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記事 7件
  • 「【バングラデシュ事件】ついに日露・大東亜戦争の遺産は食い潰された」小林よしのりライジング Vol.184

    2016-07-12 15:40  
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     バングラデシュの首都ダッカのレストランを過激派組織「イスラム国」のテロリストが襲撃し、日本人7人、イタリア人9人を含む民間人20人を殺害するという大事件が起きた。
     この事件が、大の親日国であったバングラデシュで起きたという意味を、我々はもっと深刻に捉えなければいけない。
     バングラデシュの国旗は緑の地に赤い円というデザインで、日の丸によく似ている。
     
     バングラデシュのシェイク・ハシナ首相は2014年5月に来日した際の講演でこの国旗について、父親で初代大統領などを務めたシェイク・ムブジル・ラフマンが、1972年の国旗制定時に「日本に魅せられ、日の丸のデザインを取り入れた」ものだと語っている。
     パラオの国旗も青地に黄色の円で日の丸に似ており、元高千穂商科大学教授の故・名越二荒之助(なごし・ふたらのすけ)氏は、講演で日の丸とバングラデシュ、パラオの国旗を「日の丸『三兄弟』」と称し、他の親日国の国旗と併せて次々と広げるパフォーマンスをやっていた。

    (『日本統治論』わしズム2005秋号『ゴー宣EXTRAパトリなきナショナリズム』に収録)
     その名越氏はバングラデシュの国旗について、著書にこう記している。
     私が駐日大使館に国旗の意味を訊ねたら、広報担当官が流暢な日本語で「日本への憧れですよ」と言下に答えた。私が「それは外交辞令ではないか。独立国らしく答えて貰いたい」と言うと、「私の国では国旗の意味を特定していない。解釈は自由なのだ」という。そして、「バングラデシュというのは、“ベンガルの国”という意味である。そのベンガルに世界に誇るべき偉人が三人いる。一人はアジア人で最初にノーベル文学賞を貰った詩聖タゴール(岡倉天心と親交あり、数回来日している)であり、続いてインド独立に命をかけたチャンドラ・ボース、そして極東裁判で正論を貫いたラダビノッド・パル判事だ。この三人はいづれも日本と深い関係にある」と答える。
     同じ解釈をするのは大使館員だけではない。独立した時に日本は早川崇国会議員を団長に、バングラデシュを訪問したことがある。その時建国の父といわれるシェイク・ムジブル・ラーマン首相が、訪問団に同じ趣旨のことを述べたという。このことは同行した田中正明氏の証言でもある。
    (『世界に開かれた昭和の戦争記念館4 大東亜戦争その後』展転社)
     少々話がそれるが、パラオの国旗についても触れておきたい。
  • 「パリ、同時多発テロの必然性」小林よしのりライジング Vol.156

    2015-11-24 18:25  
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     129人の死者と352人の負傷者を出す大惨事となったパリの同時テロは、確かに痛ましい事件である。
    「私」的感情としては世界の都市の中でパリは特に好きだ。パリで無差別テロとはまったく許せない。パリに対して贔屓する感情になってるものだから、テロリストたちに対して腹が立つ。
     だが、「私」的感情に囚われて、思考停止するわけにはいかない。
     テロ以降のフランスの反応は、アメリカ9.11テロの時とまるでそっくりである。
     オランド大統領は、ベルサイユ宮殿に上下両院の全議員を招くという異例の形式で演説し、「フランスは戦争状態にある」と宣言した。そして、シリアで「イスラム国」の拠点とされる場所に対し、連日の空爆を行っている。
     9・11の時、当時のブッシュ大統領が直ちにこれを「戦争行為」と述べ、「対テロ戦争」の名のもとにアフガン戦争、イラク戦争へ突き進んで行ったのと、まったく一緒だ。
      アメリカが始めた「対テロ戦争」の結果はどうなったか?
      世界は未だ9.11テロ以降の後始末をやらなければならない段階にあり、解決の見込みは一切ない。
     テロの根絶などできるわけもなく、むしろイラクのフセイン政権を崩壊させてしまったがために、その無秩序の中からイスラム国が生まれてしまい、テロは世界中に拡散してしまった。
     その結果として、今回はパリでテロが起きたのである。
     この経緯が頭に入っていれば、ここで「戦争」を宣言して空爆を強化するというのは、アメリカの失敗の轍を踏む最悪の選択だと容易にわかりそうなものだが、もはやフランスも冷静な判断ができない状態になっているらしい。
     フランスはイラク戦争に反対したが、あの時も、もし自国が直接テロの被害を受けていたら、大量破壊兵器があろうとなかろうと関係なく、アメリカを支持していたのだろうか?
     オランドは今回のテロについて 「シリアで計画し、組織され、ベルギーで準備された」 と述べた。
     首謀者とされる人物はモロッコ系ベルギー人で、実行犯はシリアへの渡航歴がある過激派のフランス人や、シリアからの難民を装って入国したと見られる人物など「多国籍」のグループだったという。
      これも9.11の時とまったく同じなのだが、グローバリズムで国境の壁が低くなって、人の行き来がしやすくなっているために、テロリストが容易に侵入することができるのだ。
      特にEU加盟国のうち22カ国とその他4カ国で形成するシェンゲン圏では、国境管理が廃止され、出入国審査なしで行き来できるようになっている。だからこそ、国際手配されていたテロリストでさえ楽々とベルギーからフランスに入国できたのだ。
      また、イスラム国のメンバーには、シリアやイラクなどの支配地域から各国に送り込まれ、普通に市民生活を送りながらテロの機会を待つ「スリーピング・セル(休眠細胞)」がいるという。
     彼らは難民に紛れたり、偽造パスポートを使ったりして入り込んでおり、その実態はまったく不明で、いつどこで次のテロが起こっても不思議はない。
     さらなるテロリストの侵入を防ぎ、国を守るためには、まずはグローバリズムの理念を疑わなければならない。国境の壁は、低くしてはいけないのだ。   EUではこの事態を受け、国境管理の強化を検討し始めたが、それは圏内の国境を撤廃するというEUの理念そのものを否定するジレンマに直面することになる。
     国家は国境を守らなければいけないものだ。国を守るためには、国境の警備を強化し、移民を制限しなければならない……と、これならフランスの極右政党・国民戦線の党首マリーヌ・ルペンの主張が正しいことになってしまう。
     だが、本気で国を守ることを考えるなら、これを単に「極右」「排外主義」と片づけるわけにもいかない。これは「愛国主義」とも言えることになるわけだ。
      そもそも、フランスはアラブに怨まれて当然である。
  • 「憎悪に駆られ暴走した先の未来とは?」小林よしのりライジング Vol.122

    2015-02-24 21:30  
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     イスラム国は残虐非道だ! テロに屈するな! イスラム国を殲滅せよ!
     ……といった単細胞・反知性主義の言葉が、首相から国会からマスコミから一般大衆まで、ありとあらゆるところに蔓延している。
      かつて9.11以降、アメリカがアルカイダやタリバンに、あるいはフセイン政権に戦争を仕掛けるときにも、恐米ポチと化した日本人たちが、似たような善悪二元論を振りかざしたものだ。
      これに異を唱えると、たちまち「テロ組織に味方するのか?」となじられる。 白か黒か、善か悪かという極端な二元論は、本来、日本人の思考パターンではないはずだ。むしろキリスト教的な「神か悪魔か」の思考パターンに、日本人が影響されているのである。
     日本人には天照大御神も素戔嗚尊も、善と悪が入り混じったカミ観念があるから、人間や世界をそう単純には分類しないはずである。
     普段は日本人の誇りや伝統などと主張しながら、欧米が怒ったときには、忽ち一神教の世界観に洗脳されて、残虐非道なテロ組織は殲滅せよと叫び始める・・・まったく情けない非日本人どもである。
     そもそも「殲滅せよ!」と、日本人が言う資格などない。カネを出すことしか出来ない身分で、「殲滅せよ!」と吠えてる姿のぶざまなことといったらない。殲滅するには軍事力の行使が必要であり、カネだけで「殲滅せよ!」とまで叫ぶのは恥ずかしいのである。
     当事者意識のまったく欠落したこういう輩こそが、『新戦争論1』を読まねばならないのだが。
     
     かつてはアルカイダもタリバンもフセインも残虐非道とされたのだが、今はイスラム国を残虐非道と誰もが言う。
     人質の首を斬って殺害したのが残酷だ、敵対勢力の捕虜を焼き殺したのが残忍だというのなら、有志連合が空爆で建物を破壊して人々を圧殺したり、火災で焼き殺したりしているのは残酷ではないのか? 残忍ではないのか?
      前近代的な手法で殺したら残酷、近代兵器で殺したら残酷でない、そういう認識でしかないのか?
      デオドラント化された殺戮なら、残虐ではないというのなら、都市空襲も原爆投下も残虐非道ではなかったことになる。 最近の自称保守派や政治家の考えの浅さは幼児以下である。
     空爆は連日行われ、その都度膨大な犠牲者が出ているはずだ。その中には、無差別に巻き込まれた女子供も多数含まれているだろう。
     それに比べればイスラム国は殺す人間を選んでいるし、人質の首を斬るのも、一人斬って、しばらくしてまた一人というペースだし、捕虜の殺害も一度にたかだか数十人単位ではないか。あの首切りには麻薬を使って苦痛を緩和しているという話もある。ならば日本の絞首刑よりマシかもしれない。
    動画で情報公開する死刑と、隠ぺいされた死刑のどちらが残酷かも、判断は難しい。
      イラク戦争におけるイラク人の犠牲者は「控えめな推定」で50万人、うち7割以上が民間人だと言われている。
     イスラム国はこの米軍による残虐行為によってイラクの秩序が破壊されたために誕生したものであり、イラク戦争によって肉親を殺された遺族が続々とイスラム国の戦闘員になっているのだ。
     ところが、この程度の相対化する思考も許されないような、全体主義の空気が、今の日本には作られてしまっている。想像力も知性も劣化しているのだ。
     イスラム国の残虐行為ばかりが強調され、有志連合の残虐行為が一切取り上げられない理由の一つは、
  • 「残虐非道日本人にも非難決議を」小林よしのりライジング Vol.121

    2015-02-17 20:30  
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    「テロ非難決議」とやらが、衆院・参院の本会議で相次いで可決された。
     決議文では「イスラム国」を「ISIL」と表記、その後NHKもこれに追随して「過激派組織IS」と言い換えるようになり、同様の動きがマスコミに広がっている。
      だがそもそも「IS」とは「Islamic State」つまり「イスラム国」の略なのだ。
    『新戦争論1』で描き、先日の「ゴー宣道場」でも詳述したが、イスラム過激派組織が「国」を名乗ったことにこそ大きな意味があるのだ。「IS」への言い換えは、その本質を隠そうという行為でしかない。
     決議文には「 非道、卑劣極まりないテロ行為を強く非難する。決して許さない 」だのといった文言が並んでいる。
     だが、決して許さないなら、それでどうするというのだろうか?
     どうせ軍事的な復讐はできないし、やる気もないに決まっている。こんなもんは、遊ばれた末に捨てられた女が「決して許さない!」と泣きわめいているのと、何も変わらないではないか。
    「 決して許さない。復讐として、私をふった男の周辺の被害女性に、人道支援金をもっと増額する! 」などという女がいるのだろうか?日本政府が言ってるのは、そのような言葉の前後の脈絡が通らない戯言である。
     …と思ったが、今どきは捨てられた女がやることの方が、もっとずっとすごいようだ。
     今月2日、28歳の女が殺人容疑で逮捕された。
     交際相手だった20歳年上の男の浮気が発覚し、別れを切り出されたことに激昂して、男の腹部を数回刺し、顔面めがけて金属バットをフルスイングしたという。
     なんという残虐非道!完全にイスラム国の戦士より残虐ではないか!
     逮捕された女は、福岡・中洲の高級クラブでホステスとして勤務した後、約5年前に上京し、銀座の高級クラブで働いていた。
     179センチの長身でかなりの美人なのだが、取り調べに対して「別れるくらいなら殺すしかないと思ったんです」と話したそうだ。
     わしはこれをニュースで見て、なんでこんな美人が?と疑問に思ったのだが、実はこの女は、過去は男だったということを知って驚いてしまった。
      性同一性障害で、ホルモン注射を射ちまくり、戸籍も女に変え、チンコを切った人だったのだ!
     以前から男の浮気を疑っていたらしく、事件前に量販店で「一番硬いのをください」と言って金属バットを購入していたそうだが、もともとの体力が男だったら、そりゃ金属バットで顔面にフルスイングなんかされたら、ひとたまりもないだろう。
      しかしそれにしても、自分のバットがなくなってしまったから、金属バットを使ったのかと妙に納得してしまった。
     そういえば、イスラム国に拘束されて殺された湯川遥菜という武器オタクもチンコを切った人だったって知ってた?
      自殺を図ってチンコを切断したものの死にきれず、今後は女性として生きようとして本名の「正行」を女性的な「遥菜」に改名したものの、女性としては社会適応ができず、男に戻ろうとしたという、ほとんどわけのわからない人だったのだ!
      やはりこれも、チンコがないくせに男に戻ろうとしたから、銃器が好きになっちゃったのだろうか?
     チンコを切っちゃった者は、どうしても最後にはチンコの象徴を手にしたくなるものなのだというのが真理であろう。
     それはともかく、最近は異様な事件ばっかり起こっているのに、イスラム国の話題の陰に隠れてしまっていないか。
     和歌山県紀の川市で小学5年の男児を惨殺した22歳の男がパトカーで連行される際、頬をブク―――っと風船みたいに膨らませていたが、あの表情の異様さには、思わず目を見張ってしまった。あれはいったい何だったんだ?
  • 「中東への介入、戦争へ突き進む日本」小林よしのりライジング Vol.120

    2015-02-10 21:55  
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     第46回ゴー宣道場 「『新戦争論1』と戦後70年」 が2月8日に開催された。
     参加者の応募締め切りが『新戦争論1』の発売日当日で、地域によってはまだ発売前だったにもかかわらず、いつも以上の応募があり、会場は満員となった。みんな、参加応募をしてから当日までに『新戦争論1』を読んで、道場に臨んでくれたようだ。
     タイトルには「戦後70年」とつけたが、今回は特に現在の戦争、すなわちイスラム国を相手に行われている「対テロ戦争」にほぼテーマを絞った。
     わしとしては、人々に、 戦後70年を経て、現在の空気は「戦前」に戻っているということを自覚してほしかった。
     今回の邦人人質殺害を受け、自民党総裁特別補佐の萩生田光一は、 いま安倍政権を批判することは「 政府と国民を離隔させたい相手の思うつぼ 」であり、「 ここは国民が一丸となって政府の取り組みを支援すべき 」だ と発言した。
     つまり「 政府批判はテロ集団の思うつぼ 」と言っている。
    「 この非常時に政権の批判をする者は非国民だ 」と言っていることになる。
     国民は「 思考停止 」せよと政府が言っているのだ。
     本来なら、権力の側がこんなことを言い出したら、真っ先に警戒するのがジャーナリズムの使命であるはずだ。
     ところが、読売新聞特別編集委員の橋本五郎は、「 目の前の敵がいる時に、政権批判はすべきではない 」といった発言をした。
     現政権の判断が、中長期的にどんな影響をもたらすのかということなど考えてはいけない、目の前の敵だけを見て、「 近視眼的 」になれと言っているのである。
    「思考停止せよ」と「近視眼的になれ」が政府の国民への要望である。
     驚くべきことに、大マスコミ・ジャーナリストは、このお達しに従って、政府批判を自粛し、権力に迎合してしまっているのだ。
     しかも、たとえジャーナリストが権力のチェックという本来の機能を果たそうとしたとしても、 新聞も雑誌も、いまは政権批判をしたら売れないという事態に陥っている。
     まるで「戦前」である。支那事変の頃も、ジャーナリズムが権力に迎合し、国民も戦争に反対する新聞など読まないという状態だった。商売上、新聞・ジャーナリズムは、政府・軍部の広報紙にならざるを得ない状態だったのだ。
     
      今わしが伝えたいメッセージは政府の意図とは反対、「思考停止するな」「近視眼的になるな」である。
     実は、今回のケースで人質の救助の問題には、わしは関心を持っていない。国家はどんな理由であれ、邦人を守る義務があるが、さりとて「自己責任」が前提のプロフェッショナルがテロリストに人質に取られた場合に「身代金」を払うのは正しくない。 
      それよりもわしが憂慮するのは、中東に踏み込むのはリスクが高すぎるということを、未だに日本人が十分認識していない危うさである。
     
     テロ組織が「イスラム国」という「国」を名乗るというのは、かつてない画期的な出来事だった。
     イスラム国は、イラク戦争の結果誕生した。
     崩壊させられたフセイン政権にいたバース党幹部が、イスラム過激派と手を組んだのがイスラム国であり、実際にかつて国家を動かしていた者たちが官僚機構を整えたから、「国家」の体裁をとれるのである。
      イラク戦争がなければ、イスラム国が登場することは決してなかったのだ!
     そもそも
  • 「『新戦争論1』は右翼か?左翼か?」小林よしのりライジング Vo.119

    2015-02-03 22:45  
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    『新戦争論1』の発売から1週間経てば、ネットの中では必ずわしへのアンチが蠢き出す。
      アンチには2種類いて、極右のアンチと、極左のアンチである。
     在特会や、ネトウヨや、安倍首相信者の極右が罵詈雑言を投げかけてくるが、反戦リベラル左翼も、罵詈雑言をぶつけてくる。
     本の内容も読まず、理解する脳力もなく、ここ何年もずっとこの調子である。本が売れること自体を妨害したいのが、極右と極左のアンチどもだ。中には極左の工作員が、極右に成りすまして、攻撃してくるケースもある。
     極右も極左も「ポジション・トーク」に堕しているから、自分の頭で考えない。 意見は自分の属する世間(ポジション)に同調しているから、右も左も紋切り型で、それぞれの陣営の統一見解に固着している。
     なにしろ戦後70年、戦争に関する日本の言論界そのものが硬直しきっている。
    「保守」「右翼」は好戦的!
    「革新」「左翼」は反戦的!
     ただこれだけなのだ!
     いったん自分の立つポジションを「保守(自称)」に定めてしまったら、好戦的な意見しか言えなくなってしまう。
     侵略戦争だろうが、対テロ戦争だろうが、あるいは避けようとすれば避けられる戦争だろうが、どんな戦争でも断固やるべしと言わなければならなくなってしまう。
     もしも、「それは侵略戦争だから反対だ」などと言おうものなら、たちまち「左翼」と思われてしまうのだ。
      わしには自称保守やネトウヨの「好戦的」な言動が理解できない。
     左翼は左翼で、このポジションに立ってしまったが最後、この世のありとあらゆる戦争に反対という意見しか言えなくなってしまう。
     過去の戦争も、現在の戦争も、未来の戦争も、すべてがダメだと言わなければならないのだ。
     全くおかしな話である。
      全ての戦争には、それぞれ異なった事情がある。
      やらざるを得ない戦争もあれば、やってはならない戦争もある。
     それは右とか左とか、保守とか左翼とかいう立場には関係がない。
     ……たったこれだけの当たり前のことが、ポジションを決めてしまった人々には一切通用しないのだ!!
     右か左かのポジションによって、かたや100%賛成、こなた100%反対、その両方の極論以外は、決して許されないということになっているのである。
     極論になってしまったら、どっちの側についても必ず道を誤る。
  • 「イスラム国に『宣戦布告』した安倍首相」小林よしのりライジング Vol.118

    2015-01-27 21:25  
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     イスラム過激派組織・イスラム国に拘束された2人の日本人のうち、湯川遥菜氏が殺害されたらしく、残るフリージャーナリスト・後藤健二氏の安否も予断を許さない状態が続いている。
     しかしながら、このような事態は予測できたはずだ。
     安倍晋三首相は今月16日から21日にかけてエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪問。
     18日にはエジプト・カイロで演説し、「 ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるため 」として、「 ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します 」と表明した。
      これは事実上、イスラム国に対する宣戦布告ではないか!
     後になって「これはあくまでも人道的支援だ」などと弁解しても意味がない。軍事的支援だろうが、非軍事的支援だろうが、「 イスラム国と闘う各国への支援 」であることには変わりがない。
      本当の「人道的支援」ならば、イスラム国の支配地域にも行わなければならない。
      イスラム国が空爆にさらされ、女性や子供が傷ついていても「人道的支援」をせず、イスラム国を脱出した難民にのみ「人道的支援」を行うということは、要するにイスラム国から人心を離間させるための宣撫工作であって、これは戦時の作戦行動の一環に他ならないのだ。
     安倍晋三は、日本は明確にイスラム国と敵対する側に加わるというメッセージを発したのである。
     その前日は阪神淡路大震災からちょうど20年にあたり、神戸では天皇皇后両陛下が出席された追悼式が開催されていた。だが安倍はこの追悼式に出席せずに中東に出かけ、わざわざ2億ドルもの国費を投じて日本国民を必要もない危機にさらす宣言を得々としてやらかしたのだ。
     翌19日、安倍はヨルダンでアブドラ国王と会談。
     安倍は、イスラム国が勢力を拡大する中で多くの難民を受け入れているヨルダンを支援するため、1億ドルの円借款供与など新たな支援を行う意向を表明した。
     もちろん、これもイスラム国への宣戦布告以外の何物でもない。
      そして極めつけは20日、イスラエルのネタニヤフ首相との会談だった。
     そもそもイスラエルは、パレスチナへの攻撃において戦争犯罪が行われた疑いがあるとして国際刑事裁判所が予備審査を開始、ヨーロッパからの批判が高まり、国際的に孤立しかねない状態だった。
     そこでネタニヤフはヨーロッパに代え、日本をはじめとしたアジア市場を開拓し、経済連携を強化する方針を強調し始めた。そのエサにホイホイと釣られたのが安倍晋三で、30社近くの日本企業幹部を同行してイスラエルに入ったのである。
     イスラエルでは先に両首脳の共同記者会見が行われ、ネタニヤフはイランと北朝鮮の名前を挙げて「われわれは近隣のならず者国家の恐ろしい脅威に直面している」と述べた。
     イランのみならずイスラム全般と対立するイスラエルと、北朝鮮と対立する日本では全然ケースが違うのに、両国が同じ境遇であるかのように国際社会に向けて言ってのけたのである。
     続いて行われた首脳会談では、安倍はフランスで起きたテロ事件でユダヤ人4人が殺害されたことに哀悼の意を示し、「 このような卑劣なテロは、いかなる理由でも許されず、改めて断固非難したい。イスラエルをはじめとする国際社会と緊密に協力しながら、テロとの闘いに取り組んでいきたい 」と述べた。
      安倍は「経済」のエサに目がくらみ、この時期にわざわざネタニヤフと会談し、「テロとの戦い」でイスラエルと「緊密に協力」するなんて表明すれば国際的にどう解釈されるかなど、考えもしなかったのだろう。
     ネタニヤフは、イスラム国やヨーロッパでテロを起こした過激派は、ガザ地区に拠点を置くイスラム原理主義組織ハマスと同じだと繰り返し訴え、ガザ地区への攻撃の目的は国際社会と同じだと正当化していたのだ。
     テロは卑劣な行為だとか単純に言ってしまうと、パレスチナも、チベットやウイグルにおける抵抗運動のテロも卑劣で、徹底的に潰すべきものだということになってしまう。
     民族の存続を脅かされるほどに抑圧を受けたら、人は抵抗せざるを得ない。その手段の善し悪しなど、考慮してはいられない。
     いくら「戦争は悲惨だ」と言っても自衛戦争まで放棄するわけにはいかないのと同様に、いくら「テロは卑劣だ」などと言っても、せざるを得ないテロというものもある。
    「テロは卑劣で、許してはならない」というのは、「戦争は悲惨で、繰り返してはならない」と同様の、思考停止の言葉でしかない。
     安倍がイスラエルで「テロとの戦い」を強調したのは、対米追従のためもあるのだろうが、実はオバマ政権とネタニヤフ政権の関係は緊密ではない。