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記事 6件
  • 【動画アップのお知らせ】加藤貞顕×宇野常寛 誰もが「書く」ことをはじめた時代のメディアのあり方をゼロから考える

    2020-02-21 17:30  
    ピースオブケイク代表取締役CEO・加藤貞顕さんと、編集長・宇野常寛による対談の動画をアップロードしました!
    https://www.nicovideo.jp/watch/1582108023
    この対談は、2020年2月13日に有楽町の複合店舗「micro FOOD & IDEA MARKET」にて行われたものです。
    すべての人がSNSなどを通じて、自分の体験をシェアできるようになった現代において、読むこと・書くことの意義はどのように変化しているか。また、読むこと・書くことにおいて、どんなスキルが求められているか。
    cakesやnoteなど、クリエイターのプラットフォームを運営する第一人者である加藤さんと議論しました。
    皆さまぜひご視聴ください!
    ちなみに、本日2月21日(金)22時〜は、宇野常寛の新著『遅いインターネット』の編集者である、幻冬舎・箕輪厚介さんと宇野によるYouTubeLIV
  • WEBマガジン「遅いインターネット」始動しました!

    2020-02-17 20:30  

    PLANETSによるあたらしいWEBマガジン「遅いインターネット」がオープンしました。

    現在のインターネットは人間を「考えさせない」ための道具になっています。かつてもっとも自由な発信の場として期待されていたこの場所は、いまとなっては最も不自由な場となっています。

    そこで私たちは一つの運動をはじめます。いまのインターネットは「速すぎる」。

    私たちはいまあえて速すぎる情報の消費速度に抗って、少し立ち止まって、ゆっくりと情報を咀嚼して消化できるインターネットの使い方を考えてみたいと思っています。

    いま必要なのは、もっと「遅い」インターネットだ。それが私たちの結論です。
     

    今日は、三つの記事を公開しました。

    一つめは、編集長・宇野常寛による「遅いインターネット宣言2020」。

    二つめは、西野亮廣さんへのインタビュー「爪や髪の毛のように、あるいはトイレのように。そして午後4時くらい
  • [オープン前夜特別座談会] 「遅いインターネット」は、世界の「語り口」を変えていくために(後編)

    2020-01-30 07:00  

    いよいよのオープンに向けて、鋭意準備中のPLANETSの新しいウェブマガジン「遅いインターネット」。脊髄反射的な発信の応酬ではなく、未知の他者を受け止める接続回路としてのインターネット本来の可能性を再起動させるため、個々のコンテンツ制作者たちには何ができるのか。「遅いインターネット」創刊準備座談会として、前編に引きつづき荻上チキさん、ドミニク・チェンさん、春名風花さんの3者をむかえ、「遅いインターネット」が採るべき戦略を検討します。 ※本記事の前編はこちら
    メタレベルのメッセージをいかに回復するか
    宇野 そう、インターネットそのものは否定しない。しかしその速度に人間が流されている状態には抵抗する。この距離感が大事なのだと思う。このふたつの立場は完全に両立すると思う。たとえば、ヘイトスピーチの発信者や歴史修正主義者に対してはベタに対抗することが大事で、「あなたの言っていることは、こういう資料で完全に否定されています」と、ファクトとして間違いだという声をベタに上げないといけない。もっとも、そういった声が届くのは、イデオロギー的な思考停止や発信の快楽の危険性に自覚的なメタ的な思考ができる層で、もう一方でこの層をしっかり育てるためのアプローチがが必要になると思うんだよね。
    荻上 メタレベルの思考は一定の訓練をした人でないと難しいですね。たとえば、差別の文脈でも、人種差別や女性差別の歴史を知った上で、今起きている現象をどう位置付けるか考えている人と、差別を自明のものとして身体化している人とでは、そもそも会話が成り立たないところがある。僕は、ある種の人々の生き方や振る舞いを、ネットを通じてそう容易く変えられるとは思っていない。 だけど、「シノドス」や「成城トランスカレッジ」を通じて、少なくともサイバーカスケードの発生の仕方を部分的に変えることには参画してきた。ネット上でデマが広がる構造自体は変えられないけど、間違ったデマが広がることで議論のリソースを奪われる状況を変えたくて、例えば、情報の流通を変えることでデマを流れにくくしたり、ウェブ上で進行しているフローに対しては、フェイクであることを指摘したり、より確かな資料を集めて公開したり。それは個人的に好きでやってきたことなんだけど、その中である種のデジタル・アクティビズムに対しては、基本的には肯定する立場なんですね。 先ほどドミニクさんはアカデミズムに戻った話をされていましたが、僕が10年ほどやっていた「シノドス」というサイトでは、アカデミックジャーナリズムを打ち出していて、スローニュースを前提とした情報発信においては、一定の蓄積があると自負しています。例えば、チリの民主化運動の報道を見れば、水道などの公共料金の値上げが100万人規模のデモに繋がったということは分かる。でも、なぜそうなったのか。このデモの意味について考えるためには、少なくとも新自由主義がもたらした影響や、その前の軍事政権時代にまで遡った語りが必要です。しかし、ニュースサイトの記事ではそういったロングタームでの語りは手に入らない。そこで、その問題を考えるための長尺の議論を、アカデミズムの知見のある人に執筆してもらい、再文脈化するわけです。 確かに脱文脈化が進んだことで、見出ししか見ない人、都合のいい読解しかしない人たちが増えたかもしれないけど、それでも意思決定権を持つような一部の人たちのために再構築された文脈を提供する、いわば「議論のテーブル」の作り直しをしたかった。その思いは今でも変わらなくて、ラジオをはじめとするいろいろな試みも、議論に参加する上で最低限、抑えておくべき文脈を再構築するものでありたいと考えている。「薬物報道ガイドライン」もそれが前提でつくられています。

    【新刊】宇野常寛の新著『遅いインターネット』2月20日発売!

    インターネットは世の中の「速度」を決定的に上げた一方、その弊害がさまざまな場面で現出しています。世界の分断、排外主義の台頭、そしてポピュリズムによる民主主義の暴走は、「速すぎるインターネット」がもたらすそれの典型例といえます。インターネットによって本来辿り着くべきだった未来を取り戻すには今何が必要なのか、提言します。
    宇野常寛 遅いインターネット(NewsPicks Book) 幻冬舎 1760円

     
  • [オープン前夜特別座談会]「遅いインターネット」は、世界の「語り口」を変えていくために(前編)

    2020-01-29 17:00  

    『PLANETS vol.10』での構想発表から1年余、いよいよのオープンに向けてPLANETSが鋭意準備中のウェブマガジン「遅いインターネット」。いまの“速すぎる”インターネットに対して、新たなメディアはいかに抗っていくべきか。「遅いインターネット」創刊準備座談会として、様々な角度から視点・立場でネットメディアでの言論発信や実装に取り組んできた荻上チキさん、ドミニク・チェンさん、春名風花さんをむかえ、この20年間のインターネット史の“失敗”を検証します。本記事の画像を一部、変更して再配信いたしました。著者・読者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。【1月29日17時00分追記】
    「遅いインターネット」は何を目指すのか
    宇野 まず最初に、改めてこの「遅いインターネット」計画の趣旨の説明から始めたいと思います。今、僕たちは新しくウェブマガジンを始めようとしています。そのコンセプトは「遅いインターネット」。それは一言でいうと、速すぎる今のインターネットへの対抗運動です。 現在のインターネットは、タイムラインの情報の消費速度に合わせた、脊髄反射的なコミュニケーションがトラフィックの中心にあるけど、インターネットの可能性はそれだけじゃなかったはずだと僕は思うんです。もちろん速さもインターネットの武器のひとつだけど、進入角度とか、距離の取り方も含めて、インターネットの本当の可能性は、ユーザー側が情報に対する主導権を持つことができるところにあったのではないか。 僕らは二つのことを考えています。一つは、極めてベタにウェブマガジンをやる。そこではネットの旬の話題からは戦略的に背を向ける。もちろん、速報性の高いジャーナリズムに意味がないとは思わない。むしろ必要なことだと思うけど、それとは違う方向から攻めて、5年10年と読み継がれるような記事を更新してGoogle検索の引っかかりやすいところにおいておく。このウェブマガジンは、PV数に比例して得られる収益に依存したサイト運営を行わない。今のところオンラインサロンの収益とクラウドファディングで運営するモデルを考えています。そうじゃないと、どうしてもSNSの潮目を呼んだ「旬の話題」に扇状的な見出しをつけることになってしまう。 念頭にあるのは、欧米のスロージャーナリズムの流れです。月額数千円のサブスクリプションモデルで、都市部の知識人層向けに良質な調査報道のウェブ記事を配信するメディアが力をつけている。そういったメディアの共通点としては、非常に強力なコミュニティを持っていて、月額会員の支持者たちに向けた情報発信やワークショップを継続的にやっている。そのモデルをある程度、踏襲するつもりです。 ただ、僕はそこでスロージャーナリズムのように調査報道をやろうとは思わない。それは僕自身が文化批評の出身で、関心の中心が報道にないというのもあるけど、何より、良質な調査報道があっても、それを受け取る側のリテラシーが低いと、見出しだけを見てリツイートするので、結局フェイクニュースを鵜呑みにするようなことが起きてくる。なので、いわゆる調査報道とは違ったアプローチをしてみたい。時間をかけて新しい事実を掘り起こすのではなく、情報の洪水に晒されたときにそれを慎重に受け止められる知性のリテラシー、抽象的な言い方をすると、情報に対する距離の取り方とか進入角度とか、そちらに僕は関心がある。なので報道ではなくて批評という立場を、ここではあえてとりたい。

    【新刊】宇野常寛の新著『遅いインターネット』2月20日発売!

    インターネットは世の中の「速度」を決定的に上げた一方、その弊害がさまざまな場面で現出しています。世界の分断、排外主義の台頭、そしてポピュリズムによる民主主義の暴走は、「速すぎるインターネット」がもたらすそれの典型例といえます。インターネットによって本来辿り着くべきだった未来を取り戻すには今何が必要なのか、提言します。
    宇野常寛 遅いインターネット(NewsPicks Book) 幻冬舎 1760円

     
  • 【対談】上妻世海×宇野常寛 『遅いインターネット計画』から『制作』へ(前編)

    2019-01-08 07:00  

    今朝のメルマガは、文筆家/キュレーターの上妻世海さんと宇野常寛の対談の前編をお届けします。上妻さんの提唱する「制作」と、「遅いインターネット」に通底する主題を踏まえながら、「開かれた運動体」を実現する方法についてや、押井守やランニングを通した「身体」を巡る議論が展開されます。※本記事は2018年10月27日に青山ブックセンター本店で行われたトークイベントを記事化したものです。
    ☆お知らせ☆ ただいま青山ブックセンター本店さんにて、宇野常寛責任編集『PLANETS vol.10』特集を展開していただいています! 特典として「遅いインターネット」計画に関する宇野のロングインタビュー冊子がついてきます。いま冊子が読めるのはこちらの店舗さんだけ。ぜひお立ち寄りください!

    ▲イベント当日の青山ブックセンター本店さんの様子。『PLANETS vol.10』と『制作へ』が一緒に!
    『制作へ』と『遅いインターネット』の共通性
    上妻 10月16日に『制作へ』という本を上梓しました。上妻世海です。専門としては、現代美術、あと文筆業をしています。よろしくお願いします。
    ▲『制作へ 上妻世海初期論考集』
    宇野 よろしくお願いします。
    上妻 まず、『PLANETS Vol.10』(以下P10)の感想から始めようかな。
    ▲PLANETS vol.10
    宇野 何でも聞いてください!
    上妻 まず驚いたのは、僕の関心領域と非常に近かったことです。僕としては、宇野さんとは違う山を登ってると思っていたんだけど、重なっている部分がとても多かった。とりわけ『制作へ』では「消費から制作へ」と言っていますからね。「遅いインターネット宣言」には非常に共感しました。 最初の猪子寿之さんとの対談は、境界と身体がテーマでしたよね。対談の中に「身体で世界を捉え、そして立体的に考える」という発言が出てきますが、これは僕が『制作へ』で提示したビジョンと非常に近くて驚きました。 僕は2013年頃から、今後は「誘惑モデル」あるいは「魅惑モデル」しかありえないということを言っていたんです。説明と説得による合意に基づいた意思決定は、民主主義における重要な手続きですよね。しかし、文化は議会ではないので、好きなコンテンツやその惹かれた部分を「模倣」することが、制作の最初のきっかけになる。「説明モデル」や「説得モデル」ではなく「魅惑」や「誘惑」するようなやり方じゃないと、文化的な共感や交感の関係は築けないということを、僕はずっと言っていたんです。それでP10を読んだら、「遅いインターネット」をどう進めるかの議論で、宇野さんは「誘惑モデルしかない」と。言葉まで一致していて驚きました。 あと「走るひと」の特集は、単なるコラボレーションと勘違いされそうですが、押井守さんのインタビューの身体論とブリッジになっていて、「遅いインターネット」を考える上でも、かなり重要な特集だと思います。そして、巻末の「遅いインターネット」の「実践編」としての鼎談。落合君の……。
    宇野 「マタギドライヴ」ね(笑)。
    ▲デジタルネイチャーからマタギドライヴへーー世を捨てよ、クマを狩ろう
    上妻 以前、落合さんのサロン向けの配信で、レーン・ウィラースレフという人類学者の著書『ソウル・ハンターズ』で論じられているユカギール人の狩猟の話をしたことがあって。狩猟民と落合さんの生き方には共通点があると論じたことがあったんです。そしたらP10の落合さんのインタビューに「マタギドライヴ」という言葉が出てきて(笑)。自分の文脈に引きつけて読みすぎかもしれませんが、非常に共感しました。 ここまで、P10で僕が重要だと思った点を挙げたのですが、ここからはそれを踏まえて質問に移りたいと思います。現在、社会システムのクロック数や消費の速度がますます速くなっている中でつまらないリプライや反論が日本社会全体を覆い尽くしている状況に、宇野さん自身がうんざりされていて、それに対する提案として「遅いインターネット」がある。そこでひとつだけひっかかったのは、ここで想定されているのは、いわゆる一般の「公」の人たちですが、今の社会はもうすこしセグメント化されているというか。宇野さんはテレビに出られているので、そういう層からの反応が異常に多くて、クソリプだらけの言説空間になっているという意見になってしまうのかもしれませんが、たとえば今日、会場に来てくださっている方や僕の読者は、まあ僕のフォロワー自体が少ないのもあると思いますが、あんまり変なリプライしはないし、変な人が目につくことも今のところ少ないんですよね。 だから、そういう反論をしたり、ヘイトスピーチ的なツイートをしている人たちを「公」と呼んでいいのか。それはかなり偏った人たちなのではないか、と思うんですが、どうでしょう?
    ■PLANETSチャンネルの月額会員になると…・入会月以降の記事を読むことができるようになります。・PLANETSチャンネルの生放送や動画アーカイブが視聴できます。
     
  • 【対談】家入一真×宇野常寛 なぜインターネットは〈遅く〉あるべきなのか(後編)

    2018-12-05 07:00  

    今朝のメルマガはPLANETS CLUBで開催された、家入一真さんと宇野による対談の後編をお届けします。後編では、将来的に訪れるであろう個々が直接的につながるインターネットのあり方や、お金がネットワーク化された先にあるヴィジョン、プラットフォームが金融の機能を担う可能性、「遅いプラットフォーム」の具体的なプランなどについて語りました。(構成:鈴木靖子) ※本記事の前編はこちら
    本記事はPLANETSCLUB第7回定例会の内容を記事化したものです。PLANETS CLUBへの入会はこちらから
    若い世代を送り出すという遺伝子の残し方
    家入 「遅いインターネット」には、たとえば落合陽一さんとかはあちゅうさんとか、けんすうさんとか、いろいろな人が関わってると思うんですけど、この輪ってもっと拡がっていくんですか?
    宇野 僕は第二、第三の落合陽一を出したいのね。それは、テクノロジーだ、イノベーションだでバズるという意味ではなくて、20代でその専門の業界では注目されつつあって、この先、世の中に対してインパクトのある仕事をしていく人の背中を押したい。  僕自身、落合くんとの出会いは衝撃的だったんだよね。彼の考えていることはこれからの世の中を考えていくときに、とんでもなく大きな意味があると。ただ、そのことを理解して、しっかり世に送り出せる人間は、申し訳ないけどいまの出版業界で自分以外いないだろうなと思ったの。それで、当時まだ暦本研(東京大学大学院学際情報学府 暦本研究室)の大学院生だった彼に、「本を書かないか」って話をしたんだよね。  彼の言っていることは僕が本にまとめないと、この才能があんまり良いかたちで世に出ないんじゃないかというある種の焦りというか、変な使命感があった。でも、本を出したあとに、これはメディア人としてすごく充実感のあることだし、幸福なことだなと思ったのね。  僕も40歳になるし、落合くんみたいな若い才能を送り出すことを、これからの仕事としてやっていきたいなって思ったんだよね。これはそれまでなかった欲望なんだけど。
    家入 僕も今年の12月に40歳なります。
    宇野 同い年だからね。僕は今年の11月に40歳。
    家入 やっぱりそうなっていくのかな。僕もここ1、2年くらいでそういう責務みたいなことを感じるようになった。下の世代に対して何ができるかって意識は急に生まれたものではないかもしれないけど、本当に思うことが増えた。
    宇野 自分の本や雑誌を作ることは前提として大事なんだけど、若い世代を送り出すという遺伝子の残し方もあるって思ったわけ。その方がより多様なかたちで世の中に対してポジティブな影響を与えることができるんじゃないか。それは、落合くんと出会って学んだんだよね。
    家入 それはいつぐらいですか?
    宇野 2014、5年かな。2014年にPLANETSを法人化して、メルマガをもっとメディアっぽく使っていこうと思って、いま僕の知っている一番トンガッてる人にインタビューしようと呼んだのが落合くんだった。そこで「魔法の世紀」って言葉が生まれて、メルマガの連載につながっていくんだよね。
    ▲『魔法の世紀』
    家入 じゃあ、いまの活躍ぶりは感慨深いものがあるね。
    宇野 そうなんだけど、なんか「ちょっとあいつ凄すぎる」って感じもあって(笑)。僕が想像していたのとは違う方向だけどね。
    家入 どういう想像をしてたんですか?
    宇野 アメリカに行くと思ってた。某グローバル企業が彼と組みたい的な話もあったはずだし、その流れで向こうに行くのかなって思っていたんだけど、意外と日本に残ってるなって。じゃあもう1冊作るかと思って、『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』を作ったんだよね。
    ▲『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』
    そんなわけで最近は、落合くんに続くような若くて新しい著者を探しているんだよね。でも、未来の落合陽一になる彼ないし彼女の担当も、本当は僕じゃなくてもっと若い人がやるべきだと思う。
    家入 箕輪さんとかですかね。箕輪さん、今後どうするんだろう。それこそ彼が「こいつヤバい」っていう若い人を発掘して、本でガッと押し出すみたいな役割を担っていくのかなって思うんだけど。
    宇野 市場にアクセスして一気にメジャー化することに意味があると思えば、彼はやると思う。ああ見えて、かなり考えてる人だから。ただ、僕はああいう10万部級のものを作るという意思はないんだ。もちろん売れたら嬉しいけど、瞬間最大風速に興味はない。
    プラットフォームが消えても言葉とコミュニティは残る
    宇野 家入一真が今後、どうするのかを聞いてみたい。家入さんは、どこかのタイミングで「インターネットはお金に結びつかなければ脆弱だ」と思ったはずなんだよね。
    家入 うーん。
    宇野 インターネットって人間の意識を結ぶだけのもの。でも、家入りさんは、先に意識が結ばれて、お金が結ばれていないことに対して違和感を覚えていたんじゃないかな。お金がつながらないと自分の信じるインターネットは実現できないと思ってやっていたはずなんだよね。
    家入 たしかに。僕は「お金をなめらかに」という言い方をよくするんだけど、「なめらか」ってどういうことかを考えると、たとえば、困ってる誰かを助けるとき、あるいは誰かの「やりたい」という気持ちを応援したいとき、銀行振込でお金を送ると手数料がかかりますよね。10円送るのに300円かかったら意味がないし、遠くに住んでいると手渡しも難しい。  僕には「お金は質量を失った瞬間、コミュニケーションとともに流れる世界になっていく」という思想があるんです。それが「お金をなめらかに」って話なんですね。クラウドファウンディングもそうだし、それをもう少し先鋭化したアプリ「polca」だったり。挨拶くらいの感じでお金が飛び交う世界をどう作るか。それが思想としてあるんですよ。  ただ、僕らが企業体としてそれを提供する以上、なにかしらのマネタイズが発生せざるを得ない。もちろん従来より全然安い手数料でやれるんだけど、そのためにもっと大きな経済圏を描かなくてはならないというジレンマもある。  コインチェックの事件でブームは落ち着きつつあるけど、ブロックチェーン、ビットコインなどの仮想通貨が本質的に実現しようとしていたのは、プラットフォームを解体する動きなんですね。  どういうことかというと、クラウドファウンディングひとつとってもそうで、たとえば宇野さんがこういうことやりたいって言ったとき、CAMPFIREを介して手数料を取る必要なんてないわけですよ。  宇野さんを応援したい人たちが直接、宇野さんとつながって、宇野さんの試みを応援する。あるいはまだつながってはいないけれど、試みが伝播して「面白いから自分も支援してみたい」と、個人と個人が直接つながってお金が行き交う世界ができれば、プラットフォームなんて必要ないんです。  メルカリだってそうですよね。「こういうものが欲しい」って人と「こういうものを売りたい」って人がいるなら、プラットフォームを介さず直接つながり合えばいい。  その実現は、たぶんもうちょい先だと思うんですが、プラットフォームがいまだに存在するということは、まだまだ旧態然とした古臭い状況にあるということは事実なんです。本質的には、僕らみたいな存在が消え去ることが一番いいんだと思う。
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