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記事 21件
  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第21回「男とペット3」【毎月末配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.701 ☆

    2016-09-30 07:00  
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    脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第21回「男とペット3」【毎月末配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.30 vol.701
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第21回です。今回は「男とペット 3」です。犬のトナとヒヨコのピヨを飼っていた井上家ですが、ピヨは成長してニワトリとなり、トナと反目し合うようになります。やがて起きる大事件。そして、井上家にやってきた二匹目の犬とは……。

    【発売中!】井上敏樹 新作小説『月神』(朝日新聞出版)
    ▼内容紹介(Amazonより)
    「仮面ライダーアギト」「仮面ライダー555」をはじめ、
    平成ライダーシリーズの名作を送り出した脚本家による、
    荒唐無稽な世界を多彩な文体で描き出す、異形のエンターテインメイント! 
    (Amazonでのご購入はこちらから!)
    PLANETSチャンネル会員限定!入会すると視聴できる井上敏樹関連動画一覧です。
    (動画1)井上敏樹先生、そして超光戦士シャンゼリオン/仮面ライダー王蛇こと萩野崇さんが出演!(2014年6月放送)
    【前編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
    【後編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
    (動画2)井上敏樹先生を語るニコ生も、かつて行なわれています……!仮面ライダーカイザこと村上幸平さんも出演!(2014年2月放送)
    【前編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
    【後編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
    (動画3)井上敏樹先生脚本の「仮面ライダーキバ」「衝撃ゴウライガン!!」など出演の俳優、山本匠馬さんが登場したニコ生です。(2015年7月放送)
    俳優・山本匠馬さんの素顔に迫る! 「饒舌のキャストオフ・ヒーローズ vol.1」
    (動画4)『月神』発売を記念し行われた、敏樹先生のアトリエでの料理ニコ生です!(2015年11月放送)
    井上敏樹、その魂の料理を生中継!  小説『月神』刊行記念「帝王の食卓――美しき男たちと美食の夕べ」
    ■井上敏樹先生が表紙の題字を手がけた切通理作×宇野常寛『いま昭和仮面ライダーを問い直す』もAmazon Kindle Storeで好評発売中!(Amazonサイトへ飛びます)
    これまでPLANETSチャンネルのメルマガで連載してきた、井上敏樹先生によるエッセイ連載『男と×××』の記事一覧はこちらから。(※メルマガ記事は、配信時点で未入会の方は単品課金でのご購入となります) 
    ▼執筆者プロフィール
    井上敏樹(いのうえ・としき)
    1959年埼玉県生まれ。大学在学中の81年にテレビアニメの脚本家としてのキャリアをスタートさせる。その後、アニメや特撮で数々の作品を執筆。『鳥人戦隊ジェットマン』『超光戦士シャンゼリオン』などのほか、『仮面ライダーアギト』『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー555』『仮面ライダー響鬼』『仮面ライダーキバ』など、平成仮面ライダーシリーズで活躍。2014年には書き下ろし小説『海の底のピアノ』(朝日新聞出版)を発表。
    前回:脚本家・井上敏樹書き下ろしエッセイ『男と×××』第20回「男とペット 2」
      男 と ペ ッ ト 3  井上敏樹
    さて、犬のトナとヒヨコのピヨ、我が家では二匹のペットを飼う事になった。コッペパンのようだった愛らしいカラーヒヨコのピヨはすぐに普通のニワトリへと成長した。ニワトリなど飼うものではない。なんの可愛げもないし感情が読めない。ニワトリほど嫌な面をしている生き物も珍しいのでないか。意地悪そうなあの目つき。人を全く信用しない守銭奴の老婆のような顔。しかもピヨはオスだったので卵を産まなかった。役立たずだ。この意見にはわが家の愛犬トナも激しく同意していたらしい。トナは犬小屋の中から鶏小屋のピヨをいつもジッと見つめていた。時に唸って吠えて敵意を表す。なにしろ今まで我々の愛情を一身に集めていたのに突然ライバルが登場したのだ――少なくともトナにはそう映っていたのだろう。犬の本能もあって、トナはずっとピヨに襲いかかる機会を狙っていたに違いない。すっかり可愛げを失ったとは言え、私も弟もピヨを放っておいたわけではない。きちんと餌もやれば時には小屋から庭に出して遊んでやった。遊ぶと言っても空に放り投げてジタバタするピヨをただ追いかけるというものでピヨにしてもみれば大いに迷惑だったかもしれないが。そんなある日、ついにトナが鬱憤を晴らす時がやって来た。

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  • 「差別」から生まれた自由空間としての戦前プロ野球――『洲崎球場のポール際』著者・森田創インタビュー(前編) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.700 ☆

    2016-09-29 07:00  
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    「差別」から生まれた自由空間としての戦前プロ野球『洲崎球場のポール際』著者・森田創インタビュー(前編)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.29 vol.700
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは、草創期のプロ野球を描いたノンフィクション『洲崎球場のポール際』著者・森田創さんのインタビューです。戦前に始まったプロ野球の名勝負の舞台となったのが、現在の東京都江東区にあった「洲崎球場」でした。なぜ東京の東側でプロ野球文化が芽吹いたのか? 東京の都市構造やメディア環境の変貌が、大衆文化に何をもたらしたのかを語ってもらいました。
    ▼プロフィール
    森田創(もりた・そう)
    1974年5月21日、神奈川県出身。1999年、東京大学教養学部卒業。同年、東急電鉄入社。現在、広報部勤務。2014年10月、初めての著書『洲崎球場のポール際』(講談社)を発刊し、翌年のミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。2016年7月、戦前のテレビ開発を追ったノンフィクション『紀元2600年のテレビドラマ』(講談社)を刊行。

    森田創『洲崎球場のポール際 プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光』講談社、2014年
    ◎聞き手:菊池俊輔、中野慧
    ◎構成:中野慧

    ■関東大震災、幻の「1940年東京五輪」と野球人気の高まり
    ――森田さんの『洲崎球場のポール際』は、草創期のプロ野球の歴史を、現在の東京都江東区にあった「洲崎(すさき)球場」を中心に描いていくというものでした。プロ野球は私たちにとっては生まれたときから当たり前にあったものであるがゆえに、どういう経緯を経て今の形になっているのかって、実はあまり知られていないのではないかと思います。
     そこで今回は、野球が文化や社会の状況とどのようにして絡み合いながら今のものになったのか、そこにどんな可能性があったのかについて伺っていければと思います。森田さんはもともとこの本を執筆する前から、戦前の野球に強く興味を持っていらしたんでしょうか?
    森田 もともと野球のなかでもプロ野球が好きでしたので、戦前に限らずどの時代も興味があったのですが、やっぱり戦前は記録も少なくてミステリアスですし、「伝説の大投手」沢村栄治【1】をはじめとして戦死してしまった選手も多くいて、悲劇的な部分もありますよね。そういうところに神話的な憧れを持っていた、ということはあるかもしれません。
     この本を書くに至った理由は単純で、それまでずっと狂ったように会社の仕事をしていたんですよ。劇場を作る仕事だったので、まさにプロ野球と同じ「興行」についてずっと考えている毎日で。その仕事がひと段落して、「何か違うことがやりたいな」と感じていたときにたまたまプロ野球の失われた球場についての本を読んで、「プロ野球は洲崎球場で始まった」ということを知ったんです。面白そうだからもっと調べてみようと思ったんですが、あまり資料も残っていないし、ほとんど何もわからなかった。それでムキになって調べているうちに、会社で本を作る仕事をしていた人に「そんなに調べているんだったら、本を書いてみれば?」と言われて書き始めた、という感じですね。

    【1】沢村栄治:1934年に行われた日米野球でメジャーリーグ選抜と対戦して好投し、その後始まったプロ野球では巨人でエースとして活躍したが、日中戦争・太平洋戦争に従軍し1944年に27歳の若さで戦死した。背番号「14」は巨人の永久欠番となっている。なお、漫画『ダイヤのA(エース)』の主人公・沢村栄純の名前は沢村栄治へのオマージュ。

    ――戦前から東京都内には野球場がいくつかあったようですが、洲崎球場のように戦後にはなくなってしまった球場って他にあるんですか?
    森田 戦前で消えたのは洲崎球場だけですね。もともと昭和15(1940)年に東京でオリンピックが開催されるはずだったんですよ。日本の戦前の都市計画って、そのオリンピック構想に縛られているところがあるんです。まず今の東京の原型となったのは、大正12(1923)年の関東大震災後の「帝都復興計画」ですね。そのときに、昭和通りとか地下鉄銀座線とか、今でも使われているインフラでももっとも古いものができました。その後、いわば「第二期」の都市計画のベースになったのが昭和15年の東京五輪です。この「幻の東京五輪」は、昭和11年の7月31日に開催が決定し、実は今の駒沢オリンピック公園――昭和39(1964)年の東京五輪でも使われたところです――にメインスタジアムを置く計画でした。ところが昭和13(1938)年、日中戦争の激化とともに泣く泣く中止となってしまいました。
    ――当時の駒沢って、今のように住宅街だったわけではないんですよね。
    森田 もう、ほとんど『北の国から』みたいな感じですよね。牛の鳴き声が聞こえるような。ただ、昭和15年の東京五輪計画って、昭和39年の東京五輪でも多くの部分が踏襲されていたりするんですよ。馬事公苑で馬術をやるとか、戸田公園でボートをやったのもそうですし、39年の東京五輪では女子バレーボールが「東洋の魔女」と呼ばれて金メダルを獲得したわけですけど、あれも駒沢の体育館で行われました。なぜ駒沢に巨大な体育館が作られたかというと、やはり昭和15年の東京五輪計画を踏襲したからですね。

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  • 【新連載】古川健介『TOKYO INTERNET』/第1回 東京っぽいインターネットサービスは「遊び半分」がキーワード ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.699 ☆

    2016-09-28 07:00  
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    【新連載】古川健介『TOKYO INTERNET』第1回 東京っぽいインターネットサービスは「遊び半分」がキーワード
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.28 vol.699
    http://wakusei2nd.com



    今朝のメルマガは古川健介さんの新連載「TOKYO INTERNET」の第1回をお届けします。
    ニューヨーク、ロンドン、シリコンバレー、そして東京。都市の物語とそこから生まれるインターネットサービスには深いつながりがあったーー。この連載ではときにガラパゴスと呼ばれる日本のインターネット進化史を〈東京〉という都市の文化から読み解いていきます。

    ▼プロフィール

    古川健介(ふるかわ・けんすけ)
    1981年6月2日生まれ。2000年に学生コミュニティであるミルクカフェを立ち上げ、月間1000万pvの大手サイトに成長させる。2004年、レンタル掲示板を運営する株式会社メディアクリップの代表取締役社長に就任。翌年、株式会社ライブドアにしたらばJBBSを事業譲渡後、同社にてCGM事業の立ち上げを担当。2006年、株式会社リクルートに入社、事業開発室にて新規事業立ち上げを担当。2009年6月リクルートを退職し、Howtoサイト「nanapi」を運営する株式会社nanapi代表取締役に就任。
    インターネットサービスは都市から生まれるって?
    こんにちは、古川健介といいます。ネット上では、けんすうと名乗っていたりします。この連載は、東京ぽいインターネットについて考えていこうかなと思っています。
    普通に考えると、インターネットは都市との関連性が低そうです。国境を超えて、24時間、つながりっぱなしで、そこには場所という概念はほとんど影響しなそう。そんなインターネットのことを語る時に、国ですらなく都市に限定する意味ってなんだろう、と思われる人も多いと思います。
    しかし、僕は最近「インターネットサービスは都市から生まれる」と思っているのですね。もう少しわかりやすくいうと、「インターネットサービスは、都市の空気の影響を受けて、その都市っぽいサービスがでてくるのでないか」と思っているのです。
    一番わかりやすいのは、シリコンバレーです。シリコンバレーには「世界を変えろ」という空気がすごいあるので、世界を変えるようなサービスが出てくるのではないかと思うのです。
    Googleなどがわかりやすい例でしょう。Googleが作っているのは、検索エンジンのみの時代から一貫して「AI(人工知能)」です(※1)。AIのためのエサとしての人間のデータを集め、ロボットに食べさせて、その結果として進化したAIをまたユーザーに提供していく、ということを繰り返しています。たとえば、「Google Photos」という無料の写真ストレージサービスなどはまさにその例で、膨大な写真データを食べさせることで、写真解析の精度を上げ続けています。

    なぜそんなことをしているかというと、彼らは、純粋に、AIなどのテクノロジーによって、世界のあり方を変えようと信じているのだと思います。これはシリコンバレーにおける「Change the world」という風土によって成り立っているのではないかと。
    こんなダイナミックな野望を持ちつつかつビジネス的にも成功しているGoogleのようなサービスを生み出す土壌がシリコンバレーにはあるといえるでしょう。
    未来を読み解くためにコンテキストを読み解きたい
    僕が気になっているのは、「未来はテクノロジーによってこう変わっていくという趣旨の言論は、アメリカの著者のものが多い」ということです。
    たとえば、古くは「ロングテール」や「シェア」、最近だとケヴィン・ケリーさんの『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』などです。こういう言論はシリコンバレーなどでは語る人が多そうなのですが、東京ではあまり存在しない。つまり、「世界を変えろ」的なメッセージを受け取った人の話が多く流通しているのですね。
    それはそれで非常に参考になるのですが、あくまでシリコンバレーから出てくる、世界を変えることを目指しているグローバル企業を中心においた考え方とも言えるわけです。
    しかし僕は、東京に住んでいるので、東京ではこれから先の未来に何が出来ていくのか、また、どういうものが作れるのか、というのを絞って考えていきたい。
    そのためには、東京という都市が、どういうメッセージを持っていて、どういう影響を与えてきたか、というのを読み解きたいと思っています。
    それをまとめていけばこれから東京でサービスを作る人にとっての手助けになるかもしれない、と思ってこの連載をはじめました。ちなみに、あくまでやりたいのは歴史を振り返ることではなく、未来にどういうサービスが生まれていくのか、というのを語るための土壌づくりです。
    というわけで、前段が長くなりましたが、「東京ぽいインターネットサービスってどんなのだ?」というのを考えてみました。

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  • 地理と文化と野球の関係(「文化系のための野球入門――ギークカルチャーとしての平成野球史」vol.4)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.698 ☆

    2016-09-27 07:00  
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    地理と文化と野球の関係(「文化系のための野球入門――ギークカルチャーとしての平成野球史」vol.4)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.27 vol.698
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは「文化系のための野球入門」をお届けします。今回は「野球人気の地域差」に着目し、日本社会に暮らす人々が、野球というスポーツ/エンターテインメントに接する際の温度差について考えます。
    ▼執筆者プロフィール

    中野慧(なかの・けい)
    1986年生、PLANETS編集部。文化、政治からスポーツまで色々な書籍・記事を担当しています。過去の構成担当書籍に『静かなる革命へのブループリント』(宇野常寛編、河出書房新社)、『ナショナリズムの現在』(著・小林よしのり他、朝日新聞出版)、『「絶望の時代」の希望の恋愛学』(宮台真司編、KADOKAWA/中経出版)等。

    過去の配信記事一覧はこちらから。

    前回:いま野球界の構造はどうなっているのか? 選手育成過程と、今夏の「女子マネージャーと硬式球」問題(「文化系のための野球入門――ギークカルチャーとしての平成野球史」vol.3)

    本記事に関するご意見、ご感想等は、こちらまでお送りください。
    ■昔から「地域密着」していたプロ野球
     前回に引き続き、野球界の基底構造を試論として述べてみたいと思います。
     先日、広島東洋カープが25年ぶりの優勝を果たし、ニュースやSNSのタイムラインを賑わせていたと思います。そこで意外な人がカープファンだったことが明らかになり、驚いたりした人も多いのではないでしょうか。「◯◯という野球チームのファンである」ということは、当人たちがあえて日常のコミュニケーションで表明しようと思わないぐらいに身体化されていたりします。
     その一方で、例えばしばしばメディアで「高校野球は国民的行事だ」といういうことが言われるわけですが、「そもそも高校野球に関心がないから、国民的行事だなんて1ミリも思わないよ」と反発を覚える人もいると思います。
     ここで考えてみたいのは、個々人の出身地域や所属する文化的クラスターによって「野球」というスポーツ/エンターテインメントの受け取り方に大きな差が出てくる、ということです。そこで今回は「地域によって『野球』というものの重みがどう違うか」に着目して、野球文化の内実を考えてみたいと思います。
     この連載のもとになった記事(いま文化系にとって野球の楽しみ方とは?――「プロ野球ai」からなんJ、『ダイヤのA』、スタジアムでの野球観戦、そしてビヨンドマックスまで)では、「野球人気低下」の実相について検討しました。よくマスメディアで言われる「野球人気」のバロメーターは、つまるところ「テレビにおける巨人戦の視聴率」だったわけです。現在の地上波における巨人戦中継数や視聴率はたしかに減少傾向であるものの、スタジアムに足を運ぶ観客の数や、野球を実際にプレーする選手の数は21世紀に入って右肩上がりになっています。野球人気を考える上では、「マスメディアを通した薄く広いファン層」ではなく、球場に足を運んだり自分でやったりする「濃い」ファン層の推移を考える必要があるという論旨だったのですが、地域の野球人気を考える際もやはり観客動員の数に着目する必要があります。
     近年、プロ野球においてJリーグをモデルとした「地域密着」型の球団経営が志向されていることは、野球に詳しくなくても知っている方が多いのではないかと思います。北海道では2004年に札幌に本拠地を移した北海道日本ハムファイターズ、東北では2005年に新規参入を果たし仙台に本拠を置いた東北楽天ゴールデンイーグルス、福岡では2006年に親会社が変わった福岡ソフトバンクホークスといったパ・リーグ球団が、それぞれ地域での人気を確立しています。
     実際に2008〜2015年に開催されたプロ野球公式戦の各チームのホームゲーム観客動員数の推移を見てみると、ソフトバンク、日本ハムの観客動員数は高水準を維持していますし、2005年に球界に参入したばかりの楽天も急上昇中です。

    ▲日本野球機構 統計データより作成。
     では、プロ野球において「地域密着」が進んだのは最近かというと、必ずしもそういうわけではありません。大阪府・兵庫県の阪神タイガース、愛知県なら中日ドラゴンズ、広島県なら広島東洋カープといったいくつかのセ・リーグ球団は、戦後にプロ野球が復活して以降、長きにわたって地域住民に愛されてきており、現在の観客動員数でも上位に位置しています。
     たとえば広島東洋カープは、ある種の「戦後復興・反戦平和の象徴」として生まれ、市民の支持を受けてきました。被爆都市である広島で戦後にプロ球団が誕生した経緯、市民の受容過程や、カープがどのような「意味」を背負っていたかについては、『はだしのゲン』で有名な中沢啓治の漫画作品『広島カープ誕生物語』でも描かれています。

    ▲中沢啓治『中沢啓治著作集(1)広島カープ誕生物語』DINO BOX
    ■日本で一番野球が盛んな都道府県はどこか
     野球文化は大きくプロ野球とアマチュア野球のふたつに分けられるわけですが、大阪・愛知・広島の3府県は戦前から高校野球も盛んであり、全国優勝経験のある強豪校を多く抱えていてアマチュア野球が市民の身近にあることも、野球人気の高さを下支えしています。
     では、日本で一番野球が盛んな都道府県はどこか? と問われたとき、暫定的には「大阪府」と答えるのが、もっとも正解に近いと思います。プロ野球においては阪神タイガースが伝統的に根強い人気を誇り、阪神以外にも近鉄バファローズ(前身も含めて1952年より大阪に本拠を置き、2004年に消滅)、南海ホークス(現在の福岡ソフトバンクホークス。1952年〜1988年まで大阪に本拠を置き、89年より福岡に移転)、阪急ブレーブス(現在のオリックス・バファローズ。1952年〜2004年まで兵庫県に本拠を置き、現在は大阪府を本拠としている)と、20世紀後半には4つものプロ球団が大阪周辺に本拠を置いていました。

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  • 月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」9月19日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.697 ☆

    2016-09-26 07:00  
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    2016.9.26 vol.697
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    大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!

    ▲先週の放送はこちらからご覧いただけます!
    ■オープニングトーク
    宇野 時刻は午後11時30分を回りました。みなさんこんばんは、宇野常寛です。そして松岡茉優さん、今夜も生放送お疲れ様でした。昨日の『真田丸』も観ましたよ。石田三成も大谷刑部もお亡くなりになって、僕は春ちゃんの未来がすごく心配です。初恋の人もお父さんも関ヶ原で家康に殺されちゃったじゃないですか。でも、本当に僕だけは、春ちゃんこと松岡茉優さんの味方だということは覚えておいてください。ということで、昨日の『真田丸』を観ていないと全く意味不明なトークでした。
    まあということでね、この番組もラスト2回です。何の話をしようかと思ったんですが、僕ね、2、3時間前までNHKに出ていたんですよ。もちろん生放送じゃなくて収録です。収録自体はもう2,3週間前かな、NHKスペシャルで「健康格差」といって「経済的に劣位に置かれている人の方が、現代の精神病や生活習慣病といわれるものにかかりやすい」という問題を取り上げた番組ですね。あんまりお金を持っていない人の方が生活習慣や精神病にかかりやすいというデータがあるわけですよ。そこで「お金を持っていないと健康になれないような世の中って、なんだかちょっと間違ってねえか」みたいなことですね。それで、この問題をどうやって改善していくかということについて、長い時間をかけて議論したんですよ。収録には5、6時間くらいかけてますね。でも放送は70分ぐらいなので、四分の一か、下手したらもっとカットされていますよね。なので、どこをオンエアで使われたのかなと気になっていたんですけれど、残念ながら僕はオンエアを観れていないんですよ。

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  • 『火花』――“解像度”を上げて現実に対抗するフィクション――メガヒット小説映像化にNetflixが選ばれた理由(成馬零一×宇野常寛)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.696 ☆

    2016-09-23 07:00  
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    『火花』“解像度”を上げて現実に対抗するフィクション――メガヒット小説映像化にNetflixが選ばれた理由(成馬零一×宇野常寛)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.23 vol.696
    http://wakusei2nd.com



    今朝のメルマガは、『火花』をめぐる成馬零一さんと宇野常寛の対談をお届けします。地上波ではなくNetflixで映像化されたピース・又吉直樹による小説『火花』。脂の乗った映画監督たちを起用して作られたこのドラマが、Netflixオリジナル作品だからできたこと、そして、現在のテレビが置かれている状況について語りました。(初出:「サイゾー」2016年9月号(サイゾー))


    (出典)
    ▼作品紹介
    『火花』
    総監督/廣木隆一 監督/廣木隆一、白石和彌、沖田修一ほか 出演/林遣都、波岡一喜、門脇麦ほか 制作/吉本興業 配信/Netflix
    若手漫才師“スパークス”のボケ・徳永は、営業で行った熱海で先輩芸人“あほんだら”のボケ・神谷と知り合う。その存在に惹かれ、弟子入りを志願すると神谷は「俺の伝記を書くんだったらいい」と受け入れる。そこから2人が笑いについて語り合って過ごした濃密な数年間と、売れる/売れないという永遠のテーマに翻弄される彼らを含めた若手芸人たちの姿を描く。原作は、ご存じ第153回芥川賞受賞作。若手から大御所まで、多くの芸人がカメオ出演している。
    ▼対談者プロフィール
    成馬零一(なりま・れいいち)
    1976年生まれ。ドラマ評論家。著書に、『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社)、『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)ほか。
    ◎構成:橋本倫史
    『月刊カルチャー時評』過去の配信記事一覧はこちらのリンクから。
    成馬 小説『火花』がベストセラーになったときは、「お笑い芸人が書いた小説が芥川賞を受賞した」という話題が先行していて、内容面にまで話が及んでいなかった印象がありました。実際、小説ではわかりにくい部分があったのですが、ドラマ版を観ていると、『火花』が描いていたことがなんだったのか、よくわかります。
     全10話で、1話につき1年分くらいの時間経過で描かれるじゃないですか。舞台は2001年から10年頃で、つまりこれってゼロ年代の青春ドラマなんだな、と。微妙な懐かしさがありました。基本的には徳永(太歩)と神谷(才蔵)という2人の若手芸人の話で、彼らはゼロ年代以降のお笑いブームの中で、そこで生まれたルールに則ったゲームを戦わされている大勢の芸人のうちのひとりにすぎないんだ、という小説ではわかりにくかったことが、ドラマ版ではよくわかる。
     神谷は、もしかしたら松本人志になれたかもしれなかった天才型の芸人だったけど、ゼロ年代以降、キャラクター文化がお笑いに流入したことで、芸人の生き残り手段が「面白いキャラをどう演じるか」という勝負になってしまって、芸人を作家として捉える文化が総崩れしてしまった。『M-1グランプリ』のようなコンテストがその比重を高めていく中で、神谷のような芸人がどうなっていくのか、というのがドラマの基本になっていたと思う。
     もしゼロ年代にこの作品が作られていたら、神谷が最後に死んで、残された徳永が思い切りキャラを押し出して売れて成功する、という終わり方になっていたと思うんですよ。でも、そこで終わらずに、それよりも少し先まで描かれるのが面白かった。そこに多分、又吉が芥川賞を獲ったことと、この作品がNetflixで作られたことの意味が透けて見えるんじゃないかな、と思います。
    宇野 原作の小説については僕は、特に興味はないんですよね。ただ、このドラマ版はなかなか面白かった。どこが面白いかというといろいろあるんだけれど、原作の処理で言うと、この小説家デビューによってマルチタレントへと舵を切った又吉が無意識のうちに書いてしまっているところを拾って再解釈することで、ぐっと射程が長くなったと思う。
     徳永=又吉は、芥川賞を獲ったことで究極のキャラ芸人の道を歩み始めたと思うんだよね。ピースのコントは誰も知らないけど、又吉の文芸キャラだけは世間に伝わっていて、芸人として生き残れなくても文化人として生き残るであろうことは、ほぼ確定している。又吉は賢い人間だから、そんなことは百も承知でやっているはずで、「生存戦略として、これを受け入れたんだな」と思った。これって実は、フィクションより現実に起こっていることのほうが面白いという、インターネット以降に世界中で起こっていることを示すひとつの大きな例なんだよね。つまりNetflixは、小説『火花』の存在を凌駕して面白くなってしまっている“又吉現象”と戦わなければいけなかった。そこでどういう戦い方をするのかな、と思ったら、1話60分×10話という長尺を活かして、ほんのわずかなエピソードもめちゃくちゃ時間をかけて描くことで、ひたすら解像度を上げるという勝負に出た。

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  • 複数の世代感覚を媒介することに成功した『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(5))【毎月第4木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.695 ☆

    2016-09-22 07:00  
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    複数の世代感覚を媒介することに成功した『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(5))【毎月第4木曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.22 vol.695
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    今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回は富山のアニメ制作スタジオP.A.WORKSの諸作品に注目しつつ、2011年を代表するヒット作となった『あの花』へと至る「深夜アニメ的表現」の系譜を考えます。
    ▼プロフィール
    石岡良治(いしおか・よしはる)
    1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
    『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。

    前回:『月刊少女野崎くん』に現れた深夜アニメ表現の現代的射程(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(4))

    ■P.A.WORKSの諸作品と『SHIROBAKO』の達成
     前回は動画工房について語りましたが、この連載では京アニとシャフトに関しては、独立した項目を設けていました。もうひとつ、独立した項目を設けていませんが、ここ十年の比較的重要なスタジオとして、富山県南砺市城端に本社を置く、P.A.WORKS(ピーエーワークス)が挙げられると思います。
     元請け第一作の『true tears』(2008年)は、今から振り返ると『心が叫びたがってるんだ。』(以下『ここさけ』)のプロトタイプと言えるアニメで、一応は同名のゲームを原案としていますが、今ではほぼアニメの印象のみが顕著な作品です。P.A.WORKSは富山県に限らず、北陸を舞台にした聖地アニメを多数制作しています。たとえば近作では、黒部ダム近辺を舞台に展開される『クロムクロ』(2016年)というロボットアニメがありますね。あくまでも地元をコンスタントに舞台にし続ける、そういうスタジオです。
     アニメ聖地巡礼的な文脈でいうと、『花咲くいろは』(2011年)が旅館ものとしての重要作で、作中では架空の祭りとして設定されていた「ぼんぼり祭り」が、金沢湯涌温泉でアニメをきっかけに「湯涌ぼんぼり祭り」として実際に誕生し、今でもイベントが行われています(2016年に第6回を開催)。このように、比較的長期的なスパンで地域に根差すような聖地巡礼アニメを作っています。
     P.A.WORKS制作で規模的にヒットしたものは、北陸アニメだけではないですね。具体的にいうと『Angel Beats!』が挙げられます。学園のモデルは金沢大学なので、聖地アニメ性がないわけではないのですが、『Kanon』や『Air』で知られるノベルゲームブランドKeyの麻枝准が原作シナリオを担当しており、特に終盤においてある種のバッドテイスト性を伴いつつも大ヒットしました。2015年の『Charlotte』も麻枝准シナリオのアニメで、こちらの主要な舞台は東京都国立市です。麻枝准原作のこの二作については色々と興味深いのですが、考察は別の機会にできればと考えています。
     むしろここで考えてみたいP.A.WORKS作品は、『ガールズ&パンツァー』(以下『ガルパン』)の水島努監督が手掛けた『SHIROBAKO』(2014-15年)という「アニメ制作もの」のアニメです。こちらは、武蔵野アニメーションという架空の制作会社を舞台にしており、JR中央線の武蔵境駅近辺がモデルになっています。この舞台設定は、中央線沿線に数多くのアニメスタジオが存在している状況を反映したものといえるでしょう。
     『SHIROBAKO』の概要について簡単にいうと、アニメの制作、声優、アニメーター、それとCGグラフィッカーといった仕事に同じ高校出身の女性たちが就いているという設定で、「高校の同級生がみんな業界で活躍する」というファンタジー要素を軸に、しかし仕事の現場についてはリアル寄りに描いたアニメです。実際の苛酷さを知っている人からみるとアニメ業界を美化していると言われることも多いです(ショートアニメ『ハッカドール THE あにめ〜しょん』の第7話「KUROBAKO」が、タイトルの時点ですでにアニメ業界の「ブラック企業」的暗部をパロディにしています)が、それでも割とシビアな側面や新旧世代の対立などを丁寧に拾っているアニメです。

    ▲『SHIROBAKO』(出典:公式サイトより)
     『SHIROBAKO』で個人的に興味深いと思ったのは後半のモチーフです。武蔵野アニメーションは前半と後半では異なるアニメを制作しているんですが、前半がアクションアニメ(『えくそだすっ!』というタイトルでアメリカンニューシネマ風のシナリオが展開されます)なのに対して、後半は萌えミリタリーものを題材にしているからです。『第三飛行少女隊』という架空の萌えミリタリーアニメは、空軍という題材的に明らかに『ストライクウィッチーズ』(2008年)(略称『ストパン』の由来はある意味ひどいのですが)がモデルだと思われますが、もちろん実際には水島努監督自身が『ガルパン』で得た経験を元にしているわけです。

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  • 井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第9回 どこまでが「ゲーム」なのか?【不定期配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.694 ☆

    2016-09-21 07:00  
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    井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第9回 どこまでが「ゲーム」なのか?【不定期配信】 
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.21 vol.694
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    今朝のメルマガは井上明人さんの『中心をもたない、現象としてのゲームについて』の第9回です。空手家・大山倍達の「強さ」の追求が、期せずして直面したゲーム的世界観。「ゲーム」と「それ以外」を区分する境界線は、どこに引かれるべきなのか。「現象としてのゲーム」の具体的な議論のために、ゲームを定義する5つの評価基準を提示します。
    ▼執筆者プロフィール
    井上明人(いのうえ・あきと)
    1980年生。関西大学総合情報学部特任准教授、立命館大学先端総合学術研究科非常勤講師。ゲーム研究者。中心テーマはゲームの現象論。2005年慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。2005年より同SFC研究所訪問研究員。2007年より国際大学GLOCOM助教。2015年より現職。ゲームの社会応用プロジェクトに多数関っており、震災時にリリースした節電ゲーム#denkimeterでCEDEC AWARD ゲームデザイン部門優秀賞受賞。論文に「遊びとゲームをめぐる試論 ―たとえば、にらめっこはコンピュータ・ゲームになるだろうか」など。単著に『ゲーミフィケーション』(NHK出版,2012)。
    本メルマガで連載中の『中心をもたない、現象としてのゲームについて』配信記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第8回 ゲームとは楽しいものでなければならないのだろうか?【不定期配信】

    ■ 2−5 どこまでが「ゲーム」なのか?-さまざまなゲームのボーダーラインについて-
     
     神の手と呼ばれた20世紀後半の伝説的な空手家、大山倍達が語ったとされる言葉に

    「地上最強の動物はアリクイ」[1]

     というものがある。
    どういう理屈かといえば、なんでも①ストレートに考えると、個体としての世界最強の動物はおそらく象である。②像であってもアリの集団に食われてしまうことがある ③アリクイはアリに勝利できる、ということらしい。
     「何を馬鹿な」と思われるだろう。反論をするのも、いかにも容易だ。あまりにも突飛のない発言に、納得するというよりは、失笑を誘われる人のほうが多いだろう。
     さて、なんでこんな話をしているのかというと、ある行為が「ゲーム」という概念に入るかどうかが難しいようなボーダーラインをどう扱うかということ話を扱いたいからだ。
     大山倍達は20世紀後半の日本に「空手」を広めた立役者だが、大山によれば「勝負」という概念のボーダーライン上にいるからこそ出てくる発言であろう。大山は「ケンカと戦いの区別はどこにあるのか、ということは私には、はっきりとわからない」[2]と述べている。
     大山倍達が伝説的な格闘家であることのいくつかの理由の一つは、彼が人間以外の動物と戦っていることによる[3]。若き日の大山は「人間の相手がいない」[4]と感じて、ジャングルのなかでライオンやワニと闘うターザンのように、人間以外の動物と戦いたいと思い「比較的たやすくぶつかれる相手といえば、まず牛だ。」[5]と言い、70頭もの牛を倒す。そして次に熊と戦おうとして警察に止められ、ゴリラと戦ってはゴリラに逃げ出されたという。ライオンと闘うことについても真剣に研究しており、その結果「うーむ、とても勝てない。勝てるわけがない」という結論を得ている。
     大山による対猛獣戦についての発言には興味深い論点が多い。大山は、もし猛獣と人間が闘うのであれば、フェアな条件で闘うべきでないと言っている。虎やライオンに素手の人間が挑むとすれば、「壮年と壮年で、公平な条件で戦わせたら、勝つ可能性はゼロといってよい」という。もし空手の達人が真剣に虎に勝利する可能性を検討するのであれば、①老齢の虎であること ②弱らせておくこと ③広い場所で闘うこと ④200キロ以内の虎であることといった具体的な条件を挙げている[6]。また、若き日に、自身が熊と闘う際においても若い熊と闘って勝利をおさめるのはまず無理であると判断し、老齢でよぼよぼの熊に腹いっぱい食べさせて戦闘意欲をにぶらせた状態で対戦するように手配をしていたという。
     実際、大山は老齢の熊を手配していたものの、大きな若い熊と対戦することになり、対戦開始2,3分で「これは勝ち目がない」と思ったという。その直後に対戦に中止命令が出てこの対戦は取りやめになった。
     これらのエピソードから明らかなように、大山倍達の考える<強さ>をめぐる追求は、格闘技における<試合>の枠組みから大きく越え出ている。勝利とか、強さといった概念は、ふつう何かしらの枠組みの内側にある。異種格闘技戦であるにしても、それは一対一の人間による試合という範囲内であることがほとんどである。
     しかしながら、大山の世界観は「人間の相手がいない」という稀有な理由によって、この大前提が崩れている。そのために、牛や熊と戦っているのであり、その時点でもはや人間社会内での勝負といった評価基準ではなくなっている。大山の思考は、生命全体の生態系のなかにおける人間個体のあり方を考えるというところに近づいていっている。
     ちなみに、生物学者や、生態学者に「最強の動物は何か?」という質問をすれば、ほとんどの場合、まじめな答えとしては「生物というのは、環境によって有利・不利が決まるのであって、何が最強ということはありません」ということになる。大山の「アリクイ最強説」は、人間対人間の対戦という世界から遠く離れて、こうした生態系全体を考えるという視点へと旅立ってしまっている。ふつうの現代人が、自らの実体験からこうした発想へと至ることはまずないと思うのだが、大山の場合は例外的にこのようなことになってしまっている。熊や虎との対戦においても、フェアネスの概念を適用すべきでないと言っているのも、やはり人間対人間という枠組みの外側で、勝負における生死の問題を考えているということが大きいだろう。ライオンや虎に素手で勝てるかどうか、などといったことを真剣に思い悩めば、そういった発想に至るのは、ある意味ではあたりまえなのだろうが、大山の世界では人間社会において想定される「勝利」とか「強さ」という概念は、相対化されてしまっているからこそ「アリクイ最強説」のような、どう捉えればよいかわからない世界観が出てきうるのだろう。

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  • 【インタビュー】秋草俊一郎「〈文学〉は情報化を欲望する――デジタル・ヒューマニティーズの可能性」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.693 ☆

    2016-09-20 07:00  
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    【インタビュー】秋草俊一郎「〈文学〉は情報化を欲望する――デジタル・ヒューマニティーズの可能性」
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.20 vol.693
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    今朝のメルマガは、フランコ・モレッティ『遠読 〈世界文学システム〉への挑戦』を翻訳した、秋草俊一郎さんのインタビューです。過去の膨大な文学作品をビックデータとして解析するという、新しい比較文学の手法「デジタル・ヒューマニティーズ」の代表的な論者であるフランコ・モレッティと、彼が提示した「遠読(Distant Reading)」という方法論は、文芸批評に何をもたらすのか。比較文学の研究者であり翻訳家でもある秋草さんにお話を伺いました。

    『遠読――〈世界文学システム〉への挑戦』
    ▼内容紹介(Amazonより)
    テクノロジーや流通の革命・発達により世界がネットワーク化する今日、
    ごく少数(世界で刊行される小説の1%にも満たない)の「正典(カノン)」を「精読」するだけで「世界文学」は説明できるのか?
    西洋を中心とする文学研究/比較文学のディシプリンが通用しえない時代に、
    比較文学者モレッティが「文学史すべてに対する目の向けかたの変更を目指」して着手したのが、コンピューターを駆使して膨大なデータの解析を行い、文学史を自然科学や社会学の理論モデル(ダーウィンの進化論、ウォーラーステインの世界システム理論)から俯瞰的に分析する「遠読」の手法だ。
    本書には、「遠読」の視座を提示し物議を醸した論文「世界文学への試論」はじめ「遠読」が世界文学にとりうるさまざまな分析法が展開する10の論文が収められている。グラフや地図、系統樹によって、世界文学の形式・プロット・文体の変容、タイトルの傾向や登場人物のネットワークが描出されてゆくのだ。
    21世紀に入り、人文学においても、デジタル技術を用いて対象や事象をデータ化し、調査・分析・綜合を行う〈デジタル・ヒューマニティーズ〉の方法論が拓かれつつある。「遠読」もまた世界文学に新たな視界を開こうとする比較文学からの挑戦なのだ――「野心的になればなるほど距離は遠くなくてはならない」。 
    ▼プロフィール
    秋草 俊一郎(あきくさ・しゅんいちろう)
    1979年生まれ。日本大学大学院総合社会情報研究科准教授。2009年、東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。ウィスコンシン大学客員研究員、ハーヴァード大学客員研究員、東京大学専任講師などをへて2016年より現職。亡命作家ウラジーミル・ナボコフを主な研究対象としながら、近年は翻訳研究・比較文学・世界文学などの研究もおこなう。著書に『ナボコフ 訳すのは「私」――自己翻訳がひらくテクスト』(東京大学出版会)、訳書にドミトリイ・バーキン『出身国』(群像社)、ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフの塊』(作品社)、シギズムンド・クルジジャノフスキイ『未来の回想』などがある。
    ◎聞き手・構成:菊池俊輔
    ■ 文学を“離れて読む“「遠読」というアプローチ
    ――まずは、この本のタイトルにもなっている「遠読」が、どういう意味で使われている言葉なのか、改めてお伺いします。
    秋草 そもそも「遠読」って聞き慣れない言葉ですよね。この本の原書のタイトルである“Distant Reading”は、著者のフランコ・モレッティによる造語で、「遠読」はそれを邦訳したものです。この本の元となった論文は、海外の動向に通じた文学研究者の間ではよく知られていて、この「遠読」という言葉も本になる以前から関係者の間では膾炙していました。
    もともと文学研究には、アメリカで50〜60年代に出てきた「精読」(Close Reading)という概念があって、それが理想的な批評のあり方とされてきました。たとえば海外の夏目漱石の研究者であれば、『こころ』などの日本語で書かれた原文を何回も読んで論文を書くのが本道である、という考え方です。その後、いろいろな方法論が出てきましたが、それでも「精読」は一貫して文学研究の中で強い権威を持っていたわけです。
    そこに、イタリア人の文学研究者であるモレッティが、それだけでは見えないものがあるということで、“Distant Reading”という言葉を使い始めました。当初は挑発的だったり冗談のような使い方をしていたりもするんですが、具体的なやり方としては、とにかく大量にデータを集めて、そこから何が得られるかを、距離を置いて見ようとする。“Close Rading”=「近い読み」に対して、「距離を取る読み」=“Distant Reading”(遠読)と呼ばれました。
    そのコンセプトで書かれた10本の論文を集めたのが、この本です。各章はそれぞれ独立した論文なので内容はバラバラですが、“Distant Reading”という方法論は共通しています。
    もっとも、「遠読」という言葉は、この本の第2章の論文「世界文学への試論」(2000年)で初めて登場しますが、その時点では、明確な方法論があったわけではないと思います。
    その後、自分の言葉に引っ張られるかたちでデータを重視するアプローチへとシフトし、モレッティ自身も2000年にコロンビア大学からスタンフォード大学に移籍して、Literary Labという研究所を設立し本格的に研究を始めます。
    その後、2005年に『グラフ、地図、樹――文学史の抽象モデル』という本を出していますが、そこではグラフや地図を使った分析をかなりやっています。たとえば、日本の江戸時代の出版物の点数をグラフ化して、同時代のアメリカやイギリスといった欧米諸国と比較するといった試みをしています。
    ――『遠読』のアイディアは、ビックデータを駆使した経済学の研究でベストセラーとなったトマス・ピケティの『21世紀の資本』の文学史版という印象を抱きました。
    秋草 ピケティの場合は、いろんな国の数百年分のデータを苦労して集めた、という部分が注目されたわけですよね。今、人文系の分野でこういった試みは、モレッティ以外にもあちこちで行われています。今後はそういったデジタル・ヒューマニティーズと文学研究を融合した分野がどんどん出てくると思います。

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  • プロデューサーの役割は〈こども電話相談室のおじさん〉である――90年代V系全盛期を支えた裏方たち(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第6回)【不定期連載】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.691 ☆

    2016-09-16 07:00  
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      プロデューサーの役割は〈こども電話相談室のおじさん〉である――90年代V系全盛期を支えた裏方たち(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第6回)【不定期連載】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.16 vol.691
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは、市川哲史さんと藤谷千明さんによる対談連載『すべての道はV系に通ず』をお届けします。今回は、90年代V系全盛期に成田忍、佐久間正英、岡野ハジメといった名プロデューサーが果たした役割を考えます。
    【お知らせ】市川哲史さんの〈V系〉論、最新刊が発売中です!(藤谷千明さんとの録り下ろし対談も収録!)

    『逆襲の<ヴィジュアル系>―ヤンキーからオタクに受け継がれたもの―』(垣内出版)
    ▼内容紹介(Amazonより)
    ゴールデンボンバーは〈V系〉の最終進化系だったーー?
    80年代半ばの黎明期から約30年、日本特有の音楽カルチャー〈V系〉とともに歩んできた音楽評論家・市川哲史の集大成がここに完成。X JAPAN、LUNA SEA、ラルクアンシエル、GLAY、PIERROT、Acid Black Cherry……世界に誇る一大文化を築いてきた彼らの肉声を振り返りながら、ヤンキーからオタクへと受け継がれた“過剰なる美意識"の正体に迫る。
    ゴールデンボンバー・鬼龍院翔の録り下ろしロング・インタビューほか、狂乱のルナフェス・レポ、YOSHIKI伝説、次世代V系ライターとのネオV系考察、エッセイ漫画『バンギャルちゃんの日常』で知られる漫画家・蟹めんまとの対談、そして天国のhideに捧ぐ著者入魂のエッセイまで、〈V系〉悲喜交々の歴史を愛と笑いで書き飛ばした怒涛の584頁!

    ▼対談者プロフィール
    市川哲史(いちかわ・てつし)
    
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント!」などで歯に衣着せぬ個性的な文筆活動を展開。最新刊は『逆襲の<ヴィジュアル系>―ヤンキーからオタクに受け継がれたもの―』(垣内出版刊)。
    藤谷千明(ふじたに・ちあき)
    1981年山口生まれ。思春期にヴィジュアル系の洗礼を浴びて現在は若手ヴィジュアル系バンドを中心にインタビューを手がけるフリーライター。執筆媒体は「サイゾー」「Real sound」「ウレぴあ総研」ほか。
    ◎構成:藤谷千明
    『すべての道はV系に通ず』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。
    前回:「小山田圭吾をカツアゲするhide」の構図はどのようにして生まれたか(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第5回)
    ■優秀なリスナーは優秀なパフォーマーになれる――今井寿、hide、SUGIZOの雑食性
    藤谷 ヤンキー文化の雑食性とV系の雑食性に、共通項はあるんでしょうか。
    市川 文字通りのヴィジュアル――視覚的な要素に関しては、特にオールドスクール勢にはヤンキー的な雑食性は明らかにあったでしょ(苦笑)。ただ音楽性に関して言うならば、リスナーとして、ヘヴィーユーザーならではの雑食性だよね。洋楽に対する「日本のリスナーをナメんなよ」的な、日本ならではの勝手なリスナー文化。例えば、好きなバンドを発見したら最後、もう遡るのは当たり前、「在籍バンド全部聴くぞ!」「1曲だけセッション参加のアルバムだって聴くぞ!」「仲がいいバンドも聴くぞ!」という、オタク的な探究衝動――蒐集癖ですわ。
    藤谷 とはいえ、あの人たちに渋谷系的なスノッブさはないじゃないですか。
    市川 そりゃそうだよ。V系におけるオタク性とは本能的なものであって、その生態は真逆だからスノッブさなんて無縁無縁。スノッブなヤンキーなんて見たことないぞ。
    藤谷 ……たしかに。
    市川 だろ? 例えばhideはまったくヤンキーではなく、成績優秀だけども屈折してるデブで内向的な小中学生だったわけじゃん。洋楽ロックにはKISS聴いて衝撃を受けてそこからのめり込むんだけども、そのパターンは典型的な〈聴きまくり/聴き漁り〉タイプで。
    私は彼がリスナーとして優秀だったから、信頼できたのかもしれない。「優秀なリスナーは優秀なパフォーマーになれる」とは私の長年の確信なんだけども、まさにhideはその典型で。今やまさかのベビメタ“ギミチョコ!!”の作者として知られるようになった(失笑)、上田剛士(AA=/THE MAD CAPSULE MARKETS)もそのパターンだよね。
    BUCK-TICKの今井寿だと、そもそも音楽的基礎が一切欠落した極めて普通の一般少年なのでギターは究極の我流だし、スターリンとYMOという聴き始めてた音楽そのものも突然変異ジャンル(失笑)だから、もう本当に〈基本〉から縁遠い男なわけ。で、聴いたことがない音が出るエフェクターやチェンジャーが開発される度に、買っては変な音を出して悦んでたというギタリストの風上にも置けない奴――いいよねぇ(爆苦笑)。海外の(当時の)最先端ノイズ・ミュージックやインダストリアル・テクノも、知識や情報ではなく店頭で勘とジャケットで片っ端から聴いてたら、それがいつの間にか血肉になってるというある意味天才タイプだよね。
    藤谷 理論に頼らず、その場で自分の手元にあるものを集めながら探究していく、という感じですね。
    市川 動物的勘だな、要は(愉笑)。今井に――あとhideとかもそうだよね。対照的にSUGIZOはやっぱり、その音楽を聴く理屈や情報がまず必要な男。それはなぜかと言うと、ヴァイオリン出身だからなのかもしれない。クラシックは知識と歴史の積み重ねだもんね? しかし初期LUNA SEAの頃は、SUGIZOが〈蓄積〉と〈様式美〉で書いた曲と、元々ノイズパンク野郎だったJが〈本能〉でワーッと書いた曲で、シングルにいつも選ばれてたのはJの曲という。
    藤谷 LUNA SEAの代表曲“ROSIER”も、作曲はJですからね。
    市川 うん。まあ、そういうタイプの違いはあるけども、基本的にV系バンドマンたちは音楽に関して真面目な奴が圧倒的に多いね。「自分たちが影響を受けたロックをファンの子たちにも聴いて欲しい」という気持ちも強くて、洋楽のアルバムをやたら雑誌やファンクラブの会報やラジオで紹介しまくってたし、ファンの子たちもまた紹介されたものを素直にちゃんと聴いてたんだよねぇ。真面目だよね両者とも。
    藤谷 実際に紹介されたものを聴いて「LUNA SEAの音楽と全然違う!」と驚いた経験も、今思うと面白かったなと思います。
    市川 もちろん音楽的な理論武装ばかりだけでなく、個人差はあるけど皆楽器をすごく練習していたなと思う。正確には、目茶目茶練習する奴とまったくしない奴に二極化してたわけ。LUNA SEAは全員すごく練習してたし、hideやPATAもよく練習していた。その一方で〈センスまかせ〉の今井は、練習する必要がなかったんだけども(爆苦笑)。

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