並行する動向です。その後の濱野さんはインターネット論から一見して離れたように見えて、理論の水準ではやはりこういう日本的インターネットの最先端の動向と並走していたと思うんです。
    濱野:なるほど! まあ、そういう意味では、僕はグループアイドルにしか興味がないというのはありますね。グループアイドルって、要はメンバー一人ひとりにピンで立っていけるほどの実力はないんです。でも、そういう娘たちを集めると、メンバー同士やファン同士や運営との関係性で、驚くほど多くの物語が勝手に生まれていく。そのダイナミズムが面白い。
    そしてこのグループアイドルで重要になるのが、仕組みなんです。アイドルって、別に歌も踊りも重要じゃないから、とにかく「人」の”配置”と”構成”が全てであるとしか言いようがない。ポジションとか、曲順とか、そういうのですね。PIPなんて最初のうちはカバーしかやってないから、曲すら重要じゃない。ただ、誰がどういう順番でどこで何を歌うか。それだけをひたすら設計し、設定する。、何人グループにするか、誰をどういう仕組みで選抜するか、みたいな配置と構成の設計が、全体の動向を大きく左右するんです。それは、僕があの本で書いた意味での「アーキテクチャ」とは厳密には違いますが、やはりプログラミングに近い何かがあるのは事実です。
    実際、僕のPIPでの主な仕事なんて、ライブの曲順を決めながら「いや、この順番では着替えが発生するな」と順番をいじり続けることだとかで、ほとんどソートというか順序づけをしているだけです。ところが、本当にそれだけのことから、もうおよそ人間世界にある様々な情動が勝手に生成されてきて、あらゆるものをドドドドドと巻き込んでいくんです。これ、なかなか体験していない人には伝わらないかもしれないんですけどね。
    ――そう聞くと、『アーキテクチャの生態系』の問題意識からアイドルに向かう連続性は見えてきますね。
    濱野:以前、学生時代にネトゲ廃人だった友人にアイドルの説明をしたら、完全にネトゲの用語で意思疎通ができたことがあるんですよ。
    例えば、AKBの人気が持続している理由として、「NMBとかSKEとかどんどん作っていって、新規が入りやすいようにしてるんだよ」と言ったら、「ああ、なるほど、新鯖を作るってことか!」と言われて、「そうそう!」みたいな(笑)。
    ――グループアイドルの運営とネトゲの運営はそっくり(笑)。
    濱野:そっくりどころか、実はほとんどネトゲの運営手法と同じなんですよ。運営がやたらと2ちゃんねるの板に張り付いて、どんな悪口を書かれているか確認して対処するとか、そういう話まで含めて(笑)。

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  • LUNA SEA主催フェス「LUNATIC FEST.」はV系の「反撃の狼煙(のろし)」か?(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第2回) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.376 ☆

    2015-07-29 07:00  
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    LUNA SEA主催フェス「LUNATIC FEST.」はV系の「反撃の狼煙(のろし)」か?(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第2回)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.29 vol.376
    http://wakusei2nd.com



    去る6/27-28日に幕張メッセで行われたLUNA SEA主催フェス「LUNATIC FEST.」は、その多彩なラインナップで大盛況となり、様々なメディアにも取り上げられました。今なぜ「ヴィジュアル系の祭典」が行われたのか? そして、その熱気はどうして生まれたのか?
    「幾つになっても音楽評論家」市川哲史と、ヴィジュアル系ライター藤谷千明の2人が、この大規模イベントから「ヴィジュアル系の現在」を考えていきます。


    ★LUNATIC FEST.(以下ルナフェス)とは?
    LUNA SEA主催で先月の6月27-28日にかけて幕張メッセで行われた音楽フェスティバル。X JAPANやDIR EN GREY、MUCC、GLAYといったいわゆる「ヴィジュアル系」バンドだけではなく、その影響源たるBUCK-TICKやDEAD END、D’ERLANGERから近年のラウドロックシーンを引っ張るcoldrainやROTTENGRAFFTY、凛として時雨や9mm Parabellum Bullet、Fear,and Loathing in Las Vegasや[Alexandros]、the telephonesなどの若手バンドまでが出演し、その幅広いラインナップで話題となった。(詳しくは公式ホームページ http://lunaticfest.com/ を参照。)

    公式ホームページ(http://lunaticfest.com/)より。
    ▼対談者プロフィール
    市川哲史(いちかわ・てつし)
    
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント!」などで歯に衣着せぬ個性的な文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)。
    藤谷千明(ふじたに・ちあき)
    1981年山口生まれ。思春期にヴィジュアル系の洗礼を浴びて現在は若手ヴィジュアル系バンドを中心にインタビューを手がけるフリーライター。執筆媒体は「サイゾー」「Real sound」「ウレぴあ総研」ほか。
    ◎構成:藤谷千明
    前回記事:第1回「元祖・フィジカルエンターテイナーとしてのYOSHIKI」 
    ■ LUNATIC FEST.とはなんだったのか
    藤谷 今回は、先日開催され話題になったLUNA SEA主宰の「ルナフェス」というイベントのインパクトを振り返りつつ、「そもそも、2000年代以降の国内のフェス文化からなぜかヴィジュアル系がパージされてきた」という問題についても考えてみようと思います。

    ▲『MOTHER』:LUNA SEAが1994年に出した4thアルバム。収録された「ROSIER」や「TRUE BLUE」などの楽曲は後世のV系バンドに大きな影響を与えた。
     改めて説明すると、ルナフェスは後続のヴィジュアル系バンドに絶大な影響を及ぼした代表格LUNA SEA主宰のロックフェスです。
     LUNA SEAは00年に終幕(※LUNA SEAは「解散」ではなく「終幕」と表現する)後、各自ソロ活動や別ユニットで活動していましたが、07年末に東京ドーム「GOD BLESS YOU~One Night Dejavu~」で一夜限りの再結成を果たしたのち、08年のhide memorial summit出演を経て、10年にREBOOT(活動再開)宣言とともにドイツ、香港、台湾、アメリカを廻る世界ツアーを発表、以後セルフカバーアルバムやシングルのリリースを経て13年末にはオリジナルアルバム『AWILL』をリリースしました。昨年は結成25周年記念イヤーとして全国ツアーを行い、その記念イヤーのラストイベントがこのフェスになります。
     当日ボーカルのRYUICHI(河村隆一)も「ロックの地層」と表現したように、DEAD ENDやX、BUCK-TICKといった”シーンの始祖”や後続のヴィジュアル系シーン出身のバンドだけでなく、いわゆる「ロキノン系」に括られる凛として時雨や9mm Parabellum Bulletも出演しました。

    ▲凛として時雨 『Who What Who What』。男女ツインボーカルの3ピースロックバンド。メンバーがLUNA SEAファンを公言している。
     彼らはバンドの佇まいや音で「LUNA SEA直系でしょ!」ということがすごくよくわかるんですよ。LUNA SEA終幕後にPSカンパニーやアンダーコード(どちらもヴィジュアル系の事務所)のバンドではなく、UKプロジェクトや残響レコード系のバンドに行った人は多かった。あのあたりのバンドの音って、当時2000年代半ばのヴィジュアル系よりも「ヴィジュアル系っぽさ」があったんです。

    ▲9mm Parabellum Bullet - 生命のワルツ
    市川 私は今回、そんな非V系バンドたちを「すごい爽やかだなー」と思って聴いてたなぁ。つくづくV系というのは不思議なもので、孫引きになればなるほど具体的なサウンドはもちろん変貌してるけども、「あの」ノリとコンセプトだけは妙に生きてるんだよねこれが。だから、90年代V系の尻尾が、後の世代のバンドでは「こういう形でこういう場所に生えてんのか」という驚きがあった。
     一方で、21世紀突入後のもっとオーソドックスなV系後継機にあたるはずの<ネオV系>バンドがあまり出ていなかったけども、今回に限っては出さなくてよかったと思う。だって、お化粧の変遷みたいなのを見せられてもしょうがないじゃない。LUNA SEAは「メイクをしてようがしてなかろうが、見かけがV系っぽくなくても俺達の影響を受けてくれた連中はこれだけいるんスよ」ということを示したかったんだと思うし、そういう意味ではきっと達成感があったと思う。
     それと今回は若い世代を中心に、XやLUNA SEAを初めて生観戦した人もかなり多かったと思うんだよ。それは観客のみならずメディアの若いスタッフたちまで、フェス全編通じて「出音がすごい!」とやたら驚いてて――とにかく新鮮で衝撃的だったみたい。V系バンドのレジェンドたち(苦笑)って、「他の誰よりも音はデカく演奏は速く濃く、どんな手を遣っても目立つ!」的な強迫観念で自らを追い立ててたわけでさ。考えてみたらその本気感って、いまの音楽シーンからいつの間にか失われてるものだったりするじゃない? そんな自意識過剰なプロフェッショナル魂が、きっと恰好よく映ったんだと思うよ。

    ▲D’ERLANGER 『Spectacular Nite -狂おしい夜について-(通常盤) 』
     さらに誤解を怖れず言っちゃえば、当事者であるこのフェスに出演した若いバンドたち自身が、レジェンドたちの生命力漲る音に驚かされてたフシさえある。
     ほら、V系の基本はあくまでも<足し算の論理>だから、そんな「出したもん勝ち!」みたいな生命力の差だよ。「あえて退くことで自分を際立たせる」的な技はV系じゃ通用しないから。わははは。
     たとえば今回のLADIES ROOM(※セクシャルな歌詞とルックスから「エクスタシーレコードのセクサー集団」、サウンドからは「和製モトリー・クルー」と称されたバンド)なんかもう、素敵じゃない。自分たちの楽曲より「Anarchy in the UK」(セックス・ピストルズのカバー)と「酒と泪と男と女」がメインというね。しかも楽曲以上に呑みまくり酔いまくり、そしてそこで唄わされているRYUICHI(嬉笑)。
    藤谷 美声でしたね……。
    市川 アレが原因で声枯らしたね。RYUICHIの唄が肝心のLUNA SEAで調子悪かったの絶対、LADIES ROOMのせいだよ。だははは。
    藤谷 それ以外にも、DEAD ENDのステージにはRYUICHIとSUGIZOが登場。SUGIZOは他にもDIR EN GREYのステージでヴァイオリンを演奏したり、KA.F.KAにも飛び入りしたり。しかもやったのがJoy Divisionの「Transmission」!
    市川 ほとんど杉原祭り。
    藤谷 あははは。Jは先輩のAIONやBUCK-TICKだけでなく後輩の9mm Parabellum BulletやROTTENGRAFFTYとも競演してましたし。
    市川 Jは宿願であるBUCK-TICK兄さんとの共演が、しかもあの“アイコノクラズム”で実現しちゃってもう、至福の笑みだったもんねぇ。
    藤谷 INORANは崇拝するD'ERLANGERの、真矢は弟子の淳士がいるSIAM SHADEのステージに……と書ききれないくらい「サプライズ」がありましたね。LUNA SEAメンバーの、あのオーガナイザーとしてのサービス精神は凄いと思います。
    市川 うん。私の想像をはるかに超えて、LUNA SEAのホストとしての献身は素晴らしく、おもてなし魂が炸裂してたよ。「炸裂」しなくてもいいんだけども(苦笑)。
    ■ ルナフェスは90年代の「エクスタシーサミット」「LSB」のオマージュ?
    藤谷 このルナフェスの意義としては、今まで誰もきちんと評価できていなかった「LUNA SEA以前・以後」という軸を見せることができたということが大きいのかなと思います。
     今回のルナフェスのラインナップって実は、市川さんがリアルサウンドの記事(『LUNATIC FEST.』が蘇らせる、90年代V系遺産 市川哲史が当時の秘話を明かす - Real Sound|リアルサウンド )で書かれていたように、1日目は《エクスタシーサミット(91・92年)》、2日目は《LSB(94年)》のオマージュなわけですよね。
    市川 エクスタシーサミットってそれこそエクスタシー所属バンドの祭典だったけど、実際に売れてるバンドはまだXだけで、Zi:kill(エクスタシーレコード出身でLUNA SEAとは先輩後輩にあたる。今回のフェスでもSUGIZOから再結成を望む発言があったが実現はしなかった)やLUNA SEAがメジャーデビューしたばかり。要は、<YOSHIKIと愉快な仲間たちwith舎弟たち>の集会だったわけ。
    藤谷 それが若手のフックアップの場でもあったわけですよね。ヒップホップでいうところの「さんピンCAMP」(96年に日比谷野外音楽堂で開催された日本初の大型ヒップホップフェス)に近いのかも。
    市川 結果論としてはね。でも実際は何も考えてなかったと思うよ。とにかくYOSHIKIが、「エクスタシーの大きい團旗を持って裸でわーっとステージを駆け回りたい」ってだけで始まったんだから。
    藤谷 無邪気か!!!
    市川 一方、BUCK-TICKとLUNA SEAとSOFT BALLET(※インダストリアルテクノユニット。今回のフェスにもメンバーである森岡賢と藤井麻輝によるminus、森岡賢が参加しているKA.F.KAが出演)が一緒に全国を廻ったLSBは、いわゆるスプレッド・ツアーの日本での走りだったんだよね。しかもラルクやイエモンやマッド・カプセル(・マーケッツ)など当時の「若手注目株」も、公演地ごとに客演するというショーケース的機能も併せ持った画期的なイベントだった。
     当時のファンはやはり、「自分の推しバンドこそ命♡」と一組のアーティストだけに深く狭くのめりこんでたわけ。だけども、私の『酒呑み日記』(※市川さんが『ロッキングオンジャパン』『音楽と人』誌で連載していたロックミュージシャンとの交遊録的エッセイ。当時は神秘のベール(笑)に包まれていたV系ミュージシャンの素顔や本性や生態が見られると大人気だった)や掟破りの対談やFMを通じて、「今井寿と藤井麻輝は仲がいいんだ」とか「今井とhideがTAKESHIとの座談会出席を自ら買って出るほど、マッド・カプセルを応援してるんだって」とかそういう、バンドの枠を越えた横の人間関係がV系には存在するということを、一般の女子たちも知るに至ったわけさ。我田引水だけども。
     そういう意味では、日本のロックシーンにも縦の上下関係のみならず横断する<ロック村>が初めて誕生した上に、またそれが世間に知られるようになったところで、LSB。そこでファンの子たちは初めて、名前とキャラだけよぉーく知っている自分の推しバンドの仲間の生のライヴを観て、「あ、恰好いいんだーっ」とか「私にはわからないー!!!」とか、一喜一憂したらしいよ。知識が経験へと昇華したんだねぇ(←しみじみ)。
    藤谷 当時はネットで試聴できるわけでもないですから、LSBでのライブが「試聴」の代わりでもあったわけですね。
    市川 そう、人力YouTube状態(失笑)。だからLSBは、「名前しか知らないバンドを体験する」という機能を果たしていたんだよね。しかも、どこかの事務所やレーベルの思惑ではなく、アーティスト自身の主導で実現したことも大きかった。前宣伝も地味だったし、冠スポンサーも一切ないし、ライブビデオもリリースされなかったし、そういう意味では「ただこんなライヴをやりたかっただけ」という潔さが美しかった。
    藤谷 私は当時見に行けてなくて、映像がリリースされてないことが悔しかった記憶があります。
    市川 そりゃ無理(←きっぱり)。
    藤谷 しかしなんでまたLUNA SEA25周年とはいえ、20年以上前のイベントを半分踏襲するようなフェスをやることになったんですかね。
    市川 そもそも再結成LUNA SEAを、えらい長く引っ張っちゃったわけで。しかも新曲シングル連発して新作アルバムまで出して全国ツアーまで実現させてしまい……本気でやりすぎだろう(愉笑)。<バンド再結成に新作不要>論を唱える私には、LUNA SEAは真面目すぎる。
     要するに真面目に再結成し過ぎてしまっただけに、その巨大な風呂敷をいったんたたむには大きな花火が必要だったんじゃないかな。というわけでV系の歴史を総轄しちゃうとこがまた、相変わらずLUNA SEAらしくて微笑ましい。
    ■ XとBUCK-TICKの「現在」
    市川 今回の出演バンドで最も得したのは、BUCK-TICKじゃなかろうか。<伝説の元祖V系バンド>として昔から評価が高いわりに、実際に楽曲聴いたりライヴ観たりされてなかったと思うのよ実は。イメージと評価ばかりが一人歩きしてて。
    藤谷 「最近のBUCK-TICK」を知らない上の世代は多かったかもしれませんね。どうしても世間的なイメージだと「JUST ONE MORE KISS」や「惡の華」で止まっている。そこからちょっと難解なデジロック路線を経て、05年のゴシックをコンセプトにした『十三階は月光』をきっかけにして若いファンがけっこう入ってきたんですよ。
    市川 とはいえごく少数じゃない。やはり今回初めて動くBUCK-TICKを生で観たら、「うわやっぱ本当に恰好いいじゃん!」と驚いた声をすごくたくさん聞いたよ。
    藤谷 ライブ終了後にTwitterのホットワードに「BUCK-TICK」が上がってましたからね(笑)。セットリストも完全に「現在」のもので。潔いくらいナツメロ的サービスがなかった。

    ▲昨年行われた「TOUR2014 或いはアナーキー -FINAL-」の映像
    市川 初期のあのヤンキー・デカダンス的なヴィジュアル(失笑)が災いして、ずっと差別的に過小評価され続けたけども、実はBUCK-TICKって早い時期から音楽的に成熟してたんだよね。たとえば『狂った太陽』は1991年リリースにもかかわらず、海外に先んじてクールなデジロックを実現させていた。また『darker than darkness-style 93-(93年)』『Six/Nine(95年)』と、「とにかく変てこな音を造りたい」という今井寿の少年並みの執着心が、偏執的な「おいおい」エレクトロニカを既に聴かせてくれちゃってたし。新しく購入した化け物エフェクターが内臓する440種の音色を、いちいち全部試してレコーディングしたりしてたもの――ガキに刃物渡しちゃ駄目だって。わはは。
     でも本当に、BUCK-TICKが音楽的に正当に評価される場がなかったと思う。
    藤谷 そんなワンマンかのようなステージをみせたBUCK-TICKと対照的だったのが、「通常営業」だったXですよね。「Rusty Nail」「紅」「Endless Rain」「X」といった代表曲を中心にしたセットリストで、さらには「(ずっと出ないことがネタになっている)ニューアルバムに収録するから」と観客を巻き込んだレコーディングまでやる、という。

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  • 機械じかけのナイトラウンジ Vol.1 「根津デザインの真髄~創造性は組む相手から生まれる」根津孝太×岩佐琢磨×小笠原治×宇野常寛 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.375 ☆

    2015-07-28 07:00  
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    機械じかけのナイトラウンジVol.1「根津デザインの真髄~創造性は組む相手から生まれる」根津孝太×岩佐琢磨×小笠原治×宇野常寛
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.28 vol.375
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    2014年11月に秋葉原に誕生した「DMM.make AKIBA」。ここではものづくりで世界を変える野望を抱いた人々が、日夜、新しいプロダクトの研究開発を重ねています。このフロアの一角にあるバーカウンターに、DMM.make AKIBAの実質的なプロデューサーの小笠原治さん、Cerevo代表の岩佐琢磨さん、評論家の宇野常寛の3人が集結。岩佐さんをホスト役にして、ゲストとハードウェアに関するあれこれを熱く語り合います。
    ◎構成:鈴木靖子
    ■ 電動バイクの概念を変える新しい大型バイク「zecOO」
    岩佐 今夜から始まりました「機械じかけのナイトラウンジ」。毎回エンジニアやデザイナーの方をゲストにお呼びして、ものづくりの魅力を存分に語ってもらいます。第一回目のゲストは、根津孝太さんです。
    根津 よろしくお願いします。
    岩佐 根津さんはトヨタ自動車のコンセプト開発リーダーなどを経て、現在は「znug design (ツナグ デザイン)」代表として、多くの工業製品のコンセプト企画及びデザイン、プロダクトを行ってらっしゃいます。先日は、根津さんがデザインされた電動バイク「zecOO」の販売が始まり、大きな話題を呼びました。

    ▲ 2015年3月15日より一般販売が開始された大型電動バイク「zecOO」
    宇野 ニュースサイトにも取り上げられてましたよね。これって一般販売してるですか?
    根津 してますよ。どなたでも購入できます。価格は888万円です。
    小笠原 この値段で誰が買うのかと思ったら、すでに買った人がいるらしい。
    根津 いるんですよねー。DMM.make AKIBAが入ってるこのビルの中に(笑)
    岩佐 そんな話題の「zecOO」について、普通のバイクとはどう違うのか、お話をうかがえればと思います。
    根津 この「zecOO」は電動バイクです。ガソリンエンジンではなく、電動モーターを動力とするバイクですね。
    まず、これだけ大きな電動バイクって非常に珍しいんですよ。これまでの電動バイクは、スクータータイプがほとんどなのですが、「zecOO」は大型バイクのサイズで、性能的にもリッタークラス以上のパワーを持っています。

    「zecOO」の開発には経緯がありまして。僕はずっと「電動バイクを作りたい」と、あちこちで公言していたんですね。そうしたらあるとき、「ここで作れなければ世界中どこに行っても作れないよ」と、千葉のバイクショップ「オートスタッフ末広」さんを紹介されたんです。
    そこの中村社長とお話をしているうちに、先方にも作りたいものがあることが分かって。そこで、まずは「ウロボロス」という三輪のトライクの製作を一緒にやることになったんです。その過程で、オートスタッフ末広さんのスゴさを実感して、だったら次に作る電動バイクも、オートスタッフ末広さんでなければできないものをやろうと。そうして生まれたのが「zecOO」なんです。
    だから、開発に関わっている人数も少なくて、中村社長と、エンジニアの高坂さん、電気系を担当したエリック・ウーさん。僕を含めても中心になっているメンバーは4人くらいなんですね。
    なので、技術的にもデザイン的にもやりたい放題やってます。例えば、普通のバイクは自転車と同様に2本のフォークでタイヤを挟んで支えるテレスコピックという構造になってますが、「zecOO」は横からタイヤを支える片持ちのスイングアーム構造になってます。

    全体のフレームも変わった作りになっていて。今、世にある電動バイクは、ガソリンバイクのフレームをそのまま流用して、エンジンをモーターに置き換えたものが多いんですが、「zecOO」は電動バイク用に独自に設計されたフレームを採用しました。アルミを削り出した板状のフレームで、前から後ろまでのユニットを両側から挟み込むような構造になってます。
    岩佐 へぇーなるほど! 僕はてっきりパイプ溶接みたいな構造だと思ってました。
    根津 オートスタッフ末広さんが、「ウロボロス」のスイングアームの付け根にこの構造を使っているのを見て、全体のフレーム構造に拡大するのを思いついたんですよね。それが「zecOO」のフレームの基本コンセプトになってます。
    ■ 思わず応援したくなる製品を生み出したい
    宇野 今のお話から「zecOO」の開発に込められた情熱はすごく伝わってきたんですが、アルミ板を挟むのとパイプ溶接の違いに「おぉ!」ってなる理由が、僕の知識だとわからなくて(笑)。「アルミで挟んで作るのは超すごい」ということなんでしょうか? 
    根津 そうですね。アルミの板状のフレームで挟む構造は、大手のバイクメーカーではやってないですし、電動ならではのやり方とも言えます。オートスタッフ末広さんならではの作り方の技術で、特許も出してます。
    宇野 なるほど。バイクの構造としてはまったく新しい発想なわけですね。
    根津 バイクのフレームの形式って、長い歴史の中で生み出された、究極に近い形があるんですよ。僕もそういうものは大好きです。でも、動力が電動であることを考えると、ひょっとするとタミヤさんのラジコンカーのほうが進化の先にあるのではないかと。
    小笠原 それは絶対にありますね。
    根津 最近のハイエンドのラジコンカーって、カーボンの板にアルミの削り出しのパーツを乗っけて、さらにもう一枚、カーボンの板を上にのせて剛性を確保するというダブルデッキ構成です。いわゆる、「板もの」と「削りもの」の構成ですね。「zecOO」はそれを縦にしたような構造です。
    サウンドに関しても「zecOO」は普通のバイクとはまったく違います。エンジン音や排気音はなくて、代わりに、ジェット戦闘機みたいな「キーン」という音が小さく鳴ります。
    宇野 めちゃくちゃかっこいいじゃないですか! 
    根津 やっぱりバイクファンの間には「バイクはこうあるべき」みたいな意見があって、例えばハーレー好きの方は、そのサウンドも好きでハーレーを買っている。同じように「zecOO」には「zecOO」の良さがあって、走行音が静かなのもそのひとつです。だから普通だったらバイクで騒音を出すのは気が引けるような場所でも、気兼ねなく行けるんですね。
    小笠原 そういえば若い頃は、実家の100mくらい手前でバイクのエンジンを切ってから、手で押して帰ってましたね(笑)。
    根津 改造すればするほど、エンジンを切るタイミングが早くなっていく。よく父親に「街の外に出てからエンジンをかけろ」って言われてました。
    小笠原 しまいには「うるさいから帰ってくんな」って(笑)。
    宇野 「zecOO」は走行性能的にはどうなんですか? 
    根津 加速感も電動ならではです。ガソリンエンジンはパワーバンドが決まっていて、シフトチェンジしながらギアをつないで上げていく。自動車でいうMT車(マニュアル車)ですね。ギアチェンジにはテクニックも必要で、それも面白さのひとつなんですが、電動バイクはオートマチックです。モーターを入れると、カーンっと立ち上がって、陶酔感のある加速をします。これ、本当にヤバイです。エコモードとパワーモードがあるんですけど、パワーモードに入れてカッとアクセルを開くと、「ハァ~」ってなりますよ。
    岩佐 車重が結構あると思うんですが、パワーモードに入れて急加速しても、フロントはリフトしないんですか? 
    根津 車体の全長が長いのとバッテリーの配置を工夫したことで、安定性はすごく高くなってます。
    岩佐 リアのタイヤって、幅はいくつのを履いているんですか?
    根津 アホみたいに太いんです。240mmあって。
    岩佐 240mm!? 軽自動車のタイヤほぼ2本分ですよ!
    小笠原 タイヤの扁平率ってどのくらいですか?
    根津 40%くらいですね。
    岩佐 自動車だと「フェラーリF40」とか、あの辺のクラスですね……。
    根津 それをどうやって決めたかというと、結局、見映えなんですよね。だって、太いほうがかっこいいじゃん! 
    一同 おぉ!
    小笠原 それを言い切ってしまえるのがスゴい(笑)。でも絶対に専門家は「勘弁してくれ」って言いますよね? 
    根津 「コーナーで曲がれなくなるぞ」って言われたんですけど、実際に乗ってみたら曲がれたので、別にいいかなと(笑)。クセがないバイクを作るなら、こういったこだわりは不要なんですけどね。
    小笠原 最初のプロダクトを世に出すとき、クセがないものを作る意味はないですよ。僕はモーターショーで発表されるコンセプトカーを、そのまま販売してほしいといつも思ってます。
    岩佐 今の大企業は超少品種の多量生産に特化していますが、その結果、どこのショップに行っても万人受けを狙った製品しか売っていない。この現状に不満を抱いている人は多いですよ。
    小笠原 本当の意味で「万人に受ける」なんてプロダクトは存在しないからね。
    岩佐 タイヤを太くすると「パワー効率が悪い」とか「重量が重い」とか「曲がりにくい」みたいな話は当然出るんだけどさ。でも「かっこいいんだから、太いほうがいいじゃん!」っていう人だっているわけです。
    100人いる内の3人だけが「よっしゃぁ!」と盛り上がれる商品だっていいんですよ。それがたくさん出てきたら、万人がそれぞれのお気に入りを見つけられるんです。お客さんの顔が見える距離で製品の開発に取り組める。そういう選択肢もありうる世界になってきていますよね。
    根津 もちろん、使う人に大きなリスクを背負わせてはいけないけど、ある種の尖ったものを作ると、ちょっとクセがあるとか乗りにくいとか、そういう面もあるわけです。でも、それも含めてファンになってくれる人がいる。
    僕はよく「お客さんは最後のチーム員だよね」って言うんだけれど、ユーザーとチームを組んで、ニーズを聞き取りながら魅力的な製品を作っていく。そういうスタンスは、あっていいと思っています。
    岩佐 お客さんが応援したくなるものを、僕らクリエイターは作らなくちゃいけない。
    小笠原 スポーツと一緒で、お客さんが応援したくなるようなプレーをすればいいんです。野球やサッカーだって、全チームが同じようなプレーをしていたら、誰も応援しなくなりますよ。
    宇野 いつの間にか僕たちは、顔も知らない誰かが作った製品が量販店に並ぶのが当たり前だと思い込んでいる。だけど、画期的な製品の背後には冒険を試みた開発者がいるんですよね。そんな当たり前のことを、消費社会の中で忘れてしまっていた。
    根津 そうですよね。僕がトヨタにいたときは、企画が得意だったので企画のフェーズばかりやらされていて。それは一つの効率化でもあるんだけれども、ちょっと寂しかった。ものづくりの現場で、お客さんに最後まできっちりと接しながら作ってる人って、実はものすごく少ないと思う。だから、スタートアップの何から何まで自分でやらなければならない状態は、むしろいいことだと思うんですよね。
    ■ 現代は「再発明」のパラダイムに入っている
    根津 例えはあまり良くないかもしれませんが、僕、あの映画の「エイリアン」ってすごい生物だと思ってるんです。寄生した宿主の遺伝子をもらって、適応した形で出てきますよね。オートスタッフ末広さんに僕が寄生して、その結果出てきたのが「zecOO」なんです。要は、組んだ相手や寄生した先によって生まれてくるものが違う。そんな仕事をやりたいと思っていました。
    小笠原 それはデザインにおいてむちゃくちゃ大事な部分ですよね。融合しないとものは作れないのに、自分自身を押し出せればいいという作り手は多い。
    根津 自分のことばかり言ってても、なかなか実際に製品は出来てこないですよね。
    小笠原 人もついてこないですしね。陰口叩かれるし(笑)。
    根津 僕も陰口は叩かれています(笑)。「アイツは本当に何もわかっていない」って。でも、いいんです。実際わかっていないし。
    岩佐 わかっていない人が作るのがいいんですよ。わかっている人は下手に知識や経験があるから、その殻を破るのが難しくて新しいチャレンジができない。
    例えば子供用のおもちゃって、コスト的に見合わないので金属の削り出しの部品を使わないんですよ。それはいいんですが、最初から使わない前提で考えているのが問題で、使ってみたら今までにない形のものを作れるんじゃないか、付加価値を出せるんじゃないか、といった発想が、業界内部から出てこない。
    【根津孝太さんの新連載『カーデザインの20世紀』もPLANETSチャンネルで公開中! いま入会すれば、この記事の続きと両方読めます!】
    根津孝太「カーデザインの20世紀」第1回:スーパーカーブームを彩った幻の名車――ランボルギーニ・イオタ  
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  • 月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」7月20日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.374 ☆

    2015-07-27 07:00  
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    月曜ナビゲーター・宇野常寛J-WAVE「THE HANGOUT」7月20日放送書き起こし!
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.27 vol.374
    http://wakusei2nd.com


    大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。ほぼ惑月曜日は、前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!

    ▲先週の放送は、こちらからお聴きいただけます!
    ■オープニングトーク
    宇野 時刻は午後11時30分を回りました。みなさんこんばんは、宇野常寛です。僕は今年の4月から、日本テレビの「スッキリ!!」というワイドショーのコメンテーターをやっているわけなんですけれども、これまで基本的に楽しくやってきましたが、先日はじめて壁にぶつかりました。
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  • 【後編】〈デザイン〉としての立体玩具――レゴ、プラモデル、ミニカー、鉄道模型(浅子佳英×門脇耕三×宇野常寛「これからのカッコよさの話をしよう」vol.5) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.373 ☆

    2015-07-24 07:00  
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    【後編】〈デザイン〉としての立体玩具――レゴ、プラモデル、ミニカー、鉄道模型(浅子佳英×門脇耕三×宇野常寛「これからのカッコよさの話をしよう」vol.5)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.24 vol.373
    http://wakusei2nd.com


    本日は、好評の鼎談シリーズ「これからのカッコよさの話をしよう」第5弾の後編をお届けします(前編はこちらから)。今回は、奇形的な進化を遂げた立体玩具の「フィクショナルなデザイン」をヒントに、ドローンや車など「リアルのデザイン」の未来を考えていきます。
    ▼「これからのカッコよさの話をしよう」これまでの記事
    (vol.1)これからの「カッコよさ」の話をしよう――ファッション、インテリア、プロダクト、そしてカルチャーの未来
    (vol.2)無印良品、ユニクロから考える「ライフデザイン・プラットフォーム」の可能性
    (vol.3)住宅建築で巡る東京の旅――「ラビリンス」「森山邸」「調布の家」から考える
    (vol.4)インテリアデザインの現在形――〈内装〉はモノとヒトとの間をいかに設計してきたか
    ▼プロフィール
    門脇耕三(かどわき・こうぞう)
    1977年生。建築学者・明治大学専任講師。専門は建築構法、建築設計、設計方法論。効率的にデザインされた近代都市と近代建築が、人口減少期を迎えて変わりゆく姿を、建築思想の領域から考察。著書に『シェアをデザインする』〔共編著〕(学芸出版社、2013年)ほか。
    浅子佳英(あさこ・よしひで)
    1972年生。インテリアデザイン、建築設計、ブックデザインを手がける。論文に『コムデギャルソンのインテリアデザイン』など。
    ◎構成:有田シュン、中野慧
    ■ 80年代以降、日本のサブカルチャーは「ベースデザイン」を生んでいない
    宇野 僕が今日考えたい3つの論点を振り返ると、まず一つ目は「20世紀には現実の縮小を欲望していた人類が、21世紀にそれらを欲望しなくなっていったのはなぜか」。二つ目は、こうした戦後日本の、特にキャラクター文化のベースデザインが60年代から80年代に集中しているのはなぜか。そして最後の三つ目が、「戦後的な男性性の問題が解消された結果として、奇形的な進化を遂げたデザインをどう評価するか」です。
    浅子 一つ目と二つ目については、やっぱり「未来に対する明るい希望を信じられた時代だった」という部分が大きいんじゃないですか?
    宇野 例えば、成田亨により60年代に生み出されたウルトラ怪獣って、ストレートに明るい未来を信じるフューチャリズムの感覚とつながっているとは思えないわけですよ。ウルトラマンの方の造形はフューチャリズムと結びついていると思うけれど、怪獣には当てはまらない。むしろ戦後復興から高度成長への狂騒の中で発生したひずみや余剰が、サブカルチャーの片隅に集中していたと考えた方がいい。もっと大きな、社会と暴力のイメージや男性性の関係の問題があると思うんですよね。それも、かなり日本ローカルな問題がある。戦後的ネオテニー・ジャパンの表現が幼児的な文化を発展させた、といった教科書的な解説には収まらないものが、ゼットンにもキングジョーにもジャミラにも恐竜戦車にもあると思う。
    浅子 僕がもうひとつ気になるのは、三つ目の「奇形的な進化」が、なぜ現実におけるプロダクトデザインも含めた「デザイン」全体の本流にはならなかったののか、という問題です。
     70年代末の『ガンダム』がベースデザインとなりえたのは、後になってフォロワーがどんどん出てきたからですよね。同じように、ウルトラマンで言えば成田亨がウルトラマンをスケッチブックに描いた瞬間にベースデザインになったのではなく、その後のフォロワーが生まれていく過程で、徐々にベースデザインとなっていったのだと思います。
     話を少し迂回しますが、建築デザインの世界では、ここ50年くらいのあいだ、「建築家から新しい都市のヴィジョンが提案されて盛り上がる」ということがほぼなくなりました。キャラクターデザインも同じで、蛸壺化された社会では、誰かが提示した新しいヴィジョンを、みなで広く共有することができなくなったいうことでもあるんじゃないですか。
    門脇 ベースデザインという意味で示唆的なのは、アノマロカリス(古生代カンブリア紀前半に繁栄した捕食性動物)に代表されるバージェス動物群です。バージェス動物群には、口がカメラのシャッターのような機構をした動物など、それ以降の時代には見られないデザインをした変な生物がたくさんいるんですね。そのベースデザインの多様さは圧倒的なのですが、その後、たまたま脊椎動物に連なる生物が生き残って、両生類や爬虫類、哺乳類のベースデザインになりました。

    ▲バージェス動物群の代表格のひとつ「アノマロカリス」(【最強最大の捕食者】アノマロカリスという大スター【カンブリア紀の覇王】 より)
     脊椎動物が5本指をしているというのは、最初に両生類の指が5本になって、それ以降は基本的にまったく変化していないんです。1回ベースデザインができてしまうと、そのベースのなかで進化していくわけです。しかしベースデザインができる前は、バージェス動物群のようにそもそものベースデザインのバリエーションがたくさん出てきていた。さらに言えば、脊椎動物系が生き残ったのはあくまでも偶然であって、合理的な選択の結果ではないんです。
     こうして考えていくと、「60~70年代はベースデザインのない時代だった」と言えるかもしれません。だからこそたくさんの実験的なデザインが花開いたのではないか、と。たとえば『ウルトラマン』なら、隊員が巨大化して怪獣と戦うという新しいベースデザインがここで生み出されたということではないでしょうか。
    浅子 ベースデザインとして残ったものが、必ずしもプラットフォームとして優れていたわけではないということですよね。
    宇野 たしかに、ジャンルの勃興とともにベースデザインは生まれるものなんですよ。特撮が生まれたから成田亨のベースデザインが生まれ、乗り物としてのロボットが発明されたからこそガンダムがベースデザインになった。要するに「近年はジャンルを作ることができていない」ということに収斂されていくんじゃないですか。
     60~70年代にアメリカのサブカルチャーの受容とそのローカライズに基本作業は完了してしまっていて、それ以降サブカルチャーはベースデザインの枠内での進化を遂げていったわけです。80年代以降にジャンルそのものとして新たに生み出されたものは「テレビゲーム」ぐらいしかない。
    浅子 しかし、そう考えると、特撮はこれまで人間が怪獣の着ぐるみに入っていたものが、CG全盛に変化したんだから、全く違うものが生み出されていてもおかしくないですよね。にも関わらず、新しいものが出てきていないのはなぜなのでしょう?
    宇野 技術の進歩とジャンルの創出は、それほど相関していないんじゃないかと思います。円谷英二が『ウルトラマン』を撮影したときの特撮の技術はほぼ戦中に開発されていて、その技術を「テレビ番組として毎週一本作る」というフォーマットに合わせてはじめて『ウルトラマン』が生まれた。ジャンルの創出には技術の進歩よりもむしろ、メディア的な要請のほうが要因として大きい。
    浅子 海外の映像業界で言えば、特に『24』以降、「テレビドラマ」がこれまでとは違う意味で勃興してきたと言えるとは思います。だけどテレビドラマという形式自体は昔からあるものなので、現代のテレビドラマの特徴は、予算や時間など様々な制約のために映画ではできないことを、テレビドラマという旧いフォーマットを再利用して新しい表現形式でやっている点にある。ただ、これだけでは「ジャンルを生み出した」とまでは言えないですよね。
    門脇 ベースデザインを変えるのはものすごくエネルギーが必要ですが、今あるベースを開発側が改変し、二重三重にひねくれたストーリーを考えて、各世代の好みに合わせていく「コンテンツデザイン」は比較的エネルギーが少なくて済むというのはあるんじゃないですか。ハリウッドの映画と海外ドラマの関係もそうですし、もともとのロボットアニメである『ガンダム』シリーズと、その奇形的進化であるSDガンダムの関係などもそうなんじゃないかな、と思います。
    ■ キャラクターを現実の風景と対決させることによってベースデザインが生まれる
    門脇 初期の『ガンダム』のモビルスーツは兵器であるという側面が強くあったと思うのですが、SDガンダムはそのエッセンス自体もなくなっていて、ベースとして残っているのは人型のロボットということくらいですよね。
    宇野 ガンダムってそもそも基本的には重火力型ではなくて、高機動型でスマートなんですよ。つまりストレートにマッチョで力強いものではなく、むしろスピード重視の高機動なもので、これって日本人の文化的でインテリ寄りの男性の自意識に結びついていたと思うんです。
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  • なぜゲーム産業はIT産業ではないのか(稲葉ほたて『ウェブカルチャーの系譜』第6回) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.372 ☆

    2015-07-23 07:00  
    220pt
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    なぜゲーム産業はIT産業ではないのか稲葉ほたて『ウェブカルチャーの系譜』第6回
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.23 vol.372
    http://wakusei2nd.com



    本日は稲葉ほたての好評連載『ウェブカルチャーの系譜』最新回をお届けします。
    どうしても分けて考えられがちなゲーム産業とIT産業ですが、もともとこの2つはパーソナル・コンピュータ革命がもたらした双子のようなもの。今回の連載では、なぜその2つが分けて考えられるようになったのかを、日米の文化的差異をヒントに分析していきます。

    稲葉ほたて『ウェブカルチャーの系譜』これまでの連載はこちらのリンクから。
     ウェブにおける「共有」の問題を考えるときに、常に参照されるのがハッカー倫理である。それをスティーブン・レヴィは、ハッカーの歴史を描いた古典『ハッカーズ』の冒頭においてこう要約している。

    「コンピュータへのアクセス、加えて、何であれ、世界の機能の仕方について教えてくれるものへのアクセスは無制限かつ、全面的でなければならない。実地体験の要求を拒んではならない!」
    p33,『ハッカーズ』スティーブン・レビー(工学社・1987)

     レヴィは黎明期にコンピュータに触れた人々にとって、これは「声高に議論されるよりも、暗黙に了解されるものであった」と述べて、このハッカー倫理が(パーソナル)コンピュータ文化の発展史における通奏低音であったことを証明しようとする。
     彼がこの『ハッカーズ』を米国で上梓した1984年は、ハッカーにまつわる映画や、サイバーパンクなどのSF小説が次々に登場しており、その存在に対して人々の関心が高まっていた時期だった。日本でパソコン通信が始まったのも、この数年後のことである。そうした中で、このレヴィによる歴史観そのものがハッカー文化の聖典の一つとしての地位を獲得したのである。
     ところで、この『ハッカーズ』という本を今読み返してみると、不思議に「ゲーム」にまつわる描写が多いのが目につく。例えば、ハッカー倫理を記した第二章につづく第三章の表題は、いきなり「宇宙戦争」である。これは最初期のコンピュータゲームの名作(英題は『Spacewar!』)で、ノーラン・ブッシュネルがアタリ社を創業するキッカケになったゲームとしても知られる。その後もこの本では、あらゆる場所でハッカーたちがゲームを楽しんでいる描写が差し挟まれる。そしてついに、最後の部では「ゲーム・ハッカーたち」と題して、米国ゲーム産業の黎明期の姿が描かれるのである。
     しかし、それは特段、不思議な話ではない。ファミリーコンピュータの登場以降、ゲーム機のハードウェアが専用機に席巻されたために、現代の我々はIT産業とゲーム産業を切り離して考えてしまいがちだ。しかし、それらはともにパーソナル・コンピュータ革命がもたらした双子のようなものである。年配の読者であれば、専用機の普及後にさえパソコン機能がついたゲーム機があったのを覚えている人も多いだろう。
     また、このことは先日逝去した、まさに任天堂の代表取締役社長だった岩田氏の以下のような言葉からもわかる。
    岩田聡・任天堂社長の訃報に接して(編集長) | インサイド 
     この基調講演で彼は、自らをコンピュータの普及機に最初に魅せられた人々の一人として語る。ジョブズやザッカーバーグと、岩田聡を並べて語る人はあまりいないだろう。しかし、両者の根は同じパーソナル・コンピュータ革命にある。その革命がもたらした帰結の昼の顔がiPhoneやFacebookであるとすれば、その夜の顔がファミコンやWiiであった。
     だが、専用機の普及という事情を踏まえた上でも、やはりこの『ハッカーズ』という本が「ゲーム」という娯楽への言及を強く押し出して、ハッカー文化を描いているのは、現代においては隔世の感がある。というのも、その後ハッカー文化は90年代に入り、米国政府との衝突を経て、むしろしたたかな政治性を帯びていくからだ。そのことは前回にも紹介した、同じレヴィの手による『暗号化』などの著作に詳しい。
     事実、この本の出版から長い時間を経て、ハッカー文化そのものが、今や当時に比べてかなり政治性を付与されたイメージに変貌している。
     その印象は、例えば2004年に上梓されたジョン・マルコフの『パソコン創世 第三の神話』という本に顕著である。当時のシリコンバレーがいかにカウンターカルチャーの気風と強く手を結んでいたかを闊達に描き出したこの本は、最後にフレッド・ムーアという反戦運動家の政治青年が伝説のパソコンクラブ「ホームブリュー・コンピュータ・クラブ」【※】を立ち上げたところで終わる。
    【※】アップル創業者のスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックが在籍していた、黎明期のパソコン文化に強い影響を与えたパソコンクラブ。
     『ハッカーズ』におけるムーアの扱いは、あまり大きなものではない。せいぜい従来の社会運動とハッカーイズムの違いを理解せぬまま、コンピュータを政治という「目的」に利用しようとして挫折し、会を立ち去った創立者というくらいの扱いである(ハッカーイズムは、ハックそのものを自己目的化する)。
     それに対して、本書ではむしろコンピュータをあまり理解しないまま、自らのコミュニズム的な政治思想をぶつけたムーアの夢こそが、現代の様々なコンピュータ文化の礎になっていると論じている。実際、ムーアが口癖のように述べていたという「共有」とは、金銭への嫌悪を伴う、ほとんど私有財産の否定に近いニュアンスを帯びている。彼が夢見たというオルタナティブなコミュニティ同士のネットワークも、彼の社会運動と強く結びついていた。それらは、レヴィが要約したようなハッカーイズムと共鳴するところはあるにせよ、あまりに政治的にすぎる。
     しかし、ジャスミン革命や雨傘革命、あるいはWinnyやYouTube、UberやAirbnbを目にしてきた現代の我々は、むしろ60年代後半のある種の極左青年の類型であったムーアの夢にも、いやその夢にこそリアリティを覚えるのではないだろうか。
     少なくともコンピュータという存在が、法的な拘束や業界慣習などによる規制を加えない限り、「富まざる者にpowerを与え、富める者からpowerを奪う」革命の装置たりえることを私たちはよく知っている。「コモディティ化」のような言葉は、その本質を情報弱者に向けて口当たりよく言い換えた言葉にすぎない。そもそも、前回まで論じてきたようにウェブカルチャーにおける行動は、市場の外側で行われる「贈与」による交換を相対的に強化していくものである。

    ■ 日本におけるコンピュータ文化の受容
     では、このような北米由来のコンピュータ文化は、日本においていかに受容されてきたのだろうか。以下の漫画家・すがやみつる氏の文章は、その当時の雰囲気を伝えるものだ。特に注目したいのが、米国の実名前提のコンピュサーブに慣れた氏が、日本のパソコン通信に本名で書き込んだところ、ユーザーから非難を浴びてしまったというエピソードである。
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  • 【特報!AKB48メンバー出演情報あり 】メンバーから気鋭のオタまで総出演!今夏のPLANETSチャンネルをお見逃しなく ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 号外 ☆

    2015-07-22 19:00  

    【特報!AKB48メンバー出演情報あり 】
    メンバーから気鋭のオタまで総出演!
    今夏のPLANETSチャンネルをお見逃しなく
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.22 号外
    http://wakusei2nd.com



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    ■ NMB48の藤江れいながやってくる!
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    ゲストにNMB48の藤江れいなさんが登場! AKB48からNMB48への移籍後、チームMのキャプテンに抜擢されたれいにゃんをお迎えして、関西での活動の"今
  • 稀代のプラットフォーマー・岩田聡が目指したもの:〈遊び〉の力で現実世界を拡張したDS・Wii〜『ニンテンドッグス』『Wii Sports』『Wii Fit』〜(中川大地の現代ゲーム全史) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.371 ☆

    2015-07-22 07:00  
    220pt
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    稀代のプラットフォーマー・岩田聡が目指したもの〈遊び〉の力で現実世界を拡張したDS・Wii〜『ニンテンドッグス』『Wii Sports』『Wii Fit』〜(中川大地の現代ゲーム全史)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.22 vol.371
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    本日のメルマガは『中川大地の現代ゲーム全史』最新回をお届けします。先日、わずか57歳という若さで亡くなった任天堂の岩田聡社長。今回は、2000年代を通してDSやWiiなどを世に送り出し、「ゲーム人口の拡大」に尽力してきた岩田任天堂の軌跡を振り返ります。
    「中川大地の現代ゲーム全史」(これまでの配信記事一覧はこちらから )
    第10章 「ゲーム」を離れはじめたゲーム/コミュニケーション環境が変えたもの
    2000年代後半:〈拡張現実の時代〉確立期(2)
    前回記事:〈拡張現実の時代〉を幕開けたニンテンドーDSの設計思想 〜DS『脳トレ』『レイトン教授』〜(中川大地の現代ゲーム全史)
    ■ 日常世界を〈拡張現実〉化した「DS」擬似生命ゲーム
     『脳トレ』とならび、初期のDSらしさを演出したもうひとつの牽引作としては、様々な犬種の子犬とのコミュニケーションが楽しめる『ニンテンドッグス』(任天堂 2005年)が挙げられる。「ダックス&フレンズ」「チワワ&フレンズ」「柴&フレンズ」と、それぞれ5犬種の中から愛犬を選べる3バージョンのパッケージがリリースされた。

    ▲『ニンテンドッグス 柴&フレンズ』(任天堂 2005年)
     常日頃から肌身離さず持ち歩ける携帯型ゲーム機の特性を活かして、プレイヤーの日常時間の中でバーチャルな擬似生命の世話をするという趣向自体は、前時代の「たまごっち」や『どこでもいっしょ』等と同様の発想だ。これらの過去の携帯バーチャルペットは、あくまで貧弱な表現力で描かれるディフォルメチックなキャラクターを、小さなキーホルダーのようなデバイス自体の愛らしさ込みで愛玩させるというものだったが、本作の場合は3DCGによって格段にリアリスティックに子犬たちを表現することができた。加えて、タッチペンでの愛撫や音声入力による声かけなど、DSの多様な入力方式によって、より身体的な接触性の強い愛玩の体験性を構成できたことが、際立った特徴になっていた。
     このように、通常の意味での「ゲーム」とは異なる、ユーザーの日常に溶け込む擬似コミュニケーションの体感性を増していく作品においてもDSの仕様は有利に働き、『ニンテンドッグス』はいわゆるゲームファンではない層への普及に大きく貢献することになった。
     そして『脳トレ』に対する『レイトン』と同様、後年『ニンテンドッグス』的な擬似コミュニケーションのデザインが、より従来のゲームジャンル寄りの脈絡に回収されていったのが、『ラブプラス』(コナミデジタルエンタテインメント 2009年)だったということになるだろう。15犬種の子犬を3タイプの高校生美少女に置き換えて、プレイヤーの生活時間と同期する疑似恋愛に耽溺するという趣向は、かつてコナミが初めてコンシューマーゲームタイトルとしてヒットさせた恋愛SLG『ときめきメモリアル』の進化形に他ならない。

    ▲『ラブプラス』(コナミデジタルエンタテインメント 2009年)
     プレイヤーたちが「彼氏」を自称し、バーチャル彼女に入れあげる自らのキモさを自虐的にネタ化するというプレイヤーコミュニケーションの在り方も少なからずメディアの注目を集め、この時代にはニッチ化してほとんど一般のゲームファン層が触れるケースのなくなっていた恋愛題材ゲームの中で、本作は久々に広範な話題を呼ぶヒット作となった。
     おりしも同時代のアニメ分野では、『涼宮ハルヒの憂鬱』で頭角を表した京都アニメーション制作の『らき☆すた』や『けいおん!』といった作品群を中心に、劇的なストーリー性よりも、美少女キャラクターたちの他愛ない日常的なコミュニケーションの様態を子細に描く「日常系」ないし「空気系」と呼ばれるサブジャンルが人気を博していた。『ラブプラス』もまた、波瀾万丈のラブロマンスというよりも、安定した恋人関係の中での他愛ない会話やスキンシップの充実を追求した作品であり、同様の心性が通底していたと言えるだろう。
     加えて、こうした「日常系」作品では、実在の地方都市などをロケハンして背景のディテールが忠実に描かれることが少なくなく、『らき☆すた』でモデルとなった埼玉県の鷲宮神社を代表例に、ロケ地を訪問して作品世界を疑似体験する「聖地巡礼」と呼ばれるファン活動を自然発生的に誘発した。こうした特性は地方の観光振興の手法としても注目され、地方自治体や商工会などが予めコミットしてコンテンツとのタイアップを行うというケースも登場する。この流れを取り込み、2010年発売のバージョンバップ版『ラブプラス+』では、熱海市との提携のもとで1泊2日の温泉旅行に行くというイベントがゲーム内に盛り込まれ、実際にソフト持参で市内の旅館に宿泊すると割引サービスなどが受けられるといったキャンペーンも行われている。
     以上のようにDSは、〝遊び〟と〝実用〟、ゲームソフトが生成するデジタル表現とハードが持ち運ばれる現実のロケーションとを媒介する仕掛けを様々に盛り込み、まさに〈拡張現実〉的な体験性を先取りしてみせたのであった。
    ■ゲーミフィケーションを先駆けた「Wii」の世界像
     DSと同じく、岩田任天堂の哲学を示す新たな据え置き型ゲーム機として登場したのが、06年発売の「Wii」であった。その筐体は、スーファミからゲームキューブにかけての任天堂のテレビゲーム機が、ライバル機に比べると相対的に年少層向けにターゲッティングしたSF的な玩具っぽさを持っていたのとは一転。PS2がそうだったように、縦置き・横置きのどちらにも対応できるシンプルなスクウェア型を採用し、従来機が持っていた非日常的な「ゲーム機」としての主張を排除した、リビングに溶け込みやすい装飾性のないデザインとなった。

    ▲Wii
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  • 『Gレコ』で富野由悠季は戦後アニメを終わらせたのか――石岡良治、宇野常寛の語る『Gのレコンギスタ』 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.370 ☆

    2015-07-21 07:00  
    220pt
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    『Gレコ』で富野由悠季は戦後アニメを終わらせたのか――石岡良治、宇野常寛の語る『Gのレコンギスタ』
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.21 vol.370
    http://wakusei2nd.com


    本日は富