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  • 「はじめてのおつかい」小林よしのりライジング号外

    2022-05-17 17:50 22時間前 
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     唐突な話題と思うかもしれないが、「はじめてのおつかい」が海外で大評判になっているらしい。
     確かにあの番組、とにかく子供が可愛いいものだから、女性に特に好評のようだ。
     だがあの番組を欧米でつくるのは、まず無理だろう。
     2歳から6歳ぐらいの子供が、生まれて初めてひとりでお使いに挑戦する様子をドキュメンタリー風に描く日本テレビ系のバラエティー「はじめてのおつかい」は、不定期のスペシャルで30年以上放送されている人気番組である。
     この番組を今年の春からネットフリックスが世界190カ国で同時配信し始めたのだが、そうしたら大きな反響を呼んでいるという。
     例えばイギリスでは、ツイッターにこんな感想が多く流れたそうだ。
    「これまでに見たネットフリックスの番組の中で、最高。どのエピソードを見ても泣いてしまう」。
    「とってもキュート。子供は大人が許す限りの能力を持っていると思う」
     だが一方では正反対に、こんな反応も寄せられているという。
    「これでもうネットフリックスは見ない」
    「子供を大人であるかのように、独立した存在として扱うなんて。いったい、なんていう番組なのかしら」
      そもそもイギリスでは、「はじめてのおつかい」のように幼児がひとりで交通機関を使ったり、買い物を頼まれて出かけたりすることはない。 そんなことをして子供が事故に遭ったり、変質者に襲われたりしたらおしまいだからだ。
      子供は大人が守るべき対象であり、幼児は外では保護者が付きっきりなのが当たり前で、小学校への通学ですら低学年の子は親が付き添っている。
     法律で親が送迎するよう定めているわけではないが、子供の人権擁護組織などは8歳までは送迎するよう推奨し、これを基に多くの学校が独自にルールを決めているという。
     下校時刻に会社勤務をしている親は、仕事を中断して迎えに行くか、学校によっては料金を払えば午後6時過ぎまで預かってくれたりもするらしい。地域によってはスクールバスもあるが、バスの停留所までは親が送り迎えしている。
     遠い距離を歩いて登下校するということすら危ないというのが普通の感覚なのだから、「はじめてのおつかい」なんて絶対にありえない。 もしそんなことをしたら、親が子供を保護する義務を放棄しているということで「虐待」と見なされてしまうのだ。
     他の国でも大体似たような反響で、子供の可愛さにメロメロになっている感想が多いのだが、その一方で、 「自分の子供に、こんなことさせらせない」「わが国でこんなことしたら、その子の姿は二度と見られなくなる」 といった反発もあるようだ。
    「こんなことできるのは日本だけじゃないか?」 という感想もずいぶんあって、ネトウヨっぽい奴はそれを誇らしく思っているようだが、本当は日本でも、あのロケは事前に現場を入念に調査した上で、撮影の際はカメラマンを始めスタッフが大勢ついていて、周囲で見ているからできるのである。
     実際に番組を見ていれば、画面にスタッフが映り込んだりしているからそれくらいはすぐにわかるはずなのだが、 バカな親があれを見て、うちの子供にもやらせてみようとか思ったら、大変なことになりかねない。 どこで交通事故に遭って死ぬかもわからんのだし、どこでさらわれるかもわからんのだから。
     あれは、本当はやっちゃいけないことなのだ。
     3年前に山梨県・道志村のキャンプ場で当時小学1年生の女児が行方不明になった事件で、現場に近い山中で人骨と当時女児が着用していた靴や衣服の一部が発見され、骨のミトコンドリアDNA型は「母親と親族関係があることに矛盾がない」という鑑定結果が出たという。
     その女児は、友達が遊んでいる場所へ向かおうとひとりで山道を歩いていく後姿を母親が見送ったのが目撃された最後だったといい、母親は「なぜ一緒について行ってやらなかったのか、悔やんでも悔やんでも悔やみきれない」と語っていた。
     ネット内ではこの母親を誹謗中傷しているバカもいるらしく、そのバッシングに与することを恐れて、メディアは母親への批判と取られそうなことは何も言えなくなっている。
     だが、それではこの事件から何の教訓も引き出せない。
     この母親を絶対に責めてはならないし、ここでこんなことを言うのは非常に酷だというのは重々承知しているが、それでもこの痛ましい事件を無駄にしないためにも言っておくしかない。
  • 「科学なし・論理なしの不思議な医療ライターからのご反論」小林よしのりライジング Vol.435

    2022-05-10 17:40  
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    「ベストセラー漫画小林よしのりの『コロナ論』をぶった斬る」というタイトルの記事があったので読んでみた。書いたのは、篁五郎なる人物で、西部邁の表現者塾にて保守思想を学び、都内の医療法人と医療サイトをメインに記事を執筆しているフリーライターらしい。
    『コロナ論』がベストセラー漫画として認知されて、反論記事が出てくるのはいいことだ。どんな反論なのか、その論理構成をしっかり読み解いてみたいと思う。
    『コロナ論』で、コロナを「新コロ」「コロナくん」と呼んできたことを、篁氏は 「矮小化」「医学的な根拠もなく」「マスコミや医師、製薬会社を悪玉扱い」 と述べる。さすが、医療サイトでの記事執筆をメインに活動しているライターだ。1から5までシリーズを重ねるにつれ、ますます医学的根拠が強靭に盛り込まれている『コロナ論』を読んでも、内容を読解することができないらしい。
     小林氏とは無関係だが、反ワクチンの団体はノーマスクで接種会場に押しかけて開場を妨害したり、ワクチン接種をしているクリニックへ無断侵入をしたりするなど過激な行動をしている。先日、中学2年生を妊娠・出産させたと報じられた平塚正幸氏が党首の反コロナ・反ワクチンの政治団体も同様の行為をして、党員が逮捕されている。
     彼らはワクチンの効果をいくら説明しても聞く耳を持たず、自分が信じている医師や学者、言論人の言うことしか聞かない・・・(後略)・・・ここまで極端な暴挙をすれば社会にとって害悪な存在である。
    「小林氏とは無関係」と言いながら、その無関係の団体について長々説明する、印象操作したさ具合がすごい。ワクチン接種をしているクリニックに無断侵入するなんて、主義主張以前に、ただの犯罪者ではないか。
     さらに、平塚正幸という人物が中学生を妊娠させたとかいう情報も、私はこの記事で初めて知ったし、彼が「ノーマスク・デモ」と称して、大勢で電車に乗り込むなどのイベントを開催した際は、日本の強力すぎる同調圧力のなかでは、かえってそのような行動が裏目に出てしまい、むしろマスク全体主義が強化される原因になるのではという点を危惧していた。
    『コロナ論3 第10章』では、マスク着用を拒否してピーチ航空機から降ろされた男が、その後、ホテルや皇居内の展覧会場など、複数の場所でも同じような警察沙汰をくり返していたことについて、わざとトラブルを起こして注目を集めようとする姿勢を批判し、
    「マスクの無効性を科学的に説明してマスク全体主義を終わらせようとしているわしにとって迷惑な存在だ」
    「マスク・トラブルの度に逆に『マスク圧』が高まって、健康上の理由でマスクができない人々が、ますます苦悩する社会になってしまう」
    とはっきり記述してもいる。
    「こんな状況はおかしい」という点は一致していても、肝心の目的が、自身の承認欲求を満たすことや、目立ちたい、ストレス発散したいという欲求、幼稚な暴れん坊なだけでは、逆効果になってしまう。それほど全体主義と戦うのは難しいという点も含めての主張をずっと展開しているのだが、篁氏にはそこまで複雑な内容は、理解することができないらしい。
    『戦争論』を読んだあとネトウヨになった人々を指さして、「小林よしのりの責任だ」といきり立っている人と同じタイプかもしれない。その短絡さこそ、ネトウヨと同類なのでは、と言いたくなるが。
     小林氏のコロナに対する主張は「反コロナ」「反自粛」「反マスク」「反ワクチン」の4つだ。  えええーっ!  「反コロナ」 て、なに?
    『コロナ論』では、「コロナくん」というかわいらしいキャラが誕生し、コロナはぜーんぜん怖くない、「ウィズコロナ」できるやさしいウイルスだということをとことん解説しており、「反コロナ」どころか、むしろ 「親コロナ」の書 だと思うけど!?
    PCR検査をやって、コロナ感染者は隔離して社会から追い出せ! という空気を固め、自粛だマスクだワクチンだと一直線に猛進している人々のほうが、よっぽど強固な「反コロナ」だろう。
  • 「生娘シャブ漬けと道鏡コンプレックス」小林よしのりライジング Vol.434

    2022-04-26 17:15  
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    「生娘をシャブ漬け戦略」
    「田舎から出てきた右も左もわからない若い女性を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」
     …よくまあこんなに、いろんな差別意識がゴチャマゼに入り込んで、どこから手をつけたらいいのかわからない発言が出てきたものだ。
     驚くのは、この発言をした吉野家常務(当時)・伊東正明が49歳で、わしよりも20歳近くも若いということだ。
     しかも伊東は、マーケティング戦略のプロとしてヘッドハンティングされた「敏腕マーケター」だったというのだ。
     それなのに、言っていることはものすごく古い昭和の感覚だ。田舎から出てきた女は世間ずれしていない処女だなんて、まるで昭和30年代の「集団就職」で上京してきた、赤いほっぺの少女みたいなイメージである。
     その時代を知っているジジイが言うのならまだわかるが、49歳でそんなことを言っているのが不思議でならない。どういうわけだか、そんな偏見が世代を越えて引き継がれてしまっているのだ。
     そもそも、田舎娘は無垢・生娘という認識がナンセンスすぎて笑うしかない。
    「生娘」という言葉に至っては、江戸時代のスケベ代官がタイムスリップしてきたのかと疑いたくなる。
     本当はヤンキー文化が残っている田舎の方が、若い娘がすぐ男とくっついたりするものだ。沖縄だって、若いうちにさっさと男と付き合って結婚して子供つくって離婚している女性が多い。むしろ今はそっちの方が「田舎娘」のイメージだとわしは思っていたのだが。
     普通は時代がどんどん変わっていけば、感覚もいつの間にか変わるものだ。今じゃチョンマゲ姿には絶対なれない。わしの感覚だって、時代と共に自然に変化している。
     ところがどんなに時代が変わっても、古い感覚のまま変わらない人間がいる。それどころか、新しい時代の人間のはずなのに、古い感覚をそっくり引き継いで「田舎から出てきた女は無垢な生娘」だなんて、本気で思っている者がいるのだ。
      その感覚は、皇統の男系固執保守たちとそっくりである。これだけ男女差別は野蛮だという意識が浸透してきた時代にありながら、今なお女の血など認めない、男の血統しか許されない、男系男子しか国民の象徴にはなれないなどと、まだ言っている者がいるのだ。 この意識の古さ、意固地さにわしは愕然とするしかない。
     たとえ「女性天皇はいいけど、女系天皇はダメ」と言っても、実質「女性天皇から生まれる子供は女系」として、女性天皇も拒否しているわけだから、奈良時代より感覚が古くなっている。肝心なのは「男の血」であって、「女の血」を否定しているのである。
      天皇陛下の実の娘がいらっしゃるというのにそれではダメで、それよりも600年以上さかのぼらないと天皇陛下とはつながらない「男の血」の方が重要だなんて、到底理解のできない感覚だ。
     600年も離れたら血が薄まり過ぎているはずだが、そんな感覚すら一切ない。結局は「神武天皇のY染色体」とかいうものを信じて、純粋なる「男系血統」なるものがあると信じ込んでいるのだ。
     本当に医学的に考察すれば、「神武天皇のY染色体」を持っている人など日本中にいくらでもいて、誰でも天皇になれてしまうという結論になってしまう。
     しかももっと本来的なことをいえば、「純粋血統」を追求しようという発想自体に、全く意味なんかないのである。
     そもそも「純粋日本人血統」なんてものはあるだろうか?
     今どきそんな感覚なんか通用するはずもない。もう今の日本人にはいろんな人々との混血が進んで、誰になに人の血が入っているのかわかったものではなくなっている。
     試しに「外国人の血が流れていて驚く有名人」というサイトを見たら、ブラックマヨネーズ・小杉竜一(曽祖父がアメリカ人)、平野レミ(祖父がフランス系アメリカ人)、安室奈美恵(祖父がイタリア系アメリカ人)、布袋寅泰(父親が韓国人、母親が日本人とロシア人のハーフ)、宮沢りえ(父親がオランダ人)といった名前がズラッと並んでいる。この先、出会って好きになった相手に、実はロシアの血が入っていたとかいうことだって、いくらでも起こりうるのだ。
     仮に外国人の血が入っていなければいいとしたところで、それなら琉球の血はいいのかとか、アイヌの血はいいのかとかいう話になっていくだろう。純粋血統種という発想自体がもう、ナンセンスとしか言いようのないものなのだ。
  • 「こびナビは知っていた~『治験停止するほどの有害事象が出ている』」小林よしのりライジング Vol.433

    2022-04-19 19:00  
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     こびナビの峰宗太郎と日経の編集者・山中浩之の共著 『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』 という本をたまたま入手した。
     2020年12月8日に日経BPから出版されていた本だが、読み始めてみると、驚くべき記述の連続だった。
     こびナビでは、「ワクチンを打て!」と煽りまくっている張本人が、本書では、mRNAワクチンが猛スピードの開発競争案件になってしまっており、治験の判断基準も激甘だと指摘。そして、 「治験停止するほどの有害事象が出ている」 と明かしているのだ。さらに、接種後の副反応だけでなく、 「10年後に何が起きるか誰も分からない」 とまで言及。
     本書は「危険性を知っていて、ワクチンを打てと煽りまくっていた」という証拠でもある。その内容をここに報告しておきたい。
     
    ●「テレビに出ている人で専門の人はいません」
     序盤で、峰は、コロナの感染経路についてみずからの知見を披露している。
    「飛沫感染がメインで、マスクに効果あり」 という考え方が基本で、 「だからユニバーサルマスクには意味がある」 と結論づけるというありがちな発言が続くのだが、 「接触感染、糞口感染も起こりうると早くに分かってもいる」 と述べ、この2つの感染経路を徹底的に否定する論者とは距離を置いているようだ。
     手が汚染される部分として、ドアノブ、ボタン類、銀行ATM、現金などを挙げ、「洗っていない手で目、鼻、口などの粘膜にふれるのはやめましょう」という。この点は、同意する。鼻をいじるのはやめられないが。
     さらに、 「テレビに出ている人で専門の人はいません」 と述べ、実名を挙げることは避けているものの、あきらかに、岡田晴恵、北村義浩、児玉龍彦、二木芳人、西浦博などを批判してもいる。
     この流行はいつまでに終息するかという予測とか、長期的、中期的展望を述べる人は全部、根拠の薄弱な発言をしていると思っています。 端的に言えばうそつきです。
     ところが、人脈の問題なのか、持ち上げておけば自分がトクをする相手なのか、「うそつき」の中から、尾身茂と西浦博のことだけは、名指しをして急角度のフォローを入れる。
     尾身茂には 「述べる資格がある」 、西浦博は 「疫学モデリング分野の第一人者」 と持ち上げ、西浦の予測については 「かなり精度が高い」 と褒め上げた。
     尾身には資格がある、という上から目線は一体なんなのか、そして、西浦の予測が大外れだったことなんて、本書刊行時点で日本中が知っているのに、アンタこそ、どんだけ見え透いたうそつきなのかと言いたい。
    ●「薬物には慎重派」だった!
     読み進めて驚いたのは、薬に対する見解だ。
  • 「マスクは子供の虐待である!」小林よしのりライジング Vol.432

    2022-04-05 19:10  
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     普通にマスクを外して出歩けない限り、コロナ禍は終わりではない。
     ところが先週あたりからまた新規感染者(陽性者)数が増加傾向に転じたとかで、マスコミは「感染対策の徹底を」と連呼し、マスクの着用を推奨している。
     このままいくと今年の夏も、猛暑日に人々がマスクをして出歩くという狂気の光景を見ることになるのだろうか? 3年も連続で!
     諸外国ではもうマスクの義務化は撤廃され、ほとんど誰もマスクをしていない。
     先月24日にブリュッセルで行われたG7首脳会議でも誰もマスクをしておらず、岸田首相もマスクをしていなかった。
     ところが岸田は帰国して国会で報告する際には、しっかりマスクを着けていた。国会議員たちも全員マスクをしていたし、 海外ではノーマスクの日常を取り戻しているのに、日本ではマスクの同調圧力に逆らえないのだ。
     29日にトルコで行われたウクライナとロシアの停戦協議のニュースを見ていたら、誰もマスクをしていない中でただひとり日本人記者だけがマスクをしていて、そのマスク姿のままテレビカメラに向かってレポートをしていた。
     ものすごい違和感だった。テレビ画面を介して、日本の視聴者にウイルスが感染するとでも思ったのだろうか?
     とにかく 日本人は、法律で義務化もしていないのに、マスクを外した顔を見せてはいけないという、強固な観念に縛られ続けている。
     週刊ポスト3月4日号に、『感染症の権威が断言「7月以降はマスクを外せ」』という記事が載った。
     その「権威」は浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫という医師で、ワクチンの効果に何の疑問も持っていないなど肯定できないことも言っているが、マスクの弊害に対する警鐘については注目すべきものがあった。
     矢野医師はこう語っている。
    「人間は生まれてから様々な病原体に遭遇し、それに感染することで抗体を獲得していきます。特に幼少期は、親や同年代の友人の唾液などを介して、病原体に自然に感染するものです。
     しかし、長期にわたってマスク生活を続けていることにより、子供たちは水痘(みずぼうそう)やムンプス(おたふくかぜ)、手足口病といった『かかっておくべき病原体』と接触する機会を奪われているのです」
     コロナ論シリーズを読んでいる人なら、すぐ納得のいく話だろう。人は、それも特に乳幼児には、 「免疫の軍事訓練」 が必要なのだ。
     矢野医師によると、 幼少期に感染すべき病原体に感染せず、抗体を持たないまま大人になって、それから初めて感染すると、重症化や後遺症が残るリスクが高くなる という。
      水ぼうそう も成人になって初感染すると重症化しやすいし、 おたふくかぜ だと、睾丸が腫れて精子の数が減少するという。
     ヘルペスウイルスの仲間である サイトメガロウイルス は、子供の頃に感染すれば無症状か鼻風邪程度で済むが、大人になって初感染すると、様々な大病を発症することがある。
     特に妊娠中の女性が感染すると深刻だという。妊娠初期の女性が 風疹 に罹るとお腹の子に障害が出る恐れがあることはよく知られているが、 サイトメガロウイルスの場合は、お腹の子の目や耳に生まれつきの障害が出たり、小頭症という頭が小さな状態で生まれたりする恐れがある。 しかもその 発症リスクは風疹の数千倍 といわれ、そのうえ風疹のようなワクチンもないのだ。
     矢野医師は、こんな怖いことを言う。
    「ずっとマスクをしていて幼いうちにサイトメガロウイルスに感染せず、免疫を持てなかった子供たちが20~30年後に妊娠適齢期になった時、目を覆うような事態が待っているかもしれません」
      子供たちは既に2年間マスクを着けさせられて、感染しておくべき病原体に感染していない状態にされている。
     それで昨年は子供に突然 RSウイルス が大流行したわけだが、 ここで一斉にマスクを外したら、水痘、ムンプス、サイトメガロウイルスなどが同時流行して、小児科の医療が逼迫するかもしれない と矢野医師は言う。また、2年間流行していない インフルエンザ のピークがずれて、夏頃に流行する可能性もあるという。
     だがそれでも、夏が来る前にマスクは外させてやらなければならない。マスクの最大のリスクは、 熱中症 だからだ。
     マスクをつけると熱が体外に出にくく、体内温度が下がりにくい。また、マスクで口の中が湿っていると喉の渇きを感じにくく、無自覚のうちに脱水症状になりやすくなる。
     消防庁の統計によれば、新型コロナでマスク生活が日常化した 2020年の熱中症患者の救急搬送件数は、8月だけで全国4万3000件超で、調査を始めた2008年以降で最多だったという。
     コロナで子供は死なないが、熱中症では死ぬ危険があるのだ。
     いいかげんにマスクを外さないと、このままじゃまずい。特に子供たちは将来にわたって、さらに深刻な問題を抱えてしまう恐れがある。
  • 「リベラルの方が好戦的」小林よしのりライジング Vol.431

    2022-03-22 19:10  
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     ロシアがウクライナへの侵略戦争を始めて、3週間以上が経過した。
     その間に、日本人の戦争に対する感覚があまりにも世界の常識からずれているということが明らかになった。何しろ侵略されたら逃げろとか、降伏しろとかいう発言が、テレビで平然と流れてしまうのだから。
     そして、日本人の感覚がずれていると感じたことは他にもある。
     アメリカのジョー・バイデン大統領が、無茶苦茶な表現でロシアのウラジーミル・プーチン大統領を罵倒している。
     侵攻後は 「プーチンは侵略者だ。プーチンがこの戦争を選んだ」 という具合に「大統領」の呼称を省いて呼び捨てにすることが多くなり、さらには 「戦争犯罪人」 と断定し、 「ウクライナの人々にモラルに反した戦争をした真の悪党だ」 と言い放った。
     そして極めつけには 「殺人的な独裁者、根っからのThug(サグ)だ」 と、チンピラ、極悪人、ギャング、殺人者など幅広いワルを意味する「Thug」というスラングまで使って罵倒したのだ。
      各国の指導者で、他国の指導者をここまで罵った人などほとんどいない。
     プーチンでさえ、自国民を統制するためには 「ロシア国民は、真の愛国者と人間のクズや裏切り者を常に見分けることができる。口の中に入り込んできたハエを道端に吐き捨てるように排除するのだ」 とかなりの暴言を吐いているが、バイデンに対してそんな言い方はしていない。中国の習近平だって、アメリカを非難はしても罵詈雑言は言わない。あんな罵倒をするのは、他には北朝鮮の金正恩くらいだろう。
     ネットでは、バイデンは年を取り過ぎて感情のコントロールが利かなくなっているのではないかという憶測も出ていたが、いくらバイデンが年寄りだといっても、あれは決して耄碌して言っているわけではない。
     一般的には、ドナルド・トランプ前大統領の方が過激な男だというイメージがあり、いかにもトランプこそああいう口汚い暴言を吐きそうだと思われているが、実際のところ、トランプからそんな発言は出ていない。
      トランプはビジネスマンであり、経済のことを第一に考える。物事を善悪だけでは判断しないから、ああ見えてもこういう場面では案外慎重に言葉を使うのだ。
     それに対して、 バイデンはリベラルである。
      リベラルは損得勘定よりも、善悪や正義といった倫理観を最も意識するから、こういう場面では逆に過激になる。人権が徹底的に蹂躙されるようなことが起きようものなら、怒髪天で激怒するのだ。
     日本人の感覚としては、アメリカでは「保守」の共和党の方が過激で好戦的な「タカ派」であり、「リベラル」の民主党の方が穏健で平和的な「ハト派」だというイメージだろう。
     ところが違うのだ。 共和党は「損か得か」 で考えるが、 民主党は「正義か悪か」 で考える。 だから実は「リベラル」の民主党政権の時の方が、戦争は起こりやすいのである。
      そもそも第二次世界大戦に参戦した当時のアメリカ大統領は、 民主党のフランクリン・ルーズベルト だ。
     ルーズベルトは日本にハルノートを突き付けて開戦を余儀なくさせ、真珠湾攻撃を受けるとこれをプロパガンダに最大限利用し、厭戦ムードの強かった国内世論をひっくり返してヨーロッパ戦線への参戦も実現させた。
     また、時代をさかのぼれば 第一次世界大戦に参戦した際の大統領も、 民主党のウッドロウ・ウィルソン だった。
      朝鮮戦争は民主党の ハリー・トルーマン の時。 ベトナム戦争 は、共和党のアイゼンハワー政権時代に紛争が始まっているが、 大幅に兵力を増派したのは民主党の ジョン・F・ケネディ 、 トンキン湾事件を起こして泥沼の戦争にしたのはこれも民主党の リンドン・ジョンソン である。
      ビル・クリントン大統領はソマリア内戦への介入や、ユーゴスラヴィア空爆への参加、イラクに対する「砂漠の狐作戦」と呼ばれる大規模空爆、スーダンへのミサイル攻撃を行っている。
     湾岸戦争を起こしたジョージ・ブッシュ、アフガン戦争、イラク戦争を起こした息子のジョージ・W・ブッシュは共に共和党だが、イラクのクウェート侵攻だの、9.11テロだのが起きては、この時の大統領が民主党だったとしても、間違いなく戦争に踏み切っていただろう。
     ブッシュJrの次の大統領となった民主党、 バラク・オバマ は就任直後の演説ひとつでノーベル平和賞まで取ってしまったが、 実際にはその任期8年の全期間にわたって戦争をしており、イラク、シリア、アフガニスタン、リビア、イエメン、ソマリア、パキスタンに対して2015年は2万3144発、2016年には2万6171発の爆弾を投下している。
     9.11テロの首謀者・ ビンラディンを暗殺したのもオバマ政権 である。オバマ政権では毎週火曜日の会議で「ベースボールカード」と称されるテロリストたちの履歴書を確認し、 大統領自身が暗殺リストを決定していた という。
  • 「陰謀論に嵌る馬鹿」小林よしのりチャンネル Vol.430

    2022-03-15 18:40  
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     ある場面では、少数派の情報や意見が正しいこともあるし、また全く別の場面では、多数派の方が正しいこともある。それはその都度その都度判断していく以外にない。
     そんなことは言うまでもない当たり前のはずなのに、こんな幼児に諭すような話をいちいちしておかなければならないとは、情けない限りだ。
      ロシアのウクライナ侵攻は全く正当化のできない侵略戦争であり、プーチンが悪であって、ウクライナに義があり、ゼレンスキー大統領は英雄である。
      この構図を価値相対化したって何の意味もない。いまさらポストモダンでもあるまいし、オウム真理教は悪ではないと言ってたクソサヨクと一緒だ。
     マスコミの論調も「プーチン=悪」の路線に乗っているが、これに対してネット内では 「ウクライナにも非はある! プーチンは悪くない!」 の大合唱が起きた。
     既視感すごい。「麻原彰晃は真の宗教家だ」「上祐さんは頭いい」「青山さんは嘘つかない」、オウムを批判するわしに寄せられた馬鹿どもの手紙やはがきは膨大だった。
     今現在、プーチン肩入れ派のネット民が、わしを批判する根拠は、プーチンが侵攻を正当化するために言った 「ウクライナはネオナチ政権であり、我々はネオナチと戦っている」 というデマ・プロパガンダだった。
     普通、こんなこと聞いたら「はあ?」と疑問符の嵐だろう。
     即座に「お前のやってることの方がナチくさいじゃないか!」とツッコミを入れるのが常識というものだ。
     世界中でも大多数の人がそう思ったし、だからこそすぐさま「プーチンは精神に異常を来たしている」説が唱えられたのだ。
      ところが、たったそれだけの常識がない人も、ネットの情報でかく乱される者が一定数いるのである。
      ウクライナ語は、ロシア語・ベラルーシ語とは同系統ではあるが別の言語であり、ウクライナは独立国家を形成していた時期もある。
     国を失い、ロシア帝国・ソビエト連邦の一部とされた時代が長かったが、 ウクライナ人には独自の言語と文化を持つという民族アイデンティティとナショナリズムが脈々と受け継がれ、ソ連崩壊の後、1991年に念願の独立を果たしたのだ。
     ただし、歴史的にこの地ではウクライナ人の他にロシア人やユダヤ人なども混住しており、西部地域はヨーロッパの、東部地域はロシアの影響が強い。
     独立後も、 住民の半数以上をロシア人が占めているクリミア半島ではロシアへの帰属を求める声が高く、民族紛争の火種を抱えていた。
      そして2014年、クリミア半島で親ロシア派の武装勢力が蜂起し (というが、これ自体ロシアの関与が疑われる) 、議会、空軍基地などを占領。ロシアはこれに軍を投入 (いきなり他国に軍隊を入れたら主権侵害なのは当然) 、クリミアは住民投票 (他国の軍が入っているうちに住民投票は異常) を経て、独立とロシア編入を宣言した。
      ただし国際連合はこれを認めず、国際的承認は得られていない。
     侵略の方法論としては実に巧妙で学ぶところがあるが、国際法違反なのは間違いない。
      武装蜂起?は同じくロシア系住民が多い東部のドンバス地方にも飛び火し、 「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」 を名乗り、ウクライナからの独立を宣言した。
      だがこれも、国連は国家として承認していない。
     クリミアと同じ匂いがするからだろう。
     両国はクリミア同様ロシアへの編入を求め、ロシアはそれには応じなかったが、両国の軍の維持などはロシアが非公式に援助していると見られている。
     そして今回、この ドネツク・ルガンスクで、 「ウクライナの「ネオナチ」がロシア系住民を虐殺している」 として、 プーチンは住民保護を口実に戦争に踏み切り、ネット民はこぞってプーチンの言い分を信じたのである。
     だがプーチンも、その主張を信じる者も、 「ウクライナのネオナチがロシア系住民を虐殺している」 という確たる証拠を何も示していない。
     そもそも 虐殺が本当なら、なぜロシアはそれを国連安保理で訴えて、開戦に対する国際社会の同意を取り付けなかったのか?
     プーチンは開戦時の演説で、アメリカが証拠もなく「イラクが大量破壊兵器を保有している」と主張し、これを開戦理由に戦争を起こしたことを非難しているのに、 自分が主張する開戦理由については、国連安保理にかけることすらしなかった。
     これだけで、虐殺などデマだと断言していい。
     一方、「ウクライナのネオナチ」の証拠として挙げられたのが「アゾフ連隊」という武装右翼組織の存在だ。
  • 「ロシアによるウクライナ侵略戦争」小林よしのりライジング Vol.429

    2022-03-08 17:25  
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     先月半ばまで、どんなにウクライナで緊迫が高まろうと日本のメディアは相変わらずコロナばっかりで、「戦争なんか起こらない」「欧米が煽っているだけ」なんて論調もずいぶん目にした。
     さすがに実際に戦争が始まってしまうとメディアもウクライナ一色となったが、しかし日本人はこの事態を、どれだけ真面目に見ているのだろうか?
     わしは今回のロシアによるウクライナ侵略戦争には、もちろん断固反対する。
     自称保守派もこの戦争には反対のようで、産経新聞は2月25日の社説で 「れっきとした主権国家への明白な侵略である。断じて許すことはできない」 と主張したが、いったいどのツラ下げて、としか言いようがない。
      産経新聞はイラク戦争の際には、アメリカによる 「れっきとした主権国家への明白な侵略」 を、諸手を挙げて支持したじゃないか。
     産経や自称保守は、イラク戦争の際には 「フセイン大統領が大量破壊兵器を所有している」 というアメリカのデマを信じて大賛成したわけだが、そんなのは、プーチンが言った 「ゼレンスキー大統領はナチズムの信奉者で、ロシア系住民を虐殺している」 というデマを信じるのとほとんど大差のないものだったのではないか?
      自称保守派はただ、アメリカの侵略なら許されて、ロシアの侵略なら許されないと言っているだけで、こんな論法には全く説得力がない。 思想がないから論理が貫徹しないのだ。
     一方の左翼は左翼で、共産党の志位は 「プーチン大統領のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです」 と発言。これを受けて 「もしロシアに9条と同じようなものがあり、それがしっかり機能していれば、ロシアはウクライナに進攻できなかったでしょう」 などと幼児レベルのことを言い出す者も出てきて、「9条お花畑」が満開という有様だ。
     場合によってはこの先10年以内に、日本も無関係ではいられなくなる重大事態に発展する恐れもあるというのに、右も左も思考を停止させ、ただ平和ボケの極みの空気の中を漂っている。
      わしがロシアのウクライナ侵略戦争に反対するのは、単なる反戦平和主義からではない。
     これを許してしまったら、 国際法なんか何の意味もなく、世界は「万人の万人に対する闘争の自然状態」(ホッブス)に回帰していくしかなくなってしまうからだ。 弱肉強食の原理が全てとなり、強大な軍事力を持つ核保有国だったら、何をやってもいいという野蛮な世界になってしまうからだ。
     もしも日本が核武装して、世界一強い軍隊を持っていたらそれでもいいかもしれないが、今の日本はとてもそんな状態ではない。だから、 国際法秩序の維持 は死活問題なのである。
     プーチンは国際法秩序など簡単に踏みにじることができると思っていたのだろうが、それは完全に誤算だった。
     ロシアの侵略は国際社会から徹底的に批判され、 米欧は予想外の早さでロシア中央銀行を含む複数の銀行を 「国際銀行間通信協会(SWIFT)」 システムから除外するという、「金融の核爆弾」と呼ばれる制裁を決定した。
      これによってロシアの通貨ルーブルは暴落し、過去最安値を更新。ロシア中央銀行は政策金利を9.5%から20%に倍以上引き上げた。
      民間企業でも、米欧の石油大手がロシアでの石油・天然ガス開発事業から相次いで撤退、他の産業でも大手企業が続々とロシアにおける事業から撤退するなど、自身の商売を考えれば不利益になることも顧みずに、制裁を行う動きが広がっている。
     パラリンピックでは開幕前日にロシアと支援国ベラルーシの選手が急遽参加を認められなくなった。
     爆撃で殺された選手の写真を掲げて、 「攻撃国は参加できるのに、彼が競技をする機会は二度とない」 と言ったウクライナの記者の訴えがかなり効いたように思えるが、「スポーツと政治は違う」などと言う人には、あのウクライナの記者に答えられる言葉があるのだろうか?
     もともとロシア国内の世論は、新聞・テレビしか見ない年寄りは別として、ネットなどで自ら情報にアクセスできる若者を中心にウクライナへの侵攻には懐疑的で、 ロシアでは異例の反戦デモまで起きていた。
  • 「クライテリオンの皇室論を検証」小林よしのりライジング Vol.428

    2022-03-02 13:45  
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     世の中に、正しい意見しか言わない人などいない。
     わしだって、皇統は男系男子継承を守るべきだと言っていた時期がある。
     単に「男系男子で続いてきたのなら、絶やすのはもったいない」という程度の認識、そしてわしが「側室に憧れていた」という理由、さらに「保守系の言論人がほぼ全員一致でそう言ってるから、そんなものかと思っていた」だけだが、それが完全に誤りだとわかったら躊躇なく考えを改めた。
      大事なのは間違わないことではなく、間違いに気づき、改めることができるかどうかだ。「誤ったら死ぬ病」が多すぎる。
    「王様は裸だ」と言い続けることが思想である。
    「表現者クライテリオン」という雑誌がある。
     故・西部邁氏が発行していた雑誌「表現者」の後継誌で、現在の編集長は京都大学大学院教授の藤井聡氏。藤井氏とは同誌の2019年3月号で対談(『ゴーマニズム宣言2nd season 3巻』に収録)、同年4月の「第81回ゴー宣道場」や2021年3月の「オドレら正気か?関西LIVE」にご登壇いただくなど、交流がある。
     その「表現者クライテリオン」が3月号で「皇室論」を特集し、巻頭に『「皇室論」を国民的に加速せよ!』という、藤井氏が司会する座談会を載せている。
     その出席者の一人が九州大学大学院教授・施光恒(せ・てるひさ)氏で、施氏には2020年10月の第92回ゴー宣道場にご登壇いただき、来月24日発売の『コロナ論5』では対談を行っている。
     藤井氏、施氏ともに勉強させてもらっているところは多く、その点は感謝している。
     だが、この座談会における発言には全く同意できなかった。二人とも男系派だからだ。
     藤井氏は冒頭、論点整理として 「第一に皇位継承は日本の伝統の中心に位置するもの」 であり、そして伝統には 「時効」 があるという。
     ここでいう「時効」とは、時間が経過したら法律等が無効になるという一般的に使われる「時効」ではなく、むしろ逆に 「長く続いてきたものには重大かつ深淵な意味が宿っているという意味」 だというから紛らわしい。
     ともかく藤井氏は、伝統は長く続いて来たものだから「重大かつ深淵な意味が宿っている」と言いたいらしい。
     そしてその上で藤井氏は、こう言っている。
    したがって伝統として継続してきたものの前ではむしろ積極的に改変改革を慎み、粛々と継続しなければならない、という原理があります。だからその原理を踏まえれば、これまで例外なく続けてこられた、「皇位継承を男系男子に限る」、という「男系論」を採用するのが当然だということになります。
     これを読んで、わしはびっくり仰天してしまった。
    「これまで例外なく続けてこられた、『皇位継承を男系男子に限る』、という『男系論』」 ……
      藤井氏は、過去に10代8方の女性天皇がいたことを、知らないのか!?
     結局のところ藤井氏の論点整理では、男系継承を正当とする理由が 「伝統だから」「長く続いてきたものだから」 と、それだけである。これではあまりにも雑駁と言わざるを得ない。
      そもそも日本で男系継承が重んじられるようになったのはシナから儒教文化が入って以降のことであって、日本にはそれ以前からの伝統もあった。
      そしてそれによって母系を中心とする社会や、男女を問わず継承される双系の社会が形成されていたのだ。
      それなのに藤井氏はなぜ、その後に入って来たシナ男系主義のみを「伝統」として議論しようとするのか?
     しかも、ここでいう藤井氏の「伝統」の捉え方は根本的におかしい。
    「伝統として継続してきたものの前ではむしろ積極的に改変改革を慎み、粛々と継続しなければならない、という原理があります」 と、いみじくも 「原理」 という単語を使っているが、まさにこれは単なる 「原理主義」 である。これでは、ただひたすら「前例踏襲」をすることが「伝統の継承」だということになってしまう。
     それに、単に 「長く続いてきたものには重大かつ深淵な意味が宿っている」 というのなら、 因習 や 陋習 も、長く続いてきたからには 「重大かつ深淵な意味が宿って」 いて、 「改変改革を慎み、粛々と継続しなければならない」 ということになってしまう。
      伝統と因習の区別は難しい。その判断をするのが歴史や時代に育まれた常識に基づくバランス感覚であり、保守主義者であればそういう感覚をこそ大事にしなければならないのではないか。
      原理主義と保守主義は違うのだ!
     伝統とはどういうものか、『天皇論』を読んだ人ならわかると思うが、かつて美智子上皇后陛下は、伝統の大切さを十分強調しながらも、こうおっしゃっている。
    「一方で、型のみで残った伝統が社会の進展を阻んだり、伝統という名の下で古い習慣が人々を苦しめていることもあり、この言葉が安易に使われることは、好ましくありません。」
     さらに上皇后陛下は、野球のWBC2009年大会で優勝した選手たちを例に挙げ、こうおっしゃった。
    「WBCで活躍した日本の選手たちは、よろいも着ず、切腹したり、「ござる」とか言ってはおられなかったけれど、どの選手もやはりどこかサムライ的で美しい強さを持って戦っておりました。」
     伝統は時代によって変化していく部分もあるし、表面に現れる形が変化しても、 内に秘められた伝統の 「エートス・魂」 が厳然と残っている場合がある。
     他ならぬ 上皇后陛下ご自身が、皇太子の結婚相手は皇族か一部華族の出身者に限るというのが「伝統」とされていた時代に、民間から皇太子妃となり、さんざん「伝統の破壊者」呼ばわりされてきた方だ。
     しかし、美智子さまほど立派に皇室の伝統を受け継ぎ、次代に手渡した方はおられないということに、今では異論をさしはさむ人などいないだろう。
     さらに言えば、 「男系」が伝統だというのなら、「側室」も伝統だったのだ。側室があったから男系が継続できたのだから、「男系」と「側室」はワンセットの伝統である。
     側室を事実上なくしたのは大正天皇、制度上も正式に廃止したのは 昭和天皇だが、大正天皇や昭和天皇は「伝統の破壊者」だったのだろうか?
     あくまでも伝統は 「改変改革を慎み、粛々と継続しなければならない」 ものであるというのならそう言わなければならないし、男系を伝統として守れというのなら、側室も伝統として復活させよと主張しなければおかしい。
     ところが藤井氏は論点整理の第二として、サラっとこう言うものだから、わしはあっけに取られてしまった。
  • 「いるいる詐欺は犯罪です」小林よしのりライジング Vol.427

    2022-02-22 19:40  
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     皇統問題には、もうとっくに結論が出ている。
     議論はとっくのとうに終わっていて、これ以上話しても何一つ意味はない。
     それなのに、なぜまだ議論を吹っ掛けてくる者がいて、事態が動かないままになっているのか、わしには全くわからない。
      側室が存在せず、その復活もあり得ない現代において、男系男子のみで皇統を維持するのは不可能である。
     それを可能にするためとして、男系固執派が提唱している唯一のプランは、 昭和22年(1947)に皇籍を離れた「旧皇族」の子孫の男系男子を皇族にするという案だ。
     そして、安定的に皇室が維持されるためにはあと4つの宮家が必要なので、 4人の旧皇族系の男系男子を皇族にすればいい というのだ。
     だが、この議論は根本の根本から終了している。
      なぜなら、肝心のこれから皇族になってもいいという旧皇族系の男子など、ひとりもいないからだ。
     4人どころか、ひとりもいないのだ!
      旧皇族の子孫は、全員生まれた時から一般国民であり 、国民としての権利を持って生活し、人間関係を築いている。その全てを捨てて、国民に保障された人権がない皇族になりますという男なんて、いるわけがない。
      実際、今まで複数のメディアが当事者に取材をかけているが、皇族になると答えた者はひとりもいないのである。
     これだけで男系派のプランは最初っから失格である。その後で、いくら男系が正統であるかとか、伝統であるかとか、そもそも伝統とは何ぞやとかいうことをどうこう論じ合ったところで、何の意味もない。
      ところがそれでも男系派は、これから皇族になる旧皇族系の国民男子が「いる」と言い張るのだ??????
     しかもよく聞くと、 「いると聞いている」 だの、 「時が来れば名乗りを挙げると聞いた人がいる」 だのという話ばっかりで、 直接に「私は見た」と言っている人は全くいない。
     ただし、この世にたったひとりだけ、私は皇族になってもいいと言う旧皇族系の人を見たことがある、それどころか話し合って意思を確認したことがあると言っている人がいて、その証言がなんと新聞の1面に載ったことがある。
     それがこれだ。

    (産経新聞2012年2月29日)
     この記事では、その証言者を「旧皇族の慶応大講師、竹田恒泰氏」と紹介している。
      だが、竹田は「旧皇族」ではない。単なる一般国民である!
      旧皇族とは「元皇族」であって、皇族として生まれ育ち、後に国民になった人のことである。 その子孫は生まれた時から一般国民であり、「旧皇族系国民」とはいえるが、決して「旧皇族」ではない。 それは 「消防署の人」 と 「消防署の方から来た人」 くらいの違いがある。
     ところがこの記事の最後には旧皇族の定義を、「占領政策で皇室が経済的に圧迫され、 昭和22年に皇籍離脱を余儀なくされた11宮家(うち4家は廃絶)の 男系子孫たち 」と書いている!
      記事を書いた産経の記者は、旧皇族の子孫も旧皇族であり、竹田恒泰も旧皇族だと信じ切っているのである!!
     実はこの記事は、その翌日に発売された産経新聞社の雑誌「正論」2012年3月号に掲載された、 「皇統問題 旧皇族一族の覚悟」 と題する竹田恒泰の文章(記事中では「論文」と称しているが、とても「論文」などと呼べたものではない)の宣伝である。
     
     そこで、この文章について検証してみることにしよう。