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2014年1月の記事 19件

ドラマが"話題になる"とはどういうことか―「あまちゃん」と「ごちそうさん」の比較から見えること[宇野常寛]

【今週のお蔵出し】  1/21のお蔵出し:朝ドラ『ごちそうさん』はなぜ話題にならないか     (初出:「PRESIDENT」2014年1.13号)  いきなり内情を暴露してしまうところからはじめよう。今回の「『ごちそうさん』はなぜ話題にならないか」というタイトルは、僕がつけたものではない。前作『あまちゃん』が半ば社会現象と言えるヒットを見せたことに対して、後番組である『ごちそうさん』の話題性が低いという「前提」で僕に寄稿の依頼があった。  しかし私見では『ごちそうさん』は話題になっていないどころか、『あまちゃん』に匹敵するレベルで話題になっている。少なくとも露骨に見劣りするレベルではない。平均視聴率は数週に渡って二〇%を超え、むしろ『あまちゃん』より良好だ。そして僕らドラマファンの間でも巧みなストーリーテーリングと脇役にまで気の利いたキャラクター演出が相まって非常に評価が高い。  では、なぜこうした問いが編集部から投げかけられたのか。結論から述べてしまえば、『あまちゃん』は「普段朝ドラを見ない人たち」の間で異常なほど話題になっていたからだ。意地悪な表現を選べば、普段は「朝ドラ」など視界にも入らない「インテリ」の中年男性の間で、『あまちゃん』だけがめずらしく話題になったのだ。  まず、ドラマが「話題になる」とはそもそもどういうことかを考えてみたい。一般的にテレビ番組の人気度は視聴率で計られる。もちろん、この数字は現代においては大きく形骸化していると言わざるを得ない。たとえばこの数字は計測方法の問題で録画視聴やオンデマンド視聴をまったく含めることができない。また、一定時間そのチャンネルを受像機で選択している状態を「視聴している」と判別するために 、視聴者の性質について反映することができない。つまり、チャンネルをザッピングしながらたまたまお気に入りの俳優や美味しそうな料理に目をとめただけの視聴者と、ツイッターで熱心に実況しながら放送をくまなく追いかけ関連グッズも買いあさる熱心な視聴者との区別をつけることができない。たとえばCMの訴求力一つとったとしても両者を同じ視聴者としてひとくくりで考えることにほとんど意味はないだろう。  しかしその上であえてまずは視聴率から両者を比べてみると、『あまちゃん』の平均視聴率が二〇・六%であるのに対し、『ごちそうさん』の平均視聴率は一二月七日(第一〇週)時点で二一・九%と、むしろ高いくらいだ。にもかかわらず、本誌編集部が代表する「普段あまりドラマを見ないホワイトカラー中年男性」からは『ごちそうさん』は「話題になっていない」ように見える。ここにこの問題のクリティカル・ポイントがあるように思える。 

ドラマが

メルマガPLANETS vol.67 ☆ ~「ナショナリズムの現在」とは? <ネトウヨ>化する日本を議論~

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━                    ☆ メルマガPLANETS vol.67 ☆ ~「ナショナリズムの現在」とは? <ネトウヨ>化する日本を議論~          発行:PLANETS  2014.1.28(毎週火曜日発行)                   http://wakusei2nd.com   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今週もよろしくお願い致します。PLANETS編集部です。 まずは、いつものように耳寄りな情報のご紹介。 ★★☆ <ネトウヨ>化する日本を考える ☆★★ 「ナショナリズムの現在――〈ネトウヨ〉化する日本と東アジアの未来」萱野稔人×小林よしのり×朴順梨×與那覇潤×宇野常寛 ▼開催スケジュール 2/8(土) 17:30 open / 18:00 start ▼会場 SHIBAURA HOUSE(アクセス) ▼チケット 2,000円 ■出演者 萱野稔人(哲学者)、小林よしのり(漫画家)、朴順梨/パク・スニ(フリーライター)、與那覇潤(歴史学者)、宇野常寛(評論家・『PLANETS』編集長) ▼ ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv166951020 ★★☆ 都知事選直前!「リベラル再生会議4」☆★★ 「リベラル再生会議4」柿沢未途×夏野剛×堀潤×宇野常寛 ■日時 1月28日(火)  16:30~ ■出演者 柿沢未途(衆議院議員・結いの党 政調会長) 夏野剛(株式会社ドワンゴ取締役) 堀潤(ジャーナリスト) 宇野常寛(評論家・『PLANETS』編集長) ▼ ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv166211917 ★★☆ ガンダムWの魅力と萌えをここに ☆★★ 「石岡良治の大長編・自宅警備塾 テーマ: 新機動戦記ガンダムW」石岡良治×高野麻衣×宇野常寛 @ニコ生 ■日時 1/29(水) 20:00~ ■出演 石岡良治、高野麻衣、宇野常寛 ▼ ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv166004678 ★★☆ 失ショコを語り合うバレンタインの夕べ ☆★★ 「石岡良治の最強☆自宅警備塾 vol.4 テーマ:失恋ショコラティエ」石岡良治 ■日時 2/14(金) 20:00~ ■出演 石岡良治 (宇野常寛もバレンタインに予定がない者の味方ですので、会場に駆けつける予定です!) ■チケット 1,000円 ※1ドリンク以上のご注文をお願いしております ▼ ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv166007869 最後に、来月以降のメルマガのお知らせです。 ★★☆ PLANETSメルマガが試験的に毎日配信 ☆★★ 来月から、PLANETSメルマガは試験的に平日毎日配信を行います。 通勤時間の10分で知的刺激が味わえる記事を、毎日1本ずつ。 サブカルチャーから政治までバラエティ豊かな内容で、お届けします。 ※ 試験的に行うものなので、読者の方の感想をお伺いしながら進めたいです。 Twitterや以下のメアドなどでご意見お寄せいただけると嬉しく思います。 wakusei2nd.biz@gmail.com それでは、今週も高田馬場からお送りします。 今号のコンテンツはこちらから。新連載が目白押しです↓   ┌───────────────────────────────┐ ├○    メルマガPLANETS  vol.67:2014.1.28 ├○ ├○  01. 宇野常寛インタビュー ├○  第4回:ワーキングマザーの問題 ├○ ├○  02.【特別掲載】「石岡良治の最強☆自宅警備塾」 ├○  日本最強の自宅警備員がまどマギ劇場版4回見た結果wwwwwww 今宵は「魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」を語り尽くす!(後編) ├○ ├○  03.【インタビュー】この人のこの話がききたい ├○  1月のこの人:吉田尚記さん(ニッポン放送アナウンサー) ├○ 第4回 ネットとラジオは何も変わらない!? ├○ ├○  04.【過去原稿】今週のお蔵出し ├○  1/28のお蔵出し:「あっと驚く奇跡」の証明 ├○            (初出:「BRUTUS」2013年 11/15号) ├○  ├○  05. PLANETS知恵袋 ├○  ├○  06. PLANETS編集部日記 ├○  ├○  07.【告知】今週のスケジュール ├○          ├○  08. 編集後記&次回予告 ├○ ├○                                └───────────────────────────────┘ ※一部の連載記事については、 「メルマガPLANETS vol.66」からの続きとなっております。 ▼「vol.66」へのリンクはこちらです。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar440805   未読の方は併せてお楽しみ下さい! ┏┓---------------------------------------------------------- ┗■  01.宇野常寛インタビュー --------------------------------------------------------------- ▼ 前回の記事はこちらです http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar440805 第4回:ワーキングマザーの問題 (※ 最後に来月からのメルマガについての話もあります) ■ 少子化問題の背景にある「家族幻想」 ――宇野さんは昨年、女性と労働について対談などで、かなり積極的に発言されていたように思います。まず、現状認識からお伺いしたいです。 宇野 まあ、この話題はもう100回くらい喋ったのだけど、現在の少子化の問題というのは今の40代くらいの女性たちが、子どもを産まないことが人生ゲーム的に合理的だと判断してしまったということだと思う。子どもを生むこので失うものが、社会人として大きすぎるんだよね。女性たちがこう考えたのは単純に労働環境が不平等なのだから、あたりまえだよ。 それに対して、女性は家庭に入るべきだとか、三歳児神話のようなことを並べ立てる人間は、本当に馬鹿だよ。ああいう「三歳児神話」のような話をオカルトとして糾弾できない世の中は本当に間違っていると思うし、21世紀にもなってNHKスペシャルのような場所でいまさらそういうことが議論されること自体が、先進国にあるまじきことだと思う。 ――その状況自体に呆れているということですね。 宇野 ただ、この背景にあるのは一種の家族幻想だと思う。僕の考えでは、「人間は家庭を作って自己実現をするものだ」というイデオロギーが、あまりにも戦後の日本社会では広まりすぎた。特に成長神話を失ってあとは、それしかなくなっている。だから、90年代は恋愛の話ばかりで、ゼロ年代は絆とか家族愛だとしかか言わなくなってしまった。堀江貴文のような例外を除けば、団塊ジュニアって、基本的にこれしか考えていない。 でも、それって伝統でも文化でもなく、たかだか数十年単位の産業構造が規定した支配的な家庭環境の生んだ幻想でしかないんだよね。僕の考えでは、子育ては仕事に自信のない中年男女の自己実現の種に使われるべきではないし、もう家庭ではなく、地域コミュニティや市場が担っていくべき。いまさら戦後的な大家族に戻れるわけではない以上、核家族が子どもを育てていくしかない。ただ、核家族が子どもを育てるとき、いまのままでは専業主婦なしではゲームオーバーなんだよね。となると、あり得るシナリオとしては、マーケットに保育施設の認可を開放して、保育園が沢山できることなんじゃないかな。もちろん、児童一人当たりの面積や教員の数のような安全に係る規定はしっかりした上でだけどね。 まあただ、これは正論なのだけど、これが簡単に通るのなら駒崎弘樹はあんなややこしい人生を送ってはいない(笑)。僕の考えでは、フローレンス(※ 駒崎弘樹氏が運営するNPO法人)のようなものを一人のスーパーマンが担うのではなく、もっと社会的なムーブメントに育てていくことが大事だと思う。駒崎さんもそこで悩んでいると思う。自分のノウハウを人に伝える段階に来ているのだけど、それが意外と難しいのだと思う。 だから、僕が最近よく言ってるのは、これも300回くらい言ってきた話だけど(笑)、若い奴ら同士で固まった方がいいということね。 ■ ECサイトのビッグデータに基づいた共済組合 ――「都市部の新しいホワイトカラーのような若者同士で、共済組合をつくるべき」という話ですね。 宇野 そう。例えば、大病を患う人が少ない40代以下とかで組合を作って、そこで余ったお金は子育て支援に回して、保育施設を作っていくとかね。そういうことが成功すれば、マスメディアなどにも刺激を与えていくと思う。やはり駒崎さんのフローレンスは、スタッフに恵まれた優れた個人の力量によって、しかも都市部で成立しているものでしかない。でも、本当はあれをせめて地方の百万都市くらいにまで広げる必要がある。まあ、彼自身も最近はその辺りに興味があるようだけどね。 ちなみに僕は、これは都市部の準富裕層からでいいと思う。そこに潜在的な需要があるんじゃないかな。ちょっと生々しい話をすると、NHKの職員って、中の上から上の下くらいのサラリーマンなんだよね。見た目の収入が中途半端に大きいために保育園には入れず、僕の大尊敬する竹中平蔵先生の主張するようにメイドを雇うこともできないような(笑)、そういうランクの人たちが実は結構いると思う。ともかく、まずは数百人規模くらいの母数かもしれないけど、そこから始めて成功例を積み重ねながら徐々に拡大していけばいい。 ――具体的な案に発展しそうな話ですね。  

メルマガPLANETS vol.67 ☆ ~「ナショナリズムの現在」とは? <ネトウヨ>化する日本を議論~

【現代ゲーム全史】「たけしの挑戦状」と「MOTHER」 タレントゲームによる2つの"批評"的アプローチ

▼本コンテンツは連載です。前回記事はこちらhttp://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar440760第25回 ブームの社会化がもたらした芸能・文化人の参入  『スーパーマリオ』や『ドラクエ』を通じて国内外に巨大な共通体験を生み出すに至ったファミコンは、もはや一過性の社会現象の域を越えて、時代のリアリティそのものを代表する装置としての資格を帯びつつあった。その過程は、戦後昭和のリアリティを醸成し続けてきた家庭用テレビで空いていた「2チャンネル」が、かつてない規模でジャックされるというかたちで進行したわけだが、侵食された側のテレビのコンテンツに携わる有名人などからのゲームという新参者への応答も、様々に行われていた。  最も直接的な形態としては、テレビタレントが企画に参加したりキャラクターとして登場したりするタイアップもののタイトルがこの時期に数多く発売されたことが挙げられる。中でも他を圧倒する史的インパクトをもたらしたのが、ビートたけし監修の『たけしの挑戦状』(タイトー 1986年)である。ビートたけしと言えば、第4章でも触れた日本の遊戯場文化のルーツでもある東京・浅草のストリップ劇場や演芸場での下積み経験を元に、強烈な毒吐きネタを持ち味とする漫才コンビ「ツービート」の片割れとして1980年代初頭のマンザイブームを牽引。さらにお笑い番組「オレたちひょうきん族」(フジテレビ 1981~89年)の看板コント「タケちゃんマン」などでテレビバラエティのタブーを次々と破って国民的な人気を確立していた、押しも押されぬ当時のトップ芸人であった。  そんな日本のテレビ空間と笑いの変革者であったたけしの歩みにとっても、同じくテレビへの攪乱者としてあったファミコンとの遭遇は、小さからぬ意味を持つものだったようだ。『ポートピア連続殺人事件』の流行時、ラジオ番組「ビートたけしのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)で突如「犯人はヤスだ」のネタバレを広言してみせた逸話や、大がかりなセットでファミコンのアクションゲームさながらのアトラクションステージを現実空間に実現し、自身をラスボスとする視聴者参加ゲームをテレビショー化した「痛快なりゆき番組 風雲! たけし城」(TBS 1986~89年)など、この時期のたけしは放送メディアへの横紙破り的なファミコン体験の持ち込みを様々に試みていたからだ。  そして反対に、ゲームの側への強烈な横紙破りとして、たけし本人が当時のタレントものとしては異例の徹底ぶりでアイディアを注入して送り出したのが、この『挑戦状』であった。所帯持ちの平凡なサラリーマンが一攫千金を夢見て南の島の財宝を探しにいくという筋立てのアクションアドベンチャーの体裁を採った本作は、情報なしにゲームを始めてもその目的自体を掴むことが困難で、ストーリーを進めるためにはサブコントローラーのマイクを限られたタイミングで使ったり、数々の不条理だったり反社会的だったりする行動を取ったりせねばならず、およそ常識的な攻略や謎解きが一切通用しない。まさに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」を地でいくテレビ芸人としてのたけしのスタンスと同様、既存ゲームにおける当たり前の体験を覆すことばかりが盛り込まれた怪作であった。  あるいはルールやゴールといった合理的なゲームデザインの概念を徹底して嘲笑する『挑戦状』の暴力的な作風は、デビュー作『その男、凶暴につき』(1989年)を本名で撮って以来、不条理な暴力やコミュニケーションの断絶をめぐる主題を描き続けて国際的な評価を集めることになる映画監督・北野武の原点としても位置づけられる。ソフトの発売前日には、写真週刊誌のスキャンダル取材に激怒したたけし本人が「フライデー襲撃事件」を起こして逮捕されるという、笑いを踏み越えた暴力がらみのオチまで付いたあたり、当時のゲームの立ち位置と越境的な芸能者としてのたけしとのシンクロニシティは、尋常ならざる域に達していた。 

【現代ゲーム全史】「たけしの挑戦状」と「MOTHER」 タレントゲームによる2つの

【第2回】代議制民主主義の危機とネットによるテーマコミュニティ再編 - 鈴木寛×平将明×堀潤×宇野常寛が大隈講堂で話し合った「新しい民主主義のカタチ」

早稲田大学公認学生団体鵬志会の後期講演会で2013年12月22日に行われた、大隈講堂でのシンポジウム「新しい民主主義のカタチ ―僕らは政治を変えることができるのか―」の書き起こしの特別配信です。ネット選挙解禁で見えてきた、インターネットと政治をめぐる新しい問題――。このシンポジウムでは、2013年の参院選で東京都選挙区から立候補した鈴木寛氏らを迎えて、今後の民主主義について熱く議論を交わしました。2013年の参院選をめぐる反省に始まり、民主主義の根幹をなすコミュニティが今後どうあるべきかにまで及んだ熱い議論が展開されました。今回は、その3回に分けた配信の第2回です。■出演者 ・鈴木寛氏(元文部科学副大臣) ・平将明氏(自由民主党衆議院議員) ・堀潤氏(市民ニュースサイト「8bitNews」代表) ・宇野常寛氏(評論家/「PLANETS」編集長) ▼ 前回の配信はこちらから読むことができます。http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar441687第2回:代議制民主主義の危機に際して ■ インターネットの「世間」とどう向き合うか 堀 今回、早稲田大学の大隈講堂での講演ということで、ご覧いただいたらわかるように若者たちも結構たくさん来ています。若者の投票率がなかなか上がってこないのですが、そこに若者たちが入ってくればですね、固定層から無党派層の取り込みというか、そうした今まで動いてこなかった票が動く。2%でも動くと、なにかが変わる。実際、民主党政権が誕生したあの時には、若者の投票率が跳ね上がって、政権交代が起きていったわけですよね。ところが、あの痛手を僕らは二度と見たくないという無力感もあって、「別に政治はさ」という声も出てきた。 そこで逆に、若者たちの投票行動というか、政治参加を促していくにはどのようなことをやっていく必要があるのかということを、ぜひお伺いしたいんです。 宇野 その前に聞いてみたいのが、若者って本当に鍵なのかなということです。ちょっと疑似問題のような気がしませんか。若者が選挙に行けばもっと違った結果が生まれるんだ、というのは幻想だと思う。 実際のところは東京においては、無党派層がすごく多いので、今までの選挙とは違うルールで動いている。参議院や東京の選挙区だと中途半端にネット選挙とかを解禁すると、今回みたいな恐ろしいことが起こってしまうということくらいしか言えないと思うんですよね。 僕の考えでは、これから若者層を中心に政治を変えるのなら、もっとほかのシナリオを構想した方がいい。 たとえば社民連とか新自由クラブの人たちは、都市部のインテリの無党派層を組織化しようと、この数十年すごく頑張っていたわけですよね。しかし彼らは、それに失敗し続けて、あれくらいの勢力にとどまってしまった。でも、ライフスタイルがかなり変わってきた今だったら、もしかしたら新自由クラブや社民連ができなかった都市のリベラルなインテリ層の組織化を、インターネットを使ってある程度できないか、と思うんです。 そういうことを一回考えてから選挙に望むべきだと思うんですよ。つまり、ふわふわ浮ついている無党派層をね、メディアを使って頼るというのでは、炎上マーケティングしかなくなっちゃうんですよ。これを打開するには、本来ダマになっていない都市部の富裕層、浮動票の持ち主、無党派層というのをいかに組織化するのかということを考えるべきだと思うんですよね。 そのときに例えばキーワードになるのが、ライフスタイルの違いだったりすると思うんですよ。例えば、民主党って、つまずいた原因の一つが明らかに連合問題なわけじゃないですか。「自民党と違って私たちはリベラルです、弱者に優しい社会を自民党よりはちゃんと作ります」と一応は言う。でも、バックに連合がいて、男性大手企業正社員の、既得権益保護団体がバックについていて信用できるのかと、当然みんな思うわけですよ。 実際のところ、本当に民主党の、しかも東京とかに地盤を持ってる人がやるべきことは、そうじゃないと思う。戦後的なサラリーマン家庭のライフスタイルから離れてしまった、新しい日本人たち、おそらくさっきすずかんさんが仰ったような、本とネットで生きていて、テレビを見ない人たちを、どう組織化するのかを考えた方がいいと思うんです。 そもそも、ネット、ネットとは言うけれど、やっぱりメディアとしての「煽り力」で挑戦するとテレビには勝てないし、成功したとしても、もう一個のテレビになるだけなんですよ。そうじゃなくて、地域を超えて人を結びつける力だったり、意識的に人々が発信できる側面を上手く使って、本来組織化できない人たちをどう組織化するかを、僕は考えるべきだと思うんですよね。 平 やっぱりね、「ちょっと最近のマスコミおかしいだろうな」という人がいる。そういう人が、玉石混淆だけども、ネットにもそれなりにクオリティの高いものをみつけると、そこから情報を入手できると思うんですよね。だから、インテリ層の組織化はできないけれども、言い方は悪いけれども、実はインテリ層とアクセスするリスト化みたいなものは、ネットのツールを使えばできる。そのくらいのことになると、ネットがなければ逆にできなかった。 民主党が組合に頼るのも、自民党があらゆる団体に頼るのも、ネットがなかったからですね。その組織の下に色んなメンバーがいる人たちを、押さえる必要があったわけですね。でも、自民党にしても民主党にしても、伝統的な支持層はどんどん縮小していて、その代わりに無党派というニューマーケットのシェアがどんどん大きくなっていた。ここにアクセスする方法を我々は持っていなかったところに、インターネットが出てきた。 

【第2回】代議制民主主義の危機とネットによるテーマコミュニティ再編 - 鈴木寛×平将明×堀潤×宇野常寛が大隈講堂で話し合った「新しい民主主義のカタチ」

匿名の風景に浮かび上がる不器用な"顔立ち"――なぜ写真家・小野啓は思春期の生徒を追ったのか[宇野常寛]

【今週のお蔵出し】 1/14のお蔵出し:「NEW TEXT 小野啓 写真集」に寄せて 宇野常寛が写真家・小野啓さんの写真集『NEW TEXT』に寄稿した文章をお届けします。10代の少年少女たちのポートレイトを撮りためた作品から見える、カメラフレームを通した切断的な関係性による目論見とは――? (初出:NEW TEXT 小野啓 写真集)  小野啓の写真、とくに本書に収められたようなティーンのポートレイトを目にしたときに感じるどうしようもないみっともなさと、同時に込み上げてくるたまらない愛しさについてここでは考えてみたいと思う。小野が写した少年少女たちの「顔」たちは、みんなどこか不器用で、ナイーブで、しかしその不器用さとナイーブさに自分では気付いていない。一見、自分は図太く、ふてぶてしく生きているよ、という顔をした少年少女の小憎らしい笑顔も、小野のカメラを通すと狭く貧しい世界を我が物顔で歩いている生意気で、そして可愛らしいパフォーマンスに見えてしまう。「応募者すべてを撮影する」というルールを自ら定めている小野の作品群は、思春期の少年少女が不可避に醸し出す不格好さを切り取ることになる。自らのカメラが写してしまうものについて、小野は彼が定めたもうひとつのルール――「笑顔を写さない」から考えても極めて自覚的だと思われる。その結果、僕ら中途半端に歳をとってしまった人間たちは、その不器用さや狭さにかつての(いや、もしかしたら今の)自分の姿を発見して苛立ち、痛みを覚え、そして愛さずにはいられなくなるのだ。      もう10年ほどまえ、地方都市の「風景」の画一化が問題化されたことがあった。中央の大資本がロードサイドの大型店舗というかたちで地方の進出し、その風景を北は北海道から南は九州まで画一化していく――そう、現代は場所から、風景から「意味」が失われはじめた時代だとも言える。   本書に収められた小野の写真たちからは(おそらくは意図的に)匿名的な風景が選ばれている。これらの写真はいずれも「どこでもない場所」であり、同時に「どこにでもある」場所である。理由は明白だ。思春期という時間は風景を見ることを拒絶するからだ(少なくとも小野はそう感じているのだろう)。そこがいかなる歴史を持ち、伝統をもち、自然と対峙してきたかは彼らの世界の狭さによって無意味化されてしまう。   そして「学校」という彼らの生活を規定する舞台装置は、同時にこの社会においてもっとも強く「風景」をキャンセルする装置でもある。(その意味においてはこの時期語られていた地方の風景の画一化とは社会の「教室化」「学校化」とも言える。)    

匿名の風景に浮かび上がる不器用な

メルマガPLANETS vol.66 ☆ ~実は視聴率は「あまちゃん」超え テレビ文化の外から見えない「ごちそうさん」の人気~

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━                    ☆ メルマガPLANETS vol.66 ☆ ~スマホで持ち運び可能 チャンネル動画のMP3がダウンロード可能に~          発行:PLANETS  2014.1.21 (毎週火曜日発行)                   http://wakusei2nd.com   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今週もよろしくお願い致します。PLANETS編集部です。 さっそく、まずは耳寄りな情報のご紹介から。 ★★☆ "ほぼ月刊"AKBトークイベントが開始 ☆★★ 「ほぼ月刊AKBクリティークス 2014年1月号」 〜リクアワ2014前日予想、大島優子卒業とチームKのこれから、HKT48「クラス替え」を斬る!!〜 PLANETSのAKBトークイベントがほぼ月刊化!? 語られる話題は…  ・リクアワ2014前日予想  ・大島優子卒業とチームKのこれから  ・HKT48「クラス替え」を斬る   …etc. 超絶濃厚な90分をお届けします。 ■出演者 青木宏行(光文社) 竹中優介(予定)(TBSテレビ) 宇野常寛(評論家/「PLANETS」編集長) ▼開催スケジュール 1/22(水)open 19:30 / start20:00 ▼会場 10°CAFE 三階(10°space) http://judecafe.com/ ▼チケット 3,000円(1ドリンク込み) イベント後は出演者を交えた懇親会を開催(別途料金) <a href=★★☆ 忙しい人にオススメ!過去放送のMP3がDL可能に ☆★★ 兼ねてからの要望にこたえました。 PLANETSチャンネル生放送のMP3音源が会員限定でダウンロード可能に。 Podcastのように、お持ちのスマホや音楽プレーヤーで持ち歩けます。 各動画の【中編】または【後編】の動画ページに行くと、 MP3をダウンロードできます。 ▼ 詳しくは、以下のページをご覧ください。 http://wakusei2nd.com/archives/3430 (現在DL可能になっているファイルも載せています) ★★☆ 都知事選直前!「リベラル再生会議4」☆★★ 都知事選直前にいつものメンバーが集結。 結いの党の政調会長を務める柿沢未途さんをお招きして <本物>のリベラルを問います! ■日時 1月28日(火)  16:30~ ■出演者 柿沢未途(衆議院議員・結いの党 政調会長) 夏野剛(株式会社ドワンゴ取締役) 堀潤(ジャーナリスト) 宇野常寛(評論家・『PLANETS』編集長) ▼ ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv165134814 <a href=★★☆ ガンダムWの魅力と萌えをここに ☆★★ 大好評「石岡良治の最強☆自宅警備塾」が番外編。 Blu-ray発売勝手に記念の特番「新機動戦記ガンダムW」!! ガンダムWの魅力と萌えと批評的可能性をついに丸裸にします。 ■日時 1/29(水) 20:00~ ■出演 ・石岡良治 ・高野麻衣 ・宇野常寛 ▼ ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv166004678 <a href=それでは、今週も高田馬場からお送りします。 今号のコンテンツはこちらから。新連載が目白押しです↓   ┌───────────────────────────────┐ ├○    メルマガPLANETS  vol.66:2014.1.21 ├○ ├○  01. 宇野常寛インタビュー ├○  第3回:日本人は働きすぎ ├○ ├○  02.【特別掲載】「石岡良治の最強☆自宅警備塾」 ├○  日本最強の自宅警備員がまどマギ劇場版4回見た結果wwwwwww 今宵は「魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」を語り尽くす!(中編2) ├○ ├○  03.【インタビュー】この人のこの話がききたい ├○  1月のこの人:吉田尚記さん(ニッポン放送アナウンサー) ├○ 第3回 いま、メディアが担保すべき「公共性」とは ├○ ├○  04.【過去原稿】今週のお蔵出し ├○  1/21のお蔵出し:朝ドラ『ごちそうさん』はなぜ話題にならないか ├○            (初出:「PRESIDENT」2014年1.13号) ├○  ├○  05. PLANETS知恵袋 ├○  ├○  06. PLANETS編集部日記 ├○  ├○  07.【告知】今週のスケジュール ├○          ├○  08. 編集後記&次回予告 ├○ ├○                                └───────────────────────────────┘ ※一部の連載記事については、 「メルマガPLANETS vol.65」からの続きとなっております。 ▼「vol.65」へのリンクはこちらです。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar436320   未読の方は併せてお楽しみ下さい! ┏┓---------------------------------------------------------- ┗■  01.宇野常寛インタビュー --------------------------------------------------------------- ▼ 前回の記事はこちらです http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar436320 第3回:日本人は働きすぎ ■ 新卒採用のメリットが薄れてきた ――新卒採用については、どう思いますか? 宇野:新卒採用については、月並みで凡庸な意見しか持っていないけどね。誰も信じていないような建前を学生に喋らせて、対応能力を見る、というのが今の新卒採用文化なんだろうけど、そうすると「傾向と対策」ばかりが発達して、マメで小ズルい小役人タイプばかり有利なゲームになってしまった。地頭がいいけれどおおざっぱなタイプは損をすることが多いと思う。まあ、小役人タイプ主力に揃えたい業界もあるんだろうけど、その結果、大手であればあるほどキャラの偏り弊害が出やすくなったのは間違いない。あと「傾向と対策」の肥大はゲームの参加コスト自体の肥大でもある。これは時間的にも経済的にも、学生には負担だと思うな。 新卒採用にもそれなり合理性はあったのだろうけど、いまこれだけ批判が集まっているのは、その合理性が疑わしくなったからでしょう。逆張り的に新卒採用のメリットをいう人もいるけど、それと同じくらいにデメリットもあったわけで、有効な批判だとは僕は思わない。  

メルマガPLANETS vol.66 ☆ ~実は視聴率は「あまちゃん」超え テレビ文化の外から見えない「ごちそうさん」の人気~

【第1回】炎上マーケが威力をふるった参院選2013 - 鈴木寛×平将明×堀潤×宇野常寛が大隈講堂で話し合った「新しい民主主義のカタチ」

早稲田大学公認学生団体鵬志会の後期講演会で2013年12月22日に行われた、大隈講堂でのシンポジウム「新しい民主主義のカタチ ―僕らは政治を変えることができるのか―」の書き起こしを、今週から特別配信いたします。ネット選挙解禁で見えてきた、インターネットと政治をめぐる新しい問題――。このシンポジウムでは、2013年の参院選で東京都選挙区から立候補した鈴木寛氏らを迎えて、今後の民主主義について熱く議論を交わしました。2013年の参院選をめぐる反省に始まり、民主主義の根幹をなすコミュニティが今後どうあるべきかにまで及んだ熱い議論を、今週から3回に分けてお送りします。■出演者 ・鈴木寛氏(元文部科学副大臣) ・平将明氏(自由民主党衆議院議員) ・堀潤氏(市民ニュースサイト「8bitNews」代表) ・宇野常寛氏(評論家/「PLANETS」編集長) 第1回:ネット選挙解禁の帰結とは 平 衆議院議員の平将明です。所属政党は自由民主党で、当選3回。今は副幹事長と、情報調査局長をやっています。私は、早稲田大学出身で平成元年卒業。カミさんも早稲田大学で、大学の同級生。子供も、上の子が早稲田の二年生。下の子は早稲田実業なんで、そのうちに早稲田へ行く。 そういうことで根っからの早稲田になりますけど、久々に大隈講堂に来て「懐かしいな」というふうに思っております。今日は「どうやったら政治に興味を持てるか」とか、「ネットが政治をどう変えていくか」とか、そういう話になると思いますので、よろしくお願い致します。 宇野 評論家の宇野常寛といいます。主にアニメ、漫画、アイドルといったサブカルチャーの評論家なのですが、何かの間違いで今日ここに紛れ込んでしまいました。ここに集まっている皆さんの代弁というにはちょっともう歳をとりすぎているんですけど、素人代表という立ち位置から、率直な疑問をぶつけていけたらな、と思ったりしています。 ■ 自民党のインターネットへの目覚め 宇野 たぶん僕、平さんと一年ぶりくらいですよね。ちょうど総裁選をやってる頃に、石破茂さんの番組にゲストで呼ばれて、そのとき平さんが仕切りだったんですね。「Cafe Sta」と言って、自民党本部の一階で平さんが毎週やっている謎のネット番組です。「よく刺されないな」と思って、いつも見てるんですけど。 平 いま「Cafe Sta」と言ってもらいました。宇野さんも出てもらったんですが、自由民主党という政党もですね、2009年の選挙で大惨敗をしました。今までは、マスコミは放っておいても取材に来るものという感じでしたし、官僚や色んな団体も、自民党に押し掛けてくるわけだったのですが、野党になった瞬間に誰も来なくなりました……ということで、始めた動画サイトがあるんです。 大きな転機は、ニコ生で「自民党12時間スペシャル」をやったことですよ。政党の案内番組を見たくはないものですよね。しかし、なんと「12時間スペシャル」をやったら、26万人が見に来たんです。これで「ネットというのは凄いな」と。今まで非常に保守的で、ネットに対する理解がなかった自民党が目覚めたんですね。 そして次に何が起きたかというと、安倍晋三さんという政治家が、2007年に第一次安倍内閣で悲惨な辞め方をします。普通の政治家であれば、おそらく政治生命が断たれたと思います。その後に、安倍さんがFacebookを始めたんですね。このFacebookが、自民党の若手とのコミュニケーションツールとして、ものすごい機能したんです。 秘書がやっているのかと思ったら、本人がやってるんですね。本人がやっていて、例えば私がやっているFacebookの書き込みに「いいね!」を押すんですよ。そうすると、私も安倍さんに「いいね!」を返しますよね。そうこうしているうちに、だんだん色んな議員がFacebookを介して安倍さんと情報交換するようになって、ネットワークが出てきた。 安倍さんが総裁選に出る基盤を、Facebookが作ったんだと思います。ですから、今までの「お金」とか「派閥」とかとちょっと違う意味で、ネットのツールが動き出した瞬間だなあという、そういう感想を持ちました。 (堀潤氏、到着) 堀 遅くなりました。平さんお久しぶりです、お願いします。 平 堀さん、知事選の打ち合わせか何かをしていたんですか? 堀 ちょっと番組の収録があって、遅くなってしまったんです。でも、今日奇しくも都知事選のこれからに向かってざわざわし始めていて、鈴木寛さんも候補として既に早い段階から名前が挙がっていたので、今日はどんな発言をするのかと思っています。 これまでの選挙で戦ってきた皆さんたちも、士気が上がってきている様子だったので、今日はぜひいろいろ聞いてみたいなということも、裏テーマで持っています。 宇野 今日、ここで3人が共謀して、うっかりと「出馬します発言」をとりつけるとか、やりたいよね。 ■ 猪瀬知事の辞任問題 堀 平さんは今回の都知事選の前段となる猪瀬知事の問題は、どうですか? 平 いまどき、現金貰ってそれを持っておく感覚が、信じられない。その時点でアウトでしょうね。 現金で貰っていて後ろめたいから貸金庫に保管していて、アクションを起こしたのも徳洲会事件が発覚した後ですからね。 

【第1回】炎上マーケが威力をふるった参院選2013 - 鈴木寛×平将明×堀潤×宇野常寛が大隈講堂で話し合った「新しい民主主義のカタチ」

【現代ゲーム全史】FFが築いた"和製ファンタジー"の視覚的起源 宮崎アニメはゲーム史にどう影響したか?

▼本コンテンツは連載です。前回記事はこちらhttp://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar388311第24回 二大RPGシリーズの成立と和製ジュブナイルファンタジーの勃興 『ドラクエ』以降のRPGでまず大きく変わったのが、ビジュアルの方向性であった。それまでは『指輪物語』以来の海外ハイファンタジー作品の装幀に近いリアリスティックな洋画調のイメージを元に、パッケージアートやモンスターなどの作中グラフィックが制作されることが多かったが、この時期からは同様の題材を日本の漫画・アニメ風の絵柄で描くものが増えている。 代表的な例として、ファミコンではのちに漫画家として活躍する冨士宏がキャラクターデザインを担当したナムコのRPG風ストーリーアクション『ワルキューレの冒険 時の鍵伝説』(1986年)、パソコンでは硬派な『ザナドゥ』から一転して「今、RPGは優しさの時代へ。」をキャッチコピーに据えヒットした日本ファルコムのアクションRPG『イース』(1987年)などが挙げられよう。すでにAVGのジャンルではアニメ的な「メカと美少女」を売りにしたSF作品が流行していたのは先述したとおりだが、その延長線上にファンタジーRPGのビジュアルもまた、いわば「竜と美少女」へと転化する潮流を示してみせたのが両作である。 つまり、片やビキニ風のアーマーをまとった戦乙女が主人公に、片や少年主人公とボーイミーツガール的に出会う神聖な力を秘めた巫女といった美少女キャラクターの登場が目玉となっているわけだが、その背景には『風の谷のナウシカ』(1984年)や『天空の城ラピュタ』(1986年)といった宮崎駿監督の長編アニメの存在を見過ごすことができない。世界の調和のために戦う戦闘美少女や、秘めた力を持つゆえに悪に狙われるヒロインといったキャラクター造形や作劇センスには、明らかに同時代に広範な人気を博した両作品からの直接間接の影響が見受けられるからである。こうしたビジュアルの変化に付随するかたちで、シナリオ傾向もまた、従来のRPGのような素朴な骨格の英雄物語からは一段細密化した、初期スタジオジブリ風のジュブナイル冒険活劇のような方向に進んでいくことになる。 そして1987年末、そんな和製ファンタジーの潮目の変化を最も大規模に体現するRPGシリーズが、『ドラクエ』のエニックスとは常に近い土俵でビジュアル重視のストーリーゲームを競ってきたパソコンゲーム出自のソフトハウスの手で生み出される。スクウェアの『ファイナルファンタジー(FF)』である。 

【現代ゲーム全史】FFが築いた
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