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「コロナ・政権とマスコミの共犯」小林よしのりライジング Vol.348
2020-03-04 22:35150ptさすがにトイレットペーパーの買い占め騒ぎまで起きたのには驚いた。50年近く前のオイルショックの時代にタイムスリップしたかのようだ。
不安とパニックで、大衆から冷静な判断が失われていく様子は東日本大震災直後のことも連想させられる。
そしていま、この混乱に乗じた「火事場泥棒」がいる。これは決して見逃してはならない。
安倍晋三首相は2月27日、新型コロナウイルス対策として全国の小中学校、高校、特別支援学校を3月2日から春休みまで臨時休校にするよう要請した。
これは法的根拠のない要請で、与党議員にも事前の説明はなく、安倍首相に近いとされる議員もその多くが報道で初めて知って「驚いた」と口々に語った。
決定はほとんど安倍の独断らしく、官邸内でも危機管理における「政」のトップである官房長官・菅義偉、「官」のトップである官房副長官・杉田和博の両名にすら事前の相談がないという異例の意思決定が行われ、自民党の新型コロナウイルス関連肺炎対策本部長である元厚労相・田村憲久も「事前に聞いていなかったので、突然で驚いた」と述べている。
この要請、わしには全く理解ができない。
臨時休校や学級閉鎖などは、その学校ごとに判断すればいいことだ。感染者が続出している北海道なら休校が必要だといえるが、2月29日現在、東北地方の感染者数は仙台に1人、中四国地方は徳島県に1人だけである。全く患者のいない県の学校まで政府が一律に休校とすることに、一体何の意味があるのだろうか?
これはわしだけが言っていることではない。安倍側近と言われた元文科相の柴山昌彦までが報道で初めて知って、「亡くなった方が出ている所と、感染者が報告されていない所と、一律の対応というのは、柔軟性に欠けるのかなと。唐突ではないかなと思う」と言ったほどである。
しかも子供の感染例は比較的少ないのだから、それよりも老人に対する診療体制を充実させる方を優先させるべきではないのか。
それなのに、この要請に対して自称保守のみならず、普段安倍政権を批判している左派メディアからも「英断だ」と絶賛の声が上がったものだから、わしは呆れかえってしまった。
そもそもここまでの安倍政権の新型コロナウイルスへの対応は「後手後手」どころか「無為無策」と言うに等しく、ここまで感染が広がったのは、阪神淡路大震災の村山政権、東日本大震災の菅政権にも匹敵する、安倍政権の「人災」というべきである。
本来なら今年1月6日、武漢からの帰国者に初の感染が確認された時点で徹底した水際対策を取らなければならなかった。ところが政府は春節のインバウンド需要欲しさに中国人観光客を入国禁止にせず、ウイルスを国内に招き入れてしまった。
わしは早い時点で「中国人観光客を入国禁止にしろ」と唱えたが、そういう意見は「排外主義」扱いされる始末だった。
スイスのロシュ社は、武漢での感染が発覚すると緊急にわずか数日で検査キットを開発し、中国湖北省に無償提供していた。 だからダイヤモンドプリンセスの件では、ロシュのキットをさっさと輸入して、直ちに乗客乗員の全員検査をすればよかった。
ところが実際は全員検査をせずに乗客乗員を船内に閉じ込め、船をウイルス培養の「巨大シャーレ」にしてしまい、無駄に感染者・死者を出し、その失態を世界中に大宣伝してしまった。
もともと感染症対策は厚労省だけの問題ではない。国民の行動制限など、厚労省ではできない問題も多く関連するので、全省庁を横断する体制を作り、そのトップに首相が就いてリーダーシップを発揮するというのが当然の形式だ。
ところが安倍は責任を取りたくなかったのか、これを厚労省マターにして対応を加藤勝信厚労相に丸投げし、自らはずっと表に出てこなかった。
これは海外から見れば明らかに異常で、米ロイター通信は「Where’s Abe?」(安倍はどこだ?)と揶揄、国内の内閣支持率も急落した。
なにより安倍首相にとって重要なのは、3月末にも始まる東京五輪の聖火リレーである。東京五輪が中止になったら、莫大な経済的損失が出る。
それに焦ったものだから、安倍は急にしゃしゃり出てきて、必要ともいえない「全国小中高一斉休校」を唐突に言い出して極端な強権を振るい、「子どもの健康安全を第一に考え」ただの「ここ1、2週間が極めて重要な時期」だのと言って大見得を切ったのだ。
あまりにも見え見えの、政権維持のためのパフォーマンスである。ところがこれに左翼まで騙されて、「大英断」と絶賛したのだ。安倍は、チョロいもんだと内心舌を出したことだろう。
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