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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第19回「男とペット」【毎月末配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.655 ☆

    2016-07-29 07:00  
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    脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第19回「男とペット」【毎月末配信】 
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.7.29 vol.655
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第19回です。今回のテーマは「男とペット」です。敏樹先生が子供の頃に初めて飼った犬の「トナ」についてのエピソードが語られます。

    【発売中!】井上敏樹 新作小説『月神』(朝日新聞出版)
    ▼内容紹介(Amazonより)
    「仮面ライダーアギト」「仮面ライダー555」をはじめ、
    平成ライダーシリーズの名作を送り出した脚本家による、
    荒唐無稽な世界を多彩な文体で描き出す、異形のエンターテインメイント! 
    (Amazonでのご購入はこちらから!)
    PLANETSチャンネル会員限定!入会すると視聴できる井上敏樹関連動画一覧です。
    (動画1)井上敏樹先生、そして超光戦士シャンゼリオン/仮面ライダー王蛇こと萩野崇さんが出演!(2014年6月放送)
    【前編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
    【後編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
    (動画2)井上敏樹先生を語るニコ生も、かつて行なわれています……!仮面ライダーカイザこと村上幸平さんも出演!(2014年2月放送)
    【前編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
    【後編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
    (動画3)井上敏樹先生脚本の「仮面ライダーキバ」「衝撃ゴウライガン!!」など出演の俳優、山本匠馬さんが登場したニコ生です。(2015年7月放送)
    俳優・山本匠馬さんの素顔に迫る! 「饒舌のキャストオフ・ヒーローズ vol.1」
    (動画4)『月神』発売を記念し行われた、敏樹先生のアトリエでの料理ニコ生です!(2015年11月放送)
    井上敏樹、その魂の料理を生中継!  小説『月神』刊行記念「帝王の食卓――美しき男たちと美食の夕べ」
    ■井上敏樹先生が表紙の題字を手がけた切通理作×宇野常寛『いま昭和仮面ライダーを問い直す』もAmazon Kindle Storeで好評発売中!(Amazonサイトへ飛びます)
    これまでPLANETSチャンネルのメルマガで連載してきた、井上敏樹先生によるエッセイ連載『男と×××』の記事一覧はこちらから。(※メルマガ記事は、配信時点で未入会の方は単品課金でのご購入となります) 
    ▼執筆者プロフィール
    井上敏樹(いのうえ・としき)
    1959年埼玉県生まれ。大学在学中の81年にテレビアニメの脚本家としてのキャリアをスタートさせる。その後、アニメや特撮で数々の作品を執筆。『鳥人戦隊ジェットマン』『超光戦士シャンゼリオン』などのほか、『仮面ライダーアギト』『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー555』『仮面ライダー響鬼』『仮面ライダーキバ』など、平成仮面ライダーシリーズで活躍。2014年には書き下ろし小説『海の底のピアノ』(朝日新聞出版)を発表。

    前回:脚本家・井上敏樹書き下ろしエッセイ『男と×××』第18回「男と男7」

      男 と ペ ッ ト   井上敏樹

    子供の頃から何匹ものペットを飼った。金魚から犬、猫、蛇からトカゲまで様々である。よくペットは子供の情操教育によい、と言うがまさにその通りー当然、最後には悲しい別れが待っているわけだがそれがいいのだ。とにかく得るものが多い。私の見る所、動物を飼った事のない男はろくなものになっていない。情が薄い、吝嗇である、話がつまらない、自己完結的である。とは言え、ペットの飼い方にはなかなか難しい所がある。そこには掟のようにきっちりとした主従関係があるべきで、人を愛するようにペットを愛してはいけない。最近、二十代、三十代の女性で犬やら猫やらを彼氏のように、或いはわが子のように可愛がるものが多いがどうも納得がいかない。そういう女性たちは得るものより失うものの方が多い気がする。いや、女性に限らず、大雑把に言って成人してからペットを飼う者はなにやら信用できない所がある。彼らは自分の足りない部分を足らしめようとする努力を放棄してペットを飼う事で誤魔化しているのではあるまいか。ペットの写真を携帯やスマホの待ち受けにして見せびらかすのは、ゴルフ好きが自分のスイングの動画を見せびらかすのと同じぐらい迷惑である。とにかくペットへの異常な愛情は危険である。人間は動物に近づこうとし、動物は人間に近づき、結局、動物も人間も住めないトワイライトゾーンで生まれるのは、愛情もどきの不気味なホムンクルスに違いない。


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  • 加藤るみの映画館(シアター)の女神 2nd Stage ☆ 第2回『遠い空の向こうに』『裸足の季節』『羊たちの沈黙』【毎月第4木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.654 ☆

    2016-07-28 07:00  
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    加藤るみの映画館(シアター)の女神 2nd Stage第2回『遠い空の向こうに』『裸足の季節』『羊たちの沈黙』【毎月第4木曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.7.28 vol.654
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは、加藤るみさんの連載『加藤るみの映画館(シアター)の女神 2nd Stage』第2回をお届けします。今回取り上げるのは、るみさんが「前向きになれる」と語るロケットエンジニアの自伝的作品『遠い空の向こうに』、自由を求めるトルコの少女たちの戦いに目頭が熱くなる『裸足の季節』、そしてサイコサスペンスの傑作『羊たちの沈黙』です。
    ▼執筆者プロフィール
    加藤るみ(かとう・るみ)
    1995年3月9日生まれ。岐阜県出身。サンミュージックプロダクション所属のタレント。映画鑑賞をはじめ、釣り、世界遺産、料理、カメラ、アニメと多趣味を活かしてマルチに活躍中。インターネットラジオK'z Station『おしゃべりやってま~すRevolution』にレギュラー出演中。雑誌『つり情報』でコラムを連載中。7月9日には『マリンフェスタ2016』で一日艇長を務める。

    本メルマガで連載中の『加藤るみの映画館(シアター)の女神』、過去記事一覧はこちらのリンクから。
    前回:加藤るみの映画館(シアター)の女神 2nd Stage ☆ 第1回『デッドプール』『シング・ストリート 未来へのうた』


    夏がやってきました!
    皆さん、夏といえば何が思いつくでしょうか?
    海、お祭り、キャンプ、花火、フェスなどなど、
    たくさんイベントがあるかと思います。
    今、私が一番に思いつくものは……
    登山!です。
    登山に挑戦したい、加藤るみです。
    最近、「山に登ってみたい」という本当にふわっとした野望が生まれました。
    その野望の発端は、「人生で一度は富士山に登りたい!!」というところから来ているのですが、
    今まで一度もちゃんとした登山をしたことがない私……。
    この夏、まずは超初心者でも登れる山を見つけて、
    登山というよりは、ハイキングという形で挑戦してみたいと思います。
    映画コラムなのに、いきなり登山について語り出してしまいすみません(笑)
    この夏に挑戦してみたい、私の秘めた野望でした。
    さて!!
    今回は、純粋に前向きになれる映画『遠い空の向こうに』と、
    麗しい少女たちの戦いに目頭が熱くなる『裸足の季節』、
    私が観ると決意するまでに3年以上も時間がかかってしまった傑作『羊たちの沈黙』をご紹介します!
    ~夢を持とう~
    『遠い空の向こうに』

    (出典)
    今回、最初にご紹介する映画は、炭鉱の町で生まれ育った少年たちが、
    ロケットを飛ばすことに情熱を捧げ、夢に向かっていった熱い物語です。
    実はこのお話は実話で、NASAのロケットエンジニアであるホーマー・ヒッカムの自伝を元に作られた映画なのです。
    今、夢が見つからない、夢がわからないという人にぜひ観てもらいたい作品です。 
    「夢を持とう」って気持ちになれる、心を動かすキッカケをくれる、素敵な映画でした。 

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  • 『ズートピア』ーーディズニーの自己批評路線が作り上げた、嫌になるくらいの完成度(イシイジロウ×宇野常寛)【月刊カルチャー時評 毎月第4水曜配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.652 ☆

    2016-07-27 07:00  
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    『ズートピア』ーーディズニーの自己批評路線が作り上げた、嫌になるくらいの完成度(イシイジロウ×宇野常寛)【月刊カルチャー時評 毎月第4水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.7.27 vol.652
    http://wakusei2nd.com



    今朝のメルマガは、映画『ズートピア』をめぐるイシイジロウさんと宇野常寛の対談をお届けします。高い完成度のシナリオで右肩上がりのヒットとなった本作。絶妙なさじ加減で盛り込まれた政治性と、3DCGが可能にした柔軟な映画作りの可能性、そしてディズニー買収後のピクサーが失ったテーマについて論じます。
    公開後は各所で話題となり、興行収入は右肩上がりとなった同作。その完成度の高さの理由とディズニーアニメとしてのすごさを語りました。(初出:「サイゾー」2016年7月号(サイゾー))


    (出典)
    ▼作品紹介
    『ズートピア』
    監督:リッチ・ムーア/バイロン・ハワード 脚本:ジャレッド・ブッシュ/フィル・ジョンストン 制作:ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ 公開:2016年4月23日(日本)
    進化によって、肉食動物と草食動物が仲良く共存できるようになった世界の大都会「ズートピア」。ウサギ初の警察官となったジュディと、この世界にあっても嫌われ者のキツネゆえひねくれた詐欺師ニックのコンビが、ズートピアで起きる連続行方不明事件の調査に当たる。その過程で変わってゆく2人のバディ的関係を軸に、種族を超えた共存が可能になってもなお続く差別や偏見を明確に描く。
    ▼対談者プロフィール
    イシイジロウ
    ゲームデザイナー/原作・脚本家。株式会社ストーリーテリング代表。1967年兵庫県生まれ。
    広告・映像業界を経て、老舗ゲームデベロッパー(株)チュンソフトに入社。その後(株)レベルファイブに移籍。
    2014年独立。2015年株式会社ストーリーテリング設立。
    代表作:ゲーム作品では「タイムトラベラーズ」「428 ~封鎖された渋谷で~」「3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!」アニメ作品では「モンスターストライク」「UNDER THE DOG」など。
    ◎構成:須賀原みち
    『月刊カルチャー時評』過去の配信記事一覧はこちらのリンクから。
    イシイ 『ズートピア』、自分のようなクリエイターからすると、鼻につくぐらいよくできていましたね。「(ジョン・)ラセター【1】、ここで絶対ドヤ顔してる!」って思うところが何度もあって(笑)、嫌になるくらいの素晴らしさでした。これまでディズニーが作り上げてきたアーカイブを破壊するような邪道的なことをやりながら、エンターテインメントの文法にしっかり則っているから観客にも伝わるし、エンタメ作品として成立している。完成度が高すぎます。

    【1】ラセター:1957年生まれ。ディズニーでアニメ制作のキャリアをスタートさせ、インダストリアル・ライト&マジックに移籍。その後ピクサー創設に携わり、同スタジオ初の長編『トイ・ストーリー』をヒットさせる。現在はピクサーとウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの両方でCCOを務める。

    宇野 アニメーション映画の宣伝って、「このキャラクターが動くところが観たい」と思わせるのが重要じゃないですか。『ズートピア』はそのルックスが地味で、どうなのかな?と思っていた。でも実際に観てみたら、とにかく感心しましたね。設定や筋立ては結構いい加減なところもあると思うのだけど、そういう穴をかなり露骨に現実の比喩だと宣言することで無効化してしまう、というやり方でしょう? ディズニーがファンタジーの力を使って現実のヤバさをえぐり出してくるタイプのものを、このレベルで出してくるとは。
    イシイ 僕もコマーシャルを見ただけだとそんなに惹かれていなくて、「ステレオタイプなバディものだな」って思いながら観に行った。しかも、主人公のジュディが、最初は理想主義すぎて印象が良くないんですよ。ところが、10分も観ていると彼女を応援せざるを得ない気持ちになってしまう。その演出とシナリオの積み上げ方のうまさとテーマ性がセットになっていて、よく効くようになっていた。
    宇野 後味のコントロールが絶妙なんですよね。物語の中ではすごくキレイに完結してスッキリしている半面、例えば会見のシーン【2】で「自分がジュディの立場だったらどう答えたか?」とか、現実に持ち帰って考えさせるようにしている。政治的なメッセージが鼻につくという人もいるかもしれないけど、現実の問題を作品に取り込むことで、非常に奥行きの深いアニメーションを構築していたと思う。程よくモヤモヤを持ち帰らせているのがとにかくうまい。アニメに現代の現実を持ち込むと、作品の世界が壊れてしまうことも多いけど、本作は、そのバランス感覚が巧みだった。もともとディズニーはこういうことが苦手な印象があったんですよ。ディズニーランドじゃないけど、“夢の国”を作るのがディズニーで、社会的なものを取り込むのはピクサー、という感じで。

    【2】会見のシーン:物語の中盤で、凶暴化した肉食動物たちが隠されていたことが発覚した際、発見者としてジュディが記者会見を行う。そこで「肉食動物の本能の危険性」を語ってしまい、ニックと仲違いすることになった上、社会で肉食動物が迫害されるきっかけを作ってしまう。


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  • 落合陽一自身が読み解く『魔法の世紀』 第6回 デジタルネイチャーをいかに生きるか(毎月第4火曜配信『魔法使いの研究室』)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.651 ☆

    2016-07-26 07:00  
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    落合陽一自身が読み解く『魔法の世紀』 第6回 デジタルネイチャーをいかに生きるか(毎月第4火曜配信『魔法使いの研究室』)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.7.26 vol.651
    http://wakusei2nd.com



    今朝の「魔法使いの研究室」では、『魔法の世紀』の第6章「デジタルネイチャー」を取り上げます。有史以来、人間はイメージと物質の狭間を彷徨ってきました。約500年続いたパラダイムに変化が訪れ、人間・自然・コンピュータの境界線は消失しつつあると説きます。あらゆるものが記述され、計測される超自然の中で我々はいかに哲学を定義し生きていけば良いでしょうか。自身が主宰するラボの名前にも冠される「デジタルネイチャー」の世界観の全容とは――?
    【お知らせ】「魔法使いの研究室」は今回が最終回となります。来月からは、落合陽一さんによる新連載「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」が始まりますので、ご期待ください。

    ▼『魔法の世紀』第6章の紹介

    『魔法の世紀』の最終章である第6章では、来るべき「魔法の世紀」の具体的なビジョンである「デジタルネイチャー」へと至るヒントが語られます。
    人間の感覚器の限界をはるかに超えたテクノロジーの登場と、場としてのコンピューテーショナル・フィールドの構築。「エーテル」という概念の導入――。アナログとデジタルの境界は融解し、コンピュータが森羅万象を記述する、新しい世界の訪れを予見します。


    【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)
    ☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
    (紙)/(電子)
    取り扱い書店リストはこちらから。
    ▼プロフィール
    落合陽一(おちあい・よういち)

    1987年東京生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年より筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。
    音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」が経済産業省「Innovative Technologies賞」受賞,その他国内外で受賞多数。

    『魔法使いの研究室』これまでの連載はこちらのリンクから。

    前回:落合陽一自身が読み解く『魔法の世紀』第5回 コンピューテーショナル・フィールドがもたらす世界の変容(毎月第4火曜配信『魔法使いの研究室』) 


    ▼放送時の動画はこちらから!
    http://www.nicovideo.jp/watch/so28663675
    放送日:2016年4月19日

    ◎構成:長谷川リョー
    ■イメージと物質の境界を超越する
     
    『魔法の世紀』の解説は、今回が最終回となります。最終章のテーマは「デジタルネイチャー」です。

    まずは簡単に、これまでの復習をしておきましょう。前回までは、イメージと物質の話をしてきました。有史以来、我々はイメージと物質のギャップの中にいました。古代人が洞窟の壁に牛や狩猟の様子の絵を描いていた頃から、我々が目で見えている物質世界と、頭の中で処理されるイメージとの間にはギャップがありました。
    たとえば「技術のイデア」という観念について考えてみましょう。これは我々の脳内にはありますが、物質世界には目に見える形で存在していません。人々がイメージを絵画として描いたり、文字として残したりする行為は、そうしたギャップを埋める機能を果たしていたわけです。
    そうした中で、僕はメディアアートに取り組みながら、「コンテンツなき芸術は存在するだろうか?」という問いをずっと抱き続けてきました。普通は、メディアの中にコンテンツがあることによって「芸術」とされるわけですが、コンテンツがなくてもアートは成り立つのではないか。メディアを作り続けることそのものが芸術になるのではないか、という問いです。

    このメディアとコンテンツの関係性が顕著に表れるようになったのは1800年以降のことです。この頃は人類史に残るような発明が相次いているのですが、その一つが写真技術の発明でした。写真はフランスの発明家ニセフォール・ニエプスによって世界で初めて撮影されましたが、世界で最初の写真はとても見れたものではなかった(写真左)。それからわずか20年後には、銀板写真の登場によって、美しく優れた写真が撮れるようになります(写真右)。これは技術の進歩そのものが新しい表現を獲得した、よい例なのではないかと思います。

    僕が普段何をしているかといえば、宇都宮大学にあるレーザー装置でプラズマを作ったり、超音波を出したりしています。これは従来のアーティストのクリエイティブのプロセスとは全然違いますよね。
    僕の最近のテーマは「イメージと物質の境界を超えること」です。例えば昨年に発表した、プラズマを用いて空中に光の絵を描いた『Fairy Lights in Femtoseconds』もその一つですね。イメージのように現れて、物質のように振る舞うようなものを作るのは、なかなか大変なんですが、いずれにしても物質と映像の探求を突き詰めていく中で、頭の中にあるイメージをいかに物体化させるかということが非常に重要になっていきます。ちなみに、ここで僕が言っている「イメージ」はベルクソンが『物質と記憶』の中で言っている「イマージュ」と同義ですね。
    1891年にエジソンがキネトスコープを、1895年にはリュミエール兄弟がシネマトグラフを発明したことで、20世紀は「映像の世紀」となりました。映像文化によって一つの巨大なイメージを大衆が共有する時代の到来です。
    映像技術とは、時間と空間を二次元平面に落とし込むことによって保存を可能するテクノロジーです。そこから我々は、いかにしてモノ自体を記録したり出力したりするか、という領域まで踏み込んできています。今、世界には「ゲノムを編集する」とか「プラズマで触れるホログラムを作る」といった発明を続けている人が大勢います。こうした潮流によって21世紀の世界は変わっていくのではないか、もっと言えば、デジタルネイチャー的になっていくのではないか、ということが『魔法の世紀』には書かれています。
    ■近代的な〈人間性〉という概念の解体

    20世紀のキーワードをもう一つ挙げておくと、「二次元イメージの共有」があります。例えば、宗教革命は活版印刷の発明にともなう二次元イメージの共有によって引き起こされていますし、世界大戦もイメージの共有がもたらした社会変化の一つだと思います。

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  • 月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」7月18日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.650 ☆

    2016-07-25 07:00  
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    2016.7.25 vol.650
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    大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!

    ▲先週の放送はこちらからご覧いただけます!



    ■オープニングトーク
    宇野 時刻は午後11時30分を回りました。みなさんこんばんは、宇野常寛です。そして松岡茉優さん、今夜も生放送お疲れ様でした! 伊藤沙莉副代表も初めまして。いま、手を振っちゃっていますね。
    ところで、「AVALON」はいつの間にか独裁国家になっていますよね(笑)。プレジデントが法案の可決否決を1人で決めているし、予算みたいなやつも勝手に1人で決めているでしょ。これはクーデターの必要がありますよ! 民主化を要求して、僕らで立ち上がりましょう。クーデターというかレボリューションみたいな感じで、僕は松岡さんを代表として新しいプレジデントに据えたいと思いますので。
    ということで、みんな忘れていると思いますが、僕は文化に対しての批評家なんですよ。最近僕のことを知った人は、僕のことを「テレビで政治家の悪口を言っている人」だと勘違いしていると思うんですよね(笑)。でも、違いますからね。僕は「真・善・美」で言ったら、「美」についての評論家なんですよ。今日はその「美」の話から入っていきたいと思います。僕の本来の仕事のために、先週の金曜日にある場所に行ってきました。僕の友人であるデジタルアーティスト、チームラボの猪子寿之さんの内覧会です。この前、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』で特集されていたあの人です。その彼が率いるチームラボが、この夏お台場で「DMM.PLANETS」という展覧会を開催するというので、その内覧会に誘われて行ってきたんですよね。結論から言うと、これが超良かったです。


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  • 京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第6回 坊屋春道はなぜ「卒業」できなかったか――「最高の男」とあたらしい「カッコよさ」のゆくえ(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.649 ☆

    2016-07-22 07:00  
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    今朝のメルマガは「京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録」をお送りします。今回は、『クローズ』『頭文字D』を題材に、男性向けマンガが切り拓いた新境地とその限界について論じます(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年4月29日の講義を再構成したものです)。
    毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第5回 補論:少年マンガの諸問題
    (毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)

    ■『クローズ』とヤンキーマンガのカッコよさ
     さて、前回までは「週刊少年ジャンプ」を中心に少年マンガと戦後日本人の「成熟」感、とりわけ消費社会下の男性性の問題について考えてきました。
     そしてここからは少し角度を変えてこの問題を掘り下げていきたいと考えています。その上で僕がとても重要だと考える作品があります。それは高橋ヒロシの『クローズ』です。いわゆる「ヤンキーもの」のマンガですね。1990年から1998年まで「月刊少年チャンピオン」で連載されていた全26巻のちょっと長い作品です。最近は『クローズZERO』(2007年)で小栗旬、『クローズEXPLODE』(2014年)で東出昌大の主演で話題になったので、知っている人も多いと思います。
     やたらめったらヤンキー高校生が出てきて、延々と派閥抗争を繰り広げる例のアレですね。舞台は鈴蘭高校という、とある地方都市の底辺校です。この鈴蘭高校は「カラスの学校」と呼ばれる不良たちの掃き溜めで、ここでは生徒の大半を占める不良少年たちがいくつかの派閥に別れて、高校の支配者の座をめぐって十年以上ものあいだ抗争を繰り返しています。そして鈴蘭周辺の高校の不良少年グループもこの抗争に外側から干渉し、ほとんど戦国時代のような様相を呈しています。しかも抗争が激しすぎて、この鈴蘭高校は史上まだひとりも校内の派閥を統一した「番長」が生まれていない。こうやって改めて紹介するとなんだか笑ってしまいますが、僕はこのマンガこそが、これまで議論してきた少年マンガと戦後の男性性の成熟の問題を、決定的なかたちでえぐり出してしまっていると考えています。そしてこの『クローズ』はヤンキーマンガに革命を起こしたと言われています。
     では、この『クローズ』のどこがすごいのか。
     まず、このマンガには「大人」がまったく出てきません。それまでの70、80年代のヤンキーマンガは「大人社会へ反抗する」ということを中心的なモチーフにしていました。不良は大人社会に対するカウンター的な存在だったわけです。
     ところが90年代の『クローズ』になると、「大人への反抗」というモチーフがなくなってしまうんです。第1話で主人公が転入手続きをするシーン以外、先生が出てこない。ほかに働いてる普通の大人の人も、OBのおじさんがひとり、たまに顔を出すだけでほとんど出てこないんです。そして次に「女子」がまったく出てこない。
     このふたつはとんでもないことです。要するに『クローズ』の世界には「超えるべき父」も「守るべき女」もない。かつてのように目指すべき大人や、超えるべき「父」は、もうこの世界には存在していない。かといって「女の子をゲットする」ことで男の証を手に入れようとしても、この世界には「女の子」がいないのでそれも不可能です。
     つまり『クローズ』では、昔のような「強くたくましくなり、父を超えて女を守る」という従来のマチズモが信じられなくなった時代のヤンキーもののマンガだったと言えます。その結果、大人社会へ反抗するのではなく不良少年同士の抗争だけが描かれることになった。
     さて、その『クローズ』の物語は主人公の坊屋春道が鈴蘭高校に転校してくるところからはじまります。この主人公の坊屋春道のもつ「カッコよさ」こそが、この作品のメッセージそのものだと言えるでしょう。
     その春道が第1話で「お前は何者だ?」と尋ねられます。そこで春道はこう返すんですね。「オレはグレてもいねーしひねくれてもいねぇ! オレは不良なんかじゃねーし悪党でもねえ!!」と。ヤンキーマンガの主人公がこれを言っちゃうのはすごいですね。大人社会への反抗としての不良、ヤンキーというものがこの時点で全否定されている。
     この時点で作者の高橋ヒロシが、かつてのヤンキーマンガを捨て去り、新しいヤンキーマンガを始めようとしていることが明確にわかります。不良でもなければ悪党でもない、この少年をヤンキーマンガの主人公にしたのは、当時としては画期的でした。では坊屋春道というあたらしいヤンキーがどんな男の「カッコよさ」を示していったのか、見ていきましょう。

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  • 井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第7回 概念の中心性――分けることとつなぐこと【不定期配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.648 ☆

    2016-07-21 07:00  
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    井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第7回 概念の中心性――分けることとつなぐこと【不定期配信】 
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.7.21 vol.648
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    今朝のメルマガは井上明人さんの『中心をもたない、現象としてのゲームについて』の第7回です。言語では定義できない複雑怪奇な〈ゲーム〉という概念。そのモデルを、中心を持つ同心円の構造から、不均一なネットワークへと転換。ハブ的な〈複数の中心性〉、さらにはハブが変化する〈動的なネットワーク〉を措定することで、〈ゲーム〉という概念を捕捉するための新しい方法論を提示します。
    ▼執筆者プロフィール
    井上明人(いのうえ・あきと)
    1980年生。関西大学総合情報学部特任准教授、立命館大学先端総合学術研究科非常勤講師。ゲーム研究者。中心テーマはゲームの現象論。2005年慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。2005年より同SFC研究所訪問研究員。2007年より国際大学GLOCOM助教。2015年より現職。ゲームの社会応用プロジェクトに多数関っており、震災時にリリースした節電ゲーム#denkimeterでCEDEC AWARD ゲームデザイン部門優秀賞受賞。論文に「遊びとゲームをめぐる試論 ―たとえば、にらめっこはコンピュータ・ゲームになるだろうか」など。単著に『ゲーミフィケーション』(NHK出版,2012)。
    本メルマガで連載中の『中心をもたない、現象としてのゲームについて』配信記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:日常的行為としての「ゲーム」を考えるということ (井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第6回)【不定期配信】

    2−3.概念の中心性――分けることとつなぐこと
    2-3-1.概念を分類しないこと(統合できること)の意義について
     何かしらの事象について、分析し、論じようというとき、その内実を細かく区分けし、分類することこそが分析であるかのように語られることがある。特にコンサルタントの方が書いた「ロジカル・シンキング」などのテキストでは、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exahusitive/相互に排他的な項目)な分類をすることが何よりも分析という行為の初歩であるかのように語られていることが多い。そして、極端な場合には、ある概念を分類せずに論じることが愚かだとみなされることもある。
     意思決定支援ツールや、ある種の論理的分析においてMECEな分類は確かに有効なシーンはしばしばあるだろう。しかし、概念を考えるうえで、MECEな分類は、有効な側面はあるが、万能なわけではない。そもそも、分類というのはMECEだけではなく、様々な分類についての概念があり[1]MECEだけが重要だというのは、過剰なMECE信仰であるといっていいだろう。そして、そもそも我々にとって、「分類をする」ということだけが、事象を精密に知るための方法であるのかどうか。まずそこから問い直してみたい。
     そもそも「分類が可能である」ということは、すぐさま「分類して認識すべき」であるということを意味しない。我々は、数多くの日常概念/日常行為を、曖昧なまま、曖昧に使用することで、日々を生きている。それは必ずしも愚かであるということではなく、我々はその曖昧なものによって、そのままコミュニケーションをとることができるということでもある。
     たとえば、意味論を専門とする松本[2]は、多義語についてある概念が、統合可能であるということと、分離可能であるということが同時にありうるということについて述べている。たとえば「つかむ」という語について言えば、次の二つの文が同時に成立可能であることを指摘している。

    a. この記事の趣旨は何とかつかめた。もっとも、物じゃないから、本当につかんだわけじゃない。
    b. この記事の趣旨は、沼のウナギと同じくらい、つかみにくい。

     前者aの文では、「つかむ」という語は分離して把握されている。一方で、後者bの文では、同じ語が、統合した形で使われている。同じ語が、分離できると同時に、統合も可能であるということは一見、ちぐはぐな現象に見えるかもしれないが、これは「つかむ」という語が分離できると同時に、統合も可能であるという両方の性質をもっているということを示しているに過ぎない、という。すなわち、意味の認定に階層性が存在するということを示しているということだという[3]。
     これは、たとえば日本語の「遊び」という語について考えてみれば、次のような事例を挙げることができるだろう。

    c.太郎は、将棋で遊ぶのは好きだったが、女遊びは苦手だった(分離テスト)
    d.太郎は、将棋でも、女でも遊んだ。(統合テスト)

     日本語での「ゲーム」という語は、「遊び」という語と比べると、相対的に多義性は強くないため、このようなセンテンスは作りにくいが、語の意味のブレが、一定の概念の階層性を示すという点については、すでにリンダ・ヒュージの挙げたルーウィ・ルールの事例で論じた通りだ。
     「ゲーム」や「遊び」という語はその意味をさらに切り分けて論じることは可能であるが、同時に、日常生活のなかで、複数の意味をもったまま、そのまま運用し、コミュニケーションを取ることが必ずしも困難ではない語である。
     その意味で、「ゲーム」や「遊び」といった語は、松本が言うところの「概念の階層性」を持っているということができるだろう。
     何かを分析する、というときに、どうそれを分類するかということに注目がされがちだが、ある概念の意味が統合できる、ということはその概念のもう一つの重要な側面だ。何かを分割したり、分類したりするのではなく、その繋がりについて考えていくことが、その概念のありようをうつしだすこともある。それは「分類」によっては把握できない、概念の構造だ。[4]

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  • 「難民アニメ」から見えてくるコミュニケーション型消費の現在(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(3))【毎月第3水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.647 ☆

    2016-07-20 07:00  
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    「難民アニメ」から見えてくるコミュニケーション型消費の現在(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(3))【毎月第3水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.7.20 vol.647
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    今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回は2010年代における男性視聴者向けアニメの動向がテーマ。しばしば「なろう系」と呼ばれる作品群やその他ラノベ原作アニメの現況、そしてゼロ年代日常系アニメがさらに先鋭化した「難民アニメ」の特質について考えます。
    ▼プロフィール
    石岡良治(いしおか・よしはる)
    1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
    『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。

    前回:「動画の時代」がもたらしたアニメ消費の構造転換(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(2))

    ■男性アニメオタクコミュニティの現在
     ここ10年のアニメファンが全般的に「ライトオタク化」しているという話はよく言われることですが、要するに、かつて男性アニメオタクの好物とされた「メカと美少女」が以前と比べてさほど重視されなくなっているのだと私は考えています。この問題については「今世紀のロボットアニメ」を扱うパートで改めて考察する予定ですが、「ヤマト・ガンダム・エヴァ」の三題噺の延長で近年のアニメを語ることの困難、とまとめることができるかもしれません。かつては「メカと美少女」から男性オタクのセクシュアリティについて論じる言説が多く、斉藤環さんの『戦闘美少女の精神分析』(2000年)のような精神分析的オタク論も、そういうフレームのもとでの言説と言えるでしょう。しかし現在では、こうした側面だけではアニメを捉えることが困難になっています。それはもちろん、かつてはアニメソフトをあまり購入しないと言われていた女性アニメファンの影響力の増大などもあるのですが、そもそも男性オタクが無条件的にメカ好きであるとは言えなくなっていることが大きいと思われます。「美少女」要素はもちろん重要であり続けていますが。
     ただし、今でも「メカと美少女」によって駆動されているヒットアニメは数多く、『マクロスΔ』(2016年)も普通にヒットしているように、ガンダムとマクロスという二大ブランドはコンスタントに製作され続けています。加えて、2010年代の深夜アニメにおけるヒット作の一つである『ガールズ&パンツァー』(2012年,劇場版2015年)は、戦車というメカと、美少女の組み合わせという点では、わりと伝統的な男性オタクの嗜好性に沿ったコンテンツということができます。女性ファンもいないわけではないのですが、特に2015年の劇場版では、従来からのファン層である『ストライクウィッチーズ』(2008年-)などに代表される「萌えミリタリー」コミュニティに加えて、広義の映画秘宝系マニアというか、B級アクション映画のファンをも惹きつけてヒットしました。ネットで流布した「ガルパンはいいぞ」という思考停止に見えかねない賞賛コメントは、そういう流れを集約したものと言えます。
     もう一つ「メカと美少女」美学に忠実でありつつコンスタントに続いているシリーズを挙げるなら『戦姫絶唱シンフォギア』(2012-)になると思います。『シンフォギア』シリーズは、SF西部劇ゲーム『ワイルドアームズ』のスタッフによるもので、90年代風の熱血要素が色濃く現れており、ファン以外に広く知られているとは言えません。いわゆる「閉じコン」の様相を呈してさえいるのですが、独特な作風も相まって根強い支持を集め、4期5期と続いていくことが明らかになっています。装甲をまとった戦闘美少女が歌いながら戦うミュージカル要素が独特で、悠木碧や水樹奈々といった声優が息が切れたり、ときに声が安定しないまま歌うバトル場面が魅力でしょう。シリーズが続いている一因としては、歌の要素を活かしたイベントが盛り上がるタイプの作品であることが大きいと思います。
     このように、『ガルパン』や『シンフォギア』は割と伝統的な形式に忠実な部分もあり、事実昔からのアニメファンの支持も多い作品です。具体的に言うなら1972年生まれの私よりも年長のアニメファンですね。けれども『宇宙戦艦ヤマト2199』(2012-2014年)のように年長者専用ということは決してなく(ファンの方すみません)、現在のオタク消費の形態に適応しているからこそ、広い支持を集めているわけです。ここはぜひとも強調したいところで、『シンフォギア』の場合は声優イベントとの結びつきが鍵となっており、そして『ガルパン』は、2010年代アニメの中で、聖地巡礼モデルが最も成功した作品のひとつとなっています。私はこの10年くらいのアニメの動きでは、男性のみがアニメの消費をリードする時代ではなくなったという認識を持っていますが、もちろん男性ファンが中心のこれらアニメも重要な存在感を示し続けています。特に『ガルパン』は、ちょうどポスト3.11期の震災復興とも結びつく形で、茨城県大洗市への聖地巡礼を促すイベントもコンスタントに行われていて、コンテンツツーリズムの現状を考える上でのモデルケースとなっているわけです。

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  • 粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』最終回「なぜ人はライフスタイルを発信するのか」【毎月第3火曜配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.646 ☆

    2016-07-19 07:00  
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    粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』最終回「なぜ人はライフスタイルを発信するのか」【毎月第3火曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.7.19 vol.646
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    本日は、アイランド株式会社代表の粟飯原理咲さんによる連載『ライフスタイルメディアのつくりかた』の最終回をお届けします。なぜ人間はライフスタイルを発信して、またライフスタイルメディアを求めるのか。連載の内容の総まとめとも言える回となります。

    ▼プロフィール
    粟飯原理咲(あいはら・りさ)
    アイランド株式会社代表取締役。国立筑波大学卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社先端ビジネス開発センタ勤務、株式会社リクルート次世代事業開発室・事業統括マネジメント室勤務、総合情報サイト「All About」マーケティングプランナー職を経て、2003年7月より現職。同社にて「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」などの人気サイトや、キッチン付きイベントスペース「外苑前アイランドスタジオ」などを運営する。美味しいものに目がない食いしん坊&行くとついつい長居してしまう本屋好き。
    ◎構成:稲葉ほたて
    本メルマガで連載中の『ライフスタイルメディアのつくりかた』配信記事一覧はこちらのリンクから。
    前回:「特別編:成長期のプロデューサーの「7割主義」仕事術――レシピブログプロデューサー・久永千恵インタビュー」(粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』第7回)
    昨年より7回にわたって続けてきたこの連載ですが、今回で最終回となります。これまでご覧いただいてきたみなさま、本当にありがとうございます。
    さて、これまで「ライフスタイルメディアのつくりかた」というタイトルで主にウェブ関連の話をしてきましたが、いくつかのライフスタイルメディアをつくってきた中で、うまくいったことからも、うまくいかなったことからも、学んだことがひとつあります。
    それは、はじめに「こんな風にしたい!」と夢見て描く「世界観の大切さ」です。
    たとえば、ウェブサービスの世界でよく推奨される「リーン・スタートアップ」。リーン・スタートアップというのは、ざっくり言うと、とりあえず完成度が低くても最少単位でサービスを出してしまって、その後に軌道修正をしていく開発手法のことです。日本では伊藤穰一さんの紹介がついた同名の本で話題になったので、ご存じの方も多いかと思います。
    このリーン・スタートアップの手法でライフスタイルメディアを作ろうとしたときに、機能としての最少単位だけを考えてしまうと、世界観を表現する部分をうっかり削りすぎてしまう危険性があります。

    ▲エリック・リース『リーン・スタートアップ』(日経BP、2012年)
    ■機能のリーンだけでなく、世界観のリーンを同時に考える。
    例えば、この連載でも以前お話した、レシピブログの後にリリースした「子育てスタイル」というサービスのケース。
    このサービスを立ち上げる時、ひとまずレシピブログとほぼ同じ機能を子育て版にアレンジしたものを、ママっぽいデザインにすることで横展開を図ろうとしました。こういう手法は、ウェブでの通常のサービス展開の仕方としてはよくあるものだと思います。
    ところが、それはなかなか上手くいきませんでした。その原因を後で振り返って出てきたのが、「世界観のつくりこみ」の甘さです。「子育てスタイル」は、「お母さんが本当に求める世界観はなんなの?」とか「自分たちが提案したい世界観はなんなの?」というところが、完全にはつくりきれていませんでした。機能として必要なページだけを揃えてスタートしていたのです。結果、サービスのブレイクにはつながりませんでした。
    それに対して、先行して成功していた「おとりよせネット」は逆でした。
    オープンしたての頃は、お取り寄せ品などのデータベースはすごく貧弱だったのですが、なぜか「お取り寄せでホームパーティーをしよう!」みたいなページに、スタッフがものすごい熱意で写真を撮り下ろしていたのです。
    普通にウェブサービス運営の効率を考えたら、「お取り寄せって素敵」みたいなページなんかに力を入れるのは間違っています。別段そのページを何度も見に来る人なんていないし、リピートにつながるかもわからない。費用対効果は一見して、決して良くないように思えます。
    ところが、そこには明らかに私たちが「素敵だ」と考えるような、ひとつの世界観がつくられていたのです。お取り寄せのある生活とは、こんなに豊かで幸せなものなのだ――という、そんな“半歩先の憧れ”に溢れたメッセージがそこにはあったのです。
    そして、私たちはそれがあったからこそ、「お取り寄せって素敵なのかも」とか「お取り寄せしてみたい」みたいな憧れを持ってもらえたのではないか、と考えました。
    その後、レシピブログでは世界観をより一層意識して工夫していくようになりました。その成果は、確かに出てきたように思います。そして、これは今もなお弊社アイランドの重要な考え方になっています。

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  • 月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」7月11日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.645 ☆

    2016-07-18 07:00  
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    2016.7.18 vol.645
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    大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!

    ▲先週の放送はこちらからご覧いただけます!

    ■オープニングトーク
    宇野 時刻は午後11時30分を回りました。みなさんこんばんは、宇野常寛です。そして松岡茉優さん、今夜も生放送お疲れ様でした。いま、ガラス越しに手を振っています! 一週間これが楽しみで生きてますからね。というか「AVALON」って大統領の権限強すぎじゃないですか? 法案の可決否決を大統領がやってますよね。もう超独裁国家ですよね。ちょっと反乱とかやりますか? 僕は松岡さんがジャンヌ・ダルクになるんだったら、その参謀になりますよ。あなたが火あぶりになったとしても、僕はどこまでもついていきます。
    ということでね、なんだか、いきなり政治的な話題から入りましたが、今日は本当に政治の話です。実は僕は今日の午後まで札幌にいたんですよね。まあ、この番組は北海道ではネットしていないので、聞いてる人はあまりいないかもしれませんが、もしかするとYouTubeで毎週聞いてくださっている人がいるかもしれないですよね。北海道にあるフジテレビ系列のテレビ局、UHBこと北海道文化放送の選挙特番でコメンテーターをやってきたんです。地方局の選挙特番のために出張っていう、結構しんどい仕事ではあったんですが、ちょっといろいろと考えて引き受けたんです。


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