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記事 19件
  • 「宇野常寛のオールナイトニッポン0(zero)金曜日~2月21日放送全文書き起こし!」☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.020 ☆

    2014-02-28 19:00  
    309pt
    2/21 宇野ゼロ!
    今週も2時間お付き合い頂き
    ありがとうございました。
    社会学者の濱野智史さんをゲストにお迎えして
    これからのアイドルについて語り尽くした回となりましたが...
    やはり時間が足りませんでした。(笑)
    _
    AKB48、地下アイドル、
    そして自身でアイドルをプロデュース、
    様々な角度からアイドルを考察。

    聞いてくれたみなさん、
    そしてメール&ツイッターをくれたみなさん
    ありがとうございました。
    濱野さんもお疲れ様でした。
    _
    <Playlist, 2/21 2014>
    M1: Pioneer / AKB48(Team A)
    M2: 桜Babyラブ / ALLOVER 
    M3: YOZORA / アイドルカレッジ
    M4: 少女たちよ / AKB48
    M5: 君は流れ星 / 西村知美
    (↑アナーキーリクエスト from 横山ゆい大明神さん)
    M6: チャンスの神様 / 怪傑!トロピカル丸 
    M7: SHOOTING STAR / 小池美由
    M8: 回遊魚のキャパシティ / AKB48(Team K)
  • いま読むべき面白い漫画とは?~現役漫画編集者匿名座談会 2014 Spring~ ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.019 ☆

    2014-02-27 07:00  
    514pt

    いま読むべき面白い漫画とは?~現役漫画編集者匿名座談会 2014 SPRING~
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.2.27 vol.019
    http://wakusei2nd.com


    いま、本当に読まれるべきはどの作品なのか。業界の第一線で常に締め切りと校了日のはざまに生きるアラサー編集者トリオが、深夜の宇野事務所にひっそりと集結。普段は絶対口にできない、他誌と他社の傑作&問題作を、嫉妬と羨望を込めて語り尽くす!
    《目次》
    ■『リピートアフターミー』に見る、“ループもの”ストーリーの到達点
    ■実録ものをフィクションとして描くということ――『「ガンダム」を創った男たち。』
    ■なぜいくえみ綾は不倫のリアリティを描けるのか?――『あなたのことはそれほど』
    ■漫画のなかの「いじめ」――大今良時『聲の形』から
    ■46巻にして絶頂期を迎えた『Q.E.D.証明終了』
    ■『キングダム』こそネ申である!!
    ■ミステリー漫画の最新型、『僕だけがいない街』『ミュージアム』
    ■『亜人』は次なる『進撃の巨人』の位置を狙えるか?
    ■いまあらためて読むべきは古参作家の新連載!?――平野耕太、あだち充、小畑健、ハロルド作石
    ■『さよならソルシエ』とは何だったのか
    ■「ごはん食べる系」漫画が全盛となった2014年
    ■漫画で「天才」をどう描くのか?
    ■描線に宿る快楽――『きぐるみ防衛隊』、『おひとり様物語』
    ■キミは、『失恋ショコラティエ』を読んで傷つくことができるか
    ■いま、岡本倫のオフサイド具合が面白い!――『極黒のブリュンヒルデ』『君は淫らな僕の女王』 
    《座談会参加者》
    A夫:青年誌の編集者。20代。Kindleでの漫画購入用にiPad miniを買う必要を感じている。
    B子:少女誌の編集者。30代。一見クールビューティ系だが、実は非モテの心を持つ。
    C太:少年誌の編集者。30代。バトル漫画を担当中。生涯ベスト漫画は松本大洋「ピンポン」。
     
    ◎構成:佐藤雄+中野慧
     
     
    ■『リピートアフターミー』に見る、“ループもの”ストーリーの到達点
     
    宇野 今回は「漫画編集者匿名座談会」ということでみなさんに集まってもらいました。『この漫画がすごい!』や『フリースタイル』を始めとした漫画ジャーナリズムや、漫画批評の視点とはまた異なったかたちで、現場で実際に漫画を作っている側の編集者がどんな漫画に注目しているかを今日は伺いたいと思います。ルールとしてゴシップやディスはなるべくしない方向で、ただし「こうしたほうが面白かったかも」といった、愛のあるツッコミは大歓迎! ということにしたいと思います。それではどうぞよろしくお願いします。
    A夫・B子・C太 よろしくお願いします。
    宇野 それでは、さっそく皆さんが最近気になっている作品を、どんどん挙げていってもらえますか?
    A夫 最近でいうと、ヤマモトマナブ『リピートアフターミー』(月刊コミックブレイド)が面白かったですね。内容はノベル系ゲームの系譜にある、タイムループもの。良いことするのが好きな女の子が、善行の回数でギネスを狙ってるんですよ。それで良いことをしたときにその相手から半強制的にサインをもらうんです。お婆さんに席譲ったら「あたし席譲って、今あなた幸せになりましたよね?」という感じで(笑)。
    C太 超イヤな女の子だな(笑)。
    B子 私もこの作品は好きですね。C太さんの言うとおり、クソみたいな女の子なんですけど、ちゃんとそのクソな自分に気づいていくのがこの話の良いところですね。
    A夫 B子さんはキャラが成長する部分が好きなんですよね。
     この作品は主人公の女の子が殺人事件に巻き込まれて、一緒にループに巻き込まれた男キャラと2人で事件を解決するっていう展開なんですけど、その2人の出会い方が最悪なんです。でも話が進むごとにお互いに対する好感度が高くなっていくのが良かった。
    B子 その最悪な出会いが、冒頭で一番おもしろい部分ですね。主人公の女の子が銀行強盗に出くわして、殺されそうになる……んだけど、その被害者と加害者だったはずの2人が仲良くなりつつ、ループしていく、という。この作品はとても面白かったので、もっとみんなに知ってほしいですよね。どうすれば広められるかな……。
    A夫 ちなみに僕がハマったのは、書店での試し読みがきっかけなんだよね。あの手のものって読むと続きが気になるんです。きっちりとした設定があるなら曖昧なオチはないだろうっていう期待感もあるし。
    B子 全2巻で、コンパクトにまとめ切っている作品ですよね。ただ、もう少し読みたかったから長くやって欲しかった……!!
    A夫 でもループものって読み切りに向いているスタイルだから、そんなに長くはできないよね。コンパクトにまとまっているから人に勧めるには最適…なんだけどKindle化してないのが非常に残念。
     漫画喫茶に行く人にオススメしたい、3巻から5巻くらいのコミックスって実はあまりないんだけど、『リピートアフターミー』は珍しくそういうタイプの作品です。

     
     
    ■実録ものをフィクションとして描くということ――『「ガンダム」を創った男たち。』
     
    C太 俺は『ムダヅモ無き改革』(近代麻雀)でもおなじみの大和田秀樹さんの『「ガンダム」を創った男たち。』を挙げたい。監督の富野由悠季さんが主人公で、アニメ『機動戦士ガンダム』の企画段階から映画公開までの話を描いている。
    B子 宮崎克、吉本浩二『ブラックジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』(週刊少年チャンピオン)のような感じですか?
    C太 いや、この作品のすごいところは、嘘ばっかりなの(笑)。たとえば最初、主人公アムロの声優である古谷徹さんが「殴ったな! オヤジにもぶたれたことないのに!」とアフレコしているシーンから始まるんだよ。
     最初は古谷さんがなかなかいい演技ができない。でも、富野監督が乱入してきていきなり古谷さんをぶん殴るんだ。そこで「もう1回今のセリフ言ってみろ」と言い、もう1度アフレコを行うと古谷さんの演技が「馬鹿な! 良くなってる!」っていう(笑)。
     とにかく実録ものなのに「絶対嘘だろ!」っていうシーンが多いんだけど、登場人物のキャラクターの強さが、話のリアリティのなさをどうでもいいや!と思わせてくれるので、すごくおもしろい。キャラクターデザイナーの安彦良和さんが王子さまキャラで、メカニックデザイナーの大河原邦男さんが町工場のオッサンで、いつも何か工具を手にしていたり(笑)。
    B子 ……どういうノリで作ってるんだろう(笑)。編集は怒られないんですかね?
    C太 富野さんから「好きにやりなさい」って許可はもらってるらしい。
    宇野 『ブラックジャック創作秘話』の「これっていい話だろ、ほら感動しろよ」的な感動の押し売りアプローチに対する強烈なアンチで、たとえどれだけ嘘で、どれだけ二次創作的であったとしても、漫画は魅力的な作り話を描くべきだって思想がここにはあるんだと思うよね。
    C太 漫画として面白ければ、本当の話かどうかはどうでもいい。俺は「ガンダム」自体はほとんど見てない人間で、特に思い入れもない。そういう自分がおもしろいと思えるのはキャラが良いからで、この作品を読むとフィクションの力のすごさを感じる。

     
     
    ■なぜいくえみ綾は不倫のリアリティを描けるのか?――『あなたのことはそれほど』
     
    B子 私はいくえみ綾『あなたのことはそれほど』(FEEL YOUNG)がすごく良いですね。内容はダブル不倫ものなんですが、いくえみ綾さんって、現実的できれいごとだけじゃないのに、ちゃんと読者が憧れちゃう世界を描くのがうまいと思うんです。不倫相手が初恋の男の子でちゃんと格好良くなっているところとか。でも、その初恋の相手の奥さんは美人じゃないところとかはリアルで(笑)。
     なぜ北海道にいて、猫に囲まれ、素敵な結婚生活を送っているいくえみ先生がこんなバランスを描けるんだろうって思うんですけど、最高です。でも、この作品を好きっていう女子はモテない気がします(笑)。
    A夫 僕もこれ読んでるんですけど、おもしろいのは、ダブル不倫なので主要人物が4人いるんですが、この4人の心理描写になにひとつ無理がないってところですね。「ストーリー上、仕方なくキャラを曲げたな」っていう部分がない。なにかの取材なんじゃないかって思います。身近に実例があるような。
    B子 主人公の女性は「結婚っていうのは1番好きな人じゃない人とするほうが良いんだよね」みたいな価値観で、冴えないけどいい旦那となる編集者の男と結婚します。そしてその後、初恋の人と再会するのがダブル不倫の始まりです。
     その初恋の男は、そこそこモテるのに誰にも本気になったことがないタイプで。学校の同級生の冴えない女の子を怖いと思いながらも、その冴えない女のことがなぜか気になる。なんなら癪に障るなとすら思っていたのに、気づいたら結婚しているという。
    A夫 その奥さんである女性っていうのは、一重瞼のあまりぱっとしない人で、女子女子した感じではないんですけど、頭の良さと独特のしたたかさがあって食えない人ですね。奥さんは旦那が浮気にしていることに気づいています。たとえば主人の持ち物を見て、「これ、あなたの趣味じゃないわよね~」とか言いながら他の女からもらったことがわかってるんです。
    C太 いくえみ綾さんはそういう情景や心理を描く才能がありすぎて、たまに読んでいてつらいんだよね。
    B子 でもそれは女子の大好物なんですよね。男性はそういった女性の心理を怖いと思うかもしれませんが、女には、あるあるだと思います!
    A夫 あれほどのキャラを描いていて、破綻しないのが本当にすごいですね。男子の嫉妬が湧いてくるポイントも的確で、「奥さんが寝言で別の男の名前を言うときの声が聞いたことのない甘い声だった!」みたいな(笑)。
    B子 そしてそのときに初めて旦那さんは奥さんの携帯を見ちゃって、それ以来見るのを止められくなり、それが僕にとってすごく悲しいことだ、みたいなモノローグが入るんですよ。
    C太 いくえみ綾さんのモノローグのセンスは業界3本の指に入ると思う。あれは編集者にはつくれないよ。作家でなければ描けない。それとやっぱり、『あなたのことはそれほど』ってタイトルワークもすごいなと思う。
    A夫 いくえみ綾さんのすごいところは、4人のキャラをデザインの被りもなく描き分けできるところです。登場人物たちの過去と現在の絵がちゃんと誰が誰かわかるんですよ。こういった力を持っている作家って、なかなかいないです。
    宇野 「モテない人の漫画」ではなく、「モテるんだけど、本命には愛されない人の漫画」って感じだね。
    A夫 みんなそうなんじゃないかな、っていうスタンスですね(笑)。結婚を決断をする流れになるとき、みんないろいろあると思うんですけど、そのあたりの描き方がやたらリアルです。外圧に負けた感とか、自分の気持ちが盛り上がったとか、そのあたりの気持ちの変化に無理がないのがなによりすごい作品ですね。
    B子 外圧に負けただけじゃなくて、どこか自分のなかで真実だと思って結婚したんだろうな、という描き方ですよね。
    A夫 漫画を読んでいて白けるところって、リアリティを感じなくなる部分なんですよね。ファンタジーでも現実世界の話でも。「なぜこのキャラはこういう風になってしまったのか」という疑問を読者に抱かせたらアウト。作家の都合でストーリーに合わせてキャラをねじ曲げた瞬間に魅力が減ってしまう。
    B子 『あなたのことはそれほど』にはそれが微塵もない。すごい。という結論しか出ないですね(笑)。

     
     
    ■漫画のなかの「いじめ」――大今良時『聲の形』から
     
    B子 ストーリー都合でキャラを曲げていない自然さで言うと、大今良時『聲の形』(週刊少年マガジン)も同じく良いですね。
    C太 うーん、あの漫画は、毎週追いかける気が起きない。読み切り版は好きだったけど、完成された話にそれほど付け足さずにやっている印象なので。
    A夫 読み切りでちゃんと完結してる話を連載にして続けるのってやっぱり難しくて、その意味で編集者としてすごく気になる作品ですね。部数も2冊で40万部以上出ているので強い支持を受けているのが伺えますが、あまり長く続けられる漫画ではないから、どう締めるのかという点にすごく注目してます。
    C太 読み切りの、これからこの2人どうなっていくのかなっていう後味がおもしろかったから、その後の展開を具体的に描かれると意外としんどいなって思う。あと、「この漫画がすごい!」のランキングに入りそうだよね。「この漫画をつまらない」っていう人は「人として大事なものが欠けている」っていうカテゴリーじゃない?
    B子 そうかもしれないですね(笑)。あの作品のすごいところは、いじめが出来上がる瞬間をものすごくリアルに描いていることだと思います。単なる勧善懲悪な話じゃない。いじめっ子が「俺はこいつをいじめていいんだ」って思っても仕方なかったんじゃないかって、思わず感情移入しちゃうんですよ。そういう空気を作った担任やクラスメートが1番無責任で悪人な感じがする。もちろんいじめられた方はたまらないし、いじめた主人公はそのあとちゃんと罪をつぐなっていくことになるんですけどね。私はこういった人間関係の機微をきちんと描いた作品は好きです。「いじめっ子は悪人、いじめられたほうはかわいそう」っていうだけじゃない『聲の形』はおもしろいと思います。
    A夫 この漫画の間違いなく良いところってなによりキンドルで出てることですよ。
    宇野 いま僕もキンドルで2冊買った。
    A夫 これは大事です、非常に(笑)!
     

     
    C太 いろいろグダグダ言ってるけど要するに俺、漫画編集者ながら、漫画でいじめネタ読めないんだよね、つらくて。羽海野チカ『3月のライオン』(ヤングアニマル)もいじめの話になった瞬間に読めなくなったくらい。
    宇野 羽海野さんって、秀才タイプであって天才ではないと思うんだよ。天才じゃないからこそ、天才の話を描こうとする。しかし、結局「天才」それ自体は描けない。そしてそのことで自分を追い詰めながら描いている。すごく技術は高いんだけど、自分の描きたいものが描けてない感が伝わってきてきちゃって、読んでてつらくなってくる。そしてそのやるせなさがあの漫画を良くも悪くも特徴づけている。
    B子 『ハチミツとクローバー』でできなかった、「描ききる」ということに挑んでいる感じがします。そして、一緒に最後までやりきれる編集者と出会ったんだと思います。
    A夫 『3月のライオン』の初代担当編集者が異動して、今「花とゆめ」の編集長なんだよね。ただ担当は続けているっていうイレギュラーな状態です。おそらく羽海野さんは次は「花とゆめ」でやるんだろうな、と。そういう意味で次回作に期待もできますね。
     
     
    ■46巻にして絶頂期を迎えた『Q.E.D.証明終了』
     
    C太 それと、連載が長期に渡っている漫画ってランキングとかにランクインしないだろうという意味で、俺は『Q.E.D. 証明終了』を推したい。今最新刊が46巻なんだけど、基本的に「こち亀」みたいな1話完結の推理もので、どこから読んでも入れるから、ぜひ手に取ってほしいんだよね。
     この46巻には「巡礼」っていう100ページくらいの読み切りがあるんだけど、個人的にはQ.E.D史上最高傑作だった。しかも連載十数年経って最高傑作が出るところに感動した。特にミステリーものの1話完結なんてハードルが高いものを、ハイレベルで安定供給しているので、個人的に漫画界で1番頭良いのは加藤元浩さんじゃないかと思ってて。出てくる人間がモブではなく、血が通っているところもすごくて、俺はかなり尊敬している作家さんだなぁ。
     
  • 素人がつくる「いわもとQ」の蕎麦はなぜウマい?――岩本社長に訊くチェーン店運営の<思想> ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.018 ☆

    2014-02-26 07:00  
    216pt

    素人がつくる「いわもとQ」の蕎麦はなぜウマい?岩本社長に訊くチェーン店運営の<思想>
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.2.26 vol.018
    http://wakusei2nd.com


    ANN0やこのメルマガのファンにはお馴染みのそば屋チェーン「いわもとQ」。宇野が愛してやまないこの店の味の秘密を探るべくPLANETS編集部は「いわQ」を運営する岩本浩治社長に取材を敢行! セブン-イレブンの社員から経営コンサルタントを経て「いわもとQ」を始めたという社長にその運営の思想と今後の展開について聞いてきました。
    今月のはじめ、PLANETS公式アカウントから、Twitterでこんなつぶやきが流れてきたのを覚えている人はいるだろうか。いわもとQ――この名前は、PLANETS読者には既におなじみかもしれない。宇野が事あるごとに名前をあげるそば屋チェーンで、ANN0などで何度となく話題にされてきた。今回の取材は、宇野のラブコールでぜひお会いしたいという旨を伝えたところ、岩本浩治社長から見事に快諾をいただけたことから実現の運びとなったものである。しかも、宇野に「いわQ」を教えたチームラボ代表の猪子寿之さんも参加することになり、PLANETS事務所はにわかに"祭り"となった。池袋駅を出て、西池袋の繁華街を抜けた場所に、「いわもとQ」を運営する株式会社ライトスタッフの事務所はあった。緊張する我々スタッフを迎え入れたのは、なんと岩本社長ご本人。直々にお茶まで入れていただいて、さっそく取材が始まった。元はといえば、単に宇野が「いわQ」にハマっているというだけのことから始まった、このなんとも奇妙な取材企画。しかし、岩本社長の話を聞くうちに見えてきたのは、コンビニ戦争の中で台頭したセブン-イレブンから引き継がれた、チェーン店の運営をめぐる<思想>の系譜であった。
     
    ◎構成:稲葉ほたて
     
     

    ■ 「Ann0の翌日に歌舞伎町店の売上がガッと伸びました(笑)」
     
    宇野 今日はお会いできて光栄です。実は、さっきも池袋店で食べてきたんですよ。二日に一回くらい食べないと禁断症状が出るくらいハマっています(笑)。蕎麦は好きなんですけど、ヘタな専門店より「いわもとQ」のほうがずっと美味しいです。特に、冷や蕎麦に関しては、美味しいと思うことが多いですね。
    岩本 ありがとうございます。
    宇野 ハマったキッカケは、歌舞伎町の店なんです。あとでここに来る猪子寿之(編集部注:猪子さんは前の予定が押して遅刻中でした)という、メディアアーティストのようなIT社長のような男に、無理やり歌舞伎町に連れて行かれたことがあって(笑)、その帰りに「歌舞伎町で遊んだあとは、"いわQ"にいくもんだよ、宇野さん」と連れ込まれたのが最初でした。
    岩本 ネットは普段やらないのですが、自分の店だけはサーチしているんです。すると、検索結果に最近、宇野という名前がやたらと出てくるので、誰だろうと思っていたのです。先週も、Ann0で取り上げていただいたでしょう。翌日、歌舞伎町店の売上が一気に跳ね上がったんですよ。
    宇野 いやあ、それは嬉しいですね(笑)。
     
     
    ■ 「いわもとQ」ができるまで
     
    宇野 そもそも、岩本社長はどういう経歴で「いわもとQ」を始められたのですか?
    岩本 物心ついた時から銀行員や役人になるのが、気が狂いそうなくらい嫌だったんですね。なので、職を転々としていました。ただ、あるときに自分の将来を考えて、このままでは嫌だなと思い、お客さん相手の商売で独立しようと思ったんです。でも、当時27歳で、女房と子供もいるわけで、まずは短期間で自分を鍛えてくれそうな職場を探しました。そこで応募したのが、セブン-イレブンでした。まだ1989年でしたから、バブルの真っ盛りです。最も中途採用枠を広げていた時期ですね。
     

    P8を開きながら、宇野からPLANETSについての説明を聞く岩本社長。
     
    セブンでは、加盟店を巡回して接客から棚の陳列、商品の発注などを全般的に教える指導員をしていました。ただ、独立するための能力を身につけたくて入ったのに、やりたい事業がどうしても浮かばないまま、35歳になってしまったんです。でも、次のステップには行きたかったんですね。そこで、まずは経営コンサルタントになりました。当時はセブン-イレブンもやめたてでしたから、比較的ノウハウの鮮度がいい、リーズナブルなコンサルタントでしたよ。
    宇野 鮮度がよくてリーズナブルって、まさに「いわもとQ」ですね(笑)。
    岩本 ただ、コンサルタントって人気商売で、芸人みたいなところがあるんです。そこは悩んでいましたね。鮮度も落ちるだろうし(笑)。
     
     
    ■ 値段を安くして、ダメ出しを沢山喰らって改善を繰り返す
     
    宇野 「いわもとQ」を思いついたのは、いつ頃ですか?
    岩本 2000年の12月31日の真夜中です。20世紀と21世紀の間に家でボーっとしてたら、突然「これだ!」と思い浮かんで、ガーッとメモを取ったんです。それが、いまの「いわもとQ」のほぼ原型。嘘みたいでしょ?
    宇野 嘘みたいですね(笑)。やはり、年越し蕎麦を食べてるときにですか?
    岩本 いや(笑)。でも、気持ちが燃えてきちゃって、それからはコンサルタントの合間を縫って、美味しい立ち食い蕎麦を探しては、そこの生ゴミを漁って「一斗缶、このメーカーか?」「この機械はなんだ?」とやってました。
    宇野 12月31日に思いついたときのコンセプトは何だったんですか?
    岩本 いまでもPCに当時の文書は残してるのですが、いまと同じですよ。立ち食い蕎麦の値段とノリなのだけど、食べたら立ち食い蕎麦じゃない、というような内容ですね。
    それで、職人はチェーンに不向きだから、素人だけで作れるようにしよう、と。あと、立ち食い蕎麦は客がいる時間が短いので、回転率が高い。立地さえ良ければ、店が小さくてもいいんです。ただ、蕎麦は昼は強いけど、夜に弱い。そこで、蕎麦に天ぷらを使うのだから、天丼を出せばいいだろうと考えたり、まあ、そんな内容です。
    当時、実は既に競合は、富士そばさん、小諸そばさん、あと駅の蕎麦のあじさい、と沢山あったんですよ。でも、根拠のない自信があった。安くしてお客さんにダメ出しをたくさん食らいながら、改善を繰り返せばイケると思ったんですね。
    宇野 最初はβ版でいい、と。
    岩本 ただ、そうやって出した麹町の1号店は、最初は全然ダメでした。とにかく、マズい(笑)。200円で出してたんですけどね。
     

    2003年当時のメニュー。「いま見たら、この写真の蕎麦、のびちゃってますね」(岩本社長)
     
    当時は、もう出しちゃいけないレベルのものだったんですよ。ある日、客に「これ飲んでみ」って、"ひやかけ"を渡されたのですが、メチャクチャしょっぱい。あの汁は、醤油とみりんを加えた返しに、だし汁を1:4で混ぜて作るんですが、それをバイトの中国人が4:1で作っていた。「申し訳ございません」と謝りました。
    宇野 さっき、まさに"ひやかけ"を食べてきたところです(笑)。
    岩本 ただ、やはり麹町なので、場所は良かったんですね。飲食店をナメていたことを反省して、レシピを改善したら、売上が伸びました。それで調子に乗って、今度は麹町と真逆の、日本一いかがわしい歌舞伎町で勝負してやろうと思ったんです。
    ほとんど人通りがない道だったのですが、腐っても歌舞伎町だろうと思って出したら、また全然人がこなかった(笑)。そこで考えたのが、どうせ客が来ないのなら、来てから作ろうということです。少なくてもいいから、来た人が「美味しい」と言う店を出そう、と。これが実に効いて、すぐに麹町もそうしました。困らないと人間って工夫しないんですね。
    宇野 いわもとQの蕎麦の美味しさって鮮度にあると思うのですが、そこからだったんですね。
     
     
    ■ セブン-イレブンから持ち帰ったもの
     
    宇野 ここまで岩本さんの経歴を聞かせていただいて、セブン-イレブンにいたのが大きいのかなと思いました。そこから「いわもとQ」に持ち帰ったものってありますか?

    『商売で大事なことは全部セブン‐イレブンで学んだ』岩本浩治(商業界・2005) http://www.amazon.co.jp/dp/4785502762岩本 ありますよ。例えば、『セブン-イレブンの仕事術』という本を出しているのですが、これは品質管理などの手法を書いた本です。あそこで学んだ、ひとくくりで大雑把に見ずに、要素分解しながら改善していくような手法は、やはり多くの人が興味を持ちますね。
    とにかく、お客様を細かく一人ひとりで見て、ディティールで妥協しないことの積み重ねが莫大な差になるんですよ。この考え方には普遍性があると思っていて、それが飲食でも通用するか試しているところがあります。
    宇野 僕はポップカルチャーの評論家をしているのですが、小賢しい作家性の発露の結果生まれた作品よりも、ただ売れることを考えて開発された商品の方が結果的にユニークな想像力を発揮したものがたくさんあるという現実を知っています。
    僕は「いわもとQ」の面白さって、「蕎麦も天ぷらも鮮度でほとんど決まる」って割り切りだと思うんですよ。個人の調理技術というものを一切当てにしないで誰が作っても同じ結果が得られるシステムを整備して、あとは単にゆで立て、揚げたて、製麺仕立てだけを追求する。結果、ヘタな職人よりも、マニュアルで作った素人のほうが美味しいものを出している。あれが僕にはインパクトがありました。
    そういう意味で、一番似ていると思うのが、セブンイレブンのコーヒーなんです。あの美味しさって、単にその場でドリップした出来たてを淹れていることでしかないと思うんです。コンビニの店員さんは専門家でも何でもないけれど、あのシステムなら誰が作っても同じでしょう。「コーヒーなんて鮮度が8割なんだから」という割り切った発想でやってる。
    岩本 きっとセブンは私からパクったんでしょうね……というのは冗談です(笑)。
    あれは、単純にセブンがそういう考え方をする集団なんです。私がいたバブルの頃から、既にそういう発想でやっていましたね。コンビニの運営というのが、そもそもそういう考え方でしょう。誰でも出来るようにマニュアルを作り、管理をしながら品質を上げていく。あのコーヒーも、自社に商品開発の技術が追いついたときにそれを応用しただけのことでしょう。
    「いわもとQ」についても、まさに仰るとおり、その発想は反映されています。ところてんみたいに蕎麦を押し出す機械がありますよね。あれは食べ歩きの中で私が見つけた機械で、実は麹町の一店目からあります。あの出来立てを茹でる麺だけは、初日から独特の食感が美味いと言われていました。
    ただ、あれは宇野さんのようなもり蕎麦が好きな方には合うのですが、かけ蕎麦には合わないんですね……。
    宇野 確かに、僕も“もり”か“ひや”(※ 冷たい蕎麦)以外は食べないです。というか、“かけ”(※ 温かい蕎麦)は「いわもとQ」で頼んだことがないですね。
     
  • 『パズドラ』をプレイしていたのは誰なのか?――ソーシャルゲームの歴史と運営思想☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.016 ☆

    2014-02-24 07:00  
    216pt

    『パズドラ』をプレイしていたのは誰なのか?ソーシャルゲームの歴史と運営思想
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.2.24 vol.016
    http://wakusei2nd.com


    2013年のヒットコンテンツとなったアプリゲーム『パズドラ』。GREEやDeNAというソーシャルゲーム2強とは異なる、ガンホーが繰り出したこのゲームからは、ゼロ年代以降のゲーム史の流れが透けて見える──。(初出:「月刊サイゾー」2014年2月号)

    ▼プロフィール
    稲葉ほたて(いなば・ほたて)[ネットライター]
    インターネットで生まれるカルチャーへの考察・取材等を行う「ねとぽよ」の中の人。 
     
    ◎構成/稲葉ほたて 
     
     
    宇野 僕が『パズル&ドラゴンズ』をやったのは実質1カ月くらいなんだけど、やっている時期は結構ハマったんだよね。自分の周囲でもやっている同年代が多かった。
     パズドラで一番意外だったのは、ゲーム自体がソーシャルではなかったことなんだよね。使っている人間もソーシャル性を求めてというより、むしろリアルの人間関係まで含めた「ソーシャル疲れ」みたいな状態の人が、黙々と遊んでいた印象がある。
    稲葉 僕も基本的には、サラリーマン時代に、会社帰りの電車で何も考えずに楽しめる娯楽としてやってましたね。ネットでゲリラダンジョンの時間割【1】が公開されてたので、間に合うように退社を早めたりして(笑)。
     パズドラに限ったことではないですが、ソーシャルゲームはガラケービジネスの隙間時間を奪い合う文化の中で、発展してきたものです。基本は暇つぶしなので、ソーシャル性なんて本質的には要らないんですよね。「ひとりでできる暇つぶしこそ最強」ですよ。
    宇野 少し大きい話をすると、いまはコンテンツが2極化していて、1年に一度のAKB48総選挙とか4年に一度のワールドカップ、数年に一回の宮崎駿の大作みたいな祝祭的な大花火か、リアルタイムで小刻みに更新されていくものという2つになってる。人間が生理的なところで求めている娯楽はこの二通りでしかないということが、社会の情報化によって明らかになってきた。そのうちのひとつの究極の流れがソーシャルゲームなんじゃないかと思う。
     ソーシャルゲームについて語るときって結局、お金の問題の文脈でしか見られていない。でも僕はソーシャルゲームのようなものが流行ってるっていうのは、「ゲームとは何か」「遊びとは何か」という問いを突きつけてる気がする。
     2010年頃に「PLANETS」VOL.7【2】で話したことなんだけど、「結局、ゲームはネットに負けた」と。人間にとって一番面白いゲームとは、LINEみたいに知り合いとダラダラ話したり、ツイッターみたいに不特定多数と戯れることなのではないか。予定調和の安心感としても乱数供給源としても、そちらのほうが優れている。そうして、せいぜいバグと戯れるのが限界だったゲームから訴求力が決定的に落ちた。その後にそこで勝ったのも、『ポケットモンスター』や『モンスターハンター』のような、社会のネットワーク性を逆手に取って、自分たちの作りたいゲームに活かしたアクロバティックな作品だけだった。その流れがケータイ機に移っていったというのが、近年のゲームの歴史だと思う。
     この流れにソーシャルゲームもあるんだけど、もともとこの手のゲームって、プラットフォームに人を置いておくために始まった経緯があるじゃない?【3】 ゲームのためにネットワーク環境を利用する、つまりコンテンツのためにコミュニケーションを利用するのではなくて、むしろコミュニティを維持するため、コミュニケーションのためにゲームを利用するというふうに逆転していた。
     そういう時期が何年かあった後で、『パズドラ』みたいなソーシャル性の弱いものが出てきた。その背景には、以前ほどSNSが単純な暇つぶしの娯楽じゃなくなってきてることがあると思う。不特定多数のネットワーク上のコミュニケーションは面白いけど、実はこれって結構アクティブな行為なんだよ。人間はスイッチがオフに近い状態だと「見知らぬ相手との出会い」なんでウザくて、頭を使わずにひとりでできるシンプルなゲームのほうがいいと思う。
    稲葉 少し歴史を整理しつつ話すと、確かに、09年の夏頃には『サンシャイン牧場』【4】のような、コミュニケーション要素の強い、農園系ゲームの存在感は大きかったんですよ。一方で、宇野さんが指摘されたようなSNSの活性化という当初の狙いはすぐに置き去りにされたんじゃないでしょうか。『ドリランド』のおかげで、毎日GREEで日記を更新するようになった人って、そんなにいない気がする(笑)。そもそも、SNSを活性化してもせいぜいmixi程度の収益ですが、ゲームのアイテム課金のそれは桁違いです。
     実際、『サンシャイン牧場』が流行っていたその年の秋には、米国のZyngaの『マフィアウォーズ』【5】にインスパイアされて、DeNAが『怪盗ロワイヤル』【6】を出してます。これで「ロワイヤル系」の波が来る。一応、互いにバトルを仕掛け合うもののコミュニケーション要素は希薄で、ソーシャル性は後退していました。さらに、翌年の秋口からは、GREEが「カード系」のゲームを本格展開してDeNAの業績を一気に追い上げていく。その象徴が、単に穴を掘って宝を集めるゲームだった『探検ドリランド』【7】の大リニューアルです。気がついたら、ビックリマンカードでバトルするような内容になっていた(笑)。こうした遊び方には、もちろん自分のカードを見せびらかして「俺TUEEEE」【8】をしたくなるような類いのソーシャル性はありますが、人間の収集欲に根差したデータベース消費の側面が大きい。
     このカード系のソーシャルゲームは、巷間言われる海外のSNSゲームの文脈とは全くの別物です。これはどちらかというと、ハンゲーム【9】が牽引することで、日本で独自に高度な発展を遂げた、バーチャル世界のアバターに課金させるビジネスから流れてきたもの。一時期激しく問題視されたコンプガチャも、アバターサービス周りで発達してきた手法だと聞きます。
    宇野 なるほど。ソーシャルゲームがゲーム批評の文脈で語られにくい理由のひとつとして、アバターサービスのようなところから発展していった歴史がある、と。つまり、いわゆるコンシューマーゲームの中心ユーザーだった20~30代男性カルチャーから切れた、もっと言えば文化というよりは風俗に近いところのサービスから始まっている。そこに後から、コンシューマーをやっていたソフトハウスが合流した。
     
  • 「宇野常寛のオールナイトニッポン0(zero)金曜日~2月14日放送全文書き起こし!」☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.015 ☆

    2014-02-21 19:00  
    216pt
    2/14 宇野ゼロ!
    2週続いて雪の金曜深夜!
    みなさん無事帰れましたか?
    _
    ゲスト出演予定の
    連続起業家・家入一真さんは、
    急遽電話出演に変更。
    バレンタインだった事も忘れてしまいましたね。
    と言いますか、もともと宇野はアンチバレンタインですけど...
    _
    来週もまたまたゲストがお越しになります。
    社会学者の濱野史さんです。
    濱野さんは近々アイドルをプロデュース予定。
    と言うことで、宇野ゼロでは
    『濱野智史とこれからのアイドルを語ろう』と題してお届けします。
    濱野さんへの質問や、
    僕らはこんなアイドルが欲しい などなど 
    是非、メールをおくって下さい。
    アドレスは uno@allnightnippon.com まで。
    _
    <Playlist, 2/14 2014>
    M1: BINGO ! / AKB48 Team4 ver
    M2: 完璧ぐ〜のね / 渡り廊下走り隊 
    M3: 黄金の器 銀の器 / 高田さとみ
    M4: COUNT ZERO / T.M. REVOLUTION
    M5: 夢の舟乗り / ヒデ夕樹
    (↑アナーキーリクエスト from 宇超硬スペリウム合金さん)
    M6: ダイアモンド クレバス / シェリル・ノーム 
    M7: ONE AND ONLY / 鈴木結女
    (↑ アナーキーリクエスト from リョコウバトさん)
  • 『大東亜論』はネトウヨに対抗できるか――歴史認識論争の情報戦を生きた小林よしのりの新展開 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.014 ☆

    2014-02-20 07:00  
    216pt

    『大東亜論』はネトウヨに対抗できるか歴史認識論争の情報戦を生きた小林よしのりの新展開
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.2.20 vol.014
    http://wakusei2nd.com


    今日のメイン記事は宇野常寛のエッセイ二本立て。1本目は、昨年大ヒットした『あまちゃん』で若き日の小泉今日子を演じて話題を呼んだ有村架純についての小論。2本目は、幕張メッセで見かけた謎の政治学者・山口二郎似の男についての観察です。(※ 小林よしのり『大東亜論』は書評コーナーにあります)
    ■【お蔵出し1本目】有村架純――そこにいるはずなのに、いない存在。その不在感によって、受肉するとき。

    (初出『女優美学III』)
     
     有村架純を最初に意識したのはテレビドラマ「SPEC ~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」だった。主人公たちの上司である熟年男性と不倫関係にある女子高生――。時折画面に現れては、ビターな笑いをもたらしてさらりと退場する。ときにはメタフィクション的な言及を行い、視聴者をどきりとさせる。親子ほど年の離れた男性との援助交際的な不倫関係結びながら、虚実の結び目を自由に往復するミステリアスな存在――今年で35歳になった僕には、有村の演じた「雅ちゃん」は90年代の女子高生ブームの折に男性サブカルチャーが過剰に仮託していた神秘的な「少女」性そのものに見えた。要するに、ひどく懐かしい感じがしたのだ。
     次に気になったのは宮藤官九郎が脚本を手がけた「11人もいる!」だった。本作は「ビッグダディ」のブームに着想を得たかつての「大家族もの」テレビドラマのオマージュ的作品だったのだが、ここでの有村は意図的にテンプレートに従って設定されたであろう大家族の「しっかり者の長女」を演じていて、そしてビックリするくらいよくハマっていた。僕はいわゆる「大家族ドラマ」を見て育った世代ではないが、きっとある世代の人に彼女は「懐かしく」映ったのだろう。
     そして、「あまちゃん」だ。クドカン以下の同作のスタッフもまた。彼女の「懐かしい」佇まいに気づいていたのだと思った。彼女が演じたのはヒロインの母親(春子)の少女時代だ。80年代にアイドルを目指して上京し、そして夢破れた東北の少女の「生霊」にして、この失われた20年の亡霊――それが劇中のキーパーソンであると同時に、有村架純という女優の存在感を体現する役柄だったように思える。
     「あまちゃん」の春子役=幽霊とは、正反対のアプローチを試みているのが「スターマン」における臼井祥子役だ。「SPEC」と同じ堤幸彦監督の手掛けた同作における有村の役柄は、地方のスーパーマーケットの総菜コーナーにつとめる平凡な女性だ。代わり映えのしない日常に退屈し切った彼女は常に「ここではない、どこか」に思いをはせている(しかしそれが具体的にどこかは分からない)。そして等身大の、普通の自分の生活に彼女は常に苛立っている。否応なくこの世界に受肉させられてしまった有村の身体は常に違和感を抱えることになる。そしてその違和感を動力源に、有村演じる祥子もまた物語の世界観を体現する存在として機能していく。
     そう、多くの作家たちがことごとくこの有村架純という女優を通して、失われてしまったものや、現実には存在しないもの、あるいはそれらのものへの憧れを描いてしまっているように僕には思える。 
  • YouTube270万再生の"空中浮遊"動画で話題――アーティスト落合陽一氏にインタビューしてみた ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.013 ☆

    2014-02-19 07:00  
    216pt

    YouTube270万再生の"空中浮遊"動画で話題
    アーティスト落合陽一氏にインタビューしてみた
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.2.19 vol.013
    http://wakusei2nd.com


    "物体が語りかけてくる世界をつくりたい"87年生まれのメディアアーティスト落合陽一さんが語るのは思うがままに物体を動かせる「魔法」の未来。大学院の博士課程に在学する科学者の一面も持つ彼と21世紀のコンピュータ社会の世界観を話しました。

     2014年の元旦、東京大学の研究室でつくられたという、物体を超音波で浮遊させる不思議な動画が話題になった。
     

    Three-Dimensional Mid-Air Acoustic Manipulation [Acoustic Levitation] (2013,2014-) https://www.youtube.com/watch?v=odJxJRAxdFU
     
    この動画は現在、270万再生を超えている。投稿者の落合陽一氏は、東京大学の大学院で学術研究を行いながら、気鋭のメディアアーテイストとしても活躍している人物だ。今回の動画は大学での研究成果を形にしたものであるが、それは彼のアーティスト活動と深く結びついた興味から生まれているという。
    今回のインタビューが収録されたのは、この動画が話題になった直後の、1月半ばのPLANETS事務所。前半では落合氏の作品歴を主に聞き、後半では宇野とその作品の持つ思想的意味を語り合っている。1987年生まれで「『攻殻機動隊』より『ハリーポッター』に憧れる」という落合氏の語る言葉が9歳上の宇野の興味と響きあい、収録現場は思わぬ盛り上がりを見せていた。
     
    ▼プロフィール
     落合陽一(おちあい・よういち)
    1987年生まれ,メディアアーティスト,日本学術振興会特別研究員DC1,IPA認定スーパークリエータ.名前の由来はプラス(陽)とマイナス(一),父は作家・落合信彦.筑波大学でメディア芸術を学び,東京大学大学院学際情報学府修了.現在,同博士課程在学中.制作のコンセプトは変幻するメディア装置を用いた「コンピュータグラフィクスの実体化」と「事象の電気的再構成」.研究テーマは,HCI,ディスプレイ,メディアアートなど多岐に及び,実世界志向のコンピュータグラフィクスを専門とする.国内外の受賞歴多数.英国国営放送,ディスカバリーチャンネルなどで特集されるなどメディア露出多数.TEDxTokyo yzやTED@Tokyoではスピーカーを務め好評を博した.
     
    ◎聞き手・構成:稲葉ほたて 

     
     
    ■  YouTube270万再生の動画はどうして生まれたのか

     
    ――元旦に話題になった映像は、どういう経緯で生まれたものなのですか?
    落合 少し以前にした研究の話から始めるのがいいかなと思います。実は、超音波を当てて質感を変えたシャボン玉で、スクリーンを作ったことがあるんです。
     
    A Colloidal Display: membrane screen that combines transparency, BRDF and 3D volume
    https://www.youtube.com/watch?v=tvxJs_4m0ZE
     
    これは、BBCでも取り上げられて、専門家のあいだでも話題になりました。シャボン玉に超音波を当てることで、本来は光が透過する透明な表面に映像が映るようにしたんです。これが示しているのは、映像の性質を、映写機側だけはでなくスクリーン側のほうでも、ある程度コントロールできることなんですね。実は映像の見える角度も制御できて、正面と側面で見え方を変えられます。しかも、シャボン玉のディスプレイなので、簡単に曲がったり出っ張ったり弾けたりするんです。通常が2次元のディスプレイなら、これは”2.5次元”のディスプレイという感じですね。ただ、僕の狙いはその先にもあって、次は立体的な造形物を視覚的に再現する3次元ディスプレイを作りたいんですね。今回の動画が生まれたのは、そうした興味からです。
    ――あの浮遊する球は、立体物のカタチを再現するための第一歩ですか。
     

    定常波の腹と節の間に白球を挟んでいる。「現在は出力がぶつ切りなのですが、これは高速で焦点を動かせば、視覚の残像効果によって解決できると思っています」(落合氏)
     
    落合 そうです。僕の目標は「三次元空間での”コンピュータグラフィクスの実体化”(Physicalization of Computer Graphics)」です。
    実は、これは超音波焦点で定常波を作っているので、焦点の位置を移動させることで球も一緒に動くんです。これによって、三次元操作を実現しました。また、単に実体化するだけでなく、書き換え可能にしたいんです。今回の動画では浮遊している球がビームの形そのままなのですが、今後は図形を実空間に出力できる描画ソフトの開発も目指しています。高速で動く浮遊物体にうまい具合に光を当てたら、物体の質感を再現できるんじゃないかと思っていて、まあ、その辺を楽しく研究しています。
    ――なんか聞いていると、3D空間における「白紙」のような存在ですね(笑)。光学技術と組み合わせることで、形や質感、色などを自在に操って、物体を再現できるわけですね。
    落合 そうです。まあ、「紙」に当たるものは、物理存在というよりは、コンピュータの指示通りに物体を動かすよう情報を制御する「場」のほうかもしれないとは思いますが。CGのように心に思い描いたものを、自在に動かしたいんですね。ただ、人間が物体を立体的に認識するプロセスはCGのように単純ではないので、技術的な課題が多いです。逆にいえば、そこがすごく楽しいところなのです(笑)。
     
     
    ■ 人間はコンピュータのミトコンドリアなのか?
     
    ――落合さんのそうした興味がどこから生まれたかが気になります。
    落合 ここはPLANETSなので、遠慮せずに訳わかんないことを喋っていいですよね(笑)。
    宇野 どうぞ(笑)。
    落合 大学生のときに「人間がコンピュータのミトコンドリアなのか、それともコンピュータが人間のミトコンドリアなのか」と悩んだことがあるんですよ。
    ――「人間はミトコンドリアが増殖していくための乗り物かもしれない」という議論ですね。
    落合 コンピュータと人間の関係もそれと同じじゃないか、と思ったんです。実際、僕らはコンピュータのためにせっせとデータを生成して、アーカイブしているわけでしょう。しかも、よくよく考えてみると、彼らが苦手なことは全て僕らがやってあげている。
    だって、自己複製できない彼らの手足となってコンピュータを組み上げて、年間に数億のそれを作り出しては世界中にバラまいているわけでしょう。しかも、自ら移動できないという弱点を持つ彼らをスマホにしてあげて、常に持って歩いてあげているし(笑)。それに、コンピュータは自然言語での創発や絵を描いたりするのも苦手なのですが、そこでもTwitterに書き込んだりYouTubeに動画をあげたりと、せっせと僕らは入力してあげている。結果として、地球上のあらゆる場所にコンピュータが置かれ、デジタルデータは刻々と増え続けているわけですよ。
    そう考えるとつくづく思うのが、コンピュータが苦手なことを克服させて、その存在を広める側にいる人間の方が、やはりコンピュータに愛されて楽しく生きられる事実だったんですね。これが、ITの原理だろう、と。こうして僕は、いつのまにか、ターミネーターで言うところの降伏した側の人間になっていたわけです。でも、そう考えていくと、我々は近い将来に人間らしさを保てなくなっていくわけですから……段々訳がわからなくなってしまった(笑)。
    ただ、コンピュータの存在が意識されないくらいに道具として使い倒してやれば、うまく共存できる気もするんですよ。それは、人間と機械がひとつになるという話ではないです。むしろ逆で、環境に埋め込まれた、それこそ酸素くらいに無機的存在になれば、完全に支配できるんじゃないかというね。なので、そんな存在になるまで使い倒してやろうと思っていますね。
    ――そこで、コンピュータの普及活動にいそしんでいるわけですね。
    落合 ただ、そうなると気になるのは、彼らの物理世界への干渉能力の低さです。彼らの影響力をもっと高めたい(笑)。人間と機械を分離するにしても、機械が機械のままじゃダメだろう、と思うわけです。
    僕の考えでは、ここで重要になるのは、おそらく世界の書き換えの時間方向の速度と空間方向の解像度なんですよ。これこそが、我々の生活の中でコンピュータがどれほど自然なものになるかを決めると思うんです。
    3Dプリンタのような機械は、一度切りの書き換えしかできないわけだから「フレームレート0」と言えますよね。実際、今の2Dディスプレイのような中途半端な速度と解像度では、どうしても機械のような印象を受けてしまいます。コンピュータをそうと意識しない未来は、いまの状況を超えた先にあって、こうした視点はこの先、差し迫ったものになるでしょう。
    ――それが研究者としての実験につながっているわけですね。
    落合 あのシャボン玉のディスプレイも、まずはコンピュータが攻めやすい箇所から攻めてみたんです。実はシャボン玉って、光の波長ほどに薄い物質だから小さな力で形を変えられるし、非常に軽いからすごい速度で動かせる。つまり、コンピュータにも与しやすい(笑)。なので、40kHzの超音波で高速の書き換えをしてみたわけです。
     
     
    ■ 昆虫をひたすら殺す日々
     
    ――アーティスト活動についてお伺いしたいです。これまで、どういう作品を作ってきたんですか。
    落合 昔は、ゴキブリを蚊帳の中に入れて、ホタルのように光らせたりしてましたね(笑)。
    ――あ、見たことあります!
     

    ほたるの価値観 - Do the Cocktorches Dream of Firebugs?https://www.youtube.com/watch?v=xU8WPIzKSyA
     
    落合 これは評判が良かったのか悪かったのか、ヤフトピの一番上に乗りました。その後、1年くらいは何を出しても、周りはゴキブリの人という認識だったくらいです(笑)。
    そもそもは、『攻殻機動隊』の、生物とコンピュータが動的に接続される、あのサイバーな世界への強い憧れがあったんですね。なので、生物系の研究室にジョインして、昆虫を大量に買ってきては、電気を流して足や頭をピクピク動かすとか、そんな実験ばかりをやってました。
    彼らはパーツを切り離してもしばらく動くので、サイボーグ化された人類の、未来のミニチュア版みたいな感じに捉えていました。出産サイクルも早いですし。昆虫を生体部品で出来た小さいロボットと見なしていたんですね。
    ――あの作品の「サイボーグ」の描写の部分に憧れがあったんですね。
    落合 ただ、それ以上は厳しかった。神経系統に電気を流せばある程度は動かせるとわかったのですが、機械を積んだまま彼らの一部をアクチュエータとして使うには、サイズや信号処理などで解決すべき点が多かったんです。そこで、この辺の興味は2009年頃を境に、一旦眠らせてます。それに、VR(ヴァーチャルリアリティ)の閉鎖的なところが気になりだして、『攻殻機動隊』にそこまで愛を注げなくなってしまったのもあります。
    しかもですね、その頃から大量の昆虫をちぎっては捨て、ちぎっては捨て、とやっていたせいで、だんだん生命の感覚がおかしくなってきたんですよ。
    ――あ、わりと普通の感覚があるんですね。安心しました(笑)。
    落合 「あれ、生き物って電子部品だったっけ?」みたいな。出身が情報系なせいで、実はそういう実験に慣れてなかったんです。それで、昆虫の死骸の山を見ながら「自分と同じことを他の人類がするのはどういうときだろう……」と考えたときに、「それはゴキブリを殺すときだけなのではないか」と、ふと思ったんです。
    あの瞬間、人間は残酷になるじゃないですか。しかも、始末すると英雄的に賞賛されるわけです。Ζガンダムでいうと、カミーユのシロッコへの特攻シーンみたいなノリですよ! 「お前は今という時代にいてはならないヤツだ! ここからいなくなれー!(バーン)」という(笑)。もう存在の全否定ですよね。
    一方で、ホタルという昆虫がいて、彼らは『火垂るの墓』という映画が毎年上映されるくらいに愛されているわけです。「なんでホタル死んでしまうの?」って、そりゃ死ぬだろうと思うのですが(笑)、そういう言葉が登場するのも愛があるからです。
    でも、どうせ暗いところならゴキブリと見た目は一緒みたいなもんなわけで、光るか光らないかくらいしか違いはない(笑)。そこで作ったのが、あの作品です。

     
    いやあ、かわいいんですよ。慣れると全然問題ない。これ。女の子なんかは、ビビるんじゃないかと思ったんですけどね。最初は引きつってましたけど、最後に持って帰った子が何人かいました。
    ――これ、蚊帳の中にいる人は、中にいるのがゴキブリだと知らないんですよね。
    落合 最初はそうですが、しばらくすると気付きます。ただ、ちょっと大きいんですよね。空中も飛ぶんですよ。もうね、ぶわっと。わさわさっと。でも光源が暗くて、光ってる場所以外はほとんど見えないんですね。
    ――このゴキブリたちはその後どうしたんですか。
    落合 いやあ、蛍光塗料が体に合わなかったみたいで、全員結構すぐに死んでしまいました。あの塗料は結構、頑張って作ったんですけどね。結局、ホタル並みの寿命になってしまって、そこも考えさせられました。
    ――不謹慎かもしれないですが、ちょっと笑ってしまいました(笑)。
    落合 俺は害虫駆除をしただけだったのだろうか……みたいな気分でしたね。まあ、この頃が僕の「昆虫の時代」です。大学生の頃は思うところが多かったですね……。
     
     
    ■ 薬を使わずに人を狂わせるには
     
    ――他には、どんな感じの作品を作っていったんですか?
    落合 さっきの虫の話もそうですが、僕が本格的にメディアアートの世界に入ったのは2009年頃です。まだApp Storeもそれほど来てなかった時代ですね。
    最近はある程度の人なら、TechCrunchもGizmodoも読んでいるし、新しいiPhoneが出たら大騒ぎするでしょう。でも、MacBookAirが出たときなんて、いまのような盛り上がり方はしていなかった。Makeの雑誌も刊行されたばかりです。
    その頃から物を作っていたのですが、だんだん現実ってなんだろうって思うようになってきて、人間の認識を変容させられないかと思うようになったんです。人間は瞑想しなくても、クスリをキメなくても、頭がおかしくなれるんじゃないかと思いだしたんです。
    ――素敵な問題意識ですね(笑)。
    そのときに作ったのが、無限の解像度の万華鏡作品です。
     

     
    『貴婦人と一角獣』という世界最大のタペストリーがあるのですが、これって実は解像度としては世界最高のディスプレイじゃないかと思ったんですよ。だって、全部刺繍で作られているわけですから、縦糸と横糸でピクセルになっていると思えば、凄いでしょう。実際、前に立つと不思議な感じがするんですよ。ぞくぞくしてきて、「うわー、解像度って面白いな」と思うんです。
    そんなときに、ちょうどこの頃に話題になったiPhone4のRetinaが、網膜で区別がつかない解像度だと言われてたんです。そこで、Retinaに万華鏡を接続してみたんです。
    どういう意図かといえば、網膜で区別できない距離にあるピクセルが無限反射すれば、世界全体の解像度と同じになるのではないか、と思ったんですね。実際に作ってみると、左右で違う映像が出てくるからもう気持ち悪いというか、気持ちいいというか。 
     

    視野闘争のための万華鏡 / Kaleidoscopes for Binocular Rivalryhttps://www.youtube.com/watch?v=ImSC4U5GAgA
     
    高解像度のよく動く映像が、両目からバラバラに脳に入力されてくると、凄いくらくらするんです。来た人が次々にラリった感じになっていて、大変に楽しかったですね。
    ――ヤバいですね。酔ったような感じなんですか?
    落合 いや。普通は「酔い」というのは、自分の認識と感覚のズレが生むんです。3D酔いが典型ですね。でも、こっちは単に脳の普段使ってないところを猛烈に使って、演算装置を焼き切られる感覚です。「なんか頭の中心が熱いぞ」みたいな。見えないチャンネルが開かれていく。
    宇野 つまり、「酔う」というのは人間の脳の感覚がおかしくなることなのだけど、こっちはそもそも入力信号それ自体ががおかしいわけだよね。
    落合 そうです。そうやって人間をハックしていて楽しかったのですが、子どもが覗き込んだまま5分くらい口をあんぐりさせていたときには、さすがに心配になりましたね(笑)。でも、倒れた人はいないし、みんな口々にうぉーとか言ってくれて嬉しかったです。
     
     
    ■ 人間の中に入ってくる信号をいかに変えるか
     
    ――この辺りから、徐々に人間の視覚機構にフォーカスしていく作品が増えていますね。作品に出てくる錯視は、自分で見つけてきたんですか。
    落合 うーん。その辺は、温故知新+αみたいなものが多いです。
    例えば、この作品で使った「大王のコマ」は、回すと表面の感じが変わるのは知られていたんですよ。でも、それが質感の変化につながるとは知られていなかったし、こういう風に大規模に敷き詰めた試み自体も、行われていませんでした。
     
    Cyclone Display: Rotation, Reflection, Flicker and Recognition combined to the Pixelshttps://www.youtube.com/watch?v=42GF6pXASA0
     
    実際、僕がこのコマを沢山買ってきて、部屋いっぱいに敷き詰めて回してみたら、なんと視界全体で質感が変わったんですよ。中心視野ではない周辺視野にも錯覚が広がっているわけで、単純に脳による錯視効果だけではないかもしれないと思いました。おそらくなのですが、人間の網膜では判定できない時間で、光線の物理レベルで何らかの信号が生成されているのではないでしょうか。つまり、目に飛び込んでくる前に変化が起きているのではないかと思うんです。
    ――さっきの話と構造は似てますね。人間の錯覚ではなくて、実は入力信号に変化が起きているのだろう、ということですね。
    落合 結果的に、一瞬だけまるで金属のような質感を見せるコマが生み出されて、非常に面白いことになりました。人間が感じる質感って、突き詰めてしまえば反射状態の変化の重ねあわせで表現できるんです。そのときに重要なのは高速で動かすことで、軽くて薄い方ほどよいだろうと思って作ったのが、先ほど紹介したシャボン玉のディスプレイです。これも専門家の間で話題になり、BBCで取り上げられました。
    ――なんだかゾエトロープみたいな時代からやり直している感じですね。
    落合 どうして映像が見えるのかから、考えなおしています。大事なのは、ひとつひとつ手を動かすことですね。
     
     
    ■「ハリポタ世代なんで、脳に電極を挿すより魔法を使いたいんですね」
     
    ――ひと通り活動歴を聞かせて頂いたので、ここから少し踏み込んだ話をさせてください。まず不思議に思ったのですが、CGのようなよくあるメディアアートには興味がないんですね。
     
    落合 僕は目の前に、自分と同じ機序で動いている物体があってほしいんですね。一旦データに変換したら、ディスプレイ上ではなんでもありなんですよ。でも、そうじゃなくて僕の身体と同じ次元にある「この世界」で、何かが起こってほしいんですよ。
    僕らの一つ上の世代って、わりとみんな『攻殻機動隊』に憧れるんです。でも、現在の僕は『ハリー・ポッター』にむしろ憧れています。僕らの世代にとってハリポタは共通体験なのですが、あれの最初の方で「ウィンガーディアム・レビオーサ」を唱えるところがあるじゃないですか。


    『ハリー・ポッターと賢者の石』(映画版は2001年公開)http://www.amazon.co.jp/dp/B000063TJA
    ――呪文学の授業の場面ですね。
    落合 あの一言で、ふわっと物体が浮かび上がる。あれが僕の憧れです。要は僕、ハリポタ世代なんで、脳に電極を挿すより魔法を使いたいんです。自分をだますのでなく、この世界に居ながらにして何かを実現する。だからハリポタ的にいえば、例えばスネイプ先生なんかが波動方程式や熱力学方程式を解説して「ほらここに定在波が出来るから物が浮くんだ。さあ君たちもやって見たまえ」とか言ってもいい。むしろ、それが僕の理想社会ですね(笑)。
    宇野 少し話してもいいかな。まさに僕の世代は『攻殻機動隊』の直撃世代なんだよね。いわゆる「脳に電極を挿す」発想にどうしても行ってしまうところがある。もちろん、ここでいう電極は、あくまでも比喩だよ(笑)。あるときにはドラッグだし、あるときには思想なのだろうけど、とにかく何かを自分の中に注入して、自分自身を変革することで世界の見方を変えようとする。当時、『完全自殺マニュアル』という本も流行ったのだけど、あれは世の中が変わらないからこそ、ドラッグなり思想なりで自分のマインドセットを変えようとした本なんだよね。エヴァも一緒だと思う。
    落合 いまで言うと「Oculus Rift」の世界観ですよね。それは、「物理世界は存在しうるか?」という問いなんだと思います。僕らのちょい上の世代の人々って、現実世界と仮想世界という区分で、現実と虚構のパラダイムで無理くり考えるんです。でも、テクノロジーは日常と不可分なほど身近なところまで落ちてきているのに、むりやりSF調に持っていくのはきついですよ。
    たとえば、『書を捨てよ、町へ出よう』の寺山修司の逆をやっているイメージですね。書物を徹底的に読み込むことで自分が凄くなっていくと思い込むような、まるで当時の文学青年のような発想で彼らはコンピュータを扱っていると思うんです。ここではないどこか、もう一つの現実を求めてるんです。
    宇野 その仮想現実的な虚構観がテクノロジーの発展に置き去りにされて、批判力を持たなくなってしまったのが現在なんだと思うよ。僕ら自身の内面を変えるよりも、僕らと現実の「関係」をテクノロジーによって書き換える方が効果があるし、面白くなっている。
     『GHOST IN THE SHELL~攻殻機動隊~』(1995年公開)http://www.amazon.co.jp/dp/B00005EDM8
    アニメで言えば、押井守が行き詰まったのは、そこに理由があると思うんだよね。例えば、彼の『パトレイバー2』は、「人は映画が代表する映像を介することでしか何かを理解することはできない。では、その映画的なものの限界とはなんだろうか」という話を延々とやっている。で、その次に彼が作った『攻殻機動隊』は、そういう映画的な社会を超えるものとしてインターネット社会に注目したのだけど、彼が考えるインターネットは結局、「脳に電極を挿す系」のイメージを引きずりすぎてしまっている。
    でも、スマートフォンの登場が象徴的だけれど、実際のインターネット社会は、脳に電極を挿して世界の見え方を変えるんじゃなくて、人間と世界との関係をテクノロジーによって書き換えていく方向に進んだわけじゃない。人間と情報、人間と空間との関係をテクノロジーが書き換えちゃったわけだから。
     
  • 欲望に目覚めたほむらは幸せになれるか――劇場版『まどマギ』石岡良治×宇野常寛対談 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.012 ☆

    2014-02-18 07:00  
    216pt

    欲望に目覚めたほむらは幸せになれるか劇場版『まどマギ』石岡良治×宇野常寛対談
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.2.18 vol.012
    http://wakusei2nd.com


    2011年の放映時に話題を巻き起こしたアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』通称『まどマギ』(MBS系)。その完全新作となる2013年の劇場版3作目について宇野常寛と石岡良治が「ネタバレ全開」で語り合います。



    ▼プロフィール石岡良治(いしおか・よしはる)[批評家]
    1972年生まれ。大妻女子大学ほかで非常勤講師。専門は表象文化論。論考に「クリスチャン・ラッセン、二つの世界のエッジで」(フイルムアート社『ラッセンとは何だったのか?』所収)など。
     
    ◎構成/新見 直 KAI-YOU 
     
    (サイゾー14年1月号所収)
     
    宇野 『魔法少女まどか☆マギカ』(以下『まどマギ』)テレビ版は良くも悪くも優等生的な作品だったところがあったと思うんですよ。モラトリアムの学園ユートピアとして描かれがちな「終わりなき日常」=同じ時間を永遠に繰り返す無限ループを、むしろ破滅に至る悪夢として逆転させ、そこからの脱出の可能性をアニメ、ゲーム、特撮など、ここ20〜30年のオタク的想像力を結集させて挑む。そして、なかなかユニークな着地点に落ちる。性的なファンタジーとしての「百合」的なものが脱出のカギになる、みたいなね。
     対して、今回の『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』(以下『叛逆』)は、ある種の「正しさ」が主題だったテレビ版とは角度を変えて、美や欲望の話になっているわけです。テレビ版のラストでまどかが犠牲になってつくられたシステムは「正しい」。しかし、その正しいシステム下で、ほむらのような人間は幸福になれるのか、という問いが浮上してくるわけですね。
    石岡 僕は最初に予告編を観た時には、テレビ版からの悪い意味での引き伸ばしだと思っていたんですよね。でも実際に作品を観てみると、むしろいい意味での引き伸ばしだったという驚きがあった。
     テレビ版の最後で、まどかが神になった世界【1】を受け入れたように見える姿よりも、自分の欲望の発露に正直になった『叛逆』でのほむらは退化しているという感想もあります。けれど僕は、テレビ版のラスト、キュゥべえをあしらうほむらの姿に、綺麗にまとめようとする物語から逸脱する想像力を感じていたので、その極端な表れとしての『叛逆』の最後は好意的に見ている。ボロ雑巾のようなキュゥべえの姿は、テレビ版の延長として捉えることもできるんですね。シャフトと新房(昭之)監督【2】の表現や虚淵(玄)脚本【3】、蒼樹うめ絵【4】というさまざまな組み合わせがうまくマッチングした結果、単独では成し得ない成功を収めたのがテレビ版でした。こんなプロジェクトを手放すはずがないわけで、そういう思惑の範囲内で打ち出せるものとしてはかなり高いレベルにいったと思うし、単純に素晴らしいと思う。
    宇野 新房監督・シャフトというタッグがこれまでの作品でやってきたのは、2種類の全く性質や文法の異なるものを組み合わせて遊ぶということ。そういった手法の集大成が『まどマギ』だとすると、蒼樹うめと劇団イヌカレー【5】という、本来は相容れないタッチを同居させることから来る豊穣なイメージ世界の展開などは、かなり成功していると言えるでしょうね。
    石岡 『叛逆』は、イヌカレーが作り出す異質な世界を当たり前のように通用させ、かつ演出的にも必然的に取り込んでる。特に、テレビシリーズではイヌカレーの世界は、魔女の結界という限定的な空間でのみ登場した異質な表現でした。けれど『叛逆』では、冒頭からいきなりイヌカレー表現の熊型ミサイルが非現実的なまでに大都会と化した見滝原市街の中空を飛んでいく。あれは女の子的なおとぎ話世界のイメージであると同時に、超高層ビルが破壊された9・11のイメージでもある。『叛逆』の前半は、夢の世界というギミックはあるにしても、テレビでは異物でしかなかったイヌカレー表現を、現実を模倣しながら堂々と物語内の日常的な風景である大都市で展開させていて、それはひとつの昇華だと言っていいと思う。
     
  • "ネット保守"ではない政治文化を生むために――「ナショナリズムの現在」イベントレポート ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.011 ☆

    2014-02-17 07:00  
    514pt

    "ネット保守"ではない政治文化を生むために
    「ナショナリズムの現在」レポート
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.2.17 vol.011
    http://wakusei2nd.com

    "〈ネトウヨ〉化する日本をどう考えるか"
    気鋭の歴史学者や哲学者、ライターたちが集まり、草の根ナショナリズムの問題を考えたイベントのレポートです。また、宇野が朝日新聞で都知事選の結果について答えて大反響を呼んだインタビューも併載しています。
    今回のほぼ日刊惑星開発委員会は、先日2/8(土)に行なわれたトークイベント「ナショナリズムの現在――〈ネトウヨ〉化する日本と東アジアの未来」のレポートをお届けします。
    2013年、新大久保のヘイトスピーチなどに代表されるように、現実にも大々的に盛り上がりを見せた現代日本の草の根ナショナリズム。こうした問題について漫画家の小林よしのりさん、哲学者の萱野稔人さん、歴史学者の與那覇潤さん、そしてフリーライターの朴順梨さんといった、「ナショナリズム」をテーマに発言されてきた論客たちは、いま、どのように考えているのでしょうか?

    ※ 今回の「ナショナリズムの現在」トークイベントの全編は、PLANETSチャンネルのアーカイブ動画でご覧になることができます。
     
    【動画前編】
    http://www.nicovideo.jp/watch/1392280042
    【動画中編】
    http://www.nicovideo.jp/watch/1392280471
    【動画後編】
    http://www.nicovideo.jp/watch/1392280487

    (後編のページに行くとMP3音源をダウンロードすることができます。移動中に議論の内容を聞きたい方はぜひご利用ください!)
    PLANETSトークイベント「ナショナリズムの現在」は2/8(土)に、田町駅近くのイベントスペース「SHIBAURA HOUSE」で行なわれました。
    この日は、都内では今年最初の大雪だったため、「お客さんが全然来なかったらどうしよう…!?」と編集部は心配していたのですが、蓋を開けてみれば50人以上の方にご来場いただくことができました。(当日ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました!)

     
    トークイベントは宇野常寛の問題提起でスタート。
    「今までリベラル系の論壇は、ネット右翼というものを『あれは一部のかわいそうな男の子が、自分を肯定するために排外主義的な言葉を言っているだけだよね』と過小評価していた。でも、今やネット右翼と言われる人たちが、安倍自民党のマーケティングの対象になるぐらいの規模で社会に存在していて、新大久保のヘイトスピーチデモなども問題になっている。彼らをバカにするだけで、その背景にある社会不安を具体的にケアしようとしなかったリベラル系知識人たちが、そのツケを払っている状況にあると思います。〈ネトウヨ〉化する一方の今の日本について、みなさんはどう考えているんですか?」
    歴史学者の與那覇潤さんは、これに対して、「90年代末の、小林よしのりさんを筆頭とした歴史教科書論争の当時は、『あの戦争をどう語るのか』という歴史観・物語論争になっていたけれど、今のネトウヨは歴史観すらなく、ただ感情的に韓国人・中国人への罵詈雑言だけになっていますよね」と指摘。
    一方で哲学者の萱野稔人さんは、「いまのネット右翼にはすごくまっとうなところがあると思うんです」と言います。曰く、「雇用でも福祉でもパイが縮小しているなかで、たとえば『なぜ在日韓国人・中国人が生活保護を不正受給していて許されるのか』という疑問が出てくるのは、経済が拡大しない社会で当然出てくる不満です。ここを見逃してしまうとナショナリズム批判ってほとんど有効性を持たないものになってしまう」。
    漫画家の小林よしのりさんは、「わしが歴史教科書論争をやっていたころは、まだ中国や韓国の反日教育が日本で一般に知られていなかったから、それを伝えることには意味があった。でも今は一般の主婦でも中韓の反日教育のことを知っている。そうなったとき、今は歴史観論争ではなく、『中国や韓国が嫌いだ』という単なる排外主義としてのナショナリズムが一般的になってしまった」と述べます。
    また、フリーライターで『韓国のホンネ』『奥さまは愛国』などの著書がある朴順梨さんは、取材のなかで、「承認に飢えた人たちばかりが愛国に走っているわけではない」という事実に行き当たったといいます。「女性にターゲットを絞って話を聞いたんですが、ほとんどの方が結婚されているかパートナーがいましたし、実際に中国での仕事の経験があった上で、草の根のナショナリズムにコミットしている人もいました」。
     
  • ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.010 ☆ 「宇野常寛のオールナイトニッポン0(zero)金曜日~2月7日放送全文書き起こし!」

    2014-02-14 19:00  
    216pt
    きょうは、ピュアでイノセントな心でお届け!!
    と皮肉たっぷりに始まりましたが、
    みなさんいかがでしたか?
    _
    前回のゲスト尾原さんの回の影響か今週は
    宇野に対するお悩みメールを沢山頂いた気がします。
    _
    引っ越し時も含め、
    モノを捨てるのが苦手だったが、
    思想を変えて自分で持たずとも
    クラウド的にモノを扱う様になった宇野。
    ダイエットの秘訣は、
    『目の前にあるものを食べない。』
    これに限る、とも言っていましたね。
    _
    他にも沢山ありがとうございました。
    時間の関係でご紹介できなかったみなさんも
    よかったら引き続きメール送ってくださいね。
    _
    <Playlist, 2/7 2014>
    M1: 歌舞伎町の女王 / 椎名林檎 
    M2: 仲間の歌 / SKE 48
    M3: Faith / miwa 
    M4: 銀河疾風サスライガー / MOTCHIN
    (↑アナーキーリクエスト from 宇宙かくれ超人さん)
    M5: きこえるかしら / 大和田りつこ
    M6: タイガーマスク二世 / 水木一郎
    M7: 特警ウインスペクター / 宮内タカユキ
    (↑ アナーキーリクエスト from Makoチャンさん)