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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第13回「男と男2」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.506 ☆
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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』 第13回「男と男2」【毎月末配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.1.31 vol.506
http://wakusei2nd.com
今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第13回です。何もかもが規格外の男”S”と付き合い始めた敏樹青年が巻き込まれた、女性編集者をめぐるトラブルとは?
【発売中!】井上敏樹 新作小説『月神』(朝日新聞出版)
▼内容紹介(Amazonより)
「仮面ライダーアギト」「仮面ライダー555」をはじめ、
平成ライダーシリーズの名作を送り出した脚本家による、
荒唐無稽な世界を多彩な文体で描き出す、異形のエンターテインメイント!
(Amazonでのご購入はこちらから!)
PLANETSチャンネル会員限定!入会すると視聴できる井上敏樹関連動画一覧です。
(動画1)井上敏樹先生、そして超光戦士シャンゼリオン/仮面ライダー王蛇こと萩野崇さんが出演!(2014年6月放送)
【前編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
【後編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
(動画2)井上敏樹先生を語るニコ生も、かつて行なわれています……!仮面ライダーカイザこと村上幸平さんも出演!(2014年2月放送)
【前編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
【後編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
(動画3)井上敏樹先生脚本の「仮面ライダーキバ」「衝撃ゴウライガン!!」など出演の俳優、山本匠馬さんが登場したニコ生です。(2015年7月放送)
俳優・山本匠馬さんの素顔に迫る! 「饒舌のキャストオフ・ヒーローズ vol.1」
(動画4)『月神』発売を記念し行われた、敏樹先生のアトリエでの料理ニコ生です!(2015年11月放送)
井上敏樹、その魂の料理を生中継! 小説『月神』刊行記念「帝王の食卓――美しき男たちと美食の夕べ」
■井上敏樹先生が表紙の題字を手がけた切通理作×宇野常寛『いま昭和仮面ライダーを問い直す』もAmazon Kindle Storeで好評発売中!(Amazonサイトへ飛びます)
これまでPLANETSチャンネルのメルマガで連載してきた、井上敏樹先生によるエッセイ連載『男と×××』の記事一覧はこちらから。(※メルマガ記事は、配信時点で未入会の方は単品課金でのご購入となります)
▼執筆者プロフィール
井上敏樹(いのうえ・としき)
1959年埼玉県生まれ。大学在学中の81年にテレビアニメの脚本家としてのキャリアをスタートさせる。その後、アニメや特撮で数々の作品を執筆。『鳥人戦隊ジェットマン』『超光戦士シャンゼリオン』などのほか、『仮面ライダーアギト』『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー555』『仮面ライダー響鬼』『仮面ライダーキバ』など、平成仮面ライダーシリーズで活躍。2014年には書き下ろし小説『海の底のピアノ』(朝日新聞出版)を発表。
男 と 男 2
井上敏樹
さて、一晩でクラブと焼肉を何度も往復し駐車違反の鎖をチェーンソーでぶった切るようなSだったが女性に関してはこれがなかなかのフェミニストだった。言い忘れたが、当時のSは四十代で独身。働き盛りで大手映画会社のプロジューサー、足は短かったが顔だって当時の人気歌手フリオイグレシアス似のイケメンだった。だがらモテないわけはないのだが、それが当人の意に反して独身だったのはひとえにSの人となりのせいであろう。Sは確かに豪快な男だったが同時にひどく女性的で粘着質な一面があった。人間とは不思議なもので、相反するふたつの性質を、往々にして合わせ持っているものなのだ。当時の私はSのおかげで国民的な人気アニメのシナリオに携わっていたが、Sの仕事ぶりには辟易した。シナリオの読み方が重箱の隅を突つくように細かいのだ。ト書きのテニオハから句読点まで目を光らせていちいち直しを要求する。小説じゃあるまいしシナリオのト書きなどどうでもいいではないかと思いながら、こっちはド新人なので従う以外ない。
そんなSの細かさ、執拗さは女性が絡むとまた一段とすごくなるのだ。たとえばあるアニメ雑誌の女編集者と知り合いになって酒を飲みに行った事があった。その時はもうひとり、脚本家のTと四人で楽しい夜を過ごしたのであるが、帰り道に私とTはふたりになって女編集者を評し始めた。
『なにを考えてるのか分からん女だ』とT。
『汚れたパンツを穿いてそうな女だ』と私。大体、男なんてものは、そんな風に好き勝手を言うものなのだ。
それからしばらくしてTと会う機会があったのだが、すると、Sにひどく怒られた、と言う。尋ねてみると例の女編集者絡みだった。それもひどくくだらない。TとSが飲んでいて彼女の話になり、Tは『あれは汚れたパンツを穿いているような女ですよ』と私の言葉を引用したのだが、それがSの怒りを買ったという。女性に対してなんだ、その言い方は、侮辱じゃないか。そう激昂されてTは『いや、それは井上の意見で』と言い逃れた、と言う。全く余計な事を、と私が困惑したのは嫌な予感がしたからだ。そしてその予感は的中し、すぐにSからの電話があった。『Tから聞いたんだが』電話口から流れるSの声がくぐもっている。『お前、彼女のパンツにウンコがついてると言ったそうだな』
違う。少し違う。
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國分功一郎×宇野常寛 特別対談「哲学の先生と未来の話をしよう」後編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.505 ☆
2016-01-29 13:00220pt※本日配信の本記事「國分功一郎×宇野常寛 特別対談「哲学の先生と未来の話をしよう」後編」において、一部誤解を招く箇所があったので修正を加えました。チャンネル会員の皆様には再度メールにて配信させていただきます。
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國分功一郎×宇野常寛 特別対談「哲学の先生と未来の話をしよう」後編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.1.29 vol.505
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毎週金曜は「宇野常寛の対話と講義録」と題して、本誌編集長・宇野常寛本人による対談、インタビュー、講義録をお届けしていきます。
今回は、現在イギリスに留学している哲学者・國分功一郎さんとの対談の後編です。日本の論壇のインナーサークルへ向けた議論の限界、2015年に活性化した右派・左派のイデオロギー闘争をどう評価し、いかに未来につながげていくかを考えます。
毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。
▼プロフィール
國分功一郎(こくぶん・こうちいろう)
1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。高崎経済大学経済学部准教授。専攻は哲学。著書に『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『統治新論』(共著、太田出版)、『来るべき民主主義──小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎新書)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波書店)など。現在、英国キングストン大学に留学中。
◎構成:鈴木靖子
前編はこちらから。
■ 内輪向けの極論から現実主義を取り戻す
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紙飛行機を、明後日の方向へ飛ばせ――AKB48 10周年に寄せて(竹中優介×宇野常寛)【月刊カルチャー時評 毎月第4水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.503 ☆
2016-01-27 07:00220ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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紙飛行機を、明後日の方向へ飛ばせ――AKB48 10周年に寄せて(竹中優介×宇野常寛)【月刊カルチャー時評 毎月第4水曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.1.27 vol.503
http://wakusei2nd.com
▲唇にBe My Baby Type D 初回限定盤
今朝は先月12月8日に10周年を迎えたAKB48をめぐる、竹中優介さんと宇野常寛の対談をお届けします。「国民的アイドル」の座を手にした48グループが、21世紀型のコンテンツとして持続的に発展していくための条件とは? 元あん誰Pの竹中さんと、メディア論的な観点も交えつつ語り合いました。(初出:「サイゾー」2016年1月号(サイゾー))
▼対談者プロフィール
竹中優介(たけなか・ゆうすけ)
1977年生まれ。TBSテレビプロデューサー。『アッコにおまかせ!』のほか、NOTTVで放映されていたAKBの番組『AKB48のあんた、誰?』などを担当。
▼作品紹介
『AKB48』
言わずと知れた国民的アイドルグループ。2005年12月8日にグループとして初公演を行いデビュー、この12月で10周年を迎えた。現在ではSKE48、NMB48、HKT48ほか姉妹グループを含めた総称としても使われる。
『月刊カルチャー時評』過去の配信記事一覧はこちらのリンクから。
■ AKB48はなぜ、ブレイク後も持続的に成長できたのか
竹中 テレビ業界では、4~5年くらい前から「AKBも今年がピークで、もうブームは終わる」と言われ続けてきました。そう言われながらも結果この12月で10周年を迎えたわけで、それはやっぱりすごかったね、という見方が今は主流になっている感じがあります。
宇野 もちろん一時期のような右肩上がりの空気があるとはお世辞にも言えないし、かつてのように社会にインパクトを与えることも少なくなっていると思うけど、これは停滞であると同時に、逆に安定しているともいえると思う。「来年一気に凋落する」なんて、誰ももう思ってないでしょう。
竹中 AKBが生み出した「アイドル」というものの新しい生き方のシステム自体が発明で、そこでつかんだ地盤がしっかりあるから、メディア露出の量が多少増減しても、そう簡単にブレない力を持った。それが10年間で培ったアイドルビジネスモデルの強さですよね。
宇野 それによって、いろんなものが変わりましたよね。まず、ライブアイドルという文化を完全に定着させたこと。それからいわゆるAKB商法以降、映像や音声というコンテンツ自体にはお金がついてこなくて、究極的にはコミュニケーションにしかお金はつかないというのがはっきりしたこと。アイドルでいえば握手会がそうだし、フェスなんかもそう。情報社会下のエンターテインメントはコミュニケーション消費以外にないんだということを、AKBが最も大きく可視化させて、そして最も大規模に展開していることは間違いない。いまだに映像や音声にお金払っている人もどんどん「この人の人生を応援したいから買おう」という意識になってきている。
竹中 「参加型」という点ですよね。昔はアイドル=メディアを通して見る遠い世界の芸能人だったのに、AKB以降、今宇野さんが言ったように「その人の人生を応援する」、つまりサポーターとして、人の人生に自分も参加しているという気持ちにさせるものになった。
宇野 昔でいうと「タニマチ」という存在があって、地位も名誉もお金も得て満たされた人間が最後にハマるエンターテインメントって、赤の他人の人生を無責任に応援することだったわけじゃないですか。アイドルも、そういうある種の人間の本質に根差したモデルだけど、AKBほどそれをシステム化したものはほかにない。「アイドル」という他人の人生をエンターテインメント化するものに対して参加できてしまう、つまり他人の人生を左右できるシステムを、ゲームの中に組み込んでしまった。それは決定的なことだったと思う。
AKBの存在のあり方というのは、今のライブアイドルブームの中心に10年間いるという以上の意味をおそらく持っていて、エンターテインメントや文化に関して日本人が持っていた前提のようなものをガラッと覆してしまったと思うんですよ。実際に僕がAKBについて語り始めた頃は「総選挙というのはこういうシステムで」とか「AKBとおニャン子クラブはどう違うのか」とか説明することから始める必要があった。でも今ではほとんどそういうこともなくなっていて、当たり前のことになっていった。それくらいこの10年間、特に後半の5年間で、AKBがエンタメの世界やカルチャーの世界を変えてしまった部分がある。
ただその一方で僕が危惧しているのは、2011〜12年頃はAKB現象について語ることがものすごく需要があったのが、今はそうではなくなってきていることなんですよね。当時のAKB現象はいろんなものを象徴していて、それを語ることによって世の中で起こっているいろんなことを説明できた。例えば、インターネットが普及すると逆にライブや“現場”が大事になってくるというのはその後あらゆるジャンルで起こってくることで、AKBは先駆けだった。
あるいは、ネットができると人々は自分が直接参加できるものじゃないと面白いと思わなくなってくるということや、作家が作り込んだ虚構よりも、実際に起こっている面白いことを検索するほうが早いというのもそう。今でこそそうした考え方は常識になっているけれど、日本においてはAKBがどんどん可視化させていったものであることは間違いない。今までの10年間は、AKBというものが成立しているだけで世の中にインパクトがあった。
竹中 でも今やそういうことをやってきたAKBがスタンダードだと認識されてしまっているから、同じことをAKBがやっていても、攻めの姿勢があるようには見えなくなってしまっている。
宇野 それは“勝った”がゆえの悩みなんですよね。いろんな障害をはねのけて彼女たちは勝った。それゆえに今批判力を失っている。でも僕は、自分で言っておいて変な話だけど、この10年はそれでよかった気もするんですよ。ただこの10年は勢いに任せて領土を拡大し続けてきたわけで、その後占領した場所の運営の仕方なんて考えてこなかった。それをサステナブルな仕組みに変えていくことが、次の10年では必要になってくる。
僕はそこで一番大事なのは、優れたOGを安定して出していくことだと思う。AKBはよく宝塚と比較されるけど、宝塚のブランドイメージを強化しているのは天海祐希や黒木瞳とか、古くは八千草薫のような卒業生の存在でしょう。
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落合陽一✕宇川直宏対談「コミュニケーションとしての映像――ハロウィンが映画産業の売上規模に達した時代に」(落合陽一『魔法使いの研究室』)【毎月第4火曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.502 ☆
2016-01-26 07:00220ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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落合陽一✕宇川直宏対談「コミュニケーションとしての映像――ハロウィンが映画産業の売上規模に達した時代に」(落合陽一『魔法使いの研究室』)【毎月第4火曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.1.26 vol.502
http://wakusei2nd.com
今朝のメルマガは、メディアアーティスト・落合陽一さんの連載「魔法使いの研究室」です。昨年11月27日にナレッジキャピタル(http://kc-i.jp/about/)主催のINTERNATIONALSTUDENTCREATIVEAWARD 2015(http://kc-i.jp/award/isca/)で行われた、宇川直宏さんと落合陽一さんの対談の模様をお届けします。映像というメディアの耐用年数が尽きようとしている今、新たな表現の可能性を、映像表現の最先端にいる2人が徹底的に語り合いました。
【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)
☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
(紙)http://goo.gl/dPFJ2B/(電子)http://goo.gl/7Yg0kH
取り扱い書店リストはこちらから。http://wakusei2nd.com/series/2707#list
▼プロフィール
宇川直宏(うかわ なおひろ)
1968年香川県生まれ。映像作家 / グラフィックデザイナー / VJ / 文筆家 / 京都造形芸術大学教授 / そして「現在美術家」……幅広く極めて多岐に渡る活動を行う全方位的アーティスト。既成のファインアートと大衆文化の枠組みを抹消し、現在の日本にあって最も自由な表現活動を行っている。2010年3月に突如個人で立ち上げたライブストリーミングスタジオ兼チャンネル「DOMMUNE」は、開局と同時に記録的なビューアー数をたたき出し、国内外で話題を呼び続ける。『文化庁メディア芸術祭』審査委員(2013~2015年)。『アルスエレクトロニカ』サウンドアート部門審査委員(2015年)。また2015年12月。高松市が主催する『高松メディアアート祭』ではゼネラルディレクター、キュレーター、審査委員長の三役を務め、その独自の審美眼に基づいた概念構築がシーンを震撼させた。DOMMUNE http://www.dommune.com
落合陽一(おちあい・よういち)
1987年東京生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年より筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。
音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」が経済産業省「Innovative Technologies賞」受賞,その他国内外で受賞多数。
◎構成:稲葉ほたて
■コミュニケーションとしての映像
宇川直宏(以下、宇川):落合さんがやられている研究は、映像における物語の抑圧やカタルシスからも解放された「映像の覚醒」をテーマにしている側面があると思います。
落合陽一(以下、落合):映像を暗い部屋で見る行為は、いわば俺たちの身体性を殺して、画面に集中させる装置によって成立しているんですね。それに、もう俺たちは慣れなくなりだしている気がするんですよ。
宇川:なるほどね。劇場に着席して、不特定多数と映像を共有する概念自体が前世紀のものだと言い切るわけだ(笑)。
落合:ええ、極めて前世紀的だと思います。だって、今後はコミュニケーション手段としての映像や、より新しいコンピューターグラフィックスの表現がどんどん生まれてくるわけで、全員で同じものを見るスタイルそのものが古いですよね。
宇川:探求している世界は、スペクタクルの拡張ですかね。今日、僕と落合くんは先ほどまで軽くご飯を食べながら打ち合わせをしていたんです。そのときに、映画史の始まりは、はたしてエジソンがキネトスコープを発表したところにあるのか?という話をしていました。
つまり、ファンタスマゴリアまで遡る必要はないが、ソーマトロープやゾーエトロープは蔑ろにしてはいけないだろうと(笑)。まずエジソンは映写機を発明したのだけど、それは穴を覗き込んで映像を体験するピープショーだった。人類の最初の映画体験はそういうものだったのだけど、リュミエール兄弟が1894年にキネトスコープを改良してシネマトグラフを作り、映像をスクリーンに投影して初めて、現在の映像共有の原点が生まれたんですね。
落合:だって、エジソンのやったことは、要はゲーセンのスペースインベーダーですもん。彼は喫茶店の端っこにキネトスコープを置いて、お金を入れると見られるようにしたんです。
でも、シネマトグラフは違う。あそこで、みんなで共有することがお金に変わったんですよ。映画館という暗闇で全員が同じものを共有できるのが映画の価値で、ヒトラーもそれがすごい優秀だと考えたわけです。つまり、これを使えば我々は全員に単一のプロパガンダを受け取らせられる、と。
宇川:まさにレニ・リーフェンシュタールの『意思の勝利』だよね。
落合:ベルリン・オリンピックの映像にしても、普通にすごいじゃないですか。
20世紀の間、映画はそういう誰かの意思を伝えるメディアとして、ずっと流行ってきたんです。だけど、現代の我々はコミュニケーションのスタイルとしては映像の発想を超えて行くんじゃないか、というのが俺の見立てです。宇川さんのドミューンなんかも、まさにそうですよね。
宇川:ありがとう。ドミューンはスタジオと、ビューワーの視聴覚環境と、タイムラインの3つのリアルタイムな現場があって、体感軸が立体的に遍在していますからね。時を経て、テレビの時代が到来したときに、映画畑の方々は複雑な想いに駆られました。小津安二郎が「テレビを見ればバカになる」と発言したり、大島渚が「映像は夢見る時代から覚醒の時代を迎えた」と発言したりしていました。彼は暗闇から解放されて、日の光の下に晒された映像をそう表した訳です。そう考えれば、現在は「二度目の覚醒を迎えた時代」で、QuickTime発明以降、個人がYouTubeでアーカイヴ共有、ライヴストリーミングでリアルタイム共有を果たせるようになり、お茶の間から解放された映像が、更にパーソナルな領域に入り込んできている印象がありますね。そして今日はもう「三度目の覚醒」について語り合いたいと考えています。
落合:人間とテクノロジーが混ざり合ったとき、我々のコミュニケーションは一方向性じゃなくなってきたわけですよ。押井監督は「全ての映画はアニメになる」と言っていますが、その指摘も正しいですよね。実際、キャメロンの『アバター』みたいな作品がウケてるわけですから。
宇川:でも、『アバター』も劇場という空間に投影されていて、結局はシネマトグラフに依存していますね。しかし、オンデマンドで『アバター』を観るという行為についてどう考えるか。また、それ以前にYouTubeという動画共有のサービスが生まれたことによって、クラウド時代には映像におけるレアという価値観が崩壊しましたよね。それまでのレアという価値観は、貴重な過去の映像を個人がフィルムやホームビデオやLDやDVDで所有することで、そのこと自体が自己定義と密接な関係にあることを意味しました。大袈裟に言えばアイデンティティーの一部であった訳ですよ。しかし、共有の時代に完全にパラダイムシフトして映像を「所有している」ことの価値がそれほど重要な意味を持たなくなってしまった。例えば放送禁止となり永久欠番となった『ウルトラセブン』の第12話や、『怪奇大作戦』の第24話を所有していなくとも、誰かが勝手にYouTubeで共有してくれている、ということです(笑)。つまり宮崎勤の存在意義が現世にはもう無い(笑)。
落合:それは、まさにコミュニケーションとしての映像ですよね。
宇川:まさに僕らがやっていることです。そこで、落合さんは何を研究され、映像をどう進化させようとしているのかを今日は聞きたいわけですよ。
■「ピクセルがピクシーになる」
落合:じゃあスライドを切り替えてくれますか?
ワールドテクノロジーアワードという賞の、受賞スピーチで使ったプレゼンです。まず、俺は「ピクセルがピクシーになる」と言ってるんです。つまり、画面上の光の粒を超えて、マルチメディアを超えて、いかに現実にピクシーを実装していくか――俺の中では、コンピュータを使って物を浮かせたり、操ったりするのは、その発想の延長線上にあるんです。
宇川:三次元制御で、音響浮揚させる映像は、YouTubeで見て気狂いしそうになりましたよ。
https://www.youtube.com/watch?v=odJxJRAxdFU
落合:結局、スマホにオーディオとビジュアルコミュニケーションが詰まってしまったわけじゃないですか。そうなると、スクリーンを見ながら、スマホやタブレットを使って、コミュニケーションをするのが当たり前になる。学術論文としては、マーク・ワイザーという人が1991年にそういう話を書いてるんですね。コミュニケーションの技術革新はこの24年で随分と成熟してしまったわけで、研究者としてはさらに先の時代、2050年くらいを見ていく必要があるんです。
そのときに、なぜマルチメディアに問題があるのかですね。例えば、映像ってHDの映像で60Hzの時間スピードだし、オーディオは22.1Hzの時間周波数なんですよ。でも、これって人間の可聴域が22000Hz程度でしかないだとかの、いわば感覚器官に囚われた制約から来ているものです。
宇川:なるほどね、これ以上高画質,高フレームレートの映像を鑑賞しても、もはや体感できないと。
落合:耳にしても、やはり一定以上の高周波は聞こえないですからね。
でも、そうやって感覚器官による制約をかけることで、俺たちは可能性を潰しているんじゃないかと思うんです。そこで俺は、100万倍高いワットオーダーで光を出したり、もっと高解像度で出力したり、2Dではなく3Dで画面合成をしたりして、どうなるかを考えているんです。
宇川:でも、それって実験の段階では、自分の感覚器官の体感値以上のレゾリューションを確認しないといけなくならない?
落合:そうなんですが、実はその体感値以上の表現は別にそのまま感覚器に入ってくるわけじゃないんです。例えば、強力なエネルギーのレーザーを使えば、空中に絵が描けたりするんですよ。映像なんてせいぜいミリ秒単位ですけど、こっちは30フェムトセカンド秒で描く(笑)。
宇川:え!? マジで!?1000兆分の1秒の世界(笑)
落合:とんでもない解像度ですよ。そのくらいの制御になると、初めて空中にプラズマ映像みたいなものが綺麗に描けてくるんです。これなんて空気がイオン化していて、触るとインタラクションがあります。物を浮かべていた波も40KHzだから人間の耳に聞こえる範囲を超えている。
こういう高周波の波で、いかに画面の外で画面みたいなことが出来るかを本気で考えているんですね。
宇川:なるほどね。この空間的奥行きの中にスクリーンがある発想なんですね。
落合:もっと言ってしまうと、空間そのものに映像を代替する表現をいかに作るかですね。
そうなったとき、我々は日常体験として映像みたいなファンタジーを作って、世界に没入できるようになるし、日常から我々の主観を切り離す必要がなくなるんじゃないかと思います。それはつまり、コミュニケーションスタイルの中に新たな総合対話性の関係を持ち込むことじゃないかと思いますね。
85年のパラダイムはバーチャルリアリティ(VR)で、91年のパラダイムはオーグメントリアリティ(AR)だ思うんです。でも、それって映像の中では色々なものがいじれたけど、リアルをいじれなかった時代の話でしかないんですね。もしリアルをそのままいじれたら、バーチャルとリアルの二分は必要なくなると思うんです。
宇川:なるほどね。実空間が拡張されてリアリティとして体験できれば、それはバーチャルでもなんでもないですからね。つまり、もはや「映像」なんて言われなくなるでしょうね、だから落合さんは「映像の世紀は終わった」というアンチテーゼを投げかけている。
落合:まあ、別に写実画の全盛期が終わっても、写実画は存在したわけです。ただ、ジャンルとしてはまさに映像も登場してしまったわけじゃないですか。そういう意味で、従来通りの「文化としての映像」と、YouTubeのような「コミュニケーションツールとしての映像」がそろそろ分離し始める気がしますね。
宇川:要は、生活環境の中へフォログラフィックな投影システムが組み込まれていくわけですかね。インターネット使い放題のマンションを間借りする感覚のように、日常時間軸の中でオーグメントリアリティ使い放題(笑)のような現実にシフトしていき、それが常態になっていく……。
落合:そうすると、物質と映像の区別はやがてつかなくなりますよね。それが人間のコミュニケーションや生活を変えていく中で、新しい文法の表現が生まれるんじゃないかという気がします。俺はこういうことをずっとやっていて、専門的にはフォログラフィーというんですね。三次元的に光や音や色んなものを合成するジャンルになります。
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月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」1月18日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.501 ☆
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月曜ナビゲーター・宇野常寛J-WAVE「THE HANGOUT」1月18日放送書き起こし!
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2016.1.25 vol.501
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大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!
▲先週の放送は、こちらからお聴きいただけます!
■オープニングトーク
宇野 時刻は午後11時30分をまわりました。みなさんこんばんは、評論家の宇野常寛です。今夜はまず、ある国民的な5人グループについてお話ししたいと思います。僕は文化の批評家、ポップカルチャー評論家なので、職業柄この5人グループについて聞かれることが多いんです。そういうときはいつも「このグループは戦後日本の“イイ男“の定義を変えた」と答えています。冗談ではなく、僕はこのグループをすごく偉大な存在だと考えています。
テレビが普及する前の、映画がメディアの主役だった時代における「イイ男」とは、たとえば加山雄三や石原裕次郎といった「マッチョ」だったんですね。強くたくましいことが「イイ男」の王道だったんです。
それが、このグループの登場によって本格的に変わった。その前から兆候はあったんだろうけど、このグループが出てくることでガラッと変化したんです。男の「カッコよさ」とは、単にマッチョなだけじゃなくて、ちょっと面白かったりひょうきんだったりしてもいい。要は一通りではないという風潮になった。赤だけじゃなく青があってもいいし、黄色も緑もあってもいい。そういう風に変えたのがこのグループだと思うんですよね。
だから、このグループがいてくれたおかげで、結果的に楽になった男子ってすごく多いと思うんです。そういう意味でも、本当に偉大な存在。日本のセクシャリティを一歩前に進めた存在と言ってもいいかもしれない。
もしかすると1月と2月は、このグループにとってターニングポイントになるかもしれないですね。でも、このグループがこの先どうなっていくかは日本の男の子文化に、ものすごく大きな影響を与えると思うので、その意味において、僕はいい形で発展していってほしいと心の底から願っています。
ということで、彼らへのエールを込めて宇野常寛の「THE HANGOUT」本日の1曲目はこれを選びました。あの国民的5人グループの代表曲です。
それでは聞いてください、ささきいさおで『進め!ゴレンジャー』。
〜♪
宇野 はい、お届けしましたのは、ささきいさおで『進め!ゴレンジャー』でした。
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國分功一郎×宇野常寛 特別対談「哲学の先生と未来の話をしよう」前編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.500 ☆
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國分功一郎×宇野常寛 特別対談「哲学の先生と未来の話をしよう」前編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.1.22 vol.500
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毎週金曜は「宇野常寛の対話と講義録」と題して、本誌編集長・宇野常寛本人による対談、インタビュー、講義録をお届けしていきます。
今回は、現在イギリスに留学している哲学者・國分功一郎さんとの対談です。右派・左派陣営共に旧来的な勢力が復活しつつある世界的な趨勢の中で、イギリスから見える日本の状況、さらには政治的なコミットの可能性について議論しました。
毎週金曜配信中! 「週刊宇野常寛」過去の配信記事一覧はこちらのリンクから。
▼プロフィール
國分功一郎(こくぶん・こうちいろう)
1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。高崎経済大学経済学部准教授。専攻は哲学。著書に『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『統治新論』(共著、太田出版)、『来るべき民主主義──小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎新書)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波書店)など。現在、英国キングストン大学に留学中。
◎構成:鈴木靖子
宇野 ロンドンから哲学者の國分功一郎先生にスカイプでご参加いただいての特別対談、「哲学の先生と未来の話をしよう」です。國分さん、ロンドンはどうですか?
國分 ゆっくりできて、充実した時間を過ごしています。2015年、日本はいろいろ大変だったみたいだけど。
宇野 たしかに、2015年の日本はネガティブな話題が多かったですが……。國分さんからは事前に「イギリスの政治の話がしたい」というリクエストをいただいているのですが、それはあまり日本の話題はしたくない、ということだと思っているのですが。
國分 いや、今年イギリスで起きたことは、今の日本の問題と強く関係していると思っていて、そのために少しイギリスの話をしたいと思ったんだよね。イギリスは2015 年5月に総選挙があったんですよ。俺は4月にロンドンに来たから、ラッキーなことに1ヶ月間の選挙戦も選挙の投開票も見ることができた。どういう選挙だったかと言うと、野党の労働党が大負けしたんですよね。
労働党というのは皆さんご存じのトニー・ブレアが党首を務めていた党です。トニー・ブレアは2003年、アメリカのブッシュと手を組み、イラクへの軍事介入を始めた首相ですね。今回の選挙の時の労働党党首はエド・ミリバンドという人でしたけど、やはり労働党はブレア的なものから脱却できていなかった。そしてそれが完全にダメ出しされたわけです。ブレア的なものへの反省を踏まえたビジョンを示せなかったわけですね(スコットランド国民党という地域政党の躍進も労働党大敗と大きく関係しているんですが、今日はその話はやめておきます)。
面白かったのはその後で、労働党はもうしばらくダメだと思われたんだけど、選挙後の党首選に66歳の「ハード・レフト」、ジェレミー・コービンという人が出てきたんです。最初はイロモノ扱いだったんですよ。「あんな古い左翼、どうせ電波だろ」ってみんな思ってた。ところが選挙戦が進むにつれて、どんどん人気が高まって、結局、半数以上の票を獲得して党首の座についた。コービンを支持したのは、主に若者だったと言われていて、彼らが党員になったので、労働党は党員の数も大幅に増えた。野党の党首に過ぎないというのに、今でも新聞やテレビでコービンについての報道は絶えません。もちろん批判も多いんだけど、それだけ世間の注目を集めているということです。
ブレア的なものというのは、左派の労働党であろうとも、必要があればアメリカと一緒に戦争もするという「現実主義」ですね(もちろん、軍事介入の口実であった大量破壊兵器はなかったんで、実際には“現実”主義でも何でもなかったわけですが。イギリスでは、2016年の夏に詳細な「イラク戦争報告書」が公表されるということで話題になっています。ブレアの責任を問うことになる公的な文章で、7年の歳月と1000万ポンド(約18億円)の費用をかけて作成した、200万語にも及ぶ長大な報告書です)。それが徹底的に批判された後で、「ハード・レフト」、古いタイプの左翼的なものがものすごい人気を集めるようになった。この状況は日本の状況と非常によく似ていると思うんですよ。日本も共産党の人気が明らかに高まっている。政権が極右化しているからなんですが、世論では左翼的なものへのシンパシーが強くなっている。
宇野 戦後的な保守と革新が、びっくりするくらい息を吹きかえしていますね。
國分 完全に復活しているわけでしょ。左翼的なものへの共感の高まりについて指摘しないといけないのは、この力の舵取りは非常に難しいだろうということです。その際にジェレミー・コービンが参考になるのは、ハード・レフトとしての主張を掲げつつも、党内運営とか世論への訴えかけをそれなりにうまくやっているんですよ(シリアのイスラム国への爆撃の賛否を巡っては党内から大量の造反者がでるとか、核兵器に対する考え方の違いから年明けに早速シャドウ・キャビネットを改造するなど苦労もしているんですが、あれだけ強い主張をしながら世間の注目も集めつつそれなりのまとまりを維持している。年末の補欠選挙でも労働党候補者が圧勝した。たいしたものだと思います)。日本の場合、これは印象論ですけど、主張は強くなる一方、うまく落としどころを見つけて勢力をまとめるという動きがうまく作れていない。今、問題になっている選挙協力が典型でしょう。
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「キッズアニメ」と「非キッズアニメ」の落差(『石岡良治の現代アニメ史講義』キッズアニメーー「意味を試す」〈1〉)【毎月第3水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.498 ☆
2016-01-20 07:00220ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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「キッズアニメ」と「非キッズアニメ」の落差『石岡良治の現代アニメ史講義』キッズアニメーー「意味を試す」〈1〉
【毎月第3水曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.1.20 vol.498
http://wakusei2nd.com
今朝のメルマガでは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回からは「キッズアニメ」を題材に、ポップカルチャーが直面する「性と暴力」の問題や、「玩具」という外部性とアニメ表現の関係性について考察していきます。
▼プロフィール
石岡良治(いしおか・よしはる)
1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。跡見学園女子大学、大妻女子大学、神奈川大学、鶴見大学、明治学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて毎月のレギュラー番組「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。
前回:『Free!』『たまこまーけっと』『ユーフォニアム』に見る京アニ表現の次なる可能性 (『石岡良治の現代アニメ史講義』京都アニメーション:境界の両岸(2))
■「意味を試す」現代のキッズアニメ
みなさん、こんにちは。石岡良治です。今回取り上げるテーマは「キッズアニメ」です。
「キッズアニメ」では「意味」が試されているというのが私の考えです。踏み込んで言えば、例えば『不思議の国のアリス』が担っている言葉遊びのようなナンセンスがキッズアニメでは展開されていて、そこが魅力になっているということです。
今年(2015年)の8月22日放送分の『プリパラ』ED(ed5、曲は「胸キュンLove Song」)で、「そふぃ」画像が差し替えになった件を思い出してください。この一件はキッズアニメを考える上で重要だと私は考えています。ニコニコ動画などで『プリパラ』のEDになり、実写の女性がダンスし始めると、視聴者が「投了」とコメントし解散するという様式美がかつてはありました。これは「二次元」と「三次元」を過剰に区別するものなので、個人的にはあまり好きではないのですが。ところが、今の『プリパラ』のED(※2016年1月から再び実写が混ざるEDになりました)は、女性キャラのプライベートフォトを紹介するていのもので、水着や部屋着などのセクシーショット風のものが含まれていて、一部カットは微エロとみることができるものです。「エロ」表現は「意味性」においても「目的性」においても分かりやすすぎるものです。そふぃの「キャミソールでメイク」姿から「オーバーオールと大漁旗」への変更( http://togetter.com/li/863867 )は、BPOに来た「女児向けにそぐわない」との意見への配慮とされていますが、これは志摩市の萌えキャラ問題(注1)と比べると、良い攻めの姿勢と言えます。個人的な意見では「キャミソールでメイク」でも「オーバーオールに大漁旗」でもどちらでもいいと思うのですが、この差し替えでイラストが一枚増えたという意味ではよい「ネタ」になったと考えています。
簡単に言うと「キッズアニメ」がいつも直面する表現的テーマとして「性と暴力」イメージがあるということです。映画やテレビ、その他の映像のモチーフとして「性」や「暴力」が画面に映し出されると私たちはハッと目が覚めますよね。またお茶の間で「性」や「暴力」を目にすると家族がソワソワしだします。今回キッズアニメについて考えてみたいのは、性も暴力も「意味」に満ちているからこそ、そこを明示的に扱うことが少ないキッズアニメでは、「シュール」だったり「カオス」だったりするようなモチーフが興味深い仕方で繰り広げられるということについてです。
(注1)志摩市の萌えキャラ問題:主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開催される三重県志摩市が海女の萌えキャラクターを公認したことに対して「性を強調する描き方だ」と抗議が相次ぎ、騒動を受けて志摩市は「正式に非公認キャラクターとして継続」するという措置を取った。
(1)キッズアニメの領域
まずは概論から語りたいと思います。キッズアニメの領野について深夜アニメとの関係を考えようと考えています。日本の「アニメ」はかつて「テレビまんが」と呼ばれていました。例えば『SHIROBAKO』の劇中に出てくる「アンデスチャッキー」(モデルは1973年の『山ねずみロッキーチャック』でしょう)のようなものが典型的な「テレビまんが」といえます。
ちなみにアニメ『SHIROBAKO』で「アンデスチャッキー」の主題歌アニメーションが出てくる場面では、1番でチャッキーの隣にいるヒロインが2番では馬のキャラと寄り添っていて、地味にNTR(寝取られ)っぽい雰囲気が成立しているので必見です。
子供の世界(3〜6歳頃)は「怖さ」と結びついているところがあります。これは重要なことで「怖さ」は記憶の深層をついてきます。世代ごとに「怖さ」の領域は異なりますが、私について言うと、この年代の頃はピエロが怖かったですね。理由は簡単で、デパートの屋上にミニ遊園地があった頃、お金を入れるとピエロ人形が踊るのを見ることができるマシンがあって、薄気味悪かった記憶があります。今は別に怖くないですが、例えばピクサーの『インサイド・ヘッド』でピエロキャラが深層の恐怖を現している場面では個人的な理由で感情移入していました。
■ 70年代キッズアニメの領域から離脱して生まれた「深夜アニメ」
先ほど例に挙げた「アンデスチャッキー」は1970年代アニメをモチーフにしているわけですが、70年代のキッズアニメは今振り返るとやたらと暗い展開のものが目立ちます。『みなしごハッチ』などの寂しげなテイストですね。この頃の「テレビまんが」は、「まんが」という言葉が示す通り、絵本などを含めた広義のコミック文化との関係を含むと同時に「子どもがメインターゲット」という含意がありました。
そんなキッズアニメから離脱していったのが今の「アニメ」と言えます。1974年の『宇宙戦艦ヤマト』以降に成立したアニメファンコミュニティには「ティーンズ=中学生になってもアニメを視聴し続ける」という意思がありました。現在の深夜アニメがエロ要素を含むものだらけであるということの一つの原点として、中高生がエロ好きということが起因しています。アニメを2次創作的に性や暴力を含む仕方で読み替えをしていったものが、今度は一次創作として大量に生み出されたということです。
ティーンズ以降の世代がアニメを観続けるときに、二つの可能性が生まれました。ひとつは主として団塊世代以降に生じたことですが、マンガ文化が読者とともに題材や年齢の幅を広げていったことです。漫画で言うと『ビッグコミック』がその象徴です。『ゴルゴ13』の読者は老人になった今でもマンガを読みますよね。他方では、子ども向け作品であっても「読み」の対象にすることがあります。これは子ども向けの作品でもずっとついていくという考え方です。この時代の文化の香りを今も残しているのは、『ルパン3世』ぐらいでしょうか。
もうひとつは、女児向けアニメでしばしば話題になる「大きなお友達」です。昔のアニメでいうなら『ミンキーモモ』あたりが、大きなお友達向けの需要がかなり大きかったアニメの典型です。これははっきり言って絵柄の問題です。80年代の女児向けアニメにおいて、例えば『クリィミーマミ』は、定番扱いになったこともあり、デザインなどのスタイルを受け継ぐアニメが存在しています。
大きなお友達感のあるアニメは、たとえば1990年代なら『カードキャプターさくら』ですが、80年代では『ミンキーモモ』でしょう。私は小学生の頃から『なかよし』や『りぼん』を読んでいて、少女マンガ育ちという面をもちますが、自意識過剰だったこともあり、『ミンキーモモ』の絵柄を「男性オタク向け」とみなして敬遠していました。むしろ『クリィミーマミ』の方を好んでいました。今振り返ると痛い限りですが、少なくとも、現在古典的な定番としての位置を得た『クリィミーマミ』と、男性オタクファンが多数ついていた『ミンキーモモ』の絵柄の差異は、割と重要だったと思います。もちろんどちらにも「大きなお友達」ファンがいるわけですが、例えば『魔法少女リリカルなのは』のような、もっぱら男性向けの「魔法少女もの」が、演出だけでなく絵柄でも女児アニメとは異なるものになっていることを、こうしたあたりから考えることができるかもしれません。
さて、アニメーション表現は一般に「寓話」を得意としています。古典的な動物寓話だけでなく、児童文学や絵本の世界とも密接に結びついたところがあり、だからこそディズニーやジブリの作風は、キッズアニメのイメージとなっているのでしょう。しかし今回語るキッズアニメは、日曜日の朝に放送しているアニメや夕方に放送されているアニメ、または一部少年誌原作作品です。週刊少年ジャンプ原作の『ワールドトリガー』は、チーム制FPSを題材とした戦略的マンガといった趣きをもちますが、ニチアサ枠で低予算のキッズアニメに半ば無理やりなってしまっている印象があり、こういうのもキッズアニメに入るでしょう。
現在でも「実写」「アニメ」のイメージが分岐するさいに「キッズ層」が意識されていることを踏まえると、「キッズアニメ」は特別な考察を要する領域であると言えます。ただし、「キッズアニメ」と付き合っていくのは大変だと思います。とにかく話数が多いからです。たとえば今回、私が事前に『マイメロ』を全話追えず、シーズン1しかフォローできなかったように。
以下、キッズアニメを考えていきますが、その際には「キッズアニメ」と「非キッズアニメ」の落差を考察していくと面白いのではないかと考えています。例えば、私は『ギャラクシーエンジェル』や『ミルキィホームズ』といった、シュールな作風の非キッズ系作品にも、ある種のキッズアニメ性を感じています。この点については、のちほど森脇真琴監督作品を扱うときに語りたいと思います。
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始まりは一人の熱狂から――メディア運営の逆境に強いのはマーケット志向よりも「自分志向」(粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』第2回)【毎月第3火曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.497 ☆
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始まりは一人の熱狂から――メディア運営の逆境に強いのはマーケット志向よりも「自分志向」(粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』第2回)【毎月第3火曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.1.19 vol.497
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本日は、アイランド株式会社代表の粟飯原理咲さんによる連載『ライフスタイルメディアのつくりかた』の第2回をお届けします。
ネットの主婦層の熱烈な支持を集め、大きな成功を収めた「レシピブログ」。そのルーツには、粟飯原さんがOL時代に運営していた大人気メルマガがありました。いくつもの媒体を立ち上げた経験を元に、粟飯原流のメディア運営の秘訣について語ります。
▼プロフィール
粟飯原理咲(あいはら・りさ)
アイランド株式会社代表取締役。国立筑波大学卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社先端ビジネス開発センタ勤務、株式会社リクルート次世代事業開発室・事業統括マネジメント室勤務、総合情報サイト「All About」マーケティングプランナー職を経て、2003年7月より現職。同社にて「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」などの人気サイトや、キッチン付きイベントスペース「外苑前アイランドスタジオ」などを運営する。美味しいものに目がない食いしん坊&行くとついつい長居してしまう本屋好き。
本メルマガで連載中の『ライフスタイルメディアのつくりかた』配信記事一覧はこちらのリンクから。
前回:【新連載】粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』第1回「ライフスタイルがコンテンツになる」
この連載のタイトルは、「ライフスタイルメディアのつくりかた」というものですが、そこには私なりの想いがあります。メディアプロデューサーとして、前回お話ししたようなライフスタイルコンテンツを扱うメディアを運営する上で、失敗も多く繰り返したなかで、なんとか見つけてきたいろいろな知識や経験を伝えたいというものです。
なぜなら、いまの時代、誰もが「メディアプロデューサー」になる可能性があるからです。「レシピブログ」や「朝時間.jp」などのポータルサイトを手掛けるのもメディアの運営ですが、個人でブログやインスタグラムなどで伝えたい想いをもって情報を発信することだって、やはりメディアの運営だと思います。そして、ライフスタイルという領域では、この後者のメディアは、誰もがいつでも、自分の暮らしぶりを発信することによって始められるものです。
今回は、そんなライフスタイルメディアの「はじめかた」をお話ししてみたいと思います。その第一歩は、やはり、「メディアのテーマ・領域」をどう設定していくかにかかっているといえるでしょう。
ここからの話はポータルサイトのプロデューサー視点での事例になりますが、そこで必要になるものは個人メディアでも変わりません。というのも、一番最初に必要になるのは、ただ「熱量」にあると思うからです。
たとえ企業が運営するプラットフォーム型のメディアであっても、やはり「始まりはたった一人の熱狂から」――そう私は信じています。もちろん、それだけではビジネスとして成立しない部分もあるのですが、まずはそこから全てが始まる、と。
■ 自分のなかの「熱量」が、テーマの発見になる
ここからは前回に引き続き、レシピブログの事例から話してみたいと思います。今回の場合、その最初に熱狂した一人は、実はこの文章を書いている「私」でした。
――遡ること12年前の2004年、インターネットはブログ元年と呼ばれていました。
欧米で盛り上がっていたブログが日本に入ってきたのは、それより少し前のこと。すでにアルファブロガーと呼ばれていた初期の有名ブロガーの方々が、精力的にネット上でITの話題や政治、事件について自分の意見を発信していました。
私のほうはといえば当時、「おとりよせネット」というウェブサービスで起業した翌年という時期。まずは自分でも事業を行うサイトプロデューサーの視点で、その新しい動きにワクワクしていました。
ところが、FC2やエキサイト、あるいは前年に開始したばかりのAmebaのブログをよくよく読んでみると、少々事情が違うのです。当時話題になっていたアルファブロガーのような、ITビジネス系や論壇系とは少し違う人々が、自分たちの情報を発信しはじめていたのです。
特に印象的だったのは、女性ブロガーの人たちが、自分たちの目線から情報発信を始めていたことでした。たとえば、まだ慶応大学の学生だった頃の“はあちゅう”さんのブログは、始まってすぐに楽しみに読むようになりました。彼女のブログは当時から話題を呼んでいましたが、当時の彼女の意見やライフスタイルが学生らしい言葉でつづられていて、それがとても新鮮だったのです。
当時はどんどんいろんなジャンルのブログが生まれていて、それを私は「なんて面白いんだろう!」とミーハーに読んでいたのですが、とりわけ楽しみに読むようになったのが「料理ブログ」でした。
知らない誰かが家でどんな料理と暮らしをしているのかなんて、普通はなかなか知ることができない。ところが、それをたくさんの女性たちがこぞってブログに書き始めている。その事実に、当時はまずワクワクしました。もともと、家に何百冊もレシピ本があるくらいに料理本が好きだったこともあり、一読者としてとりこになってしまったのです。
また、前回にも書いたように当時から料理ブログは、レシピと一緒に暮らしが綴られたライフスタイル発信型のものでした。それもまた料理本をエッセイ集のように日々読んでいた私にとっては、最初からしっくりとくるものでした。
そうして当時、夜な夜なパソコンに向かって、新しい料理ブログを見つけては「わー、このブログ、素敵!」などと興奮しながら、自分のパソコンのブックマークに次々に登録していく日々を送っていたのです。そして、それぞれのブログのコメント欄を見ては、自分と同じ立場の読者であろう人々が、同じ熱量を持って、お料理ブログのファンになっていることを実感していました。
■ ひとりひとり、共感する仲間を増やす
ところが、どんどんブックマークを登録するにつれて、どうにも不便だなと感じることが増えていきました。好きなブログが更新されているかは、実際にURLに飛んでいって確かめるしかない。これは結構不便です。また、いろんなブログポータルを私は巡回していましたが、いちいち新しい料理ブログを新着から探す作業も、やはり一定以上の数が増えてしまうと、なかなか大変です。
「もし更新された料理ブログだけが簡単にチェックできるようになれば、きっと楽になるんじゃないか」
「各ブログポータルのブログが一箇所にまとまっていれば、そっちのほうがきっと便利なんじゃないか」
「いや、それってブログのRSS機能を使えば実装できるんじゃないか……」
そんなことを考えているうちに、私の中でむくむくと料理ブログが集まるサイトを作れないか――というアイデアが形を取り始めたのでした。
そこで、さっそく私は社内で、その「料理ブログが集まってくるRSSポータルサイト」の構想を語ってみることにしました。ところが……社内の声は「ぜんぜんピンと来ない」というものでした。
「クックパッドのようなレシピサイトがあるのになぜ?」
「ブログそのものが伸びるかわからない」
「料理ブログなのにライフスタイル?」
「はじめたばかりのおとりよせネットに集中したほうが良いのでは」
そんな反応で、なかなか熱は伝わりません。いまとなっては遠い出来事ですが、当時の認識はそんな感じでした。しかし、めげませんでした。その後も半年くらい、ことあるごとに「こんな素敵な料理ブログがあって……」と興味なさげなメンバーに、しつこくプチプレゼンを繰り返して、とにかく自分の熱意をぶつけることだけは続けていました。
すると、その中に一人、私の考えるコンセプトに共感してくれるメンバーが出てきたのです。
彼女は、アルバイトからの第一号社員になった女性でした。元々、雑誌が大好きで学生時代には編集プロダクションでアルバイトもしていたという彼女は、「レシピサイトをやりたいんじゃなくて、料理を核にした生活のメディアをやりたい!」という私の訴えに、すぐにピンときたようでした。
この彼女こそが、初代レシピブログの編集長にして、その後のサービスの拡大で大きな役割を果たしてくれた川杉弘恵さんです。
そして、ついに創業時からのアドバイザーで現副社長・長谷川も、「そんなにいいと思うなら、やってみればいいんじゃない」と言いはじめたのです。長谷川は始めはいつも冷静ですが、いざ納得すればとても頼りになる人間です。そんな二人に背中を押されて、とても心強く思いました。
新しいメディアを創るとしばしば体験することですが、熱狂するテーマを自分のなかに見つけたとしても、それが目新しいほど周囲の理解はすぐに得られないものです。
でも、それは客観的に見れば、当たり前のことだと思います。そんなとき、メディアプロデューサーとして大事なのは、「全員を一度に説得しようと思わない」ことです。それよりも、「すぐに理解を得られないテーマのほうが伸びしろがある」くらいに思って、ひとり一人口説いて共感する仲間を増やしていくのです。そうすると、あるとき、離ればなれの“点”だったメンバーの気持ちが、まとまりあって“面”になって「そうだね、やってみようか」となるものです。しかも、駄目だしをされて試行錯誤していくなかで、企画そのものが熱や厚みを帯びていくこともしばしばで、振り返ればそれがメディアの精度を増していたとも思います。
ちなみに、メディアそのものの発展も、これに似たところがあります。ひとり一人地道に読者を獲得していくと、あるとき急に「コミュニティ」として繋がりをもって伸びていくステップが訪れることがしばしばあるのです。
■ なぜレシピブログのロゴは暖色ではないのか
とにもかくにも、社内で仲間を得ることができ、さっそく共感してくれた社員第一号の彼女とブレストを始めると、素敵なライフスタイルのお料理ブロガーさんを集める方法について、いろいろなアイディアが飛び出してきました。
「料理ブログはレシピのブログではなくて、あくまでもライフスタイルのメディアなのだ」という意識は、この時点で二人の間にハッキリとあるものでした。彼女とのブレストの中から生まれた、「暮らしの中にレシピがある レシピの中に暮らしがある」というサイトのグランドコピーは、それを象徴するものです。
そして同時に、私たちはほとんど迷わずに、サイトのメインカテゴリを「中華」や「じゃがいも」などのジャンルや素材で切り分けずに、「海外在住」や「子育て」「ひとり暮らし」などのライフスタイル軸で分類することに決めました。これは料理サイトという観点から見ればわかりづらいカテゴリ分けだと思いますが、ニッチになったとしてもユニークなサービスを創りたい、便利さではなく「共感」を軸にサービスを創りたいという当時の意思を込めたものです。
また、ロゴの選定にも私たちの意識は大きく現れました。レシピブログのロゴは、オープン当初は黒、その後は紫や青など、料理を扱うサービスとしては“おきて破り”とも言える「寒色系」の色を用いたものにしています。でも、かなり強い意志を持って、このロゴを「暖色系」にしたくないと考えていました。このサイトは、料理のサイトではなくて、暮らしを発信するサイトです。だから、より雰囲気が出る、落ちついたトーンの色使いを意識したほうがいいのです。
また、最初こそ黒の一色でしたが、オープン後には一文字一文字で色を変えるように変更もしました。料理ブロガーさんの多様なライフスタイルを応援していくサイトなんだ、というメッセージを打ち出したかったからです。
▲「レシピブログ」現在のロゴデザイン
そうしてサイトをリリースするにあたって、自分たちが読んできた料理ブログから素敵だと思う大好きなブロガーさんたち一人ひとりに、手作業でラブレターのようなメールを送ることにしました。決して一斉送信などはせず、ブログの感想を一つ一つ添えて、もしよければサイトに登録してくれないかと一通一通、心をこめて送りました。すると、サイト公開までに200人ほどのブロガーさんが手を挙げてくださったのです。
こんなふうにカテゴリ分けにしても、ロゴにしても、普通の料理サイトではやらないような設計をしたのは、やはり中心にいた人たちがメディアとして目指したい軸をはっきりと決めていたからだと思います。ここで私たちが考えた工夫については、次回にもう一度、メディアプラットフォームのオリジナリティの作り方における「メディアのオリジナリティ掛け合わせ方」の問題として、考えていきたいと思います。
■ ユーザーからの好反応と、料理業界との壁
サービスがオープンすると、すぐに「自分もこんなサイトを待っていた」「こんなサービスに参加できることが嬉しい」と、書き手の料理ブロガーの方からも読者の方からも、驚くほど大きな手ごたえの反響が返ってきました。自分たちがユーザーとして「熱狂」していたことが、サイトの利用者であるユーザーさんたちにも伝わっていたのです。
ただ、ちょっと意外なこともありました。たとえば、当初の私の目論見では、ライフスタイルのカテゴリごとに、「子育て」をしているお母さん同士、「学生」の女の子同士などが、互いにマッチングしあって交流する予定だったのです。
ところが、実際にはそんなふうに同じ属性のユーザー同士だけが固まっていくことはありませんでした。むしろ海外に住んでいない人が、海外に住んでいる人のライフスタイルに憧れを抱いたり、お弁当を彼女のためにつくる男の子に、主婦の人たちが「素敵!」となったり……というように違う軸の人たちも互いに刺激しあうようになったのでした。
もちろん、そうやって互いに違う立場の人が交流しあう方が熱量は上がっていくので、これは嬉しい誤算だったといえます。
また、ユーザーさんのモチベーションを高めるためにランキングを導入したのですが、これも上手く機能してくれて、カリスマ的なブロガーさんたちが登場してくるようになりました。それは私たちにとって、大きな転機でした。
当時すでに他ジャンルのブログでは、ぽつぽつとサービスのランキング上位にいるような人気ブロガーさんたちが本を出版する流れが始まっていました。しかし、そういう流れは料理ブログにも多少はきていたものの、まだまだでした。
そこで私たちは出版社を回って、まずは料理雑誌で特集をしていただけないかなど、お料理ブロガーさんたちの営業をしていくことに決めました。
しかし、最初の頃は本当に大変でした。「けんもほろろ」ということも決して少なくありません。有名なお料理雑誌の編集部に営業に行ったときに、「素人さんの料理は安心して誌面に載せられない」と言われたこともありました。
それでも、私たちは諦めずに、何度も何度も出版社に通いつめました。そして自分たちのサイトに登録してくれたブロガーさんたちの紹介をして、取り上げてくれないかとお願いを続けたのです。
そんな壁を突き崩すきっかけになったのは、だんだんと、編集者の方々自身が、お料理ブログを読んでみることで「面白いかも」「お料理も斬新でヒントがある」と、その価値に気付いてくださったことでした。これも熱量の伝染だったのでしょうか。そうして、ついにレシピブログ監修の書籍第一弾を2007年にアスキーから出版できることになったのでした。
■ ルーツは、大人気メルマガを運営したOL時代
当時は、料理ブログの知名度や地位の低さに対して、私たち編集部がしっかりと売り込みをかけなければいけないと、単なるサービスの営業を超えた強い使命感を覚えていたと思います。
でも、なぜそんなふうに肩に力を入れて、頑張っていたのでしょうか。それはきっと私自身のインターネットとの関わりと、大きく関係していたように思います。
私が新卒で入社したのは、NTTコミュニケーションズというインターネットを扱う企業です。
そこで私が最初に配属されたのは、消費者向けのオンラインECサービス設計を行う部署でした。ところが、当時のサービス開発というのは、かなり技術オリエンテッドな部分があり、なかなかUIが使いづらいことが多かったのです。とはいえ、たかだか新卒のOLが上司にそれを言うのはなかなか勇気が要るものです。そもそも、当時の私はそれ以前に、技術的にはまったく会社で役立つことができていなかったのです。私は悶々としながら、どうしたらいいものかと考えて毎日を過ごしていました。
そんなある日、とある研究会で出会った方から、「ネット上に“消費者の口コミのコミュニティ”を作って、その声を拾い上げる形で意見を伝えてみてはどうか」とアドバイスされる機会がありました。
会社の支援もあり、さっそく私は非営利で「LIFE」という消費者のメーリングリストを立ち上げました。始めてみると、実にいろいろな意見が聞こえてきます。生活者の視点から、これからのECサイトやネットビジネスのあり方を考える議論も活発に行われました。当時言われていた「女性はネットショッピングなんてしない」という意見への反論もあれば、「ショップオーナーはどういうメールを書けばよいか」のような実用的な話まで、実にいろんな情報が飛び交うのです。その意見を会社に伝えると、自分が意見をただ表明するだけでは聞いてくれなかったであろう人たちも、確かに「なるほど」と納得するのです。
しかも、このLIFEはどんどんメンバー数が増えていき、議論もどんどん活発になっていきました。それはまるで日本のECビジネス黎明期に、業界が生まれていく流れの一端を担っているような、不思議な体験でした。ECサイトで靴を売るときに「片方の靴だけしか表示しないのはよくない」という、いまとなっては当たり前に行われている話が出てきたり、そういう様々な議論に対して楽天の三木谷浩史さんが「LIFEは参考になる」と発言してくださったりして、ついには新卒1年目の終わりに東洋経済新報社から『成功するオンラインショップ―女性ネットワーカー1300人が本音で提言』なる本を出版するという、畏れ多いほどの経験まですることになりました。
▲『成功するオンラインショップ―女性ネットワーカー1300人が本音で提言』
それは同時に、私がいかに生活者のクチコミが強い力を持つのかを実感した瞬間でもありました。
さらに、そんなふうにOL生活を送っていた4年目、私は今度は当時の同僚たちと一緒に、「OL美食特捜隊」というメールマガジンを始めました。
これは5人の同僚と代わりばんこに毎週美味しいお店をレポートするというメルマガです。いわば今度は、自分たちが普通のOLとして、クチコミ情報を世の中に届けるものだった……と言えるかもしれませんが、実際にはそんなに大上段に構えたものではなくて、ほんの好奇心から始めたくらいのものでした。
ところが、当時はメルマガブームの最盛期、メールマガジンというメディアそのものに注目が集まり、ビジネスのコツや英会話を解説した人気のメルマガがどんどん書籍化されていく時代でした。そんな中で、私たちのメルマガは英語学習やビジネス系などの実用的な話題があるわけでもなく、ただただ普通のOLが普通に食事レポートをするというだけだったことが、逆に話題になってしまったのです。
会員はみるみる増えていき、最盛期にはついには3万人を突破。雑誌の取材、書籍化、さらにはテレビ番組のような話までどんどん入ってくるようになったのです。
▲メールマガジンで配信され大好評を博した「OL美食特捜隊」
▲「OL美食特捜隊」当時のサイトの様子
■ ”発信すればするほど豊かになる”という実体験
このメルマガはその後、9年という長い期間にわたって続くことになりました。
そこから私たちはとても大きなものを得ました。もちろん、普通のOLが芸能人のようにテレビ番組に出られたりするミーハーな“役得”もあったのですが、得たものはそれだけではありません。
その一つが、メルマガ読者の人たちとの、現在まで続く深い交流です。
当時、メルマガを毎週発信しているというと、「モチベーションは続きますか」「ネタ切れになりませんか」と聞かれることがありましたが、実はちっともそんなことはありませんでした。なぜならメルマガで情報を発信すればするほど、読者の人がどんどん感想をくれたり、「きっとあなたはこういうお店が好きだと思う」などと美味しいお店の情報を送ってくれたりしたからです。読者の人に励ましてもらえるだけでなく、なぜかネタの提供までしていただけるというのは不思議ですが、インターネットにはそういう面があるのです。
さらには会社でも、普段は話せる機会さえないような年長の人が席にやってきて、急におすすめのレストランを教えてくれることも起き始めました。情報を発信すれば発信するほど、日々の生活は豊かになっていく――私はそのことに気づきました。
そして、ついにこのメルマガは私の仕事における大きな転機になりました。
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月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」1月11日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.496 ☆
2016-01-18 07:00220ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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(1)メルマガを写真付きのレイアウトで読む方法について
(2)Gmail使用者の方へ、メルマガが届かない場合の対処法
(3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について
を解説していますので、新たに入会された方はぜひご覧ください。
月曜ナビゲーター・宇野常寛J-WAVE「THE HANGOUT」1月11日放送書き起こし!
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2016.1.18 vol.496
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大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!
▲先週の放送は、こちらからお聴きいただけます!
■オープニングトーク
宇野 時刻は午後11時30分を回りました。みなさんこんばんは、宇野常寛です。今夜の放送も、みなさんからいただいた人生相談メールから始めようと思います。ラジオネーム「空を飛びたい」さん。19歳の男性の方ですね。
「宇野さんこんばんは。毎週、楽しく拝聴させていただいております。自分は現在、私立文系を目指す浪人生なのですが」
私立文系を目指す浪人生ってなんか志が高いのか低いのかよくわかんないですね、はい(笑)。
「将来はバットマンのようなアメコミヒーローになりたいと思っています。そこで、ヒーローに造詣が深い宇野さんに質問です。最短でスーパーヒーローになるためには、大学生になったらまずなにから手をつければいいのでしょうか?
7年後くらいまでには誰かに作ってもらった最新鋭のガジェットを駆使して、無血のうちに悪を懲らしめたいと思っています」
はあ……。これさ、僕への挑戦だよね? まず問いたいのは、僕が人生を通して特撮ヒーローにどうコミットしているのかを理解してこのメールを送っているのか? ということですね。僕はこれまで仮面ライダーグッズだけで軽く数百万円はつかっているし、仮面ライダーが表紙の本とかまで出していますからね。マジで。その僕にこのメールを送ってくることの意味をよく考えるべきですね。
というか、まず彼はほとんどヒーローを調べてないですよね。このメールにある「7年後ぐらいまでには誰かに作ってもらった最新鋭のガジェットを駆使して、無血のうちに悪を懲らしめたいと思っています」って、バットマンになりたいとか言っているくせに、明らかにクリストファー・ノーラン版の『ダークナイト』しか観ていないですよね。これはかなりやばいです。そもそも、こういったAM局のラジオでアイドルさんとか声優さんとかがやっている、「おもしろさを追求するというよりは、ほんわかした雰囲気を味わいたい」みたいなヌルい感じの番組に送ってくるような、ちょいおもしろネタメールをこの番組によこしてくる時点でね、なんて言ったらいいのかね。僕はナメられてますね。そして大しておもしろくない。この人にはまず自分の発想の凡庸さを自覚してもらいたいですね。この程度のユーモアで自分がおもしろいとか19歳で思っていたら本当に問題です。このレベルではスーパーヒーローはおろかハガキ職人にもなれませんよ。まあ、読んじゃっているんだけどね(笑)。そのうえでラジオネーム「空が飛びたい」くんこと、19歳浪人生には、僕から課題を与えたいと思います。
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〈語りづらさ〉を現実とつなげるために 『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』監督・井上剛インタビュー(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.495 ☆
2016-01-15 07:00220ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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(3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について
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〈語りづらさ〉を現実とつなげるために 『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』監督・井上剛インタビュー(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.1.15 vol.495
http://wakusei2nd.com
毎週金曜は「宇野常寛の対話と講義録」と題して、本誌編集長・宇野常寛本人による対談、インタビュー、講義録をお届けしていきます。
本日は1月公開の映画『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』の監督・井上剛さんへのインタビューです。『その街のこども』『あまちゃん』を経て、井上監督が突き当たった〈語りづらさ〉、そして〈見えないもの〉を通じて現実性の回復に至るフィクションの可能性を語り合いました。
▼作品紹介
LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版
(C)2015 NHK
配給:トランスフォーマー
神戸で女子高に通う朝海のもとに、故郷福島に留まる同級生・本気(マジ)から、立入制限区域内の母校の校庭に埋めた、タイムカプセルを掘りにいこうという誘いがくる。同じようにして集まった同級生たちと、ひょんなことから同行することになった教師・岡里は、一路福島を目指す。長い旅路の果てにたどり着いた地で、彼らは何を見て、何を感じるのか…。昨年3月に全国放送されたドラマに未公開シーン26分を追加し、兵庫と福島で限定的に放映された再編集バージョンが劇場公開される。
1月16日よりフォーラム福島、シネマート心斎橋、元町映画館にて先行公開、
同23日より東京シアター・イメージフォーラムほかにて順次全国ロードショー。
▼プロフィール
井上剛(いのうえ・つよし)
1993年にNHK入局。代表作に、劇場版も制作された『その街のこども』(10)、企画の立ち上げから関わり、チーフ演出を務めた連続テレビ小説『あまちゃん』(13)がある。その他にも、『クライマーズ・ハイ』(05)、『ハゲタカ』(07)、『てっぱん』(10)、『64(ロクヨン)』(15)など多くのテレビドラマで演出を担当する。
◎構成:橋本倫史、菊池俊輔
■ 『LIVE!LOVE!SING!~』を手掛けたきっかけ
宇野:井上監督の作品歴には『その街のこども』があって、『あまちゃん』があってそして本作『LIVE!LOVE!SING!~』があるという、奇しくも一つの流れができてしまっていると思うのですが。
井上:皆さんからそう言われるんですけど、最初から「震災を扱った作品をやろう」と取り組んでいるわけではなくて、どれも行きがかり上なんです。
本作の場合は、脚本を書いた一色伸幸さんからプロデューサーを経由して「やりませんか?」と話があった。僕が『あまちゃん』をやっていた頃、一色さんは宮城県女川町の臨時災害放送局を描いたドラマ『ラジオ』で、同じ東北を扱ったドラマを作ってたんです。それで、僕にとって盟友のような存在である大友良英さんは福島出身で、2011年には大友さんの活動が気になって取材してたんですよ。そういう流れで「福島に行ってみましょうか」ということになった。そのときに「20年前の神戸にあった歌と今の福島をつなげた物語ができないか」と一色さんが話していて、それが企画の発端になりました。
『その街のこども』は、京田光広さんというプロデューサーの影響です。その頃大阪にいて、震災を経験した局員が身の回りにたくさんいたことも大きかった。『あまちゃん』は宮藤官九郎さんがいたから撮れた作品ですし、『LIVE!LOVE!SING!~』も大友さんに背中を押されたところがある。
自分の中から出てきたテーマではないので、この3作品には特につながりはないのですが、いつも周りに後押ししてくれる人がなんとなくいるんです。それは自分でも不思議な感じですね。
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