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記事 29件
  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第40回「男と食 11」【毎月末配信】

    2018-08-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。前回に引き続いて鮑(あわび)のエピソードです。房州大原のビワッ貝を至高とする敏樹先生。友人の女性ライターの引越し祝いで、金に糸目を付けず食材を買えるのをいいことに、鮑のとろろ汁の調理に挑戦しようとしますが……?
    男 と 食  11      井上敏樹 
    以前、鮑に滑って転んだ事がある。鮑をおろし金の把手で殻から外していた時の事だ。外した拍子に鮑が落ちた。探していると床の鮑を踏んづけて滑ったのだ。大事には至らなかったが、不思議な事が起こった。足の裏の、丁度、鮑を踏んだ部分が赤くなったのである。痛みも痒みもなく、ただ、赤い。鮑の呪いかと思ったが、調べてみると鮑アレルギーというのがあるらしい。だが、食べてみてもなんでもない。だから気にしない事にした。
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  • 丸若裕俊『ボーダレス&タイムレスーー日本的なものたちの手触りについて』第4回「喫茶」は日常と非日常を往復する

    2018-08-30 07:00  
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    工芸品や茶のプロデュースを通して、日本の伝統的な文化や技術を現代にアップデートする取り組みをしている丸若裕俊さんの連載『ボーダレス&タイムレスーー日本的なものたちの手触りについて』。今回は、東京・お台場にオープンしたチームラボの常設展内にある、丸若さんの手がけるカフェ「EN TEA HOUSE」をテーマに語っていただきました。茶の持つ遅さや日常性、飲むという行為は、私たちと世界、自然との関係をどのように変えていくのでしょうか。(構成:高橋ミレイ)
    デジタルとアナログの両面から東洋的な価値を更新する
    丸若 チームラボが6月21日、お台場にミュージアム「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」をオープンしました。その中に、チームラボとコラボしたカフェ『EN TEA HOUSE』(以下、TEA HOUSE)を出店しています。
    ▲「森ビル デジタルアート ミュージアムエプソン チームラボ ボーダレス」https://borderless.teamlab.art/jp/ 東京・お台場に開設された、チームラボの常設型ミュージアム。巨大な敷地は、「Borderless World」「運動の森」「学ぶ!未来の遊園地」「ランプの森」「EN Tea House」の、5つの空間から構成されます。アートは、部屋から出て移動し始め、他の作品とコミュニケーションし、他の作品と境界がなく、時には混ざり合う。そのような作品群による、境界のない1つの世界、『チームラボボーダレス』が作り上げられています。
    ▲『EN TEA HOUSE』https://en-tea-house.teamlab.art/odaiba/jp/ 「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」内のティーハウス。チームラボと、丸若屋の手がける「EN TEA」とのコラボレーション。「EN TEA」が用意した4種類のお茶と、チームラボのインスタレーション作品『小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々』『Enso - Cold Light』を楽しめる茶室となっています。
    ここは最先端のテクノロジーが詰まっている場所ですが、そこで飲む茶は自然農法によってつくられています。その陰と陽の部分がすごく先進的だし、同時に日本的で、それが楽しめる空間です。
    これまでのチームラボの展覧会と大きく違うのは、常設展なので長期的に陳腐化させないことが重要だということです。これは展示全体に言えることだと思うんですが、テクノロジー的な表現を単年ではない期間でやるというのは初の試みに近くて、機材的なものの進歩を考えると、結構なチャレンジだと思うんです。そこに茶という普遍的な要素を加えることによって、これまでテクノロジーの分野では、アナログの要素は足を引っ張るイメージがありましたが、むしろ、それによって陳腐化しないという現象が生まれたらいいと思っています。
    宇野 いまのお話を聞くと、丸若さんは相当深く考えられていますよね。
    先にチームラボの話からすると、今のコンピュータ技術は一般的には西洋的なものの究極の形だと言われているけれど実はそうじゃない、むしろコンピューターは西洋近代的な発想の外側に出るための道具であって、日本的な侘びや寂び、「もののあはれ」を可視化する装置だと言っているのが、猪子寿之率いるチームラボであり、落合陽一です。あの二人はやっていることは全然違うんだけれど、デジタル技術を東洋的なものとして捉えているという共通点がある。そこに丸若さんのような、トラディッショナルな文化をどう現代にアップデートするかを模索しているプレーヤーが合流するのは必然的な流れだし、僕は丸若さんの仕事を見て、猪子さんにはこういった並走者が要るだろうと思ったんです。
    そしてもうひとつ、情報テクノロジーには実体がないので、発展や変化のスピードがすごく早い。チームラボが2〜3年前に、当時の最先端の技術でつくっていた作品は、アートとしてはいまだに素晴らしいけれど、裏側のテクノロジーに関しては、古くなっているものがいっぱいあるはずで、それでも表現のレベルで陳腐化しないように、一生懸命やっている。
    それに対して茶は、圧倒的に遅いんです。20世紀的な遅い工業社会と21世紀的な早い情報社会では、後者が有利と言われてきたけど、今は普遍的なものを追求しようとすると、一周回って「遅いもの」の優位性が生まれてきていると思う。茶の新茶のサイクルは、1年以下にはなりませんが、その「遅さ」によって陳腐化しない。どんなに頑張ってもサイクルが縮まらないことが、普遍性を獲得しているところがあると思います。だから、茶と出会うことで、猪子さんは大きな武器を手に入れたし、丸若さんも猪子さんのようなプレーヤーにずっと刺激を受けてきたわけですよね。
    丸若 現代のお茶には余計なものが付きすぎているので、今は付いたホコリを払っているというか、化石を掘り起こす感じです。一方でテクノロジーは、肉付けをして積み重ねていく。アプローチは逆ですが、どちらもひとつの答えに向かっていて、両側からやると答え合わせの速度が倍速になる。削っているだけだと見えないものが、両方の角度からだと見えてくると思うんです。
    宇野 猪子さんやチームラボは、テクノロジーそのものを開発しているわけではなくて、最新の情報テクノロジーをアートとして文化的に応用することで、どう東洋的な価値をアップデートできるかということを彼なりにやってきた。それは「こんな感じで応用したら、こういうものが見えてきた、あんなものが見えてきた」といった試行錯誤の成果、積み重ねなんです。対して丸若さんは、千年以上の歴史を持つ茶というものが、近代化の中で本質が見えなくなっている、そのホコリを取り除く作業をしている。だから、足し算と引き算の比喩は正確だなと思いました。どちらも近代を通過した後に、現代のテクノロジーがなければ可視化できない東洋的なものの本質を、いかに出していくのかという作業を、それぞれ逆方向からしてるんだと思うんです。
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  • 本日21:00から放送☆ 宇野常寛の〈水曜解放区 〉2018.8.29

    2018-08-29 07:30  

    本日21:00からは、宇野常寛の〈水曜解放区 〉!
    21:00から、宇野常寛の〈水曜解放区 〉生放送です!
    〈水曜解放区〉は、評論家の宇野常寛が政治からサブカルチャーまで、
    既存のメディアでは物足りない、欲張りな視聴者のために思う存分語り尽くす番組です。
    今夜の放送もお見逃しなく!★★今夜のラインナップ★★メールテーマ「夏の終わり」今週の1本「カメラを止めるな」アシナビコーナー「ハセリョーPicks」and more…今夜の放送もお見逃しなく!
    ▼放送情報放送日時:本日8月29日(水)21:00〜22:45☆☆放送URLはこちら☆☆
    ▼出演者
    ナビゲーター:宇野常寛アシスタントナビ:長谷川リョー(ライター・編集者)
    ▼ハッシュタグ
    Twitterのハッシュタグは「#水曜解放区」です。
    ▼おたより募集中!
    番組では、皆さんからのおたよりを募集しています。番組へのご意見・ご感想、宇野に聞いて
  • 三宅陽一郎 オートマトン・フィロソフィア――人工知能が「生命」になるとき 第七章 街、都市、スマートシティ【不定期配信】

    2018-08-29 07:00  
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    ゲームAIの開発者である三宅陽一郎さんが、日本的想像力に基づいた新しい人工知能のあり方を論じる『オートマトン・フィロソフィア――人工知能が「生命」になるとき』。今回は、人工知能による総合的な都市管理を実現するスマートシティ構想をテーマに、ビデオゲームやSF作品を手がかりにしながら、人間と都市が結ぶ新しい関係について掘り下げます。
     今、人工知能を応用する最も大きな射程として、街全体を人工知能で覆うとする試みがあります。試みというよりビジネスとしてそれが最も大きなターゲットになります。日本は比較的安全な国なので気が付きませんが、世界には治安の悪い国が多いですから、人工知能によって街そのものを人工知能化し、治安を良くしサービスを徹底しようという方向です。 人工知能があらゆる場所に監視カメラ、センサーを設置することで、リアルタイムに街全体が監視され街の治安が良くなります。治安が良くなれば企業が集まり、人も集まり、経済圏が良くなっていきます。  現在の、特にディープラーニングなどを基本とする監視カメラに顔認証を入れれば、どの人がどの場所でどのような行動をしているかまで追跡することができます。2015年以降は、ベンチャーを含め監視カメラ業界の発展は大きな勢いになっています。監視カメラは街全体の人工知能の眼となり得るものです。それは可視光のみならず赤外線、超音波、レーザーなど人間の視覚を超えた波長の光さえ持ち得ます。質的にも量的にも人間の認識を超えた把握が可能となります。まず家がスマートハウスになり、次にマンションが、ビルが、そしてデパートが、そして街全体が、人工知能を搭載した知的存在となるのです。  もちろんプライバシーの問題もあります。その強化は平行して発展する課題となります。しかし、最終的にはやはり人が求めるもので「安全」と「健康」に勝るものはありません。監視カメラが発展し世の中に設定されて行く方向に進むのではないかと考えています。  進化した監視カメラのように、すべてのIoT(Internet of Things)デバイスは街の状況を収集するデバイスとして活躍し、その情報を解析し認識へと変換することで、人工知能は街の状態をリアルタイムに認識することができます。さらに、そこから行動を起こすことで、街全体を統御する人工知能は、インフラ技術として入って来るわけです。行動を指令するのは街全体を制御する人工知能ですが、物理的な実行部隊はロボットやドローン、スクリーン上ではアバターとなるでしょう。  また街の人の流れ、事故なども即座に認識して、ドローンやロボット、人に通知し、事件が拡大する前に抑えることもできます。しかし、このような人工知能システムはかなり大規模な開発が可能な会社しかできません。そこで、このような「インフラとしての人工知能」システムを一旦開発して発展させれば、世界中の街や都市に導入することができるようになり、これまでにない巨大な市場が立ち上がります。ガスや電気を融通するといった機能に加えて、このような情報の網の上に人工知能を組み上げるビジョンを「スマートシティ」と言います。 本章では、「人工知能化する都市」を主題として、都市と人工知能の関係について探求して行きます。
    (1)西洋と都市、東洋の街
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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第19回 独立派の団体を違法化する「社団条例」

    2018-08-28 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。香港政府が独立派に対して加えた次なる弾圧は、政治団体の運営の法的な禁止でした。違法団体には罰金・禁固が課せられる「社団条例」の適用により、周庭さんの所属する香港衆志も重大な危機に晒されることになります。(翻訳:伯川星矢)
    香港政府は、独立と民主自決を主張する候補者の議員への立候補を禁止したあと、どのような手段で反対者を弾圧するつもりなのか。二週間前の対応によって、その答えがわかりました。
    この記事を執筆する二週間前の7月17日、香港政府の保安局局長が記者会見を開きました。 内容は「社団条例」の権力を行使し、国家と公共の安全確保を理由に、独立を主張する香港民族党の運営を禁止するという考えの表明です。
    ▲香港衆志の街宣活動の様子
    簡単に言えば、政府はいかなる手段を使ってでも、政府の意向に逆らう意見を「違法」とみなし、法律で取り締まりたいと言う考えです。候補者・議員資格の剥奪はその手段の一つでしたが、法律によって政党・組織の運営を禁止するというのが、もう一つの手でした。
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  • 『心が叫びたがってるんだ。』のヒットが示すもの――深夜アニメ的想像力の限界と可能性(石岡良治×宇野常寛)(PLANETSアーカイブス)

    2018-08-27 07:00  
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    今朝のPLANETSアーカイブスは、アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』をめぐる石岡良治さんと宇野常寛の対談です。『とらドラ!』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の長井龍雪・岡田麿里・田中将賀が手掛け、興行収入10億円突破のヒットとなった本作と、それを取り巻くアニメ市場の状況。さらに、当時放送が始まったばかりの『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の展望についても語りました。(初出:「サイゾー」2015年12月号) ※この記事は2015年12月23日に配信した記事の再配信です。
    Amazon.co.jp:『心が叫びたがってるんだ。』 ■ 深夜アニメブームが生み出してしまった「お約束(コード)」
    石岡 『心が叫びたがってるんだ。』(以下、『ここさけ』)は、予告編の段階では、舞台が秩父だったりで『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』【1】(以下、『あの花』)の二番煎じという印象でしたが、結果的には別物でしたね。
    『アナと雪の女王』以降、日本のアニメ業界は『アイドルマスターシンデレラガールズ』【2】や『Go!プリンセスプリキュア』【3】など、プリンセス要素を表面的に取り入れた。『アナ雪』は本当はむしろ、プリンセスモチーフが無効になったことを示していたはずなんだけど。一方、『ここさけ』ではヒロインが憧れるお城を「ラブホテル」というペラペラな空間に設定した。「聖地巡礼」というけれど、実際、北関東でランドマークになるものなんて、こうしたラブホテルぐらいしかないわけです。まず、そうしたところから心をつかまれた。
     登場人物たちの才能が高校生としてちょうどいい、というあたりも重要だと思う。つまり、ありもののミュージカルナンバーに歌を乗せる程度の才能というか。実際にこんな子がいたら高校生としては才能ありすぎなんですが、とはいえあり得なくない程度の才能になっていて、『ウォーターボーイズ』的な“みんなでミッションを成し遂げる”系の部活ものとして作られていた。同時に、あからさまなまでにアメリカの王道ハイスクール映画的な、野球部員とチアリーダーをメインキャラに配置してスクールカーストを取り入れたりして、最後は「順ちゃん、まさかその野球部と付き合うのかよ!?」と、ある種のオタクが怒るような(笑)エンディングになっていた。そこまで含めて、よく研究されていると思いました。
     一方で、深夜アニメというオタクコンテンツ発の作品がどこまで一般向けにリーチするかの、ある意味マックスの限界がここにあると思った。学園ものアニメでシビアなスクールカーストを描くと、『響け! ユーフォニアム』【4】みたいに「実写でやれ」と言われてしまったりするけど、『ここさけ』を実写にすると、ヒロインの成瀬順がイタすぎて見てられないだろうな、と(笑)。『あの花』の実写版はわりと評判が良かったですが、やっぱりヒロインのめんまだけはコスプレにしかなっていなかった。『ここさけ』では順がそういうキャラクターで、どう考えてもアニメの住人。だからこのキャラがいければOKなんだけど、全然受け付けないと完全にアウトっていう。

    【1】『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』放映/フジテレビ系にて、11年4~6月放映、13年劇場版公開:幼い頃は一緒に遊んでいた「じんたん(仁太)」「めんま(芽衣子)」「あなる」「ゆきあつ」「つるこ」「ぽっぽ」の6人。しかしめんまの突然の死をきっかけに距離が生まれ、高校進学時には疎遠になっていた。ひきこもりになった仁太のもとにめんまが現れ、「願いを叶えてほしい」と告げる。アニメファン以外からも人気を獲得し、秩父は「聖地巡礼」の代表格として扱われるようになった。
    【2】『アイドルマスターシンデレラガールズ』放映/TOKYO MXほかにて、15年1月~:バンダイナムコによるソーシャルゲームを原案に、今年1月からアニメ化。「シンデレラ」をキーワードに、アイドル養成所に通う少女たちの奮闘を描く。
    【3】『Go!プリンセスプリキュア』放映/テレビ朝日にて、15年2月~:2015年の『プリキュア』シリーズ作品(10代目プリキュア)。「プリンセス」をキーワードにした、全寮制の学園モノ。
    【4】『響け! ユーフォニアム』放映/TOKYO MXほかにて、15年4~6月:シリーズ3作累計18万部発行のティーンズ小説を、京都アニメーションがアニメ化。弱小高校の吹奏楽部で部活に励む高校生たちの姿を、リアルな青春ドラマとしてシリアスに描くことを志向していた。

    宇野 『ここさけ』は、岡田麿里【5】がこれまでやってきた10代青春群像劇の集大成だと思うんですよ。例えば『true tears』【6】では、オタクが持っている“不思議ちゃん萌え”の感情を利用して、自意識過剰な女の子の成長物語を効果的に描いてきた。あのヒロインが主人公にフラれることで、逆説的に自己を解放するというストーリーは今回も若干アレンジされて使われている。あと「鈍感なふりをすることが大人になること」だと勘違いしちゃったハイティーンの青春群像劇、という要素は『とらドラ!』【7】の原作にあったもので、それを岡田さんはうまく自分のものにした。そして『あの花』では、近過去ノスタルジーを描くには、実写よりも抽象度を上げたアニメのほうが威力が高い、ということをマスターしたんだと思う。『あの花』の路線でもう一回劇場作品をやってみた、くらいの企画かと思って観に行ったら、そういう意味で非常に集大成的な作品になっていて、よくできていましたね。
     一方、集大成なだけに弱点も出てしまっている。それはどちらかというとクリエイターの問題ではなくて、今のアニメ業界やアニメファンといった環境の問題なんだけど。つまり、今やアニメにおいては「消費者であるオタクとの間にできたお約束(コード)を逆手に取る」というアプローチ以外、何も有効ではなくなってしまっている、という息苦しさがあった。この映画はヒロインが順のようなキャラクターだから成り立っているわけであって、“リア充”感の強い女の子が主役だったら、絶対キャラクター設定のレベルで拒否されてしまう。あるいはエンディングで、ヒロインが野球部の男と付き合うかもしれない、という描写なんて、お約束を逆手に取った明らかな悪意なんだけど、あれがギリギリだと思うんだよね。岡田・長井龍雪【8】コンビくらいの能力があるんだったら、もっと自由にやってほしいなと思うところは正直あった。

    【5】岡田麿里:1976年生まれ。脚本家。近年では『黒執事』『放浪息子』『花咲くいろは』『AKB0048』『Fate/stay night』などの話題作・人気作の脚本・シリーズ構成を手がけている。
    【6】『true tears』放映/08年1~3月:複雑な家庭に育った少年が、あることから涙を流せなくなった少女と出会い、自身や周囲との向き合い方を考えながら成長していく──という青春成長譚。
    【7】『とらドラ!』放映/08年10月~09年3月:当時圧倒的な人気を誇っていた同名ライトノベルのアニメ版。長井・岡田コンビの初タッグ作。高校生のドタバタ青春ラブコメもの。
    【8】長井龍雪:1976年生まれ。アニメーション監督・演出家。『ハチミツとクローバーII』で監督デビュー、『とある科学の超電磁砲』などを制作。

    石岡 それはさっき僕が言った、深夜アニメ発の想像力は最大限に拡張して『ここさけ』が限界、という話と同じことですよね。
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  • 宇野常寛『汎イメージ論 中間のものたちと秩序なきピースのゆくえ』第五回 吉本隆明とハイ・イメージのゆくえ(2)【金曜日配信】

    2018-08-24 07:00  
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    本誌編集長・宇野常寛による連載『汎イメージ論 中間のものたちと秩序なきピースのゆくえ』。吉本隆明は『共同幻想論』で、かの有名なテーゼ「共同幻想は自己幻想に逆立する」を提示しますが、高度化した情報技術は両者の結託と同一化を促します。逆立するはずの自己幻想と対幻想が巧妙に共同幻想に囚われてゆく、戦後日本の欺瞞的な社会構造を暴き出します(初出:『小説トリッパー』 2018 夏号 2018年 6/25 号 )
     ナチズムの記憶がまだ新しく、スターリニズムの脅威がまだ現実のものだった『共同幻想論』の執筆当時の吉本の戦略は、共同幻想からの自己幻想の自立を維持するために、対幻想に立脚することだった、とひとまずはまとめることができるだろう。
     しかし今日において共同幻想は自己幻想を飲み込み、埋没させるものではない。むしろ自己幻想の側が自ら共鳴し、他の自己幻想と同一化し、共同幻想と化す。私たちは自らそう欲望して、共同幻想に同一化する。これまでもそうであったのかもしれない。しかし情報技術の支援がそれをより簡易に、強力にしたことは明らかだ。私たちはソーシャルメディアのアカウントを使い分けることで――分人的アイデンティティのもとに――よりためらいなく、よりリスクなく共同幻想に同化するのだ。
     今日において情報環境的に自己幻想は共同幻想に対する「逆立」の度合いを低下させている、いや、むしろ同化の度合いを高めている。これに対する処方箋はふたつある。それはかつて吉本が主張したように、あくまで自己幻想の、そして対幻想の逆立を保持することでこれから自立すること。もうひとつは共同幻想の発生メカニズムの変化(インターネット的分散化)を逆手に取って、いや正当に用いて私たちがこれに埋没し、思考停止しづらい主体を獲得すること、言い換えればインターネット以降、自然発生的に定着した分人的なアイデンティティを、「信じたいものだけを見る」ための方便ではなく、多様性の確保のために用いることだ。
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  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第5回 さよならスマートフォン――身近で遠いタッチポイント、消極性デザインが本領を発揮するIoTとインタラクションデザイン(渡邊恵太・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-08-23 10:00  
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    消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。前回に引き続き工学者の渡邊恵太さんの寄稿です。次に観る作品を選ぶだけで時間がかかってしまうNetflixを、積極性を費やすことなく楽しむ研究や、スマホ画面の1ページ目の争奪戦を超えるAmazoDashボタンの狙いについて論じます。
    消極性デザインの連載、第5回目。今回も前回に引き続き明治大学の渡邊が担当します。 前回の串かつ盛り合わせからNintendo Switch、Netflixの話まで、一見よくわからない組み合わせから消極性デザインについて説明しました。串かつ盛り合わせが最新かはともかく、意外と最新の流行りのサービスやテクノロジーには消極性デザインが施されていたり、逆に消極性デザインを必要とする場面があることを知ってもらえたかと思います。
    今回も消極性デザインという切り口で、まずはNetflixの消極性デザイン的解決案から、さらに今回のタイトルでもある、みんな大好きスマートフォンの課題について考えていきたいと思います。そしてAmazon発のなんじゃこりゃIoTデバイス「AmazonDashボタン」が消極性デザインであるということを説明していきたいと思います。
    Netflixをいつ見るか?
    Netflixのような定額動画視聴サービスは、いつでも自由に観られる一方で、いつ観るかが問題になるということを前回ご紹介しました。さらに、膨大なコンテンツがあるために、どの映画を見るのかを自分で決めなければなりません。これは嬉しいことである一方、「今、この時間の気分に合う、まだ観たことのない何か」を選ぼうとすると、選ぶだけで時間かかってしまうこともあり、いつのまにか映画の約半分の時間、1時間も選ぶ行為にかかってしまうことがあります。Netflix社は「今夜Netflixで映画を見ませんか?」という形でレコメンデーションメールを流してくるわけですが、なかなか突然ですし、しかもメールという方法で来るので、そんなに簡単に予定調整ができるわけでもありません。
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  • 橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第5回 通商 逆襲の自由貿易~日欧EPA~

    2018-08-22 22:00  
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    本記事のタイトルの著者名に誤記があったため、修正し再配信いたしました。著者・読者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。【8月22日21時50分追記】現役官僚の橘宏樹さんが「官報」から政府の活動を読み取る連載、『GQーーGovernment Curation』。7月17日に閣議決定された「日欧EPA」の背景には、英国の離脱が決定したEUの信頼性回復や、トランプの保護主義への反撃など、日欧双方の複雑な目論見が垣間見えます。激化する通商戦争から国際関係のあり方について考えます。



    こんにちは。橘宏樹です。国家公務員をしております。このGovernment Curation(略してGQ)は、霞が関で働く国民のひとりとして、国家経営上本当は重要なはずなのに、マスメディアやネットでは埋もれがちな情報を「官報」から選んで取り上げていくという連載です。どんな省益も特定利益にも与さず、また玄人っぽくニッチな話を取り上げるわけでもなく、主権者である僕たちの間で一緒に考えたいことやその理由を、ピンポイントで指摘するという姿勢で書いて参ります。より詳しい連載のポリシーについては、第一回にしたためさせていただきました。
    【新連載】橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第1回「官報」から世の中を考えてみよう/EBPMについて
    2018年7月は、まず、西日本の集中豪雨が大変な被害をもたらしました。被災者の方々には心よりお見舞いを申し上げます。救援や復興支援のためにご尽力されている方々に深く敬意を表すとともに皆様の安全と1日も早い復旧、復興を心よりお祈り申し上げます。また、マスメディアの報道を振り返ってみますと文科省の汚職、「新アンガールズ」問題、といった、時代錯誤感すらあるスキャンダルも目に付きましたね。連日の猛暑も非常に厳しく、熱中症予防の呼びかけも頻繁になされていました。 永田町・霞が関界隈では、まず第196回通常国会が7月22日に閉会しました。会期中には話題のカジノ関連法案が可決されましたが、本稿第2回で取り上げた水道法の改正は、衆議院は通過したものの、参議院で継続審議となり、結局今国会でも成立は見送られました。今後は9月の自民党総裁選に向けた政局に注意が集まっていきます。その裏では、霞が関では各省からの概算要求(次年度予算の見積)を受けた財務省が予算編成を始めていきます。
    橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第2回 水道法改正/PFI法改正から考える
    さて、今回のGQのテーマは「通商」にしました。2018年7月17日閣議決定「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の署名」(いわゆる「日欧EPA」)を取り上げたいと思います。人口約6億人、世界GDPの約3割(21兆ドル)を占める先進国間による世界最大級の経済圏が新たに誕生することになります。
    この度の日欧EPAでは、輸出入の自由化のほかにも大きな取り決めが行われました。しかし、協定の内容もさることながら、協定が締結されたこと自体に、国際政治経済上の重要な意味があります。日欧EPAはこれまでも長年協議されてきていたのですが、ついこの間まで、やや交渉が停滞気味でした。しかし「とある事情」が生じたことから議論が加速して、昨年末には大枠合意、そしてこの7月に署名がなされ、2019年中には発効する見通しとなりました。この「とある事情」そのものが引き起こした、現在の国際政治経済情勢に対して、メッセージ発信を伴うリアクションを起こした、かなり着目に値するニュースだと思います。内憂の多い昨今の日本ですが、外患に対しても、活路を見出すべくシビアな駆け引きを展開していることにも目を向けるべく、今回のGQで取り上げることにしました。
    「スパゲッティ・ボール」化する通商世界
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  • チャンネル会員割引チケットあります! 【9/6(木)開催】佐々木紀彦×星野貴彦×柳瀬博一×宇野常寛「ビジネスジャーナリズムの使命」(Hikarie +PLANETS 渋谷セカンドステージvol.19)

    2018-08-22 12:00  
    「渋谷セカンドステージ」では、渋谷から新しい文化を発信することをテーマに、渋谷ヒカリエにて様々なトークショーを開催しています。次回の開催は9/6(木)、「ビジネス誌の未来」がテーマです!
    お得なPLANETSチャンネル会員割引や、本日8/22(水)までの早期割引もございます。 ☆参加お申込みはこちらから!☆https://peatix.com/event/420135/view
    【イベント概要】
    国民国家のローカルな政治より、グローバルな情報産業の経済がより人々の生活を直接的かつ大規模に変えうる時代、ビジネスジャーナリズムの社会的な役割もまた、変化しつつあります。そしてこうした変化に対応した新しいビジネスパーソン像が現れるいま、彼らに求められる経済誌とはどのようなものか。国内ビジネスジャーナリズムを牽引するプレイヤーを招き、議論します。
    ゲストは、アメリカにも進出したNewsPicksのC