• このエントリーをはてなブックマークに追加

タグ “猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉” を含む記事 35件

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第5回「アートには正しさがないから、人類を新しい方向に“導ける”」【毎月第1火曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.509 ☆

チャンネル会員の皆様へお知らせ PLANETSチャンネルを快適にお使いいただくための情報を、下記ページにて公開しています。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar848098 (1)メルマガを写真付きのレイアウトで読む方法について (2)Gmail使用者の方へ、メルマガが届かない場合の対処法 (3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について を解説していますので、新たに入会された方はぜひご覧ください。 猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第5回「アートには正しさがないから、人類を新しい方向に“導ける”」【毎月第1火曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆ 2016.2.2 vol.509 http://wakusei2nd.com 今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』の第5回です。 浮世絵の登場以前、西洋絵画には現在の「雨」のようなビジュアルはなかった――そんな話題から始まった対話は、アートが人間の認識をいかに変えるか、そして猪子寿之の「超主観空間」は人間に何をもたらすのか、という議論に発展していきました。 ▼プロフィール 猪子寿之(いのこ・としゆき) 1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート・サイエンス・テクノロジー・クリエイティビティの境界を曖昧にしながら活動している。 47万人が訪れた「チームラボ踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、大河ドラマ「花燃ゆ」のオープニング映像、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet 20th Anniversary」など。2016年はカリフォルニア「PACE」で大規模な展覧会を予定。 http://www.team-lab.net ◎構成:稲葉ほたて 本メルマガで連載中の『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』配信記事一覧はこちらのリンクから。 前回:猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第4回「モナ・リザの前が混んでて嫌なのは、絵画がインタラクティブじゃないから」 ■ かつて雨は「雨」らしく描けていなかった ▲『パリ通り、雨』ギュスターブ・カイユボット(出典) 猪子 これは1877年の『パリ通り、雨』というタイトルの絵画なんだけど、傘は差しているし、濡れているのに、雨が描かれてないんだよね。それは当時の人にとって、少なくとも現在のようには「雨」が見えていなかったからじゃないかと思うんだよ。 宇野 それは、雨粒がいま我々がイメージするように降っているとは認識できなかったということ? 猪子 ゴッホなんかも浮世絵の雨の絵を模写しているんだよ。面白いよね。今や3歳くらいの子供でも雨なんてスラスラ描けるのにね。でさ、きっとゴッホにとってさえも、浮世絵の雨は衝撃的だったんじゃないかな。 ▲『大はしあたけの夕立』歌川広重(出典) ▲『雨中の橋』フィンセント・ファン・ゴッホ(出典) でも、本当はこの雨の見え方だって、ひとつの物の見え方でしかない。だって、落ちる雨粒は速いし多すぎて、肉眼でそんなにしっかり追えるはずないからね。世界にはきっと腐るほどたくさん正しい見え方があって、そのひとつが画家によって提示されたにすぎないんだけど、なぜか人々がそれを真似し始めたら、この雨の見え方が定着してしまったんだと思う。 宇野 奥行きにおける見え方と遠近法の関係もそうだろうね。 猪子 これって脳が物理現象を補足して認識しているということだと思うんだけど、実はサイエンスにも同じことが言えると思うの。例えば、スーパーボールをここで投げてポンポンと飛んでいるとき、実はこれも速すぎて見えないはずなんだけど、物理の原理をなんとなく知っているから、脳がそれを補足してるはずなんだよ。 とすれば、アーティストもサイエンスも同じくらい、人間にとって世界をより見えるようにした側面があると思う。 宇野 そうだね。 猪子 ただ、アートとサイエンスには決定的に違うところがあると思う。それはサイエンスはある種の正しさを証明できるのだけど、アートは違う。 アートって例えば絵画で言うと、四次元みたいな複雑な情報を、二次元に変換する行為だと思うの。でも、四次元情報を二次元に変換する方法は無限にあって、その全部が正しいわけじゃない。そうなると、その見解を広めるときの説得の仕方が、正しさというよりは「雨をこう認識すると脳が気持ちよかった」みたいなことでぶわーっと広がる気がするんだよ。 宇野 逆に「醜い」と感じたりすることもあると思うね。 猪子 そう考えると、浮世絵の雨はいわば人類が3歳の子供でも描くくらいに「良い!」と思った表現なんだよね。逆にピカソみたいな二次元の表現は、実はピカソ以外の人はあんまり描かないでしょ。つまり、ああいう二次元化を人類は受け入れなかったんじゃないかな。 宇野 でも逆に言うと、アートは可能性の問題を扱っているとも言えるよね。 猪子 そうそう。サイエンスは正しさが証明できるものだけど、アートには絶対的な正しさがない。ただ、どうにも上手く言葉にはできないような、ある種の脳の気持ちよさみたいなものによる「人類への説得力」の度合いだけがある。 とすれば、それは複雑なものを、ものすごく偏った見せ方をさせているわけで、あるアートによる提示を人類が受け入れた瞬間、人類の見え方は極めて偏るんだと思う。 宇野 偏らせることが「できる」とも言えるよね。サイエンスは「正しさ」があるから、偏らせることはできない。 猪子 そう、アートには絶対的な真理がないゆえに、それが可能なんだと思う。 たぶん、雨を現在のように我々が認識するようになったとき、僕たちはハンパなく世界をすごく偏らせてしまい、そして失ったんだと思うの。そういうふうにアートは、人類のある種の方向性を導けるところがあって、僕はそういう部分がなんか好きなんだよね。 宇野 これはジャストアイデアなんだけど、たぶん効率や必要性のレベルで物事を二次元に整理しないといけない時代は、20世紀に終わったんだと思う。ただ、そこで二次元の役割が消滅するかというと、アートとして、可能世界を提示するものとしての二次元というのは、むしろ重要性を増しているというロジックが作れる気がするんだよ。 猪子 情報量が超爆発し、急激にグローバル化する中で、共通のコンテキストなんかを持つことが不可能になる中で、従来とは違う意味でアートの役割は、急激に重要性が増すとは思うんだよね。 【ここから先はチャンネル会員限定!】 PLANETSの日刊メルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」は今月も厳選された記事を多数配信します! すでに配信済みの記事一覧は下記リンクから更新されていきます。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/201602  

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第5回「アートには正しさがないから、人類を新しい方向に“導ける”」【毎月第1火曜配信】  ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.509 ☆

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第4回「モナ・リザの前が混んでて嫌なのは、絵画がインタラクティブじゃないから」【毎月第1火曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.487 ☆

チャンネル会員の皆様へお知らせ PLANETSチャンネルを快適にお使いいただくための情報を、下記ページにて公開しています。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar848098 (1)メルマガを写真付きのレイアウトで読む方法について (2)Gmail使用者の方へ、メルマガが届かない場合の対処法 (3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について を解説していますので、新たに入会された方はぜひご覧ください。 猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第4回「モナ・リザの前が混んでて嫌なのは、絵画がインタラクティブじゃないから」【毎月第1火曜配信】  ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆ 2016.1.5 vol.487 http://wakusei2nd.com 今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』の第4回です。 「モナ・リザ」に代表される、作品と個人が向き合う従来のアートから、鑑賞者全員が内部へと入り込んで生み出される自然環境的なアートへ。チームラボが追及するインタラクティブな表現の意味と可能性について語り合いました。 ▼プロフィール 猪子寿之(いのこ・としゆき) 1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート・サイエンス・テクノロジー・クリエイティビティの境界を曖昧にしながら活動している。 47万人が訪れた「チームラボ踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、大河ドラマ「花燃ゆ」のオープニング映像、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet 20th Anniversary」など。2016年はカリフォルニア「PACE」で大規模な展覧会を予定。 http://www.team-lab.net ◎構成:稲葉ほたて 本メルマガで連載中の『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』配信記事一覧はこちらのリンクから。 前回:猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第3回「自然の情報量を生かしたアートを作りたい」  ■ 他者の振る舞いが面白くなるアート 猪子:9月にロンドンのSaatchi Galleryで、「花と人、コントロールできないけれども、共に生きる – A Whole Year per Hour」(以下「花と人」)という作品を展示したんだよ。これはじっとしている人の周辺には花が沢山咲くし、走り回る人の周辺では花が散るという作品なんだよね。 ▲Flutter of Butterflies Beyond Borders / 境界のない群蝶 teamLab, 2015, Interactive Digital Work, Endlesså Flutter of Butterflies Beyond Borders + Ever Blossoming Life II – A Whole Year per Hour, Dark + Flowers and People, Cannot be Controlled but Live Together – A Whole Year per Hour http://www.team-lab.net/all/art/butterflies.html https://www.youtube.com/watch?v=8Vw3Nwu1tDI ▲増殖する生命 II - A Whole Year per Hour, Dark / Ever Blossoming Life II – A Whole Year per Hour, Dark teamLab, 2015, Digital Work, endless, 4 channels http://www.team-lab.net/all/art/everblossominglife2.html https://www.youtube.com/watch?v=CbxNFYHBTeo ▲花と人、コントロールできないけれども、共に生きる – A Whole Year per Hour / Flowers and People, Cannot be Controlled but Live Together – A Whole Year per Hour teamLab, 2014 -, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi Flowers and People, Cannot be Controlled but Live Together – A Whole Year per Hour + Flutter of Butterflies Beyond Borders + Ever Blossoming Life II – A Whole Year per Hour, Dark http://www.team-lab.net/all/art/flowerandpeople-wholeyear.html https://www.youtube.com/watch?v=BT7EEG-Lza8 同じような作品をニューヨークでも展示したんだけど、その時のオープニングに人が殺到して、ギュウギュウ詰めになったんだよね。そうしたら、花が全部散っちゃった(笑)。 でも、そのあとが面白くて、その場でみんな「俺たちは、ここに(人が)いすぎるんじゃないか」と話しだして、「俺は前の部屋に戻る」「じゃあ、俺は次の展示を見ておくよ」と言い合って、みるみる3分の1くらいの人数が減ったんですよ。 そうしたら、隙間ができて花が咲き出して、みんな「おおー!」となって盛り上がったんだよね。 これが面白いのは、他の人の振る舞いでアートが変化しているのを、第三者的に見て面白がってることなんだよ。 インタラクティブというときに、みんな「自分の振る舞いで作品を変えること」を考えていると思う。でも、それってデジタルゲームに代表されるように、「自分と作品」の一対一関係になってしまう。そこには他者がいない。だけど、こういう作品を上手く設計すると、同じ空間にいる「自分と他者」の関係をポジティブに思える気がするんだよね。 その意味で、僕は自分がインタラクションする必要すらないと思ってるの。むしろ第三者の視点で見て、同じ空間にいる他の人が作品の一部みたいになることがすごくいいと思うし、そうすることで同じ空間にいる人々同士の関係性をポジティブに変化させたいんだよね。 宇野:これは他の人の振る舞いがあってこそ、より成立する作品というわけだね。たとえばこの作品は、逆に展示場が空いてガラガラのときに見に行くよりも、あくまで一緒にそこにいる誰かの振る舞いがあって、はじめて疑似自然が機能する。これは普通の美術館とはまったくもって逆だね。普通の美術館は空いていればいるほどいい環境とされるわけだから。 猪子:だって、「モナ・リザ」を観るのに隣の人は邪魔で、できれば一人で見たほうがいいんだよ。「ゆっくり鑑賞させてくれ」としか思わないじゃない。それって、「モナ・リザ」では同じ空間にいる人が邪魔になるということなんだよ。 でもさ、それは他人の振る舞いで目の前の「モナ・リザ」が変化しないからだと思うの。ルーブル美術館の「モナ・リザ」の前でいくらぎゅうぎゅう詰めでも、「俺たちはここにいすぎないか」なんて相談はじめたりしないじゃん(笑)。僕らは他人がセットで作品として見えるようにしていて、だから、みんな作品の写真を観客とセットで写したりする。 この前に銀座のポーラ ミュージアム アネックスでやった「Crystal Universe / クリスタル ユニバース」(以下「クリスタルユニバース」)も、そうだよね。「クリスタルユニバース」は、自分がクリスタルユニバースの中を歩いているとき、誰かがスマフォでユニバースを生み出してくれていないと楽しくないから。自分が作品の中を歩きながら鑑賞するためには、ほかの誰かが居てくれないといけないのね。周りに人がいっぱいいてくれて同時にユニバースを生み出して、複雑なユニバースにるからこそ、自分が歩いているときに楽しい。こういう考えの作品にはすごく可能性があると思う。 例えば、この考え方で都市をデジタルアートにしたら、同じ都市に住む人同士が、すごくポジティブになるんじゃないかと思う。 実は運河をアートにしたのも、その練習なんだよね。あと、パリのメゾン・エ・オブジェで、皿を置いたらテーブル上に鳥が出たりする作品(「World Unleashed and then Connecting」)をやったんだけど、それもすごく良い空気が生まれていた。自分の皿から出た鳥が飛んで行ったり、他者の皿から出た木にその鳥が止まったりして……あそこってバイヤーがたくさんいて、本当は、ある種の戦争みたいな雰囲気なんだけどね(笑)。 個人になにか影響を与えるだけじゃなくて、同じ空間にいる人の関係性が影響を受けていくんだよね。 ▲『MAISON&OBJET PARIS』(フランス・パリ)にて展示した「World Unleashed and then Connecting」 teamLab, 2015, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi http://www.team-lab.net/all/products/unleash-connecting.html https://www.youtube.com/watch?v=hB44HFdlQxM ■ インタラクティブの第三の可能性 宇野:面白いね。それこそが、チームラボと猪子寿之の考えるインタラクティブの可能性ということか。僕は少し前に、チームラボについて長い文章を書いたのだけど、あの文章の最後で僕は猪子寿之という作家を「秩序なきピース」の実践者として位置づけている。チームラボ作品で度々用いられている、司令塔があるわけでも中心があるわけでもないにも関わらず、いつの間にか参加するプレイヤーたちの調和がとれてしまうボトムアップの日本的なシステム。これって、日本文化論では「無責任の体系」と言われていて、旧日本軍の生んだ指導者のいない全体主義から、現代のテレビポピュリズムまで、どちらかというと悪いものとして捉えられていたのだけど、チームラボはそれをポジティブなものに読み替えている、という議論を僕は展開したわけ。 では、どうやって「無責任の体系」を「秩序なきピース」に、ネガティブなものからポジティブなものに転換するのかを突き詰めて考えたいとずっと思っていたのだけど、いま、その回答を聞いた気がしたな。 猪子:嬉しいなあ。この話がこんなに褒められたのは人生で初めてだから、超嬉しい。 「花と人」にしても周りに人がいるから、花が咲いたり散ったりして、より美しいものになるの。自分がインタラクションしたいというよりは、他者の存在まで含めて作品として鑑賞できることで、他者に対してポジティブになれる感じなんだよね。 宇野:インタラクティブなメディア表現というのは二通りあって、一つは、20世紀のビデオゲームの多くがそうであった、自分の干渉で虚構の世界が変化する、というパターン。『スーパーマリオ』から『ドラゴンクエスト』まで、20世紀のビデオゲームは概ねこれ。そしてもう一つ、インターネット以降に出てきたもう一つのパターンがある。これは人間同士の社会的なコミュニケーションを乱数に使ってゲームを構築するタイプのもので、ネットワーク技術の発展を背景にむしろ近年はこっちが主流になっている。MMORPGとか『モンハン』とか、広い意味での対戦ゲームのほうが今は強くなっているじゃない。 でも、いま猪子さんが言ったのは、後者を大きく拡張して、第三のインタラクティブな表現の可能性を探るものだと思う。つまり、猪子さんはここでインタラクティブな装置とアートを結びつけることで、他者のイメージを逆転しているんだと思う。本来不快なはずの他者の存在を逆転することに成功している。 これまでの人類は「他者の存在は人間にとって不快なもので、だからこそちゃんと受け止めるのが人間としての成熟だ」みたいな議論をしてきたわけだよ。でも、猪子寿之は現代のテクノロジーと洗練された表現を使えば、それをポジティブなものに転化できると信じている。理解もできないし、コントロールもできない他者が周囲にいることは、我慢して受け入れるものではなくて、むしろポジティブに捉え直せるんじゃないかと思っている。これはとても革新的な発想だと思うし、これによって人類はかなり前に進むよ。 【ここから先はチャンネル会員限定!】 PLANETSの日刊メルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」は今月も厳選された記事を多数配信します! すでに配信済みの記事一覧は下記リンクから更新されていきます。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/201601  

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第4回「モナ・リザの前が混んでて嫌なのは、絵画がインタラクティブじゃないから」【毎月第1火曜配信】  ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.487 ☆

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第3回「自然の情報量を生かしたアートを作りたい」【毎月第1火曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.462 ☆

チャンネル会員の皆様へお知らせ PLANETSチャンネルを快適にお使いいただくための情報を、下記ページにて公開しています。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar848098 (1)メルマガを写真付きのレイアウトで読む方法について (2)Gmail使用者の方へ、メルマガが届かない場合の対処法 (3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について を解説していますので、新たに入会された方はぜひご覧ください。 猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第3回「自然の情報量を生かしたアートを作りたい」【毎月第1火曜配信】  ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆ 2015.12.01 vol.462 http://wakusei2nd.com 今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載〈人類を前に進めたい〉の第3回です。 チームラボはなぜ今、水や木や生き物のような自然物を〈デジタイズド〉しようとしているのか。そして、そもそもなぜキャラクターのような〈依代〉を用いようとしないのか? 数々の作品の根底にある「人間とアートの新しい関係」について聞きました。 ▼プロフィール 猪子寿之(いのこ・としゆき) 1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート・サイエンス・テクノロジー・クリエイティビティの境界を曖昧にしながら活動している。 47万人が訪れた「チームラボ踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、大河ドラマ「花燃ゆ」のオープニング映像、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet 20th Anniversary」など。2016年はカリフォルニア「PACE」で大規模な展覧会を予定。 http://www.team-lab.net ◎構成:真辺昂、稲葉ほたて 前回記事:猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第2回「(僕らのつくる)世界はこんなにもやさしく、うつくしい」 (実は)デジタルと自然は相性が良い 猪子 今日は宇野さんに見てもらいたいものがあるんだよね。前回までのテーマに「自然」というものがあったと思うんだけれど、チームラボでは今まさに「リアルな自然」とデジタルを組み合わせたプロジェクトをやっているんだよ。 デジタルって、よく自然から最も遠いような偏見を持たれているけれど、僕は木の机とかの方がよっぽど自然から遠いと思っているんだよね。だって厳密に言うと、木の机って自然を破壊してできたものじゃん。すべての物質的な人工物は自然の破壊によってつくられていて、僕は自然と対立する存在だと思うんだよね。 それに対してデジタルというのは、ネットワークやセンシングを使って光や音を出しているだけなので、基本的には非物質で、物理的にはなんの影響ももたらさない。デジタルと自然って、実は相性が超良いんじゃないかなと思っているんだよね。 宇野 まあ、究極的には波を当てているだけだもんね。自然をまったく加工しない、壊さないアプローチだよね。 猪子 そうそうそう。そういうことを考えて、チームラボではリアルな都市や自然そのものをデジタイズドして、庭や水族館や街をそのままアートにするプロジェクトをやっていて、それに「デジタイズド・ネイチャー・アート・プロジェクト」や「デジタイズド・シティ・アート・プロジェクト」みたいな名前をつけたりしているんだよ。 “Digitized City Art”, “Digitized Nature Art” プロジェクト http://www.team-lab.net/concept/digitizedcityartproject.html ▲Drawing on the water surface created by the dance of koi and boats – Mifuneyama Rakuen Pond / 小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング- Mifuneyama Rakuen Pond https://www.youtube.com/watch?v=Nc_F2BjVBIU http://www.team-lab.net/all/art/mifuneyama.html 猪子 たとえば、これは2015年の夏にやった「小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング」というプロジェクトなんだけど、いま言った自然とデジタルの共存がよくわかると思う。 この作品は、佐賀県武雄市にある『御船山楽園』という、名勝として国登録記念物に指定されている、非常に自然豊かで美しい庭で行ったんだけど、その庭の真ん中に大きな古池があってさ、その上を小舟がすーって動いているのね。 だから、その水面をセンシングしていて、デジタルの鯉をその船の動きに合わせて躍らせてみた。最初のうちは、小舟が静かに浮かんでいると周りに集まってくるし、動き出すと避けながら踊る感じなんだけど、少しずつ鯉が泳ぎながら筆跡を残しながら溶けていき、最終的には舟の動きに合わせて鯉が踊った跡が水面にドローイングしたようになっていく。これは、まさに自然を自然のままデジタルによってアートにした作品で、こういうのをやってみようと思ってるんだよね。 猪子 いま新江ノ島水族館でやってる「えのすい×チームラボ ナイトワンダーアクアリウム2015」という展覧会とかも、そういうプロジェクトの一つかな。 ▲えのすい×チームラボ ナイトワンダーアクアリウム http://www.enosui-wonderaquarium2015.com/ ▲花と魚- 相模湾大水槽 / Flowers and Fish- Enoshima Aquarium Big Sagami Bay Tank チームラボ, 2015, インタラクティブデジタルインスタレーション, 音楽:高橋英明 https://www.youtube.com/watch?v=GDkLZHI4DLo http://www.team-lab.net/all/art/flowersandfish.html ▲呼応する球体と夜の魚たち / Resonating Spheres and Night Fish チームラボ, 2015, インタラクティブデジタルインスタレーション, 音楽:高橋英明 https://www.youtube.com/watch?v=WExlhugszS0 http://www.team-lab.net/all/art/resonatingspheres_fish.html ▲呼応する小さな海 / Small Resonating Sea チームラボ, 2015, インタラクティブデジタルインスタレーション, 音楽:高橋英明 https://www.youtube.com/watch?v=ge8Zsddo8wA http://www.team-lab.net/all/other/resonating_sea.html ▲お絵かき水族館 / Sketch Aquarium チームラボ, 2013https://www.youtube.com/watch?v=AnAqB7LZUb8 http://www.team-lab.net/all/products/aquarium.html ▲インタラクティブオーシャンバー / Interactive Ocean Bar teamLab, 2015, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: teamLab https://www.youtube.com/watch?v=58Ndx2dt9DM http://www.team-lab.net/all/products/interactiveoceanbar.html ▲チームラボカメラ / teamLab Camara チームラボ, 2010 https://www.youtube.com/watch?v=Pfb1taVJ5Achttp://www.team-lab.com/teamlabcamera “えのすい”って本来は17時で閉館するんだけど、その閉館後の夜の水族館を使わせてもらったんだよね。昼間は通常の水族館の営業をしていて、夜は水族館をそのまま使ってアート空間にしている。メインの「花と魚」は、基本的に魚がすいすいと自由に泳いでいるんだけど、これもセンシングで魚が水槽の縁に近づくと花が散るようになっている。 ▲Flowers and Fish - Enoshima Aquarium Big Sagami Bay Tank / 花と魚 - 相模湾大水槽 https://www.youtube.com/watch?v=GDkLZHI4DLo http://www.team-lab.net/all/art/flowersandfish.html 猪子 あと、これも宇野さんに紹介しておきたいな。これは、長崎県のハウステンボスにある500メートルくらいの運河の沿道にある作品だね。 ▲Resonating Trees / 呼応する木々 https://www.youtube.com/watch?v=u3RRxERP7P0 http://www.team-lab.net/all/art/resonatingtrees.html この道を人が歩いていくと、木に近づいたときに色や音楽がインタラクティブに変わっていくんだよ。で、その木の光は、両隣の木とか対岸の木に伝播していく。だから、500メートル先とかから光の変化がやってきたりして、「あ、人がいるな」と分かるようになっているわけ。ロマンチックだよね(笑)。 ……でも、いまはそんなでもないかな。というのも、もともとはあまり人気のない場所だったんだけど、アート空間に変えちゃったせいで人がすごい集まっちゃって、すごい派手になって有料の船とかが通るようになり始めちゃったらしい(笑)。 まあ、こんなふうにデジタイズドすることで、自然をそのままアートにしちゃおう、みたいなことをやっているわけ。もちろん、ここで言う「自然」は環境に近い意味だから、同じことを街でもやってみたいんだけどね。というか、そもそもこのモチーフが固まっていったのは、「PLANETS vol.9」で「オリンピックの開会式を街全体でやろう」と考えていたときだしね。 宇野 そうなんだ。 ▲『PLANETS vol.9 東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト』収録 猪子 この企画を考えていたときに、「競技場のあるなしはあまり重要じゃなくて、デジタイズドすれば東京そのものがオープニング会場になるんじゃないか」と思ったんだよね。デジタル化することで全く新しい体感の都市にできるじゃないか、街をまるごと街のままアートにできるんじゃないかと思ったのね。 いまは自然のほうが面白いと思っているから、当面は自然でいろいろやっていきたいなあと思っている。 「自然」のもつ情報量の可能性 宇野 なるほどね。まず、この「デジタイズド・ネイチャー・アート・プロジェクト」って、前回までに見てきた作品群とは逆のアプローチをしているよね。つまり、ここまでの作品群は「人工物を自然物のように描く」という作品で、今回の作品は「自然物を人工物のように描く」っていうことをやっているというのは、一つ言えると思う。 その上でね、絶対に他のところからくるつまらない突っ込みだと思うから先に僕がわざと聞くとさ、なんで「自然そのもの」じゃだめなの? だって「自然のほうが面白い」のなら単に美しい自然を眺めればいい、って言い出す人って絶対いると思うのね。チームラボの作品を見ないで、その理屈だけ聞いちゃうと。 猪子 確かに、昨日もある人にそのツッコミはされた(笑)。 でもさ、そういう言い方はすべての人工物を否定することにならない? 昔から人間は自然の力を借りながら、いろんな人工物を創ってきたわけだよ。彫刻のようなアートだけじゃなくて、小屋だって道路だって、全部そうだよね。あらゆる人工物は自然からつくられているわけでさ。そういう人工物の歴史から言えば、むしろ僕らはかなり自然そのものを活かした人工物をつくっていると思うよ。その、木や石を削って彫刻をつくるかわりに、自然そのものの力を借りて、自然をそのままにアートにしているんだよ。 宇野 なるほどね。すべての人工物=アートは自然の加工物で、普通のアートはたとえば木を切ったり貼ったりして、加工しまくっているわけだけど、チームラボの場合は波を当てているだけでなんで、木そのものの力を最大限使って、アートをつくっていることになると。 これらは石や木そのものの力を最大限に使った「アート」であると認識しているわけだね。 猪子 新江ノ島水族館では魚も作品になっているんだけど、やっぱりスクリーンやビルのような物質よりも、水や木や生き物のような自然物の方が、情報量が圧倒的に大きいなと思うんだよね。だって、生命を彫刻だと思ったら、その情報量は凄いわけじゃない。最高級のロボットですら比べ物にならないよね。 宇野 まあ、生命のほうが人工物よりも乱数供給源として優秀だよね。 でも、だいぶ猪子さんの作品の背景にある思想が見えてきたように思うね。つまり、猪子さんは従来の、モノを中心としたアートという存在に対して、加工しすぎることで自然の持つ情報量を殺す方向に行っていると考えている。ところが、その一方で現在のデジタル技術を使えば、自然が持っている情報量をそのまま活用したアートができてしまう。 そういう発想が根底にあって、この「デジタイズド・ネイチャー・アート・プロジェクト」が作られているんだね。 なぜモノではなく空間なのか 宇野 ちなみに、猪子さんは「庭」とかは好きなの? 猪子 すごい好きなんだよね。 宇野 まあ、空間があれだけ好きなら、庭も好きだよね。じゃあ、実際につくったことはあるの? 猪子 いや、ない。まあ、「Floating Flower Garden」は一応、庭のつもりでつくったんだけどね。 ▲Floating Flower Garden – Flowers and I are of the same root, the Garden and I are one / Floating Flower Garden – 花と我と同根、庭と我と一体 https://www.youtube.com/watch?v=siZhynevhUE http://www.team-lab.net/all/art/ffgarden.html 宇野 よく言われる話だけれど、「自然 対 人工」の表現については二通りの考え方があって、一つは西洋みたいに完全に自然を支配して、飼い慣らしてしまおうという発想だよね。ところが、その対極として、まさに日本的な、庭の中に一つの人工的な自然をつくって、そこから先は自然に任せるという方向がある。そのときに、猪子さん自身は、自分のことをどっちに近いと思っているんだろう。 猪子 うーん。人間が造った街や庭にしろ、自然そのものの森にしろ……やっぱり、そこに物理的に介在せずにアートにするのが、少なくとも今は面白いんだよね。 宇野 なるほどね。ちなみに、俺の印象では、猪子さんというアーティストは、どちらかというと後者の日本庭園の思想に近い。 ただ、実はちょっと違うアイデアを考えている印象もあるんだよね。ここまで紹介された作品は、デジタルという質量のない波を当てると、自然の一部が人工物のように人間には見えてしまうことを利用しているんだよ。だけど、猪子さんがそこで抱いている興味は、現実の自然とは少し違った新しい世界を目の前に広げていくことにある気がしてるんだよね。 その意味で、俺にとって猪子さんは、日本的想像力をデジタルの力によって半歩ずらしている作家だし、だからこそ猪子さんは空間をつくるのが好きなんだろうな、とも思う。 猪子 うん、好き。 宇野 ただ、面白いのは平面の作品ですらも空間っぽいことだよね。展示の仕方からして、すでに空間を意識しているしね。 そうなってくると、なぜ猪子寿之はこんなにもモノじゃなくて空間ばかりをつくるのかは興味が湧いてくるんだよね。 【ここから先はチャンネル会員限定!】 PLANETSの日刊メルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」は今月も厳選された記事を多数配信します! すでに配信済みの記事一覧は下記リンクから更新されていきます。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/201512  

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第3回「自然の情報量を生かしたアートを作りたい」【毎月第1火曜配信】  ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.462 ☆

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第2回「(僕らのつくる)世界はこんなにもやさしく、うつくしい」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.447 ☆

チャンネル会員の皆様へお知らせ PLANETSチャンネルを快適にお使いいただくための情報を、下記ページにて公開しています。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar848098 (1)メルマガを写真付きのレイアウトで読む方法について (2)Gmail使用者の方へ、メルマガが届かない場合の対処法 (3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について を解説していますので、新たに入会された方はぜひご覧ください。 猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第2回「(僕らのつくる)世界はこんなにもやさしく、うつくしい」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆ 2015.11.10 vol.447 http://wakusei2nd.com 今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』の第2回です。「境界のない群蝶」を見ながら、チームラボの作品が「自然」をテーマに取り入れている理由や、現代の社会やアートシーンの中で、文脈に依らない作品を作ることの意味を、宇野常寛との対談の中で語ってもらいました。 ▼プロフィール 猪子寿之(いのこ・としゆき) 1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート・サイエンス・テクノロジー・クリエイティビティの境界を曖昧にしながら活動している。 47万人が訪れた「チームラボ踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、大河ドラマ「花燃ゆ」のオープニング映像、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet 20th Anniversary」など。2016年はカリフォルニア「PACE」で大規模な展覧会を予定。 http://www.team-lab.net ◎構成:稲葉ほたて 前回記事:猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第1回 みんなで「モノ」のなかに入ろう! ■ デジタルは境界を消失させていく 猪子 今回は、前回からの流れで「Flutter of Butterflies beyond Borders / 境界のない群蝶(以下、境界のない群蝶)」の話をしたいな。 ▲境界のない群蝶 https://www.youtube.com/watch?v=8Vw3Nwu1tDI http://www.team-lab.net/all/art/butterflies.html 例えば、絵画は、一見して平面の表現に見えても、キャンバスや絵の具といった質量のある物質に媒介して絵が存在しているんだよね。そして、物質に媒介しているということは、その物質によって物理的に境界がハッキリしてしまうということなんだよ。 でも、デジタルというのは物質を媒介する必要がないから、境界の存在は必然じゃないんじゃないかなと思う。 宇野 「デジタルである」ということは、情報に還元されている状態だからね。 猪子 脳内では本来、考えや概念は境界があいまいだと思う。当たり前だけど、考えや概念は、いろんな他の考えと影響を受け合って存在している。それが、実世界に出現するために物質に媒介させる。物質に媒介させるから、作品に境界が生まれるんじゃないかと思っているんだよね。作品は、物質の媒介から解放されれば、本来の脳内の状態に近づいていき、作品同士の境界も曖昧になり、境界は失われていくんじゃないかと思っているんだよね。将来的にはそういう大空間も作ってみたいと思っているんだよ。 一応、そのイメージだけは作っていて、空間を移動すると滝が流れていたり花が咲いていたりして、目の前で起きたある現象がその下の事柄に影響を受けていて、さらにはフロアをまたいで蝶が生まれたのが作品の中に入り込んできて……みたいな感じ。 大空間が一つの作品ではなく、複数の作品があって作品ごとにコンセプトは違うのだけど、作品ごとの境界がもはや存在していない大空間をさまようようなアート展を将来やりたくて、それをひとまずコンセプチュアルにやってみたのが、この作品かな。あと、この蝶は販売してみたんだよね(笑)。 宇野 データとして、ということ? 猪子 そうそう。この群蝶は、単独でも空間を飛ぶけれど、「Flowers and People, Cannot be Controlled but Live Together – A Whole Year / 花と人、コントロールできないけれども、共に生きる – A Whole Year(以下、花と人)」(http://www.team-lab.net/all/art/flowerandpeople-wholeyear.html)という空間の作品の中も飛ぶし、「増殖する生命 II – A Whole Year per Hour, Dark(以下、増殖する生命Ⅱ)」(http://www.team-lab.net/all/art/everblossominglife2.html)というディスプレイの作品の中も飛ぶの。つまり他の作品の中に存在する作品だし、作品同士の境界がまるでないかのように境界を越えていくの。まあ、ディスプレイの中と外で解像度が違いすぎるから、ディスプレイの中でだけ蝶が高精細になるんだけどね。 ただ、「境界のない群蝶」と一緒に、「花と人」と、「増殖する生命Ⅱ」というコンセプトが違う2つの作品を置いちゃったことと、その3つの作品が一体化しすぎて、「境界のない群蝶」のコンセプトは伝わりにくかったんだよね。 だから、イスタンブールで今度やる個展では、ただの真っ黒な空間の中に「ボイド」という何も映っていない真っ黒のディスプレイの作品を置いて、空間を飛んでいる蝶がそのディスプレイの中にシームレスに入っていくという展示をしようと思ってるの。 宇野 確かに分かりやすいけれど、逆に分かりやすすぎて驚きがないんじゃないかな。 やっぱり分かりづらくなるかもしれないけれど、作品同士がもっと相互作用で変化していくことだとかが大事なんじゃないかなあ。 例えば、「境界のない群蝶」では花がいる場所に蝶が行くし、ここの空間の花がいる場所に溜まっていったりするじゃない。そして、蝶を触るとどんどん死んでいく。ここには、実際の自然とは異なるロジックで動いている「自然のようなもの」、猪子さんの作ったもうひとつの自然がシミュレーションされているよね。 ちなみに、この、猪子さんの「残酷なもの以外は美しくない」という世界観は、俺は好きだよ(笑)。 実のところ表現として人を惹きつけるのは、壁に映っている蝶がディスプレイの中に入っていくことの驚きなんかよりも、その辺にとまっている蝶を触ったら死んでしまって、しかもその蝶の生死が、まったく別の作品の花が咲くか、咲かないかを決定してしまうことの驚きの方なんじゃないかなと思う。 要するに、人間は世界に否応なくコミットしてしまって、意図とは関係なくどうしようもなく変えてしまうことの残酷さ=美しさを描きたいわけでしょう? 猪子 いや、最終的にはそういうのをやりたいんだけど……。 【ここから先はチャンネル会員限定!】 PLANETSの日刊メルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」は今月も厳選された記事を多数配信します! すでに配信済みの記事一覧は下記リンクから更新されていきます。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/201511  

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第2回「(僕らのつくる)世界はこんなにもやさしく、うつくしい」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.447 ☆

【新連載】猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第1回 みんなで「モノ」のなかに入ろう! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.433 ☆

チャンネル会員の皆様へお知らせ PLANETSチャンネルを快適にお使いいただくための情報を、下記ページにて公開しています。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar848098 (1)メルマガを写真付きのレイアウトで読む方法について (2)Gmail使用者の方へ、メルマガが届かない場合の対処法 (3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について を解説していますので、新たに入会された方はぜひご覧ください。 【新連載】猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第1回  みんなで「モノ」のなかに入ろう! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆ 2015.10.20 vol.433 http://wakusei2nd.com 今朝のメルマガでは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる新連載第1回をお届けします! 題して『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』! 宇野常寛との対談形式での連載です。 この第1回ではチームラボの2015年の作品群を振り返りつつ、これまでの代表作といえる「カラス」「メディアブロックチェア」の先にあるチームラボの今後の展開を猪子さんに語ってもらいました。 【超ハンパないお知らせ】チームラボがこれまで発表したアート作品を網羅した初の図録が発売中! 宇野常寛による論考も収録されています。「チームラボ図録」の詳細はこちら。 ▼プロフィール 猪子寿之(いのこ・としゆき) 1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート・サイエンス・テクノロジー・クリエイティビティの境界を曖昧にしながら活動している。 47万人が訪れた「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、大河ドラマ「花燃ゆ」のオープニング映像、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet 20th Anniversary」など。2016年はカリフォルニア「PACE」で大規模な展覧会を予定。 http://www.team-lab.net ◎構成:中野慧 宇野 さて、今回からPLANETSのメルマガで僕との対談形式で、猪子さんの連載が始まることになりました。実はけっこう前から「猪子さん、うちのメルマガで連載してよ」というLINEを送ってたんだけど(笑)。 猪子 うん、既読スルーしてたんだよね……。それは、本当にごめん! ただ、やりたくないから既読スルーしてたってわけじゃなくて、ふとした時に「俺、なんか書きたいことあるかな?」とかいろいろ考えていたの。で、宇野さんから「猪子さんの好きなことをみんなに紹介していくのはどうだろう」と提案してもらったりもしたんだけど、そんなわざわざ書くことでもないだろうと思って。  でも何年か前から、宇野さんにチームラボの作品を批評してもらったりすると、自分達が何となく無意識に「こういうことがやりたい」と思ってやっていることを論理的にしてもらったり、言葉にしてもらうことができて、それが超面白いなと思っていたのね。去年、チームラボはニューヨークのPace Galleryってとこで展覧会をやったんだけど、そのときに宇野さんに書いてもらった批評も超良くて。  で、そんなことを考えていて……「いやでも待てよ、チームラボがこれからやりたいと思っていることを宇野さんに話してみて、そこで整理されたものをみんなに伝えていくってのもアリなんじゃないか?」「というか、連載の収録と称して宇野さんに相談に乗ってもらうのもいいんじゃないか?」という下心もあって、そういう会にしようと。それで突然やりたいですってLINEを送ったんです。 宇野 僕は猪子さんとはそれなりに長い付き合いだけれど、作家と批評家としてもう全力で向きあわなきゃいけないと思ったのは、実は去年チームラボが佐賀でやっていた大規模な展覧会を見に行ったときなんですよね。  そこで、東京に戻ってから当時連載していた『ダ・ヴィンチ』で長めのエッセイを書いた。このとき僕が中心的に取り上げたのは、佐賀で展示していた「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点 - Light in Dark」と、「メディアブロックチェア」の二つだった。 ▲追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点 - Light in Dark https://www.youtube.com/watch?v=tjfDZP9YOcs http://www.team-lab.net/all/art/crows_dark.html ▲メディアブロックチェア https://www.youtube.com/watch?v=dYk5auu_9m0 http://www.team-lab.net/all/products/mediablockchair.html (参考リンク) ・我々の身体を"マリオ"化する企て――チームラボ猪子の日本的想像力への介入(宇野常寛による批評) ・「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」(2014年11月29日〜2015年5月10日まで日本科学未来館で開催)  このエッセイを下敷きにPace Galleryの展覧会に合わせた文章を書いて、さらにその邦訳を今年の日本科学未来館の展覧会での図録に載せてもらったのだけど、それは言ってみれば、チームラボのこれまでの仕事を総括する仕事だったと思うんですよね。だから今回の連載はどうせならチームラボが「これから」なにをするのかを話してみたいと思った。 ■ 作品の「境界」をなくす――チームラボの2015年の作品群 猪子 うんうん、そうだよね。いまチームラボは色んな新しいことにトライしていて、まずはそれを読者の皆さんへの説明も兼ねて紹介してみたいと思います。  まず、ちょうど今年の9月にロンドンのSaatchi Galleryってとこで「teamLab: Flutter of Butterflies Beyond Borders」って展覧会を行って、そこで公開した「Flutter of Butterflies Beyond Borders / 境界のない群蝶(以下、境界のない群蝶)」という作品があるのね。 ▲境界のない群蝶 https://www.youtube.com/watch?v=8Vw3Nwu1tDI http://www.team-lab.net/all/art/butterflies.html  動画は1分ぐらいの短いものだからみんなにぜひ見てもらいたいんだけど、この「境界のない群蝶」って、「花と人、コントロールできないけれども、共に生きる - A Whole Year」や「増殖する生命 II - A Whole Year per Hour, Dark」といった他のディスプレイによる作品のあいだを蝶が飛んで行くというものなのね。 宇野 これは作品Aと作品Bの間を蝶が越境しているという理解でいいの? 猪子 そうそう。この作品でやりたかったのは「作品どうしの境界を破壊する」ということ。普通の絵とか彫刻だと作品の境界が「ここからここまで」と明確になっているけど、作品が物質から解放されていくと境界という概念すら今までとは違ったものになっていくんじゃないか、みたいなことです。  次に紹介したいのは「世界は、均質化されつつ、変容し続ける」っていう作品なんだけど、これは宇野さん、見たことある? ▲世界は、均質化されつつ、変容し続ける https://www.youtube.com/watch?v=MtzOd4RwXBY http://www.team-lab.net/all/pickup/hatw.html 宇野 鑑賞者が一個のボールに触ると色がどんどん変わっていくというものだよね。六本木ヒルズでやったやつだっけ。 猪子 うん、同じものだけど、本来はもう少し広いところでやるものとして作っているんだよね。このシリーズは、実は、2010年からやっていて、この映像は香港の美術館でやってたもの。一見ボールという立体物によって空間が埋められているように見えるけど、鑑賞者がボールを自由に動かして中に入っていくことができる。  これは〈空間〉というものをどう考えるかという実験なのね。みんなが〈空間〉と言ったときに連想するものって、壁と床と天井があって、文字通りに中が「空っぽ」な場所で、人が通ったりすることができるものだと思う。で、その対義語として、彫刻のような〈立体物〉というものがある。〈空間〉は人が通れるし中に入っていけるけど、〈立体物〉は人が中に入っていくことができない。 宇野 なるほど、面白い。 猪子 だけどこの「世界は、均質化されつつ、変容し続ける」って、作品の構成要素であるボール(=立体物)が固定されていないから人は自由に移動できて、個々のボールが物理的に自由に動かされても、構成要素であるボールはネットワークで繋がりあっているから、全体としてはいつも同じように振舞って、結果的にこの空間全体が一個の作品になっているんです。  さらに3つめ、「Floating Flower Garden – 花と我と同根、庭と我と一体」という作品があります。日本科学未来館でやった展覧会の後半で登場させたもの。 ▲Floating Flower Garden – 花と我と同根、庭と我と一体 https://www.youtube.com/watch?v=siZhynevhUE http://www.team-lab.net/all/art/ffgarden.html  これは本物の生きている花で、最初は空間を全部埋めているんだけど、人が近づくとモーターで花が上に上がってその人中心に半球状のドームができて、花で埋まった空間の中を動いていけるようにしている。空間は一見埋まっているんだけど、自分中心に常に半球状のドーム空間ができるように花が移動していくから、作品の中に入っていくことができるのね。これも全体としては花で埋められた一個の作品になっている。 宇野 この花は会期中に取り換えたりしたの?  猪子 いやいや、空気中の水分を吸って生きられる花を選んでいるのでそこは大丈夫。 湿度はコントロールしなきゃいけないんだけどね。実際は触る人がいるから、取り替えたりしたんだけど。  で、さらに「Worlds Unleashed and then Connecting」という作品があります。 ▲Worlds Unleashed and then Connecting https://www.youtube.com/watch?t=46&v=hB44HFdlQxM http://www.team-lab.net/all/products/unleash-connecting.html  これは器を置くと、そこの器に入っている世界観が外側に生まれていくというもの。例えばお茶碗から松が出ているけど、他の器から鳥が出ると、鳥が松に向かって飛んでいく。みんながいろんなところにいろんなものを置くことで、いろんな風景が動いていくようになっている。 宇野 これは実際にカフェとして使ったの? 猪子 この展示のときはテーブルの半分ではサーブして、もう半分では自由に遊べるようにしていた。同じ仕組みだけど、サーブだけにしちゃうと何時間も並ばなくちゃいけなくなってしまうからね。  他にもたとえば、ちょうどこのあいだミラノ万博の日本館で公開していた「HARMONY」という作品があります。ミラノ万博では日本パビリオンがトップ3に入る人気だったのね。ホストのイタリアと、次の万博開催地であるカザフスタンと、日本! 特に日本は長蛇の列で何時間も待つような状態になっていた。 ▲HARMONY, Japan Pavilion, Expo Milano 2015 https://www.youtube.com/watch?v=phAODx5utPI http://www.team-lab.net/all/other/harmony.html 宇野 何で日本館がそんなに人気があったの? この展示のせい? 猪子 だってこれ、入ってみたいでしょ(笑)。  この作品は、スクリーンが腰とか膝の上ぐらいの高さにあるんだけど、スクリーンを支える棒がやわらかいからどんどん中に入っていける。空間はセンシングされているから、人がいる場所からシーンが変わっていく。変な感じでしょ?(笑)  最後に紹介したいのが、9月まで銀座のポーラミュージアムアネックスでやっていた個展で公開した「クリスタル ユニバース」という新作です。 ▲クリスタル ユニバース https://www.youtube.com/watch?t=3&v=XCH6RE5Q78s http://www.team-lab.net/en/all/art/crystaluniverse.html 【ここから先はチャンネル会員限定!】 PLANETSの日刊メルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」は今月も厳選された記事を多数配信します! すでに配信済みの記事一覧は下記リンクから更新されていきます。 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/201510  

【新連載】猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第1回  みんなで「モノ」のなかに入ろう! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.433 ☆
PLANETS Mail Magazine

評論家の宇野常寛が主宰する、批評誌〈PLANETS〉のメールマガジンです。 文化・社会・ビジネス・テクノロジー等、幅広いジャンルの記事を不定期配信中!

著者イメージ

PLANETS/第二次惑星開発委員会

PLANETS/第二次惑星開発委員会 評論家・宇野常寛が主催する企画ユニットです。不定期配信のメルマガをはじめ、生放送&トークイベント、紙雑誌や書籍の発行(『モノノメ』、『PLANETS vol.10』、落合陽一『デジタルネイチャー』)など様々なコンテンツを発信しています。

http://wakusei2nd.com/
メール配信:ありサンプル記事更新頻度:不定期※メール配信はチャンネルの月額会員限定です

月別アーカイブ


タグ