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記事 60件
  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第49回「男と食 20」【毎月末配信】

    2019-06-27 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。ビールの一気飲みはできないが、鮎と鮑の一気食いならできるという敏樹先生。鮎料理の逸品を食べにでかけた銀座の店で遭遇した、とある美女のエピソードに思いを馳せます。
    男 と 食  20      井上敏樹 
    さて、別にいい子ぶるわけではないが、私は金で女を買う事が出来ないタイプの男であり、また、ジョッキの生ビールの一気飲みが出来ない。何も関係がないではないか、と言われそうだが、このふたつの事柄は私の中でイメージが一致している。まず、私は見ず知らずの女性と性的関係を結ぶのが恐ろしい。相手がどんな闇を抱えているか分からない。行為の最中、怪人に変身したら、どうやって戦えばいいのか。また、こういった心配を一切無視してデリヘルとかで女性を部屋に呼んだとしたら、私は大層気を使うであろう。派遣の女性が不快にならぬよう、普段は足の踏み場もない部屋の掃除をする。シーツを替える。新しいタオルを用意する。お茶をいれる。ケーキも出そう。全く面倒この上ない。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第48回「男と食 19」【毎月末配信】

    2019-05-30 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回のテーマは「味覚」です。食に一家言ある食通にとって、「味が分かる」ことは至上の価値とされます。舌に自信のある食道楽たちの、味覚をめぐるエピソードを語ります。
    男 と 食  19      井上敏樹 
    今年も花粉症がひどかった。私は多くの花粉のアレルギーだが、中でも杉花粉が一番ひどい。以前は医者に通っていたが、さほど効果がないのでやめてしまった。最近では市販の薬で誤魔化している。それも複数の抗アレルギー薬を一辺に飲む。薬剤師には止められるが、そうしないと効かないのだから仕方がない。薬にせよ、サプリメントにせよ、私は飲む事に躊躇いがない。これは母譲りである。母は自分で薬を飲む事も子供に飲ませる事もほとんど考えなしだった。なにしろ赤ん坊の私と電車に乗る際、泣かれるのが面倒なので睡眠薬を飲ませたというのだからひどいものだ。さて、先日、友人と食事をしていて、少々思うところがあった。この友人というのが、私から見ても食にうるさい、そして口の悪い奴なのだが、彼が人を評する時、『奴は味が分からない』というのが最大級の悪口になる。当然、『奴は味が分かる』と言えば最大級の褒め言葉だ。どうやら彼にとって、味の分かる分からないは舌の評価を越え、人間の本質に係わる重要な事らしい。気持ちは、分かる。私だって自分の馬鹿舌を棚に上げ、そういう面があるのであって、『味が分からない』→『感受性が鈍い』→『人の気持ちが分からない』→『犯罪者である』とわけの分からない判断を下す。しかし、当然、ここで疑問が生じる。味が分かるとは一体どういう事なのか? そんなに偉い事なのか?一般的には味がわかる、とは舌の鋭敏さと同義である。私は実際に会った事はないが、昔は超人的な味覚の持ち主がいたらしい。グルメ漫画に登場する『絶対味覚』の持ち主である。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第47回「男と食 18」【毎月末配信】

    2019-04-26 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今や高級食材として店頭に並ぶようになった筍(たけのこ)。地中にあるうちに掘り出して調理するのが美味とされる一方、伊豆にはそれとは真逆の秘密の食べ方があるとか。筍の採取と調理法をめぐる極上の薀蓄が展開されます。
    男 と 食  18      井上敏樹 
    先日、電車に乗っていたらチャラチャラじゃらじゃらした若い女のふたり組がひと目も憚らず大声で馬鹿話を交わしていたのだが、そのうちにひとりが『昨日サザエさん観たら、マス男さんがキャバクラに行く話だったのでびっくりした』と言ったので、なんだか妙に安心した。さて、今年も筍の季節である。筍と言えば昔は庶民の食材で、我が家でも春になると必ず食卓に登ったが、今やすっかり高級食材になってしまった。ある料理研究家が『主婦たる者年に一度は筍を湯がくべきである』と語っていたが、昨今本当にいい筍を手に入れようとすると、財政的に相当の痛手になろう。最高級の筍と言えば、やはり京都は塚原あたりの、いわゆる白子筍という事になる。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第46回「男と食 17」【毎月末配信】

    2019-02-28 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回のテーマは「おふくろの味」。料理が得意で、強烈な性格の持ち主だったという敏樹先生のお母さん。悪童だった敏樹少年がきつい折檻を受けたエピソードをはじめ、母親との印象深い思い出を語ります。
    男 と 食  17      井上敏樹 
    おふくろの味、というものがある。よくある質問で、人生最後の食事はなにがいいか、と問われ、『おふくろが作ってくれた味噌汁』とか『おふくろが握ってくれたおにぎり』とかの答えが多いが、私はこういうのがどうも苦手だ。感傷的、偽善的な感じがする。私が最後に食べたいのは卵白だけで仕上げた河豚雑炊である。別に私の母が料理下手だったわけではない。母は料理が好きだったし、またなかなかの腕前であった。電子レンジが発売された当時、母は購入を迷っていたが、まだ温め機能しかない電子レンジを、あんな物はつまらないと結論し、代わりにオーブンを買っていた。このオーブンを使って、母はパンを焼き、ケーキを焼き、様々な料理を作った。中でも得意だったのは『豚肉のリンゴソース』で、敢えて言えばこれが私にとってのおふくろの味、と言える。随分お洒落のようだが、味噌汁やおにぎりだけがおふくろを象徴するわけではない。さて、『豚肉のリンゴソース』だが、これは比較的簡単で見た目も派手で大変旨い。ちょっとしたホームパーティに出せば、お客たちは狂喜乱舞する事請け合いである。まず、豚肉のロースの塊りを一キロほど用意する。強めに塩胡椒して、型崩れしないように出来ればたこ糸で縛り、フライパンで肉に焼き色をつける。肉を取り出し、休ませている間にバターとオリーブオイルを半々くらいフライパンに引いてタマネギを炒める。タマネギは大体一個分ほどだ。タマネギ臭さが飛んだら、やはり一個分のリンゴを厚さ二ミリ程度の銀杏切りにして一緒に炒める。リンゴがしんなりと半透明になったら、大さじ一杯分のケッパーを加え、先の豚肉にかけるようにしてアルミホイルで包み込む。後は210度ほどのオーブンで焼けばいいのだが、豚肉は加熱し過ぎると固くなるので要注意だ。肉塊に鉄串を刺して唇に当て、中まで火が通っていれば大丈夫。出来上がった物を二センチほどに切りわけ、ふにゃりとなったタマネギとリンゴをソース代わりに絡めながら食べる。白ワインに合うだろう。■PLANETSチャンネルの月額会員になると…・入会月以降の記事を読むことができるようになります。・PLANETSチャンネルの生放送や動画アーカイブが視聴できます。
     
  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第45回「男と食 16」【毎月末配信】

    2019-01-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回は、魅惑的な食材である牡蠣についての話題から、若かりし日の敏樹先生の思い出が蘇ります。友達のような彼女のような、微妙な関係の女性とのデート中に占い師に捕まった二人。しかし、敏樹先生はある理由から、急いでその場を切り上げようとします。
    男 と 食  16      井上敏樹 
    先日、深夜に咳き込んで目覚めた。しばらくの間、布団の中で咳をしていたが、なにか変だ。異臭がするし眼が痛い。飛び起きてびっくりした。部屋中に白煙が充満している。牛乳色である。一寸先が真っ白である。これは……火事だ。今や火の手はマンション全体に回り、泥酔して逃げ遅れた私は最早助からないーそんな想いが頭を巡りパニックになった。私が死んだら多くの人々がスキップをして喜ぶだろう。悲しんでくれる者は冬の松茸ぐらい少ないだろう。などと考えたのも束の間、すぐに真相に思い当たった。夜、酔っ払っらって帰宅した私は、前日作ったシチューを食べようと火にかけて、そのまま眠ってしまったのだ。私は白煙を掻き分けてキッチンに行き、ガスを止めると全ての窓を開け、ドアを開けた。当然、シチューは台無しである。真っ黒に炭化している。鍋ももう使い物にならない。私は『あっちっち!』と指を火傷しながら鍋に水を入れつつ、『よし、これはエッセイに書けるな』などと考えていたのだから物書きというのはなかなかに図太い。さて、前置きはこのぐらいにして、今回は牡蠣の話。牡蠣というのは、どうやら好き嫌いがはっきりと別れる食材のようだ。そして嫌う者は牡蠣に当たった事がある者が多い。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第44回「男と食 15」【毎月末配信】

    2018-12-27 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回は鰻(うなぎ)のエピソードです。鰻が大好物の祖母と、鰻が大の苦手な父の間で育った敏樹先生。鰻屋ではなく割烹で食べる鰻についての薀蓄から、小学生の頃、家族と外食で鰻を食べたその日に起きた出来事に思いを馳せます。
    男 と 食  15      井上敏樹 
    さて、今回は鰻のお話。鰻と言えば死んだ祖母の事を思い出す。祖母は鰻が大好きだった。八十九歳で死んだ祖母だったが、死ぬ少し前まで、母が買って来た鰻を食べ、さらにもうひとつ好物だった無花果のデザートを楽しんでいた。鰻に無花果と言うと、随分健啖家のように思われるかもしれないが、祖母は痩身で腺病質、そして背中に大きな生まれつきの青痣があった。そのせいで、鰻と無花果と青痣は私の中でひとつのイメージとして繋がっている。父はこの祖母のひとり息子として甘やかされて育ち自己中心的な人格破綻者になったが、鰻が大の苦手であった。あの皮が気持ち悪いと言うのである。きっと子供の頃にひどい鰻を食ったのだろう。皮はなきが如く焼く、のが、鰻を焼く極意だと言うが、群馬の山奥で育った父にはそんな名店に行く機会はなかったに違いない。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第43回「男と食 14」【毎月末配信】

    2018-11-29 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。以前、上海蟹にハマったことがあるという敏樹先生。上海蟹の老酒漬けを友人に振るうべく、大量の上海蟹を調理していたところ、目を離した隙に一部の蟹が鍋から脱走。部屋中を探し回りますが、どうしても3匹の蟹が見つかりません。
    男 と 食  14      井上敏樹 
    先日、地図を買った。日本地図である。なんとなれば私は呆れ果てるぐらい地理に弱いからだ。昔から興味がなかった。自分は日本人だ、日本中、どこに行ってもそこは日本だ。それだけ分かっていればいいと思っていた。なにしろ広島は東北だと思っていたし、名古屋は『市』ではなく『県』だと信じていたぐらいである。友達と旅行の計画を立てていても『長野と愛媛に行きたい店がある。昼飯は長野、夜は愛媛でどうよ』などと言って顰蹙を買う始末だ。京都奈良間も三鷹から吉祥寺ぐらいの距離かと思ってタクシーに乗ったら一時間半もかかってしまった。これまではそんな感じで強引に生きて来たが、これではいかんと反省し、地図を買ったわけである。最近では夜寝る前に日本地図を眺めている。おかげで四国四県を言えるようになった。人間、幾つになっても勉強である。さて、今回は蟹の話。当然、蟹にも色々あるが、上海蟹の話である。この蟹は名前の通り中国で採れる淡水蟹でモズク蟹の仲間である。中国では蟹は海より川、川より湖のものが良いとされるが、これは上海蟹への讃歌だろう。中国では自動販売機で上海蟹を売っていて、まさに国民食と言っていい。私も、はまった。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第42回「男と食 13」【毎月末配信】

    2018-10-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。松茸の季節に京都を訪れた敏樹先生。友人と割烹の店で松茸料理を堪能するはずが、不運なことに店の料理にケチをつけるヤクザ風の男と遭遇。二人は険悪な雰囲気になりますが……?
    男 と 食  13      井上敏樹 
    先日、電車の中吊り広告をぼんやり見ていると『熱い地獄』とあった。よくある雑誌の広告である。若干の違和感を覚え、降り際によく見ると『熱い抱擁』が正解である。遠目だったので、『抱擁』を『地獄』と間違えたのだ。私は妙に納得した。『抱擁』と『地獄』は結構似ている。さて、世の中には困った事が色々ある。たとえばリュックを背負ったまま電車に乗る奴。不思議と彼らにはリュックを背負っているという自覚がない。車内が混雑している時など余計なスペースを取られるし、下手に向こうが動けばこっちはリュックが当たってよろめいたりする。困ったものだ。大体、リュックとは両手の自由が必要な時に使うものだ。登山とか戦争とかだ。まあ、人生は登山かもしれぬ。戦争かもしれぬ。百歩譲ってリュックを使うなら、電車に乗る際は網棚に乗せるか胸に抱いていただきたい。また、困ったもの、と言えばレストランで帽子を被ったまま、というのはどうなのだろう。先日は鮨屋のカウンターで帽子を被ったままの若者をみかけた。黒いソフト帽だったが、私的にあんまりあり得ない事だったので、一瞬、帽子形の髪形かと思ってしまった。食事をしながらのサングラスというのも、帽子と同じくらいあり得ない。大体、帽子もサングラスも日光から身を守るために使うものだ。登山とか、戦争とか。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第41回「男と食 12」【毎月末配信】

    2018-09-28 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。友人たちと京都を訪れた敏樹先生。夏の京都の名物である鱧(ハモ)料理にまつわる薀蓄から、20代の頃、初めての京都旅行で、尿道結石を患いながら芸者遊びをした思い出が蘇ります。
    男 と 食  12      井上敏樹 
    先日、十円玉が立った。部屋で落とした十円が床に跳ね返って立ったのである。これは、茶柱が立つより稀れな現象ではあるまいか。きっと縁起がいいに違いない。さて、今年の夏も友人たちと京都に行った。京都は盆地なので、以前は東京よりずっと暑かったが、最近では様子が変わった。東京より涼しいくらいだ。これも異常気象のせいだろうか。今夏の京都で印象に残ったのは鱧料理が少なかった事だ。夏の京都と言えば鮎と並んで鱧、いや、鮎以上に鱧であり、どの店に行っても必ずと言っていいほど鱧が出る。それも、椀種にするか、湯引きにするか、大体どこも同じ料理。そしてまずい。お碗のひとつぐらいなら、『うむ、夏だな、京都だな』と新鮮に食えるがすぐに飽きる。それが、今回の京都では、二泊で四軒の割烹を回って一度だけ、鱧の湯引きだけであった。これは一体どういうわけか。たまたまいい鱧が入らなかったのか。料理人たちが鱧に倦んだのか。客たちが実はそれほど鱧を喜ばない事に気づいたのか。それはないだろ、と思われるかもしれないが、実際、私の友人たちにも鱧好きは皆無である。ただ、鱧にも魅力がないわけではない。料理人がどんっと鱧の身をまな板に広げ、専用の包丁でシャッシャッと骨を切っていく様子はなかなかのパフォーマンスだ。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第40回「男と食 11」【毎月末配信】

    2018-08-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。前回に引き続いて鮑(あわび)のエピソードです。房州大原のビワッ貝を至高とする敏樹先生。友人の女性ライターの引越し祝いで、金に糸目を付けず食材を買えるのをいいことに、鮑のとろろ汁の調理に挑戦しようとしますが……?
    男 と 食  11      井上敏樹 
    以前、鮑に滑って転んだ事がある。鮑をおろし金の把手で殻から外していた時の事だ。外した拍子に鮑が落ちた。探していると床の鮑を踏んづけて滑ったのだ。大事には至らなかったが、不思議な事が起こった。足の裏の、丁度、鮑を踏んだ部分が赤くなったのである。痛みも痒みもなく、ただ、赤い。鮑の呪いかと思ったが、調べてみると鮑アレルギーというのがあるらしい。だが、食べてみてもなんでもない。だから気にしない事にした。
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