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【特別対談】古川健介×ドミニク・チェン 事業者から見たポスト〈検索〉時代(後編)【PLANETSアーカイブス】
2020-05-01 07:00
今朝のPLANETSアーカイブスは、先週に引き続き、古川健介さんとドミニク・チェンさんの二人の若手事業者による、インターネットの未来像についての対談をお届けします。後編では、コミュニティ運営が構造的に陥る閉塞的な隘路をいかにして抜け出すか。〈言葉〉の力に依らない外部性を備えたウェブの可能性について語り合います。※本記事は2016年5月9日に配信した記事の再配信です。
◎司会:宇野常寛
◎構成:長谷川リョー
前回:【特別対談】古川健介×ドミニク・チェン 事業者から見たポスト〈検索〉時代 前編
コミュニティ運営とメタメッセージ
宇野 最近、ブックカフェとかオンラインサロンみたいなコミュニティ運営がトレンドじゃない? 要するに情報ではなくコミュニケーションを売ろう、ということでまあ、妥当な線というか、基本的にはそれしかないと思う。情報、つまりテキストや映像は供給可能かつコピー可能で、コミュニケーションというか体験はできない。
僕は書店業界とも付き合いが深いんだけど、お世話になっている書店の店長さんが、お店が潰れたのをきっかけにブックカフェを出すわけ。本屋とコミュニティスペースを兼ねた、「ダイエット本や自己啓発本は一切置きません」みたいな雰囲気のね。
もちろんそれが勝ち筋というか、短期的な最適化だとは思うんだけどさ。でも、それってテキストコミュニケーションが変貌する世の中で、反動的に20世紀までの本の形式や読書文化を継承してることを表明する、メタメッセージにしかなっていない。70年代生まれのオールドタイプとして気持ちは分かるよ。分かるけど、メタメッセージで勝負した瞬間、ろくなお客がつかなくなる。「本が読みたい人」じゃなくて「本が好きな自分が好きな人」しか集まらなくなる。それって最終的には自分たちの首を絞めると思う。ダメなお客を集めてしまうと、そこが「悪い場所」になって面白い人は寄り付かないしコンテンツも生まれなくなる。この国のブログ文化は10年前にそこで失敗した。
古川 それはすごく分かります。ブログでウケるネタは、ブログに関するネタになってしまっている気がします。メタ的なコンテンツが増えてくると、その業界は排他的になってしまうのではないかと思いました。
たとえば、「ブログ儲かるよね」というネタがウケると、それを言い続けないといけなくなってしまう。そうすると、ブログをマネタイズして、その結果を報告する、というのが増えてくる。自分が発したメタメッセージによって、逆に縛られていくんですよね。
一般の人が、文章を発信できる、というブロガーの良かった部分がなくなっていってしまうのではないか、という懸念があります。
ドミニク 個人がメディア化していくときの面白さって、プロにはない視点やスタイルにこそ価値があると思うんです。でも今は巧妙にアーキテクチャが用意されているから、誰でも最初からプロっぽくできちゃって、そこが今ひとつ持続的な盛り上がりに欠ける原因だと思うんですよね。
あとは人気のあるものに、さらに人気が集中する構造。良いものの定義が依然、「人気」になっている。その一方で、情報のインデックス化の技術は、あまり進歩していない気がするんです。長大なテールの部分にまだ掘り起こされていない価値があって、マスとして見たらゴミかもしれないけど、誰かにとっては宝物かもしれない。
たとえばAppStoreには数十万個のアプリがあるので、寡黙だけど良質なアプリを作る職人がいても、なかなか発見されないんですよね。見つけてもらうには一発芸をしなければならないし、それでウケると延々と一発芸をし続けなければならない。
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【特別対談】古川健介×ドミニク・チェン 事業者から見たポスト〈検索〉時代(前編)【PLANETSアーカイブス】
2020-04-24 07:00
今朝のPLANETSアーカイブスは、古川健介さんとドミニク・チェンさんの二人の事業者による、インターネットの未来像についての対談をお届けします。 前編では「Snapchat」「MSQRD」「Slack」「Medium」など、ウェブサービス界隈にインパクトを与えたサービスを取り上げながら、テキスト情報よりも画像や動画が優位になりつつあるポストTwitter時代のコミュニケーションについて論じます。 ※本記事は2016年5月2日に配信した記事の再配信です。
◎司会:宇野常寛
◎構成:長谷川リョー
動画のSNS化による新しいリアリティの誕生
宇野 今回、お二人をお呼びしたのは、ウェブ事業者だからこそ見えるモノを、ちゃんと言語化してくれるのではないかという期待があったからなんですよね。
「ウェブサービスから社会へ」が当たり前になって一段落ついたことで、その話を誰もしなくなった気がするんですよね。今はそれよりも「シェアリングエコノミー」や「IoT」の話題を出す方がアンテナが高く見えちゃうところがある。
でも逆に、定着フェーズに入った今だからこそ、もう一度ウェブについて考えるべきではないのか。エッジの表明ではなく、定点観測的にやってみることに僕は意味があると思ったわけです。
ドミニク たしかにウェブの事業を運営していて、ユーザーの動向を人間観察的に深い目線で追っていると、「これは人類学的に興味深いよね」というようなことが日常的に起きてますよね。
宇野 普通の事業者は、それをビジネスに最適化することしか考えていないけど、もう少しジェネラルに照らし合わせたり、あるいは複数の人間で抽象化し、共有していくことに意味があると思うんだよね。
この企画は「Snapchat」を中心にする予定だったんだけど、そこに囚われずに、「今はこれがキテる」みたいなサービスを見ていくところから始めていきましょうか。
古川 最近の流行でいえば、「MSQRD(マスカレード)」というアプリが流行っていますよね。Facebookに買収されて話題になりましたが。カメラで顔を映すとマスクをつけた動画が撮れるというやつですね。
▲MSQRD(出典)
宇野 仮面を被るから「マスカレード」ね。
古川 二人でやるとお互いの顔が入れ替わるという機能もあって、これが異常にシェアされているんです。
Instagramで写真のフィルターがブレイクして以降、ビデオで同じような処理をやろうとしたアプリはたくさんあるんですが、動画はフィルターをかけても面白くならないんですよね。そういった中でこのアプローチが一番ウケた。
ドミニク Snapchatにしても、最初は「こんなものどうするんだ」と大人たちに言われていたものが、いつの間にかメディアになってますから。この先どうなっていくかは、分からないですよね。
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古川健介『TOKYO INTERNET』第9回 東京における金銭的資本と文化的資本の交差点はどこなのか
2017-05-23 07:00
「けんすう」こと古川健介さんが日本的/東京的なインターネットの特質に迫る連載『TOKYO INTERNET』。今回は、日本のモバイルゲーム特有の課金システム「ガチャ」と、この国に脈々と受け継がれる「キャラクター文化」の接点について考察します。
東京における金銭的資本と文化的資本の交差点はどこなのか
(イラスト:たかくらかずき)
さて、今回のTOKYO INTERNETから、いよいよ「東京が生み出すべき次のネットサービスは何か」というところを考えていきたいと思います。
その前に、まず連載の目的である「都市の土壌を使った次のネットサービスを作る」のには何が必要かという整理をしたいと思います。
結論からいうと
・金銭的資本
・文化的資本
の2つが必要であり、この2つが交差する点に、次のネットサービスの種があるのではないかと思っています。金銭的資本は「雨」のようなもので、文化的資本は「土」のようなものです。雨がきちんとふっていて、かつ豊かな土壌があってはじめて、ネットサービスという芽がでるのです。
この連載の前半では、様々な角度から東京にある、ネットサービスを作る上で活用できそうな文化的資本について考えていきました。なぜ文化的資本についてから考えていったかというと、「日本から世界に出ていくサービスがほとんどないのは、ベンチャーへの投資金額が少ないからだ」という結論になりやすいからです。
もちろんネットサービスを大規模に立ち上げるとしたときにはお金の問題は避けて通れず、どれだけイノベーションに大規模に投資できるか、というところで勝負が決まったりしがちなのです。
しかし、日本において「グローバルサービスは全世界に広がるものなので地域差はない。なので、どこの国からも生まれる可能性がある」という前提に立ちすぎているせいで、文化的資本に関する議論が日本においてあまりに少なく、結果としてネットサービス作りにおいて参照となる言論がない、という課題感を感じています。この連載ではまずそこを埋めたかったのですね。
この連載の初期のあたりで言及したとおり、GoogleやFacebookなどのグローバルサービスが普遍的であるため、どこの地域から生まれてもおかしくなかった、というわけではありません。むしろ、あのようなサービスは「アメリカのシリコンバレーだからこそ生まれた&育った」というほうが的確だと考えています。なので、日本がシリコンバレーで作られるようなサービスを作るのは難易度があがってしまうのです。
というわけで、連載の前半でテキストサイト文化や絵文字、匿名でのコミュニケーションサービスについて深く考察していったわけです。
そして、後半で、i-modeをはじめとするモバイルでの課金の強さなどを元に金銭的資本についても考えていっていきました。そして、今回、そして次回の記事で、本連載の結論部分に入っていきます。その結論に入るということは、前述の通り「金銭的資本と文化的資本が交差するのはどこか」というところを考えていく必要があると思っています。
まず、本記事では、その交差するうちの、大きな1つの点について考えていきたいと思います。
東京ではエコシステムをどう回せるか?
文化的資本と金銭的資本が交差するところはどこか?を考える前に、まず、日本 / 東京という地理において、金銭的資本をどうするのか、という点をもう一度整理してみましょう。それには「エコシステム」が必要です。
エコシステムとは生態系、といった意味ですが、インターネットベンチャー業界では、よく「世代を超えてお金や知識などのリソースが回ることで、ビジネスの生態系が回っていること」という意味で使われます。
たとえば、もっともエコシステムがうまくいいっているシリコンバレーでは、
・テック企業が成功をする
・そこで得た資金を次の世代に投資する
・新規参入社たちが多産多死の状態で様々なイノベーションを試むようになる
と言う形でまわっています。そうして生まれた企業の一部が生き残り、巨大企業になっていったり、M&Aをされることで大企業のイノベーションの源泉になったりしています。
いわば、GoogleやFacebookのような圧倒的に成功したインターネット企業のお金が、同じ地域内でぐるぐる廻ることで、地域全体が巨大なラボのようになっていっているのがシリコンバレーの強さなのです。
この連載のテーマである、地域からサービスが生まれる、という主張の背景には、文化面以外にも、このような金銭面での理由もあるということです。
このような、エコシステムがあってはじめて、その地域からイノベーションを起こす企業がたくさん生まれるようになるわけです。
一方で、日本ではまだ地域のエコシステムが回り始めたくらいなので、まだまだという状態です。
筆者の話でいうと、2009年にnanapiというハウツーメディアの運営する会社の創業をするのですが、その時にエンジェル投資家として投資してくれたのが、小澤隆生氏という、楽天にビズシークという自分の会社を売却した人でした。そして、nanapiも2014年にM&Aをされています。
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古川健介『TOKYO INTERNET』第8回 インターネットビジネスにおける日本型エコシステムの可能性【毎月第2水曜配信】
2017-04-12 07:00
「けんすう」こと古川健介さんが日本的/東京的なインターネットの特質に迫る連載『TOKYO INTERNET』。今回は、シリコンバレーと比較したときに見えてくる日本のインターネット企業の特徴と、今後の可能性について考察します。
インターネットビジネスにおける日本型エコシステムの可能性
(イラスト・たかくらかずき)
この連載も8回目になりました。そろそろ終盤ですが、このあたりで一度、この連載の目的を再確認したいと思います。
この連載の出発点は、「インターネットサービスは、都市の影響を受けやすい。その都市がどのようなサービスを作る土壌があるのか、ということを整理することで、今後、東京という都市でサービスを作る人への手助けをしたい」というところです。
今、世界を席巻しているグローバルサービスは、多くがシリコンバレーという土地から生まれています。その代表例が「GAFA(Google Apple Facebook Amazon)」です。これはビッグ4とか呼ばれたりします。
ちなみに中国にも「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」と呼ばれる巨大ネット企業たちがあります。もはや中国はシリコンバレーに次ぐ規模と盛り上がりになっています。しかし、中国企業は、世界中で使われるサービスを作るというより、中国国内でシェアを獲得して大きくなっている感があります。
しかし、シリコンバレーがいくら強いからといって、シリコンバレーでなければ世界で勝てない、と嘆くのもナンセンスではないかと。日本から・東京からでも独自のサービスを生み出せ、世界で戦っていけるというふうに信じているのが僕の立場です。
では、東京からサービス生み出すのはどうしたらいいのか?に関しては、2つの方法があります。1つ目は、グローバルで使われるニーズがある普遍的なサービスで、グローバル市場で勝つというやり方です。そしてもう1つが、日本や東京の独自性を背景にニッチ部分で勝つというやり方です。
このどちらでも良いのですが、どちらを選ぶにせよ、今の自分たちには、どのような土壌があるのか、を整理することが大事なのではないかと思いました。寒い地域でバナナを植えても育ちづらいように、寒い地域であれば寒い地域で有利なものを植えたほうがいいよね、という考えです。
TOKYO INTERNETの連載の振り返り
というわけで、今までの連載を振り返ります。
まず、第1回目の『東京っぽいインターネットサービスは「遊び半分」がキーワード』では、基本的な真面目な国民性からか、遊び心を2割程度入れると、不謹慎だと叩かれやすいが、半分以上遊ぶと、賞賛される、という点について話しました。
そして、第2回目の『シリコンバレーのハッカー文化と東京オタク文化の大きな違い』では、問題を解決するために手段を選ばないハッカーとの対比として、手段を目的化するオタク文化が日本にはあるのではないかと述べました。
第3回では、第一回目の続編に近いイメージで、テキストサイトをビジネスモデル化したバーグハンバーグバーグについて書きました。『テキストサイト文化が生み出した「真面目にふざける」ビジネスモデル』です。
前半の3回をまとめると、プロセスを楽しみ、遊びのようにふざけながらそれをビジネス化までする、という日本独自の形が浮かび上がってきます。職人的ともいえますし、長期のビジョンを描いて、そこまで最短ルートでいく、ということが弱いとも言えます。
そして、第4回で、『なぜTwitterは日本における最強の投稿サービスなのかを考察してみる』という内容を書いています。Twitterが流行っていった裏側として、日本の匿名掲示板などの歴史を追い、現在ではTwitterまでたどり着いているという内容でした。
第5回では、『なぜ日本が世界共通語「Emoji」を生み出したのか、そしてその影響とは』で、絵文字が流行った理由を書きました。非言語化や、葦手絵などの、ビジュアルが強いという面と日本の独自性を探っています。
そして、第6回では、第4回目でも言及した匿名性をさらに深掘りをしています。『日本における匿名とは、自分のことを隠すことではなく、関係性をゼロにすることである』というタイトルで、なぜ匿名を好むのか、の源泉について語りました。
この中盤の3つでは、日本的なコミュニケーションのあり方について考えを深めています。というのもインターネットサービスのコアは、人間と人間とのコミュニケーションだからであり、そこを深めることが、この国や、東京という都市から生み出せるサービスの特徴を形付けやすいからだと思っています。
ご存知の通り、国ごとでコミュニケーションのプロトコルはそれぞれ違うものなので、その意味でも国ごとの特徴がでやすいというという点でも参考になりやすいです。
そして前回、第7回目の記事の『匿名性の次の依代「初音ミク」から見る日本が作れるプラットフォームとは』では、その匿名性をさらに一歩進めた形で、初音ミクを取り上げています。初音ミク的なものが日本が作れるプラットフォームの形の一つなのでは、という内容です。
ここまで、どちらかというと文化的背景、カルチャー的な部分についての記事が中心でした。第8回目となる今回の記事では、少し毛色を変えてインターネット企業の経営について話していきたいと思います。
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古川健介『TOKYO INTERNET』第7回 匿名性の次の依代「初音ミク」から見る日本が作れるプラットフォームとは【毎月第2水曜配信】
2017-03-08 07:00
「けんすう」こと古川健介さんが日本的/東京的なインターネットの特質に迫る連載『TOKYO INTERNET』。今回は、「名無し型匿名」の発展型としてゼロ年代後半に登場した「初音ミク」を分析しつつ、日本的インターネットが次に何を生み出すのかを考えます。
匿名性の次の依代「初音ミク」から見る日本が作れるプラットフォームとは
(イラスト・たかくらかずき)
前回の記事では、なぜ日本のネットサービスでは匿名性が好まれるか、という点に関して「関係性を消し去るため」と述べました。更に「名無しさんというキャラにユーザー全員がなりきることで、より関係性を消していき、一体感を得ていく」というところまで述べています。
たとえばアメリカなどでは、自分の個性やアイデンティティを非常に重視し、「自分は自分であり、自分の意見を言うことが大事」という考え方を強く教育をされます。私は私、という考え方です。
それに比べ、日本を含む東アジアでは、全体の関係性の中で、自分というものを考えます。会社での自分と家での自分、というので、キャラが全く違うということもありえます。
関係性を強く意識する日本人にとって、匿名性のインターネットサービスは、その関係性がないところでコミュニケーションができるため、居心地がよかった。そして、単なる匿名にとどまらず、みんなが「名無しさん」という同一のキャラクターを演じることで、その関係性をよりゼロにしていったのではないか・・・というのが前回の主張です。
この記事ではそこから先にさらに推し進めて考えていきたいと思います。考えていきたいのは、「その匿名性があったことで、日本のインターネットは何を生み出したか、そして何を生み出す可能性があるか」という点です。
ちなみに、この連載の主な目的は「インターネットサービスなどは、実は都市に深く結びついている。東京からは、どんなサービスが生まれる土壌があるのかを整理し、これから作られるサービスの手助けをしたい」という点にあります。その意味からも「匿名性と名無しさんへのなりきりによって、関係性を消した先に、何が生まれたのか」ということを整理し、さらに今後何が生まれていくのか、という点を重点的に書きたいと思います。
集合知と匿名性は何を生み出すか
まず、最初に「集合知」と匿名性の関係について掘り下げて考えていきたいと思います。
集合知とは、2004年くらいに盛んに言われた言葉です。Web2.0という言葉が当時流行ったのですが、要は「たくさんのインターネットユーザーが投稿などをすることで、その集合した知識の全体が良い感じに使える知識になったもの」という感じでしょうか。広義の意味では、オープンソースプロジェクトや、クリエイティブ・コモンズなども含まれますが、ここでは技術者や専門家ではない、一般のユーザーが行動することが、集合的な知となる、という意味に限定して考えていきます。
その意味での集合知を分解すると、以下の2つになります。
・インターネットユーザーによる大量のデータ
・その大量のデータを解析して、使いやすくする
インターネットユーザーによる大量のデータは、明示的に投稿するものから、無意識に行っている活動も入ります。
前者の例としてはクックパッドなどです。多くの人たちが自分のレシピを投稿しており、そのデータが大量にあるため、レシピサイトとしての価値が高いのです。
後者は、Googleの検索結果などです。Googleの検索結果の順番のロジックは、それぞれのサイトに貼られたリンクの数だったり、検索結果から遷移したときのユーザーの動きなどを見てランクを決めています。
ネットサービスにおける集合知についての議論は、2004年ごろのWeb2.0時代に盛んにされましたが、当時は海外と日本の差はほとんどありませんでした。ブログや、ソーシャルブックマークなどは、アメリカで流行し、そのあと日本でも類似サービスが出てきて流行ったわけです。
しかし、ゼロ年代後半から10年代にかけて、差が出てきます。
まず、GoogleやApple、Facebook、Amazonなどのいわゆる「BIG4」と言われる企業たちは、「ありえないほどの大量のデータを確保する」「その大量のデータを、ものすごいリソース(人的資源、サーバ費用など)にて解析する」ということをしていっています。
Googleなどは凄まじく、Android携帯を使っていると、今日どこの場所にいったか、どこでご飯を食べたのか、というものをGoogleマップで保存していたり、「一昨日買ったこの靴、値下がりしていたよ」と表示してきたりします。Googleで検索をしていたり、Chromeを使ってWebを徘徊していたり、Gmailを使ってメールをしたり、Googleカレンダーを使っていたりするユーザーは、相当なデータをGoogleにあずけているわけです。Googleはあらゆるデータを抑えており、それを凄まじい精度で解析をしています。これはますます加速していくでしょう。
こうした戦いは、シリコンバレー的な、グローバルのインターネット企業の得意とするところであり、強者がより強者になっていく、という形です。
そして、現在、よく話題になる人工知能(AI)に関しては、彼らが圧倒的に先に行っています。人口知能とは、いってしまえば大量のデータを保有しており、それを学習するための大量のリソースを使えるかどうか、にかかっているので、その2つを使える企業は限られているからです。
中国などのインターネット企業はそれに追従しつつありますが、日本のインターネット企業では、そのような動きができている企業はかなり限定的です。かろうじてYahoo!JAPANなどでしょうか。
しかし、この流れの中、日本では、全く別の集合知により、新しいプラットフォームができあがっていました。それが「初音ミク」です。
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古川健介『TOKYO INTERNET』第6回 日本における匿名とは、自分のことを隠すことではなく、関係性をゼロにすることである【毎月第2水曜配信】
2017-02-08 07:00
「けんすう」こと古川健介さんが日本的/東京的なインターネットの特質に迫る連載『TOKYO INTERNET』。今回は、なぜ日本のインターネットで「名無し型の匿名」という形式が好まれるのかを考察します。
日本における匿名とは、自分のことを隠すことではなく、関係性をゼロにすることである
(イラスト・たかくらかずき)
タイトルでぜんぶ言い切りました。今回のTOKYO INTERNETは匿名についてです。「なぜ日本では匿名性が重要なのか」です。
日本のインターネットでは、匿名による投稿が好まれる傾向があるように思われます。たとえば、匿名掲示板の「2ちゃんねる」や2016年に流行語にもなった「日本死ね」という言葉が生まれた「はてな匿名ダイアリー」などは、匿名で投稿できるサービスの代表例です。
Wikipediaの主要10言語の中で、日本語版はもっともログインをして投稿や編集をする人が少なかったというデータもあります。
日本語版の大きな特徴の一つは、編集をする利用者のうち登録せずにいる利用者の比率が高いことである。2007年12月時点で、編集回数の約40%はログインしない利用者によるものであり、これは主要10言語のウィキペディアのうちで最も高い割合となった。
SNSだと実名で書いたり、友だちと繋がったりしているので、匿名は少ないんじゃない?と思ったのですが、Twitterなどでも匿名利用が多いようです。総務省によると
Twitterの利用者では日本は「匿名利用」が7割を超え、他国に比べても顕著に匿名利用が多い状況にある
とのこと。ちなみに欧米だけでなく、アジアとくらべても、日本は匿名利用が高いというデータになっています。(参考:諸外国別に見るソーシャルメディアの実名・匿名の利用実態(2014年) )
ちなみにちょっと「匿名」について整理をします。匿名といってもいろいろな段階があります。
・完全匿名・・・IPアドレスなどの発信者情報も追えない。初期の2ちゃんねるや、昨今のDeepWebなどもこれにあたる。
・名無し型匿名・・・名前を記入する必要がないもの。同じ人が投稿を続けても、それらの投稿が同じ人かどうかが追えないもの。今の2ちゃんねるや、匿名ダイアリーなど。
・あだ名型匿名・・・いわゆるハンドルネームなどを使い、本名を出さない。アイデンティティは統一されているが、現実の自分とは結びつかない。多くのWebサービスやTwitterなど。
匿名性、といって思いつくのが大きくわけてこの3つでしょう。この3つは区別しておかないとややこしいことになってしまいます。
どうしても身元がバレては困るもの、たとえば告発などで必要な匿名は、「完全匿名」でなければなりません。今の2ちゃんねるに普通に書いたら、名前は出ないものの、発信者情報から身元を特定することは出来てしまいます。
「匿名で書けるネットコミュニティ」の存在について議論をすると、必ず「情報提供者を守るために、匿名性は必要だ」という意見が出てくるのですが、これはあくまで発信者情報を守るという意味の匿名であり、トレーサビリティ(追跡しやすさ)の話です。なので、この記事では取り扱いません。主に「本名や、ニックネームを使わないで投稿できる」という意味の匿名について述べていきたいと思います。
「日本人は匿名が好き」というのは昔から言われていました。この議論はずいぶん長く論じられており、僕の知る限り、20年くらい、「なんで日本のネットは匿名が好きなの?」という議論がされています。
そこで、この連載でも、再度、日本と匿名について考えていきたいと思います。
なぜ日本では匿名が好まれるのか
なぜ日本のインターネットでは、匿名が好まれるのか、という点については、まず初期のインターネットにおいて、匿名掲示板が流行したことが影響しているのは間違いないでしょう。
この連載のほかの記事でも述べましたが、「あやしいわーるど」から「あめぞう掲示板」、そして「2ちゃんねる」という大手匿名掲示板が初期に流行し、インターネットにおける中心サービスだったことは見逃せません。
ここでの特徴は、どれも名無し型の匿名性だったことです。つまり、名前を入れる必要がない。重要なのは、ハンドルネームが必要な「あだ名型匿名」ではなくて、「名無し型匿名」が日本で受け入れられたことです。
この、「名無し型匿名」こそが日本の特殊なインターネット文化を作ったのではないかと思っています。アメリカなどの他国でも、ソーシャル・ネットワーキングサイトが流行するまでは、どちらかというとハンドルネーム文化でした。名前欄に適当なハンドルネームを入れて、それで活動するというイメージです。
しかし、日本では、初期段階のインターネット上で、文化を形成していったコミュニティサイトの多くが、「名前を入れることすらいらない」サービスだったのです。
「そもそも、適当な名前を入れるのと、名前を入れないの、どっちも自分だとバレないから大差ないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、この2つには実際、かなりの違いがあります。
というのも、人間は、何でも、名前がつくと、そのアイデンティティを統一しようとする傾向があります。たとえば、自分とは全く結びかない名前をつけて投稿したとしましょう。たとえば、「けんちゃん」みたいな感じです。
そして、「けんちゃん」として「バナナは超おいしい」と書いてたとします。そしてバナナ好きと盛り上がったとします。すると、次の日に「バナナは超まずい」とは書きづらくなってしまうのです。そうすると「あれ、昨日はバナナはおいしいっていってたじゃん」「嘘なの?」となるからです。
人間が心理的についやってしまうことなどをまとめた「影響力の武器」という本によると、人間には、「この人は、一貫している」と見てもらいたい気持ちがあるそうです。一貫性が時には正確性よりも重視されることすらある、と。
つまり、自分でネット上の名前をつけて、その名前で活動する限り、たとえ実名と結びつかなくても、自分自身の一貫した態度を守りたい、と思ってしまうのです。
この一貫した態度のことは、言い換えると「キャラ」、といったほうがわかりやすいかもしれません。自分で決めたキャラを統一し続ける必要があるわけです。
キャラとは、元々は物語に出てくる登場人物のことを指す言葉でしたが、ゼロ年代に入ったあたりから、「真面目キャラ」とか、「明るいキャラ」といったような使われ方をしはじめています。Wikipediaでは「コミュニティ内での個人の位置(イメージ)」と定義されています。これもほとんどの人が普通に使っている言葉ですね。
このキャラを統一し続けたくないから、名無し型匿名を好んだ、というのがこの記事での仮説です。
では、なぜ日本人は、キャラを統一し続けたくないのでしょうか?
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古川健介『TOKYO INTERNET』第5回 なぜ日本が世界共通語「Emoji」を生み出したのか、そしてその影響とは【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.772 ☆
2017-01-18 07:00【チャンネル会員の皆さまへ】
本記事では、本文に絵文字が含まれています。テキストメールでは、リンクをクリックすることで絵文字の画像がご覧いただけます。本文に絵文字を表示した状態で読むために、Webでの閲覧をおすすめしています。
※Webでの閲覧はこちら:http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar1174874
古川健介『TOKYO INTERNET』第5回なぜ日本が世界共通語「Emoji」を生み出したのか、そしてその影響とは【毎月第2水曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2017.1.18 vol.772
http://wakusei2nd.com
ほぼ日刊惑星開発委員会では毎月第2水曜日に、古川健介さんの連載『TOKYO INTERNET』を配信しています。連載の過去記事はこちらから読むことができます。
今回のテーマは、日本社会で生まれ世界中に普及した「Emoji」です。この独特の表現形式がどのようにして生まれたのかを、日本語のデザイン特性や表現の歴史から紐解きます。
絵文字の簡単な歴史を振り返る
今回のテーマは「絵文字」です。絵文字の普及には日本が大きな影響を与えており、日本が絵文字を生み出した、といっても過言ではありません。
絵文字の起源には諸説あり、いま使われているような絵文字の原型は、もともとはアメリカの雑誌で使われた顔文字から、という説(※1)や、「:-)」という横から見た時に笑顔に見えるという、英語圏の顔文字が起源だ、という考え方、またJ-PHONEによるメールの絵文字がブームのきっかけだ、など様々なものがあります。
その中で僕は「デジタルであり若者内に爆発的に普及した」という意味で、絵文字ブームの起源は、ポケベルであり、そこからつながりdocomoの絵文字が、今使われている絵文字のはじまりだと考えています。
そこで本記事では「日本がなぜ絵文字を生み出せたのか」を考察し、そこから「今後、日本からはどのようなサービスを生み出すポテンシャルがあるのか」を考えていければと思います。
そもそも絵文字の使われ方とは
まず絵文字の使われ方を整理したいと思います。絵文字の使われ方は2種類あります。それは
・「感情表現としての絵文字」
・「意味を持った文字としての絵文字」
の二つです。
感情表現としての絵文字は、要は「今日楽しかったね」「おなかすいた」みたいな形であり、文字では表現できない気持ちを付け加えたものです。「!」などと近い使われ方ですね。
意味を持った文字としての絵文字、とは、簡単にいうと主に名詞としての役割を果たせるということです。「晴れなので車で釣りにでかけたんだけど、財布を忘れて大変だった」という文章を「なのででにでかけたんだけどを忘れて大変だった」みたいな使い方です。絵文字自体に名詞としての意味を持っているので、それで表現できるということですね。
ちなみにもちろん「I NY」みたいな形で動詞として使うことも可能です。
すべての始まりは「ハートマーク」だった
絵文字の初期は、主に感情表現として使用されました。
ポケベル時代の絵文字が、絵文字文化の起源といいましたが、この時代の実態としては絵文字=ほぼハートマークといってよいでしょう。そして、このハートマークは、ほぼ感情表現として使われたのです。
ポケベルはせいぜい10文字くらいしか送れない上に、電話機がないとメッセージを送れなかったので、文字数が少なく感情が伝えづらいという問題がありました。10文字といえば、たとえば「ナニシテル?」と送った時に「コレカラゴハン」と返す、そのくらいのやり取りしかできないわけです。
しかし、そこで「コレカラゴハン」と入れれば、かなりメッセージ性が変わります。感情が入ります。少なくともポジティブな感情を伝えようとしていることがわかるわけです。
このように、初期の原始的な絵文字は、まずは「!」のような、文字へ感情を補完するために使われていました。男性では、愛を伝える時が主ですが、女性の場合「これおいしいね」のような使い方もされます。しかし、男性がむやみにハートマークを使うと気持ち悪がられることが多いです。
余談ですが、2006年に、徳島大学の男性教授が女性職員へ送ったメールの文面の末尾にハートマークを付けていた、という理由でセクハラで懲戒戒告されたということがありました。とても痛ましい事件でした。
そんなポケベルの絵文字、ハートマークですが、あまりに絶大に若者に使われていたため、「ハートマーク事件」というものがおこりました。どのような事件かというと、docomoのポケベルがインフォネクストという端末になったときに、漢字などは使えるがハートマークが廃止されたことをきっかけに、高校生の間では「docomoはハートマーク使えない!」と広まり、ハートマークが使える東京テレメッセージ社のポケベルへ、顧客が移動したのです。私も当時は高校生でありポケベルを持っていましたが一瞬にして「docomoはダメ」という風潮が急激に広まったことを記憶しています。
絵文字たった一つで、顧客が大量に移動するほどの力を持っていた、ということを象徴する出来事でした。そして、これがdocomoのiモードで絵文字が生まれるきっかけとなったともいえます。以下は、docomoの絵文字の生みの親と呼ばれる栗田穣崇氏の発言です。
ドコモのポケベルがインフォネクストになってハートマークが送れなくなった途端、女子高生が大量にドコモからテレメッセージに乗り換えたのを目の当たりにしたのがiモードで絵文字を開発した最大の動機なので、ハートマークには足を向けて眠れない。
― 栗田穣崇Shigetaka Kurita (@sigekun) 2015年11月4日
iモードで、176種類の絵文字の中で、ハートの絵文字が4種類も用意されてたのはハートマーク事件があったからです。今の絵文字でも、ハートマークが多いのはこの名残ですね。
そんなハートマークといったような、語尾につけて、簡単に感情を示す、という原始的な絵文字の使い方から始まった絵文字ですが、iモード時代に入ると、絵文字の種類がドッと増えます。176種類になりました。前述の、栗田氏による開発ストーリーはすでに伝説になっているほどです。
絵文字が増えると、様々な表現が可能になります。たとえば、「今日、持っていっていないよね?で迎えにいこうか?」みたいな使われ方が可能になります。つまり「傘」を「」と表現できるということですね。
この時から、絵が文字になる、という、文字としての絵文字が本格的にスタートしたといってよいでしょう。もちろん、「今日楽しかったね」のように、感情表現として使われることも引き続き使われていきます。
ここまでをまとめると
・ポケベルでハートマークなどが使えるようになり、感情表現として若者が使い始める
・iモード時代には感情表現だけではなく、意味のある文字としても使われるようになる
・現在の絵文字は、感情表現と意味のある文字としての2つの側面がある
ということになります。(※2)
世界への普及、そしてemojiへ
そんな絵文字が世界へ普及したのは以下の2点が大きくありました。
一つはGoogleによるUnicode化、です。
Googleの開発者が、日本の携帯電話から始まった絵文字に感銘を受け、2007年から開発を始めて、絵文字をUnicodeへ採用したのです。
Unicodeとは、「符号化文字集合や文字符号化方式などを定めた、文字コードの業界規格である。(Wikipedia)」のことです。2010年には、Unicode 6.0として採用されました。なぜUnicodeが重要かというと、業界規格に入ることで、世界的に「文字として利用できるようになった」ということなのです。日本人からしてみると、絵文字はずいぶん前からある気がしますが、世界的に見ると、割と最近ということですね。
そして、iOSでは、2011年5月に標準キーボードに絵文字が搭載されました。それにより、世界中のiPhoneユーザーが絵文字に出会うことになるのです。
日本のガラパゴス文化だった「絵文字」は、ITにおけるGoogleとAppleという超巨大グローバル企業によって、世界で使われる「emoji」になったといえるでしょう。日本のdocomoで絵文字が作られた時は、日本内にある共通のコンテキストを利用していたため、Unicodeへの採用に関しては、いろいろな議論もあったのですが、複数の日本人による尽力によって、日本の絵文字の雰囲気を損なわないまま、国際基準になったという背景もあります。
「emoji」は日本語の絵文字をそのまま呼んだのですが、おそらく、Emotionalという意味に見える「Emo」が入っており、また「e-mail」などの「e」から始まることからも、外国人にも理解しやすかったからなのでは・・・と思っています。(実際に、emojiを「イーモジ」と発音する人も多いそうです)。
そんなこんなで、「emoji」は世界中に爆発的に広がりました。2015年では英オックスフォード辞書の今年の言葉に「うれし泣き」が選ばれるほどです(※3)。イギリスの言語学者によると、文字の広がり方としては、歴史上最速といわれています(※4)。
政治レベルでもemojiは活用されています。オバマ大統領が日本文化の例として「カラテ、カラオケ、マンガ、アニメ、そして絵文字」とあげたりなど、絵文字は世界的に有名な日本文化となりました。オバマ大統領はアメリカの現状を絵文字で演説する「State of the Union in emoji」というコンテンツを作っています。これはミレニアル世代と呼ばれる若者に興味を持ってもらうための施策と思われます。
State of the Union in emoji | US news | The Guardian
アメリカ以外でもよく使われています。ちなみにQuartzの記事によると、Instagram上で絵文字をもっとも使っている国はFinlandらしく、日本は8位でした。意外ですね。
The most emoji-crazed countries
そのフィンランドは、自国ではじめてマーケティングのために、政府が絵文字を作って公表していたりして、なかなかにおもしろいことをしています。
Finland Emojis - thisisFINLAND
そんな感じで、世界中のあらゆるところでemojiが使われているわけです。Twitterの調査によると、2015年の1年間で60億回使われたというデータもあります。
日本人からしてみたら、絵文字のブームはもうはるか昔に終わり、あまり多用するものではなくなって来ているという感覚ではないでしょうか。「明日はだからでデートしよ」とか来たら、正直、ちょっとやりすぎて気持ち悪いくらいの感覚です。しかし、世界で見ると、まだまだ新鮮な文化であり、ブームの最中という感じなのかもしれません。
さて、なぜ日本からこのように、世界最速で普及する文字である「emoji」が生まれたのしょうか。ここから、仮説を考えていきたいと思います。
仮説1:異物を取り込める日本語のデザイン
仮説の1つ目は、「日本語の性質上、異物を入れても文章が読みやすい」というものです。
もともと、日本には文字というものがありませんでした。音声のよる日本語があり、一方で海外(中国)からは漢語が入ってきていたわけです。
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古川健介『TOKYO INTERNET』第4回 なぜTwitterは日本における最強の投稿サービスなのかを考察してみる【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.753 ☆
2016-12-14 07:00
古川健介『TOKYO INTERNET』第4回なぜTwitterは日本における最強の投稿サービスなのかを考察してみる【毎月第2水曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.12.14 vol.753
http://wakusei2nd.com
今朝のメルマガは古川健介さんの連載『TOKYO INTERNET』の第4回をお届けします。
今やTwitterは日本でのみユーザー数が伸びているSNSとなっていますが、その理由を「日本における投稿サービスのアーキテクチャの変遷」から考えます。
▼プロフィール
古川健介(ふるかわ・けんすけ)
1981年6月2日生まれ。2000年に学生コミュニティであるミルクカフェを立ち上げ、月間1000万pvの大手サイトに成長させる。2004年、レンタル掲示板を運営する株式会社メディアクリップの代表取締役社長に就任。翌年、株式会社ライブドアにしたらばJBBSを事業譲渡後、同社にてCGM事業の立ち上げを担当。2006年、株式会社リクルートに入社、事業開発室にて新規事業立ち上げを担当。2009年6月リクルートを退職し、Howtoサイト「nanapi」を運営する株式会社nanapi代表取締役に就任。
『TOKYO INTERNET』これまでの連載はこちらのリンクから。
前回:古川健介『TOKYO INTERNET』/第3回 テキストサイト文化が生み出した「真面目にふざける」ビジネスモデル
(イラスト:たかくらかずき)
今日のTOKYO INTERNETでは、日本における投稿サービスのアーキテクチャの変遷について話したいと思います。
2ちゃんねるのような匿名掲示板からmixiのようなSNS、そしてTwitterにいたるまでの歴史と、その背景にはユーザーが何を求めていたのか、また運営者は何をさせようとアーキテクチャを設計したのか、という点を整理していきます。
結論としては「Twitterは日本における最強の投稿サービスとなった」ということです。
■なぜ人はインターネットに投稿するのか
まず、インターネットに投稿をする、ということの意味を考えてみたいと思います。インターネットに投稿する、というのは変な言い方ですが、ここでは「ネットサービスなどを使ってネット上に自分の書いたものをおいておく」という意味です。
なぜ人はネットに投稿するのか、というのは極端にいえば誰かにコミュニケーションをするためです。一切の反応もなくていいから文章をおいておく、というのもゼロではないのでしょうが、大なり小なり誰かとのコミュニケーションを求めているといってよいでしょう。
そして、そのコミュニケーションの目的も2つあります。僕の整理ではそれぞれの目的のコミュニケーションについて、「情報共有型」と「感情共感型」と呼んでいたりいます。
情報共有型コミュニケーションとは、「コミュニケーションの目的が情報である」ことであり、感情共感型コミュニケーションとは、猿が毛づくろいをするように「コミュニケーションの目的が、お互いに敵意がないことを確認するための馴れ合い」です。
簡単にいうと、コミュニケーションの目的は、仕事でのやり取りのような、情報の交換が目的のものか、ただコミュニケーションして楽しむおしゃべりのようなものか、という区分けです。
■インターネットへの投稿の歴史
そんな前提を踏まえて、まず、日本のインターネットにおける投稿への歴史を遡ってみたいと思います。と言っても、詳しく書くと本一冊くらいになってしまうので、簡単に……。
※ちなみに「インターネットにおける」と大きく括っていますが、これは「世界における」といっているような世界の大きさのことを一般化して書いているので、あくまで僕が見てきて僕が感じたインターネットの歴史だということをご了承ください。
まず、日本のインターネット投稿の歴史は、パソコン通信でのコミュニケーションがスタートにあります。ここでは言葉遣いなどが荒かったとしても、ある程度の知識層による投稿が多くありました。ここでやり取りされていたのは、どちらかというと情報共有型、つまり情報のやり取りがメインでした。そして、そこからNiftyフォーラムにたどり着きます。
ここまでは、ハンドルネーム性、つまりインターネット上のためのニックネームを名乗り、それで発言するのが普通でした。現実の自分と結びつくことはそんなになく、だからといってアイデンティティがないわけではない、という状態です。
しかし、日本のインターネットが特異だったのは、その先、1996年ごろに、「あやしいわーるど」といったような、アングラサイトと呼ばれる匿名の掲示板が流行したことです。あやしいワールドは、最新のものが一番上に来る単独の掲示板ですが、参加者が多いため、すぐに過去の投稿が流れていってしまいます。そのことから、名前がほとんど重視されません。
今にたとえると、タイムラインが一つの、名前もアカウント名もいらないTwitterのようなものです。
ここでの投稿は、情報共有型も感情共感型も存在していましたが、パソコンなどに詳しい人が多かったためか、どちらかというと社会派なネタや、アニメ、漫画などのエンタメネタが多くありました。そして投稿者は「あやしいわーるど」的なキャラクターや投稿雰囲気を常にまとっているのが普通でした。
あやしいわーるど@暫定(暫定退避)
たとえば、顔文字でいうと「(;´Д`)」や「ヽ(´ー`)ノ」を使ったりします。逆にいうと、許される顔文字はこれらを中心とした数種類くらいしかありません。
余談ですが、未だにあやしいわーるどを引き継ぐ掲示板はいくつかありますが、2ちゃんねるなどから発生した顔文字を使うと「壺くせえ(壺=2ちゃんねるの蔑称)」と叩かれたりすることがあるくらいです。ヽ(´ー`)ノはよくて、( ´∀`)が駄目っていう感じです。
しかし、あやしいわーるどでは、議論がしづらいというのがあります。すぐに流れていってしまうからです。それを解決するために、スレッドフロート型掲示板を発明した「あめぞう」という掲示板が出現しました。
あめぞうは、いってしまえば、2ちゃんねるの前身のようなものです。このスレッドフロート式掲示板は、あやしいわーるどにはないアーキテクチャ上のメリットがありました。
それは、スレッドごとに議題が決まっており投稿ができることです。さらに投稿があったスレッドは一番上に移動する、という形態だったため、これであれば「議論を複数、平行に行う」「人気のあるスレッドにすぐにたどりつく」ことができました。
これにより、98年〜99年はあめぞうの時代となります。
そして、このあとに、「あめぞうウイルス」によって荒れてしまったあめぞうの避難先として出現した「2ちゃんねる」が99年にでき、今にいたるまで匿名掲示板の中心にいるようになりました。
このように、黎明期の日本のインターネット投稿は、少しアンダーグラウンドな香りのする匿名掲示板が中心にあったといってよいでしょう。(※1)
■匿名掲示板の中心はあくまで情報
さて、ここまであやしいわーるどから2ちゃんねるまで、匿名掲示板が日本のユーザー投稿の中心だという話をしました。
これらのコミュニティサービスの特徴としては、あくまで情報共有型、つまり情報のやり取りを目的としたコミュニケーションが主にあったということです。
あやしいわーるどから2ちゃんねるまで、基本的にこの時代のコミュニティは、情報の交換や議論をより効率的にするための進化をしていったといっていいでしょう。匿名性などについても創設者のひろゆき氏は以下のように発言しています。
ひろゆき氏: 人間に興味があるんじゃなくて,どちらかというと知識に興味があるんですよね。「この話をしたい」とか「こういう情報を知りたい」とか,目的は人間じゃなくてあくまで情報なんです。情報のやりとりをする場として「2ちゃんねる」を作っているので。「いま発言しているこの人が,本業としては何をしているか」なんていう,「この人に関する情報」には興味がない。だから,それを削ぎ落とした形になってるんですよ。
4Gamer: そういった意味で,「2ちゃんねる」は,純粋な情報交換ができる場として価値があると。
ひろゆき氏: そしてその場合,肩書きは邪魔になります,例えば僕が言っちゃうと,もう正しいんだと思い込んじゃう人って,やっぱりいるんですよね。「私は大学教授です」って書いちゃえば,「大学教授が書いているんだから正しいだろ」って信じてしまう人がいるけれども,それと情報の信頼性は本来違うはずです。
匿名でいながら説得力のある人って,結局情報ソースを持っていたりとか,合理的に結論を導いていたりとか,誰が見ても納得できる理由を持っているわけです。情報としてはそっちのほうが信頼性が高くなるんじゃないのかなと思っているんですけど。
(4Gamer.net ― 「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」のひろゆき氏が語る,ゲーム・コミュニティ・文化より)
あくまで、匿名性は、情報の交換をより効率的にするためのものだという考えのことがわかります。
ひろゆき氏:ええ。僕は赤の他人とチャットしても,面白いとは思わないですからね。
ともいっており、感情共感型のコミュニケーションはサービスポリシーとしては、あまり興味がないといっていいでしょう。
■SNSの出現
そんな感じで、99年からの投稿サイトの中心は2ちゃんねるでした。しかし、2004年にソーシャル・ネットワーキング・サービス、通称SNSが出現します。
まず、日本におけるSNSの歴史を簡単に振り返ってみたいと思います。
日本でSNSというものが本格的に普及しはじめたのは、mixiとGREEという2つの国産SNSがスタートしたことがきっかけです。双方とも、2004年の2月にリリースされました。同じ時期にリリースされたのは、アメリカで急速に話題になっていた、Friendsterの存在があります。「海外でソーシャル・ネットワーキングというものが流行っている」というところから作られました。
mixiとGREEの違いは、ざっくりいうと「友だちと交流することに重きをおいたmixi」と「実世界の人間関係を重視したGREE」という感じです。
mixiは、日記を書いたり、知らない人ともやりとりできるコミュニティ機能だったり、コミュニケーションをすることに重きが置かれたサービスでした。一方でGREEは、今でいうFacebookに近いイメージでリアルでの人間関係を可視化することが重視されていました。ビジネス寄りの雰囲気が漂っていたといってもよいでしょう。
そんな2つのサービスでしたが、SNSとしてはmixiに軍配が上がります。SNSとしての知名度が上がり、ユーザー数も一気に数百万人、数千万人を増えていきました。一方で、ユーザー数に差をつけられたGREEはKDDIと資本提携をし、EZ GREEをスタートするなどモバイルに舵を切っていきます。さらにその後、DeNA社のモバゲーに近いモバイルゲームに注力することで、爆発的に伸びました。モバイルゲーム化あたりから、いわゆるSNSとしての役割は小さくなっていきます。
話は脱線しますが、mixiもGREEも東京から生まれたサービスであり、企業ですが、それぞれ独自の文化を築いたり、海外よりも先んじた事業を展開したりなど、ゼロ年代〜10年代を代表するネット企業の一つとなっています。どちらも、Yahoo!JAPANや楽天のようなビジネス中心でコングロマリット化していきがちな会社とは違い、独自のプロダクトを作り、それによって規模を拡大していった数少ない会社のうちの一つといえます。
■mixiの勝因である日記機能
さて、そんな感じで国産SNS戦争に勝ったmixiですが、その理由の一つとして、日記機能があります。
日記機能はその名の通り、友達に向けて日記を書く機能です。
2004年リリース当時のmixi(出典:ソーシャルネット「mixi」、儲からなくても続ける理由 より)
これがGREEとの勝敗を分けました。
他の国の当時のSNS、たとえばFacebookやMySpaceではなかった、「日記を書いて発表する」ことを中心にしたことで、今までインターネットで投稿などしたことがなさそうな層まで、使い始めたのです。
そんなmixi日記は、今までインターネットで文章を書いたことがないような層が、友達しか見ていないという安心感のもと、文章を発表するような場になったという点で、非常に画期的でした。今では想像できないですが、mixi以前のインターネットでは、友達とだけやり取りをする場というのは、かなり限定的だったのです。それこそメールやICQ、MSN メッセンジャーなどのメッセンジャーなどでしたが、そもそもインターネットをフル活用している人が少なかったので、一般的ではありませんでした。あえていうなら、i-modeを中心としたモバイルのメールでしょう。
こういった性質は、2ちゃんねるなどの匿名掲示板とは真逆で、親しい友だちとやり取りをするためだけの日記により、まさに感情共感型のコミュニケーションを行う場ができたということです。これはSNSの出現とインターネットの普及のタイミングがうまく一致したことで、多くの人がインターネットを使いこなすようになったからといえるでしょう。mixiは数千万を超えるユーザーがいる一大サービスになりました。
これは、情報の交換をしたいような層(言い換えると、インターネットを初期から使いこなす知識層)よりも、大多数が、友達との感情共感型コミュニケーション、つまり雑談やどうでもいいことの話をしたかったということの表れではないかと思います。
あえて断言すると、日本のインターネットユーザーは「感情共感型コミュニケーションを求めている人が大半」といっていいと思います。
ちなみに当時、大学4年生だった筆者は、バリバリのインターネットユーザーでして、「匿名でないところで日本人が投稿なんてするはずない」「アメリカみたいな個人がフィーチャーされる国であれば書くかもしれないが、名前を出して自分の意見を書く人なんているはずがない」と思い込んでいました。あくまで、全体の中の1%程度がインターネットに投稿し、99%は閲覧だけであるのが平均的なサービスだろうと思っていたのです。
それが、mixiユーザーの大多数が日記を投稿するようになり、文章を発表するようになりました。インターネットに何かを投稿するのは一部のマニアのためのもの、というところから、誰でも投稿するツールになったのは、このあたりからだと記憶しています。今までももちろん、Yahoo!ニュースを見たり、Amazonや楽天で買い物をしたりすることは普通の人でも行っていましたが、投稿するというところに対してはハードルが高かったのです。それがmixi日記(と当時のブログブーム)が壊したといっても過言ではないでしょう。
■日記がポエム化していく
そんな感じで、mixiを通じて、多くの人が日記を投稿するようになりましたが、そこでおもしろい現象が出現してきます。
それは、mixi日記がポエム化していったということです。
ポエムとは何でしょうか。元々の英語の意味では、Poemは詩の単数形ですが、日本だと詩とポエムは若干区別されており、
詩・・・文学的でありリズムがあるもの
ポエム・・・感傷的な文をただ書いただけのもの
というイメージの違いがあります。
mixi日記には(詩が投稿されたわけではなく)ポエムが投稿されていくようになりました。もしかしたら読者の方の中にmixi日記を書いていた方がいたら「あぁ〜」と思うかもしれません。
(出典)
mixi側もそれを理解しており、「mixi日記を「リライト」しよう!」というキャンペーンを2016年12月に行ったりしています。
ASIAN KUNG-FU GENERATION × mixi
このキャンペーンは「mixi日記って黒歴史だよね」という前提の元に作られています。これがTwitterの昔の投稿だったらここまでの話題にはならなかったのではないでしょうか。
では、mixi日記がポエム化した、その理由は何でしょうか? 僕は、mixi日記でポエムが投稿されるようになった理由としては、友達全員に公開されるアーキテクチャにより、「出来事をぼかす」必要があったせいだと思っています。
どういうことでしょうか。たとえば「今日、大学で嫌なことがあった。友達のAに傷つく言葉を言われた。なんとかこの気持ちを慰めたいが、日記に直接書くと角が立つ。だからぼかして書こう……」という内容の日記を書こうと思います。しかし、友だちの中には、A本人がいたり、共通の知人がいるかもしれなく、そのまま事実を書いては角が立ってしまします。
しかし書きたい気持ちは止まらない。そんな時に書く日記は以下のようになります。
自分が気にしているか気にしていないかに関わらず、人から自分の何かを指摘されるのはとても嫌な気持ちになる。たとえそれが仲のいい友達からだったとしてもだ。しかも、タチが悪いのが、その指摘が正しいことである。正しいと、より傷ついてしまう。
自分は自分であり、他の誰でもないのだから、ありのままの自分を受け入れるしかないけど、今日だけはこのまま落ち込みたい。
今、僕がノリで適当に書いた日記ですが、こういう形で、形や表現をぼかして愚痴を書こうとすると、ポエムぽくなるんですよね。
たとえば、エッセイストの小田嶋隆氏は『ポエムに万歳!』という著書の中で、
「書き手がなにかをごまかそうとするとき、文体はポエムに近似する」
と述べています。
特定せずにごまかしつつ書きたい、という気持ちと、日本における「察し」の文化の強さが混じり合い、ポエム化していったのではないか、と考えています。
結論としては、最初は感情共感的に友達と雑談や他愛のない話をして、コミュニケーションそのものを楽しんでいたけれども、多くの人が参入することで、人間関係的にも複雑な形になっていったため、ごまかす必要が出てきてポエム化していったのではないか……と考えています。
そもそも日本人は詩や歌が好きという説もあります。高階秀爾の『日本人にとって美しさとは何か』という本の中に「日本人は誰でも歌を詠む、というのが海外の人にとっては珍しい」といった趣旨のことが書いてあります。
この本によると、古今和歌集の最初のところに
「花になくうぐひす、水にすむかはづのこゑをきけば、いきとしいけるもの、いづれかうたをよまざりける」
現代語に訳すと、「花に鳴くうぐいすとか、水に住んでいるカエルとかの声を聞くと、日本人なら誰でもつい歌を詠んじゃいますよねぇ……」ということをいっています(※2)。
今でも日本の新聞には、詩の投稿欄があったり、サラリーマン川柳があったりするのは特徴的です。だからというわけではないのですが、日本におけるインターネット投稿において、感情を表現するときには、詩やポエムがやりやすいのかもしれません。
■そして今はTwitter
ここで整理しておきます。日本のインターネット投稿は、
匿名掲示板による情報共有型
↓
SNSの出現により感情共感型に移行
という流れで来たのではないかという仮説です。
そして、今はどのような状況なのでしょうか?まず、ネットの中心はどこかというと、mixiからTwitterにうつりかわっていきました。2004年からしばらくはmixiの天下が続き、2009年くらいからTwtiterが台頭してきます。そして、ニールセンの調査では2010年の時点でmixiのユーザー数を抜いています。
(参考:mixi, Twitter, Facebook 2010年12月最新ニールセン調査 〜 Facebook堅調に300万人超、ページビューも大幅増)
その後、Facebookなども急激にユーザー数を伸ばしますが、2016年現在、日本における中心はどこかというと、Twitterといってよいと思っています。
そんなTwitterですが、世界ではMAU(月間アクティブユーザー数)が横ばいで、買収のオファーやCOOの退職、買収の噂など、とにかく苦戦が報じられています。完全に落ち目のサービスとして取り上げられることが増えてしまっています。しかし日本に関してのみいえば、かなり好調といえる状態なのです。
Twitter Japanは11月2日、日本の月間アクティブユーザー数(MAU)が9月に4000万人を超えたと発表した。昨年12月時点から500万人増えた。
日本のユーザーは9カ月で約13%増と堅調に伸びているが、米Twitterが10月27日に発表した全世界のMAUは前期比ほぼ横ばいと伸び悩んでおり、経営面でも赤字が続いている。
(Twitter、日本の月間利用者が4000万人超え 9カ月で500万人増 - ITmedia ニュース より)
なぜTwitterがここまで日本で好調なのでしょうか。
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古川健介『TOKYO INTERNET』/第3回 テキストサイト文化が生み出した「真面目にふざける」ビジネスモデル【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.729 ☆
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古川健介『TOKYO INTERNET』第3回 テキストサイト文化が生み出した「真面目にふざける」ビジネスモデル【毎月第2水曜配信】
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テキストサイトの時代から連綿と続く、「真面目にふざける」という伝統が、ブログ、ソーシャルメディアの時代を経て、いかに現代のウェブコンテンツに継承されているか。日本のインターネットの文化的本質について論じます。
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古川健介(ふるかわ・けんすけ)
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前回:第2回 シリコンバレーのハッカー文化と東京オタク文化の大きな違い
テキストサイト文化が生み出した「真面目にふざける」ビジネスモデル
(イラスト:たかくらかずき)
東京中目黒にある「株式会社バーグハンバーグバーグ(BHB)」という会社をご存知でしょうか。
企業理念は「がんばるぞ」であり、事業内容は会社ホームページによると「メディア運営(ふざけてるやつ)・プロモーションサイト制作(ふざけてるやつ)・記事広告制作(ふざけてるやつ)・映像制作(ふざけてるやつ)・執筆業務(ふざけてるやつ)」となっています。
株式会社バーグハンバーグバーグ
もう少し何をやっている会社かをわかりやすく説明すると、ユーザーが笑ってくれるようなネタのページを作ることで企業の宣伝をすることをメインとしている会社です。お笑い系の仕事がほとんどであり、「日本一ふざけた会社」と呼ばれることもあります。
大きく分類するのであれば「企業の広告ページの制作をメインとしたウェブ制作会社」に属します。ウェブ制作以外にも、オモコロというお笑い系の自社メディアを運営していたりします。
では、「ふざけたこと」をして企業や商品を宣伝するというのはどういうことでしょうか?
例を挙げると、たとえばネット銀行の宣伝を行う際に、普通の銀行との比較をしたいとします。ここで単にそれぞれの比較をしてもおもしろくありません。一方で、おもしろさだけを追求したら宣伝になりません。
そこで、バーグハンバーグバーグでは「公平に比較しています」と言いつつ、銀行側で説明する人がひどい風邪をひいている、という設定でおもしろさと魅力の宣伝を両立しています。
【不正一切無し】日本一公平な銀行比較サイト
公平に比較をしているんだけど、風邪をひいててうまくしゃべれないからしょうがないよね、という言い訳です。
また、インド人のアドバイスを完全に無視したカレーを作り、実際に販売するなどをしており、実際にその商品を完売させたりしています。これは、カレー屋が通販をはじめる際に、商品企画から関わっているケースです。
インド人完全無視カレー
これが、たとえばちょっとだけネット銀行のよさを強調し、他の銀行をちょっとだけ不利に表現したら、ネット上で炎上間違いなしですし、インド人のアドバイスをそれなりに尊重しているのに、大事なところでアドバイスから逸れたことをやっては、怒る人もでてくるでしょう。
銀行の比較を公平といいつつ、極端に不公平なのがよくて、インド人のアドバイスを完全に無視するからこそいいわけです。つまり、笑いの部分を過剰にやることで、「あ、笑っていいんだ」となり、ソーシャルサイト上で話題になり、評価されるわけです。
ビジネス化出来ているバーグハンバーグバーグ
このバーグハンバーグバーグのポイントなのが、きちんとしたビジネスで成り立っているところです。通常のウェブ制作をしている傍らでやっているわけではなく、ふざけたことばかりやっているのに、仕事として成り立っているのです。
むしろ、通常のウェブ制作会社では、1枚のランディングページを作るだけでは、安い場合、数万円〜十数万円の受注であることも珍しくありません。実際にクラウドソーシングサイトなどを見ると、1枚15000円の案件に、5人ほどが手を挙げているケースもあります。発注者と受注者のマッチングが、クラウドソーシングなどによりしやすくなった今、付加価値の出せていないウェブ制作会社は、価格競争に巻き込まれてしまっているといってもよいでしょう。
そういった状況にもかかわらず、バーグハンバーグバーグは、自分たちがよいと思うやり方と内容で受注できており、HondaやYahoo!JAPAN、ケンタッキーフライドチキンなどの名だたる企業からの依頼を受けているわけです。他の制作会社には出来ないやり方なので、名指しで案件を取ることも増えてきているそうです。
そんなバーグハンバーグバーグのビジネスモデルは世界的に見ても類を見ない形です。マーケティングを工夫することでネット上で話題を集めたりするという手法はあっても、「お笑い的なコンテンツを作ることで注目を浴び続ける」という一点突破のみでビジネスとして成り立っている会社は、筆者の知る限りでは存在しません。
(注) ただし、シモダ社長は「北極にルーツ有り」と意味不明のことを言っており、真相は不明です。
そこで、今回の記事では、バーグハンバーグバーグが生まれた背景から、なぜビジネスとして成り立っているのか、というのを探っていきたいと思います。
テキストサイトの流れから出来たBHB社
まず、このバーグハンバーグバーグ社による独特のコンテンツの雰囲気はどこから来ているか、というところです。
結論からいうと、バーグハンバーグバーグ社が作るような、ネットらしいお笑いコンテンツというのは、古い時代のテキストサイトの文化の流れを汲んでいます。
「テキストサイト」とは、文字が主流だったインターネット黎明期に流行した個人ページの総称であり、お笑いコンテンツから、サブカル批評、日記形式のものまで様々なサイトがありました。
90年代後半から00年代のテキストサイトで最も有名なものの一つとしては「侍魂」が挙げられます。侍魂は、「先行者」という中国のロボットをおもしろおかしく取り上げた記事で大ヒットを記録しました。中国で最先端のロボットだと紹介されていた先行者の見た目があまりにチープであり、それをいじり倒すというコンテンツです。
侍魂
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古川健介『TOKYO INTERNET』/第2回 シリコンバレーのハッカー文化と東京オタク文化の大きな違い【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.709 ☆
2016-10-12 07:00チャンネル会員の皆様へお知らせ
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古川健介『TOKYO INTERNET』第2回 シリコンバレーのハッカー文化と東京オタク文化の大きな違い【毎月第2水曜配信】
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2016.10.12 vol.709
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前回:第1回 東京っぽいインターネットサービスは「遊び半分」がキーワード
イラスト:たかくらかずき
インターネットの聖地は? といわれると、当然ながらシリコンバレーが思い浮かびます。前回の記事「東京っぽいインターネットサービスは「遊び半分」がキーワード」でも書いたように、シリコンバレーには「世界を変えろ」という空気があり、それを成し遂げる都市の文化があるのではないかと思っています。
じゃあ、そのシリコンバレーの文化の源泉は何なのか? というと、60年代にピークを迎えていた、ヒッピーカルチャーなのではないかと思っています。
ヒッピー文化は、ベトナム反戦運動からの影響を強く受けているといわれています。戦争のような、残酷な現実に正面から反対する姿勢がベースにあり、そこから国や大企業に反発する精神に広がっていきました。大きな存在に対して、正面から理想を掲げていくイメージです。
そして、ヒッピー文化自体は、ライトな層にも広がっていき、国や大企業になんとなく反発する気持ちから、親世代が作ったアメリカの中流文化に対しての反抗心レベルまで存在するようになりました。どのみち、アメリカの中流文化に流れていた、規律や道徳心への反抗心があり、そこから限りない自由を求めたり、異国感を求めたり、薬物で精神を解放する、という行為が文化として根付いていったのです。
Apple創業者のスティーブ・ジョブズも、このヒッピー文化から大きな影響を受けており、LSDを使ってアレしてたことでも有名です。
このヒッピー文化は、それ自体、ムーヴメントや文化の一端に過ぎなかったのですが、テクノロジーというパワーを手にした瞬間、理想を現実化することが可能になりました。それがシリコンバレーの「世界を変えろ」というメッセージの元になっているのではないかと思っています。
たとえば、ヒッピー文化における「Power to the people」の精神があります。これは個人の手に力を取り戻そう、という意味ですが、シリコンバレーの起業家たちより、テクノロジーの力で、本当に力を取り戻してしまっています。iPhoneで撮った動画をYouTubeにアップし、FacebookやTwitterにあげることで、個人でも大きな影響力を行使することが可能になりました。
ヒッピーがテクノロジーという武器を手に入れることで、世界を本当に変えることができるようになったのが今のシリコンバレーのグローバル企業たちであるという仮説です。
もちろん、シリコンバレーがインターネットの聖地になった所以としては、スタンフォード大学などがあることや、ヒューレット・パッカードなどの第一次世代の企業があることで、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が多く出たことによるエコシステムが回り始めたことなどは、大きな理由です。しかし、文化的背景でいうと、ヒッピー文化が根付いてたことが大きいのではないかと個人的に考えています。
参考:シリコンバレーが世界最高のIT産業の集積地となるまでの知られざる歴史 - GIGAZINE
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