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「スリーパー・セル妄想と差別」小林よしのりライジング Vol.259
2018-02-20 22:45153pt
三浦瑠麗の「スリーパー・セル妄想」について、もっと詳しく書いておきたい。
事の発端は2月11日のフジテレビ「ワイドナショー」における、以下の発言である。
三浦瑠麗「実際に戦争が始まったら、テロリストが、仮に金正恩さんが殺されても、スリーパー・セルって言われて、もう指導者が死んだっていうのが分かったら、もう一切外部との連絡を絶って都市で動き始めるスリーパー・セルってのが活動される、化するってのが言われてるんです」
(「スリーパー セル 一般市民を装って潜伏している工作員やテロリスト」とのテロップが入る)
東野幸治「普段眠っている暗殺部隊みたいなのが…」
三浦「テロリスト分子がいるわけです。
それが、ソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも、いま結構大阪ヤバイって言われていて」
松本人志「潜んでるってことですか?」
三浦「潜んでます。
というのは、あの、いざという時に、その最後のバックアッププランですよ。
そうしたら、首都攻撃するよりかは、正直、他の大都市が狙われる可能性もありますので、東京じゃないからっていうふうに安心はできないっていうのがあるので、正直我々としては核だろうが何だろうが戦争して欲しくないですよ、アメリカに」
これを「工作員妄想」と名付け、いち早く批判したのが文筆家の古谷経衡だ。
古谷によれば、三浦の発言は小泉訪朝に揺れた時代の 「ネット右翼の典型的対北朝鮮工作員観をトレースしたモノ」 だという。
実際には、拉致問題が注目されて以降、日本の公安当局は北朝鮮関係者への監視を大幅に強化、朝鮮総連内部の詳しい動きに逐一目を光らせているが、それにもかかわらず、公安当局による報告書には「スリーパー・セル」なる特殊工作員の記述は一切存在していない。
また「リテラ」も、ベテラン公安捜査官の 「長く公安にいるけど、スリーパー・セルなんて言葉は誰も使わないし、聞いたこともない」 との証言を紹介している。
三浦は、日本の公安が全く知らない「スリーパー・セル」の情報を自分は知っているとテレビで言ったわけだ。
では、三浦は何を根拠に「スリーパー・セル」なるものを言い出したのか?
三浦は自身のブログで 「すべての情報源を明らかにすることはできませんが、本件は、専門家の間では一般的な認識」 などともったいをつけるが、その上で公開できる情報として真っ先に上げたのは、なんと英国の 「デイリー・メール」 というタブロイド紙だった。
デイリー・メールは、誇張と煽情的表現を売りにした右派大衆紙で、「過激な表現や差別的な記事が多い」ことを理由に、鉄道運営会社ヴァージン・トレインズが同紙の車内販売の中止を発表(のち撤回)したほどである。
記事の信憑性についても、1934年、ネッシーが湖面から首を出した写真を初めて掲載、つい最近も、 ウィキペディアがデイリー・メールからの引用を禁止する決定をしたという、いわくつきの新聞なのだ。
しかもその記事自体も、北朝鮮本国が工作員にラジオ放送で暗号を送っているというよく聞く話だけで、「スリーパー・セル」なるものがテロを企んでいるとも、「大阪が危ない」とも一切書いていなかったというから、話にならない。
ここまでくれば、これはやはり「妄想」だろう。
ところがこんなヨタ話が、ネトウヨ・自称保守界隈では事実として流通しているらしく、三浦を擁護する言説が現れている。
例えば「アゴラ」に掲載された梶井彩子なるライターの文章だ。
梶井は、古谷経衡が引用しているのは公安調査庁の報告書だけで、警察の公安部門はこれとは別であり、「警察白書」には北朝鮮の「潜伏する工作員」について書いてあると反論している。
そこでわしは警察白書を読んでみた。該当部分を以下に引用するが、少々長いので、わしが太字で強調したところだけ見てもらえればいい。
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