村山談話・河野談話に未来はあるか?
第64回 戸塚悦朗の執念、日本政府の無策
国連には国家の代表しか参加できないようなイメージがあるが、
国連人権委員会には、一定の条件を満たすNGOが
討議に参加できる制度があった。
弁護士・戸塚悦朗は、朝鮮人元慰安婦・金学順が名乗りを上げた
1991年当時、国連人権委の討議の参加資格を持つ
NGO「国際教育開発」の代表を務めていた。
これが日本最大の不幸だった。
戸塚はこの制度を利用して、国連人権委員会で
慰安婦を「性奴隷」として、日本政府を追及するよう
国連の介入を求める発言をしたのだった。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争と「抱き合わせ」にしてから、
異例の速さでこの問題が取り上げられるようになったことは
前回述べたが、当初は戸塚の提言は国連では
ほとんど相手にされていなかった。
そこで戸塚は国連人権委員会、その下にある小委員会、
さらにその下にある作業部会、さらには国連以外の
人権会議と、ありとあらゆる会合に出席しては、
執拗に働きかけを続けたのだった。
国連人権委員会、
差別防止少数者保護小委員会現代奴隷制作業部会、
ウィーン世界人権会議、国連規約人権委員会、
日本の戦後処理問題に関するピョンヤン国際会議、
女子差別撤廃委員会、国連婦人の地位委員会、
国連世界女性会議最終準会、国連世界女性会議……
戸塚本人の弁によれば、「参加した関係国際会議を
数えるだけでも気が遠くなるほどの数になった」
そうである。
ここまでの執念を持って、執拗に会議に出席しまくって、
自国の政府を糾弾するよう働きかけ続ける人間など、
他の国ではありえないだろう。
戸塚の執念がついに功を奏し、国連で慰安婦が
「性奴隷」として急速に審議されるようになってから、
日本政府はようやく反論を始めるが、対応は後手後手に回り、
「論議はボスニア・ヘルツェゴビナなど現在の
人権侵害に限定せよ」
「東京地裁の慰安婦訴訟判決を待ちたい」
「日韓条約で解決済み」
「国連創立前の事件を取り上げる権限はないはず」
といった守勢一方の論調に終始した。
不幸なことに、日本政府には戸塚ほどの執念で
日本を守ろうとした者は一人もいなかったのだ。
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