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  • 「ロシアと戦前の日本が同じだと?」小林よしのりライジング Vol.440

    2022-07-05 18:45  
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     先週予告したとおり、「戦前の日本」と「プーチン・ロシア」は同じだと主張する「表現者クライテリオン」7月号の巻頭コラムを徹底批判する。
     それにしても、仮にも西部邁門下を名乗る知識人たちが、臆病者の戦後民主主義サヨクと全く同じ心性によって価値相対主義に陥り、誰一人わしの『戦争論』にも追いついていなかったという事実には、唖然とするばかりだ。
     問題の巻頭コラムで、匿名の筆者(どう見ても編集長の藤井聡氏だろう)は、次のように述べている。
      さらに言えば、今回のプーチンの決断を眼にした際に思い浮かべるべきは、「ヒトラー」などではなくて、むしろ、追い詰められていった先で暴発した戦前の日本だろう。 (中略) 戦前の日本がアメリカと衝突する直接の切掛けを作ったのは、「日本の利益線・生命線」であるところの満州――ロシアにとってのウクライナ――であったことを想い出すべきである。そんな過去を持ちながら、今回の戦争を前に、狂気の膨張主義者の所業だと他人事のように批判できてしまう日本人の感覚が私には分からない。
     えらそうに言っているが、言ってることが全て間違っている。
     プーチンが戦前の日本と同様に 「追い詰められていった先で暴発した」 なんてことは、断じてない!!
     確かに戦前の日本は、経済制裁によって極限まで追い詰められた末に戦争に踏み切った。ただし、わしは決してそれを「暴発」とは言わない。
     日本は「ABCD包囲網」(A=アメリカAmerica、B=イギリスBritain、C=中国China、D=オランダDutch)と呼ばれる対日経済封鎖網によって対外資産を凍結され、さらに石油やゴム、タングステン、ボーキサイトなど、生活必需品の原料となる資源をことごとく禁輸され、徹底的に経済を締め付けられた挙げ句に開戦を決断したのだ。
     だが、 ロシアが欧米から経済制裁を受けたのは 「開戦後」 である!
     ロシアが経済制裁で追い詰められて開戦したという事実は一切ない。
     たった4,5カ月前の出来事の前後関係も分からないのだろうか?
     戦前の日本がアメリカから受けた経済制裁の中で、致命的だったのは 「石油全面禁輸」 だった。
     石油のほとんどを輸入に頼る日本では、 「石油の一滴は血の一滴」 と言われていた。石油備蓄量は平時で2年分、戦時で半年分しかなく、これを使い切ったら軍も産業も全てが崩壊する。日本はまさに国家存亡の崖っぷちまで追い込まれたのだ。
      それに対してロシアは、 世界第3位の原油産出国 である!!
     ロシアはウクライナ侵略後に強力な経済制裁を受けても、「石油輸出」をカードにして欧州に脅しをかけ続けることができて、今も石油で1日10億ドルの利益を上げている。
      これでどうして、戦前の日本と現在のロシアが同じと言えるのか?
     これだけでも、あまりの狂いっぷりに大爆笑である。
     だが、藤井氏の歴史認識の誤りはこれに留まらない。あまりに多すぎて手が付けられないほどだが、なるべく丁寧に解説していこう。
      対米開戦前、日本・東条英機内閣は戦争を回避すべく、アメリカに「甲案」「乙案」という譲歩案を提出した。
    「甲案」の概要は以下のとおりで、軍の猛反対に抗して東郷茂徳外相が必死にまとめたものだった。
      1.日本と支那の間に和平が成立した際は、支那に展開している日本軍を2年以内に全面撤兵させる。
     2.支那事変が解決した際は、「仏印」(フランス領インドシナ=現・ベトナム)に駐留している日本軍も撤兵させる。
     3.通商無差別待遇(自由貿易)が全世界に適用されるなら、太平洋全地域と支那に対してもこれを認める。
     4.日独伊三国同盟への干渉は認めない。
     後の「東京裁判」において、アメリカ人弁護人・ブレークニーは 「日本の真に重大な譲歩は東条内閣が作成した『甲案』であり、『甲案』において日本の譲歩は極限に達した」 と言っている。
     そして東条内閣は「極限の譲歩」をした上さらに、甲案での交渉が決裂しても、 日米開戦だけは防ぐための暫定協定案として「乙案」も用意していた。 その概要は以下のようなものである。
      1.蘭印(オランダ領東インド=現・インドネシア)での物資獲得が保障され、アメリカが在米日本資産の凍結を解除し、石油の対日供給を約束した際には、南部仏印から撤退する。
     2.更に、支那事変が解決した際には、仏印全土から撤退する。
     経済制裁さえ解除されれば撤退するというわけで、つまり日本の南方進出はあくまでも経済的問題のためであり、 「領土的野心」はないという意思の表明だったのである。
     ところが、アメリカは「甲案」「乙案」を一顧だにせず、それまで積み重ねてきた日米交渉の経緯も全て無視した 「ハル・ノート」 を突き付けた。その概要は以下のとおりだ。
      1.日本軍の支那・仏印からの無条件撤兵。
     2.支那における重慶政権(蒋介石政権)以外の政府・政権の否定(日本が支援する南京国民政府=汪兆銘政権の否定)。
     3.日独伊三国同盟の死文化(独伊両国との同盟を一方的に解消)。
      つまり、日本に対して明治以降大陸に築いた権益の全てを放棄せよと迫ったわけである。
     これは、後に「東京裁判」で パール判事 が、このようなものを渡されたら 「モナコやルクセンブルクのような小国でも矛をとってアメリカと戦ったであろう」 と評したほどのものだった。
     しかも、これを渡したら戦争になるということはアメリカの側も百も承知で、ハル国務長官は「ハル・ノート」を日本側に手交した後、スチムソン陸軍長官に、 「私は日米交渉から足を洗った。今や、この問題は貴方とノックス(海軍長官)、すなわち陸海軍の手中に落ちた」 と言った。
     ハル・ノートを渡したらもう交渉はなく、あとは軍隊の仕事だと分かっていたのである。
      さて、ロシアは戦争を回避するために「甲案」「乙案」を出したか?
      アメリカはロシアを開戦に追いこむために「ハル・ノート」を突き付けたか?
     そのようなことは一切なかった。
      ロシアは一方的に軍を展開し、戦争回避のための外交交渉など何ひとつやらず、問答無用で侵略を始めたのだ。
     また、日本は米英に「宣戦布告」をして(米国への通達が遅れるという大使館のミスはあったが)戦争を行ったが、ロシアはウクライナに宣戦布告もしていないし、「特別軍事作戦」と称して未だに「戦争」であることすら認めていない。
     どこをどう探しても共通点が見つからないではないか!
     そして何よりも、この立論の根本である 「日本にとって満州が『生命線』だったのと同様に、ロシアにとってもウクライナが『生命線』である」 という主張が、根本的におかしいのである。
  • 「【どっちもどっち論】の臆病保守」小林よしのりライジング Vol.439

    2022-06-28 17:45  
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     常識的な庶民感覚で見れば、どっからどう見たってプーチンが悪であり、ゼレンスキーが善である。
     国際法の視点から見ても、他国の主権を侵して、武力で領土に踏み入ったら「侵略」であって、侵略以外の評価はない。
     日本は国際法秩序を守るという立場から、欧米諸国と協調してロシアと戦わなければならない。
     この非常時に、たったこれだけの判断ができない「知識人」がいるのが驚きだ。
     藤井聡氏(京都大学大学院教授)が編集長の雑誌「表現者クライテリオン」7月号が、『「ウクライナ」からの教訓 来たるべき“有事”にどう備えるか?』と題する特集を組んでいる。
     約100ページにわたり、14人もの論者が登場する大特集なのだが、皇室論と同様に、やはり保守の劣化を感じる。掲載された人物の誰もが「善悪の価値判断を避け、「価値相対主義」に陥っている。
     彼らは「価値相対主義」という批判を「レッテル貼り」と言って、避けようとしているが、笑ってしまうことに「価値相対主義」なのだ。
     何しろ、表紙を開くとすぐ載っている藤井編集長の巻頭言からこうだ。
    (略)日本国内のマスコミ世論は「英雄ゼレンスキー大統領VS悪魔プーチン」とでも言うべき構図一色で塗りつぶされることとなった。
     ただしこうした「勧善懲悪」構図だけでは、今回の「ウクライナ」問題を解釈し尽くす事など到底できない。(中略)こうした単純な認識構図だけでは、貴重な教訓の大半をみすみす廃棄してしまうことになる。
     そのうえで藤井氏は「 多様な知見・教訓を得ることを目途に」「多面的な視点・角度から様々に論ずる特集を企画することとした」 と宣言するのだ。
     笑うしかない「言い訳」である。ここまで周到に「言い訳」を宣言してから持論を披露する態度に、「ベルト歌舞伎」にも似た臆病さを感じてしまうのが「保守」の庶民的感覚だろう。
     思い出すことがある。 1995年3月、地下鉄サリン事件と警察によるオウム強制捜査以降、マスコミ世論は 「悪=麻原彰晃・オウム真理教VS善=警察・市民社会」 とでも言うべき構図一色になっていた。
     ところが、これにいわゆる知識人たちが 「そんな勧善懲悪の単純な認識では、事件の深層は理解できない」 などと言い出し、 「警察にも『悪』はある」 だの、 「市民社会に受け入れられないオウムの側にも理はある」 だのと主張した。
     そしてついには、「戦後最大の思想家」とまで評された吉本隆明が 「麻原は偉大な宗教家だ」 と褒め称え、テレビには 「一連の犯罪はオウムの犯行ではない」 と断言する人物まで出てくる始末となってしまったのである。
     大衆批判を建て前にして、「善悪二元論を否定するのが知識人」という、これも形式化したえらそうな立場を取る手法は、「相対主義」という思想形式の流れに沿ったものだった。
      わしはオウム事件の最中に麻原が「悪」だと断定し、事件はオウムの犯行だと断言した。 ところが上のようなえらそうな知識人たちから反発され、「正義を言う者は馬鹿」であるかのような批判にさらされた。
     ところが可笑しなことに、大衆批判をしていた西部邁氏が、こう言ったのである。
      オウム問題では「オウムがやった」と断言し、薬害エイズ問題でも「厚生省が悪い」といい放って行動し、自分の言動に伴う責任を貫徹した小林よしのりは偉い。みんな四の五のいわずに褒めるべきなのです。
    (「発言者」1996年5月号、『新・ゴーマニズム宣言』1巻に収録)
     そういえば、薬害エイズの時にも、目立ちすぎるわしに水をぶっかけようとして 「厚生省がそんなに悪いのか?」 などと言った知識人がいた。
     善悪の価値観をはっきりさせ、自分の責任で勧善懲悪に徹すると決めて行動したわしを理解していた知識人は、後にも先にも西部氏しかいない。
     その後継を自認する藤井聡氏ら一派は、西部邁の「時処位」の感覚を全く理解していない。そもそも西部邁の大衆批判は、知識人をも大衆として批判していたのである。
      プーチンは麻原彰晃と何も変わらない。そしてロシア国民は「権威主義」に嵌り、オウム信者のように「洗脳」されているのである。
     相対主義で善悪の区別もつけられなくなった「表現者クライテリオン」が、プーチン擁護だと判定され、恥をかくのは、それほど先のことではないだろう。
     
     しかも巻頭言だけでは足りないのか、本論である特集に入る前にもうひとつ「巻頭コラム 鳥兜」というコーナーがあり、同様の主張を力いっぱい展開している。
     その匿名筆者(「鳥兜氏」としておこう)は、冒頭こう書いている。
  • 「生娘シャブ漬けと道鏡コンプレックス」小林よしのりライジング Vol.434

    2022-04-26 17:15  
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    「生娘をシャブ漬け戦略」
    「田舎から出てきた右も左もわからない若い女性を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」
     …よくまあこんなに、いろんな差別意識がゴチャマゼに入り込んで、どこから手をつけたらいいのかわからない発言が出てきたものだ。
     驚くのは、この発言をした吉野家常務(当時)・伊東正明が49歳で、わしよりも20歳近くも若いということだ。
     しかも伊東は、マーケティング戦略のプロとしてヘッドハンティングされた「敏腕マーケター」だったというのだ。
     それなのに、言っていることはものすごく古い昭和の感覚だ。田舎から出てきた女は世間ずれしていない処女だなんて、まるで昭和30年代の「集団就職」で上京してきた、赤いほっぺの少女みたいなイメージである。
     その時代を知っているジジイが言うのならまだわかるが、49歳でそんなことを言っているのが不思議でならない。どういうわけだか、そんな偏見が世代を越えて引き継がれてしまっているのだ。
     そもそも、田舎娘は無垢・生娘という認識がナンセンスすぎて笑うしかない。
    「生娘」という言葉に至っては、江戸時代のスケベ代官がタイムスリップしてきたのかと疑いたくなる。
     本当はヤンキー文化が残っている田舎の方が、若い娘がすぐ男とくっついたりするものだ。沖縄だって、若いうちにさっさと男と付き合って結婚して子供つくって離婚している女性が多い。むしろ今はそっちの方が「田舎娘」のイメージだとわしは思っていたのだが。
     普通は時代がどんどん変わっていけば、感覚もいつの間にか変わるものだ。今じゃチョンマゲ姿には絶対なれない。わしの感覚だって、時代と共に自然に変化している。
     ところがどんなに時代が変わっても、古い感覚のまま変わらない人間がいる。それどころか、新しい時代の人間のはずなのに、古い感覚をそっくり引き継いで「田舎から出てきた女は無垢な生娘」だなんて、本気で思っている者がいるのだ。
      その感覚は、皇統の男系固執保守たちとそっくりである。これだけ男女差別は野蛮だという意識が浸透してきた時代にありながら、今なお女の血など認めない、男の血統しか許されない、男系男子しか国民の象徴にはなれないなどと、まだ言っている者がいるのだ。 この意識の古さ、意固地さにわしは愕然とするしかない。
     たとえ「女性天皇はいいけど、女系天皇はダメ」と言っても、実質「女性天皇から生まれる子供は女系」として、女性天皇も拒否しているわけだから、奈良時代より感覚が古くなっている。肝心なのは「男の血」であって、「女の血」を否定しているのである。
      天皇陛下の実の娘がいらっしゃるというのにそれではダメで、それよりも600年以上さかのぼらないと天皇陛下とはつながらない「男の血」の方が重要だなんて、到底理解のできない感覚だ。
     600年も離れたら血が薄まり過ぎているはずだが、そんな感覚すら一切ない。結局は「神武天皇のY染色体」とかいうものを信じて、純粋なる「男系血統」なるものがあると信じ込んでいるのだ。
     本当に医学的に考察すれば、「神武天皇のY染色体」を持っている人など日本中にいくらでもいて、誰でも天皇になれてしまうという結論になってしまう。
     しかももっと本来的なことをいえば、「純粋血統」を追求しようという発想自体に、全く意味なんかないのである。
     そもそも「純粋日本人血統」なんてものはあるだろうか?
     今どきそんな感覚なんか通用するはずもない。もう今の日本人にはいろんな人々との混血が進んで、誰になに人の血が入っているのかわかったものではなくなっている。
     試しに「外国人の血が流れていて驚く有名人」というサイトを見たら、ブラックマヨネーズ・小杉竜一(曽祖父がアメリカ人)、平野レミ(祖父がフランス系アメリカ人)、安室奈美恵(祖父がイタリア系アメリカ人)、布袋寅泰(父親が韓国人、母親が日本人とロシア人のハーフ)、宮沢りえ(父親がオランダ人)といった名前がズラッと並んでいる。この先、出会って好きになった相手に、実はロシアの血が入っていたとかいうことだって、いくらでも起こりうるのだ。
     仮に外国人の血が入っていなければいいとしたところで、それなら琉球の血はいいのかとか、アイヌの血はいいのかとかいう話になっていくだろう。純粋血統種という発想自体がもう、ナンセンスとしか言いようのないものなのだ。
  • 「こびナビは知っていた~『治験停止するほどの有害事象が出ている』」小林よしのりライジング Vol.433

    2022-04-19 19:00  
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     こびナビの峰宗太郎と日経の編集者・山中浩之の共著 『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』 という本をたまたま入手した。
     2020年12月8日に日経BPから出版されていた本だが、読み始めてみると、驚くべき記述の連続だった。
     こびナビでは、「ワクチンを打て!」と煽りまくっている張本人が、本書では、mRNAワクチンが猛スピードの開発競争案件になってしまっており、治験の判断基準も激甘だと指摘。そして、 「治験停止するほどの有害事象が出ている」 と明かしているのだ。さらに、接種後の副反応だけでなく、 「10年後に何が起きるか誰も分からない」 とまで言及。
     本書は「危険性を知っていて、ワクチンを打てと煽りまくっていた」という証拠でもある。その内容をここに報告しておきたい。
     
    ●「テレビに出ている人で専門の人はいません」
     序盤で、峰は、コロナの感染経路についてみずからの知見を披露している。
    「飛沫感染がメインで、マスクに効果あり」 という考え方が基本で、 「だからユニバーサルマスクには意味がある」 と結論づけるというありがちな発言が続くのだが、 「接触感染、糞口感染も起こりうると早くに分かってもいる」 と述べ、この2つの感染経路を徹底的に否定する論者とは距離を置いているようだ。
     手が汚染される部分として、ドアノブ、ボタン類、銀行ATM、現金などを挙げ、「洗っていない手で目、鼻、口などの粘膜にふれるのはやめましょう」という。この点は、同意する。鼻をいじるのはやめられないが。
     さらに、 「テレビに出ている人で専門の人はいません」 と述べ、実名を挙げることは避けているものの、あきらかに、岡田晴恵、北村義浩、児玉龍彦、二木芳人、西浦博などを批判してもいる。
     この流行はいつまでに終息するかという予測とか、長期的、中期的展望を述べる人は全部、根拠の薄弱な発言をしていると思っています。 端的に言えばうそつきです。
     ところが、人脈の問題なのか、持ち上げておけば自分がトクをする相手なのか、「うそつき」の中から、尾身茂と西浦博のことだけは、名指しをして急角度のフォローを入れる。
     尾身茂には 「述べる資格がある」 、西浦博は 「疫学モデリング分野の第一人者」 と持ち上げ、西浦の予測については 「かなり精度が高い」 と褒め上げた。
     尾身には資格がある、という上から目線は一体なんなのか、そして、西浦の予測が大外れだったことなんて、本書刊行時点で日本中が知っているのに、アンタこそ、どんだけ見え透いたうそつきなのかと言いたい。
    ●「薬物には慎重派」だった!
     読み進めて驚いたのは、薬に対する見解だ。
  • 「リベラルの方が好戦的」小林よしのりライジング Vol.431

    2022-03-22 19:10  
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     ロシアがウクライナへの侵略戦争を始めて、3週間以上が経過した。
     その間に、日本人の戦争に対する感覚があまりにも世界の常識からずれているということが明らかになった。何しろ侵略されたら逃げろとか、降伏しろとかいう発言が、テレビで平然と流れてしまうのだから。
     そして、日本人の感覚がずれていると感じたことは他にもある。
     アメリカのジョー・バイデン大統領が、無茶苦茶な表現でロシアのウラジーミル・プーチン大統領を罵倒している。
     侵攻後は 「プーチンは侵略者だ。プーチンがこの戦争を選んだ」 という具合に「大統領」の呼称を省いて呼び捨てにすることが多くなり、さらには 「戦争犯罪人」 と断定し、 「ウクライナの人々にモラルに反した戦争をした真の悪党だ」 と言い放った。
     そして極めつけには 「殺人的な独裁者、根っからのThug(サグ)だ」 と、チンピラ、極悪人、ギャング、殺人者など幅広いワルを意味する「Thug」というスラングまで使って罵倒したのだ。
      各国の指導者で、他国の指導者をここまで罵った人などほとんどいない。
     プーチンでさえ、自国民を統制するためには 「ロシア国民は、真の愛国者と人間のクズや裏切り者を常に見分けることができる。口の中に入り込んできたハエを道端に吐き捨てるように排除するのだ」 とかなりの暴言を吐いているが、バイデンに対してそんな言い方はしていない。中国の習近平だって、アメリカを非難はしても罵詈雑言は言わない。あんな罵倒をするのは、他には北朝鮮の金正恩くらいだろう。
     ネットでは、バイデンは年を取り過ぎて感情のコントロールが利かなくなっているのではないかという憶測も出ていたが、いくらバイデンが年寄りだといっても、あれは決して耄碌して言っているわけではない。
     一般的には、ドナルド・トランプ前大統領の方が過激な男だというイメージがあり、いかにもトランプこそああいう口汚い暴言を吐きそうだと思われているが、実際のところ、トランプからそんな発言は出ていない。
      トランプはビジネスマンであり、経済のことを第一に考える。物事を善悪だけでは判断しないから、ああ見えてもこういう場面では案外慎重に言葉を使うのだ。
     それに対して、 バイデンはリベラルである。
      リベラルは損得勘定よりも、善悪や正義といった倫理観を最も意識するから、こういう場面では逆に過激になる。人権が徹底的に蹂躙されるようなことが起きようものなら、怒髪天で激怒するのだ。
     日本人の感覚としては、アメリカでは「保守」の共和党の方が過激で好戦的な「タカ派」であり、「リベラル」の民主党の方が穏健で平和的な「ハト派」だというイメージだろう。
     ところが違うのだ。 共和党は「損か得か」 で考えるが、 民主党は「正義か悪か」 で考える。 だから実は「リベラル」の民主党政権の時の方が、戦争は起こりやすいのである。
      そもそも第二次世界大戦に参戦した当時のアメリカ大統領は、 民主党のフランクリン・ルーズベルト だ。
     ルーズベルトは日本にハルノートを突き付けて開戦を余儀なくさせ、真珠湾攻撃を受けるとこれをプロパガンダに最大限利用し、厭戦ムードの強かった国内世論をひっくり返してヨーロッパ戦線への参戦も実現させた。
     また、時代をさかのぼれば 第一次世界大戦に参戦した際の大統領も、 民主党のウッドロウ・ウィルソン だった。
      朝鮮戦争は民主党の ハリー・トルーマン の時。 ベトナム戦争 は、共和党のアイゼンハワー政権時代に紛争が始まっているが、 大幅に兵力を増派したのは民主党の ジョン・F・ケネディ 、 トンキン湾事件を起こして泥沼の戦争にしたのはこれも民主党の リンドン・ジョンソン である。
      ビル・クリントン大統領はソマリア内戦への介入や、ユーゴスラヴィア空爆への参加、イラクに対する「砂漠の狐作戦」と呼ばれる大規模空爆、スーダンへのミサイル攻撃を行っている。
     湾岸戦争を起こしたジョージ・ブッシュ、アフガン戦争、イラク戦争を起こした息子のジョージ・W・ブッシュは共に共和党だが、イラクのクウェート侵攻だの、9.11テロだのが起きては、この時の大統領が民主党だったとしても、間違いなく戦争に踏み切っていただろう。
     ブッシュJrの次の大統領となった民主党、 バラク・オバマ は就任直後の演説ひとつでノーベル平和賞まで取ってしまったが、 実際にはその任期8年の全期間にわたって戦争をしており、イラク、シリア、アフガニスタン、リビア、イエメン、ソマリア、パキスタンに対して2015年は2万3144発、2016年には2万6171発の爆弾を投下している。
     9.11テロの首謀者・ ビンラディンを暗殺したのもオバマ政権 である。オバマ政権では毎週火曜日の会議で「ベースボールカード」と称されるテロリストたちの履歴書を確認し、 大統領自身が暗殺リストを決定していた という。
  • 「陰謀論に嵌る馬鹿」小林よしのりチャンネル Vol.430

    2022-03-15 18:40  
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     ある場面では、少数派の情報や意見が正しいこともあるし、また全く別の場面では、多数派の方が正しいこともある。それはその都度その都度判断していく以外にない。
     そんなことは言うまでもない当たり前のはずなのに、こんな幼児に諭すような話をいちいちしておかなければならないとは、情けない限りだ。
      ロシアのウクライナ侵攻は全く正当化のできない侵略戦争であり、プーチンが悪であって、ウクライナに義があり、ゼレンスキー大統領は英雄である。
      この構図を価値相対化したって何の意味もない。いまさらポストモダンでもあるまいし、オウム真理教は悪ではないと言ってたクソサヨクと一緒だ。
     マスコミの論調も「プーチン=悪」の路線に乗っているが、これに対してネット内では 「ウクライナにも非はある! プーチンは悪くない!」 の大合唱が起きた。
     既視感すごい。「麻原彰晃は真の宗教家だ」「上祐さんは頭いい」「青山さんは嘘つかない」、オウムを批判するわしに寄せられた馬鹿どもの手紙やはがきは膨大だった。
     今現在、プーチン肩入れ派のネット民が、わしを批判する根拠は、プーチンが侵攻を正当化するために言った 「ウクライナはネオナチ政権であり、我々はネオナチと戦っている」 というデマ・プロパガンダだった。
     普通、こんなこと聞いたら「はあ?」と疑問符の嵐だろう。
     即座に「お前のやってることの方がナチくさいじゃないか!」とツッコミを入れるのが常識というものだ。
     世界中でも大多数の人がそう思ったし、だからこそすぐさま「プーチンは精神に異常を来たしている」説が唱えられたのだ。
      ところが、たったそれだけの常識がない人も、ネットの情報でかく乱される者が一定数いるのである。
      ウクライナ語は、ロシア語・ベラルーシ語とは同系統ではあるが別の言語であり、ウクライナは独立国家を形成していた時期もある。
     国を失い、ロシア帝国・ソビエト連邦の一部とされた時代が長かったが、 ウクライナ人には独自の言語と文化を持つという民族アイデンティティとナショナリズムが脈々と受け継がれ、ソ連崩壊の後、1991年に念願の独立を果たしたのだ。
     ただし、歴史的にこの地ではウクライナ人の他にロシア人やユダヤ人なども混住しており、西部地域はヨーロッパの、東部地域はロシアの影響が強い。
     独立後も、 住民の半数以上をロシア人が占めているクリミア半島ではロシアへの帰属を求める声が高く、民族紛争の火種を抱えていた。
      そして2014年、クリミア半島で親ロシア派の武装勢力が蜂起し (というが、これ自体ロシアの関与が疑われる) 、議会、空軍基地などを占領。ロシアはこれに軍を投入 (いきなり他国に軍隊を入れたら主権侵害なのは当然) 、クリミアは住民投票 (他国の軍が入っているうちに住民投票は異常) を経て、独立とロシア編入を宣言した。
      ただし国際連合はこれを認めず、国際的承認は得られていない。
     侵略の方法論としては実に巧妙で学ぶところがあるが、国際法違反なのは間違いない。
      武装蜂起?は同じくロシア系住民が多い東部のドンバス地方にも飛び火し、 「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」 を名乗り、ウクライナからの独立を宣言した。
      だがこれも、国連は国家として承認していない。
     クリミアと同じ匂いがするからだろう。
     両国はクリミア同様ロシアへの編入を求め、ロシアはそれには応じなかったが、両国の軍の維持などはロシアが非公式に援助していると見られている。
     そして今回、この ドネツク・ルガンスクで、 「ウクライナの「ネオナチ」がロシア系住民を虐殺している」 として、 プーチンは住民保護を口実に戦争に踏み切り、ネット民はこぞってプーチンの言い分を信じたのである。
     だがプーチンも、その主張を信じる者も、 「ウクライナのネオナチがロシア系住民を虐殺している」 という確たる証拠を何も示していない。
     そもそも 虐殺が本当なら、なぜロシアはそれを国連安保理で訴えて、開戦に対する国際社会の同意を取り付けなかったのか?
     プーチンは開戦時の演説で、アメリカが証拠もなく「イラクが大量破壊兵器を保有している」と主張し、これを開戦理由に戦争を起こしたことを非難しているのに、 自分が主張する開戦理由については、国連安保理にかけることすらしなかった。
     これだけで、虐殺などデマだと断言していい。
     一方、「ウクライナのネオナチ」の証拠として挙げられたのが「アゾフ連隊」という武装右翼組織の存在だ。
  • 「ロシアによるウクライナ侵略戦争」小林よしのりライジング Vol.429

    2022-03-08 17:25  
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     先月半ばまで、どんなにウクライナで緊迫が高まろうと日本のメディアは相変わらずコロナばっかりで、「戦争なんか起こらない」「欧米が煽っているだけ」なんて論調もずいぶん目にした。
     さすがに実際に戦争が始まってしまうとメディアもウクライナ一色となったが、しかし日本人はこの事態を、どれだけ真面目に見ているのだろうか?
     わしは今回のロシアによるウクライナ侵略戦争には、もちろん断固反対する。
     自称保守派もこの戦争には反対のようで、産経新聞は2月25日の社説で 「れっきとした主権国家への明白な侵略である。断じて許すことはできない」 と主張したが、いったいどのツラ下げて、としか言いようがない。
      産経新聞はイラク戦争の際には、アメリカによる 「れっきとした主権国家への明白な侵略」 を、諸手を挙げて支持したじゃないか。
     産経や自称保守は、イラク戦争の際には 「フセイン大統領が大量破壊兵器を所有している」 というアメリカのデマを信じて大賛成したわけだが、そんなのは、プーチンが言った 「ゼレンスキー大統領はナチズムの信奉者で、ロシア系住民を虐殺している」 というデマを信じるのとほとんど大差のないものだったのではないか?
      自称保守派はただ、アメリカの侵略なら許されて、ロシアの侵略なら許されないと言っているだけで、こんな論法には全く説得力がない。 思想がないから論理が貫徹しないのだ。
     一方の左翼は左翼で、共産党の志位は 「プーチン大統領のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです」 と発言。これを受けて 「もしロシアに9条と同じようなものがあり、それがしっかり機能していれば、ロシアはウクライナに進攻できなかったでしょう」 などと幼児レベルのことを言い出す者も出てきて、「9条お花畑」が満開という有様だ。
     場合によってはこの先10年以内に、日本も無関係ではいられなくなる重大事態に発展する恐れもあるというのに、右も左も思考を停止させ、ただ平和ボケの極みの空気の中を漂っている。
      わしがロシアのウクライナ侵略戦争に反対するのは、単なる反戦平和主義からではない。
     これを許してしまったら、 国際法なんか何の意味もなく、世界は「万人の万人に対する闘争の自然状態」(ホッブス)に回帰していくしかなくなってしまうからだ。 弱肉強食の原理が全てとなり、強大な軍事力を持つ核保有国だったら、何をやってもいいという野蛮な世界になってしまうからだ。
     もしも日本が核武装して、世界一強い軍隊を持っていたらそれでもいいかもしれないが、今の日本はとてもそんな状態ではない。だから、 国際法秩序の維持 は死活問題なのである。
     プーチンは国際法秩序など簡単に踏みにじることができると思っていたのだろうが、それは完全に誤算だった。
     ロシアの侵略は国際社会から徹底的に批判され、 米欧は予想外の早さでロシア中央銀行を含む複数の銀行を 「国際銀行間通信協会(SWIFT)」 システムから除外するという、「金融の核爆弾」と呼ばれる制裁を決定した。
      これによってロシアの通貨ルーブルは暴落し、過去最安値を更新。ロシア中央銀行は政策金利を9.5%から20%に倍以上引き上げた。
      民間企業でも、米欧の石油大手がロシアでの石油・天然ガス開発事業から相次いで撤退、他の産業でも大手企業が続々とロシアにおける事業から撤退するなど、自身の商売を考えれば不利益になることも顧みずに、制裁を行う動きが広がっている。
     パラリンピックでは開幕前日にロシアと支援国ベラルーシの選手が急遽参加を認められなくなった。
     爆撃で殺された選手の写真を掲げて、 「攻撃国は参加できるのに、彼が競技をする機会は二度とない」 と言ったウクライナの記者の訴えがかなり効いたように思えるが、「スポーツと政治は違う」などと言う人には、あのウクライナの記者に答えられる言葉があるのだろうか?
     もともとロシア国内の世論は、新聞・テレビしか見ない年寄りは別として、ネットなどで自ら情報にアクセスできる若者を中心にウクライナへの侵攻には懐疑的で、 ロシアでは異例の反戦デモまで起きていた。