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記事 25件
  • "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 第二章 ミニ四駆(2)「ミニ四駆のコックピットには誰が乗っているのか」

    2018-05-31 07:00  
    550pt

    デザイナーの池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生ーー世紀末ボーイズトイ列伝』。第一次ミニ四駆ブームと『ダッシュ!四駆郎』について論じた前回に続いて、今回は第二次ブームと『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』とフルカウルミニ四駆が宿した「キャラクター」性に迫ります。
     第1次ミニ四駆ブームを支えた『ダッシュ!四駆郎』(以下『四駆郎』)が1992年に連載を終えた後、それを引き継ぐ形で1994年から1999年まで「コロコロコミック」誌上に連載されたのが、こしたてつひろ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』(以下『レッツ&ゴー』)だ。
     『レッツ&ゴー』は原作となる漫画版と平行して、アニメ化されている。アニメ版は、展開が原作を追い越してしまったことから独自の解釈を強く打ち出していくことになった。アニメ版におけるミニ四駆描写の特徴(具体的にはスケール感を錯覚させるカメラアングルや、ミニ四駆の高いコントーラビリティ)も重要ではあるのだが、ここではこしたてつひろが手がけた漫画版を中心にして論じていきたい。
     『四駆郎』では、父を目指す「親子」の物語と現実を目指す「ホビー」という価値観が結託した、垂直的な構造によって支配されていた。これに対して『レッツ&ゴー』では、「兄弟」を描く物語と「スポーツ」的な価値観による、水平的な構造を軸にして展開していくことになった。
    ▲こしたてつひろ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!(1)』(小学館てんとう虫コミックス、1994年)
    矮小な「大人」と無数の「兄弟」
     『レッツ&ゴー』は、そのタイトル通り、星馬烈と星馬豪という兄弟を主人公とした物語だ。兄の烈は頭がよくテクニカルなセッティングが得意で、そのマシン「ソニックセイバー」もコーナリング重視とされている。対して弟の豪はスピード重視のセッティングを好み、愛車「マグナムセイバー」も直線を得意とするマシンとなっている。烈が小学校五年生で豪が四年生と年齢に差をつけてあること、どちらかといえば豪に感情移入させるような作りになっていることは、烈のような優秀なレーサーを不器用な豪が目指していくような構造にすることも十分可能だったことを思わせる。しかし実際には、烈と豪は異なるスタイルを持った対等なレーサーであることが強調されていくことになる。
     『レッツ&ゴー』の第一回においては、豪がレース中にマグナムを破損させてしまい、烈がそれを助けるという展開が描かれる。しかし第二回においては、豪がスタイル重視で搭載したライトが、停電で真っ暗になってしまったコースで烈(および他のレーサーたち)を助ける構図になっている。この第二回では、ソニックとマグナムの両方がレース過程で大破しており、烈と豪は失格になりながらも二台を繋ぎ合わせたマシンで走ることを決断する姿が描かれる。この第一回から第二回までの流れは、烈と豪の兄弟が、異なるがゆえに互いの欠点を補完していく存在であることを印象づけるものだ。この烈と豪の対等な関係は、物語を通じて、チームメイトとなる他のレーサーたちや、ときには対戦するライバルたちにまで、オープンに拡張されていく。
    ▲破損したマグナムセイバーを支えるソニックセイバー。『爆走兄弟レッツ&ゴー!!(1)』42p
     ここで強調しておきたいのは、「兄弟」を増やしていくような水平的な拡張に、「大人」が含まれていることだ。
     『レッツ&ゴー』においては、星馬兄弟の父親は、戦後中流的な「普通のサラリーマン」として描かれており、ミニ四駆に大きな関わりを持たない。代わりに烈と豪に「セイバー」を託す役割を与えられているのは、ミニ四駆の開発者である土屋博士だ。土屋博士は、劇中では過去飛行機のパイロットであったことが語られてこそいるものの、レーサーではなくあくまでマシンの開発者に徹する。『四駆郎』における源駆郎のような偉大な「父」としては描かれず、それどころかコミックリリーフとして笑いを誘うような役割が与えられてさえいる。またレーサーであり大会をナビゲートするミニ四ファイターも、概ね同様の扱いがされている。こうした大人たちが意図的に「子供っぽく」、あるいは『四駆郎』時代の水準からいえば矮小に描かれるのは、象徴的な意味での「父」の出現と、垂直的な構造の復権を回避するためだろう。本作における「大人」は、あくまで「兄弟」の延長にある存在として定義されており、こうした工夫からは、水平的な構造を徹底的に維持しようとする姿勢が見てとれる。
    ▲土屋博士は無邪気で子供っぽい側面が強調して描かれる。『爆走兄弟レッツ&ゴー!!(4)』21p
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  • 本日23:30から放送☆ 宇野常寛の〈水曜解放区 〉2018.5.30

    2018-05-30 07:30  

    本日23:30からは、宇野常寛の〈水曜解放区 〉!
    23:30から、宇野常寛の〈水曜解放区 〉生放送です!
    〈水曜解放区〉は、評論家の宇野常寛が政治からサブカルチャーまで、
    既存のメディアでは物足りない、欲張りな視聴者のために思う存分語り尽くす番組です。
    今夜の放送もお見逃しなく!★★今夜のラインナップ★★メールテーマ「ついやってしまうこと」今週の1本「アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー」アシナビコーナー「井本光俊、世界を語る」and more…今夜の放送もお見逃しなく!
    ▼放送情報放送日時:本日5月30日(水)23:30〜25:15☆☆放送URLはこちら☆☆
    ▼出演者
    ナビゲーター:宇野常寛アシスタントナビ:井本光俊(編集者)
    ▼ハッシュタグ
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  • 長谷川リョー『考えるを考える』 第7回 デザインエンジニア・ 緒方壽人が説く“越境性×専門性”の仕事論

    2018-05-30 07:00  
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    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。前回は「インナーテクノロジー(人間の内的変容に関する理論)」を探求する三好大助さんに“自らの全体性を祝福する技術”の可能性を語っていただきました。今回はデザイン・イノベーション・ファーム「Takram」のデザインエンジニア・緒方壽人さんにお話を伺います。デザインエンジニアとして重視している“越境性”や、目まぐるしく変わるテクノロジートレンドのなかにあっても不変の専門性に関する考え方。「クライアントワークも“世界の見方”を呈示する意味で、本質的にアートと変わらない」という緒方さんにデザインエンジニアリングの要諦と今後の展望を聞いていきます。
    ビジネス・テクノロジー・クリエイティブを貫く“越境性”
    長谷川 今年2月頃、これまでの社名「takram design engineering」から「design engineering」を取り去り、「Takram」と名称を改められました。どんな背景で社名変更に至ったのでしょうか?
    緒方 端的にいえば、今後新しい領域にチャレンジしていく意思表明です。約10年前から「takram design engineering」としてやってきたわけですが、今ではある程度「デザインエンジニアリング」が浸透しました。産業全体にとって大きな要素にBTC(ビジネス、テクノロジー、クリエイティブ)と三つの領域がありますが、今後は会社としてビジネス領域を伸ばしていこうと考えているのです。
    長谷川 「Takram」はおそらく日本語の「企む」からきていると思うのですが、他に込められている意味はありますか?
    緒方 「企む」という言葉自体が「企業」の「企」であり、「企」自体がプランニングやプロジェクト、デザインの意味を持っていますよね。「企てる」といった別の読み方からは、新しい領域を開拓していくニュアンスもあり、さらには意匠の「匠(たくみ/たくむ)」とも語源として繋がる。デザイン全体の領域を俯瞰的に捉えつつ、デザインの本質を表すいい言葉だと思いながら使っています。
    長谷川 緒方さんは肩書きに「ディレクター/デザインエンジニア」を名乗られています。今回の社名変更も踏まえ、改めて「デザインエンジニア」はどんな存在だとお考えですか。
    緒方 もともと英語の「design(デザイン)」には、「設計」と「スタイリング」の両方が含まれていると思います。しかし、日本語の「デザイン」はどちらかといえば、外見をカッコよく、あるいは美しくするといったスタイリングのイメージが強い。その意味で、「デザイン」だけだとどうしてもファッションデザイナーのようなイメージが先行し、やっていることを伝えきれません。「デザイナー」という言葉に本来含まれる「エンジニアリング」と「スタイリング」の両方を伝えるため、あえて「デザインエンジニアリング」と言っているところもあります。
    長谷川 社名から取り払われたように、今後「デザインエンジニアリング」が何か一つの名前や概念に統合していく見通しなのでしょうか?
    緒方 何か一つに集約されるというイメージよりは、個々の専門性は大事にしていきたいと思っています。そうした個々が集まったとき、全体として広い領域をカバーしている組織になればいいのではないか。そのなかで、今までになかった領域で仕事をする人はこれからも育てていきたいです。たとえば、一つの領域に閉じるのではなく、ビジネスとデザインを扱う「ビジネスデザイナー」など越境性のある肩書きはあり得えます。
    長谷川 先ほど「BTC」と言った言葉を挙げられましたが、それらを通貫する思考の核はどこにあるでしょうか。
    緒方 「越境性」と言えるかもしれません。Takramにいる人たちは自身の専門性以外にも、新しい領域に対する越境マインドを持っていると思います。好奇心旺盛で新しいことにチャレンジしていくことにポジティブであることが、核になる思想です。
    長谷川 大学院では(東京大学大学院)学際情報学府で研究を行っていたのですが、文理の壁を超えた学際研究に難しさを覚えることもしばしばありました。まったく異なる専門性を持った人がスムーズにコラボレイトするためのコツなどはありますか?
    緒方 コラボレーションというよりは、個人のなかに“越境性”を持つイメージです。デザインエンジニアであれば、エンジニアリング的に理に適った設計がある一方、感覚的な美しさで形を作っていく場合もある。どちらかを否定するのではなく、両方を行ったり来たりしながら、交わるところを探る作業を自分のなかでやっていく。
    両方の言葉が分かるからこそ、触媒のような形でプロジェクトを成功に導けるのではないかと思います。越境マインドは抽象思考によって身につけられると思いますし、ある一定の深みがある思考は他分野にも翻訳可能だと考えています。その意味で、スキルとしても越境性が重要なのではないでしょうか。
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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第16回 スタンフォード大学での講演

    2018-05-29 07:00  
    550pt

    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。 今回は初めて訪れたアメリカで、スタンフォード大学でのイベントに参加しました。官僚との貴重な討論の機会となった本イベントでは、香港に関わる人同士の異なる意見がぶつかり合う場にもなりました。(翻訳:伯川星矢)
    執筆の二週間前に、わたしはアメリカのスタンフォード大学の招待を受けるという幸運に恵まれ、民主主義論の第一人者である政治学者のラリー・ダイアモンド氏、そしてサンフランシスコ在住の香港経済貿易所所長と香港の政治情勢について話し合いました。わたしはアメリカに行くのは初めてで、正直なところ、渡航前はアメリカンサイズの食べ物くらいしかアメリカについてのイメージがありませんでした(笑)。

    十数時間の飛行機に乗ってアメリカに到着すると(成田乗り換えだったので日本のお土産も買いました)、二人のスタンフォード大学の学生が迎えに来てくれました。二人ともスタンフォード大学香港学生の会(Hong Kong Student Association, HKSA)のメンバーです。アメリカの多くの大学では、香港人を主な構成員としたHKSAが組織されています。アメリカで香港人学生同士で知り合う場としての機能はもちろん、彼らはお茶会や、香港のポップスを歌うカラオケなど、香港文化のプロモーションも行っています。今回の香港政治に関するイベントも、スタンフォード大学HKSAの「広東語週」のイベントの一つです。

    わたしが一番驚いたのは、スタンフォード大学のHKSA会長は中華系の方ではなく、アメリカで生まれ育ったペルー人だったということです(一部香港の血が入っているそうです)。スタンフォード大学HKSAは他の大学とは異なり、 香港出身の留学生メンバーは多くありませんでした。会長ほど多文化を背景に持っている例は珍しいのですが、ほとんどの会員が中国系アメリカ人(American-born Chinese, ABC)で、あまり広東語を話せません。それでも、彼らは香港文化を愛し、香港で起こっている出来事にも非常に関心を持っています。
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  • 宇野常寛「本当は色彩を帯びていた『多崎つくる』――村上春樹が見落とした新しいコミットメント(PLANETSアーカイブス)

    2018-05-28 07:00  
    550pt

    今回のPLANETSアーカイブスは、宇野常寛による『色彩を持たない多崎つくると、 彼の巡礼の年』論をお届けします。なぜ村上春樹は決定的な問いを避け続けてしまうのか。常に物事から距離を置く主人公が葛藤を乗り越えて他者と関わろうとする、作者の二十年来のテーマを扱いながらも中年男性の自己回復の物語に終始してしまった本作について宇野常寛が考察します。 ※この記事は2013年12月9日に配信した記事の再配信です。 (初出:「ダ・ヴィンチ」2013年6月号)
    村上 春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』


    〈文芸春秋は18日、村上春樹さんの新作小説「色彩を持たない多崎(たざき)つくると、彼の巡礼の年」を20万部増刷することを決め、累計発行部数が100万部に達したと発表した。
    12日に発売されてから7日目。文芸春秋は「文芸作品では最速でのミリオン到達では」としている。村上さんの作品では前作「1Q84 BOOK3」が発売から12日目に100万部に到達している。
    「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」はネット書店での予約などが多かったことを受け、発売前から増刷を重ね、計50万部で売り出された。発売初日にも異例の10万部の増刷を決めたが、売り切れ店が続出。15日にも20万部の増刷を決め、6刷80万部に達していた。〉(産経新聞2013年4月18日)

     村上春樹の新作長編『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が発売直後からベストセラーになっているという。
     僕もまた、村上春樹の愛読者のひとりだ。僕の代表作『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)は村上春樹論でもある。「リトル・ピープル」とはこの本が刊行された当時の春樹の最新作『1Q84』に登場する超自然的な存在にして「悪」の象徴だ。この『1Q84』という小説に、僕は不満を覚えた。正確にはこれまでの村上春樹の長編小説に比べて、あまり想像力を刺激されなかった。そしてそのことが、僕がその本を書く動機になった。
     春樹は二〇〇八年、おそらくは『1Q84』執筆初期に行われたインタビュー中の発言にてこう述べている。

    〈「僕が今、一番恐ろしいと思うのは特定の主義主張による『精神的な囲い込み』のようなものです。多くの人は枠組みが必要で、それがなくなってしまうと耐えられない。オウム真理教は極端な例だけど、いろんな檻というか囲い込みがあって、そこに入ってしまうと下手すると抜けられなくなる」〉
    (毎日新聞 2008年5月12日 僕にとっての〈世界文学〉そして〈世界〉)

     リトル・ピープルとはまさに、人々を「精神的な囲い込み」にいざなう社会構造の象徴だ。このリトル・ピープルに対抗するために主人公とヒロインたちが行動を起こす─それが『1Q84』の物語の骨子だ。しかし『1Q84』は完結編であるBOOK3で、それまで中心にあったこの主題─リトル・ピープルの時代への「対抗」という主題─を大きく後退させて(事実上放棄して)しまう。前半に物語を牽引したリトル・ピープルとそれを奉じるカルト教団はほとんど姿を見せず、主人公の「父」との和解と、ヒロインの一人との再会がクローズアップされる。主人公=中年男性の自己回復と自分探しの物語が全面化し、時代へのコミットメントという主題は後退するのだ。僕はここに村上春樹の想像力の限界を感じて、そして前述したあの本(『リトル・ピープルの時代』)を書いた。現代=リトル・ピープルの時代へのコミットメントのかたちを模索する、という春樹から引き継いだ主題については、まったく別の作品群を用いて考え抜いた。
     しかしその一方で、僕は春樹自身がいつか、それも近いうちにこの問題に彼なりの回答を示してくれるのではないかと期待していた。もちろん、これは僕の勝手な期待であり、作家が答える必要もなければ、答えないことで責められる必要もない。だから、僕は続く村上春樹の新作長編『色彩を持たない多崎つくると、 彼の巡礼の年』を一読したとき、個人的に落胆はしたがこれを批判しなければならないとは思わなかった。だから発売当日にこの本を買って読み終えた僕は、その日の夜に放送するこの春から担当することになったラジオの深夜放送番組で、この本はそもそも肩慣らし投球のようなもので、『ねじまき鳥クロニクル』や『海辺のカフカ』のような総合小説を期待してはいけないと釘を刺したうえで分析を始めた。
     そう、『色彩を持たない多崎つくると、 彼の巡礼の年』は発売されたことだけで「事件」となる社会的インパクトとは裏腹に、作品自体はいわゆる「小品」だ。
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  • 宇野常寛『観光しない京都』第2回 世界でいちばんおいしいお好み焼き屋さん 【不定期配信】

    2018-05-25 07:00  
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    本誌・編集長の宇野常寛に連載『観光しない京都』。今回は宇野が世界が終わる日の最後の食事にしたいというほどおいしい、京都の等持院近くの「ジャンボ」というお好み焼き屋さんの紹介です。名前の通り量が多いのが自慢ですが、その真価は味にあり。20年来の常連である宇野が写真入りで詳細にレポートします。 ※前回の記事はこちら。

    「地球最後の日」に食べたいお好み焼き 
     以前僕がよく出演していたNHKの番組に「日本のこれから(私たちのこれから)」「日本新生」という番組がありました。タイトルはころころ変わっていましたが中身は基本的に同じで、これはさまざまな社会問題を二十人程度の市民と数名の「識者」とが討論するといった番組でした。数カ月に1回、不定期に放送されていた番組だったのですがいわゆるゴールデンタイムに配置されていたので、見たことがある人も多いかもしれません。そして僕はこの番組にたぶんデーブ・スペクターさんの次くらいに多く出ていた「識者」の一人だったと思います。 
     社会問題を扱う討論番組と言っても、この「これから」シリーズで「これからの安全保障のあり方」とか「グローバル資本主義の暗号通貨による変化」といった大仰なテーマはあまり取り上げられることがなく、どちらかと言えば「空き家の増加」とか「団塊世代の男性はあまり野菜を取らない。そして塩分を取りすぎる。さてどうするか」といった等身大の生活から考える「社会問題」を扱うことがほとんどだったような気がします(僕が呼ばれた回がたまたま所帯じみたテーマだっただけかもしれませんが)。 
     なんで過去形なのかというとこの番組はずっと司会を務めていた三宅民夫アナウンサーの退職(いわゆる定年退職的なもの)で終了してしまったからです。数十人の「市民」をさばきながら議論を組み立てる技術は一種の「職人芸」のようなもので、そしてその三宅さんの技術を継承できるアナウンサーはいないというのが局の判断だと聞きました。 
     その三宅アナウンサーは番組の収録開始前にかならず、僕ら「識者」に対してこんな質問をしていました。「あなたが世界の終わりの日に最後に食べたいものはなんですか?」と。この番組は普段人前で喋り慣れていない「普通の人たち」がたくさん出ている番組だったので、こういう砕けた質問をして場をなごませていたのだと思います。それも緊張しきった「普通の人たち」にいきなり話させるのではなくて、僕ら「識者」に議題とはなんの関係もない好きな食べ物の話題をさせることで場を和ませて、スタジオの一体感をつくりだす効果を狙っていたのだと思います。なんだか難しいことを研究していそうな学者先生や、大臣を何回も経験したような政治家の人が学生時代によく通っていた定食屋さんや、近所のパン屋さんの話をしているのを見ると、「識者」サイドにいるはずの僕でさえなんだかぐっと彼らが「近く」なったような気がします。 
     前置きが長くなりました。そして僕がこのとき三宅アナウンサーに対していつも答えていたのが「京都の等持院にある『ジャンボ』というお好み焼き屋さんのお好み焼きと焼きそば」です【1】。たぶん、毎回こう答えていたので、何度目かのときは三宅さんは僕がこの店の名前を口にした途端、「ニヤリ」としていました。 
    ▼【1】ジャンボ 
    京都を代表するお好み焼き屋さんにして、地域(北区と右京区の一部)のソウルフード的存在。恐るべきことに地域住民には年越しそば代わりにこの「ジャンボ」の焼きそばを食べる習慣すらある(年末が近づくと、店内に予約受付の張り紙が出る)。2階はマージャン店で、例外的に「出前」が可能らしいが麻雀をやらない宇野は試したことがない。 

    究極のお好み焼き、至高の焼きそば 
     このお店はとても有名なお店なので、知っている人も多いかもしれません。その名の通りとてもボリュームが大きいことで有名なお店で、「ジャンボ」サイズのお好み焼きまたは焼きそばを注文すると成人男性二人がそれだけでお腹いっぱいになります。つまりいわゆる「大盛り」を頼むと普通に二人前くらいのボリュームが提供されるということです。 
     しかし、個人的にこのお店の真価はむしろその「味」にあります。 
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  • 【対談】加藤裕康×中川大地 日本で〈eスポーツ〉を定着させるには?———ゲーム文化と産業の本質から(後編)

    2018-05-24 07:00  
    550pt

    写真提供:映画『リビング ザ ゲーム』横浜シネマリン(〜5/25)ほか、山口情報芸術センター[YCAM](5/18〜20)、シネモンド(金沢市・5/26〜6/1)にて順次公開 ⓒWOWOW/Tokyo Video Center/CNEX Studio
    『ゲームセンター文化論』の著者でゲームセンター研究の第一人者である社会学者の加藤裕康さんと、『現代ゲーム全史』の著者である評論家の中川大地さんの対談の集中連載。最終回である今回は、コミュニティの大切さやビジネスモデルについて、〈eスポーツ〉の今後のあり方について提言をしていきます。(構成:藪和馬+PLANETS編集部) ※本連載の一覧はこちら。
    どこにカネを落とすべきか
    中川 ここまでの話では、とにかく高額賞金ありきの制度化は、概念としてのeスポーツにとってマストな要素では決してない。それはあくまでもやはり二の次三の次の問題であって、文化としてやはりデジタルゲームを使った競技としてのeスポーツを盛り上げていく上ではやはり多様な参加チャンネルによるコミュニティとかシーンづくりのほうが大事ということですよね。
    だからこそ、もし本当に賞金額を上げるためにスポンサードするお金があるんだったら、勝ち上がった一部のプレイヤーにだけにあげるんじゃなくて、サスティナブルなコミュニティができるようなイベントの運営や大会などに投資するチャンネルをつくってくださいよということですね。これは、ももち選手が自分の主張としておっしゃっていたことでもあります。
    その主張には本当に同意で、サスティナブルなシーンをつくりたいのならば、ライセンスなんかやっている場合じゃないんです。そんなことで賞金獲得のスキームを作ることじゃなくて、もっと違う金の使い方があります。だから、もっと具体的なかたちでいろんな人たちが提案していくといいかなという感じはしますよね。
    加藤 まさに、おっしゃる通りだと思います。ライセンス制の向いている方向は、けっこう内向きです。eスポーツを広げようというふうには言うんですけど、そこは懐疑的です。
    中川 広がるわけがない。
    加藤 先ほども触れましたが、ゲームシーンの外には大きな壁があります。そこはやっぱりコミュニティとかにお金を落として、楽しそうな場をいっぱい作って、参加者の輪やゲーム文化を広げていかないと先細りしていってしまう気がします。だから本当に今のやりかたでうまくいくのかどうかは、ちょっと見守っていきたいなと思うんです。
    中川 例えばももちさんのようなプレイヤーが、もっとスポンサーやIPホルダーと別の形で組んで、JeSUのライセンス制度とは違うスキームでの盛り上げ方をしてくれたらおもしろいなと思うんですね。
    実際、彼のパートナーのチョコブランカさんなんかは、大会をイベントとして盛り上げるプロモーター的な役割を実践することで、競技に勝つだけではないプロゲーマー像のロールモデルを示してるわけで。
    加藤 すごくわかりやすいのが、闘会議でライセンス制の大会をいくつかやっていたじゃないですか。中川さんと二人で観に行った大会は、どこも観客が少なかったですよね。もちろん、そこではプレイヤーたちの熱い戦いが繰り広げられていましたけれども、観客が盛り上がっているようにはとても見えませんでした。それは配信だけ観ていたらわからないけど、現地にいったら如実に伝わってきてしまう。
    闘会議と同じ日に、秋葉原のe-Sports SQUAREでコミュニティ主導の大会が開かれていました。その大会運営には、海外のプレイヤーからも伝説のゲームセンターと謳われる「ゲームニュートン」のオーナーで、株式会社ユニバーサルグラビティーの代表取締役社長、松田泰明さんが協力しているのですけれども、非常に盛り上がっています。闘会議みたいな大きな会場ではありませんけれども、かなりの熱量を持って多くの人が集まっているんですね。ゲームニュートンでは定期的に大会が開かれていて、日頃からプレイヤーの集まる場を提供しています。つまり、コミュニティが大事というのは、そういうことなんです。 プロライセンス制度などを整えても、コミュニティが根付いていない大会は、結局その場が盛り上がらない。そうなったら、やっぱり続けていくのは厳しいですよね。
    ストリートファイター系はプロゲーマーも多いし、今の日本では認知度が一番あるので、別格だとは思うんです。それでも、あるときを境に東京ゲームショウなどの大会の観客が少なくなったと感じたときがありました。その頃、格闘ゲーム人気の低迷も言われていましたが、大会を開けば成功するわけじゃなくて、いろんな要因が絡んでいる。コミュニティを無視して単に大きな企業が先導して大会を開いたとしても、それが盛り上がるかどうかっていうのはまた別物だと思うんですよ。

    ▲2018年4月1日に行われたバーチャファイター系の大会「第16回ビートライブカップ」の模様。コミュニティの根強い支持により、4年ぶりに開催された。
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  • 本日21:00から放送☆ 宇野常寛の〈水曜解放区 〉2018.5.23

    2018-05-23 07:30  

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    21:00から、宇野常寛の〈水曜解放区 〉生放送です!
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    ▼放送情報放送日時:本日5月23日(水)21:00〜22:45☆☆放送URLはこちら☆☆
    ▼出演者
    ナビゲーター:宇野常寛アシスタントナビ:長谷川リョー(ライター・編集者)
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  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第2回 オーガナイズドゲームと消極性デザイン(簗瀬洋平・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-05-23 07:00  
    550pt

    消極性研究会(SIGSHY)の連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』、今回は研究者・ゲームデザイナの簗瀬洋平さんの登場です。ゲーム開発を始めとした様々な分野で使用されているソフトウェア「Unity」に、エヴァンジェリストとして関わる簗瀬さんは、シンポジウムで参加者全員が遊ぶオーガナイズドゲームを実施しています。コミュニケーションの活性化に成功しつつありますが、「消極性デザイン」の観点からは、まだ課題も残っていると言います。

    エヴァンジェリストという仕事
     第一回で「モチベーション・やる気に関する消極性デザイン」として紹介されました簗瀬です。研究者、そしてゲームデザイナという肩書きで活動しています。
     私は子供の頃からコンピューターゲームが大好きだったのですが、ファミコンを買ってもらえない家庭に育ちました。しかしパソコンを触る事は許されていたので、中高は部活でゲーム作りに励み、大学時代からゲーム会社でアルバイトをし、そのままゲーム開発会社に就職して17年間ゲーム開発に携わってきました。
     代表的なプロジェクトは「ワンダと巨象」「魔人と失われた王国」などです。
      ▲『魔人と失われた王国』
     私のゲーム開発のキャリアは大学で学んだ情報工学や人間工学の知見によって成り立っています。ゲームは多くの要素が詰め込まれた総合芸術とも言える分野だと思っていますが、それをプレイするのはほとんどの場合人間なので、人間を深く知る事はゲーム開発をしていくうえで有利な事がたくさんあります。そうやって長年学術の恩恵を受けてきた私は、ゲーム開発者として現役の研究者の方々と交流を深めていくうちに、ゲーム開発の現場から学術の世界に知見を届ける事もできるのだということを知りました。
     そこで長年ゲームデザイナとして培ってきた知見を元に研究発表を行う様になったのが2012年です。
     現在はユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に所属し、大学で教えたり様々な講演会、学会などで講演したり、論文を発表したりという学術系の活動をしています。
     私の会社が世に送り出しているUnityとはもともとゲーム開発に使われるソフトウェアでした。2018年5月現在、スマートフォンのゲームの50%はUnity、Nintendo Switchのゲームの30%がUnityで作られていると言われています。他にもPlayStation 4、XBOX Oneなどのハイエンド機やPlayStation VitaやNintendo 3DSなどの携帯機など多くのゲーム開発に利用されています。
     しかし、Unityの用途はゲーム開発だけではありません。先ほど書いた様にゲームとは多くの要素が詰め込まれた総合芸術のようなコンテンツとなっています。言い換えれば、ゲームを作れるツールはゲーム以外の様々な分野でも活躍出来るわけです。
     いま世界的に普及しつつあるバーチャルリアリティの世界では非常に多くの方がUnityを使っており、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)のOcurus Riftでは69%、HTC Viveでは74%、Gear VRでは87%、Microsoft HoloLensの91%のアプリケーションでUnityが使われています。
     他にも例えば現実感の高い映像をリアルタイムに描画する技術を使えば、映像作品を効率的に制作する事ができます。UnityでもAdamという一連のショートフィルムをリリースしていますが、ただのデモ映像という事には留まらず、様々なフィルムフェスティバルで賞を取ったり、「第9地区」「チャッピー」などで知られるニール・ブロムカンプ監督が続編の監督をすることになったりと大きな反響を呼んでいます。

    『Adam』
    https://unity3d.com/jp/pages/adam

     国内でも「魔法使いプリキュア」のエンディング映像や「正解するカド」に出て来るカドと呼ばれるフラクタル(シンプルな数式から生成される繰り返しパターンの図形)立体を描画するなど映像用途での利用も広がっています。
     アートの世界ではデジタルアートで多くの作品を生み出すテクノロジスト集団チームラボが「Story of the Forest」などを始めとした様々な作品にUnityを利用していますし、「デザインあ」などで知られる映像作家の中村勇吾さんもUnityを使って「GUNTAI」などの作品をスマートフォン向けにリリースし、現在は「HUMANITY」という作品を手がけられています。
    ▲『Story of the Forest』 ▲『GUNTAI』
    『HUMANITY』 https://vimeo.com/245474974
     また、こうした表現という世界だけでなく建築や自動車、家電など工業の世界でも製品を動かすインタフェースや製品を開発するためのシミュレーション、プレゼンテーションのための映像作りや教育のためのアプリケーション作成など広い用途で様々な企業がUnityを使って社内外にあらゆるソフトやサービスを送り出しているのです。 医療の世界では東京大学医学部脳神経外科で実際にメスを握って脳神経手術の執刀をされている金太一先生が自らUnityや3Dグラフィック制作のためのソフトウェアを修得し、実際に手術に使っている様子を講演で話されたのが話題になっています。

    【Unite 2018 Tokyo】Unityの医療と教育への応用 ~ちょっと人を助けてみませんか?~ https://www.slideshare.net/UnityTechnologiesJapan002/unite-2018-tokyounity-96499972

     多くの用途、様々なジャンル、個人から大きな企業までと社会の広い範囲で使われる開発環境、それがUnityです。
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  • 【新連載】 岸本千佳『都市を再編集する』第1回「不動産プランナー」の仕事とは?

    2018-05-22 07:00  
    550pt

    今回から、不動産プランナーの岸本千佳さんによる新連載『都市を再編集する』が始まります。使い道のわからない建物の活用を企画段階から管理・運営までトータルプロデュースをしている岸本千佳さん。所有している側と利用する側、そしてその建物がある街までもを幸せにすることを目指す岸本さんの活動について語っていただきました。
     「不動産プランナー」の仕事とは?
    はじめまして、不動産プランナーの岸本千佳といいます。以前、宇野さんと対談させてもらいましたが、連載では初登場です。

    「不動産プランナー」という職種、はじめてお聞きになったという方が多いかと思います。それもそのはず、私が勝手に名乗っているからです。要は、建物の活用を企画段階から管理・運営まで一気通貫でプロデュースしています(プロデュースというと偉そうな人が出てきそうなのでプランナーとし、不動産プランナーとしました)。
    プロデュースといっても、「ホテルをつくってほしい」「カフェをつくってほしい」という具体的な目的が決まっているわけではなくて、たいてい「この建物をどうにかしたい(けどどう使ったらいいか分からない)」という依頼がほとんど。その依頼に、どう活用をしたらいいか、様々な角度から検証・提案をし、提案が通れば設計と工事を行い(工事はパートナー業者に依頼)、使う人を見つけ、建物が完成してからも場の運営を行う。つまり、建物と物件オーナーに、最初から最後まで一貫して寄り添う。社会人になって以来10年間、いかにも気が遠くなりそうなくらいこの仕事一筋でやってきました!
    でも、手間がかかる分やる価値があるから辞められないわけで。誰もがどうにもできない建物をどう料理するか、それが腕の見せどころです。
    たとえば、賃貸マンションの1階の奥まった空間があり、そこは、駐輪場のような物置のような使われ方がされていました。私は、その空間を見た時、アンダーグラウンドな雰囲気を気に入って借りる人がいるに違いないと、オーナーさんに貸出してみないかと提案しました。その結果、翌日には問い合わせがあり、この空間を気に入った方が借りてくれ、素敵なバーへと変貌を遂げました。

    ▲駐輪場バー「OLBONECAFE」。町内で初めてできた夜営業の飲食店で、西陣の老若男女が夜な夜な集う。
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