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  • 【特別寄稿】「香港雨傘運動——リトル・ピープルの宴会にようこそ」/香港中文大学講師・張彧暋【PLANETSアーカイブス】

    2020-04-17 07:00  
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    今朝のPLANETSアーカイブスは、香港中文大学講師で社会学者の張彧暋(チョー・イクマン)さんの寄稿を掲載します。2014年9月に行われた「雨傘運動」と呼ばれる、香港の普通選挙を求める抗議運動を、張さん自身のリアルタイムの体験とオタクならではの喩えをまじえつつ、メディア論と社会学の観点から徹底解説します。※本記事は2014年11月7日に配信した記事の再配信です。


     
    ▼関連記事
    ・東アジアのネット受容を探る――社会学者・張彧暋に「香港的インターネット」事情を聞いてみた
    ・2020年、押し寄せる大量の中国人観光客にどう対応するか? 6年後の東京に迫られる課題 ――社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)インタビュー
     
    ▼関連動画
    ・香港の社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)が現地から語る「雨傘革命」の現在(2014年10月6日放送)
    ・香港の社会学者・張イクマンが現地から日本のアニメに例えて語る「雨傘革命」、その後(2014年10月21日放送)※日本の各メディアでは、このたびの香港でのデモ運動を「雨傘革命」「傘の革命」と呼ぶケースが多いですが、本記事では張イクマンさんの現地の感覚をそのままお伝えして「雨傘運動」と表記いたします。

    ──平和を愛する香港市民たちが、87発の催涙弾を打たれた。そして、ビッグ・ブラザーがガタガタと壊死していくのを、目の前で目撃した──
    9月28日。マスクをつけ、七色の折り畳み傘を持った無数のリトル・ピープルたちが、蜂起した。日曜日だから、彼らは多分お昼ぐらいまで寝ていて、起きぬけの午後1時半に、警察が学生に暴行したことを新聞で読み、ニュースで発表された警察による脅迫的な声明の中継を見て、びっくりしたことだろう。それから、ゆっくりランチを食べ、午後3時ごろに、オクトパスカード(※日本のSuicaやPiTaPaのような、多くの交通機関で使える共通のカード)で地下鉄に乗り、学生たちを助け、支援するために香港政府本部の近くに殺到した。催涙スプレー(胡椒成分で作られたペッパースプレー)は怖いから、みんな予めキッチンでラップを、シャワー室でタオルを拾い、折り畳み傘を準備した(警察が「長い傘は武器と見なす」と言ったからだ)。どれも日常生活用品だ。やる気のある人は、レインコート、水、医薬品なども用意した。もちろん、スマートフォンで数人の友人たちにLINEやFacebookで連絡してから、である。
    そして3時半を過ぎると、人が多くなりすぎて、政府本部の前の高速道路に溢れ始めた。ちょうどその頃、筆者も起きたところで、LIVE中継で行政長官(※香港の首長は行政長官であり、首相や知事のような存在にあたる)の記者会見をみた。まったくの無駄話だったせいか、ニュースは10分の後に、そのうんざりした顔は飛ばされ、LIVE画面は道路に人が溢れているシーンに移った。めでたしめでたし。
     

    ▲催涙弾の初日、リトル・ピープルの勇戦(ニュース)
     

     
    人がゴミのようだ。
    警察の鉄壁の防御を前に、インチキな卵たち(※この表現は村上春樹のエルサレム賞受賞時のスピーチに由来している。ここで村上は体制を「壁」、抵抗する民衆を「卵」に例えた)は勝てる気がしない……はずだった。警察は防御線から一方的に催涙スプレーを射撃した。それはあたかも、『銀河英雄伝説』の大艦隊のシーンのようだった。七色に彩られた平和主義者のリトル・ピープルたちは、傘とマスクとラップを装備し、多少の痛みを耐えながら、顔面にスプレーを受けた。
    そろそろ午後6時になろうとしていたとき。なんと、催涙弾が発射された。香港のお茶の間の前に、みな一緒に汚い広東語の言葉を発しただろう(※香港での日用語は広東語)。逃げ回る七色の傘を持った小人たち。ちょうど各テレビ局のニュースタイムに、ハリウッド映画の迫力シーンにも負けないスペクタクルな中継が行なわれていた。(政府の対応のタイミングの悪さはもはや定番となっている。同じミスは延々と2週間以上に続いている。まったく懲りていない。)
    散ったはずのリトル・ピープルは、夜になってもずっと現場近くをうろうろして回っていた。マックで休憩して、同じ「島宇宙」(※これは宮台真司の言葉で、同じ趣味や価値観を持ったものだけの小さなコミュニティのこと)の友達と話して、Facebookのリアルタイム情報を見てから、なんとまた鉄壁の前に戻った(えぇ!?)。
     

    ▲当日、無限に湧いてくる絶対平和主義者のリトル・ピープル。恐ろしい(無数の坂田銀時が増殖している)。特に28:00から。夜7時のニュース現場中継。

    今度は私も、友人のリトル・フォー(小四)さんらと連れ立って5人一緒に、半分ゲーム感覚で、地下鉄に乗り駅を出てから補給駅で防具を貰い、戦場に行った。
    「壁と卵」の有名な比喩を使った村上春樹も愕然とすることだろう。壁に面した卵は、別に自分が壁にぶつかって犠牲になるわけでもなく、蹂躙され無駄に死ぬ覚悟もなく、卵は単に自分の命を守りながら、命懸けでも、あくまで「100%平和」的なやり方で戦う。精神論的に革命を唱えるのでもなく、ネットでリアルタイムの情報を拾っているだけ。「民主」という理想に尽くしながらも、ゲーム的な遊び精神半分、やる気満々で、自分たちの合理な判断で、香港の市街地で「安全な遊撃戦」を4週間以上も続けている。撤退を繰り返しながらも、またどこかから沸いてくる。まるで『人類は衰退しました』で描かれた妖精のようだ――奇跡も混乱も起こしながら、絶対に自分の命を守り、命に関わる暴力が振るわれれたら即退散する。或いは、果敢で暴力の前に怯えずに立っている。
     

     

    ▲当日のニュース詰め合わせ。画面だけでも楽しめるはず。初日はハリウッド映画級大製作。実は夜11時ごろは、銃撃の警告を受けてまじでびびり……ながらも、占領はすでに他の中心部に絶賛拡散中。馬鹿じゃないの? 香港政府と警察は。ちなみに、この日からみんな催涙弾に適応した。スタートレックのボーグのように。
    銀時とスネークの香港人――隠れていても、催涙弾を浴びても、ビデオだけは忘れずに
    香港人はまるで『銀魂』の主人公・坂田銀時そのものだ。リトル・ピープルたちは100%平和(暴力が大嫌いで、インチキな妖精たち)と愛(自己を守るエゴイストで、フレキシビリティのあるエコノミック・アニマル)を信じ、ユーモアのセンスにあふれ、精神論的な革命を信じないようだ。気楽に友人と遊んでいて、万事(よろず)屋=市場万能主義者の香港人は、普段は政治に無関心に見えるが、なぜか時にハリウッド映画の小さなヒーローのようにもなれるのだ。
     


    ▲ビック・ブラザーの暴走:逃げる卵も許されない。そのおじさんは、まるで少林サッカーに出そうなとりかかったヒーロー。まだ警察を説得するぜ。英字幕つき。

     
    または、雨傘運動の参加者はみんな『メタルギア・ソリッド』の主人公・スネークそのもの。絶対に戦わず、NO KILLで、隠れて無線情報を見ながら、いたずらしながら、ユーモアのセンスも忘れずに、カメラで写真とビデオを撮りながら、次々と不可能なミッションを達成している。ただ、香港人のアイテムはダンボールではなく、折り畳み傘だ(これは、絶対平和主義のシンボルである)。
    両者の共通点は「ユーモアのセンス」、そして隠し持っている「燃えたぎる熱血」。戦場でも、パロディー精神を忘れるな。後で振り返ると、この運動は、ずっとこの香港的なユーモアによって支えられてきた。そして、N次創作によるパロディと、ネットを象徴する流通性・フレキシビリティによって、政治とマスコミによって作られた現実をハッキングした。
    そう、キーワードは、スマートフォンとネット。
    情報社会とは何か:香港版
    みな手を上げ(スマートフォンもしっかり握っているが)、降参しながら「ビッグ・ブラザー」たる警察に圧迫をかけた。この現場を目撃していたのは、マスメディアだけではなく、携帯電話のカメラたちであった。無数のスマートフォンを通じ、画像とビデオがネットに拡散していった。
    誰でも、この情報化の時代の中で「画像こそ真相」という、香港ネット文化の中心である「高登フォーラム」(Golden Forum)の決めゼリフを知っている。政府と親北京派のマスコミも「自演自作」の脚本を100%コントロールしきれず、ネットで繰り広げられている無数の情報と画像とビデオによって、彼らの嘘と暴言が無残にも暴露された。悪いことをした警察も、暴力をふったチンピラも、学生の中に潜り込んだスパイも、ネットの追跡板で身元がばれ、彼らの家や店は、もはやネットでの「ギャグ」の対象──「絶対あいつらの家に、ピザとワンタンメンの出前を注文するなよ!」「絶対あいつらの店に悪戯の予約を入れるな!」などなど──になっていた。こういうネットの注意スレはやはり恐ろしい。例えば、チェーンショップのアルバイトさんが「警察から、1000個のハンバーガーの注文が殺到したんだけど、どうしよう?」とスレで書けば、「絶対胡椒を入れるな!」という返事が返ってくる。本当かどうかはわからないが、少なくとも「警察が集団で下痢になった」という記事は、3回ぐらい読んだ。こうして、破綻した政府の茶番劇は、半月も「ダダ漏れ」状態が続いている。
    ブルース・リー(李小龍)氏が言う「友よ、水になれ」のように、人の波が、情報の「透明な嵐」が、形のない水のように、時にかたちになって滝になり、市街地という無尽に変化する容器に入り、香港の都市空間全体がネットをフル活用して「無敵の巨人」を溺れさせた。Facebookのウォールという歴史に刻まれていく時間の流れの中で、巨人が簡単に死ぬわけではないが、日常と非日常の境がのない空間にやがて溶解していってしまうだろう。
    香港の都市生活とは?――催涙弾を浴びても、終電で帰る前にデザート屋でマンゴープリン
    もともと、政府と親北京派は「『占領中環』(※この「雨傘運動」より以前にも起こっていた、米ウォール街占拠行動に呼応した、香港の政治・経済の中心である中環=セントラルを占拠しようという運動のこと)が、経済と都市生活を麻痺させる」と、繰り返しプロパガンダで脅迫してきた。しかし、実際に一番恐ろしいのは、香港人の経済合理性と柔軟性である。そして、もともとの社会運動ももはや形はなく、24時間都市である香港では、地下鉄ネットワークとミニバスがあれば「ここではない、どこか」でもバリケードされた占領地になりうる。
    結果として、もともと中年インテリによって始められた、セントラルという金融街でただ座り込みをするだけの「占領中環」キャンペーンも、警察が一年以上にわたって対策を練っていた「アンチ・占領中環」計画も、あっという間に無意味なものになった。実際この運動の主戦場は、中環(セントラル)から歩いて10分、金鐘(ガムチョン)という無機質な乗換駅にある政府本部周辺だ。人々は政府本部を包囲し、催涙弾に攻撃され、銃撃の警告をうけ、もはや機能していない「大会」によるネットの撤退宣言で刺激され、全員が逃げた(これは多数の市民が犠牲になった1989年の天安門事件の教訓でもあるが)。
    香港都市の地理知識がポイントになる。当日はこの金鐘という乗換駅は一時的に閉鎖されていた(余談だが、香港の鉄道オタクはおそらく全員、この史上最初の快速運転に乗りに出ていた。私も含む)。リトル・ピープルたちはやむを得ず、西なら中環(セントラル)へ、東なら湾仔(ワンチャイ)の駅へ歩いて拡散。中環では、重装備された警察に勝てないので、全員東に行った。私ももともと中環に歩いて行ったつもりだが、100メートル前方での催涙弾の発射を見て、あわてて逆方向の東の湾仔に歩いていった。11時ごろに、湾仔駅前に帰ろうと思ったら「『銅鑼湾』(コーズウェイベイ)でも占領があるよ』というネットの呼び掛けを見た。女性の参加者を帰していたので、好奇心で友人と二人で歩いて見に行った。もともと「とりあえずデザートでも食べてから12時45分の終電で帰ろう」と、普段通りの香港友達との遊びのパターンを考えていたのだった。
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  • 今夜20:00から生放送!倉田徹×張彧暋×福嶋亮大×宇野常寛「続・香港のデモから僕たちが考えるべきこと」2019.11.5/PLANETS the BLUEPRINT

    2019-11-05 07:30  
    今夜20時から生放送!「PLANETS the BLUEPRINT」では、 毎回ゲストをお招きして、1つのイシューについて複合的な角度から議論し、 未来の青写真を一緒に作り上げていきます。 今回のゲストは、立教大学法学部政治学科教授の倉田徹さん、 立命館大学国際関係学部准教授の張彧暋さんと、 立教大学文学部文芸思想専修准教授・文芸批評家の福嶋亮大さん。 香港で逃亡犯条例改正に反対するデモが始まってから、およそ半年が経ちました。 今回は、ゲストの皆さんとともに、今もなお揺れる香港の現状から、 政治や文化、文明のあり方に至るまで、わたしたちが考えるべきことについて話し合います。 ▼放送日時2019年11月5日(火)20時〜☆☆放送URLはこちら☆☆https://live.nicovideo.jp/watch/lv322363157▼出演者倉田徹(立教大学法学部政治学科教授) 張彧暋(立命館大
  • 2020年、押し寄せる大量の中国人観光客にどう対応するか?6年後の東京に迫られる課題――社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)インタビュー(PLANETSアーカイブス)

    2019-05-10 07:00  
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    今朝のPLANETSアーカイブスは、香港出身の社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)氏のインタビューをお届けします。2020年の東京オリンピックの課題は、「外国人にどう東京の・日本の魅力をアピールするか」ではなく、押し寄せる中国人観光客にどう対応するかであるという張氏。そして、日本ポップカルチャーの東アジアでの「実際の受け取られ方」とは――!?(聞き手・構成:中野慧)※本記事は2014年7月29日に配信された記事の再配信です
    ■2020年、東京には大量の中国人観光客が押し寄せる
     
    ーー張さんは、2020年の東京オリンピックの開催についてどのようなことを考えていますか。
    張 私は香港人なので、やっぱり観光客としての目線で捉えていますね。2008年に北京オリンピックがあって、2012年にロンドン、その次に2016年にリオ・デ・ジャネイロがあって、その後が東京オリンピックなわけですよね。たとえば2008年の北京オリンピックって、かつて1964年に開かれた東京オリンピックと性格が似ていたと思うんです。チャン・イーモウさんの劇場型の開会式に見られるように、工業化と経済発展のさなかの中国にとっては、ナショナリズムが盛り上がるクライマックスの時期でした。
    それに対して2020年の東京って、すでに工業化自体は完了しているわけですよね。宇野さんが「PLANETS vol.9」でやろうとしているプロジェクトも、工業化社会ではなくサービス・エコノミーやクリエイティブ・エコノミーの側面を打ち出していこうというものだと思います。
    ▲『PLANETS vol.9 東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト』
    その一方で面白いのは、2013年に日本に来た観光客の数は年間1000万人ぐらいで、一番多いのは韓国で、次に台湾、中国、香港で、やっぱり東アジアの国々が大半なわけです。そして東アジアのなかでも、韓国・台湾・香港と日本の経済構造は近似性が高い。すでに製造業が衰退し、新しいサービス、新しい体験が発展している。経済構造が近いということは観光に求めるものも近いということで、これらの国から来る観光客は、たとえば秋葉原に代表されるようなサブカルチャーであったり、いろんな温泉体験であったり、美味しい食事であったり、カフェ巡りだとか、ファッションだとか、美術館に行くことを目的にしていたりする。香港の例を出すと、5-10年前までは東京に来ても日用品などを買っていたわけですが、今は韓国や台湾からの観光客と同じように、消費だけではなく文化体験のほうにゆっくりと方向性が変わっていっています。
    ですが中国からの観光客はまだ工業化時代のメンタリティが強く、ナショナリズムと経済の成長と国の誇りを一緒に考えています。たとえば香港には去年、年間5000万人の観光客があのちっぽけな島に来て、大半が中国大陸からの観光客でした。彼らが求めているのはサービスではなく、ブランド品と日常用品の買い物です。そしてその5000万人の観光客はそろそろ香港には飽きてきて、今は台湾に進撃中です。そして台湾ではたくさんの中国人観光客が溢れて、マナーが悪いということで非常に問題になっている。
    で、2020年の東京オリンピックを考えるとやはり、韓国・台湾・香港やヨーロッパ人、アメリカ人はともかくとして、そういう中国の観光客に対してどう対応するかが課題になってくると思います。たとえば、彼らが求めているのは必ずしも秋葉原のサブカルチャーだけではなくて、薬品を買いに来たりとか……。
    ーーえっ。薬品って、何のことですか……?
    張 香港でいま一番多い店は薬局なんです。観光客がいろんな美容品とかサプリメント、もしくは赤ちゃんのための粉ミルクを求めるからですね。中国はとにかく社会に対する信任(Trust)があまりにも低くて、信頼性の高い、体に良い製品を買い求めるんです。
    ーー「外国人にどうやって興味を持ってもらうか」ということだけではく、むしろ中国の人たちがたくさん押し寄せるのはもう確実だから、どうやって対応するかを考えないといけないということですね。
    張 そう。対応といってもホテルの数のようなインフラの話や、サービスをどう充実させればよいかという問題ではなく、とにかくすごい人数が来るから、そこにどうやって対応するかということですね。
    年間数千万の観光客が東京に溢れて薬局で薬を買ったり粉ミルクを買ったりとか、もしかするとホテルでダブルベッドに10人が寝ているとかそういう光景も繰り広げられたりするかもしれない。おそらく東京の生活リズムを破壊されていくし、都市の景観自体もすっかり変わってしまいます。
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  • 【特別寄稿】「香港雨傘運動——リトル・ピープルの宴会にようこそ」/香港中文大学・張彧暋 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.196 ☆

    2014-11-07 07:00  
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    【特別寄稿】「香港雨傘運動――リトル・ピープルの宴会にようこそ」香港中文大学・張彧暋
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.11.7 vol.196
    http://wakusei2nd.com


    ▼プロフィール
    張彧暋(チョー・イクマン)
    1977年香港生まれ。香港中文大学社会学研究科卒、博士(社会学)。同大学社会学科講師。「日本・社会・想像」「日本社会とアニメ・漫画」などを担当。専門は歴史社会学と文化社会学。鉄道史・鉄道オタクを研究し、最近は日本サブカル産業と流通、二次創作と著作権問題を研究。香港最初の日本サブカル同人評論誌『Platform』の編集長を務める。
     
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    ■平和を愛する香港市民たちが、87発の催涙弾を打たれた。そして、ビッグ・ブラザーがガタガタと壊死していくのを、目の前で目撃した――
     
    9月28日。マスクをつけ、七色の折り畳み傘を持った無数のリトル・ピープルたちが、蜂起した。日曜日だから、彼らは多分お昼ぐらいまで寝ていて、起きぬけの午後1時半に、警察が学生に暴行したことを新聞で読み、ニュースで発表された警察による脅迫的な声明の中継を見て、びっくりしたことだろう。それから、ゆっくりランチを食べ、午後3時ごろに、オクトパスカード(※日本のSuicaやPiTaPaのような、多くの交通機関で使える共通のカード)で地下鉄に乗り、学生たちを助け、支援するために香港政府本部の近くに殺到した。催涙スプレー(胡椒成分で作られたペッパースプレー)は怖いから、みんな予めキッチンでラップを、シャワー室でタオルを拾い、折り畳み傘を準備した(警察が「長い傘は武器と見なす」と言ったからだ)。どれも日常生活用品だ。やる気のある人は、レインコート、水、医薬品なども用意した。もちろん、スマートフォンで数人の友人たちにLINEやFacebookで連絡してから、である。
    そして3時半を過ぎると、人が多くなりすぎて、政府本部の前の高速道路に溢れ始めた。ちょうどその頃、筆者も起きたところで、LIVE中継で行政長官(※香港の首長は行政長官であり、首相や知事のような存在にあたる)の記者会見をみた。まったくの無駄話だったせいか、ニュースは10分の後に、そのうんざりした顔は飛ばされ、LIVE画面は道路に人が溢れているシーンに移った。めでたしめでたし。
     

    ▲催涙弾の初日、リトル・ピープルの勇戦(ニュース)
     

     
    人がゴミのようだ。
    警察の鉄壁の防御を前に、インチキな卵たち(※この表現は村上春樹のエルサレム賞受賞時のスピーチに由来している。ここで村上は体制を「壁」、抵抗する民衆を「卵」に例えた)は勝てる気がしない……はずだった。警察は防御線から一方的に催涙スプレーを射撃した。それはあたかも、『銀河英雄伝説』の大艦隊のシーンのようだった。七色に彩られた平和主義者のリトル・ピープルたちは、傘とマスクとラップを装備し、多少の痛みを耐えながら、顔面にスプレーを受けた。
    そろそろ午後6時になろうとしていたとき。なんと、催涙弾が発射された。香港のお茶の間の前に、みな一緒に汚い広東語の言葉を発しただろう(※香港での日用語は広東語)。逃げ回る七色の傘を持った小人たち。ちょうど各テレビ局のニュースタイムに、ハリウッド映画の迫力シーンにも負けないスペクタクルな中継が行なわれていた。(政府の対応のタイミングの悪さはもはや定番となっている。同じミスは延々と2週間以上に続いている。まったく懲りていない。)
    散ったはずのリトル・ピープルは、夜になってもずっと現場近くをうろうろして回っていた。マックで休憩して、同じ「島宇宙」(※これは宮台真司の言葉で、同じ趣味や価値観を持ったものだけの小さなコミュニティのこと)の友達と話して、Facebookのリアルタイム情報を見てから、なんとまた鉄壁の前に戻った(えぇ!?)。
     

    ▲当日、無限に湧いてくる絶対平和主義者のリトル・ピープル。恐ろしい(無数の坂田銀時が増殖している)。特に28:00から。夜7時のニュース現場中継。
     
    今度は私も、友人のリトル・フォー(小四)さんらと連れ立って5人一緒に、半分ゲーム感覚で、地下鉄に乗り駅を出てから補給駅で防具を貰い、戦場に行った。
    「壁と卵」の有名な比喩を使った村上春樹も愕然とすることだろう。壁に面した卵は、別に自分が壁にぶつかって犠牲になるわけでもなく、蹂躙され無駄に死ぬ覚悟もなく、卵は単に自分の命を守りながら、命懸けでも、あくまで「100%平和」的なやり方で戦う。精神論的に革命を唱えるのでもなく、ネットでリアルタイムの情報を拾っているだけ。「民主」という理想に尽くしながらも、ゲーム的な遊び精神半分、やる気満々で、自分たちの合理な判断で、香港の市街地で「安全な遊撃戦」を4週間以上も続けている。撤退を繰り返しながらも、またどこかから沸いてくる。まるで『人類は衰退しました』で描かれた妖精のようだ――奇跡も混乱も起こしながら、絶対に自分の命を守り、命に関わる暴力が振るわれれたら即退散する。或いは、果敢で暴力の前に怯えずに立っている。
     

     

    ▲当日のニュース詰め合わせ。画面だけでも楽しめるはず。初日はハリウッド映画級大製作。実は夜11時ごろは、銃撃の警告を受けてまじでびびり……ながらも、占領はすでに他の中心部に絶賛拡散中。馬鹿じゃないの? 香港政府と警察は。ちなみに、この日からみんな催涙弾に適応した。スタートレックのボーグのように。
     
     
    ■銀時とスネークの香港人――隠れていても、催涙弾を浴びても、ビデオだけは忘れずに
     
    香港人はまるで『銀魂』の主人公・坂田銀時そのものだ。リトル・ピープルたちは100%平和(暴力が大嫌いで、インチキな妖精たち)と愛(自己を守るエゴイストで、フレキシビリティのあるエコノミック・アニマル)を信じ、ユーモアのセンスにあふれ、精神論的な革命を信じないようだ。気楽に友人と遊んでいて、万事(よろず)屋=市場万能主義者の香港人は、普段は政治に無関心に見えるが、なぜか時にハリウッド映画の小さなヒーローのようにもなれるのだ。
     


    ▲ビック・ブラザーの暴走:逃げる卵も許されない。そのおじさんは、まるで少林サッカーに出そうなとりかかったヒーロー。まだ警察を説得するぜ。英字幕つき。

     
    または、雨傘運動の参加者はみんな『メタルギア・ソリッド』の主人公・スネークそのもの。絶対に戦わず、NO KILLで、隠れて無線情報を見ながら、いたずらしながら、ユーモアのセンスも忘れずに、カメラで写真とビデオを撮りながら、次々と不可能なミッションを達成している。ただ、香港人のアイテムはダンボールではなく、折り畳み傘だ(これは、絶対平和主義のシンボルである)。
    両者の共通点は「ユーモアのセンス」、そして隠し持っている「燃えたぎる熱血」。戦場でも、パロディー精神を忘れるな。後で振り返ると、この運動は、ずっとこの香港的なユーモアによって支えられてきた。そして、N次創作によるパロディと、ネットを象徴する流通性・フレキシビリティによって、政治とマスコミによって作られた現実をハッキングした。
    そう、キーワードは、スマートフォンとネット。
     
     
    ■情報社会とは何か:香港版
     
    みな手を上げ(スマートフォンもしっかり握っているが)、降参しながら「ビッグ・ブラザー」たる警察に圧迫をかけた。この現場を目撃していたのは、マスメディアだけではなく、携帯電話のカメラたちであった。無数のスマートフォンを通じ、画像とビデオがネットに拡散していった。
    誰でも、この情報化の時代の中で「画像こそ真相」という、香港ネット文化の中心である「高登フォーラム」(Golden Forum)の決めゼリフを知っている。政府と親北京派のマスコミも「自演自作」の脚本を100%コントロールしきれず、ネットで繰り広げられている無数の情報と画像とビデオによって、彼らの嘘と暴言が無残にも暴露された。悪いことをした警察も、暴力をふったチンピラも、学生の中に潜り込んだスパイも、ネットの追跡板で身元がばれ、彼らの家や店は、もはやネットでの「ギャグ」の対象――「絶対あいつらの家に、ピザとワンタンメンの出前を注文するなよ!」「絶対あいつらの店に悪戯の予約を入れるな!」などなど――になっていた。こういうネットの注意スレはやはり恐ろしい。例えば、チェーンショップのアルバイトさんが「警察から、1000個のハンバーガーの注文が殺到したんだけど、どうしよう?」とスレで書けば、「絶対胡椒を入れるな!」という返事が返ってくる。本当かどうかはわからないが、少なくとも「警察が集団で下痢になった」という記事は、3回ぐらい読んだ。こうして、破綻した政府の茶番劇は、半月も「ダダ漏れ」状態が続いている。
    ブルース・リー(李小龍)氏が言う「友よ、水になれ」のように、人の波が、情報の「透明な嵐」が、形のない水のように、時にかたちになって滝になり、市街地という無尽に変化する容器に入り、香港の都市空間全体がネットをフル活用して「無敵の巨人」を溺れさせた。Facebookのウォールという歴史に刻まれていく時間の流れの中で、巨人が簡単に死ぬわけではないが、日常と非日常の境がのない空間にやがて溶解していってしまうだろう。
     
     
    ■香港の都市生活とは?――催涙弾を浴びても、終電で帰る前にデザート屋でマンゴープリン
     
    もともと、政府と親北京派は「『占領中環』(※この「雨傘運動」より以前にも起こっていた、米ウォール街占拠行動に呼応した、香港の政治・経済の中心である中環=セントラルを占拠しようという運動のこと)が、経済と都市生活を麻痺させる」と、繰り返しプロパガンダで脅迫してきた。しかし、実際に一番恐ろしいのは、香港人の経済合理性と柔軟性である。そして、もともとの社会運動ももはや形はなく、24時間都市である香港では、地下鉄ネットワークとミニバスがあれば「ここではない、どこか」でもバリケードされた占領地になりうる。
    結果として、もともと中年インテリによって始められた、セントラルという金融街でただ座り込みをするだけの「占領中環」キャンペーンも、警察が一年以上にわたって対策を練っていた「アンチ・占領中環」計画も、あっという間に無意味なものになった。実際この運動の主戦場は、中環(セントラル)から歩いて10分、金鐘(ガムチョン)という無機質な乗換駅にある政府本部周辺だ。人々は政府本部を包囲し、催涙弾に攻撃され、銃撃の警告をうけ、もはや機能していない「大会」によるネットの撤退宣言で刺激され、全員が逃げた(これは多数の市民が犠牲になった1989年の天安門事件の教訓でもあるが)。
    香港都市の地理知識がポイントになる。当日はこの金鐘という乗換駅は一時的に閉鎖されていた(余談だが、香港の鉄道オタクはおそらく全員、この史上最初の快速運転に乗りに出ていた。私も含む)。リトル・ピープルたちはやむを得ず、西なら中環(セントラル)へ、東なら湾仔(ワンチャイ)の駅へ歩いて拡散。中環では、重装備された警察に勝てないので、全員東に行った。私ももともと中環に歩いて行ったつもりだが、100メートル前方での催涙弾の発射を見て、あわてて逆方向の東の湾仔に歩いていった。11時ごろに、湾仔駅前に帰ろうと思ったら「『銅鑼湾』(コーズウェイベイ)でも占領があるよ』というネットの呼び掛けを見た。女性の参加者を帰していたので、好奇心で友人と二人で歩いて見に行った。もともと「とりあえずデザートでも食べてから12時45分の終電で帰ろう」と、普段通りの香港友達との遊びのパターンを考えていたのだった。
     
  • サブカルチャーだから描ける現実とは?――香港の社会学者・張彧暋と宇野常寛が語る『機動戦士ガンダムUC』 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.170 ☆

    2014-10-02 07:00  
    220pt

    サブカルチャーだから描ける現実とは?
    ――香港の社会学者・張彧暋と
    宇野常寛が語る『機動戦士ガンダムUC』
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.10.2 vol.170
    http://wakusei2nd.com


    本日のほぼ惑は、香港の社会学者・張イクマンさんと宇野常寛の、『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』についての対談をお届けします。"富野殺し"を謳ったUCは本当にそれを実行できたのか。香港の社会学者と宇野常寛が「政治」の側面から読み解きます。
    初出:サイゾー2014年9月号
     
    ▼プロフィール
    張 彧暋(チョー・イクマン)
    1977年、香港生まれ。香港中文大学社会学研究科卒、博士(社会学)。同大学社会学科講師。専門は歴史社会学と文化社会学。香港最初の日本サブカル同人評論誌『Platform』の編集長を務める。
     
    ◎構成:佐藤大志
     
     
    ■40代男性の即物的欲望しか描けない"ロボットアニメ"の残念さ張 『機動戦士ガンダムUC』(以下、『UC』)、おもしろくなかったわけではないのですが、はっきり言ってしまうとこれまでのガンダムシリーズの二次創作にすぎないというか、結局30年経っても富野由悠季さんの引力から逃れられていない、というのが全体の感想です。私は正直にいえばそこまでガンダムにすごく詳しいわけではないので、今回この対談の前に、香港のガンダムファンコミュニティで一番有名で”香港のシャア”いう異名も持つショーイ・リョーン(梁栄忠)さんという方にも意見を聞いたのですが、彼も同じ感想でした。彼は「富野ガンダムと比べて新しい観点があるかどうか」という評価基準なのですが、その点で結局『UC』は富野ガンダムを超えることができずに、ガンプラの宣伝アニメにしかなれなかったのではないか、と。そうした発展性の無さがはっきりわかるのは、戦闘シーンと、誰かしらおじさんが主人公のバナージ・リンクス(※1)に説教をするシーンを交代でやっているところですよね。全7話で、毎回同じようにその2つの場面を繰り返し続けるという、ある意味新しい(笑)様式美になってしまっていた。(※1)バナージ・リンクス …私生児として育つも16歳のときに偶然謎の少女オードリー(=ミネバ)と出会い、実は自身の父が政財界に君臨するビスト財団の当主であることを知る。父が死に際に託したユニコーンガンダムに搭乗し、オードリーと共にラプラスの箱の謎をめぐる戦いに足を踏み入れてゆく。

     
    宇野 僕はひたすらその説教が続くところにうんざりした。あの中で言われている説教は一行で要約できて、「世の中は複雑なんだから、多面的なものの見方をしていこう」程度のことしか言ってないんだよ。普通に社会に出て働いたりしていれば自然に学べることを、なんでわざわざロボットアニメで言わないといけないんだ、と思う。あの説教からは、バブルには間に合わなかったけどネット以降の本当の”ニュータイプ”の世界にも間に合わなかった、中途半端な自意識を抱えてうじうじしている40代くらいのオッサンたちの無駄に高いプライドと自信のなさだけが伝わってくる。説教の部分を全部取り払っても『UC』のストーリーって成り立つでしょう。わざわざ限られた分数を割いて、絵を停滞させてまで原作者である福井晴敏が説教にこだわったというのは、ある種の戦後日本人男性のメンタリティの弱さがここまで及んでしまっているという症例としておもしろかったくらいだよ。
    張 宇野さんは「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)の連載で『UC』について、フル・フロンタル(※2)の立場をプラグマティズムとし、バナージ・リンクスの側を陰謀論者だという図式で論じられてましたね。私は国際関係論から考えると別の見方もできると思っていて、あれはリアリストと社会構築主義者の図式ともいえるんじゃないか。フル・フロンタルのほうが、権力と金で交渉を行う現実主義者で、バナージはアイデアと理念を重視する社会構築主義者。
     
    (※2)フル・フロンタル…ネオ・ジオン軍残党「袖付き」の首魁である大佐。「赤い彗星の再来」と呼ばれ、素顔や声もシャアとよく似ている。実際は、もともとシャアに似せて作られた人工ニュータイプ(強化人間)。ラプラスの箱を奪取することで連邦と取り引きをし、ジオンの自治権保持を延長させることで「コロニー共栄圏」構想を実現させようとする。

     
    宇野 僕はフル・フロンタルはすごくいいと思う。なぜなら彼はリアリストでありながら、ちゃんとロマンを持っているから。一方でバナージたちは、「ラプラスの箱」に隠されたこの世界の秘密が暴露されれば世界は変革できると考えていて、これは完全な陰謀史観だよ。そこには日本の戦後民主主義のダメな部分が表れてしまっていると思う。ネット右翼や”放射脳”もそうだけど、イデオロギー回帰が陰謀論としか結びつかなくなってしまっているのが戦後70年のこの国の帰結なんだよ。そんなバナージ側が善玉であって、実現可能な達成を積み重ねていくことで理想を実現させようというフル・フロンタルが悪役になってしまうというのはすごく象徴的だと思う。
    張 それが日本の戦後図式だというのはわかるんだけど、たとえば私のような香港の人間が見たときにはまた少し受け取り方が違ってくる。それは「ガンダムがどうやって国境を超えるか」という問題でもあるんですが、香港は1997年に中国の一部になって、自治都市として成立した。つまり、宇宙植民地サイドです。そして中国が地球連邦にあたる。そうした状況で香港人が『UC』を観ると、現在進行中の香港を含めた東アジア政治そのままの状況に見えると思う。要するに、工業化に成功して経済的発展も遂げつつある中国が東アジアにその力を拡大している真っ最中に、香港あるいは台湾、そして日本がどうやって対応していくのか? という読み方です。そこでは、現実主義者であるフル・フロンタルのような、可能な限りの交渉カードを持って向こうと妥協していくという対話のやり方と、バナージのようなイチかバチか革命の可能性に賭けるというやり方が交互に繰り返されている。80年代以降の日本の戦後想像力で『UC』を読みとくと、宇野さんの言うようにプラグマティズムVS陰謀論という読み方になるのは賛成です。でももう少し広げて、ガンダムの東アジアにおける拡散の仕方を考えると、そういう捉え方もあると思います。
    宇野 それはでも、『進撃の巨人』(講談社)が香港では「巨人=中国」「人類=香港」という比喩として捉えられたといわれているのと同じで、日本ではそんな文脈はないんですよ。むしろ日本においては、たとえば戦後民主主義的な反戦もの以外大っぴらに戦争映画を作ることができない戦後の状況があって、サブカルチャーの中に歴史や政治というテーマが忍ばざるを得なかった経緯がある。そのせいで直接的な政治的課題から想像力を育むことができなくなってしまって、ポリティカルフィクションは後退してしまった。そのことと、実際にイデオロギーや政治に対してビジョンを持とうとしたときにどうしても陰謀論が召喚されてしまう問題は、つながっていると思う。そうした部分を見て取ってしまって、『UC』は日本のダメなところの結晶なんだなと思ってしまう。
     
     
    ■「富野殺し」どころか表現の乏しさが際立った
     
    張 私がもうひとつ気になったのは、血のつながりを重視しすぎている点ですね。高貴な血でつながったブルーブラッドというのは、すごく前近代的な発想だと思う。
    宇野 富野由悠季が80年代当時に描いていたものにはいくつかの道があって、ひとつは当時の現実に対して、前近代的なある種の”ノーブルな血”によって越えていこうというもの。 
  • 東アジアのネット受容を探る――社会学者・張彧暋に「香港的インターネット」事情を聞いてみた ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.149 ☆

    2014-09-02 07:00  
    220pt

    東アジアのネット受容を探る――社会学者・張彧暋に「香港的インターネット」事情を聞いてみた
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.9.2 vol.149
    http://wakusei2nd.com


    今日のほぼ惑では、コミケのために8月いっぱいまで日本を訪れていた香港中文大学講師・社会学者の張彧暋(チョー・イクマン)さんに、「香港のインターネット」についての事情を伺いました。香港独特のインターネットの使い方と、そこから見えてくる中国本土や日本との文化・政治的風土の共通点、そして相違点とは――?

    ▼プロフィール
    張彧暋(チョー・イクマン)
    1977年香港生まれ。香港中文大学社会学研究科卒、博士(社会学)。同大学社会学科講師。「日本・社会・想像」「日本社会とアニメ・漫画」などを担当。専門は歴史社会学と文化社会学。鉄道史・鉄道オタクを研究し、最近は日本サブカル産業と流通、二次創作と著作権問題を研究。香港最初の日本サブカル同人評論誌『Platform』の編集長を務める。
     
    ▼関連記事
    ・2020年、押し寄せる大量の中国人観光客にどう対応するか? 6年後の東京に迫られる課題 ――社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)インタビュー
    ・【Kindle本】小林よしのり、萱野稔人、朴順梨、與那覇潤、宇野 常寛『ナショナリズムの現在――〈ネトウヨ〉化する日本と東アジアの未来』
     
    ▼関連動画(一昨年、宇野常寛が香港を訪れたときに行ったニコ生です)・宇野常寛が香港同人業界の凄い人たちと世界の真実について語ってみた ・宇野常寛が香港の学生さんの質問にひたすら答えてみた 

     
    ◎聞き手:稲葉ほたて/構成:中野慧
     
     
    ■やっぱりICQは出会いに使われていた
     
    ――先日、PLANETSのBBQパーティでお伺いした、香港のインターネット事情が面白かったんです。今日は、張さんの目から見た香港ネット事情をざっくばらんにお聞かせください。そもそもインターネットに触れ始めたのは、いつぐらいからなんですか?
    張 97年に、当時私が通っていた大学のコンピュータ室にネットが導入されて、そのときにインターネットとメールができるように勉強し始めたのが最初です。大学ではやることがなくて、ネットで日本のアニメや電車といったオタク系のサイトばかりを見ていましたね(笑)。
    ネット接続は最初はモデムだったんですが、99年か00年ぐらいにはもう光ファイバーが導入され始めましたね。これは日本と違ってかなり早いんじゃないでしょうか。
    ――日本の99年はADSLが開始した年なので、まだまだテレホーダイの時代じゃないですかね。香港はかなり早いですね。
     

    ▲90年代後半以降、日本ではNTTが提供した23-8時までの時間帯で定額でインターネットを利用できるサービス「テレホーダイ」が人気となり、「テレホマン」と言われるAAも生まれた。日本のFTTH(光通信)は、2001年に有線ブロドネットワークス(現在のUSEN)が開始。
     
    張 通信環境で言うと、97年はまだペイジャー(日本でいうポケベル)だったんですが、98-99年ぐらいにはもう携帯電話になっていました。日本と違って携帯電話にインターネット接続機能がなかったから、パソコンのほうのインターネット接続がすぐ光回線になっていったんですね。

    01-02年はBBSやフォーラム形式の掲示板を使い始めました。その頃はICQも流行っていて、宇野さんとも親しい、我が香港悪友の小四(リトル・フォー)さんはICQを使った女の子のハンティングの名人でしたね。コピペでいきなり何百個の人に一斉送信して、しかも結構返事が来たり、デートできたりしていた。出会ってからいきなりブスとか……という英雄談は、00年代前半まで続いていました。

     

    ▲ネットから拾ってきたICQの画面。ICQは、インスタントメッセンジャーの草分け的なサービス。
     
    ――ああいうメッセンジャーツールの系譜は、やはり「出会い」に使われるんですね(笑)。
    張 そうですよ。そのあと、MSNメッセンジャーに移って、最近はWhats AppとLINEですね。ちなみに、このところWhats Appは政府側の人々がよく動員に使っていますから、後で説明するGreat Firewallでブロックされていません。
    ゼロ年代前半になると、ブログと同じ時季に、Xangaという日記サイトが流行りました。例えば、中学生ぐらいの子たちのあいだで交換日記のように使われていたんです。
    そのあと、私自身はは05年から07年まで日本に留学していたので、ミクシィを始めています。実は、香港ではスマホが出現するまでSNSはあまり流行らなくて、Facebookがいきなり入ってきたイメージです。ただ、私はいまでもミクシィの方が使いやすいですけどね……。
     
     
    ■改革派の独身男性が集まる「ホンコン・ゴールデン」
     
    張 ただ、むしろ香港でその時期から流行りだしたのは、「香港高登」(ホンコン・ゴールデン)というサイトです。これは一言でいうと、理性に溢れた明るい2ちゃんねるのようなものです(笑)。せっかくなので一緒に見ながら話しましょう。
     

    ▲「香港高登」(ホンコン・ゴールデン)。サイトの右側は話題別のフォーラムになっている。一般用は「吹水区」(「喋りすぎて水を吹く」という意味)
     
    ゴールデンはもともと香港で一番有名なコンピュータショッピングサイトだったんですが、今はもはや香港サブカルチャーの代表的な場所です。サイト内の「フォーラム」という場所でいろいろなおしゃべりをする文化が生まれ、その後は香港のネット文化を牽引する存在になりました。
     

    ▲あるフォーラムでは乃木坂46についての情報が交換されていました。
     
    ゴールデンは会員登録をして利用するんですが、これはハンドルネームで登録することができます。男性ユーザーのことを「Brothers」、女性ユーザーのことを「Sisters」と言って、青い文字で表示されるのが男性、赤い文字が女性なんです。
    ――ハンドルネームの色で性別を分けるんですか。それにしても、なにやら日本人に馴染みのある文字のハンドルネームが多いのですが……。
    張 日本のポップカルチャーを使ったハンドルネームが多いんです。そこで話されているネタも、日本のコンテンツの話が多いですよ。
    あと、アダルトビデオの女優さんの名前をつける男性なんかも多いですよ。私は、日本で一番グローバルな文化はAVだと思います。香港の男性には大変な影響力ですよ。波多野結衣さんにRioさん、つぼみさんも人気ですね。アダルトビデオに出演したらその後の人生が大変なので、日本以外の国ではなかなか女性は出演しないのです。
    ――いや、でも名前につけるのは想像を超えてます(笑)。でも、共産党下でここまでエロネタが公然とアリになってるのは面白いですね。
    張 むしろ共産党にとって、エロや娯楽は大事なガス抜きなんです。ですから、中国の本土なんて言論の自由もないし海外への接続もできない代わりに、いまやGreat Firewall(金盾:ジンドゥン=中国国内での検閲システム。グーグルやフェイスブック、ツイッターなどへの接続を遮断している。万里の長城の英語名「Great Wall」になぞらえている)に囲まれたエンターテイメントの楽園みたいになっているでしょう。日本のアニメ動画が大量に違法アップロードされているYoukuやTudouなどの動画サイトは、中国政府は積極的に放置していたりします。
    大陸のインターネットは、完全に消費主義的というか、動物的なものですね。香港の人は、中国のインターネットというのは娯楽の場としてはいいけど、言論の場としてはありえないと思っています。
    ――香港のゴールデンは、昔の2ちゃんねるのような、独身男性の溜まり場みたいな感じですか?
    張 若い独身男性がメインユーザーですが、女性もいます。例えば、「女神」と言って、ゴールデン上で有名になった女性に、男性ファン(「観音兵」)がつくという現象があります。ゴールデンの女神たちは行動派で、デモなどの社会運動をやっていたり、選挙にも影響力を持っていたりしますね。彼女たちは大変に「意識が高い」のです。
    ――どこかの国の「女神」みたいにエロい写真でサービスする存在じゃないんですね……。
    張 でも、宇野常寛さんの「小人論」に繋がるような話題はあります。初めて宇野さんから話を聞いたときには、まさに女神と観音兵の間で起きている話だと思いましたよ(笑)。
     
     
    ■香港のネットでも実況がブーム!?
     
    ――サービスを使っていくなかで生まれた、プラットフォーム運営者も想定していなかったような独自の「使い方」の文化ってあります?
    張 日本の2ちゃんねるでも行なわれている「実況」は流行っていますね。いま見たら、たとえばアメリカのNBAを実況しているスレッドがありますね。主に流行っているのはテレビドラマやアニメの実況です。
    香港では、映画が70-80年台に世界中で人気を博し、勢いがありました。そこから80-90年代には文化の中心がテレビドラマに移って盛り上がったんですが、00年代に入ってめちゃくちゃつまらなくなってしまった。そうなってくると、画像をキャプチャして、みんなで「つまんないね」とか言って実況して笑ったほうが面白いですよね(笑)。
    ――「最近のテレビドラマは糞だな」とか言いながら実況するアレですか(笑)。
    張 現在の香港のテレビドラマって、本当に物語の構造がほとんど一緒になっていて、弁護士や医者などの職業の男性たちと、何人かの女性が痴話喧嘩をして、彼氏彼女を交換してを繰り返していくだけなんですよ。しかも、これをやっていると番組が終わらないので、終わらせようとするときは必ず一緒にバーベキューをするという法則があります。そうなると、実況は盛り上がりますよね。
    ――定番展開のテンプレが共有されているわけですね。
    張 全部ゴールデンでネタ化されています。こういうネタは日本と同じように、ネット上で成立過程などがまとめられていて、よく使われるキャプチャ画像なども整理されています。
     

    ▲香港網絡大典
     

    ▲香港ネット民がよく使うというキャプチャ画像。淫夢的な何かを感じさせられます。
     
    ちなみにWikipediaだと中国大陸の側からの編集攻勢が激しくなるので、この「香港網絡大典」にまとめられているというわけです。
    ――日本の中川淳一郎さんがよく「ネットユーザーは実はマスコミが大好き」みたいな話をしますが、香港でも、やはりテレビのようなマスコンテンツはネタ消費に最適なんですね。
    そういえば、香港のネット関連で有名な事件といえば、「エディソン・チャン事件」(2008年1月、香港俳優のエディソン・チャンが、女性たちとのベッドシーンを撮影した写真がインターネット上に流出した事件)がありましたが……。
    張 そう、エディソン・チャンの写真流出騒動のときは、ゴールデンのBrothersがzipファイルで配って広めていましたね……。そもそも日本のアダルトビデオや美少女ゲームをBrothesがアップして、それをダウンロードするという文化があったんですよ。だからエディソン・チャン事件のファイルも、リンク先に行けば誰でもダウンロードできるようになっていたんです。
    面白いのは、当時の警察やマスコミはこういう事件に慣れていなかったから、Brothersたちが共謀して「ファイルをダウンロードするには会員登録してください」というウソの情報を流して、警察がそれに釣られてしまい、警察側の情報がぜんぶ暴露されたりしていました。
    ――ううむ……理性のある2ちゃんねる……要は昔の「fusianasan」みたいなノリですね。
    張 そうですね。当然、警察も「こんなわいせつな写真を第三者に配布するのは法律違反です」と怒ったんですが、ゴールデンのBrothersたちは「第三者じゃなくて友達だったらOKですね」という解釈を行い、Brothersはみんなが友達だということでさらに拡大してしまいました。新しいPublic(公共)の誕生の瞬間ですよね。
    ――でも、共産圏の警察と聞くと、ついソルジェニーツィンの小説みたいなのを思い浮かべちゃいますけど、我々が想像しているよりはぬるくて安心しました(笑)。張 ちなみに、大体年2-3回、党大会や天安門事件の日とか、香港返還記念日に大型デモ発生する日とか、あるいは靖国参拝に抗議とか、敏感な時に中国大陸では日本の漫画やアニメのサイトが一斉閉鎖されるので、中国のネット住民は大変なことになります。あと、「エロ撲滅絶賛キャンペーン中」は一番やばいですね。みんなうつになる。
    でもやはり中国共産党からすると、エンターテインメントとショッピングはガス抜き装置として重要だから、規制とかはせずむしろ基本的には放置です。また、大陸発のショッピングサイトである「タオパオ」なんて、香港の人もよく利用しています。
     

    ▲中国最大のショッピングサイト「タオパオ」
     
    これは、ある意味では香港のネットにおける最大のエンターテイメントかもしれないですね。
    このサイトで中国の山奥にある工場と直接対話すると、何でも作って配送してくれるんです。例えば、新作アニメのコスプレが欲しかったら、このサイトから直接交渉すれば大変に安い価格で数日後には届きます。日本のECサイトのような面倒な会員登録作業も要りません。
    ――もはや著作権も特許もあったものじゃないですが(笑)、凄いなあ。四次元ポケットみたいですね。
    張 だから、3Dプリンタなんて要らないんです。安い分、品質はそれなりですが。
     
     
    ■プラットフォームと政治思想の結合
     
    張 もちろん、ゴールデンのBrothersたちはエロ一辺倒ではなく、同時に政治の話もしたりしていますよ。
     

    ▲ゴールデンのフォーラム。若月佑美、梅田彩佳を名乗る人がスレ立てをしているようです……。
     
    中国大陸では05年ぐらいからインターネットが流行り始めて、香港-中国間での衝突もこのあたりを境に始まります。それから以後は、香港や中国の政治社会状況は、ある意味、ネットにつられていくようになっていきます。
     
    そもそも、香港ではみんなオフィスで平気でネットをやるんです。お陰で、宇野さんの言うような「昼の世界」と「夜の世界」の区別なんて、香港ではあったもんじゃなかったです。
    ただ、それでも、やはりスマートフォンの普及で携帯とネットが接続してからは、ネット文化の一般化が本格的に進んだなと思います。iPhoneが登場するまでは、日本と違ってケータイでネットが出来ませんでしたから。実際、香港では天安門事件の記念集会が毎年あるのですが、08-09年に人が急に増えだしたんですね。これは明確にiPhoneの影響だと思います。
    その中で、Brothersたちは一定の発言力を持っています。例えば、議会にBrothersの政党から既に1名や2名ぐらい入っています。彼らは国会の討論でネット用語を使ったりしますね。
    ――日本で言えば、ネットユーザーが政党を作って国会で「草不可避ww」とかやる感じですかね(笑)。
    張 まあ、僕も大学の講義でネット用語を使って若者ウケを狙ったりしますから、ああいうノリですね。
    他にも、ブロガーの方でも、面白い人が何人かいてオピニオンリーダーになっていますね。彼らのようなネットの言論人は、いまの香港の政治評論のなかでは最も力強いです。彼らは、普段は中学や高校の先生をしていたりします。
    ――市民ブロガーが、本当に一国の言論に影響を与えているんですね。
    張 香港の今のネット文化はフェイスブックがメインなので、ブログとフェイスブックがリンクされて、有力ブロガーの言論活動が拡散されたりします。
    また、それとは別に香港討論區(ホンコン・ディスカッション)という、親北京派というか、生活保守的な討論サイトがあるんですよ。要はアグネス・チャンの集まり(笑)
     

    ▲香港討論區
     
    ここは結婚で階級上昇を考える若い女性や、子どもの教育を第一に考える中年男女が多いですね。ゴールデンは民主・人権が大好きで政治的にはリベラルなのに対して、ホンコン・ディスカッションは政治的には生活保守です。
    日本の2ちゃんねるは男性文化だけど、そこまでリベラルという感じではないし、女性たちの意識も日本のほうがリベラルだと思います。ゴールデンとしては、ホンコン・ディスカッションは敵ですね(笑)。
     
     
    ■ネット文学、ネット言語が続々と誕生 ――中国本土のネット小説人気は有名ですが、香港ではどうですか?
    張 ネット文学で出てきた小説家がネット言論を担ったりもしていますね。最近では、「向西村上春樹」という人の『一路向西』という作品が大ヒットして、映画化もされています。「西に向く村上春樹」というペンネームですね(笑)。
    もともとゴールデンのスレが発祥で、(香港島近くの)深圳・広州に行って、綺麗な中国大陸の女性を買いたいんだけど、なんとなく乗り気じゃないみたいな話です。そこから発展して小説や映画にもなりました。
    他にも、有名なコピペもたくさんあって、コピペから映画化されたのもあります(笑)。
     

    ▲向西村上春樹『一路向西 』
     
    ――日本でいうと『電車男』ですかね。むしろ、2ちゃんねるまとめで話題になるような「明らかに釣りだろ!」みたいな感じの"実話スレ"に近い印象ですが。
     
  • 2020年、押し寄せる大量の中国人観光客にどう対応するか? 6年後の東京に迫られる課題 ――社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)インタビュー ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.123 ☆

    2014-07-29 07:00  

    2020年、押し寄せる大量の中国人観光客にどう対応するか?6年後の東京に迫られる課題
    ――社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)インタビュー
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.7.29 vol.123
    http://wakusei2nd.com

    【PLANETS vol.9(P9)プロジェクトチーム連続インタビュー第11回】 

    本日のほぼ惑では、「PLANETS vol.9(特集:東京2020)」インタビューシリーズの特別編として、
    香港中文大学の張彧暋(チョー・イクマン)氏にお話を伺いました。「外国人にどう東京の・日本の魅力をアピールするか」ではなく、押し寄せる中国人観光客にどう対応するのか。そして日本ポップカルチャーの東アジアでの「実際の受け取られ方」とは――!?


    ▼プロフィール張彧暋(チョー・イクマン)1977年香港生まれ。香港中文大学社会学研究科卒、博士(社会学)。