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  • 長谷川リョー 考えるを考える 第19回 前例なき道を、自ら切り拓く。MaaSスタートアップのインハウスロイヤー・南知果氏が構想する“ロビイング2.0”とは?

    2019-10-07 07:00  
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    編集者・ライターの長谷川リョーが、(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回インタビューするのは、モビリティ・プラットフォーム『CREW』を運営する株式会社Azitの"インハウス・ロイヤー"(企業内弁護士)として、パブリックアフェアーズ・法務を担当する弁護士の南知果氏。 未だ厳しい規制が残っている国内の交通産業において、CREWを任意の謝礼で成り立つ「互助モビリティ」と定義し、市場を切り拓いてきたスタートアップ・Azit。南氏は、大手の弁護士事務所でキャリアをスタートし、創業間もない法律事務所ZeLoを経て、2019年6月にAzitにジョインしました。利益誘導ではなく「未来の共創」を目指す“ロビイング2.0”構想から、インハウスロイヤーが普及して多様化する弁護士のキャリア、また大手事務所とスタートアップのカルチャーギャップまで伺い、南氏の「激しく動き、自ら道を切り拓く」“激動型”の思考に迫ります。(構成:小池真幸)
    利益誘導ではなく「未来の共創」。“ロビイング2.0”構想とは?
    長谷川 まず、南さんが現在Azitのインハウス・ロイヤーとしてどのような活動をされているのか、教えていただけますか?
    南 活動内容は、社内向けの業務と社外向けの取り組みの2種類に大別されます。社内向けでは、一般的な企業の法務担当と同じように、あらゆる事業部からの法律相談を受けています。
    CREWのモデルは、法律を遵守することが非常に重要な領域です。地方で実証実験をするために、少しスキームをアレンジしようとするだけでも、すぐに法律に引っ掛かってしまう。そうした法律観点での是非を判断したり、アプリの文言をはじめ、外に出す文言をチェックしたりしています。
    長谷川 ビジネスサイドからの要望が、法律的にグレーだった場合はどう対応しているのでしょうか?
    南 かなり慎重に意思決定していますね。センシティブな領域ゆえに、リスクを取って良いことはないと思っているので。
    長谷川 法律の分野は、前例を踏襲する形で意思決定が行われるイメージもあります。Azitのように、新しくて前例がない領域では、どのように意思決定しているのでしょう?

    南 おっしゃる通り、基本的に前例はありません。専門家に相談はしつつも、法律の主旨や解釈を細かく検討し、慎重に判断していますね。
    長谷川 一歩ずつ丁寧に前進していくしかないのですね。社外向けには、どのような取り組みを?
    南 官公庁や地方自治体の方々にCREWの取組みを知ってもらうべく、ロビー活動を行なっています。
    長谷川 「ロビー活動」という言葉を使うことに、抵抗はないのでしょうか?アメリカなどでは一般的に使われていますが、日本ではややネガティブなイメージを持たれている印象もあります。
    南 めちゃくちゃ使っていますね(笑)。たしかに日本だと、利益誘導のようなイメージを持たれることも多いのですが、実際にやっていることは「未来についての話し合い」です。
    ロビー活動のイメージをアップデートしていきたくて。いわば“ロビイング2.0”ですね。シェアリンングエコノミー伝道師の石山アンジュさんと一緒に手がけている「PMI(Public Meets Innovation)」でも、よくそんな議論をしています。
    長谷川 なぜロビイング2.0が必要なのでしょうか?
    南 パブリックな観点で本気で日本を良くしようとしている官僚の方々が、実際に企業が何を考えてどういったビジネスを進めようとしているのを知らないのは、もったいないと思うんです。そのギャップを埋めるべく、最先端のテクノロジーの状況や、それに基づくビジネス構想を伝えています。
    CREWについての話題が出たとき、「そんな違法なサービスがあるなんてけしからん」とならないように、CREWの取り組み内容やビジネスモデルを前もって説明しておいたり。「道路交通法の許可なしにヒトがヒトを運送するって、そもそもどういうこと?」といった懸念事項に対し、一つひとつ丁寧に説明し、「ファンを増やしている」感覚です。
    事前に知っておいてもらうことで、もし万が一なにか問題が起きたとしても、正しく理解してもらえる可能性が高まります。

    長谷川 なるほど。法律の変化などにも、常にキャッチアップしながら動かれているのですよね?
    南 おっしゃる通りです。法律はこの先も刻々と変わっていくので、常に情報収集しながら動き続けていますね。国会のスケジュールを見れば、法案が書かれたり審議会が実施されたりする時期は分かるので、そうしたタイミングにあわせて動いています。
    たとえば「自家用有償旅客運送」と呼ばれる、交通空白地で自家用車を使い、人の運送を助ける制度があります。次の国会で法改正がなされる予定になっていますが、交通課題を抱える地方ではよく話題になることもあり、注目しています。
    大手事務所で感じた“限界”。スタートアップの世界に足を踏み入れた理由
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  • 長谷川リョー 考えるを考える 第18回「世界最難関」のミネルバ大学にパスした初の日本人、片山晴菜が見据える新しい「教育」

    2019-08-26 07:00  
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    編集者・ライターの長谷川リョーが、(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回インタビューするのは、合格率わずか1.9%、世界最難関と言われているミネルバ大学に、日本人として初めて合格した片山晴菜さん。同大学の生徒は、4年間で世界7都市を移動し、オンラインで授業を受けながら、各地で地元の公共団体やNPO、企業と連携して社会課題の解決に取り組みます。 スタートアップライクに「教育を再定義」するミネルバ大学とは、一体どのような場所なのでしょうか。アメリカでも異例の手厚い選考プロセスを経て、ディスカッション重視の「反転学習」で学び、日常的に“生殖の未来”を議論する一方、都市探索で過去と対話するユニークなキャンパスライフ。片山さんが構想する、“超エリート”と地方を架橋し、「想像力の格差」を解消する新しい「高校」の全容から、正義が乱立するサンフランシスコで身につけた、「目の前にあるものを、目に見える形で見ない」思考法まで迫ります。(構成:小池真幸)
    ディスカッション重視の教育を、属人性を排したかたちで。ミネルバ大学で実施される「反転学習」とは?
    長谷川 まずは、ミネルバ大学について聞かせてください。世界7都市を移動しながら、オンラインで授業を受けているんですよね?キャンパスのない大学、ということでしょうか。
    片山 はい。一応サンフランシスコに本拠地はありますが、ミーティングルームしかない、ただのオフィスです。

    片山 移動先の都市での、行動スケジュールも組まれています。今後グローバル化が進み、ますます世界が狭くなっていくなかで、さまざまな人たちと共同生活をしていかなければいけなくなるはず。そうした環境変化を背景に、「どうせキャンパスにいる必要がないのであれば、みんなで一緒に動いてください」と、他の文化に接する機会を持たせてくれているんです。
    長谷川 オンラインの授業は、どういったスタイルで行われているのですか?MOOCのようなイメージでしょうか。
    片山 「反転授業」という形式を取っています。事前に資料や課題を読み込んできたうえで、授業の最初に理解度を確認する記述式のテストを実施します。そのテストで一定の結果を残せなければ、出席とみなされないんです。
    授業のメインはディスカッションです。成績評価のためのテストがないので、議論で良い発言をしないと、平常点がもらえません。授業が行われるオンラインプラットフォームには、先生たちのファシリテーションをアシストしてくれる機能もあります。時間を見て「ディスカッションを一回やめて次に行きましょう」とナビゲートしてくれたり、生徒の発言量などが表示されたりするんです。たとえば発言量が少ない生徒には赤い枠が、多い生徒には緑の枠が映ります。
    長谷川 知識の習得は授業前に済ませ、授業ではディスカッションに集中しているんですね。ファシリテーションがシステム化されている点も面白い。
    片山 全体的に「属人化した教えにしない」思想で運営されており、授業の流れも、あらかじめ定められています。もちろん個々の教師の経験則はシェアされるべきですが、だからといって、教育の質に差が出てしまうと困るので。
    授業後は毎回、先生たちがそれぞれの生徒にフィードバックをコメントしなければいけないのですが、その評価も属人化しないように。個々のスキルに対する判断基準がしっかりと定められています。
    長谷川 先生はどういった人たちなのでしょう?一般的な大学と同じように、博士課程を取っている方が多いのでしょうか。
    片山 そうですね、多い印象はあります。先生方は、現在も教育に従事している方と、そうでない方がいらっしゃいます。前者はスタンフォード大学など他の学校でも教えている研究職または教授職の方、後者は現役の経営者やNGO運営者、または以前教育機関に従事していた方が多いです。どちらかといえば、前者の現役研究職または教授職の方が多い印象がありますね。
    アメリカでも異例、3フェーズの手厚い選考プロセス。徹底した公平性の担保と、「全世界70〜80ヶ国」の多様性
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  • 長谷川リョー 考えるを考える 第17回 “ことば”こそが、葛藤を「意志」に変える。cotree・櫻本真理が目指す、優しさが伝播する社会

    2019-07-10 07:00  
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    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、個人向けオンラインカウンセリングサービス『cotree(コトリー)』や、経営者のメンタルを支えるコーチングプログラム『escort(エスコート)』を運営する株式会社cotreeの代表・櫻本真理氏にお話を伺います。前職時代に自らが体調を崩した際、メンタルクリニックで十分なケアを受けられず苦しんだ経験から、2014年5月に起業し、同年10月にはcotreeをスタート。2018年11月には、連続起業家・家入一真氏が率いるベンチャーキャピタル・NOWと連携してescortの提供を開始しました。 「やさしさでつながる社会をつくる」を企業理念に据え、様々なサービスを展開する櫻本氏は、「心理学だけでも、社会学だけでも不十分。内面と外部環境のバランスを探求し、“適切なストレス”と付き合うことが大切だ」と語ります。薬による対症療法が蔓延るメンタルヘルス業界の問題点や「マッチング」の意義。アウシュビッツでも幸福度を高く保てた人の意外な共通点、さらには現代における「親和動機」への注目度の高まりまで、葛藤を「意志」に変える“ことば”を重視する櫻本氏の思考に迫りました。(構成:小池真幸)
    薬による対処療法だけでは不十分。メンタルサポートを求める人と、サービスを提供したい専門家を架橋するcotree
    長谷川 実は僕、昨年すこしメンタルの調子を崩していたんです。その時期、まさに当事者としてcotreeが気になっていたので、今日はお話伺えるのを楽しみにしていました。そもそも、どういったきっかけで作ったサービスなのでしょうか?
    櫻本 きっかけは自分自身の体験です。証券会社でアナリストとして働いていたときに、軽い睡眠障害になってしまったことがありました。病院に行ったところ、対処療法的に症状を抑える薬を処方してもらえるだけで、あまり話を聞いてもらえなくて。
    だけど薬だけで治る気がしなかったんですよね。生活の不調や環境との不一致といったストレス要因を抱えているからこそ、病気になるはずなのに、そうした背景を無視して症状だけ抑えても意味がないなと。

    櫻本 一方で、大学で心理学を専攻していた縁もあり、臨床心理士の知人たちが十分に満足できる待遇で働けていない現状も知っていました。「十分なメンタルケアサービスが流通していない一方で、カウンセラーは働き口に困っている。これってバランス悪いよな」と思い、メンタルのサポートを必要としている人と、サポートを提供したい人をつなげるべく、cotreeを作ったんです。だいたい4年半前の話ですね。
    長谷川 cotreeは、どのように使われることが多いのでしょうか?恒久的に使っていくイメージなのか、治るまでの何回かだけ利用するものなのか。
    櫻本 できれば卒業してもらうのが理想ですね。cotreeは、ご自身の課題を認識してもらい、解決するための行動変容を起こせるようになるためのサポートを行うサービス。一定期間を経てカウンセラーやコーチのことばがインストールされ、「もう自分で立って歩けるね」と思える状態になれば、卒業してもらうことになります。
    でもやっぱり、人生の中でまたしんどい場面は出てくるじゃないですか。そのときに、「そうだ、cotreeがあった」とまた使ってもらえるのが理想ですね。利用者さんに「何かあったら帰れる実家のような存在」と言ってもらったことがありますが、その表現はとても気に入っています。
    長谷川 ゆるやかにアテンションを維持し続けるイメージでしょうか。Netflixのように直接的に会員数を積み上げていくのではなく、「いつでも帰って来られる」コミュニティを広げていくと。
    櫻本 そうですね。何もないのが一番ですが、「何かあったらcotree」と思ってもらえるような存在を目指しています。

    長谷川 メンタルヘルス系のサービスって、他の人に「メンタル崩してたときに、これ使ってみて良かったよ」と伝えづらいイメージがあります。口コミではどの程度広がっているのでしょうか?
    櫻本 本当におっしゃる通りで。ローンチから数年は、SNSでの発信量は相当少なかったです。やっぱりみんな、自分のことを弱いと思われたくないんです。弱さを想起するカウンセリングについて発信するのは、憚られるのでしょう。
    ただ最近は、空気が変わってきたと思います。カウンセリングだけでなくコーチングをはじめたことや、そうしたサービスに対する認知も広まってきて、SNSなどで「cotreeのサービスよかった」と発信いただく機会がとても増えました。
    長谷川 コーチングは、cotreeで提供しているカウンセリングとはどう違うのでしょうか?
    櫻本 本質的には変わらないと思っています。「カウンセリングは課題を解決する、過去を扱う、マイナスをゼロにするためのもの。対してコーチングは目標を達成する、未来を扱う、ゼロをイチにするためのもの」と言われることもありますが、そんなシンプルに白黒つけられるものではありません。
    カウンセリングやコーチングは、人がより良い生き方をするために、専門的な対話能力を持った他者が壁打ち相手として伴走するものです。カウンセリングの中にもコーチング的な場面がありますし、コーチングの中にもカウンセリング的な場面はある。そもそもコーチングはカウンセリングから出てきたものですし、学問流派の便宜上、分けてきただけだと思います。呼び方よりも関わり方が大事です。
    個別の理論の良し悪しは問題ではない。cotreeが「マッチング」を最重視している理由
    長谷川 最近ではカウンセリングやコーチングに限らず、「U理論」や「メンタルモデル」など、人間の内面にフォーカスを当てた議論が増えている印象があります。こうした潮流については、どう思われますか?
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  • 長谷川リョー 考えるを考える 第16回 “オープンソース”にインセンティブ文化を根付かせる。横溝一将の、あえて“自分で考えない”思考法

    2019-05-23 08:00  
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    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、オープンソースプロジェクトのための報賞金サービス『IssueHunt』を開発・運営する、BoostIO株式会社のCo-founder/CEO・横溝一将氏にお話を伺います。同社は2019年4月、オープンソース開発者を支援するためのプログラム開始を発表し、ソフトバンク、マイクロソフト、LINEをはじめ、多数の国内大手IT企業が参加を表明しています。約1400名がslackに所属するBoostnoteコミュニティの内実から、「金銭インセンティブが存在せず、サステイナブルでない」オープンソースコミュニティの現在地、そして「あえて、自分では“考えない”」オープンソース的思考法にまで迫ります。(構成:小池真幸)
    170ヶ国へ拡大。IssueHuntは、「無名だけど、素晴らしい」プロダクトに光を当てる
    長谷川 まずは、IssueHuntについて気になる点を質問させてください。“報奨金”というのは、どのくらいの金額感なのでしょう?
    横溝 具体的な額はオープンにできないのですが、IssueHuntの貢献だけで生活していけるくらいのお金を稼いでいるユーザーも、ちらほら現れはじめていますね。
    長谷川 人気のプロジェクトにユーザーが集中してしまったりはしないのですか?

    横溝 いきなり斬り込んできますね! おっしゃる通り、人気が集中してしまうことはあります。有名な人が使っていたり、どこかでフィーチャーされたWebサービスが伸びていきやすいのと同じ現象ですが、我々はこれを大きな課題だと捉えています。
    当たり前ですが、無名の人でもすごく良いモノをつくっているケースはある。だからこそ、IssueHuntでオープンソースプロジェクトとコントリビューターのマッチングを推進し、「人気はないけど、優れている」プロダクトに光を当てていきたいんです。
    長谷川 他のサービスで、運営の参考にしているものはありますか? たとえばクラウドファンディングに近いものを感じるのですが。
    横溝 オンライン署名サービス『Change.org』ですね。「誰でも声をあげられる場所」というコンセプトからUX設計まで、大いに参考にしています。ただしChange.org以外は、特にベンチマークはいません。
    長谷川 他のサービスを真似るというよりは、走りながらどんどん自社サービスの改善サイクルをまわしていくイメージでしょうか。
    横溝 はい。毎週月曜の朝10時に、世界各国のメンバーとオンラインでMTGして、改善点を議論しています。
    長谷川 グローバルに開発メンバーがいらっしゃるのですね。全部で何人くらいの規模感ですか?
    横溝 10人いないくらいですね。主にアメリカ、韓国、フランス、ベトナム、そして日本にメンバーがいます。
    長谷川 役割はどのように分担されているのでしょう?
    横溝 基本的に全員がアイデアを出してくれるので、きっちりと役割を分担しているわけではないです。強いて言うなら、CTOがプログラムやサービスの設計、開発のディレクションを担ってくれています。
    長谷川 横溝さん自身はどういった役割を?
    横溝 何でもやっていますが、一番は「仲間を増やすこと」でしょうか。IssueHuntのユーザーはもちろん、株主やスポンサー企業まで、僕がコミュニケーションを取っていますね。
    いずれコードをオープンにする時代は必ず訪れる。「熱意」をベースに、“一億総オープンソース化”を推進

    長谷川 LINEやMicrosoftといった著名な企業からのスポンサードを受けられていると伺っています。純粋にすごいなと思ったのですが、どのように実現したのでしょう?
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  • 長谷川リョー 考えるを考える 第15回 ITビジネスの原理をファッションに転用「インターネット時代のワークウェア」発明に挑む ALL YOURS・木村昌史

    2019-04-24 07:00  
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    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、「LIFE SPEC」をコンセプトに、日常で感じるストレスを無くすプロダクトを開発するファッションブランド「ALL YOURS」代表取締役の木村昌史氏にお話を伺います。大手アパレルブランドでの勤務を経て同ブランドを立ち上げた木村氏は、「かっこよさ」「見た目のデザイン」「権威」といった従来のアパレルブランドの常識にとらわれず、「週7日でも着たくなる『インターネット時代のワークウェア』」づくりに挑戦。24ヶ月連続でクラウドファンディングを展開し、総額5000万円以上を集めたのみならず、日本のファッション業界でもっとも権威ある賞の1つ「毎日ファッション大賞」にもノミネートされています。インターネットの登場によって生じたファッションの社会的立ち位置の変化、実は100年前から存在していたDtoCモデルの歴史から、ヒッピー文化にも通ずる「内面」志向、そして木村氏の活動に通底するアービトラージ思考と“狂気”にまで迫ります。(構成:小池真幸)
    「着ていることも忘れてしまう」服をつくりたい–––インターネットは、ファッションの社会的ポジションをいかに変質させたのか
    長谷川 木村さんとは、2019年2月に開催された古本市「ツドイ文庫 vol.4」でご挨拶した以来ですよね。本日は取材を快諾してくださり、ありがとうございます。
    まず木村さんが手がけているファッションブランド「ALL YOURS」について伺いたいのですが、立ち上げはいつ頃だったのでしょうか?
    木村 2015年です。いま4年目ですね。
    長谷川 立ち上げ以前は、どのようなご活動を?
    木村 もともとは、株式会社ライトオンで店長職や本部勤務に従事していました。その後、ジーンズの製造メーカーに転職し、ALL YOURSを立ち上げるまで1年ほど働いていましたね。
    長谷川 ライトオンからジーンズのメーカーに転職されたのはなぜでしょう?

    木村 ALL YOURSが掲げるコンセプト「LIFE-SPEC」(日常生活で必要な機能を合わせ持ち、ストレスから人を解放する製品、サービスのこと)にも関わってくるのですが、「ヒトの身体に一番近い道具」としての洋服に関心があって。
    長谷川 だからこそ、いわば「作業着」で「道具」的であるジーンズに関わることにしたのですね。
    木村 結局、1年後には「他に同じようなことを考えている人がいないから、自分で作ってしまおう」と思い直し、ALL YOURSを立ち上げることになったのですが(笑)。
    僕が高校生だった時期くらいまで、洋服は自己表現の手段でした。雑誌で最新のトレンドを確認し、自分の志向性に合ったファッションを身にまとう。結果、人びとが裏原系や渋谷系といったセグメントに分かれていきました。「何を着ているか」で、その人の志向性が読み取れる時代だったんです。
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  • 長谷川リョー『考えるを考える』 第14回 「世界への解像度を高めたい」データサイエンティスト・風間正弘に聞く“最適化とセレンディピティの共存”

    2019-03-13 07:00  
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    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、リクルートホールディングス(2018年4月より、Indeedに出向中)でエンジニア/データサイエンティストを務める、風間正弘氏にお話を伺います。社外プロジェクトとして、予防医学者・石川善樹氏と共に、レシピのビッグデータをAIで解析して食材同士のつながりを可視化し、新たなレシピを考案するツール「Food Galaxy」の開発も手がける風間氏。レコメンドエンジンによる最適化が進んでいく世界で、AIと人間が協同し、クリエイティビティを発揮していくことは可能なのか。人文知と工学知を掛け合わせ、世界への解像度を高め続ける風間氏の思考に迫ります。(構成 小池真幸)
    レコメンドエンジンの開発が主軸。データサイエンスからWeb開発まで、リクルートで最先端テクノロジーを実装
    長谷川 お久しぶりです。風間さんは、僕の前職・リクルートの先輩でもあります。一度、ミーティングをご一緒したこともありましたよね。

    風間 ありましたね。当時は株式会社リクルートテクノロジーズで、データサイエンス業務を手がけていました。
    長谷川 たしか、会社で表彰されていましたよね。
    風間 そんなこともありました。とあるサイト上でのレコメンドエンジンに、他のサイトのデータを横断的に活用する仕組みを構築したことを評価していただけたんです。サービスごとにデータの質や粒度が全然違うのを、うまく結びつけるのが難しかったですね。
    長谷川 どのように結びつけたのでしょう?
    風間 記事のクリックログをはじめとしたユーザーの行動データや、別のサービス上にたまっているデータをうまく活用することで結びつけました。
    長谷川 その成果を、学会に持って行って発表されたともお聞きしました。
    風間 そうですね。レコメンド関連の学会で発表しました。世界中の研究者からのフィードバックが欲しかったのと、学会での実績を作れば自分の履歴書代わりにも使えるようになるかなと思って。
    長谷川 その後、2018年4月に現在のIndeedに異動されたと。
    風間 自ら手を挙げました。データサイエンスの技術だけでなく、全般的な開発スキルをもっと身に付けたいと思ったんです。研究を重ねるうちに、「レコメンドエンジンの改良が、常にベストな選択肢とは限らない」と気付きました。パターンの色やUIを変えたりした方が、より大きな成果が出ることも多い。あらゆる要素を考慮して施策を設計できるようになりたいと思い、当時の自分に不足していた開発スキルを身につけられる環境を志向しました。
    また若いうちに英語力も磨きたかったので、グローバル企業であるIndeedは最適な環境だと思ったんです。
    長谷川 異動してから一年近く経ちますが、感触はどうですか?
    風間 勉強になることばかりです。今までほとんど触れたことがない種類のコードを、イチから勉強しながら書いています。仕事の一環として、同僚からフィードバックをもらいながらコードを書いているので、日に日にスキルが向上している感覚がありますね。
    また所属しているチームの7〜8割は外国の方というグローバルな環境で、その点でも望んでいた環境に身を置けているといえます。
    長谷川 具体的な業務内容についても教えていただけますか?
    風間 最初はエンジニアとして、画面開発やWeb開発を手がけていましたが、現在はレコメンド開発にも携わっています。求職者の方にマッチする仕事を、画面上やメールでレコメンドするアルゴリズムを構築中です。
    長谷川 レコメンド技術といえば、中国が強い印象があります。運営会社のByteDanceをはじめ、中国のAI技術の発展ぶりは凄まじいですよね。
    風間 中国は本当に勢いがありますね。AIの国際学会に参加しても、中国人の参加者数が1番多かったりしますよ。特にByteDanceは、動画内のユーザーの姿勢判定や、美脚や細い顔に見せるためのリアルタイムでの画像変換など、かなり先進的な技術を開発している印象があります。
    生きたデータを分析し、直接ユーザーに還元したかった。アカデミアの道を捨て、リクルートに就職した理由

    長谷川 レコメンドアルゴリズムのコアでもある、機械学習に関心を抱くようになったのはなぜでしょう?学部生時代は東工大で、機械学習とは全く関係のない研究を手がけられていたと伺っています。
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  • 長谷川リョー『考えるを考える』 第13回 大企業の“出島”で地方自治体の「エストニア化」を目指す加藤喬大

    2019-02-06 07:00  
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    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、Hakuhodo Blockchain Initiativeでトークンコミュニティプロデューサーを務める加藤喬大氏にお話を伺います。20代の若さで、ブロックチェーンの全社プロジェクト「HAKUHODO Blockchain Initiative」の中心メンバーで活躍。その傍ら、地方自治体による日本初のICOの支援や、落合陽一氏が主宰する筑波大学の「STEAMリーダーシッププログラム」といった社外活動にも積極的にコミットしています。「地方創生×ブロックチェーン」というユニークな領域に取り組む理由から、大企業に所属しながらもスタートアップライクに自己実現を果たしているキャリア戦略まで、借り物ではないオリジナルな概念を生み出すことにこだわる加藤氏の「一日一“狂”」思考に迫ります。(構成:小池真幸)
    博報堂、地方創生プロボノ、落合陽一への師事。“三足のわらじ”で人生のポートフォリオを組成
    長谷川 僕と加藤さんは、落合陽一さんが主宰する社会人向け講義「筑波大学STEAMリーダーシッププログラム」(以下、STEAM)で毎週顔を合わせている仲です。博報堂という大企業に所属しながら、社内外でスタートアップライクに活動されている加藤さんには、一度じっくりとお話を伺ってみたいと思っていました。今日はよろしくお願いします。
    加藤 こちらこそ、お声がけいただき嬉しいです。よろしくお願いします。
    長谷川 まずは改めて、現在の活動内容の全体像を教えていただけますか?
    加藤 言うなれば「三足のわらじ」を履いています。1つ目は博報堂の社員、2つ目は茨城県庁でのプロボノ活動を行うボランティア、そして3つ目がリョーさんと同じSTEAMの学生です。
    よく落合さんも「ストレスマネジメントが大事だ」と仰っていますが、僕もこうして自分の人生のポートフォリオを複数のプロジェクトで組成していくことで、ストレスなくハードワークできるタイプなんです。
    長谷川 博報堂ではどういった仕事を?
    加藤 地方創生系のクライアントワークに取り組む傍ら、「HAKUHODO Blockchain Initiative」(以下、HBI)という社内プロジェクトの中心メンバーとして活動しています。社員が有志で集まり、それぞれの関心分野におけるブロックチェーン技術活用やトークンコミュニティ形成を議論、推進していく組織です。僕であれば「地方創生×ブロックチェーン」のプロジェクトに取り組んでいますし、「出版×ブロックチェーン」に関心のあるメンバーなどもいます。
    HBIはもう、狂った人しかいなくて楽しいです。全体で15人ほどの組織なのですが、休日も深夜も関係なく議論し、プロジェクトに取り組んでいる(笑)。一般的な大企業ではあまり見られない、スタートアップライクな集団だと思います。
    長谷川 HBI立ち上げの経緯も教えてください。
    加藤 もともと「地方創生」というテーマはライフワークにしようと思っていました。加えて1年ほど前から、「インターネットの次の革命だ!」とブロックチェーンに興味を持ち、個人的に勉強するように。そんな折、岡山県の西粟倉村という限界集落がICOを実施するというニュースを目にして衝撃を受けました。居ても立ってもいられなくなり、お問い合わせフォームから連絡し、西粟倉村のICOプロジェクトを手伝うようになったんです。その活動がが本格化してきた頃、会社としてもブロックチェーン領域に取り組んでいきたい流れと重なり、HBIとして取り組んでいくことになりました。

    長谷川 茨城県でのプロボノ活動はどのように関わっているのですか?
    加藤 はい。実家が江戸時代から酒造業を営んでいるのですが、その傍ら政治に関わってきた人も多い家系なんです。そのせいかパブリック志向はもとから持っていて、地方創生はライフワークにしていきたいと思っていました。茨城県庁での取り組みも、そのライフワークの一環で土日を中心にお手伝いしていますね。
    長谷川 三足目のわらじ、STEAMはどういった意図で?以前、海外留学も検討したけれど、あえてSTEAMを選ばれたと仰っていましたよね。
    加藤 まず前提として、“一期生”が好きなんですよね。前例がなく何だかよく分からないものに投資する人たちと切磋琢磨できれば、得られるリターンも大きいと思っていて。 あともちろん、STEAMの受講にかかる費用350万円の投資先として、海外留学も選択肢には入れていました。だけど今は海外に行ったからといって最新情報に触れられる時代でもないと思い、自分が心を揺さぶられるような人びとの生の声を毎週聴けるSTEAMの方に魅力を感じたんです。
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  • 長谷川リョー『考えるを考える』 第12回 “分身ロボットの父”吉藤オリィ氏はいかに「孤独」を捉え、その解消に挑むのか

    2018-11-15 07:00  
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    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、“分身ロボットの父”とも称されるロボット開発者である、オリィ研究所所長の吉藤オリィ氏にお話を伺います。「孤独の解消」をテーマに、分身ロボット「OriHime」の研究開発、体験イベント「オリィフェス2018」の開催など、幅広い活動に取り組む吉藤氏。「孤独の解消」を追究している理由から、「我慢強さ」を美徳とする時代遅れの教育システムまで、我慢“弱さ”を武器にワクワクを追求し続けている吉藤氏の思考に迫ります。(構成:小池真幸)
    「孤独=ひとりでいること」ではない。孤独の解消に寄与する、コミュニケーションテクノロジー
    ――まずは、分身ロボット「OriHime」の研究開発から体験イベント「オリィフェス2018」まで、多岐に渡っている吉藤さんの活動内容についてお伺いできますか?

    吉藤 一言でいうと、「孤独の解消」をテーマに研究活動を行なっています。ここでいう「孤独」とは、「ひとりでいること」ではなく、「自分は誰からも必要とされていない」「自分は誰の役にも立てない」「誰も自分の理解者がいない」と自覚して苦しむこと。そして、こうした苦しみを生み出す大きな要因として、「外出できない」「言葉を話せない」「目が見えない」といった身体的な「不可能」が挙げられます。そのハードルを乗り越え、人びとが前向きな人生を送れるようになるために支援することが、私の研究活動の目的です。
    ――孤独を生み出してしまう「不可能」を、「可能」にするための活動をされていると。逆に言えば、「孤独」につながらない「不可能」は関心対象ではない?
    吉藤 はい。たとえば、私は空を飛べるようになりたいとは思いません。仮に飛べるようになっても、空に他の人間はいないので、「孤独の解消」にはつながりませんからね。「他の人は空を飛べるのに、自分だけが飛べないから孤独だ」といった状況や、人のいる場所に移動するために空を飛ぶ方がよいとなったら、考えも変わってくるかもしれませんが。

    吉藤 私が取り組んでいるテクノロジーやイベントは、すべて孤独を解消するためのツールなんです。「外出できないから、人びとが集まる場に参加できない」という「不可能」を解決しようと、家に居ながら外の場への参加を可能にしてくれるOriHimeを開発しました。オリィフェスのようなオフラインでのイベントも、「そもそも居場所だと感じられる場がない」「友人がいない」という問題を解決するために開催したものです。オリィフェスに来れば、「オリィ研究所の取り組みに共感してくれた」という共通項で、他の人とつながることができますからね。
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  • 長谷川リョー『考えるを考える』 第11回 連続起業家・田村健太郎が語るオンラインサロンの現在地と、非中央集権的な経済圏“mint”の構想

    2018-10-04 07:00  
    550pt

    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、連続起業家であり、MINT株式会社 代表取締役の田村健太郎氏にお話を伺います。田村氏は、オンラインサロンのプラットフォーム「Synapse(シナプス)」を立ち上げ、 2017年2月にDMM.com(以下、DMM)へ会社ごと売却したのち、6月に退職。約8ヶ月の充電期間を経て、2018年3月に「応援してくれる人に感謝の気持ちをポイントで伝える」サービス「mint」を発表。昨今のオンラインサロンブームの分析から、mintを通じて構築したい「目の前の人をハッピーにする」非中央集権的な経済圏の全容まで、田村氏の思考に迫ります。(構成:小池真幸)
    インドや中国のキャッシュレス社会に衝撃を受け、mintを構想
    長谷川 まず、DMMを退職してからmintリリースにいたるまでの経緯についてお伺いできますか?
    田村 DMMを辞めた時点では次に何をやるかは全く決めていなかったので、あてもなく海外を旅していました。まず最初にインドに行ったのですが、そこでキャッシュレス化が急速に進展している光景を目の当たりにして衝撃を受けたんです。国をあげて高額紙幣の廃止などを推進しており、電子決済システム「Paytm」がないと生活できない状態になっていました。中国では「Alipay」や「WeChat Pay」が普及しており、日本にもキャッシュレスの波が来るのは避けられないと直感したんです。

    田村 また、同時期に仮想通貨も流行し始めており、個人的には特にイーサリアムに可能性を感じていました。それから2017年秋頃にトークン系のサービスをつくること決意し、プロダクトの構想を詰めて完成したのが、mintです。
    長谷川 mintと同じようなサービスがインドや中国にあり、そのアイデアを輸入したということでしょうか?
    田村 いえ、同様のサービスはありませんでした。強いて言うならWeChat Payに搭載されているミニプログラムを参考にしましたが、発想の原点は、Synapseで数多くのオンラインサロンを見てきたなかで、「ファンを増やしたい」といったニーズの高まりを肌で感じていたことです。
    長谷川 思いついたアイデアをプロダクト化するタイミングはどうやって決めているのでしょうか?インフラが未整備だからこそ最新テクノロジーがスムーズに普及する「リープフロッグ現象」が起こる発展途上国もありますが、日本は既存の金融システムが強固だからこそ、キャッシュレス文化が根づきにくいと思いまして。Synapseもオンラインサロンがほとんど世に知られていなかった2012年にはじめられていますよね。
    田村 適切なタイミングは頭で考えても分からないので、思いついたタイミングで着手しています。「これに懸ける」と決めて取り組めばいつかはヒットするはずなので、早めにスタートしてじっくりと取り組むべきです。
    箕輪編集室の熱狂も、オンラインサロン市場はまだこれから
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  • 長谷川リョー『考えるを考える』 第10回 『ティール組織』解説者・嘉村賢州が探求する新しい組織形態

    2018-09-05 07:00  
    550pt

    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授、幸せな組織改革を行うファシリテーター集団「場とつながりラボ home's vi」代表の嘉村賢州さんにお話を伺います。嘉村さんは、今年1月に発売され話題となった書籍『ティール組織』の解説者も務められました。10年間に及ぶ民間でのファシリテーター活動を経てアカデミックの世界に飛び込んだ理由、既存の統制型組織とは異なる“筋斗雲(きんとうん)型組織”構想の全貌から、現代日本において『ティール組織』が重要な理由まで、経験知を何よりも重視する嘉村さんのオリジナリティ溢れる思考に迫ります。(構成:小池真幸)
    年間150回のワークショップをこなしてきた現場から、アカデミックへ軸足を移した理由
    長谷川 現在は、東京工業大学リーダーシップ教育院での活動がメインだと伺っています。具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
    嘉村 大学院の新設に向けて2018年4月から現職に就いたのですが、まだ授業は始まっておらず、準備をしている段階です。メインは研究ではなく、修士課程・博士課程の理系院生向けのリーダーシップ教育。彼らがもっと社会で活躍できるよう、各々の専攻分野とは別に、コミュニケーション手法などを領域横断的に学んでもらいます。「教える」というよりは、彼らが研究成果を社会に還元していくためのお手伝いをしているイメージ。まずは自分の専門分野の魅力を専門外の人に、分かりやすく伝える能力や異なる他者と理解し、協力し合えるスキル等を磨いてもらおうと思っています。
    長谷川 ここでいう「リーダーシップ」とはどういった意味なのか、詳しくお伺いしたいです。
    嘉村 他責思考にならずに、社会のなかで自発的に一歩踏み出していくためのマインドセットのことです。こういったリーダーシップを育てることで、社会にインパクトを与えられる人材が増えていきます。なお、カリスマ型だったり、メンバーの集合知をうまく活用するタイプだったり、リーダー像は人によってさまざまでいいと思っています。とにかく、外発的なエネルギーを起点に受け身で動くのではなく、内発的な動機に従い自分から動いていける力を身につけてほしいんです。
    長谷川 授業で教えていくノウハウの源泉は、今まで嘉村さんが行ってきた活動でしょうか?
    嘉村 はい。自分は学部卒でアカデミックな経歴は一切なく、ファシリーテーションや異分野コラボレーションの現場での活動実績を評価されて特任准教授に任命していただいたのだと思っています。
    長谷川 この連載で以前お話を伺った東工大の伊藤亜紗さんや東京大学の安斎勇樹さんも、嘉村さんのように民間とアカデミックの両分野で活躍されていました。ただ、伊藤さんと安斎さんが研究に軸足を置きつつ民間でも活動されていたのに対し、嘉村さんはもともと民間で活動されていたなかでアカデミック領域に参入されているので、パターンが逆です。嘉村さんのなかで、アカデミック領域での活動はどのように位置付けられているのでしょうか?
    嘉村 今までがむしゃらに現場で走り続けてきたなかで得た経験知を、再現性を持たせるために整理する機会だと位置付けています。現職に就くまでの10年間は、特に専門分野も決めず、来るもの拒まずで年間150回くらいのペースでワークショップに取り組んできました。デザイン思考系やNVC(共感コミュニケーション)、身体系まで、あらゆるジャンルの案件を引き受けていたんです。
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