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消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。第14回 デス・ストランディングで緩くつながる優しい世界(簗瀬洋平・消極性研究会 SIGSHY)
2019-12-19 07:00
消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。前回に引き続き簗瀬洋平さんの寄稿です。最近発売されたばかりの、小島監督の「デス・ストランディング」を含む3本の話題のゲームタイトルから、ユーザーへの行き届いた配慮を促す「消極性デザイン」的な発想、そして、人々の「優しさ」を引き出すための世界設計のヒントを見出します。
こんにちは。 先月に引き続き消極性研究会の簗瀬がお送りします。
読者の方々は最近どんなゲームをプレイしているでしょうか? 最近、私がプレイしたものだと
『ゴースト・リコン ブレイクポイント』 『スターウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』 『デス・ストランディング』
などが挙げられます。ゲームは1日1時間、など聞くことがありますが社会人になったいま、これは1日1時間までということではなく、がんばって1日1時間プレイしなければという目標の数字になっています。
すべてが無駄にならない『ゴーストリコン ブレイクポイント』の報酬システム
『ゴースト・リコン ブレイクポイント』は世界屈指のテック企業が買収した未来のテクノロジーで埋め尽くされた島が軍事組織に占領され、偵察にいった特殊部隊の乗るヘリコプターは墜落、生き残った主人公は本部とも連絡が取れないまま島の奪還を目指す……というストーリー。
▲『ゴースト・リコン ブレイクポイント』
もともとこの『ゴーストリコン』シリーズは近未来的な装備を持った特殊部隊ゴーストを率いて小隊単位でミッションをクリアしていくゲームでしたが本作から内容が大きく変わり、主人公は単独行動となりました。最初はこれが不満でしたが、単独で生き残ったというシチュエーションでの孤独な探索がなかなか面白く別なゲームとして楽しめるようになりました。本作はオンライン要素を強く打ち出しており、ゲームAIではなくオンラインの仲間と遊んでくださいという方向になっています。実のところ私は自分が下手すぎて知人以外と組むのを躊躇ってしまうタイプのプレイヤーなのですが、世界屈指の大手UBIソフトの作品だけあってそこもやはりきちんと想定されており、可能な限り敵に見つからないよう行動すれば一人でも十分に目的を果たせるため特に問題なくストーリークリアまで進んでいます。
オープンワールドの探索系サードパーソン・シューティングゲームとして本作は旧作とくらべ斬新な要素はないのですが私が感心したのは報酬の出し方でした。このゲームには多くのゲームと同様レベルの概念があります。レベルを上げるにはどうするか? というと通常は敵を倒して経験値をもらい、キャラクターが成長していきます。このゲームもその要素はあるのですが、もっとも重要なのは装備の強さで決まる装備レベルでした。この装備レベルは強い武器や防具を装備すれば上がり、弱いものを装備していると下がります。つまり、より強い装備の装備を求め続ける必要があるわけです。通常のRPGでは敵の強い地域、弱い地域があり、弱いところから順々に攻略するのですがこのゲームでは一部ストーリーのクリアに必要な固定レベルの敵がいるところを除き、敵は常に自分と同じか少し上のレベルになっています。そういう敵を倒せば自分が持っているより良い装備を手に入れることができます。マップに置いてある箱からもやはり自分のレベルより少し上に装備が出てきます。
つまり、自分のレベルを上げるのにどこから攻略する、というような順番を考える必要はないわけです。前述のように私はできるだけ見つからずに行動していましたがうっかり見つかって戦闘になっても少し良い武器が出るので、無駄になったという感覚はまったくなく、移動中に建物を見つけたらまめに装備が入っている箱を開けにいったりしていました。
これはなかなか画期的です。通常、ゲームを作る人は攻略順を考えさせる、というところを遊びと目していて広い地域があってもある程度レベルごとに区切るというようなことをします。しかし考えようによっては広いマップを歩き回るようなゲームで厳密にそれをするとプレイヤーに無駄な行動をさせてしまう可能性があるわけですね。どこへいってもそれなりにメリットがあるならプレイヤーはあちこち楽しんで歩き回れますし、私も実際にプレイしていてこのゲーム無限に歩き回れるなと思って遊んでいました。
ゲーム、特にコンソールゲームはわざわざ時間を作ってテレビの前に座り、数十分から数時間単位で遊んでいます。選択次第で成功したり失敗したりというのはゲームの醍醐味ですが、その選択を成功と大成功にしても困ることはないわけです。かつては楽しませるために必要と思っていたことも時には捨ててみる必要がある、と思い知らされます。
絶対に誰でもジェダイにする『スターウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』の固い意志
続けてもう一本。こちらは『スターウォーズ』シリーズのスピンオフの作品です。スターウォーズには『フォース・アンリシュード』『スターウォーズ・バトルフロント』など過去にも良いゲームが何本も出ています。こういったゲームに一番必要なのはとにかく、プレイヤー自身がスターウォーズの世界の一員になれるかどうか、という点にあります。 『フォールン・オーダー』はまず難易度設定からスターウォーズです。通常の難易度ベリーハードがジェダイ・グランド・マスター、ハードがジェダイ・マスター、ノーマルでもジェダイ・ナイト、そしてイージーはストーリーモードとなります。シンプルに考えるとイージーはパダ・ワン(ジェダイの弟子)となるわけですが、プレイヤーがあこがれるのはやはりジェダイなんですよね。ゲームが下手だからイージーにしたのではなくスターウォーズのストーリーを楽しみたいんですよね、という優しさが感じられます。
▲『スターウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』
また、難易度を下げた場合でも下がるのは敵の攻撃力と攻撃頻度だけです。このゲームはなかなかシビアで、ノーマルでも敵が複数いると四方八方から撃たれて死んでしまったり、容易に囲まれて殴られてダウンしてしまったりします。反面、ライトセイバーでしっかりと守り、隙を見てスバッと倒すというスリルのある戦いが楽しめるわけです。こういうとき、難易度を下げたら適当にボタンを押しているだけで敵が倒せるようにしてしまいがちですが、前述のような調整のため難易度を下げてもガードをして隙を見て斬る、という基本はまったくかわりません。下手でもうまく戦えるまで何度もチャンスをくれる、あまりやりなおさなくても良い、というややスパルタな優しさです。
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消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。第13回 コミュニケーションを介在する存在(簗瀬洋平・消極性研究会 SIGSHY)
2019-11-18 07:00
消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。今回は簗瀬洋平さんの寄稿です。ペットの存在は、家庭内に潤いをもたらすだけでなく、社会的なコミュニケーションを発生させる契機にもなります。ゆるやかな社会的交流のきっかけとしてのテクノロジーの活用を考えます。
消極性研究会の簗瀬です。
2018年10月23日に我が家に子犬がやってきてもう1年が経過しました。犬は1歳ともなるとすっかり成犬で1歳3ヶ月になる我が家のエダ(パピヨン ♀)は人間に換算すると10代後半ということになります。終始動き回っている子犬の頃と違い落ち着きは出てきましたが、まだ3〜4歳の落ち着きがある子と比べるとまだまだ子供で、散歩中に出会う方々からも「まだお若いですか?」と言われます。
実は犬を飼って大きく環境が変化したことの一つに、社会とのコミュニケーションがあります。私は家を出てから大阪と横浜で十数年一人暮らしをしてきましたが、実のところ同じマンションの住人や近所の人とは挨拶以上の会話を交わしたことがありませんでした(とは言え、大阪だとお店や路上で突発的に話しかけられたりするのでやや例外です)が、生後半年近くなり、愛犬を散歩に連れて行くようになって知らない人との会話が劇的に増えました。
犬は基本的に散歩が必要な生き物です。これは運動と社会適応という二つの面があり、後者は人間社会で発生する様々な物音や他の人、犬、その他の生き物などに慣らしていくトレーニングでもあり、犬自身の好奇心を満たしていく行為でもあります。また、大型犬の場合は家でトイレをしない子も多く、排泄のために外に連れ出さなければならないという一面もあるようです。
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