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平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、2022年3月から放送開始の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』も手がける脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と遊び』。約3年ぶりの連載となる今回は、頭のエンジンを切らない思考法からアクスタ誕生の裏話まで、近況と創作の心得をまとめてお届けします。

脚本家・井上敏樹エッセイ『男と遊び』第70回
男 と 遊 び  再び     井上敏樹 

 随分と間が空いてしまった。この男と遊びを中断してもう4年になる。それにはちゃんとした理由があってある夜、私がぼんやりしていると東映のRプロデューサーからラインが入った。『来年の戦隊やりませんか?』と。『よかろう』と私。Rとはもう40年近い付き合いになるが、彼との仕事は大体こんな風に始まる。

 戦隊をやれば丸一年拘束される事になる。プロットやらシナリオやら毎週のように締切りが来る。要するにクソ忙しくなるのだ。

 エッセイは休まざるをえない。ちょっと待て、お前が休んだのは4年だ。変ではないかと言われそうだが、それにもちゃんとした理由がある。

 
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橘宏樹さんが、「中の人」ならではの視点で日米の行政・社会構造を比較分析していく連載「現役官僚のニューヨーク駐在日記」。

ニューヨークの社交場では、どのような振る舞いが求められるのでしょうか好機をつかむための社交戦術を紹介します。

橘宏樹 現役官僚のニューヨーク駐在日記
第16回 連続と不連続の間|橘宏樹

 こんにちは。橘宏樹です。本稿は総括編3部作の第2部です。前号では、日系人社会内部の連係の重要性と改善点の話をしました。特に駐在組日本人の社交のあり方について長々と綴ってしまいました。NYは世界最高の社交場のひとつです。ひょんな出会い、ほんの小さな会話が、本当にビッグ・ビジネスへと繋がります。展開のスピードやスケール感にはシビれるものがあります。日本人もこの場の力を活かさない手はありません。そのためにはどうすればいいか。今号では、社交の話をもう少し掘り下げつつ、何でも繋がっている、一見繋がってなさそうなものでも、繋げて考えましょう、ていうか繋げましょう、NYでは特にそれが問われます、というお話をしたいと思います。

1 攻めと守りの社交術──日系人社会の生存戦略

攻めの社交──気前よく「貸し」を仕掛ける

 NYは、世界屈指の社交の舞台です。偶然の出会いや何気ない会話が、驚くほどのスピードとスケールで大きなビジネスに結びつくことがあります。この場の力を活かすためには、受け身で待つのではなく、自ら積極的に仕掛けていく社交が欠かせません。相手との距離を一気に縮め、「また会いたい」と思わせるための戦術が必要です。

 前号では、初対面の相手と仲間になるための「三段構えの社交戦術」──相手のニーズを瞬時に読み取り、それに応えられる姿を示し、さらに気前よく提供する──について述べました。当たり前のように聞こえますが、重要なのは、それを人々がどれだけ多くの初対面相手に対して、その場その場で的確かつ瞬時に実行できるかです。立食パーティーのように一人と話せる時間が限られる場では、この瞬発力が勝敗を分けます。そして、その行動を積み重ねていけば、やがて巨大な「貸し」の資産、つまり社会関係資本(Social Capital)が築かれます。これはビジネスにおいて「どれくらいの人に、どれだけ頼めるか」という債権総量そのものであり、その構築には、日頃の情報収集、気前よく提供できる手札の充実、相手と向き合うときに貢献できるポイントを探す姿勢、そして総合力としての機転が欠かせません。

 もっとも、「損得を考えず自然体で付き合うことこそ人間関係の本質だ」と考える方もいるでしょう。確かに、自然体のまま、初対面から人種・宗教・貧富を問わず相手への貢献を第一にできる人間であれば、それで十分です。しかし、自然体ではそうすることが難しい人々──特にNYで失点が多い駐在組──にとっては、意識的に打算を組み込むことが有効になります。要は、目の前の相手の幸福を左右する要素に無頓着なままでは仲間は増えない、ということです。

 

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デザイナー/ライター/小説家の池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』今回は「変身サイボーグ」の後継シリーズミクロマンを分析します。サイズが12インチから3.75インチへと小型化したことで、〈少年=遊び手〉と〈玩具〉の関係がどう変わったのかを考えます。
 

池田明季哉 “kakkoii”の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝

勇者シリーズから次のステップへ進むために

 本連載では、20世紀末においておもちゃが追求してきた理想の成熟のイメージについて考えてきた。勇者シリーズの分析においては特に『黄金勇者ゴルドラン』に注目し、所有と支配による男性的な成熟を退け、少年のまま自分の外側に存在するロボットと協調しながら「冒険」を続けていくビジョンに結実したと分析した。そしてこれは、遊び手という主体が玩具で遊び続けるという構造とも結びついていたのだった。そしてこの想像力をトランスフォーマーから勇者シリーズへの流れがもたらしたもっとも大きな可能性として評価した。ただその後の「末期勇者」の展開を考えると、いささか不安な要素もまだ残っている。

 どういうことか。『黄金勇者ゴルドラン』の後に続いた『勇者指令ダグオン』は「特撮をモチーフにした勇者シリーズ」であり、『勇者王ガオガイガー』は「勇者シリーズをモチーフにしたアニメーション作品」だと本連載では整理した。それはある意味で、少年のまま特撮やアニメーションといったフィクションの世界に閉じていく方向であると考えられなくもない。所有と支配を捨て、少年のままロボットと共に想像の世界で「冒険」の旅を続けていくことは、(比喩的な意味で)「玩具と一緒にテレビのある子供部屋にこもる」想像力と結びついてしまいはしないだろうか? 玩具に導かれながら成熟していくイメージは、社会に接続されなくてはならないだろう。それは具体的にはどのようなものとして考えていけばよいのだろうか? この構造を踏まえた上で、ある玩具シリーズを改めて分析してみたい。その玩具シリーズとは「ミクロマン」だ。

 
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