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哲学の先生と人生の話をしよう:「彼氏の仕事を応援することができません」
2013-02-25 14:28105pt第23回「彼氏の仕事を応援することができません」相談者:アクアマリンさん(東京都・39歳女性・自営業)Q.國分先生、はじめまして。格好悪い話ですが、ご意見頂ければ幸いです。私には付き合って3か月になる恋人がいます。そこそこ名の知れた企業の会社員ですが、知り合った当初から「会社の中だけで終わるような人間にはなりたくない。そのために会社の仕事とは別に事業を立ち上げて頑張っている」という、男のロマン的な壮大な話を聞かされていました。ただ、その事業の内容についてははっきりと聞かされていませんでした。しかし付き合いが進むにつれ、色々と彼の行動に不信感を抱くようになり問い詰めた所、その事業が某海外ブランドのネットワークビジネスであることを打ち明けられました。ネットワークビジネス…と言えば聞こえはいいですが、早い話がマルチ商法。試しにその会社のHPを見てみると「毎週20%のコミッションが支払われる」「新たな会員を育てればあなたの収入もアップする」他にも、特別ボーナス・豪華旅行・車などの高額賞品・・・出るわ出るわ、胡散臭い誘い文句のオンパレード。やっている本人も「ネズミ講みたいなもんだ」と、あっけらかんと言い放つ始末。それが「男のロマン」なのだとしたら、なんて小っちゃいもんなんだろうとショックというより、情けなさでいっぱいの気持ちになりました。彼は私にその会社の商品を買わせたり、会員にさせたりするつもりはないようで、私自身も「一切関わる気はない」と言い放ってあります。ただ彼は、「この仕事に懸けている。理解してほしい」と言います。そう言う彼がやっている仕事について「理解」はしましたが理解をした上で、「賛成」することはどうしてもできません。出来る事なら止めて欲しいし、必死で阻止したいところですがその道に詳しい方に聞いても、マルチに嵌っている人の洗脳を解くのは本人が大損でもして気づかない限り難しいと言います。こんな怪しい仕事をするような彼とは早い段階で別れてしまった方が得策なのでしょうが、マルチをやっているという部分を除けば良い相手ですし、私も年齢が年齢なので、出産の事などを考えるとどんなに小さな縁でも逃したくないという思いがあります。ただ、いくら私の事は大切にしてくれるとは言え金儲けのために、どこかの誰かを欺くような事をしているのか・・・そんな事実を知っていながら笑って過ごしていていいのだろうか・・・という後ろめたい気持ちは拭うことはできません。説明が長くなりましたが、先生にお尋ねしたいのは相手にわずかでも不信感を抱きながらの付き合いは遠くないうちに歪みが生じ、破綻を招くするものなのかどうか。また男性の立場から見て、自分の仕事に対して理解を示さない、応援する気がないパートナーとは関係を続けることは難しい事なのでしょうか、という事です。よろしくお願いいたします。A. ご相談をお寄せいただきありがとうございます。 非常にセンシティヴな相談内容だと思います。しかし、アクアマリンさんの中ではほとんど答えは出ていて、いまは誰かに背中を押してもらいたい……そういうお気持ちなのではないかとご相談の文面を読みながら考えました。「相手にわずかでも不信感を抱きながらの付き合いは、遠くないうちに歪みが生じ、破綻を招くするものなのかどうか。」 はい。アクアマリンさんがこのように正確に記述している通りであろうと思います。不信感を抱きながらの付き合いは、遠くないうちに歪みを生じるでしょう。 ですが、ここで一点付け加えなければなりません。歪みが「破綻」へと向かうのならば、それはむしろ幸運である。歪みを抱えたまま、歪んだ状態が続いていく可能性こそが最も恐ろしい、ということです。 革命家だったらこんな風に説明するかもしれません。 ……資本主義は矛盾を抱えており、矛盾の堆積はいつか革命を引き起こす。しかし、もしかしたら社会は、矛盾に対する対応策をあれこれと捻出し、矛盾を、その悪質な搾取・抑圧機能はそのままに、しかし決定的な効果はもたない状態で維持するかもしれない。そうなると、矛盾はそのまま維持されていているのに、いっこうに革命は到来せず、搾取と抑圧の止まない社会が続いていくことになる。しかも、社会はある程度その矛盾、すなわち搾取と抑圧に対する対応策を捻出しているから、人々のつらさは、相当なものでこそあれ、許容不可能な程度には達しない。人々はつらいけれども、そのつらさを我慢して、耐えてしまう……。 -
今週の映画レビュー:『ゼロ・ダーク・サーティ』
2013-02-23 00:00【今週の映画】キャスリン・ビグロー監督『ゼロ・ダーク・サーティ』脚本・製作/マーク・ボール 監督/キャスリン・ビグロー出演/ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン、ジェニファー・イーリー、マーク・ストロング2011年5月2日に実行された、国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン捕縛・暗殺作戦。テロリストの追跡を専門とするCIAの女性分析官マヤを中心に、作戦に携わった人々の苦悩や使命感、執念を描き出していく。9・11テロ後、CIAは巨額の予算をつぎ込みビンラディンを追うが、何の手がかりも得られずにいた。そんな中、CIAのパキスタン支局に若く優秀な女性分析官のマヤが派遣される。マヤはやがて、ビンラディンに繋がると思われるアブ・アフメドという男の存在をつかむが……。☆☆☆☆☆ あまりにもアメリカ的な「社会派エンタメ」☆☆【森直人:7点】監督のキャスリン・ -
☆メルマガPLANETS vol.23 ☆ ~いつも応援してくれていますよね~
2013-02-22 07:00315pt━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆ メルマガPLANETS vol.23 ☆ ~いつも応援してくれていますよね~ 発行:PLANETS 2013.2.22 (毎週金曜日発行) http://wakusei2nd.com━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━こんにちは。PLANETS編集部・秘書A子です。今週の金曜日も、「メルマガPLANETS」をお送り致します。今日は、いきなりですが新刊の告知があります!▽宇野常寛『日本文化の論点』,ちくま新書,2013ちくま新書は1994年に創刊され、今年の2月刊行分で通算1,000点を超えられたそうです!1,000点て凄い数字ですね……。そして、記念すべき1,001点目の刊行物として、『日本文化の論点』が発売されます。宇野の単著では初の新書!「分かりやすくて・面白い」をコンセプトに書きました。「『P8』、スゴく面白いのですが、批評の本て普段読まないので、難しくて、ちびちび読んでいます……」というご意見も時折頂きますがこちらの新書はとにかく「分かりやすくて・面白い」。以下のようなトピックを扱っております。一部だけご紹介。-マスからソーシャルへの地殻変動-情報技術の生む新たな「中間のもの」-人間をどのようなものとしてイメージするか-新しいホワイトカラーと東京-地理と文化とインターネット-「夜の東京」を夢想する-クールジャパン戦略会議-二次創作のインフラと日本的想像力-音楽ソフトはなぜ売れなくなったのか-カラオケとJ‐POP-ゲーミフィケーションと社会-「反現実」とファンタジー-「虚構の時代」の終わりと東日本大震災-〈夜の世界〉から社会を変えるために冒頭部分は短期集中連載していたので、皆さんご存じかと思いますが、文体もエッセイ調で読みやすいので、「なかなか忙しくて、じっくり本を読む時間が無い……」という方もお気軽に手に取ってみて下さい。来月、3月5日発売です!あと、今週末は京都、週明けには東京でイベントがありますので、こちらもご紹介。日曜日深夜は、久しぶりにLifeにも登場します!2/24(日)14:30~18:30「アカデミズムの使い方──越境する知と多様化するキャリアパス」@立命館大学★大野光明さん、千葉雅也さん、西田亮介さんとディスカッションです!http://www.r-gscefs.jp/?p=34612/24(日)25:00~28:00「夜遊びのゆくえ」@文化系トークラジオLife★速水健朗さん、西森路代さん、常見陽平さん、斎藤哲也さんらと共演ですhttp://www.tbsradio.jp/life/index.html2/26(火)19:30~22:00原宿シネマ『機動警察パトレイバー2 the Movie』@VACANT★始まってますよ、とっくに…(チケットの発売が)。まだ予約は間に合います!http://www.harajukucinema.com/movie/17.htmlそんな感じで、今号のコンテンツはこちら↓┌───────────────────────────────┐├○ メルマガPLANETS vol.23:2013.2.22├○ ├○ 01.【論点】宇野常寛 ★短期集中連載!!├○ 日本文化の論点├○ 第7回 音楽の快楽をどう語るか├○├○ 02.【人生相談】國分功一郎├○ 哲学の先生と人生の話をしよう├○ 第23回 「彼氏の仕事を応援することができません」├○ ├○ 03.【ルポタージュ】カリホリ├○ テレビでは言えない話├○ 第23回 「紙に拘っていたら死んでしまうよ」├○├○ 04.【インタビュー】この人のこの話がききたい├○ 2月のこの人:與那覇潤さん├○ 第4回 リベラル/アンリベラル、中国化/再江戸化├○├○ 05.【ルポタージュ】稲垣知郎+濱野智史├○ ちろうのAKB体験記├○ 第8回 メジャーデビュー、初めての握手会├○├○ 06.【過去原稿】今週のお蔵出し├○ 2/22のお蔵出し:夢の共演映画から考える、特撮モノの歴史と未来├○ (初出:「サイゾー」2012年6月号)├○ ├○ 07.【研究と探訪】小人論 ――暴走する片思いのメカニズム├○ 第17回 既婚[小人]の精神分析├○ ├○ 08.【クロスレビュー】今週の映画批評 PLANETS映画チーム├○ 2/22の映画:『世界にひとつのプレイブック』├○ ├○ 09.【告知】今週のスケジュール ├○ ├○ 10. 編集後記&次回予告 ├○ └───────────────────────────────┘※一部の連載記事については、「メルマガPLANETS vol.22」からの続きとなっております。▼「vol.22」へのリンクはこちらです。http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar114018未読の方は併せてお楽しみ下さい。┏┓----------------------------------------------------------┗■ 01.【論点】日本文化の論点 ★短期集中連載!! 宇野常寛---------------------------------------------------------------情報化の進行は旧来の=20世紀的な文化論を過去のものにした――。私たちは今、何を欲望し何に魅せられ、そして何を想像/創造しているのか。現代日本の〈文化〉を考えることで、人間と情報、人間と記号、そして社会とのあたらしい関係を考える。---------------------------------------------------------------▼本コンテンツは連載です。前回記事はこちらhttp://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar114018第7回 音楽の快楽をどう語るか 僕の知人の若い映画監督(入江悠)が、あるインディーズ作品(『SR サイタマノラッパー』)が評価され、新宿の大きなシネマコンプレックスで、一日一回のレイトショーで上映されることになったことがあります。最初の何日かは客入りが好調だったのだけど、ある日まったく客が入らない日があった。何事かと思って調べてみると、その日同じシネコンでサッカーのワールドカップの日本代表戦をライブ中継していたことがわかった。「いくらいい映画を撮っても、これでは勝ち目がないと思った。だってこの試合はその日しかやっていない。でも、僕の映画は明日もまったく同じものが上映されるんですから」と僕にこの話をしながら監督は苦笑していました。彼は「映画の敵はもう映画じゃないんですね」とも述べていました。妥当な認識だと思います。 そしてこの問題は、前述した音楽ソフトの消費形態の問題と相似形をなしている。現代の音楽市場は、アイドル、ヴィジュアル系、アニメソング、ボーカロイドでおそらくはその五割以上が占められていると思われます。そして、これらの音楽は従来の音楽ジャーナリズムと音楽ファンから、楽曲に付加価値(キャラクターの魅力)を与えてソフト販売を伸ばしている、と批判されることが多い。そしてこの批判はこれらの音楽の楽曲への批判にまで結びついている。(先日も、有名な音楽雑誌の編集長が「アイドルの楽曲にはソウルやアチチュードを語れない」と発言し、逆にその狭い見識が批判を集めていました。) おそらく、アイドルやV系バンドの楽曲だけを単体で批評していい/悪いを論じることにほとんど意味はない。この種の楽曲はアイドルやバンドメンバーのキャラクターを消費する総合的な体験の一部でしかなく、だとすると楽曲がその体験の中でどう作用しているのかを論じるという視点や、そのアイドルを応援する(消費する)という総合的な体験を論じるという視点がないと意味がないことになる。同じことがアニメソングやボーカロイドの楽曲にも言える。「初音ミク」などのボーカロイドの楽曲は今や、小説、イラスト、漫画などの二次創作を生み出していますが、こうした二次創作への欲望を喚起するインターフェイスとしてのボーカロイド曲、という側面を捉えることなくその楽曲のみを、しかも従来の音楽批評の手法で論じることには、ほとんど意味がないのではないかと思います。 情報環境の変化は「聴く」という体験を大きく変えている。そして人間と音楽との関係性をも大きく書き替えている。こうしたキャラクター的音楽の存在感の爆発的拡大は、この変化を背景にしているものです。しかし残念ながらオールドタイプの音楽消費に親しんでいればいるほど、この変化に鈍感な人が多いのが現実です。そして僕はこういった二〇世紀的な「音楽」観を絶対視して、現代のキャラクター音楽が主流となった音楽市場を批判する人たちや、彼らの勧めるものに、あまり興味をもつことができません。それは「聴く」という体験を、自分たちの世界観を壊さないためにものすごく狭くとらえているようにしか思えないからです。 これは余談ですが、僕が中高生くらいの頃までは、サブカルチャーが好きということはそのまま音楽が好きということを意味していました。洋楽を中心とした音楽が王様で、映画や漫画や小説はそのサブジャンルというイメージだったんですね。 けれど、僕が社会人になるくらいにはインターネットカルチャーやオタク文化が文化好きの若者の関心の中心になっていき、音楽は玉座から転がり落ちていった。この変化の背景には単なるジャンルの流行りすたり以上の、大きくて決定的な変化、人間と情報との関係の変化があることを忘れてはならないと思います。┏┓----------------------------------------------------------┗■ 02.【人生相談】哲学の先生と人生の話をしよう 國分功一郎(哲学者)---------------------------------------------------------------「〈哲学〉とはすなわち〈人生論〉でなければならない……!」そんな確信を抱く哲学者・國分功一郎が恋愛・就職・家族・自己表現……あらゆる悩みに正面から、そして哲学的にこたえる人生相談です。---------------------------------------------------------------第23回「彼氏の仕事を応援することができません」相談者:アクアマリンさん(東京都・39歳女性・自営業)Q.國分先生、はじめまして。格好悪い話ですが、ご意見頂ければ幸いです。私には付き合って3か月になる恋人がいます。そこそこ名の知れた企業の会社員ですが、知り合った当初から「会社の中だけで終わるような人間にはなりたくない。そのために会社の仕事とは別に事業を立ち上げて頑張っている」という、男のロマン的な壮大な話を聞かされていました。ただ、その事業の内容についてははっきりと聞かされていませんでした。しかし付き合いが進むにつれ、色々と彼の行動に不信感を抱くようになり問い詰めた所、その事業が某海外ブランドのネットワークビジネスであることを打ち明けられました。ネットワークビジネス…と言えば聞こえはいいですが、早い話がマルチ商法。試しにその会社のHPを見てみると「毎週20%のコミッションが支払われる」「新たな会員を育てればあなたの収入もアップする」他にも、特別ボーナス・豪華旅行・車などの高額賞品・・・出るわ出るわ、胡散臭い誘い文句のオンパレード。やっている本人も「ネズミ講みたいなもんだ」と、あっけらかんと言い放つ始末。それが「男のロマン」なのだとしたら、なんて小っちゃいもんなんだろうとショックというより、情けなさでいっぱいの気持ちになりました。彼は私にその会社の商品を買わせたり、会員にさせたりするつもりはないようで、私自身も「一切関わる気はない」と言い放ってあります。ただ彼は、「この仕事に懸けている。理解してほしい」と言います。そう言う彼がやっている仕事について「理解」はしましたが理解をした上で、「賛成」することはどうしてもできません。出来る事なら止めて欲しいし、必死で阻止したいところですがその道に詳しい方に聞いても、マルチに嵌っている人の洗脳を解くのは本人が大損でもして気づかない限り難しいと言います。こんな怪しい仕事をするような彼とは早い段階で別れてしまった方が得策なのでしょうが、マルチをやっているという部分を除けば良い相手ですし、私も年齢が年齢なので、出産の事などを考えるとどんなに小さな縁でも逃したくないという思いがあります。ただ、いくら私の事は大切にしてくれるとは言え金儲けのために、どこかの誰かを欺くような事をしているのか・・・そんな事実を知っていながら笑って過ごしていていいのだろうか・・・という後ろめたい気持ちは拭うことはできません。説明が長くなりましたが、先生にお尋ねしたいのは相手にわずかでも不信感を抱きながらの付き合いは遠くないうちに歪みが生じ、破綻を招くするものなのかどうか。また男性の立場から見て、自分の仕事に対して理解を示さない、応援する気がないパートナーとは関係を続けることは難しい事なのでしょうか、という事です。よろしくお願いいたします。A. ご相談をお寄せいただきありがとうございます。 非常にセンシティヴな相談内容だと思います。しかし、アクアマリンさんの中ではほとんど答えは出ていて、いまは誰かに背中を押してもらいたい……そういうお気持ちなのではないかとご相談の文面を読みながら考えました。「相手にわずかでも不信感を抱きながらの付き合いは、遠くないうちに歪みが生じ、破綻を招くするものなのかどうか。」 はい。アクアマリンさんがこのように正確に記述している通りであろうと思います。不信感を抱きながらの付き合いは、遠くないうちに歪みを生じるでしょう。 ですが、ここで一点付け加えなければなりません。歪みが「破綻」へと向かうのならば、それはむしろ幸運である。歪みを抱えたまま、歪んだ状態が続いていく可能性こそが最も恐ろしい、ということです。 革命家だったらこんな風に説明するかもしれません。 ……資本主義は矛盾を抱えており、矛盾の堆積はいつか革命を引き起こす。しかし、もしかしたら社会は、矛盾に対する対応策をあれこれと捻出し、矛盾を、その悪質な搾取・抑圧機能はそのままに、しかし決定的な効果はもたない状態で維持するかもしれない。そうなると、矛盾はそのまま維持されていているのに、いっこうに革命は到来せず、搾取と抑圧の止まない社会が続いていくことになる。しかも、社会はある程度その矛盾、すなわち搾取と抑圧に対する対応策を捻出しているから、人々のつらさは、相当なものでこそあれ、許容不可能な程度には達しない。人々はつらいけれども、そのつらさを我慢して、耐えてしまう……。 革命家だったらここで、「階級意識の外部注入が必要だ」となります。彼らに、自分たちが被搾取階級であることを意識させねばならない!となるわけです。 さて、僕が恐れるのは、アクアマリンさんが、「小さな縁を逃したくない」という気持ちから、このような状態に陥ってしまうことです。アクアマリンさんは、既に「破綻」の可能性を考えていらっしゃる。ということは、この「歪み」を相当に現実的なものとして予感されているということです。これは相当深刻に受け止める必要があると思います。 更に気になるのは、アクアマリンさんが子作りを考えていらっしゃることです。もし歪みを抱えたまま、しかし破綻を迎えずにこの計画が実現しまうと、アクアマリンさんは、〈革命も起こらないが矛盾も解消していない社会〉をお子さんと一緒に耐えなければならないことになるのではないでしょうか? アクアマリンさんだけならばいいです。自分で選んだ責任もありますから。しかし、親は自らが堪え忍ぶ矛盾を必ず子に向けます。絶対にそうします。すると、アクアマリンさんが既に現実のものとして感じている「歪み」は、子にそのまま向かっていくことになるでしょう。僕はこれが本当に恐ろしい。 もう一つ、アクアマリンさんは、「自分の仕事に対して理解を示さない、応援する気がないパートナーとは関係を続けることは難しい事なのか」という質問もなさっています。 こういう質問をなさること自体が、何事かを意味しています。つまり、アクアマリンさんは既に相手の男性から、そのような対応を受けているのではないでしょうか? 「ネットワークビジネス」なるマルチ商法にどっぷり浸かっていて、「会社の中だけで終わるような人間にはなりたくない。そのために会社の仕事とは別に事業を立ち上げて頑張っている」とか口にしてしまうような男が、交際中の女性からそのことにドン引きされたら、普通は「あいつは俺のことが分かっていない」という気持ちになりますよね? アクアマリンさんは既にその男性から、「いま自分が人生をかけているこのマルチ商法に理解を示さないあいつは、そもそも俺を応援する気がないんだ」という無言のメッセージを受け取っているのではないですか? 「男性の立場から見て、自分の仕事に対して理解を示さない、応援する気がないパートナーとは関係を続けることは難しい事なのでしょうか」と書かれた時の「男性の立場」とは、その男性が既にとっている「態度(=立場)」を指していたのではないですか? 僕が冒頭で、いまアクアマリンさんは誰かに背中を押してもらいたい気持ちではないかと書いたのはこういう意味です。 現実的なものとして予想される歪み、そして現実に目の前にある相手の対応。もうアクアマリンさんの心は決まっているのではないですか? 「これはマズいかもしれない……」という気持ちで何かをすることは、一生の後悔を生み出します。これはどんな小さいことについてもそうです。 さて、こうしてお答えしてきたものの、これだけではアクアマリンさんの悩みに答えたことにはなりませんね。相談を読みながら、アクアマリンさんが結婚や子作りに関して、年齢の点から大変焦っていらっしゃることがよく分かりました。これは本当に重大な悩みであると思います。僕も何度か同じ相談を受けたことがあります。そのことについて、そのたびにいろいろと考えてきました。 今の僕の考えはこうです。今で言うところの「婚活」、昔のお見合い、そういったものを恥ずかしがることは全くないということです。もしも焦っていらっしゃるのなら、そういったやり方を一つの可能性として考えてみてください。 よい結婚相手との出会いなんて、はっきりいって僥倖としてしかやってきません。運命の出会いなんてのは、ほとんどないんです。だからこそ、昔の人たちはその場を用意しようとした。それがお見合いです。 僕はお見合いをかつてのように盛んに行うべきだという立場です。別にみんなが結婚しろなんて全く思いません。女の人に「そろそろお嫁にいかないとね」なんてプレッシャーを与えるヤツはくそくらえだ。しかし、結婚したい人がいるのにそれが完全に運命任せなのはおかしい。 アクアマリンさんはお仕事もなさっているようですので、これは単なる一般論として聞いていただきたいのですが、今の社会は、「責任をもった主体が一人で自分の生活をすべて維持する」というモデルにあまりに強く依拠しています。しかし、様々な理由からそれができない人はたくさんいるのです。ならば、誰かと助け合って生きていく際のモデルの一つとして、結婚があってもいい。そして、そのモデルを利用したいのにできない人がいるのなら、やはり社会がきちんと助力すべきではないか。 まだそうした助力はきちんとなされてはいませんが、手助けしてくれる人はいるはずです。アクアマリンさん、よい出会いがないこと、これまでなかったことは、少しも変なことではありません。ですから、出会いを組織する場を恐れず、積極的に活用してください。國分功一郎【人生相談募集!】「人生に悩んでいる」「何となく毎日気が晴れない」「『暇と退屈の倫理学』が面白すぎてつらい」「悩みとは違うんだけど、このことを國分さんに訊いてみたい!」――國分功一郎先生に人生相談をしてみませんか?編集部では、800字程度の相談を随時募集しています。ご希望の方は、お住まいの都道府県・年齢・性別・職業・ペンネーム等をお書き添えの上、wakusei2nd.biz@gmail.com「人生相談係」までご連絡下さい。皆さまからのご相談、お待ちしております!▼執筆者プロフィール國分功一郎1974年生まれ。哲学者、高崎経済大学経済学部准教授。著書に『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社)など。http://ameblo.jp/philosophysellshttps://twitter.com/lethal_notion┏┓----------------------------------------------------------┗■ 03.【エッセイ】テレビでは言えない話 カリホリ(ジャーナリスト)---------------------------------------------------------------マスメディアとソーシャルメディア、「放送と通信の融合」、そしてパブリック・アクセス……激変する情報環境の最先端を覆面ジャーナリスト!?「カリホリ」が、L.A.から発信!---------------------------------------------------------------▼本コンテンツは連載です。前回記事はこちらhttp://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar114018 第23回 「紙に拘っていたら死んでしまうよ」 -
哲学の先生と人生の話をしよう:「ぼくと家族が生き抜くためには何が必要でしょうか?」
2013-02-18 20:01105pt第22回「ぼくと家族が生き抜くためには何が必要でしょうか?」相談者:牛尾千里さん(神奈川県・39歳男性・会社員)Q.今年40になる編集者です。社会人になって15年目、定年を60歳としても、あと最低でも20年、斜陽産業で働かなくてはなりません。飛び出せ、腕一本で稼げ、と仰るかもしれませんが、未就学の子どもが3人。不動産ローンも組んでしまったので、よほどのことがない限り、「社畜」の道まっしぐらです。ぼくは、ぼくの家族は、どうやって生き延びたらいいでしょうか。また、生き抜くためには何が必要でしょうか。特に、どの業界のどの分野で、どんなスキルを持って……、といった偶然性に左右されるような具体的な話ではなく、どのような心構えをもてばいいのか。どのようにふるまえばいいのか。そうした抽象的で精神的な態度について伺いたいです。(あ、でもお手軽で圧倒的に有効な具体策があるなら、それはそれで知りたいですw)また、こうした心構えの問題は、ぼくのようなアラフォーの団塊ジュニアと、それ以上の世代、それ以下の世代、就職活動中の世代で違うでしょうか。同じでしょうか。もし同じなら、彼らにも役立つと思います。よろしくお願いいたします!A. ご質問ありがとうございます。 出版って「斜陽産業」なんですか? 哲学の本って売れないって言われます。大学生の時に受講したクソつまらない「哲学」の先生も「哲学の本なんてまずたくさん印刷してもらえないんだよ」とか言ってました。 僕が書いた哲学の本は30,000部以上売れました。まだ売れてます。哲学の必要を理解してもらうにはどうしたらいいか、どうやったら普段は哲学の本なんか読まない人にも手にとってもらえるか、どういう口調が最も読みやすいか、そうしたことを編集者の方とたくさん何度も話し合って、本当に苦労して丹念に作り上げた結果です。僕は少なくとも100,000部は売らねばならないと思っています。 -
今週の映画レビュー:『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
2013-02-15 19:43【今週の映画】アン・リー監督『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』1960年インド・ポンディシェリに生まれた少年パイは、父親が経営する動物園でさまざまな動物たちと触れ合いながら育つ。パイが16歳になった年、両親はカナダへの移住を決め、一家は動物たちを貨物船に乗せてインドをたつが、洋上で嵐に遭遇し貨物船が沈没。必死で救命ボートにしがみついたパイはひとり一命を取りとめるが、そこには体重200キロを超すベンガルトラがいた。原作/ヤン・マーテル 監督/アン・リー 製作/デビッド・ウォマーク出演/スラージ・シャルマ、イルファン・カーン、タブー、レイフ・スポール、ジェラール・ドパルデュー☆☆☆☆☆ スピリチュアルな体感的トリップムービー☆【森直人:6点】IMAX 3Dで観たら、ちょっと船酔いしたような……。トラと一緒に海を漂う冒険譚も、これだけ映像の体感精度が高いとワクワクを通り越してリ -
☆メルマガPLANETS vol.22☆ ~1秒後の未来にでも、皆で仕掛けたい気分だ~
2013-02-15 07:00315pt━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆ メルマガPLANETS vol.22 ☆ ~1秒後の未来にでも、皆で仕掛けたい気分だ~ 発行:PLANETS 2013.2.15 (毎週金曜日発行) http://wakusei2nd.com━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━こんにちは。PLANETS編集部・秘書A子です。今週の金曜日も、「メルマガPLANETS」をお送り致します。先週末は三連休でしたね~~~ということで、ご覧になりました!?なりました!?DOCUMENTARY of TsunehiroUNOこと、ETV特集!▽“ノンポリのオタク”が日本を変える時~怒れる批評家・宇野常寛~http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2013/0210.html見逃したという方も、ご安心下さいませ。今週末、というか明日2/16(土)の深夜24:30から再放送もあります!いわゆる「ドキュメンタリー」と聞いて想像するような番組とも違った、ディレクターさんのチャレンジ精神に溢れた内容となっております。未見の方は是非この機会にご覧下さい!また、NHKオンデマンドでも視聴可能です。https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2013045979SC000/?spg=P200800001600000ちなみに、わたくし秘書A子も一瞬チラリと映り込んでおります。「もう先週見たよ~」という方もA子を探せ!とゲーム的にお楽しみ頂ければ……そんな感じで、今号のコンテンツはこちら!↓┌───────────────────────────────┐├○ メルマガPLANETS vol.22:2013.2.15 ├○ ├○ 01.【論点】宇野常寛 ★短期集中連載!!├○ 日本文化の論点├○ 第6回 「夜の東京」を夢想する├○├○ 02.【人生相談】國分功一郎├○ 哲学の先生と人生の話をしよう├○ 第22回 「ぼくと家族が生き抜くためには何が必要でしょうか?」├○ ├○ 03.【ルポタージュ】カリホリ├○ テレビでは言えない話├○ 第22回 「三菱に対する告発は取材しないのか?」├○├○ 04.【インタビュー】この人のこの話がききたい├○ 2月のこの人:與那覇潤さん├○ 第3回 成功した「ブロン」├○├○ 05.【ルポタージュ】稲垣知郎+濱野智史├○ ちろうのAKB体験記├○ 第7回 チームA3rd『誰かのために公演』始まる├○├○ 06.【過去原稿】今週のお蔵出し├○ 2/15のお蔵出し:アニメ受容の変化├○ (初出:『メディア芸術アーカイブス』,BNN新社,2012)├○ ├○ 07.【クロスレビュー】今週の映画批評 PLANETS映画チーム├○ 2/15の映画:『ゼロ・ダーク・サーティ』├○├○ 08.【読者投稿】今週の読者の声 ├○ ├○ 09.【告知】今週のスケジュール ├○ ├○ 10. 編集後記&次回予告 ├○ └───────────────────────────────┘※一部の連載記事については、「メルマガPLANETS vol.21」からの続きとなっております。▼「vol.21」へのリンクはこちらです。http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar100305未読の方は併せてお楽しみ下さい。┏┓----------------------------------------------------------┗■ 01.【論点】日本文化の論点 ★短期集中連載!! 宇野常寛---------------------------------------------------------------情報化の進行は旧来の=20世紀的な文化論を過去のものにした――。私たちは今、何を欲望し何に魅せられ、そして何を想像/創造しているのか。現代日本の〈文化〉を考えることで、人間と情報、人間と記号、そして社会とのあたらしい関係を考える。---------------------------------------------------------------▼本コンテンツは連載です。前回記事はこちらhttp://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar100305第6回 「夜の東京」を夢想する しかし、実際の東京はむしろ戦後的な鉄道依存の体質、旧国鉄にターミナル駅とそれに連動した百貨店を中心とした再開発(渋谷ヒカリエなど)に傾きつつあります。しかし「夜の世界」の思想、あたらしいホワイトカラー層の価値観をかたちにするためには、こうした「昼の東京」の再強化に抗うビジョンが必要だと僕は考えています。 冒頭に述べた通り、東京という街は自動車の所有コストが異常に高い。自動車道路網の渋滞も多く、街の規模自体が大きすぎるため鉄道依存がかなり強い。この条件が東京を良くも悪くも縛っている。だとすると自動車で移動できる環境が何らかの形で整うと、東京のもうひとつのかたちが見えるのかもしれない――僕はそう考えています。 一般的にモータリゼーションは都市を拡散させると考えられています。しかしこれは逆の発想もできるんじゃないか。東京のように肥大しきった街では、むしろ鉄道によって街が分断されている(地理が死んでいる)。そこで、車移動の利便性を上げることによって、逆に都市の拡散を防ぐ事ができるのではないか。 地理と文化が切断され、都市から建築へ文化のインフラが移動した現代において、僕たちの都市生活は「××の街に行く」ではなく、「××という建物に行く」という感覚が支配的になります。このとき鉄道網を基準に考えるとどうしても「××の駅前=街に行く」という発想になるけれど、自動車のアクセスなら「大きな駐車場のある××という施設に行こう」という発想に切り替えることができるわけです。 -
哲学の先生と人生の話をしよう(4):「一対一の恋愛関係がクソゲーに思えて仕方ありません」
2013-02-12 14:46105pt第21回「一対一の恋愛関係がクソゲーに思えて仕方ありません」相談者:ハーゲンダッツ大好き♡さん(東京都・22歳女性・大学生)Q.初めまして、こんにちは。突然ですが私は最近彼氏と別れました。すれ違いやらケンカやらを経て、近頃こういう風に思うわけです。ふたりっきりの恋愛関係ってそんなに楽しくねーじゃん、と。いや、実は前からこのことには気づいていたのかもしれませんが、本当にそうだった(爆)!!みたいな感じがあります。 たったひとりの人と一緒に過ごすとかセックスするとか向き合うとか並んで歩くとかやってみると全然楽しくありません。恋愛に「欲を満たす」という条件があるとするなら、私の欲はそんなことでは満たせないのですよ。 ではどうしたいのか。これは簡単で、私はおそらく大多数に「ちやほや」されたいんですね。大多数にデートに誘われ、君と一緒にいたいと言われ、姫扱いされ、それなりの愛を注がれたいと思ってる。正直アイドルとかになりたいですね!(笑)でもこれって私だけがはまっちゃってる穴だとは思えません。こういうこと考えてる女の子って多いんじゃないですか?だとしたらこの感覚って一体なぜ生まれてしまうんでしょう?これがひとつお聞きしたいことです。ていうか恋愛が面白くないのって、相手が悪いとか私が悪い以上の何かを感じます。それにしても、どうしてこんなに面白くないものにめちゃくちゃ価値が置かれているような気がしてしまうんですかね。たとえ恋愛がクソゲーでもクリアしなければ、いや、クソゲーだからこそ容易にクリアしなければならない、というのは一体どういうわけなのか…。我々は選ばれし運命の2人!的世界観に一通り酔ったのち、いつかデート内容もネタ切れし、セックスもマンネリ化し、別れていく…といったなんとも残念な真剣恋愛ゲームよりも、私はさっき言ったような逆ハーレムゲームを賢く楽しく攻略したい。だってそのほうが面白そうです。しかし、だとしたら今ひとり対ひとりの恋愛ってどうなんでしょう?やっぱ不可能なんですかね?楽しくなることはないのでしょうか?クソゲー云々言いつつも、私はたったひとりを選ぶことに完全に否定的なわけではありません。むしろ本当は求めてるんじゃないかとすら思います。そういう存在を。では、今いかに一対一の恋愛関係は可能なのか。これが2つめのご相談です。長くなりましたが、以上が私の人生相談です。よろしくお願いします。A. 相談をお寄せいただきありがとうございます。 ハーゲンダッツ大好きさんの文章を読みながら、「なんかこういう雰囲気の文章ってどっかで読んだことあるなぁ」って思ってずっと考えていたんですが、思い出しました。 ケータイのメアドを新しくした後、しばらくするとなぜか送られてくるようになる、出会い系サイトのサクラが書いた文章にそっくりです。 「ただ、遊んでくれるだけでいいんだけどぉ」とか、「やっばい、大学生になってから私の性欲爆発かも(爆)!!」とか「会ってホテルに直行とかでもいいんですけどね!(笑)」とか……そういうことが書いてあるメールですね(爆)!! ほんとバレバレなのによく書くよね!(笑) 実際にこうやって僕もマネして書いてみると分かるんですが、こうした口調に通底しているのは、古い言い方ですけれど、「なんちゃって」という雰囲気ですね。つまり、真剣なところまで行くようで行かない。 ハーゲンダッツ大好きさんがそういう「なんちゃって」と言いたい精神状態に陥っているのは、誰がどう見ても、ハーゲンダッツ大好きさんが──ご自身ではそれを否定するでしょうが──彼氏と別れて傷心の状態にあるからでしょうね。 付き合っている間、一生懸命にやってみたけれど、結局こうなってしまった。だから、まるで木の高い所になっているブドウが採れなかったがために「あのブドウはすっぱいんだ」と自分に言い聞かせたキツネのように、「誰かと一対一で付き合うのは楽しくないんだ」と自分に言い聞かせている。 -
今週の映画:『つやのよる』
2013-02-09 03:26【今週の映画】行定勲監督『つやのよる』家族を捨て、艶(つや)という名の女性と駆け落ちをした男、松生は、艶がガンに侵されこん睡状態に陥ったことを現実として受け止められず、自らの愛を確かめるため艶がかつて関係をもった男たちに、艶の死期を知らせるという考えを思いつく。一方、すでに過去の存在だった艶の危篤を知らされた男たちと、その妻や恋人、子どもらは、それぞれの人生に突然割り込んできた艶という女の存在に困惑する。原作/井上荒野 脚本/伊藤ちひろ、行定勲 監督/行定勲音楽/coba 主題歌/クレイジーケンバンド 出演/阿部寛、小泉今日子、野波麻帆、風吹ジュン、真木よう子、忽那汐里、大竹しのぶ☆☆☆ 「中年化」した行定勲が行く道の難しさ【森直人:3点】クレイジーケンバンドの主題歌『ま、いいや』(これは名曲)がリードする予告編は良かったのに、実際の本編は2時間18分の上映時間が、さらに長く感じた。 -
☆メルマガPLANETS vol.21☆ ~履修者が2人しかいない超不人気講義でした~
2013-02-08 07:00315pt━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆ メルマガPLANETS vol.21 ☆ ~履修者が2人しかいない超不人気講義でした~ 発行:PLANETS 2013.2.8 (毎週金曜日発行) http://wakusei2nd.com━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━こんにちは。PLANETS編集部・秘書A子です。今週の金曜日も、「メルマガPLANETS」をお送り致します。皆さん、今週も一週間お疲れさまでした。明日から三連休ですね~。そしてこの三連休は、重要な露出が2つあります!何より、まずはこれでしょう。この枠で、若手の評論家が登場するのは初めてとのこと。2/10(日)22時より、NHK ETV特集にて、宇野のドキュメンタリーが遂に放送になります!▽“ノンポリのオタク”が日本を変える時~怒れる批評家・宇野常寛~http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2013/0210.htmlナレーションはなんと、AKB48の横山由衣さんが担当。果たしてどんな内容に仕上がっているのか、実は編集部も予め内容を観ている訳ではないので、どきどきしながら、TVの前に全裸正座待機の予定なのです。こちらが外部の方から見た「P8舞台裏」だとしたら、前日の2/9(土)19時半は内部から明かす「P8舞台裏」。▽宇野常寛トークイベント「PLANETS vol.8のすべて」@高田馬場10°CAFEhttp://live.nicovideo.jp/gate/lv123970284チケットは既に完売していますが、会員の方は中継にて視聴可能です。 -
哲学の先生と人生の話をしよう(3):「交際相手が自分の言葉で話してくれません」
2013-02-04 21:19105pt第20回「交際相手が自分の言葉で話してくれません」相談者:アマランさん(埼玉県・23歳女性・大学生)Q.國分さんこんにちは。私の相談事は、恋人の男性が自分の言葉で話をしてくれないということです。何か返答を求めると、本の引用や、本そのものを引っ張り出し、他人の言葉を引用してきます。悩んでいる様子を見せると、楽曲のURLなどを送ってきます。私が自分の気持ちを伝えても、相手からは引用や、完成された音楽による返答しかないことに少々不満を感じております。また、お互いすれ違いで喧嘩になったとき、私が怒っているときなどは「どうすればいいかわからない」「どうすればいいか教えて」と言ってきます。私は、自分で考え、自分で感じたように行動してほしいのです。でも本人には言えずにいます。彼自身は、とても優しく、真剣だというのがわかるからです。自分の言葉で話さない、ということが、彼への侮蔑に値する、という自覚があるからです。ちなみに、それ以外の時何を話しているかというと、本当にたわいもないことです。また、彼は基本的に無口です。いつも何を考えているのかわかりません。教えてほしいと思いますし、中身が空っぽで自分の言葉で話せない人なのではないかと不信感もあります。一番の悩みはそこでして、私は実際、中身が空っぽなんじゃないかと、彼を少し見下している自分をどうにかしたいのです。彼は中身が空っぽなのでしょうか。自分の言葉を話さず他人の引用ばかりする彼を、私はどう信頼していけばよいでしょうか。愛する恋人を見下す自分がとてもいやで、ご相談させていただきました。ご返答いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。A. 相談ありがとうございます。 それにしても、アマランさんの彼氏に対する見下しはハンパないですね。すこし確認しましょうか。 最初に出てくるのが、「少々不満」。これは遠慮気味に書いているわけですね。ところがその後、かなり唐突に「侮蔑」という言葉がでてきます。「少々不満」という言い方では抑え切れなかったんでしょうね。本音に近い言葉が出てきたという感じです。 そしてこの後ですよね。 すさまじいです。「中身が空っぽ」「中身が空っぽ」「中身が空っぽ」 三回も書いているんですよ? 僕だったら、単なる知り合いに対しても、「中身が空っぽ」「中身が空っぽ」「中身が空っぽ」 なんて三回も書けませんよ。 ところがその後アマランさんはわざとらしく「愛する恋人」なんて書いているわけです。これって簡単な話で、「中身が空っぽ」「中身が空っぽ」「中身が空っぽ」 って三回も書いてしまったから気が咎めて、「いや、この人はとってもいい人なの。私はこの人を愛しているのよ」と自分に言い聞かせるように書いているわけですよね。「中身が空っぽ」「中身が空っぽ」「中身が空っぽ」 って三回も酷い言葉を浴びせかけることができる相手が、「愛する恋人」であり得ますかね? アマランさんは恋人を「愛している」のではなくて、自分のプライドを維持するために利用しているんじゃないですかね?
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