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橘宏樹「父性のユートピア」をあきらめない(『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ第三部・最終回)
2018-03-22 07:00
『現役官僚の滞英日記』の発売を記念した、著者・橘宏樹さんエッセイ、今回で最終回となります。分厚い中間層を維持するための「グローカリゼーション」を目指すべく、生産量/人材不足を補うための施策とは? 橘さんが「父性のユートピア」をあきらめないその理由に迫ります。 今回も全編無料公開でお届けです! ※『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ、配信記事一覧はこちら。(全編無料)
【書籍情報】橘宏樹『現役官僚の滞英日記』好評発売発売中!
「平家」が宇野常寛に「父性のユートピア」を説くの巻
先日(2018年2月20日)、ありがたいことに、PLANETSに拙著のサイン会&宇野常寛編集長との対談イベントを催していただきました。
【会員視聴可能アーカイブ】橘宏樹×宇野常寛『現役官僚の滞英日記』刊行記念 特別対談 -いま、僕たちはイギリスから何を学ぶべきか-
僕のうっかりミスで事故を起こしている模様もご -
橘宏樹 「一億総経営者」時代へ(『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ第二部・後編)
2018-02-21 07:00
『現役官僚の滞英日記』の発売を記念した、著者・橘宏樹さんエッセイ、今回で第二部の完結です。現代日本を「3つのトレンド」から読み解こうとしてきた第二部、今回検討する3つ目のトレンドは「自営業の衰退」です。サラリーマン化が進行した現代、橘さんは副業や複業で経営感覚を取り戻す「一億総経営者時代」が個人の生活の質にも国家経営の視点にも寄与するのではないかと提案します。 今回も全編無料公開でお届けです! ※『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ、配信記事一覧はこちら。(全編無料)
【書籍情報】橘宏樹『現役官僚の滞英日記』好評発売発売中!
おはようございます。橘宏樹です。PLANETSから「現役官僚の滞英日記」を出版しました。2月1日の発売から、読了された方も出始めて、様々にご反響をいただいています。例えばこちらなどは、照れ臭いですが、僕の想いや心がけが知らない人にも伝わる喜びを実感しました。
留 -
橘宏樹 ポスト平成期のコンサバはどうあるべきか(『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ第二部・中編)
2018-02-08 07:00
『現役官僚の滞英日記』の発売を記念した、著者・橘宏樹さんエッセイ、今回から第二部の中編をお届けします。コンサバの族長たちの力が弱まってきているように見えるーー。格差と多様化が進んでいると言われる現代で、私たちはどう生きれば良いのか。橘さんが戦後70年の日本経済社会史を振り返り、ポスト平成のコンサバのあるべき姿について検討します。 今回も全編無料公開でお届けです! ※『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ、配信記事一覧はこちら。(全編無料)
【書籍情報】橘宏樹『現役官僚の滞英日記』好評発売発売中!
おはようございます。橘宏樹と申します。現在、「現役官僚の滞英日記」発売と「GQ(Government Curation)」の連載開始に際しまして、エッセイ・シリーズを展開しております。「良識ゆえに物を思うが、良識ゆえに物言わぬ、いや、言えぬ」と葛藤する方々に、「コンサバをハックする」という方法 -
橘宏樹 現代日本を「3つのトレンド」から読み解く(『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ第二部・前編)
2018-02-07 07:00
『現役官僚の滞英日記』の発売を記念した、著者・橘宏樹さんエッセイ、今回から第二部が始まります。第一部で立てた「コンサバ内の権力者たちはどこにいるのか」、そして「彼等の力が弱まっているように見えるのはなぜなのか」という問いに、現代日本にある「3つのトレンド」を読み解きながら答えを探っていきます。今回も全編無料公開でお届けです! ※『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ、配信記事一覧はこちら。(全編無料)
【書籍情報】橘宏樹『現役官僚の滞英日記』好評発売発売中!
この『現役官僚の滞英日記』刊行記念書き下しエッセイ三部作では、僕が何を考えてPLANETSと色々やってるかを説明する、長い自己紹介みたいなことを書いております。自分の生き様そのものを、具体的な提案としてみなさんに提出しているような趣もあります。本編からはその第二部に入ります。三部とも、本来はもっと論拠を示しながら書きたいような内容 -
橘宏樹『現役官僚の滞英日記』最終回「イギリスから何を学ぶか」【毎月第2水曜配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.689 ☆
2016-09-14 07:00550ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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橘宏樹『現役官僚の滞英日記』最終回「イギリスから何を学ぶか」
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.9.14 vol.689
http://wakusei2nd.com
今朝のメルマガは橘宏樹さんの『現役官僚の滞英日記』最終回をお届けします。今回は、約2年にわたった連載の総まとめとして、マネジメント手法、外交戦略、コミュニケーションにおける日英の違いから何を学ぶべきかについて論じます。
▼プロフィール
橘宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。
本メルマガで連載中の橘宏樹『現役官僚の滞英日記』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。
※本稿の内容(過去記事も含む)に関して、皆様からのご質問や、今後取材して欲しいことを受け付けたいと思います。こちらのフォームまたはTwitter(@ZESDA_NPO)にお寄せいただければ、できるかぎりお応えしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
前回:ブリティッシュ・ドリームの叶え方――英国版「わらしべ長者」と3つのキャピタリズム(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第10回)
おはようございます。橘です。早いもので今号が本連載の最終回となります。帰国して1か月が経ち、僕は官庁の通常業務に復帰しております。2年前と同じ建物のなかで同僚との日々を再開しておりますと、離任する前と時間が急に接続するようで、あれれ、僕はずっとここに座っていたのではないか、という思いが一瞬去来することがあります。
しかし、ロンドンやオクスフォードで出来た友人たちとは、それぞれ母国に帰ってもちょこちょことしたやり取りが続いています。SNSでは世界中の友達の近況がわかるのは素晴らしいですね。オリンピックのときはLSEでのブラジル人クラスメイトと長いことチャットをしました。また、最近は、オクスフォードのクラスメイト(アメリカ人)が日本に遊びにきて、拙宅に1週間泊まっていきました。一緒に『ガンダムUC』を毎晩一話ずつ観たり、『シン・ゴジラ』を観に行ったりしました。ほかにも日本で職を得ようと長期滞在している友人もいて、ちょくちょく遊んでいます。やはり夢ではなかったわけです。背景画像がオクスフォードから東京に差し替わっている違和感を楽しんでいます。
さて、今回は、2年間の留学の総括として、イギリスから日本が学べることをまとめてみたいと思います。
まず、昨今日本への導入が進んでいる「コーポレート・ガバナンス」というアングロ・サクソン的経営手法のルーツや必然性をイギリスで目の当たりにする中で、善し悪しについて思うところがあったので、それについて書きます。それから、個人的に日本がイギリスから学ぶべきだと思う点について、やや具体的な提案も含めて述べてみたいと思います。
▲国会議事堂と皇居。戦場に戻ってきました。
▲戻ってきました霞が関の官庁街。みんな遅くまで働いています。
■コーポレート・ガバナンスと貴族支配
まず、いわゆる「コーポレート・ガバナンス」と呼ばれるアングロ・サクソン流意思決定・経営手法の根本的な特徴は、ざっくり言ってしまうと「経営と執行の完全な分離」、そしてそれを前提にした「トップ・ダウン形式」だと思います。方向性や戦略など組織の意思決定を行い、執行過程を管理するのが「経営」、決定内容通りに実行するのが「執行」です。コーポレート・ガバナンスではこの二つをしっかり切り離すことが要諦とされています。経営者は、執行過程をしっかりウォッチして、評価したり次の行動を思案したりします。ですから、適切な経営判断を支える情報を確保するために、売上やコストなどのあらゆるデータ、各種判断や実行の根拠などを、執行者に明らかにさせます(透明性・説明責任)。説明要求と経営指示を繰り返すことによって「PDCAサイクル」を徹底的に回すわけです。株主や投資家は取締役会に対して、取締役会は執行役員以下の高級労働者に対して、ホワイトカラーはブルーカラーに対して、このような管理を行う階層構造があります。
ポイントは、経営者と執行者(労働者)では、持っているスキルも生き様もまったく違うということにあります。
経営者は、利潤追求が至上命題です。上から俯瞰し要所を突いて指示を与えます。情報収集、分析、計画立案能力が重要です。どういう数値を提出させればよいか。それらをどう読み解くか。数値の精度をどのように担保するか、アメとムチをどう設計するか、などが問われます。他方で、極端に言うと、素晴らしい何かを自分の手で創り出す実力、従業員を鼓舞したり共に汗して先導したりするリーダーシップ、職場のコミュニティの中で信頼される人間力などは要らないのです。要するに「上から目線で」「情報を見ているだけ」だけれども、「正鵠を得て」、「他人に」目的を達成「させる」能力が問われるのです。そのために、競馬場や晩餐会の機会に、閉じられたコミュニティの中で決定的な情報交換をして、前号で描写したように、「コネ」と「チエ」を「カネ」に変える算段をするところで、勝負をしています。
ブリティッシュ・ドリームの叶え方――英国版「わらしべ長者」と3つのキャピタリズム(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第10回)
そしてそれは、出自や学歴を大きく共有するなど、高い同質性を前提にした、お互いの知性やコネクションの広さ、秘密に対するモラルを信頼しあえる関係があるから成り立つのです。さらに言うと、たとえば英国議会ではオープンな空間で、大人数が同時に参加し、徹底した高度な議論が闘われており、熟議型議会政治の最高峰として世界中の羨望を集めていますが、あの場のディベートの成員もみなオックス・ブリッジ出身で、批判能力・議論能力を徹底的に鍛え上げられた高い同質性を有した者同士だからこそ可能なのです。
僕の目には、むしろ日本の国会議員の方が出自に多様性があり、英国議会に比して国民全体を箱庭的に代表しているように思います。だからこそ、持てる能力や性質が千差万別となります。そうした人々の集団内で合意形成を図るためには、密室で少人数が集まり、相手によって説明方法や言葉すら変えながら、皆に信頼される「調整役」が汗をかいて、一貫性を保つというごまかすようなスキルを駆使する「根回し」を展開することで、コミュニケーション・コストを贖(あがな)う必要がどうしても大きくなってきてしまいます。
これを「不透明だ」と(特に、根回ししてもらえなかった人々が)非難することにも理はあると思いますから、なかなか難しいところです。もちろん、こうした「根回し」は英国でも行われている思いますが、なるべくオープンな議論の場を使うことで、コミュニケーション・コストを抑えていると思います。
▲オクスフォード街中のバー。屋上テラスで夜更けまで楽しめました。
▲聖メアリー教会とラドクリフ・カメラ。オクスフォード大学を象徴する2トップです。
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ブリティッシュ・ドリームの叶え方――英国版「わらしべ長者」と3つのキャピタリズム(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第10回)【毎月第2水曜配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.663 ☆
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ブリティッシュ・ドリームの叶え方――英国版「わらしべ長者」と3つのキャピタリズム(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第10回)【毎月第2水曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.8.10 vol.663
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今朝は『現役官僚の滞英日記』をお届けします。しばしば「階級社会である」と言われるイギリスですが、現代におけるその構造はどうなっているのでしょうか。シティが持つ「カネ」、ジェントルメンズ・クラブの「コネ」、大学やシンクタンクの持つ「知識」の3要素と、ヒトの流動性の担保を両立する独特の仕組みを解説します。
▼プロフィール
橘宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。
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前回:エリートの自滅――問われるコミュニティブ・リーダーシップの真価(橘宏樹『現役官僚の滞英日記:オクスフォード編』第9回)
こんにちは。橘です。7月末に無事に最終帰国をしました。さすが東京は蒸し暑いですね。出発直前の1週間は別送便の梱包や部屋の掃除、送別会でバタバタと余裕なく過ごしました。感慨に耽る暇はなかったのですが、オクスフォードのクラスメイトやロンドンで知り合った方々とは、また近いうちに会いましょうと言って少し長めのハグをしてきました。これは別れじゃない、これからが友情のスタートなのさ、などと自分に言い聞かせながら、寂しさはなるべく振り切って、今は家族や同僚との二年ぶりの再会の喜びに目を向けています。また、例によって疲労と時差ボケにも苦しんでいます。朝早く目が覚め、昼下がりには強烈な睡魔に襲われ、夜は眠れません。身体が日本の気候や生活習慣に馴染むのには、思うより時間がかかりそうです。
さて、日本に降り立ってまず感じたのは、街を走る自転車への恐怖です。イギリスでは自転車は歩道の走行が禁止されており車道を車線通りに走ります。しかし、日本では狭い歩道を自転車が対向して走ってきます。その上イヤホンをして片手でスマフォをいじりながら自転車を漕ぐ人もいますよね。イギリスの自転車ルールに慣れた神経では、この危なっかしさに少し気疲れします。
それから、やっぱり街全体に高齢者が多いなと感じました。ロンドンでは乳母車が溢れかえっていたことに比べると非常に対照的です。社会の活力維持という点ではやや心配な点もありますけれど、東京はロンドンよりも、かなりバリアフリーが進んでいると思いますし、アクティブな高齢者が楽にあちこち出かけられることはよいことだと思います。
このほかにも帰国して気がつく僕の内面の変化、日本の良さをあらためて感じた点、違和感を抱いたポイントなどは多々ありますが、それらについては、次回最終号にまとめてみたいと思います。今回は、ロンドンでの1年、オクスフォードでの1年を通じて得た学びを総括したいと思います。
僕は、イギリスに来たばかりの連載第1回において、
《僕は、「この人たちは、少しずるい気もするけど、戦略家、リアリストとして『センス』がいいのではないか」という印象を受けました。しかも、100年くらい全世界の制海権を握っていたということは、一時期に突出したリーダーがいたというだけではなくて、伝統的、集団的、組織的な形でそうしたセンスを共有していたのではないか》
と書いたように、イギリスの指導層の強さやうまさの秘密を学ぶことが大きなテーマでした。このうち「リアリストとしてのセンス」に関しては、ロンドンでの1年を終えた昨年の7月頃に「無戦略を可能にする5つの戦術」にまとめたとおりの結論を得ました。
「無戦略」を可能にする5つの「戦術」~イギリスの強さの正体~(橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第11回) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.381 ☆
今回は、もうひとつの問題関心であった「伝統的、集団的、組織的」な「センスの共有方法」について、僕の観察結果を書いてみたいと思います。
前号に掲載した写真でおわかりのように、イギリスにはロイヤル・アスコットのような社交の場でシルクハットに燕尾服で特別席に居並ぶ人々に象徴される、「上流階級」が明確に存在しています。
エリートの自滅――問われるコミュニティブ・リーダーシップの真価(橘宏樹『現役官僚の滞英日記:オクスフォード編』第9回)【毎月第1木曜日配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.637 ☆
彼等のような人々は日本社会ではなかなか目の当たりにしにくい存在なのですが、イギリスの上流階層は、ただ金持ちであるということ以上に、「特権」を持っています。特権とは、誰々しかどこそこに入れない、といった話が多く、結局のところ、「カネ・コネ・知識」を莫大に持っている人々との交流権を意味します。そして、巧妙にフィルターをかけて、既存メンバーにメリットを出せそうな人にはこの交流権を与えて取り込んでいくことで、閉鎖性を保ちながらもコミュニティの魅力をアップデートしているのです。
■「カネ・コネ・知識」――連動する3つのキャピタリズム
僕は、この2年間イギリスのエリート層の世界を観察して、この「カネ・コネ・知識」の3つの価値を中心とした3つのキャピタリズム(①フィナンシャル・キャピタリズム、②ソーシャル・キャピタリズム、③インテレクチュアル・キャピタリズム)が存在していると思うに至りました。このうち2つ(ソーシャル・キャピタリズム、インテレクチュアル・キャピタリズム)の存在については、尾原和啓さんの「配電盤モデル」をお借りしながら連載第6回で少し詳しく描写しました。各キャピタリズムはそれぞれ、クローズドの対人関係を基調としたクオリティ・コントロールを伴う「英国型プラットフォーム」とも呼べるスタイルの下で、知なら知を、富なら富を、絶えず集めては生み出しています。
「英国型プラットフォーム」と2つのキャピタリズム――「プロデュース理論」で比較する日英のイノベーション環境(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第6回)【毎月第1木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.558 ☆
これら3つのプラットフォームそれぞれが価値を自己増殖しているとともに、互いに連動し循環しています。一枚で表現するとすれば下図(図1)のとおりです。
(図1)
なかでも、投資や寄付を通じて「カネ」を「コネと知識」に変換してみんなで積み上げておき(図2)、適宜「コネと知識」を「カネ」に変えて富を増やす(図3)という「カネ」⇔「コネ・知識」間のダイナミックな潮流がやはり基調となっています。この価値変換において決定的な役割を果たすのが、サロンなどの閉じられた社交場であり、そこで出会う「カタリスト」の機転です。ですから、「特権」とは、すなわち、自分の持っているキャピタルを、自分が欲しい他のキャピタルに変えてくれる「カタリスト」に出会えるサロンへの入場資格なのです。そして、キャピタルとは他の2キャピタルと機転の積。つまり、「カネ」とは「コネ」と「知識」と「機転」の積であり、「コネ」とは「カネ」と「知識」と「機転」の積であり、「知識」とは、「カネ」と「コネ」と「機転」の積である、ということなのです。
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エリートの自滅――問われるコミュニティブ・リーダーシップの真価(橘宏樹『現役官僚の滞英日記:オクスフォード編』第9回)【毎月第1木曜日配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.637 ☆
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エリートの自滅――問われるコミュニティブ・リーダーシップの真価(橘宏樹『現役官僚の滞英日記:オクスフォード編』第9回)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.7.7 vol.637
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今朝のメルマガは橘宏樹さんの連載『現役官僚の滞英日記』をお届けします。今回のEU離脱国民投票で民意をコントロールしきれなくなっていることが明らかになった英国のエリートたち。これまで社会をリードしてきた彼らが今後どのような動きを見せていくのかを占います。
▼プロフィール
橘宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。
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前回:EU離脱「決定」の報道は間違い!? ここからが英国政治の真骨頂(橘宏樹『現役官僚の滞英日記』特別号外)
こんにちは。オクスフォードの橘です。最近は、試験の打ち上げもかねて、同級生と卒業旅行に行ってきました。地中海のコルシカ島(フランス領)で泳いできました。イギリスの空とはまったく異なり、地中海は焼け付くような陽射しでした。まだシーズン前で人も少なく、適当に鄙(ひな)びた遠浅のビーチで泳いだり昼寝したりと、みんなで遊び倒してきました。小学生のように日焼けして、現在、肌がずる剥けになっています。忘れられない楽しい思い出ができました。
そして、7月25日には遂に最終帰国することになります。帰国後は派遣元の役所の業務に戻ります。修士論文の締切は9月1日ですけれど、帰国後は浦島太郎状態でバタつくでしょうから、それまでにあらかた書いてしまわねばなりません。お世話になった方々への挨拶回りも始めました。最近ロンドンに滞在した際、約2年前に最初に暮らしていた場所(クイーンズウェイ・ベイズウォーター周辺、ハイドパークのそば)に宿泊しました。矛盾するようなことを言うようですが、懐かしい街を歩いていると、これから何を得られるだろうか、不安だったり期待に胸を膨らませていたりしていた連載第1回の頃の気持ちを、まざまざと思い出すような気もする一方で、今はまったく忘れてしまった別の人物になっているような感もあります。
(参考)橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第1回:なぜイギリスなのか
いずれにせよ、僕はこの2年間で、当初の想像を遥かに超える成果を得られたと思います。少なくとも、時間は一秒たりとも無駄にしなかったと思います。毎日キャパ・オーバーするまで何かをしていました。学識や経験だけではなく、特にロンドンで築き上げた人間関係は「拠点」とすら言えるものが得られたと思いますから、帰国後も継続して(むしろ帰国後こそ)官業やNPO活動との相乗効果を発揮していくと思います。
帰国後の挨拶では「留学での学びや経験を今後の業務に活かして~」などの口上が定番でしょうが、僕は「イギリスの人脈や情報源を今後の業務に活かして~」と述べることになるでしょうし、事実として必ずそうなると思います。ぜひPLANETSにも還元していきたいと思います。
さて、イギリスのEU離脱の国民投票結果を受けて号外を緊急寄稿させていただいた後も、激動は続いています。日本の皆様のもとにも、毎日のように最新情報が断片的に届いて「どうなってしまうんだろう」と思われているのではないかと思います。
国民投票のやり直しを求める運動が起きたり、労働党はイマイチ熱心に残留運動をしなかったコービン党首の責任を追及したり、中国における香港のようにロンドンだけ「独立」してEUに加盟する一国二制度案が出されたり、スコットランドや北アイルランドも独立してEUに残留(独立的に再加盟)しようとしたりと、てんてこ舞いです。EU側も、イギリスに妥協的な姿勢を示して他のメンバー国が同様に離脱されては困るので、独仏伊は連携してイギリスに対して強硬な姿勢を取っています。
こうしてみると、改めて「限りなく離脱に近い残留」というのがイギリスの真のコンセンサスだったように思われます。そもそもこれまでも、独立通貨しかり、他のEU諸国に比べて、かなり特別なポジションを確保してきていたと思います。EUから見れば「ホント、どこまで自分勝手なの?」と苛立ちが抑えきれないところでしょう(目立った失言をしないメルケル独首相ってオトナだなあって思います)。
今回の失敗の評価をめぐり、衆愚的・感情的ポピュリズムの脅威と見たり、英国エリートの質の低下を指摘したりと、批判の観点も百出しています。
▲Wolfson College の”ball”と呼ばれるお祭り(もとは舞踏会)です。みなドレスアップして参加します。会費は食事なしでも約12000円程度かかります。移動式メリーゴーランドが運び込まれ一晩中飲んだり踊ったりの宴が続きます。50周年記念ということもあり盛大でした。Brexitで巷が揺れているなか、ここは別世界なのだなと感じられました…。
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EU離脱「決定」の報道は間違い!? ここからが英国政治の真骨頂(橘宏樹『現役官僚の滞英日記』特別号外)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.628 ☆
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EU離脱「決定」の報道は間違い!?ここからが英国政治の真骨頂(橘宏樹『現役官僚の滞英日記』特別号外)
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2016.6.28 vol.628
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6月23日、イギリスでEU離脱を問う国民投票が行われ離脱支持が多数となり、内外のメディアで議論が百出しています。そこで今回のメルマガでは『現役官僚の滞英日記』の橘宏樹さんに緊急寄稿をお願いし、離脱決定後のイギリス政治の動きについて展望していただきました。
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こんにちは。イギリスの橘です。多くの方もご存知の通り、この6月23日、英国のEU離脱をめぐる国民投票が実施され、「離脱」という結果が出ました。直後のオクスフォード、ロンドンの雰囲気は、「最後の最後では合理的な判断をすると信じていたのに、英国の理性のレベルが下がってしまった」とでもいうような失望感でしょんぼりしているようでした。知り合いの会社ではショックで休んだ人もいたとか。キャメロン首相も辞意を表明しました。他の地域のことはよくわかりません。もしかしたらお祭り騒ぎなのかもしれません。離脱派の勝因は一言で言うと、地方・高齢・低所得・低学歴層が多過ぎる移民に対して抱く不満・不安が本当に強かった、ということだと思われます。残留派のキャンペーンは、この層を切り崩せなかったどころかむしろ反感を買い、浮動票をも離脱に傾けさせてしまったのではないかと思われます。特に都市部の残留派票の伸びがかなり低調でした(ロンドンでも残留への投票は60%に過ぎませんでした)。
もしも、移民の家族が病院に長い行列をつくっているのが目につかず、ロンドンはじめ都市の住宅不足などの問題がもっと改善されていたら、基本的に彼らは外国人に寛容ですから、都市部の離脱支持がもっと低かった可能性が高いと思います。
現在、テレビでもほぼ一日中討論番組が組まれ、時々刻々とニュースが飛び込んでいる状況です。日本でも特に円高とアベノミクスへの悪影響と参議院選を中心に、すでに各種議論が百家争鳴の状況だと思います。
そうしたなかで見落とされがちな重要なポイントを、取り急ぎ4点に絞って緊急寄稿をさせていただきたいと思います。なにぶん、各種資料検分の時間が取れていない、現地肌感覚重視である点はご容赦ください。
▲黄昏に沈む国会議事堂
■感情的な衆愚なのか、民主主義の危機なのか
この残留支持層の「基盤」(離脱支持52%のうち、感覚的には20%程度)は確かに、UKIP(英国独立党)や保守党右派を支持してきたような、いわゆる右翼的で排外主義的な層かもしれません。しかし、各種世論調査の経緯を見るに、勝敗を分けた残りの数十%程度は、どちらかというとリベラルな人も含む浮動票で、ぎりぎりまで悩んで投じられた判断なのではないかと感じています。
確かに、報道されるかぎり、離脱派のリーダーたちの論調は感情的で主権にこだわった内容だった印象が強いです。しかし最後の最後で離脱に投じられた浮動票は、むしろ経済生活上の不満を主な要因にしていたように思われます。
英国内で「エリート(残留派)と大衆(離脱派)の間の断絶が広がっている」という指摘をよく見かけますが、むしろ離脱派の中でも、リーダーと大衆の判断基準は異なっていたのではないかと思うわけです。「保守党キャメロン政権は、移民の制限、住宅増築等の問題を解決すると言ってきた。なのに、全然生活は改善しない。もう我慢できない」という意識が強かったのではないでしょうか。
そして、終盤になり残留派が焦って、社会的な地位の高い人々の残留支持表明を積み上げれば積み上げるほど、「そりゃ、あんたら金持ちエリートは仕事も住む場所もあるんでしょうよ!」と、むしろ反感を強めたように思います。ゆえに、イギリス経済がEUの恩恵を受けて成り立っていることは重々承知しながらも、最後の最後で自分達の生活に実害が出ていることを重く見て欲しいという悲鳴、エスタブリッシュはそれをわかってくれてないようだから不満の声をしっかり上げておいたほうが良い、と考えたのではないかと思われるわけです。
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Brexit(英国EU離脱)国民投票2016――読めない行方の読み解き方(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第8回)【毎月第1木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.609 ☆
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Brexit(英国EU離脱)国民投票2016――読めない行方の読み解き方(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第8回)【毎月第1木曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.6.2 vol.609
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今朝のメルマガは橘宏樹さんの連載『現役官僚の滞英日記』をお届けします。6/23にイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票が行われますが、与党保守党内部ですら意見の一致が見られず、大変錯綜した状況になっています。イギリス国内を揺るがす最大の政治的論点を読み解くためのポイントを、橘さんが解説します。
▼プロフィール
橘宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。
本メルマガで連載中の橘宏樹『現役官僚の滞英日記』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。
前回:テレビから読み解くイギリスのマスカルチャー(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第7回)
※本稿の内容(過去記事も含む)に関して、皆様からのご質問や、今後取材して欲しいことを受け付けたいと思います。こちらのフォームまたはTwitter(@ZESDA_NPO)にお寄せいただければ、できるかぎりお応えしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
こんにちは。オクスフォードの橘です。東京はもう暑い日が続いていると聞いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。熊本はじめ被災地の皆様はご苦労が続いておられるかと存じます。心よりお見舞いを申し上げます。オクスフォードもようやく春……を飛び越してもはや初夏という感じです。半袖でも汗ばむ陽射しの日も多くなり、BBQやパンティング(ボート遊び)をする人々も増えてきました。夜も9時くらいまで太陽が沈みません。と同時に、学校は徐々に試験期間に突入してきています。ほとんどの学部学科の学生は、その名も”examination school”という建物で試験を受けます。そして、試験の際には白い蝶ネクタイをして、アカデミックガウンを羽織るという正装で望まないといけません。おまけに胸にはカーネーションを刺します。僕の登録科目の試験は6月中旬くらいにあります。そして、7月末には帰国するので、それまでには修士論文(提出締切は本来9月1日なのですが)もあらかた目処をつけておかなくてはなりません。修士論文では、こちらでも何度か言及しているイノベーションにおける「カタリスト」を中心にした「プロデュース理論」のことを書くことにしました。骨子は指導教官からも、存外気に入って貰えているようなので、頑張ってみたいと思います。
視野は「何のために」広げるのか? ――日本に求められる 「E字型」人材とその育成について (橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第12回)
「英国型プラットフォーム」と2つのキャピタリズム――「プロデュース理論」で比較する日英のイノベーション環境(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第6回)
長く鬱々とした冬、例年より肌寒い春をようやく抜けて、これからようやくイギリスは最高に美しい季節に入るというところで、試験……なんとも憂鬱この上ないです。
▲以下、春の到来を祝う伝統的な祭「メイ・デー」の様子です。少年聖歌隊の歌を皮切りに、早朝から丸一日中、民族舞踊を街中で踊り続けます。写真は朝6〜7時頃。
▲喜びが弾けています。
▲早朝にもかかわらず、通りが大勢の人で溢れていました。この日のために海外から来る人も多いそうです。
■「英国EU離脱問題」を読み解く難しさ
さて、この2年間のイギリス留学の間に、僕は非常に貴重な大政治イベントに立ち会う幸運に恵まれてきました。一昨年9月にはスコットランド独立の是非を問う住民投票が行われましたし、昨年5月には下院総選挙、そして来る6月23日には英国のEU離脱・残留を問う国民投票が行われます。
基本的にヨーロッパでは国民投票がよく行われます。スイスで今月、ベーシックインカム導入の是非を問う国民投票を行われることも、日本のみなさまのお耳に入っているのではないかと思います。
(参考)スイス、6月に国民投票 「最低生活保障(ベーシックインカム)」導入巡り (日本経済新聞2016年4月27日)
先日、オクスフォードの同級生たち(アメリカ人、イタリア人、南アフリカ人、イギリス人)と今度の英国EU離脱国民投票について議論していた際に、「日本では国民投票やったことないよ。今後あるとしても憲法改正のための国民投票しか決められてないよ」と言うと、「ホントか?」「20世紀にはあったでしょ?」といった矢継ぎ早の質問攻めがあり、その後、しばらくポカンとされました(これは「おお……日本、信じられない……」という時のお決まりのパターンです)。
日本のみなさまも、イギリスがEUから離脱するか(BritishがEUからexit離脱する、から“Brexit” ブレグジットなどと略称されます)を問う国民投票があるらしい、というニュースはきっとお聞き及びと思います。まとまった解説情報も、発表された時期や論者の肩書き、視点等に留意する必要はありつつも、ネットで容易に手に入る状況です。
(参考)英国EU離脱は、もう止められない?みずほ総合研究所の吉田健一郎氏に聞く(2016年2月29日)
(参考)英国がEUを離脱して「リトル・イングランド」になる確率は35~40% 米情報会社IHSが予測 木村正人氏(在英国際ジャーナリスト、2016年4月7日)
(参考)イギリス離脱はEU統合にメリット:大陸の統合主義者の見方 田中素香氏(東北大学名誉教授、中央大学経済研究所客員研究員、2016年5月2日)
本稿を執筆している5月下旬現在の英国内では「離脱か残留か」をめぐるキャンペーン合戦がどんどん苛烈になってきていると感じています。世論調査の最新結果も連日報道されています。6月23日の投票日に向けて、今後ますます関連情報が溢れていくでしょう。その一方で、それぞれの議論には立場や狙いがあったり、紙幅に制約もあったりして、逆に中立的で俯瞰的な視座は得にくい状況に、どんどんなっていくようにも思います。英国・欧州の論考は書き手の感情移入が激しく、「立場」を主張する論考が多いため、調べれば調べるほど、客観的で中立的な分析を見つけるのは困難だと感じます。
昨年5月の総選挙を本連載で取り上げた際は、意外と知られていないけれども重要な「ゲームの特徴」を中心に解説させていただきました。今回は、国家の命運を左右する「ゲーム」が苛烈化するキャンペーンとともにクライマックスへとなだれ込んでいくこれからの1ヶ月、日本のみなさまの耳に入っていくであろう断片的な報道を「正しく」解釈する上で、土台を提供するような解説を目指してみたいと思います。
具体的には、残留派・離脱派それぞれの主張理由、主要な登場人物や各国の利害関係、これまでの経緯について、基礎的事項を整理したり、また、ロンドンやオクスフォードにおける(イギリス人含む)有識者や同級生らとの懇談から得た肌感覚をお届けできればと思います。
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テレビから読み解くイギリスのマスカルチャー(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第7回)【毎月第1木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.582 ☆
2016-05-05 07:00550ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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テレビから読み解くイギリスのマスカルチャー(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第7回)【毎月第1木曜配信】
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2016.5.5 vol.582
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今朝は橘宏樹さんの連載『現役官僚の滞英日記』をお届けします。今回はイギリスのテレビ番組が社会のなかで果たしている機能や、そこから見えてくるイギリス人たちの大衆感覚について考えます。
▼プロフィール
橘宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。
本メルマガで連載中の橘宏樹『現役官僚の滞英日記』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。
前回:「英国型プラットフォーム」と2つのキャピタリズム――「プロデュース理論」で比較する日英のイノベーション環境(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第6回)
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おはようございます。オクスフォードの橘です。このたびの熊本の地震では、多くの方々がお亡くなりになり、避難生活を余儀なくされておりますこと、心から残念に存じます。私からも些少ではございますが募金をさせていただきました。オクスフォードでも多くの人々から「クマモトは大丈夫か!?」とよく声をかけられる日々です。一日も早い復興を心よりお祈りしております。
こちらは春休みが終わり3学期が始まりました。6月上旬の試験も視野に入ってきます。そして、7月下旬には最終帰国することになります。もう5月というのに気温はいまだ上がらず、今夜に至っては雪まで降っています。一方で嬉しいお知らせもあります。本連載第4回でインタビューを行ったデザインエンジニアの吉本英樹君が作品を展示したアイシン精機株式会社のブースが、世界最大の家具見本市「ミラノサローネ」において、1000を超える出展ブースのベスト6に入賞する快挙を成し遂げました。
ロンドンの日本人たち――「世界」に手が届く場所で(橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第4回)
吉本君の才能と努力、また彼を支える大勢の人々の想いや尽力があってこその成果だと思います。彼の挑戦の模様は、テレビ東京系列「ワールドビジネスサテライト」で特集され、4月19日に放映されましたので、ご覧になった方もいらっしゃるかも知れません。
▲「Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED」を受賞
(アイシングループWEBサイト)左端が吉本英樹氏
“tangent”(吉本英樹氏事務所)
僕もまた、前回の連載で述べたような「カタリスト」として“introduce”によって貢献したんだ! と自己主張するわけではないのですが……実は、今回の番組企画は僕の方で吉本君をテレビ東京関係者に紹介したことに端を発して実現しました。彼を取材し番組にしてくれたテレビ東京に大変感謝しています。WBSでの放映を通じて喜びを日本の皆様とも分かち合えたら嬉しいです。
■イギリスのテレビ文化は「コモンウェルスの共通体験」
さて、今回はイギリスのテレビ番組のことを書いてみたいと思います。昨年の9月にオクスフォードに引越してきてからテレビを買いました。部屋でご飯を食べたり、作業したりしながら見ています。英語の字幕表示をオンにすると聞き取れない部分もわかりますし、良い勉強になります。もちろん学校の課題にも追われている身分ですので、本当は「テレビから読み解くイギリス」などと銘打てるほどテレビは観られていないですし、BBCのように日本でも視聴可能なチャンネルも多いと思います。しかし個別のチャンネル云々というよりも、チャンネルをザッピングしていて受ける印象といいますか、イギリスにおけるメディア・パッケージとしてのテレビ、コンテンツの全体的な雰囲気はレポートする価値があるような気がします。
なぜなら、これらのチャンネルの多くは、53カ国22億人からなるコモンウェルス(旧英領植民地)でも共有されているコンテンツだからです。BBC Worldなどは全世界に向けて放映されています。僕はこれまで30カ国くらいを訪れたことがありますが、アフリカから太平洋島嶼(とうしょ)部まで、少なくともコモンウェルス各国の番組構成は実際かなり似ていた記憶があります。
言い換えると、ロンドンでの出稼ぎ労働者や留学生が母国の家族と「今週の◯◯見た?」と話題を共有することができ、例えばインド人と南アフリカ人など地域文化がかなり異なっていても、同じコモンウェルスなので「何歳くらいにどういう番組を見ていたか」という体験が共通していたりして、初対面でも文脈が共有可能なんです。メディア・パッケージそれ自体が、ソフト・インフラとして機能しているわけです。
そこで今回は、日本のテレビ事情との違いなど気づいたことや、特におもしろいなと思ったテレビ番組について書いてみたいなと思います。
▲イギリスの東南端、ドーバー海峡に面したホワイト・クリフ。晴れた日には海の向こうにフランスが見えるそうです。
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