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記事 41件
  • 宇野常寛 NewsX vol.41 ゲスト:岩佐文夫「いま必要なメディアとは」【毎週月曜配信】

    2019-09-02 07:00  
    550pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」の書き起こしをお届けします。最終回となるvol.41のテーマは「いま必要なメディアとは」。編集者の岩佐文夫さんをゲストに迎え、ソーシャルメディアとオンラインサロンが全盛の時代に、メディアに求められる役割とは何か。「遅いインターネット」の構想と戦略についての話題を交えながら議論します。(構成:佐藤雄)
    NewsX vol.41 「いま必要なメディアとは」 2019年6月25日放送 ゲスト:岩佐文夫(編集者) アシスタント:得能絵理子
    タコツボ化する雑誌のどん詰まり
    得能 NewsX火曜日、今日のゲストは岩佐文夫さんです。岩佐さんと宇野さんはどのようにして知り合ったんですか?
    宇野 『イシューからはじめよーー知的生産の「シンプルな本質」』という本の著者で、ヤフーCSOでもある安宅和人さんという方がいるんですよ。その安宅さんが、自然豊かな地方で人々が幸せに生活するための実験的な集落をつくってみようという「風の谷」プロジェクトを始めていて、そこに参加したときに知り合ったんですよ。ちなみに岩佐さんはハーバード・ビジネス・レビューの前編集長で、その雑誌によく寄稿していた安宅さんの担当をしていた。そういう関係ですよね?
    岩佐 はい。実は以前から宇野さんのことは安宅さんから聞いていました。編集長時代、「宇野さんと岩佐は似ている」と言われたんですよ。ジャンルがまったく違うのに似ているというのはすごいですよね。それに僕はPLANETSのチームラボの猪子さんへのインタビューをよく読んでいたんです。だから、実際に会ったときは、すごくうれしかったです。
    宇野 そんなふうに思ってもらえているとしたら光栄ですね。
    岩佐 僕も光栄でしたよ。
    宇野 「風の谷」は、科学者やビジネスマンといった、いろんな人が集まっている勉強会兼プロジェクトチームなんですよ。そこの編集畑出身は僕と岩佐さんだけで、同じようなジャンルに関わっていたんですよね。内部の統治ルールをどうするかとか、コンセプトを言語化して規約や憲章にしていく作業を2人でやっていて、そこで仲良くなったんですね。
    得能 視座が非常に近しいお二人が、今日話していくテーマは『いま必要なメディアとは』です。
    宇野 NewsXという番組は、そもそもPLANETSやハフポストや8bitnewsのような独立系メディアと、dTVチャンネルがコラボすることで、おもしろいことをやれないかというところから始まっているんですよ。それが今週で最終回なので、僕らみたいな独立系のメディアがこの先どう戦っていくべきかを、僕が尊敬する先輩編集者でもある岩佐さんとじっくりお話したいなと思って、今日はお呼びいたしました。
    得能 最初のテーマは「出版ジャーナリズムのいま」です。
    宇野 僕も岩佐さんも紙の媒体の出身ですよね。僕らがキャリアを始めたのは、ほぼ紙しかなかった時代ですよね。それが気がついたらお互い、いちおう編集の仕事はしているけれど、紙媒体をメインにしていないと思うんですよね。そういうところを踏まえながら、これからの出版はどうなるのかという話から始めていきたいと思います。
    岩佐 逆説的ですけど、紙媒体は意外と根強いなという印象もあるんですね。特に書籍はすごく根強くて、しぶといなと思います。2000年頃は「2020年を迎えた頃には紙媒体はもっと違うものに変わっているだろうな」と思っていたのに、いまだに衰えていないところもある。そこが僕にとっては意外でしたね。
    宇野 理由は二つあって、一つはネットが思ったほど頑張っていない。正直、ネットが質が高いコンテンツをを生み出せていない、パラダイムシフトが起こっていないのが理由のひとつだと思うんですね。もう一つは、もともと出版バブルを支えていたのは雑誌で、売り上げ的に強かったのはもちろん、それ以上に業界の求心力、つまり、それで食えている人の数を担保していたのが雑誌メディアだったと思うんですよ。20年と少し前は、雑誌が異常に売れていて、そこにお金と人が異常に集まっていた時代でした。そのバブルが弾けて、ここ20年ぐらいはずっと右肩下がりだと言われています。 それに対して、書籍は元々そんなに大きな商売じゃなかったと思うんですよね。だから、不況になっても、元が低かったせいもあってそれほど変わっていない。業界全体が貧しくなって数も下がっているんだけど、大崩壊にはならない。積み上げてきたもの自体がそんなに高くなかったということなんじゃないかなと、僕は個人的に思っています。
    岩佐 くわしい数字はうろ覚えなんですけど、雑誌の売り上げは明らかに何割も下がっていますよね。そういう意味で不況で大変だという見方もできるけど、ある種、健全だなと思うところもあるんですよね。本当に欲しいものはそんなに減っていないという個人的な感想もある。書籍はある種の「作り切った」感があって、そういう意味で残りやすい。それに対して雑誌は永遠の未完成みたいなところがあって、週刊誌でも月刊誌でも、その時々で出していく。だから、雑誌はネットに置き換わりやすかった。
    宇野 象徴的なのは、15年ぐらい前に出てきた「小悪魔ageha」。あれは雑誌と新しく生まれるライフスタイルが連動していた最後の例だと思う。でも、あれは完全に地方の水商売系の女性、もしくはそれに近い文化圏の人だけをターゲットにしてヒットさせましたが、あの瞬間に、総合誌はもう成立しない、タコツボ化している文化のトライブを占領していくことでしか雑誌は成立しないと思ったんですよね。
    岩佐 同感です。それはすごく分かりやすい。雑誌が付録を付け始めた時代がありますが、ああなったときに、これは定期的にモノを売れる機会を利用するものなんだと思ったんですよね。そうなった瞬間にコンテンツとは別のビジネスになって、書店はなんでも売っていい場所に変わり始めた。
    宇野 agehaが出てきたときに、雑誌はつなげるためのものではなく、分かつためのものになったと僕は感じました。自分の世界を広げるための力より、「これが私だ」ということを確認するための力のほうが強くなってしまった。宝島社商法は、雑誌が雑誌そのものから、雑誌を使ったコミュニケーションに比重が移っていったという、そのふたつを象徴する出来事だと思うんですよね。
    岩佐 雑誌はすごくニッチなところで成立する。そうなるとマスの概念も変わってきます。それとネットが出てくる前に、紙媒体をつくるプロセスが全部デジタル化したんですよね。そうなると小ロットの媒体もつくりやすくなる。そうすると限られた読者層のための媒体が出てくる。そうなったときに、コミュニティの分断を僕は感じてはいましたね。
    宇野 そこを逆手にとってマニアックな本をずっとつくっているのがPLANETSだったりします。その一方で、1年に1冊出るか出ないかの本誌は、雑誌という形態をとっているスペシャルムックなんですよ。コード的にも実は書籍です。
    岩佐 PLANETSのおもしろいところは、ジャンル分けができないところなんですよね。ビジネス誌や女性誌のようなカテゴライズをどんどん小さくしていく発想が、どんどんネットに置き換わっていく感じがしています。
    宇野 僕は雑誌が良かった時代を、ギリギリ思春期に体験している世代なんですよね。ある特集やグラビアや連載を読みたくて買った雑誌で、偶然パッと目に入ったコラムや記事によって、自分の世界が広がるような経験を、原体験的に抱えている最後の世代なんです。インターネットでは、最初から自分がほしいと分かっている情報を得て満足するし、それに可処分時間のほとんどを使っている。世の中の流れはそっちにしか行かないことも分かっているんだけれど、この先、モノを作りたい、なにか新しいことをやってみたい人は、それではダメだと思うんですよ。大勢においては水は低い方に流れていきますが、でもそうじゃない人、自分がつくる側にまわりたいと思っている人のために、僕はこの雑誌をつくっているところがあります。だから、あえて時代の流れに逆張り全開の総合誌をつくることにこだわっているんですよね。
    岩佐 当たり前ですけど、自分が読みたいものをつくるのが一番正解ですよね。身も蓋もないですけど、「みんなは何を見たいだろうか?」と思ってつくることほど根拠のない企画はないと思っています。やっぱり自分がつくりたいものをつくるのが原点で、それは読者が大事という考えと反しないと僕は思うんですね。
    宇野 ウケるものをつくろうと思ったら、黄色信号だと思ったほうがいいですよね。自分が読みたいものをつくって、それがもし読者から離れてしまうのであれば、それは自分の生き方のほうを見直すべきであってね。
    岩佐 ウケるものをつくった経験はあるんですけど、それが売れなかったときの惨めさったらないですよね。それだったら自分で面白いと思ったものが売れなかったときのほうが、自分のためになる。特に雑誌なんて、一号ごとに売り上げの差はあっても、それに一喜一憂しないで、自分がおもしろい、自分が読みたいと思うもの、自分がお金を払ってでもつくりたいと思うものをつくっていれば、自然と読者はついてきてくれる感覚はありますね。
    宇野 読者に合わせるようなことはNewsPicksがやればいいと思うんですよ。僕らはそうじゃない。もう少し上のメタレベルから、時代とシンクロして、時代と寝て、最小公約数のところに武器を投げていく。そもそも僕らは「一番大きな流れには流されないけれど、二番目に大きな流れには流されてもいい」と思っている人を相手にする意味がないんですよね。僕らが相手にしているのは、流れに乗りたい人ではなく今の地図を描ける人なんですよ。「一番大きい流れはこれで、次に大きい流れはこれで……」という地図を描きたい人にとっては、まだ総合誌という回路は必要だろうという確信のもとにやっているんですよ。
    岩佐 総合誌といっても、全てを網羅するのが総合誌ではないという定義ですよね。
    宇野 そうですね。つまり、ひとつの世界観ですね。PLANETSや宇野の世界観に、政治や文化やビジネスやテクノロジーを突っ込むとどうなるのか……というふうにね。いろんなテーマを扱うんだけれど、この場合、編集長である僕の世界観のもとに統一されている。それが総合誌だと思うんですよ。
    岩佐 僕がハーバード大学にいた頃にお世話になった、早稲田ビジネススクールの入山(章栄)先生は、最近の経営学の文脈では、なにをやっているのか分からない企業や人が強いと言ったんですよ。そういう意味で、これからは「〜である」と言い切れないものの強さがすごく出てくると僕は思う。PLANETSはまさにそれですよね。これは書店でどこに置かれるんですか?
    宇野 わからないですね。
    岩佐 それがいいんですよね。これからのメディアは、書店での括られ方やセグメントが変わってくるんじゃないですかね。
    宇野 ウチがやりたいことをわかってくれている書店さん、たとえば、青山ブックセンター(ABC)の本店さんは、「PLANETS vol.10」のためのコーナーを展開して、出ている人の関連書籍を置いてくれているんですよね。こういう雑誌があると、その周辺にいろんなものを置けて、ひとつの世界観が生まれて、それによって棚の個性を出せるということまで理解してくれているんです。
    ▲『PLANETS vol.10』
    岩佐 わかります。こういう雑誌でないと世界観をつくれないんですよね。そこでABCなどは世界観を紹介すればいいし、それが終わった後には、また違うことをやればいい。
    宇野 この本には落合陽一と押井守が出ているんですが、この二人は考えていることがすごく近くて関連しているんだけれど、普通に考えたらすごく離れたところにいるんですよ。
    岩佐 それが一緒になっている。他の文脈じゃ絶対にくっつかないものが、あるコンセプトやある世界観を持ってきたことでつながる。
    宇野 そのダイナミズムを僕はどうしても忘れられなくて、いまだにこういう本をつくっているんですよね。
    薄利多売される書籍と紙の本の真価
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  • 宇野常寛 NewsX vol.40 ゲスト:石岡良治「現代アニメになにが起きているか」【毎週月曜配信】

    2019-08-19 07:00  
    550pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」の書き起こしをお届けします。6月18日に放送されたvol.40のテーマは「現代アニメになにが起きているか」。批評家で『現代アニメ「超」講義』を刊行したばかりの石岡良治さんをゲストに迎え、21世紀アニメで最重要の10作品をピックアップ。この20年で日本のアニメは何を描いてきたのか。その論点を改めて見直します。(構成:佐藤雄)
    NewsX vol.40 「現代アニメになにが起きているか」 2019年6月18日放送 ゲスト:石岡良治(批評家) アシスタント:加藤るみ
    細田守が捨て去った『ぼくらのウォーゲーム』から21世紀アニメを始めよう
    加藤 NewsX火曜日、今日のゲストは批評家・早稲田大学准教授の石岡良治さんです。よろしくお願いします。おふたりはお付き合いがもう長いんですよね。
    宇野 10年以上の付き合いになります。石岡さんは僕の尊敬する批評家でありオタクとしての先輩でもあって、長い間、僕の媒体に書いてもらっています。 知り合ったのは、僕が物書きとしてデビューしてからで、これはよく話しているんですが、僕は石岡さんみたいな先輩にもっと早く出会いたかった。僕の田舎は北海道の帯広で、中学生のときにアニメにハマってオタクになっていくんだけど、人口15万人ぐらいの街の中学校に、僕みたいなやつが居たら、ダントツ一位のオタク力なんですよ。でも、本や雑誌を見るとオタクの世界はもっと深いわけ。それで高校は函館の寮のある進学校に行くことになるんだけど、高校には素晴らしいオタクの先輩が居て「宇野くん、こんな本も読んでないのか」「こんな漫画も読んでないのか」「こんなアニメも観てないのか」って感じで、毎日読まなきゃいけない本や漫画、観なきゃいけないビデオテープが山のように積まれてオタクエリートに調教してくれるものだと思って期待してたんだよ。ところが函館の高校も大したことはなくて。巨乳の女の子が魔法を使ってゴブリンを倒すライトノベルを読んで、「萌え〜」とか言ってるヌルいオタクがウロウロしているだけだった。「はぁ?」と思って絶望したんです。その後、1人で孤独に函館の古本屋を回る高校生活を送るんだけど、その10年後に石岡さんに出会って、本当にこういう先輩と出会いたかったと思った。石岡さんにオタクエリートとして導いて欲しい人生でしたよ。
    石岡 逆に僕は最初に宇野さんに会ったときに、ガンダムトークでほぼ趣味が一致したんです。年齢はだいぶ下なのになんでこんなに一致するんだって思いましたね。
    宇野 6歳下なんだけどその差は決定的なんです。僕はアニメファンとしては趣味が古くて、80年代アニメブームの頃のアニメが好きなんです。
    石岡 そんな感じで長いお付き合いになっています。PLANETSチャンネルでも毎月番組をやらさせてもらっています。
    宇野 その番組が今回『現代アニメ「超」講義』というタイトルで本になっています。
    ▲『現代アニメ「超」講義』

    石岡良治『現代アニメ「超」講義』 - PLANETS公式オンラインストア

    加藤 本日のテーマはこちらです。「現代アニメに何が起きているか」。本の話も含めて石岡さんに今日はたくさんお話を伺いたいと思います。
    宇野 石岡さんには何年もPLANETSチャンネルで番組をしてもらっています。文化時評の番組なんですけど、最近のアニメについて扱った回をテキスト化して再編集したものが、今回の『現代アニメ「超」講義』になります。おかげさまで素晴らしい本になりました。ここで「現代アニメ」と言っているのは21世紀のアニメのことです。この20年間のアニメについて網羅的にガチで語り尽くしていて、出てくる固有名詞は600個以上もあります。
    加藤 それでもまだまだ語りきれなかったんですよね?
    石岡 逆に「600個は少ない」と思う人もいるかもしれません。私も編集の段階でかなり落としていて。泣く泣く削ったものの一部が特典冊子に載っています。
    宇野 この本は石岡さん以外の人には書けない本です。読んだ人は驚愕すると思う。この1冊でここ20年間のアニメのことが全部わかる。今後この本を抜きにここ20年のアニメを語ることはできないと思う。そのくらいの本が出来上がったので、著者である石岡さんに今日は来てもらいました。
    加藤 最初のテーマはこちらです。「21世紀のアニメ 最重要作品10選」。
    宇野 本書の中では数百作品を取り扱っています。それを40分のトークで語ることは無理なので、最重要である10作品に絞って語ってもらおうと思います。事前に選んでもらったものをボードにまとめています。

    宇野 挙げていただいたのは『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』『千と千尋の神隠し』『コードギアス反逆のルルーシュ』『けいおん!』『魔法少女まどか☆マギカ』『ソードアートオンライン』『プリパラ』『君の名は』『おそ松さん』『宝石の国』の10作品ですね。このセレクションそのものにも批評性があると思うんですが、今日は順番に語るのではなくランダムでいこうと思っています。時間の許す限りよろしくお願いします! 最初は何からいきます?
    石岡 「21世紀のアニメ」と銘打ちつつ、実は20世紀末年に公開の『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』から語ってみたいんですね。
    宇野 るみちゃんも大好きな作品なんだよね。
    加藤 大好きです。世代的にも直撃で、何十回と見てますね。
    石岡 今回の『現代アニメ「超」講義』でも、この作品から21世紀を考えたいと思い、この作品を語るところから始めています。監督は細田守です。細田監督はここ十数年、つまり今世紀においては国民的アニメを作っている監督だと思われています。そしておそらく監督の名前を人々に拡めた作品は『サマーウォーズ』だと思うんです。夏休みのお茶の間にいる一家みんなで世界を救うみたいな話ですね。ところが『ぼくらのウォーゲーム』を知っていると、こちらの方が時間も短いし、エッセンスも凝縮されてる。『サマーウォーズ』よりもこっちの方が良い作品だと思うはずなんです。
    加藤 『サマーウォーズ』が夏休みに地上波で放映されるたびに「『ぼくらのウォーゲーム』流してくれよ!」と好きな人は絶対に思いますよね。
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  • 宇野常寛 NewsX vol.39 ゲスト:青木耕平「〈よみもの〉とECサイトの関係」【毎週月曜配信】

    2019-07-29 07:00  
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    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」の書き起こしをお届けします。6月11日に放送されたvol.39のテーマは「〈よみもの〉とECサイトの関係」。株式会社クラシコム代表取締役の青木耕平さんをゲストにお招きして、『北欧、暮らしの道具店』が開拓した、読み物としてのECサイトの可能性と、クリエイティブとコミュニティの新しいあり方について議論します。(構成:籔和馬)
    NewsX vol.39 「〈よみもの〉とECサイトの関係」 2019年6月11日放送 ゲスト:青木耕平(株式会社クラシコム代表取締役) アシスタント:大西ラドクリフ貴士
    読み物をECサイトのコンテンツにするということ
    大西 NewsX火曜日、今日のゲストは株式会社クラシコム代表、青木耕平さんで、テーマは「〈よみもの〉とECサイトの関係」です。
    宇野 青木さんの会社クラシコムは『北欧、暮らしの道具店』というECサイトを運営されているんですが、僕にはただのECサイトには見えないんですよね。読み物もすごく多いし、単に商品を売っているんじゃなくて、その商品が持つ価値観を売っているところがあると思う。僕自身もずっとウェブで読み物をつくってきた人間なんですよ。実はこの秋に新しくウェブマガジンを立ち上げようと考えていて、その参考になるサイトを探している中で、『北欧、暮らしの道具店』は気になるサイトのひとつだったんです。読み物にテキスト以上の価値を持たせていく。画面の中のテキストとその外側にあるリアルなものを連動させていく。そういう話をいろいろ聞けたらなと思って青木さんを呼んじゃいました。
    大西 最初のテーマは「『北欧、暮らしの道具店』とは」です。
    宇野 まずは青木さんの会社クラシコムが運営している『北欧、暮らしの道具店』がどういうサイトかを説明していただいた上で、僕がいろいろ質問責めにするセクションから始めたいと思っています。

    宇野 『北欧、暮らしの道具店』は、基本的にはECサイトなんですか?
    青木 そうです。お店という場所になっていますね。ただ多くのECサイトは基本的には通信販売の事業なので、新しいお客様を広告で獲得して、ポイント制度やセールのような販促を打っていくことで常連になっていただいて、収益を出していくというモデルなんです。でも、我々の場合は広告で集客するというより、僕ら自身が読み物をたくさんつくることで、お客様に自分で来ていただくことを念頭に置いているサービスになりますね。
    宇野 まずトップページにある、大人ブラウスのところをクリックして見てみます。

    宇野 これは今一番売り出している商品になるんですか?
    青木 そうですね。昨日出たばかりの商品ですね。
    宇野 僕がこの商品ページを見たときに真っ先に思ったのは、写真と文字が量的に多いことなんですよね。商品ページもひとつのコンテンツという認識なんですよね?
    青木 そもそも人が一番楽しんでいるコンテンツって何だろうと考えていたときに、本屋さんで売れている雑誌のコンテンツをみると、ファッションや車、音楽について書かれているんですよ。要は商品の情報を伝えているコンテンツが楽しみのために買われている状況がありました。ECサイトのコンテンツも、商品の情報でしかない。だから、それを売るための情報というより、楽しむための情報として提示したらどうなるんだろうというのが、我々の根本的な発想のひとつなんですよね。
    宇野 僕はオタクで、仮面ライダーのフィギュアを集めたりしていて、フィギュアがすごく好きなんですけど、たしかに実際にフィギュアを買って眺めたり、飾ったり、写真を撮ったりしている時間よりも、メディコムトイさんが運営しているサイト「Sofvi.tokyo」などを読んでいる時間のほうが長いですね。
    青木 もしかすると買う前のほうが楽しいかもしれない。もちろん僕らはECサイトなので物が売れないと困るんですが、それ以上に物の情報を楽しく編集して、読んでいただくこと自体に価値を見出しています。たとえば、このブラウスは1万円以上するからしっかりページをつくっているんだと思われるかもしれませんが、実は250円の商品でも同じくらいガッチリ作り込んでいるんですよ。つまり、そもそも根本的な目的が、読む人を楽しませるためにつくるというコンセプトなので、ページ当たりの収益性が高かろうが安かろうが、最高におもしろくつくろうという発想です。
    宇野 すべての商品でこのようなページがつくられているわけですか?
    青木 すべてこういう感じですね。
    宇野 純粋に読み物だけのページもありましたよね?

    青木 新しい読み物の記事の投稿は、だいたい1日5記事ぐらいですかね。
    宇野 朝ごはんの記事を見てみましょうか。

    青木 これはいろんな人が朝ごはんを、どういうふうに効率よく快適につくっているのかをインタビューさせていただいている記事です。ライフスタイル誌のような記事を、我々の編集スタッフがつくっているかたちになりますね。
    宇野 商品の紹介はわかるんですが、こういう読み物記事はどういう編集方針でつくられているんですか?
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  • 宇野常寛 NewsX vol.37 ゲスト:畑中雅美「少女漫画の現在地」【毎週月曜配信】

    2019-07-08 07:00  
    550pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」の書き起こしをお届けします。6月4日に放送されたvol.37のテーマは「少女漫画の現在地」。小学館月刊Cheese!編集長の畑中雅美さんをゲストに迎え、縮小を続ける出版業界の中で、女性読者の熱い支持を集める少女漫画雑誌・月刊Cheese!の人気の秘訣に迫ります。(構成:佐藤雄)
    NewsX vol.37 「少女漫画の現在地」 2019年6月4日放送 ゲスト:畑中雅美(小学館月刊Cheese!編集長) アシスタント:後藤楽々
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。 番組公式ページ dTVチャンネルで視聴するための詳細はこちら。 なお、弊社オンラインサロン「PLANETS CLUB」では、放送後1週間後にアーカイブ動画を会員限定でアップしています。
    新興の少女漫画誌「Cheese!」はいかにサバイブしてきたのか
    後藤 NewsX火曜日、今日のゲストは小学館の少女漫画雑誌「Cheese!」編集長の畑中雅美さんです。よろしくお願いします。おふたりはどのようにお知り合いになられたですか?
    宇野 数年前に勉強会みたいなものがあってそこで知り合いました。その頃はまだ編集長ではなかったんじゃなかったかな。
    畑中 そんなに昔に会ってるんですね 。編集長になって4年経ってます。
    宇野 知り合ってすぐ後に編集長になって、気がついたら少女漫画界を代表するカリスマ編集長として大活躍されていましたね。畑中さん自身もメディアに出て漫画編集界のオピニオンリーダーとして活躍もされていますね。昔は僕も一生懸命少女漫画を読んでいたんだけど、漫画シーンを追うことが数年前に虚しくなってしまって、最近は読んでないです。具体的に言うと『ちはやふる』を途中で読むことを辞めちゃってる。「この漫画がすごい!」に投票することも2016年を境に辞めちゃっています。今日は良い機会なので畑中さんから少女漫画シーンについて教わりたいなと思っています。
    後藤 今日のテーマは「少女漫画の現在地」です。
    宇野 畑中さん自身が少女漫画シーンを作ってきたひとりなわけです。
    後藤 畑中さんが担当されていた作品を見ると、私も読んでいた作品が多いです。青木琴美『カノジョは嘘を愛しすぎてる』、相原実貴『5時から9時まで』、嶋木あこ『ぴんとこな』、すごいです。
    宇野 現役女子大生的には畑中さんの担当作品は読んでたものが多いよね。
    後藤 少年漫画はあまり読まないんですけど、少女漫画はすごく好きなんです。
    畑中 少年漫画を読まないのは珍しいですね。少女が読んでる漫画を「少女漫画」と呼ぶならば、今最も「少女漫画」しているのは原泰久『キングダム』だと思います。宇野さんが漫画を読まなくなった時期と、少女が少年漫画を読み始めて、ボーダレス化が進んできた時期はおそらく一致しています。
    後藤 私も『キングダム』の映画は観に行きました。
    宇野 「少女漫画」という表現ジャンルの読者層が変わっていると思うんです。今日はそういった読者層の変遷の話も踏まえて少女漫画の現在地を立体的に描き出せたら良いなと思います。
    後藤 本日のテーマは「少女漫画の現在地」です。
    宇野 「少女漫画は今どうなっているか」という話を畑中さんからお聞きしたい。まずは畑中さんが編集長をされている「Cheese!」の現状から聞いてみたいと思います。
    畑中 創刊から50年ほど経っている少女漫画雑誌がたくさんある中「Cheese!」はまだ創刊から20年程しか経ってない新興の雑誌です。読者層は高校生ぐらいからと言われていますが、主な読者は大人です。私よりも年上の方も読んでいます。
    宇野 大学生ですらないんですね。
    畑中 大学生も読んでるとは思いますけど「Cheese!」の強みはデジタルでよく読まれていることなんです。電子書籍というと、特に男性にはKindleなどを筆頭に最近の話というイメージがあると思うんです。でも実は「Cheese!」の電子書籍はガラケー時代からもう読まれていたんです。
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  • 宇野常寛 NewsX vol.36 ゲスト:仁木崇嗣「地方政治はどう変わっていくべきか」【毎週月曜配信】

    2019-07-01 07:00  
    550pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネルにて放送中)の書き起こしをお届けします。5月28日に放送されたvol.36のテーマは「地方政治はどう変わっていくべきか」。一般社団法人ユースデモクラシー推進機構代表理事の仁木崇嗣さんをゲストに迎え、地方政治を変えるために若手議員が出来ることは何か。ネットを活用したイーデモクラシーの可能性を含めて議論します。(構成:籔和馬)
    NewsX vol.36 「地方政治はどう変わっていくべきか」 2019年5月28日放送 ゲスト:仁木崇嗣(一般社団法人ユースデモクラシー推進機構代表理事) アシスタント:大西ラドクリフ貴士
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。 番組公式ページ dTVチャンネルで視聴するための詳細はこちら。 なお、弊社オンラインサロン「PLANETS CLUB」では、放送後1週間後にアーカイブ動画を会員限定でアップしています。
    民主主義とは地方分権である〜令和時代の自由民権運動〜
    大西 NewX火曜日、今日のゲストは一般社団法人ユースデモクラシー推進機構の代表理事、仁木崇嗣さんです。仁木さんと宇野さんはどういうつながりなんですか?
    宇野 僕が親しくしている某省の官僚がいるんですよ。彼がZESDAというプロボノのNPOをやっていて、僕のPLANETSと彼のZESDAは団体単位で仲がいいんですよ。時々、情報交換の会をやっていて、「宇野くん、ちょっと面白いやつがいるから紹介したい。二人紹介したい人がいる」と言われて、高田馬場で会合をもったんですよ。ひとりは以前この番組にもやってきた「中東で一番有名な日本人」と言われている鷹鳥屋明さん。もうひとりが仁木さんだった。そこからの付き合いです。
    大西 今日のテーマは「地方政治はどう変わっていくべきか」です。
    宇野 彼がやっているユースデモクラシー推進機構は、地方の若手議員の支援をやっている団体なんですよ。地方政治は若者が入ってきづらい世界なんだけど、そこで頑張っている20〜30代を彼が束ねて勉強会をやったりしている。そういう活動をしている仁木さんだからこそ見えてくる地方政治の問題点などがあると思っていて、今日はそういう話をしたいなと思っています。
    大西 最初のテーマは「ユースデモクラシー推進機構とは」です。
    宇野 仁木さんが具体的にどういう活動をしているのかを紹介してもらって、そこから議論を始められたらなと思っています。
    仁木 うちの団体はユースデモクラシー推進機構といって、名前から受ける印象だと若者のための民主主義と捉えられがちなんですが、実は未来世代と若者のための民主主義をやろうという団体なんですよ。
    宇野 まだ生まれてもいない人たちのためにも頑張ろうということだね。
    仁木 なぜなら政治は弱い人のためにあると僕は思うからです。今、一番弱い人は、選挙権を持っていない人と生まれていない人ですよ。今、生きている若者を含めた現役世代が将来にツケをまわしているという問題意識を僕は持っています。その説明をするために、僕は自由民権運動の頃まで遡って研究をしたんです。当時、植木枝盛が「未来が其の胸中に在る者、之を青年と云ふ」と言ったんですよ。青年と未来がつながっている。そこで未来志向を持っている青年たちで議会をつくりたい。もちろん民間の有権者側にもつくっていきたい。そう思っていたんですね。 この団体をつくったのは2015年、ちょうど4年前の統一地方選挙のときです。僕は当時28歳だったんですけど、20代で当選した議員が全国に136人いたんですね。その人たちはデジタルネイティブ世代なので、みんなFacebookを使っているんです。検索して「会いに行きたい」とメッセージを送りつけました。会ってくれるという人に、北は北海道から南は九州まで会いに行って、計53人の方が会ってくれたんですよ。これはデジタルネイティブだからこそできることで、今はGoogleマップという便利な機能があるので、一番早く会えるルートを選んで、なるべく時間をかけずに回ることができた。これは今の時代だからこそできたとも言えますよね。直接会ってオンラインでもつながったんですが、やはりリアルで会ってみようということで、この人たちを東京に集めようと考えました。


    仁木 日本の民主主義の原点を知ってほしいと思って、このスライドを用意したんですが、向かって左側の方、民主主義の概要をアメリカの国務省が日本語で丁寧に書いてくれているんです。ここのポイントは「民主主義とは中央集権ではなくて、地方分権がデフォルトです」と書いてあることで。「地方分権こそが民主主義です」という内容はすごくポイントです。 では、日本ではどうかというと、右側は自由民権運動のときに、板垣退助が日本で最初の政治結社といわれる愛国公党をつくったときの愛国公党宣言という文章です。ここでもアメリカと同じように「中央集権じゃなくて、地方集権であるべき」と書いているんですよ。最初に国会をつくろうとした日本人が、アメリカが言う民主主義の本質と同じことを言っていた。これがファーストステップ。日本では今になって地方分権をやろうという話をしていますけど、本当はそうじゃない。
    宇野 日本の民主主義の原点から、ガバナンスは基本的に中央集権で、デモクラシーは地方分権であるというね。
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  • 宇野常寛 NewsX vol.35 ゲスト:松谷創一郎 「なぜJ-POPはK-POPに勝てないのか」【毎週月曜配信】

    2019-06-24 07:00  
    550pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネルにて放送中)の書き起こしをお届けします。5月21日に放送されたテーマは「なぜJ-POPはK−POPに勝てないのか」。ライター/リサーチャーの松谷創一郎さんをゲストに迎え、近年のK-POPの人気の要因を分析しながら、J-POP、特に2010年代前半に隆盛した日本のアイドルカルチャーが、なぜK-POPに勝てなかったのかについて考えます。(構成:佐藤雄)
    NewsX vol.35 「なぜJ-POPはK−POPに勝てないのか」 2019年5月21日放送 ゲスト:松谷創一郎(ライター/リサーチャー) アシスタント:得能絵理子
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。 番組公式ページ dTVチャンネルで視聴するための詳細はこちら。 なお、弊社オンラインサロン「PLANETS CLUB」では、放送後1週間後にアーカイブ動画を会員限定でアップしています。
    J-POPとK-POPの世界地図
    得能 火曜NewsX、今日のゲストはライター・リサーチャーの松谷創一郎さんです。松谷さんと宇野さんはどのようにお知り合いになられたんですか?
    宇野 10年程前から僕がプロデュースしている媒体で書いてもらっています。昔は映画関係の原稿をお願いすることが多かった。それと今日のテーマのように音楽や芸能関係で出てもらっています。松谷さんが『ギャルと不思議ちゃん論』という本を出した時に対談したりといった付き合いがあります。10年程一緒に仕事をしていて、僕がすごく信頼している書き手の1人です。
    得能 今日は「なぜJ-POPはK-POPに勝てないのか」というテーマになっております。
    宇野 仕事でよくアジアに行くんですが、お店に入るとほぼK-POPがかかっています。
    松谷 アジアというと例えばどの国ですか?
    宇野 香港や台湾、シンガポールです。K-POPがかかっていたことを日本に帰ってきて話すと年上の人から、90年代にはそういった所ではJ-POPがかかってたという話を聞きます。現状を目の当たりにすると、少なくとも対アジアの戦略においてはK-POPがJ-POPを圧倒していると思わざるを得ない。一方でこの国はクールジャパンの掛け声の下にJ-POPやアイドル、そして日本食やアニメといったソフトパワーで世界に存在感を示しそうとしている。けれどもそれが完全に空回っている事も周知の事実。クールジャパンという言葉をポジティブに使うことが非常に難しい状態になってしまった。そういった現状を踏まえた上で「なぜJ-POPはK-POPに勝てないのか」というテーマで松谷さんのお話を聞いてみたいと思います。
    得能 1つ目のテーマは「J-POP対K-POPの現状」です。
    宇野 今回は「なぜJ-POPはK-POPに勝てないのか」というテーマにしました。最初のセクションではそもそも何をもって勝ち負けが決まるのか、というところから話を始めて、J-POPとK-POPの比較を行ってみたいと思います。
    松谷 「J-POP」という言葉ができる前の比較軸は洋楽と邦楽でした。邦楽は常に洋楽に劣ったものと認識されていました。この時の「海外」はイコール欧米で、音楽に限らず日本と海外を比較した時に、日本側には常に欧米コンプレックスがあった。その前提で洋楽と邦楽を比較しています。「洋楽」というのも基本はイギリスとアメリカで、一部フランスなどです。90年代後半にJ-POPがものすごく盛り上がったんです。98年が日本の音楽産業のピークでもあり、浜崎あゆみさん、椎名林檎さん、宇多田ヒカルさんが活躍していた時期であり、安室奈美恵さんが産休に入っていた頃です。ここからJ-POPは落ちていきます。最盛期から今までの間で20年ほど経っています。その間に出てきたのが洋楽でもJ-POPでもない第三項、K-POPだったわけです。韓国がどんどんカッコ良いものになっていった。これをまだ皆さんきちんと整理できていないと思います。洋楽と邦楽の対立軸の外に第三項が出てきてしまった。これは一体何なのかを考えるべき時期が今まさに来ている。今回のテーマのように「勝ち負け」の話をすること自体も、そういった対立構造が読み取れるということだと思います。昔の洋楽以上にK-POPの存在感が大きくなったということです。
    宇野 日本の音楽市場は基本的にドメスティックなJ-POPで満ち足りていて、一部の音楽ファンのために洋楽が意識されている状況がずっと続いていました。そこに第三項が入って来る余地はなかった。なぜその余地が生まれていったんですか?
    松谷 K-POPの歌手たちが日本に向けたローカライズをしてきたんです。
    宇野 戦略的に攻めて来たということだよね。
    松谷 具体的に何をしたかと言うと、ひとつは日本語で歌うこと──つまりローカライズです。BoA、東方神起、KARA、少女時代という順番でした韓国で作ってる音楽に日本語の歌詞を乗せる。一般の視聴者から見れば日本語で洋楽を歌ってる感じがしたわけです。BoAや東方神起はJ-POPにかなり寄っていましたが、2010年頃に少女時代が来たときは完全に洋楽寄りでした。それがすごく新鮮に感じられました。
    宇野 韓国の音楽産業が日本の一億人の市場をターゲッティングして攻めてくるまで日本はK-POPという存在を意識していなかった。
    松谷 ほぼ意識してなかったんですけど、一部の人が知ってはいたんです。知るきっかけはやはりYouTubeでした。K-POPのひとつの特徴を挙げると、YouTubeにフル尺のミュージックビデオを、しかも高画質で配信することをかなり早い段階からやっていました。YouTubeのサービスが開始したのは2006年で、本格化したのは2000年代後半からです。そこにK-POPは上手くアジャストしてきた。しかしJ-POPはいまだにフル尺をだすことをできていません。
    宇野 韓国が外国に出ないといけないのは国内市場が小さいという要因があると思います。人口は日本の半分以下ですよね?
    松谷 音楽に限らず韓国は外需をすごく求めてる国だという点に注意が必要です。これは輸出入の額をGDPで割った数値である貿易依存度を見れば明らかです。依存度が高ければ高いほど外需に期待をしていることになります。この数値が韓国は68%になります。日本は何%だと思いますか? 比較としてシンガポールも何%か当ててみてください。
    宇野 シンガポールはかなり高いよね?
    松谷 シンガポールは218%になります。
    得能 日本は30%前後ですかね?
    松谷 得能さん、近いです。日本は27%です。この数値が意味するのは、日本のマーケットが非常に大きいということです。音楽に限らず経済全分野的に内需が大きい。韓国のマーケットが小さくて外に出ていかなければいけないこと自体はその通りなんですが、そもそも海外に出ていくのが当たり前という気運が国にあるんですね。すごくシンプルに考えてGDP世界2位の中国と3位の日本に挟まれている国です。出て行かない理由なんてないですよね。
    宇野 目の前に巨大市場が2つありますからね。特に日本の場合はコンテンツ産業が内需だけで回っていて、それだけで食えてしまう。
    「K-POPとJ-POPはビジネスモデルが違うから単純に比較できない」は正しいか
    松谷 日本はまだ内需だけで「食えてしまう」と言えますよね。
    宇野 さらに言えば、20年前は完全にバブルだったわけです。K-POPのマネタイズの仕組みはかなり違っている気がします。日本の中で「CDが売れなくなって、フェスが伸びている」と頻繁に言われますが、それでもCDがすごく売れている国ですよね。
    松谷 逆に言うとCDがこれほど売れるのは日本だけです。世界的に今ものすごく伸びているのはSpotifyやApple Musicのような定額のストリーミングサービスです。YouTubeも含んでいいと思いますが、ストリーミングサービスで音楽を発表するのが今は主流になっています。そんな中、日本ではCDやDVDといったパッケージの売上は、2017年では音楽産業全体の72%になります。次に割合が高いのがドイツで、43%ですね。韓国もまだパッケージの割合が高い方で37%になります。アメリカは15%程度です(参照:日本レコード協会「THE RECORD」No.703、2018年6月号)
    宇野 世界的に音楽は配信で聴かれている。配信を通して好きになった曲をライブで聴いたり、コレクターズアイテムとしてのCDを購入してもらってお金を集める仕組みが完成されている。日本だけが未だに30年程前からのビジネスモデルを抜け出せていない。
    松谷 過去の体制にアジャストし過ぎていて、インターネット時代の音楽マーケットに向けて変化できていない。変わろうとする気運は徐々に見られていて、例えばジャニーズJrのSixTONESというグループがYouTubeにミュージックビデオを出していますが、やはり遅すぎる。それに対して韓国は世界で一番インターネットへのアジャストが進んでいる国です。そこから、たとえば2014年にシンガーのPSYが「江南スタイル」で世界的なブレイクもすることも生じましたした。
    宇野 音楽関係の人に、こういった話をするとK-POPとJ-POPではそもそも相手にしている市場が違っていて、ビジネスモデルも異なるから一概に比べられないと言う人がたくさん居る。だからこそ起きていることは深刻だと思う。そもそも違うゲームをプレイしてしまっているからこそ、決定的に負けている。
    松谷 今の日本でやっているゲームがこれ以降に続いていくのかと問い詰めたいですよね。インターネットはなくなりませんから。
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  • 宇野常寛 NewsX vol.34 ゲスト:森直人 「映画にとってMCUとは何か」【毎週月曜配信】

    2019-06-17 07:00  
    550pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネルにて放送中)の書き起こしをお届けします。5月14日の放送のテーマは「映画にとってMCUとは何か」。映画評論家の森直人さんをゲストに迎え、ディズニーやサブスクリプションサービスといった巨大資本のもと、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)がどのように映画を変えていったのかについて議論します。(構成:籔和馬)
    NewsX vol.34 「映画にとってMCUとは何か」 2019年5月14日放送 ゲスト:森直人(映画評論家) アシスタント:後藤楽々
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。 番組公式ページ dTVチャンネルで視聴するための詳細はこちら。 なお、弊社オンラインサロン「PLANETS CLUB」では、放送後1週間後にアーカイブ動画を会員限定でアップしています。
    アイアンマン=個人とキャプテン・アメリカ=国家の関係
    後藤 NewsX火曜日、今日のゲストは映画評論家、森直人さんです。宇野さんと森さんは長い付き合いなんですよね?
    宇野 もう10年以上の付き合いですよね。気がついたら、長いですね。
    森 それこそ10年ぐらい前にMCUが始まったときが最初の出会いだったような気がするんですよ。
    宇野 森さんは、僕が最も信頼する映画評論家の人のひとりなんだよ。
    森 いやいや、恐縮でございます。
    宇野 僕は個人的に森さんが書いたものの読者で、僕のほうから是非ともウチの媒体で書いてくださいと声をかけて、それからずっと付き合っています。
    森 でも、ちょいちょい良いタイミングで呼んでいただいて、それで毎回おもしろい話なので、今日も『アベンジャーズ/エンドゲーム』(『エンドゲーム』)とMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)いうテーマもさすが。これは宇野さんと話したかった。
    後藤 いつぶりなんですか?
    森 前は『ラ・ラ・ランド』と『ダンケルク』のふたつを(音楽ジャーナリストの)柴那典さんと話したときに、宇野さんも一緒だった。1年に1回ぐらいは会うんちゃう?
    宇野 なんだかんだで1年に1回ぐらいですね。
    森 だから、その年の一番注目すべきタイトルが出てくると会うよね。今年は早くも出ちゃったけどね。
    宇野 その度に森さんと話さなきゃという気になって、毎回いろいろと理由をつけて呼んでいます。
    後藤 今日のテーマは「映画にとってMCUとは何か」です。
    宇野 前半は歴代のMCUの歴代の22作品を振り返りながら、各作品について話して、後半はMCUというシリーズ自体が今の映画産業、エンターテイメント、映画という表現自体に対して、どういう影響を長期的にもたらすのかというところまでいけたらいいなと思っています。
    後藤 最初のキーワードは「いま、MCUを振り返る」です。
    宇野 『アイアンマン』から『エンドゲーム』に至る、トニーがアイアンマンになってから、トニーが死ぬまで22作を順に振り返りながら、森さんと話していけたらと思います。
    後藤 年表がこちらです。


    宇野 MCUが始まったのが2008年だから、もう11年前ですね。
    森 『アイアンマン』は2008年公開でしょ。ここにDCの作品を並べると、面白いんですよ。『ダークナイト』が同じ2008年公開なんですよ。この頃、マーベルとDCはいい勝負というか、DC勝っているんじゃないかぐらいの勢いがありましたよね。
    宇野 DCは『ダークナイト』がヒットして『アベンジャーズ』が公開されるまでは、興行収入的にも、映画の評価的にも勝っているんですよね。
    森 それがこの10年で逆転しちゃったのも、ひとつの歴史なんですよ。フェイズ1のあたりは、完全にオバマが調子いい時代なんですよ。オバマは2009年の初頭に大統領就任でしょ。だから、『アイアンマン』の1作目はすごく明るくて「イエス・ウィー・キャン」感がすごいんですよ。
    宇野 『アイアンマン』と『ダークナイト』の公開時期はほとんど離れていない。でも、『ダークナイト』はブッシュ時代の総括でテーマ的にも露骨に9.11以降のアメリカのさまよえる正義をどう引き受けるかという、すごく時代に沿ったテーマと寝て、世界的に大ヒットした映画なんですね。対して、『アイアンマン』はブッシュ時代があって、オバマに切り替わって、その古き良きアメリカの正義が完全に滅んだ後に、もう一回どのようにしてアメリカらしさを、もっと言えばアメリカ的な男性性を定義するのか、という部分が前面に出ていた。
    森 だから、この話を宇野さんとしたかった。MCUの最初は、そこからなんだよね。初期はDCの作品が暗くて、マーベルの作品は明るかった。ただ、だんだんオバマが怪しくなってくると、マーベルの作品も暗くなる。
    宇野 クリストファー・ノーランの『ダークナイト』三部作を仮想敵にしていたことは、もう間違いないですよね。元々DCとマーベルはレーベル的にもライバルだし、『アイアンマン』の冒頭もアフガニスタンのシーンから始まる。トニー・スタークというキャラクターに託された、イラク戦争以降のアメリカンマッチョイズムを信じられなくなった男性性の在り方が、『アイアンマン』のテーマ。『アイアンマン』は2や3を観ても、基本的にはトニーの自分探しの話なんですよ。
    森 完全にそうですよね。次のエポックでいうと、フェーズ2の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(『ウィンター・ソルジャー』)かな。この映画の監督は、『エンドゲーム』のアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟。MCUにおいて、ルッソ兄弟の監督作がひとつの大きな生命線になっている。最初が『ウィンター・ソルジャー』なんですよ。次が後半になっちゃうんですけども、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(『シビル・ウォー』)。次が『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(『インフィニティ・ウォー』)。そして、『エンドゲーム』。この4作はトランプ時代になっていく流れと、気持ちいいくらい連動しています。
    宇野 やはり『アイアンマン』と『キャプテン・アメリカ』というのは誰もが認める対の存在なんですよね。『アイアンマン』は、9.11以降の男性性のあり方、「私」のあり方、プライベートをテーマにやったんだよ。対して『キャプテン・アメリカ』はパブリックなんですよね。イラク戦争以降、9.11以降のアメリカの正義をどう再定義するか。特に2作目の『ウィンター・ソルジャー』、あと3作目の『シビル・ウォー』が、そのテーマを正面から引き受けていっている。
    森 僕は『ウィンター・ソルジャー』と『シビル・ウォー』を観たときに、DCみたいじゃんと思った。
    宇野 『ウィンター・ソルジャー』はエポックでしたよね。『ウィンター・ソルジャー』までのマーベルの映画はエンターテイメントの映画としてはよくできているけれど、クリストファー・ノーランのバットマンが到達している領域を考えると、もっといろんなものを詰め込めるだろうという不満が常にあった。それを『ウィンター・ソルジャー』でかなり追いついてきた。
    森 MCUの作品は批評として語るには、ややエンタメ度だけでいきすぎているところがあったんだけれど、『ウィンター・ソルジャー』からは変わったね。特に『シビル・ウォー』は『エンドゲーム』への流れを考えても重要作。
    宇野 『シビル・ウォー』は良いですよね。
    森 もしかしたら『シビル・ウォー』は『エンドゲーム』を別格にするとシリーズ最高傑作かもな。
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  • 宇野常寛 NewsX vol.33 ゲスト:竹下隆一郎「メディアと平成」【毎週月曜配信】

    2019-06-10 07:00  
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    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネルにて放送中)の書き起こしをお届けします。4月30日に放送されたvol.33のテーマは「メディアと平成」。ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎さんをゲストに迎えて、平成の30年間の出来事を振り返りながら、現在のメディア状況はいかにして生まれたのか。インターネットは日本をどう変えていったのかについて考えます。(構成:籔和馬)
    NewsX vol.33 「メディアと平成」 2019年4月30日放送 ゲスト:竹下隆一郎(ハフポスト日本版編集長) アシスタント:加藤るみ
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。 番組公式ページ dTVチャンネルで視聴するための詳細はこちら。 なお、弊社オンラインサロン「PLANETS CLUB」では、放送後1週間後にアーカイブ動画を会員限定でアップしています。
    平成30年間のメディア史を三分割して振り返る
    加藤 NewsX火曜日、今日のゲストはハフポスト日本版編集長、竹下隆一郎さんです。
    宇野 平成最後の夜は、竹下さんとしっぽりとメディアについて語って終わろうかと思って、今日お呼びしました。
    加藤 今日のテーマは『メディアと平成』です。
    宇野 今ありとあらゆるところで、平成の30年を総括する企画が行われていると思うんだけれど、せっかく竹下さんがゲストなので、今日はメディア史の観点から平成の30年を総括してみたいと思っています。
    加藤 最初の議論のテーマは「平成のメディア史」です。
    宇野 前半は平成のメディア史を二人で振り返りながら議論して、後半にこれから僕らがどう攻めていくのかも含めて、総括していけたらなと思っています。竹下さん的に平成30年のメディアはどういうものだったんですか?
    竹下 SNSが出てきたのが、めちゃくちゃ大きいですよね。もちろんWindows95や98が出てきて、個人が発信できる時代だとか、マスメディアが意味なくなると言われていたんですけど、やっぱりリアリティを持って実感できたのは、2000年代半ばぐらいからFacebookやTwitterが出てきて、誰もが気軽に発信できるようになって、マスメディアの力が弱くなって、個人の力が強くなったというのは、めちゃくちゃ大きかったなと思いますよね。
    宇野 僕は「序破急」だと思っているんですよ。平成の30年は、ちょうど10年ずつ区切ることができて、最初の10年はとにかくマスメディアの力がマキシマムになった10年なんですよね。業界では有名な話ですけど、テレビも広告も出版も、全部1997〜1998年ぐらいが売り上げ的にはピークなんですね。なので、平成の最初の10年間は、20世紀の発明であるマスメディアが日本の人口1億2000万人を、ほぼ全体主義といっていいくらいひとつにした。 当時は学校で「昨日、何観た?」と聞かれたら、それは絶対に民放のドラマやバラエティ番組で何を観たかということだった。それに国民の大多数がJポップを聴いていたんだよ。Jポップという言葉をつくったJ-Waveができたのが、ちょうど平成のはじまった頃で、ドリカムやB’zや小室ファミリーなどの曲をみんなが聴いていた。 それが平成の中盤の10年でインターネットが生まれて、メディア状況がガラッと変わった。平成10年代は、人々がインターネットという新しい力に戸惑いながらも、希望を持っていた10年だと思う。 そして、平成の最後の10年は、インターネットという新しいメディアに逆に振り回されて、人々が迷走を始めた10年じゃないかなと僕はなんとなく思っているんですよね。
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  • 宇野常寛 NewsX vol.32 ゲスト:三井淳平 「レゴ認定プロビルダーが〈つくる〉世界」【毎週月曜配信】

    2019-06-03 07:00  
    550pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネルにて放送中)の書き起こしをお届けします。4月23日に放送されたvol.32のテーマは「レゴ認定プロビルダーが〈つくる〉世界」。レゴ認定プロビルダーの三井淳平さんをゲストに迎えて、レゴを使って表現するデフォルメの極意や、微分的・積分的な表現の違いについて、三井さんがつくった作品の紹介を交えつつ、語っていただきました。(構成:佐藤雄)
    NewsX vol.32 「レゴ認定プロビルダーが〈つくる〉世界」 2019年4月23日放送 ゲスト:三井淳平(レゴ認定プロビルダー) アシスタント:後藤楽々
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    三井淳平とは神である。世界で13人の「レゴ認定プロビルダー」とは
    後藤 NewsX火曜日、今日のゲストはレゴ認定プロビルダーの三井淳平さんです。よろしくお願いします。
    宇野 「PLANETS vol.9」では三井さんにレゴで製作いただいた、ザハ案の新国立競技場の写真を表紙として使っています。どういう人に作ってもらうのがいいのかスタッフといろいろ議論したんだけど、直球で三井淳平さんが良いんじゃないかって話になったんです。当時はまだ会社員でしたよね?
    ▲『PLANETS vol.9 東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト』
    三井 会社員をしながらレゴビルダーもやっていました。
    宇野 何年か前に独立されてどんどん活動の幅を拡げられていてる三井さんと久しぶりに会って、三井作品の世界とレゴという玩具について語り合うのも良いかなと思って今日は来ていただきました。
    後藤 今日のテーマはこちらです。「レゴ認定プロビルダーが〈つくる〉世界」。
    宇野 前半は三井さんの作品を紹介してもらいながらお話を伺っていこうと思います。後半はレゴの魅力について僕と三井さんで議論する感じの構成でいきたいと考えています。
    後藤 1つ目のテーマにいきたいと思います。「神と呼ばれる男」。
    宇野 まさに神と呼ばれる男ですからね。そもそもレゴ認定プロビルダーという肩書について見てる人に説明いただいたほうが良いかなと思うのでお願いできますか。
    三井 レゴ認定プロビルダーというのはレゴの社員ではないのですが、レゴを使って作品を作ることをレゴ社に公式に認められているプロフェッショナルという肩書になります。
    宇野 世界で何人くらい居るんですか?
    三井 今世界で13人が認定されています。
    後藤 13人しか居ないんですか!? それはもう神様ですね。
    宇野 他の12人と交流はあるんですか?
    三井 年に1回みんなで集まる機会があります。すごく仲が良くて良い雰囲気ですね。
    後藤 認定はどういうタイミングでされるものなんですか?
    三井 一定の試験があるわけではないんです。レゴのイベントに関わったりといった実績が積み重なっていくとレゴ社から声がかかります。ビルダー側から声をかけることもあります。
    宇野 2015年に独立して今はレゴ作品を作る仕事一本なんですよね。レゴが人生の100%になるというのはどうですか。
    三井 会社員を辞めるときに少し躊躇いがあったんですけど、いざフルタイムでレゴに関わると、よりやりたいことができるようになったのですごく良い判断だったと思っています。
    宇野 今日は三井さんの作品を見ながらお話聞けたらと思います。今日は手のひらサイズで持ち運びできるレゴ作品をいくつか持ってきていただいています。
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  • 宇野常寛 NewsX vol.31 ゲスト:石破茂「こんな日本をつくりたい2019」【毎週月曜配信】

    2019-05-27 07:00  
    550pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネルにて放送中)の書き起こしをお届けします。4月16日に放送されたvol.31のテーマは「こんな日本をつくりたい2019」。自民党衆議院議員の石破茂さんをゲストに迎えて、2012年刊行の宇野との共著『こんな日本をつくりたい』からの7年で、日本はどのように変わったのか、あるいは変わらなかったのかを、平成の政治の総括を交えつつお話を伺いました。(構成:籔和馬)
    NewsX vol.31 「こんな日本をつくりたい2019」 2019年4月16日放送 ゲスト:石破茂(自民党衆議院議員) アシスタント:得能絵理子
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。 番組公式ページ dTVチャンネルで視聴するための詳細はこちら。 なお、弊社オンラインサロン「PLANETS CLUB」では、放送後1週間後にアーカイブ動画を会員限定でアップしています。
    昭和の敗戦と、来るべき2020年東京五輪の関係
    得能 NewsX火曜日、今日のゲストは自民党衆議院議員、元地方創生担当大臣の石破茂さんです。石破さんと宇野さんは7年前に共著『こんな日本をつくりたい』で対談をされていますが、会うのは久しぶりなんですか?
    (▲『こんな日本をつくりたい』
    宇野 TOKYO MXの番組「激論!サンデーCROSS」で、何ヶ月か前に共演していますよね。総裁選のちょっと前ぐらいですかね。
    石破 そうね。ただ宇野さんがいろんなところで活躍しているのは常に知っているから、そんな久しぶりという感じはないんだよね。(前のコーナー「impulse buy」で、宇野さんが紹介した『アルキメデスの大戦』を手に取って)これは面白いね。
    宇野 石破さんに読んでほしくてですね。
    得能 今日はあえて狙って持ってきたところがあるんじゃないでしょうか。
    石破 大和をつくって、武蔵を作って、3番艦(信濃)は航空母艦になったからね。それで試験航海中に沈んじゃったからね。死なないと言ってね。
    宇野 人間って合理性だけでは動かないんだなということを思い知らされる漫画なんですよね。
    石破 でも、善かれ悪しかれ、大和って日本国そのものじゃないですか。大和について知ることは、日本とはなんなのかを考えることに直結すると私は思っているんですけどね。
    宇野 否応なく大和に惹かれてしまう日本の国民性を、鼻で笑うんじゃなくて、直視するしかないと思うんですよね。
    石破 それはそうだと思う。昭和20年4月、大和が鹿児島沖で沈んだんだよね。飛行機だけではなくて、戦艦が特攻で突っ込む。桜満開の呉を出航していくんです。戦果は何も得られないことを分かった上で、突っ込んでいく。それは日本しかしない発想。ある意味、日本というのは、そういう国。そうやって美学に酔いしれるところがある。それで失われるものって何なんだろうね。大和の生き残りの吉田満の『戦艦大和』という本があるでしょ。「何のために俺たちは行くんだ」という議論が士官達の中であった。「一回日本は滅びる。それでいいじゃないか」「そこから新しい日本が生まれるんだ。俺たちはその先駆けになるんだ」ってね。さて、そういう日本になったかな。
    宇野 このままだと、2020年の東京オリンピックは「小さい大和」になると思うんです。誘致したときは、国民が湧いたかもしれないけど、いざ実行していく段になると、なんのグランドデザインもない。国家百年の大計もない。それで予算の押しつけ合いを自治体同士でやっている。東北の復興五輪もお題目だけで、みんな忘れてしまっている。まさに第二の敗戦としての2020年になりかねないと思うんですよ。
    石破 そうならないようにするのが我々の仕事であってね。昭和39年に東京オリンピックをやり、45年に大阪万博をやり、47年に札幌で冬季オリンピックをやったんですよね。今度も東京オリンピックをやって、大阪・関西万博と、いろんなイベントを打つことになりました。そのこと自体を否定はしないが、東京でオリンピック、大阪で万博。首都一極集中をどう是正し、人々がどのようにそれを考えるのか。そういう視点が私は必要だと思っているんですけどね。
    宇野 オリンピックの誘致が決まったときに、この国は東北のことを一回忘れることを選んだんだと僕は思ったんですね。どれだけ復興五輪だと旗を振っても、実際に建築資材も人員も東京に集まって被災地は割りを食った。
    石破 それを批判すると「国民を挙げての行事にお前は反対するのか」みたいな話になるでしょ。私もそう批判されることが多い。だけど批判を一切認めない社会は、どういう社会なんだろうね、と思うんですね。  太平洋戦争をはじめるときも、猪瀬さんの『昭和16年夏の敗戦』にあるように「こんな戦争は絶対にやってはダメだ」「なにをやっても絶対に勝てない」というシミュレーションの結果は、昭和16年の夏に出ていたんです。だけどそれは公にされなかったし、政府に聞き入れられることもなかった。批判や反対を許さないと、そのときはいいかもしれないけれど、結局、不幸になっていくのは国民全体ではないですか。昭和16年の夏に日本の叡智、官庁、陸軍、海軍、同盟通信、日本銀行などから、30代の最も出来る人間を集めて、シミュレーションをやった。それで、絶対にこの戦争は勝てないという結論が出たのに、それは封殺された。そして日本は決定的な敗戦を迎え、国土は灰燼に帰した。そのときの政治にとっていいこと、国民の気分が高揚することでも、その結果、待っているものはなんなんだろうと考えなきゃいけない。
    宇野 70年前とまったく同じ轍を今、この国はゆるやかに歩もうとしているようにしか僕には見えないんですよ。今年は陛下が退位されるということで、時代が移り変わるタイミングなんです。石破さんと僕の共著『こんな日本をつくりたい』は、ちょうど東日本大震災が起きてから、東京オリンピックが決まるまでの間に出した本なんですよね。あれから7年、この国の状況は大きく変わりました。7年のブランクも含めて、この国のこれからのあり方を今日は考えていこうかなと思っています。
    失われた30年の反省から学べること
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