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  • 根津孝太 × 宇野常寛 プロダクトデザインはいかに更新されるべきか(HANGOUT PLUS 10月24日放送分書き起こし)【毎週月曜日配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.722 ☆

    2016-10-31 07:00  
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    根津孝太 × 宇野常寛  プロダクトデザインはいかに更新されるべきか(HANGOUT PLUS 10月24日放送分書き起こし)【毎週月曜日配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.31 vol.722
    http://wakusei2nd.com



    毎週月曜日22時よりニコ生で放送中の宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。今回は2016年10月24日に放送された、プロダクトデザイナーの根津孝太さんをゲストに迎えた回の書き起こしをお届けします。日本を代表するカーデザイナーとして、既存の枠組みにとらわれないユニークなプロダクトを次々と生み出し続ける根津さんの、発想の源泉はどこにあるのか、その秘密を語ります。

    ▲先週の放送はこちらからご覧いただけます
    PLANETSチャンネルで、J-WAVE 「THE HANGOUT」月曜日の後継となる宇野常寛のニコ生番組を放送中!
    〈HANGOUT PLUS〉番組に関する情報はこちら
     
    ▼プロフィール

    根津 孝太(ねず・こうた)
    1969年東京生まれ。トヨタ自動車を経てznug design設立。多くの工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけ、代表作は、「町工場から世界へ」を掲げた電動バイク『zecOO』、やわらかい布製超小型モビリティ『rimOnO』、トヨタ自動車コンセプトカー『Camatte』、タミヤミニ四駆『Astralster』『RAIKIRI』など。2014年よりグッドデザイン賞審査委員。

    「HANGOUT PLUS書き起こし」これまでの記事はこちらのリンクから。
    前回:柿沢未途×宇野常寛  民進党は(マジで)これからどうするのか(HANGOUT PLUS 10月10日放送分書き起こし)
    ※このテキストは2016年10月24日放送の「HANGOUT PLUS」の内容の一部を書き起こしたものです。
    ■ クリエイティビティの源泉は「言葉」にあり
    宇野 それではメールを読んでいきましょう。

    宇野さん、根津さん、こんばんは。クリエイティブな部分に興味があります。以前に私はミュージシャン(カッコつけでなく作曲をする方)に話を聞いたとき、「曲を作る時に立体物を想像して、そこから音にしていく」というのを聞いたことがあります。根津さんはプロダクトを作る際に別のものを想像してから変えていくようなことはありますか? もしくは創作の起点は何から始まりますか。(塩分控えめ 東京都 33歳)

    根津 面白い質問ですね、僕は言葉の力が大きいです。立体を作っていく作業をするときに、ほかの立体を見てダイレクトに影響を受けるというのは……まあ、確かにそれもあるんですよ。たとえばzecOOは『AKIRA』や『トロン』に影響を受けているんですが、最近では、宇野さんとお話しするとか、そういうことが次の作品に繋がっていくんですよね。言葉には解釈の余地があって、そこからクリエイティビティを引き出されることがよくあります。楽しい話をした後に、そこから形を考える、モノを考えるということがすごく多くなりましたね。
    ▲zecOO
    宇野 それを言われると評論家としてはプレッシャーが(笑)。僕としても作家の作ったものには、全力で打ち返さないといけないと思っていて。自分の評論に影響を受けて、それを上回る形で打ち返してきてくれたときが、評論家としては一番嬉しいですね。斜め上から「まさかこうくるか!」みたいなね。
    根津 「批評性」という言葉を宇野さんが使われていて、僕はすごく感動したんです。自分の作り出したものについて、自分では見えていないことっていっぱいあるんですよね。それを言ってもらうことで、「じゃあ次こうしてみよう」みたいな再発見があるんです。今日だってそうですよ。そういうことが今は一番刺激になりますね。
    宇野 もう1枚いきますかね。

    宇野さん根津さんこんばんは。私は趣味と実益を兼ねて、普段の都内の移動を自転車で済ませています。都内ならば下手に電車に乗ったりタクシーに乗るよりも、自転車の方が早いことも多いです。夏場はつらいのであまり使っていませんでしたが、だんだんと涼しくなってきて、ちょうど自転車乗りとって気持ちのいい季節になってきました。根津さんはエンジンを積んだ乗り物のデザインを中心に手がけていると思うのですが、スポーツとモビリティの関係についてはどうお考えでしょうか? 根津さんのデザインした自転車があったら、ぜひ乗ってみたいと思っています。今夜の放送も、楽しみにしています!(よきこと聞く 東京都 30歳)

    根津 ありがとうございます。実は自転車もいろいろやってるんですよ。
    宇野 そうですよね、語ってますもんね。
    根津 エンジンやモーターがついた乗り物をやるときでも、自転車の視点を忘れたくないんですよね。今の質問に関していえば、スポーツというのは幅広い年齢層の人にとって大事で、特に体が動かなくなってきた高齢者の方には、電動という方法もあるんですが、ちょっとアシストしてあげるとまた動けるようになったりするんです。移動とスポーツは本質的に近くて、自転車はそれが一致してる素晴らしいモビリティなんですよね。でも、外で自転車を乗り回すのは自信がないな、という人にはもう少し安定感のある乗り物にするとか。あるいは雨の日だと辛くなっちゃうので、屋根を付けてみるとか。そういう自転車から生まれてくる発想は、すごく大事だと思うんですよ。
    宇野 なるほどね。自転車・電動自転車・三輪・rimOnO・軽自動車というふうにグラデーションになっていて、足りないところを根津さんが埋めていっているわけですね。


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  • 京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第10回 戦後ロボットアニメの「終わり」のはじまり【金曜日配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.721 ☆

    2016-10-28 07:00  
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    京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録第10回 戦後ロボットアニメの「終わり」のはじまり【金曜日配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.28 vol.721
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    今朝のメルマガは「京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録」をお届けします。
    富野由悠季『逆襲のシャア』で明らかにされた、ロボットアニメにおける〈成熟の不可能性〉というテーマは、80年代末の『機動警察パトレイバー』によるポリティカル・フィクション的なアプローチを経た後、1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』によって再浮上します(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年5月13日の講義を再構成したものです)。

    毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第9回 宇宙世紀と大人になれないニュータイプたち

    ■ロボットの意味が脱臭された『機動警察パトレイバー』
     たとえばバブル絶頂期の80年代末に人気となった『機動警察パトレイバー』というマンガ・アニメ作品があります。ブルドーザーやクレーンといった重機の役割を果たすロボット「レイバー」が普及している近未来の東京では、レイバーを悪用した犯罪が多発している。そこで警視庁がレイバーを導入して犯罪を取り締まっていくという物語です。
     この『パトレイバー』のメインは若い警官たちの青春ドラマです。おそらく日本で初めて、警察という官僚組織を細かく描いてコメディドラマにした作品で、要は『踊る大捜査線』の元ネタですね。
     『パトレイバー』においてロボットは「あったほうが絵的にかっこいい」ぐらいの扱いになっています。むしろロボットというSF的なアイテムを導入することによって、戦争もなければ民族対立も少ない現代日本において政治的なフィクションを成立させているところに意義がある作品ですね。たとえば劇場版第2作の『機動警察パトレイバー2 the Movie』はクーデターものです。ロボットアニメという器を使って、東京という大都市と、近未来社会のクーデターシミュレーションを描いているんです。
     少し『パトレイバー2』を観てみましょう。これは敵のクーデター部隊が、主人公たちの所属するパトレイバー中隊を襲撃するシーンですね。戦闘ヘリの攻撃に、パトレイバーたちは起動する間もなく格納庫に置かれたまま一方的に破壊されていきます。
     これとても象徴的なシーンです。レイバーはあくまでも重機の延長線上であって、戦闘ヘリの前では太刀打ちできないということが強調されています。企画段階から関わってアニメ監督を担当したのは『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の押井守です。押井守にとって『パトレイバー』のロボットはあくまで企画を通すための方便でしかなく、実質的には東京の大規模テロのシミュレーションがしたかったんです。だからこそ、ロボットの意味を徹底的に否定しているわけです。近未来の日本に人型の重機が普及したとしても、その軍事的な価値はゼロだと、かなり露悪的にシミュレーションして見せているわけですね。
     こうして、80年代のロボットアニメのノウハウを受け継ぎながらも内側から更新していくようなかたちでロボットアニメは進化していくことになります。
     ただし、ロボットや怪獣などのファンタジー的なアイテムを用いることによって「日本の官僚組織や企業社会がどう動くか?」というシミュレーションをやる『パトレイバー』のメソッドは、むしろ『躍る大捜査線』や『平成ガメラシリーズ』といった実写作品のほうに受け継がれていくことになります。こうした潮流については別の回で詳しく扱おうと思います。

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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第22回「男とペット4」【毎月末配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.720 ☆

    2016-10-27 07:00  
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    脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第22回「男とペット4」【毎月末配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.27 vol.720
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    今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第22回です。今回は前回に引き続きペットのエピソードです。ヘビ、カメ、ザリガニと様々な動物を飼ってきた井上家ですが、ある日、飼い猫が5匹の子猫を出産します。母親に捨ててくるように命じられた敏樹少年が、悩んだ末にとった行動とは……?

    【発売中!】井上敏樹 新作小説『月神』(朝日新聞出版)
    ▼内容紹介(Amazonより)
    「仮面ライダーアギト」「仮面ライダー555」をはじめ、
    平成ライダーシリーズの名作を送り出した脚本家による、
    荒唐無稽な世界を多彩な文体で描き出す、異形のエンターテインメイント! 
    (Amazonでのご購入はこちらから!)
    PLANETSチャンネル会員限定!入会すると視聴できる井上敏樹関連動画一覧です。
    (動画1)井上敏樹先生、そして超光戦士シャンゼリオン/仮面ライダー王蛇こと萩野崇さんが出演!(2014年6月放送)
    【前編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
    【後編】「岸本みゆきのミルキー・ナイトクラブ vol.1」井上敏樹×萩野崇×岸本みゆき
    (動画2)井上敏樹先生を語るニコ生も、かつて行なわれています……!仮面ライダーカイザこと村上幸平さんも出演!(2014年2月放送)
    【前編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
    【後編】「愛と欲望の井上敏樹――絶対的な存在とその美学について」村上幸平×岸本みゆき×宇野常寛
    (動画3)井上敏樹先生脚本の「仮面ライダーキバ」「衝撃ゴウライガン!!」など出演の俳優、山本匠馬さんが登場したニコ生です。(2015年7月放送)
    俳優・山本匠馬さんの素顔に迫る! 「饒舌のキャストオフ・ヒーローズ vol.1」
    (動画4)『月神』発売を記念し行われた、敏樹先生のアトリエでの料理ニコ生です!(2015年11月放送)
    井上敏樹、その魂の料理を生中継!  小説『月神』刊行記念「帝王の食卓――美しき男たちと美食の夕べ」
    ■井上敏樹先生が表紙の題字を手がけた切通理作×宇野常寛『いま昭和仮面ライダーを問い直す』もAmazon Kindle Storeで好評発売中!(Amazonサイトへ飛びます)
    これまでPLANETSチャンネルのメルマガで連載してきた、井上敏樹先生によるエッセイ連載『男と×××』の記事一覧はこちらから。(※メルマガ記事は、配信時点で未入会の方は単品課金でのご購入となります) 
    ▼執筆者プロフィール
    井上敏樹(いのうえ・としき)
    1959年埼玉県生まれ。大学在学中の81年にテレビアニメの脚本家としてのキャリアをスタートさせる。その後、アニメや特撮で数々の作品を執筆。『鳥人戦隊ジェットマン』『超光戦士シャンゼリオン』などのほか、『仮面ライダーアギト』『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー555』『仮面ライダー響鬼』『仮面ライダーキバ』など、平成仮面ライダーシリーズで活躍。2014年には書き下ろし小説『海の底のピアノ』(朝日新聞出版)を発表。

    前回:脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第21回「男とペット3」

    男 と ペ ッ ト  4 井上敏樹
     我が家のペットは大体が不幸な末路を辿った。私が飼育した数々のペットを思い出す度に涙が溢れる。そうして彼らの魂が安らかであるように祈るのだ。ヘビも飼った。十五センチぐらいの子供の蛇だ。名前はニョロと言った。いかにも頭の悪い子供がつけそうな名前だが私がつけたのだ。さすがに母はいい顔をしなかったので、私はニョロを虫籠に入れてこっそり裏庭で飼育した。ヘビの子供に餌をやるにはまず私が生卵を口に含み、それをストローで蛇の口に流し込んでやるのである。ある意味、口移しだ。それがある日、いつものように餌をやっていると、ストローがニョロの喉の奥の奥まで入ってしまい抜けなくなってしまった。引いても押してもびくともしない。そうしてニョロはストローに串刺しになって絶命した。

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  • 【新連載】更科修一郎 90年代サブカルチャー青春記〜子供の国のロビンソン・クルーソー 第1回「湾岸・有明」【毎週第4水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.719 ☆

    2016-10-26 07:00  
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    【新連載】更科修一郎 90年代サブカルチャー青春記〜子供の国のロビンソン・クルーソー第1回「湾岸・有明」【毎週第4水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.26 vol.719
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    今朝のメルマガは〈元〉批評家の更科修一郎さんの新連載『90年代サブカルチャー青春記~子供の国のロビンソン・クルーソー』の第1回をお届けします。90年代――「オタク」文化がまだ、アンダーグラウンドだった頃、出版業界に潜り込んで働き始めた更科さんが見た時代の風景、サブカルチャーの記憶を辿ります。
    ▼プロフィール
    更科修一郎(さらしな・しゅういちろう)
    1975年生。〈元〉批評家。90年代以降、批評家として活動。2009年『批評のジェノサイズ』(宇野常寛との共著/サイゾー)刊行後、病気療養のため、活動停止。2015年、文筆活動に復帰し、雑誌『サイゾー』でコラム『批評なんてやめときな』連載中。
    ■第1回「湾岸・有明」
     九月の終わりに有明の東京ビッグサイトを訪れたのは、病み上がりの暇潰しで、朝の七時に珍しく目が覚めたからだ。
     2009年までの肩書きは批評家だったが、『サイゾー』で連載していた宇野常寛との対談の終盤に体調を崩し、単行本『批評のジェノサイズ』の刊行と同時に倒れた。
     不幸中の幸い、重篤ではなかったが――ようやく快復し、日常的に外出可能になったのは2014年だ。
     しかし、批評家の看板は降ろしているから、やることがない。
     以来、たまに東京を歩いては、暇を潰している。
     新宿で乗り換え、りんかい線の国際展示場駅を降りたのは九時で、駅前広場では『スリランカフェスティバル2016』が行われていた。
     朝食を取っていなかったので、ランプライス(バナナの葉で包んだカレー味のナシチャンプルー/炒飯弁当)でも食べようかと思ったが、飲食ブースは開始前だった。仕方なく、ビッグサイト内のコンビニでおにぎりを買った。
     ビッグサイトと言えば、夏と冬のコミックマーケットだが、もう十年以上、訪れていないので、朝イチの光景に戸惑っていた。
     とはいえ、1996年の開場当時には閑散としていた周辺施設もかなり整備され、隔世の感もある。晴海の東京国際見本市会場と比べれば、設備は最新でトイレ不足に悩むこともなかったが、大型ホテルや国際会議場が併設されていた幕張メッセやパシフィコ横浜と比べると、ビッグサイトはやっぱり「地の果て」という印象があった。

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  • 戦後の日本野球は何を生み出し何を失ったのか――『洲崎球場のポール際』著者・森田創インタビュー(後編) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.718 ☆

    2016-10-25 07:00  
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    戦後の日本野球は何を生み出し何を失ったのか『洲崎球場のポール際』著者・森田創インタビュー(後編)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.25 vol.718
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    今朝のメルマガは、草創期のプロ野球を描いたノンフィクション『洲崎球場のポール際』著者・森田創さんのインタビューの後編をお届けします。
    プロ野球人気の高まりと逆行するように衰退していく六大学野球。その一因となったのは、GHQが推奨したラジオ中継の存在でした。今後の大学野球のあり方や、沢村栄治ら往年の名選手たちの伝説的プレーはどう捉えるべきかなど、草創期の記憶を辿りながら戦後の野球文化について考えます。

    ▼プロフィール
    森田創(もりた・そう)
    1974年5月21日、神奈川県出身。1999年、東京大学教養学部卒業。同年、東急電鉄入社。現在、広報部勤務。2014年10月、初めての著書『洲崎球場のポール際』(講談社)を発刊し、翌年のミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。2016年7月、戦前のテレビ開発を追ったノンフィクション『紀元2600年のテレビドラマ』(講談社)を刊行。

    森田創『洲崎球場のポール際 プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光』講談社、2014年
    ◎聞き手/構成:中野慧
    本記事には、前編と中編があります。
    ■「GHQの意向を汲んだライブコンテンツ」としての戦後プロ野球
    ――戦前は大学野球が非常に人気があって、後発のプロ野球は大学野球に負けていたということですが、その力関係が並列ないしはプロのほうが上になっていったのはいつぐらいなのでしょうか。
    森田 これはいろんな議論があって「長嶋茂雄が昭和33(1958)年に巨人に入るまでは人気も実力もプロ野球より六大学のほうが上だった」という人もいますが、僕は実力自体はプロのほうが上だったと思います。六大学は週末しか試合がなくて年間30試合が最大なんですが、プロは最初の年は別としても昭和12(1937)年から100試合前後やっているわけで、それだけたくさんの試合をしていればどんどんうまくなりますよね。しかもプロ野球選手は野球で生計を立てていくしかないから危機感も全然違う。
     戦争直後のゴタゴタの時期には、兵隊に取られて戦死してしまった選手もたくさんいたので一時的にプロのレベルは下がったようですが、昭和30(1955)年ごろには戦前のレベルに戻ったと言われています。
    ――人気の面ではどうでしょうか。
    森田 人気面は、長嶋がプロ入りするぐらいまでは六大学のほうが上だったかもしれません。ただそれはあくまでも東京地区の話で、全国的にはプロ野球のほうが人気だったと思います。
     メディア論的な観点から言えば、戦前も真珠湾攻撃の日までテレビが実験放送されていましたが、主要なメディアはやはりラジオ。終戦直後、GHQはそのラジオを「民主主義を広めるためのツール」として活用したんです。当時のGHQにとって、日本人の赤化を防ぐことが至上命題で、そのための特効薬が天皇制とベースボールだったわけですが、ベースボールはアメリカの国技であり、GHQの信じる「民主主義」と相性が良かったんですね。実際にGHQは大量のゴムを日本に持って来て、何十万個という軟式ボールを全国に配り、野球のさらなる普及を図っています。
     で、当時のラジオは今のように切れ目なく放送していなかったんですが、GHQが出した指示は「切れ目なく放送せよ」。そのためにプロ野球が一気に中継されるようになったんです。ラジオは夕方の時間であればニュースや芸能、ラジオドラマがあるんですが、午後に放送するものが少なかった。当時のプロ野球は昼間にやっていたので、空白地帯を埋めるのに都合が良かったんです。こうして野球人気は一気に高まっていったんです。
     もちろん戦前からラジオでプロ野球中継をやってはいたんですが、一番良いアナウンサーは六大学野球、なかでも早慶戦の実況中継を担当するという位置づけで、プロ野球はあくまでも1〜2年目の駆け出しアナウンサーの練習台だったんです。当時のプロ野球って六大学野球に対抗するためにもっとスピーディーにやろうという方針で、試合展開が早くて平均で80〜90分ぐらいで試合が終わっていた。テレビのような映像のない状態でヴィヴィッドに、かつ的を射た実況をしなければいけないので、アナウンス技術を磨くためには良い素材だったんですね。戦前に駆け出しだったNHKの志村正順さんのような人が、戦後には中堅どころになっていて、彼らの実況をコアにしてプロ野球中継がどんどん人気が高まっていったんです。
    ■戦後日本社会のなかの六大学野球
    ――最近、六大学野球は各大学の校風を象徴するようなポスターを制作していて、ネットでも話題になっていました。ただ不思議なのが、果たしてそこまでして人々は六大学野球に対して盛り上がらなければいけないのか? ということだったんです。
    森田 まあ、六大学の人たちの側からすれば「六大学野球は人気がなければいけない」という思いがあるんでしょうね。大学のプロモーションとしても六大学野球は効果的なコンテンツだったので。

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  • 『シン・ゴジラ』――日本が実現できなかった“成熟”の可能性を描く、“お仕事映画”としての『シン・ゴジラ』(真実一郎×宇野常寛)

    2016-10-24 19:00  
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    今朝のメルマガは、映画『シン・ゴジラ』をテーマに、真実一郎さんと宇野常寛の対談をお届けします。3・11以降の想像力を象徴する作品として高い評価を得ている『シン・ゴジラ』。本作を巡って、庵野秀明監督が見出した「お仕事映画」としての新境地、さらには、ポリティカル・フィクションの新しい可能性について議論します。(構成:須賀原みち/初出:「サイゾー」2016年10月号)



    (画像出典)

    ▼作品紹介
    『シン・ゴジラ』
    監督・脚本/庵野秀明 特技監督/樋口真嗣 出演/長谷川博己、竹野内豊、石原さとみほか 配給/東宝 公開日/16年7月29日
    東京湾沖の海中で、突然謎の爆発が起きる。海中火山かと思われたそれは、出現した「巨大不明生物」によるものであると判断され、政治家たちは対応を迫られる。保守政党の若手議員である矢口蘭堂をリーダーに、各省庁や学識関係者の中から技能と知識を持った変わり者たちが集められ、「巨大不明生物特設災害対策本部」が設立。ゴジラと名付けられた生物の侵攻を食い止めるべく、奔走する。

    真実 3・11の後、宇野さんにお会いした時「今後はフィクションにとって、厳しい時代になる。その代わり、“怪獣”的な想像力が蘇るかもしれない」とおっしゃっていたのを覚えているんですが、東日本大震災から5年たって、まさに『シン・ゴジラ』で、その通りになりましたね。怪獣好きにとっては、まさか21世紀に、オタクじゃない人たちと、こんなに怪獣のことを語れる日が来るなんて──と、それだけでうれしい。そもそも僕のような第二次オタク世代にとって、庵野秀明はDAICON版『帰ってきたウルトラマン』【1】などをリアルタイムで見ていたりして、もともと特撮の人というイメージでした。アマチュア特撮映画を作っていた人が『新世紀エヴァンゲリオン』を経由して、ついに日本を代表するゴジラというキャラクターで特撮映画を撮ったことは、非常に感慨深いです。
    宇野 正直、公開前はそんなに期待していなかった。理由はいくつかあるけど、ひとつは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(12年)ですよね。『エヴァQ』では冷戦期にイメージされていた終末の風景、つまり世界を一瞬で焼き尽くす原爆的な破滅が大安売りされていて、そのセカイ系的な陳腐さに白けてしまった。その庵野秀明が、『シン・ゴジラ』では、この先半永久的に世界を内部から蝕んで壊死していくような原発的な破滅を描くことによって、新しい形で「ゴジラ」を再生させたのは、良い意味で意外だった。
    真実 『エヴァ』でずっと10代の少年の自意識や承認欲求について描いてきた人が、 “働く”ということを真正面から描くようになったのは、僕にはものすごく大きな変化に思えました。『シン・ゴジラ』は “お仕事映画”だった。劇中では、ほぼ全部のキャラクターが、大事なシーンで「仕事」という言葉を使う。「仕事ですから」とか「総理の仕事って大変だなぁ」とか、「国民を安心させるのが我々の仕事だろ!」とか。組織の中での自分の使命を最優先にして働く大人たちというのは、これまで庵野さんが描いていたキャラクターとかなり違うものだな、と。それは、自分の会社として株式会社カラーを作った影響も大きいのかな、と思いました。

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  • 井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第10回 学習説の世界――積極的学習行為としてのゲーム――【不定期配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.716 ☆

    2016-10-21 07:00  
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    井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第10回 学習説の世界――積極的学習行為としてのゲーム――【不定期配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.21 vol.716
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは井上明人さんの『中心をもたない、現象としてのゲームについて』の第10回です。今回からは、ゲームの本質を「学習」にあるとみなす立場を中心に検討を進めます。研究者のみならず、ゲーム開発者から見ても非常に強い説得力を持つ「学習説」とは何か。国内外で展開されている「ゲーム」と「学習」にまつわる議論を参照していきます。
    ▼執筆者プロフィール
    井上明人(いのうえ・あきと)
    1980年生。関西大学総合情報学部特任准教授、立命館大学先端総合学術研究科非常勤講師。ゲーム研究者。中心テーマはゲームの現象論。2005年慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。2005年より同SFC研究所訪問研究員。2007年より国際大学GLOCOM助教。2015年より現職。ゲームの社会応用プロジェクトに多数関っており、震災時にリリースした節電ゲーム#denkimeterでCEDEC AWARD ゲームデザイン部門優秀賞受賞。論文に「遊びとゲームをめぐる試論 ―たとえば、にらめっこはコンピュータ・ゲームになるだろうか」など。単著に『ゲーミフィケーション』(NHK出版,2012)。
    本メルマガで連載中の『中心をもたない、現象としてのゲームについて』配信記事一覧はこちらのリンクから。
    前回:井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第9回 どこまでが「ゲーム」なのか?【不定期配信】
    3−1 「ゲームの学習説」とは何か
    3-1-1.学習説の興奮
     「ついにゲームというものの本質がわかった気がします…!」
     筆者に対して興奮気味でこういったことを伝えてくれる人が、毎年一人ぐらいいる。時にはメールで、時には口頭で、時にはSNSのメッセージで。それらは、毎回違う人物であり、だいたい、コンピュータ・ゲームの開発に関わる人たちだ。
     そして、彼らの言う「ゲームの本質」は、表現には少しずつの違いはあるものの、だいたい同じ点を突いている。
     それは、ゲームをプレイするときにゲームプレイヤーに「積極的な学習行為が成立しているのではないか」といったことだ。もう少し丁寧にいえば次のようになる。
    いわゆる「ゲームにハマっている」と言われるような状態のことを考えると、ハマっているゲームプレイヤーたちは、ゲームをどんどんと習熟していくようなプロセスの中にいる。ゲームにハマるということは、ゲームの腕を上達させていくプロセスであるであることと、しばしば近似する。もちろん、それほどゲームに習熟できないプレイヤーというのもいるが、そういう人は、今ひとつゲームにハマりきることができずにゲームをやめてしまう。
     そういったゲームプレイヤーたちの行動が成立しているということを前提に、ゲーム開発者たちはゲームを作る。ゲームプレイヤーたちが、それまで習熟してきたことを土台としつつ、プレイヤーにとって少しだけ予想を超えるような課題をほどよいタイミングで与えつづけることができれば、プレイヤーはその状況を嬉々として受け入れ、課題に挑戦し続ける。
     設計の勘所はそのタイミングや、難易度の設計だ。プレイヤーがまったく乗り越えられないと感じるほどに、与えられた課題のハードルが高いと、プレイヤーはモチベーションを保てずに挫折してしまう。他方、ゲームをしていて、次に何がでてくるかということを予測し、その予測と完全に同じものがでてきて、予測された状況に、プレイヤーが完全に適応できるようなことが続くと、プレイヤーはそのゲームを徐々に退屈に感じはじめる。すなわち、難しすぎても、簡単すぎてもいけない。
     概ね、以上の点が多くのコンピュータ・ゲームの開発者が、ある日「はっ」と気付きによって得られるような「ゲームの本質」とされやすいことの中身だ。こういった感覚は、実に多くのゲーム開発者が抱くもののようで、こうした立場を公表し、より洗練された議論を目指そうとする人も少なくない。たとえばオンラインゲームの開発者だったラフ・コスターの議論[1]や、日本の家庭用ゲーム開発で長年のキャリアを積んできた渡辺修司らの議論[2]なども、基本コンセプトは今述べたような発想をベースとしている。
     「ゲームの本質」に関するこうした考え方を支持するのは、コンピュータ・ゲームの開発者のみにとどまらない。2011年以後、日常行為のなかにゲームの要素を組み込んでいくことを意味する「ゲーミフィケーション」という言葉が世界的に言われるようになってきた。筆者自身も2012年に『ゲーミフィケーション』という書籍を出版した[3]ため、この議論には深く関わっているが、この文脈のなかで「ゲーム」の面白さの中心をなすものとして紹介されたのは、ほとんどのケースで、これらの議論の一種といえるものだった。
     特にゲーミフィケーションをめぐる議論のなかで「ゲームの本質」として紹介されたのは、「フロー体験」と呼ばれるものだ[4]。「フロー体験」自体は、1980年代から1990年代にかけて広まった心理学者のミハイ・チクセントミハイによる概念であり、上記の要件に加えて、状況に対して自発的に参加を行っているかどうかとか、自己コントロール感があるかどうかといったいくつかの条件が追加される。
    即時にフィードバックがかえってくるような環境下で、限定された分野について、難しすぎず、易しすぎない課題が提示されているときに、人間は、非常に高度な集中力を発揮し、その課題を苦と思わずに、積極的に取り組むことになるという。
     ミハイ・チクセントミハイの提唱した概念はゲームそのものについての議論ではないが、ゲームを遊んでいるときに生まれる楽しさや、集中した感覚に近いということで「フロー体験」はゲームの面白さを説明するための理論として好んで使われることが多い。

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  • アニメが描く「青春」の現在――『心が叫びたがってるんだ。』と『君の名は。』(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(6))【毎月第3木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.715 ☆

    2016-10-20 07:00  
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    アニメが描く「青春」の現在――『心が叫びたがってるんだ。』と『君の名は。』(『石岡良治の現代アニメ史講義』 10年代、深夜アニメ表現の広がり(6))【毎月第3木曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.20 vol.715
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回は、ノイタミナ枠をはじめとした「深夜アニメ的想像力」の試行錯誤が、どのようにして『心が叫びたがってるんだ。』『君の名は。』といった2010年代の劇場版アニメに結実していったのかを辿ります。
    ▼プロフィール
    石岡良治(いしおか・よしはる)
    1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
    『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。

    前回:複数の世代感覚を媒介することに成功した『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(5))

    ■深夜アニメ的想像力の転換期を象徴づける『心が叫びたがってるんだ。』『君の名は。』『聲の形』
     現在、深夜アニメのマーケットが曲がり角に来ているとよく言われます。セルソフトすなわち「円盤」の売上に頼ってきた産業構造が限界を迎えているからです。このあたりはある程度、音楽産業と似た展開を辿っていて、アイドルアニメが興隆しているのも、ライブイベントとの連動が重要になっていることを物語っています。また、少し前はセルソフトの限定版にフィギュアなどのグッズが付くことが多く、今でもそうしたパッケージは多いですが、それ以上に「Blu-rayにイベント参加券がついてくる」という収益モデルが一般化しています。動画配信市場が本格的に広がってきたことも見逃せないところです。
     収益モデルが多様化している中、深夜アニメがある種の飽和を迎えているという印象も否めません。その一方で、長きにわたるスタジオジブリの活躍を経て、日本の映画産業におけるアニメ映画の存在感が非常に大きくなっていることも周知のことと思います。今世紀でいうならば、細田守が切り開き、新海誠の『君の名は。』が記録的ヒットを上げることで明らかになった、一般向けアニメ映画枠ですね。
     ただ、深夜アニメ発の想像力は、どうしても一般向けとはズレたところで展開されることが多いのも事実でしょう。アニメを多数見ている人は『魔法少女まどか☆マギカ』や『ラブライブ!』、あるいは『ガールズ&パンツァー』などの劇場版のヒットにそう違和感を覚えないでしょうし、何度も語ってきたようにライトオタクが増加していることも間違いありません。それでもやはり、「いかにもアニメ」という記号性に抵抗を覚える人も少なからずいるわけです。ノイタミナのチャレンジは、そうした状況を架橋することにありました。去年〜今年にかけて『心が叫びたがってるんだ。』『君の名は。』『聲の形』といった映画作品が注目されていることも、まさにそうした流れに位置付けることができると考えています。
     『君の名は。』のヒットについては、「ユリイカ」2016年9月号(特集=新海誠)に所収の「新海誠の結節点/転回点としての『君の名は。』」や、「サイゾー」での宇野さんとの対談(2016年11月号に掲載)でも語っていますのでそちらを参照してほしいのですが、改めて注目したいことがあります。公式が「ポスト細田守」という名称を使っており、論者によっては「ポスト宮﨑駿」とすら語る人もいますが、そちらの方向ではなく、すでに前回語っているように、新海誠が『とらドラ!』以降の超平和バスターズ組(岡田麿里・長井龍雪・田中将賀)の作風を研究した結果、キャラクターデザインに田中将賀を採用したり、いかにも深夜アニメ的なオープニングムービーが持ち込まれたりしたのではないかということです。
    ■『true tears』のアップデートを試みた『ここさけ』
     では改めて、深夜アニメの想像力に発しながら、『あの花』に続き一般層にも訴求した超平和バスターズ組によるアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』(以下『ここさけ』)について考えてみたいと思います。ネタバレ込みで語っていきますが、見た人はおわかりのように、『ここさけ』はテーマ的には事実上『true tears』の変奏になっています。ただ、多くの要素が付け加わっているので、単なるアレンジにはとどまっていません。

    ▲『心が叫びたがってるんだ。』水瀬いのり (出演), 内山昂輝 (出演), 長井龍雪 (監督) (画像出典)
     例えば、『桐島、部活やめるってよ』が巧みに描いたスクールカースト描写を取り入れているところが挙げられます。ただし見立てそのものはシンプルで、野球部=アメリカの青春ドラマにおけるアメフト部員というアナロジーを押し通しています。野球部員とチアリーダーのカップルがスクールカーストの頂点とされるという構図ですね。ドラマとしては野球部の田崎くんというキャラクターが鍵で、怪我によってスクールカーストの頂点から転落してしまいます。一般に(深夜)アニメの視聴者には、体育会系が普通にスクールカースト勝者として描写されると嫌悪感を感じる人がそれなりにいるわけですが、田崎くんの「転落」は、そうした抵抗感を一定程度和らげる結果につながっています。最後の展開には評価が分かれるかもしれませんが、アニメファンに人気の細谷佳正が田崎くんを演じているのも絶妙です。

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  • 【新連載】御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第1回 社会運動から見た香港の変化、そしてわたしの変化

    2016-10-19 07:00  
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    【新連載】御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記第1回 社会運動から見た香港の変化、そしてわたしの変化【毎月第3水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.19 vol.714
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    今朝は香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの新連載をお届けしま
  • 【対談】三宅陽一郎×中川大地 ゲームAIは〈人間の心〉の夢を見るか(前編) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.713 ☆

    2016-10-18 07:00  
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    【対談】三宅陽一郎×中川大地ゲームAIは〈人間の心〉の夢を見るか(前編)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.10.18 vol.713
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    今朝のメルマガは、ゲームAIの開発者である三宅陽一郎さんと、評論家・編集者の中川大地さんの対談をお届けします。デカルト以降の近代西洋哲学はどのように人工知能を定義するのか。欧米と日本のゲームの背景にある思想的な差異とは。『人工知能のための哲学塾』の三宅さんと『現代ゲーム全史』の中川さんが、ゲームとAIについて徹底的に論じ合います。

    本メルマガでの連載が元になった中川大地さんの著書『現代ゲーム全史』が大好評発売中です。ファミコン以前の時代からスペースインベーダー、マリオ、ドラクエ、FF、パズドラ、Ingress、さらにはPokemonGOまで――。"文化としてのゲーム”のすべてを一望できる大著です。ぜひともお買い求めください!

    ▲中川大地『現代ゲーム全史――文明の遊戯史観から』 
    (紙)/(電子)
    本メルマガで連載していた『中川大地の現代ゲーム全史』はこちらのリンクから。
    ▼プロフィール
    中川大地(なかがわ・だいち)
    1974年東京都墨田区向島生まれ。ゲーム、アニメ、ドラマ等のカルチャー全般をホームに、日本思想や都市論、人類学、生命科学、情報技術等を渉猟して文化と社会、現実と虚構を架橋する各種評論の執筆やコンセプチュアルムック等を制作。批評誌『PLANETS』副編集長。著書に『東京スカイツリー論』、編書に『クリティカル・ゼロ』『あまちゃんメモリーズ』など。8月24日には『現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から』を上梓。
    三宅陽一郎(みやけ・よういちろう)
    @miyayou ゲームAI開発者/研究者。日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員、デジタルコンテンツエキスポ委員、CEDEC委員。主著『人工知能のための哲学塾』『絵でわかる人工知能』『デジタルゲームの教科書』「ゲーム、人工知能、環世界」(現代思想、2015年12月号)。Facebookグループ『人工知能のための哲学塾』主催、Twitter上では『ゲームデザイン討論会』主催。
    ◎構成:高橋ミレイ
    ■ 実験物理学の研究からゲームAIの世界へ
    中川 今回、三宅さんとの対談をお願いしたのは、『現代ゲーム全史』をまとめてみて、ゲームと人工知能(AI)は車の両輪のような関係にあるなと感じたからなんですね。拙著の序盤の章でも述べたように、ゲームの数学的解析から始まるデジタルゲームとAIは、同じ起源を共有しています。以来、基本的には何か実用的な目的のために使うのではなく、純粋に人間がコンピューターで何ができるかの可能性を追求していくジャンルとして発展してきました。それが2012年あたりからAIではディープラーニング(深層学習)のブレイクスルーがあり、ゲームではOculus Riftなどが出てきてVRへの流れが全面化して、2016年現在はそれぞれに大きな歴史的転機が訪れています。
     そんな時流の中で、三宅さんはまさにゲームに活用するAIの専門家として、『人工知能のための哲学塾』と森川幸人さんとの共著『絵でわかる人工知能』を立て続けに出版され、AIという概念についての非常に本質的な思索を展開されていたのが印象的で、ぜひ深くお話をうかがってみたいと思ったわけなんです。
     それで、もともと三宅さんは物理学の研究をされていたそうですが、そこからどういう関心を持ってAIの研究に進まれたのかを、まずはお聞きかせ願えますでしょうか。
    三宅 最初は京都大学で数学と理論物理を勉強していました。修士課程で大阪大学に移って地下にある半径数kmという巨大な加速器でデータを取るような研究をやっていたのですが、装置を自分で作ってみたくなって、博士課程で東京大学に移り電気工学を学びました。そのうちに装置を自律的に動かすことに興味が出てきて、そこが人工知能の研究のスタートですね。「ひとつの知能を丸ごと作る」というのが僕の目標で、そういった技術はゲーム業界でこそ必要とされているはずだと思って、2004年頃にゲーム業界に入ったんです。でも、当時のゲームで使われていた人工知能は完全なものではなかった。今でも世間で人工知能と呼ばれるものの90%は、人工知能の一部を利用したものです。たとえばAmazonのレコメンドシステムやGoogle検索、ディープラーニング、画像認識などで、こういった単機能のAIの方がサービスにしやすいんですね。でも、僕が作りたいのは、ゲームの世界で本当に生きている、完全な人工知能でした。完璧でなくていいですが、知能として最低限必要な一揃いが作っているという意味で完全な人工知能です。そのためには、ゲームの中に「世界」そのものが存在しなくてはいけない。
    中川 なるほど。2000年頃といえば、ゲーム史的には2Dのドット絵の時代から、プレステ革命を経てポリゴンを用いた3DCG表現への主流の移行が完了したくらいの時期ですね。ゲーム世界が3D化すると、物理演算エンジンによって、現実の三次元空間に近い世界を作れるようになる。理念としてのAIは、特定の専門分野での用途に特化したものではなく、人間のような汎用的な問題解決のできる知能を目指すわけだから、知能に対して課題を与える環境の性格が人間のそれに近づくことが大きな意味を持つわけですね。言うなれば、AIがAIとして活動するための最も純粋なフィールドを用意しうる分野が、「世界」や「環境」を生成するテクノロジーとしてのゲームだったと。
      
    三宅 おっしゃる通りです。人間も含め、知能というのは外部の環境に合わせて相対的に生成されるので、単純な世界では知能を複雑にする必要がない。ゲームデザインが複雑になれば、人工知能もゲームを理解するために高い知能を持たなければいけなくなります。僕がゲーム業界に入ったのは、森川幸人さんがプレステで『がんばれ森川くん2号』(1997年)や『アストロノーカ』(1998年)を出した、そのちょっと後くらいでした。

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