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「共同体の喪失と『君の名は。』」小林よしのりライジング Vol.194

 9月25日に放送されたNHKスペシャル『縮小ニッポンの衝撃』は衝撃だった。   今年、5年に1度行われる国勢調査の結果が発表され、大正9年(1920)から行われてきた調査で、初めて日本の総人口が減少に転じた。  前回の調査に比べて94万7千人のマイナス。全国の自治体の8割以上で人口が減少した。都道府県別で最も人口が減少したのは北海道で、12万3千人のマイナス。そして島根県は全国で唯一、人口が大正時代を下回ったという。  この傾向が今後ますます加速していくのは確実で、日本はこれから、歴史上経験したことのない人口減少の時代を迎えるのだ。  これまで人口が一極集中していた東京でさえも、東京オリンピックが行われる2020年を機に減少に転じると東京都が試算している。  地方からの転入者によって人口増加を維持してきた東京だが、今では20代の転入者の年収の平均が200万円程度で、結婚して子供を作ることが望めない状態になっている。  一方で近年、30代以上の転入者が増えているのだが、これは東京オリンピックを控えた建設需要で人手不足となっている交通誘導など警備の仕事に就く、地方からの転入者が多いからだという。  この仕事も安定したものではなく、200万円程度の年収にしかならず、結婚も望みがたいのだが、地元に帰っても仕事がないため、まずこれを足掛かりにして、次の仕事を探そうとして、そのまま長期滞在になる場合が多いらしい。  だが、次のもっといい仕事なんてないし、今の仕事ですら、2020年までのものだ。全く未来がないのだ。   こういう人たちが単身のまま高齢化すると、納税額が少ないから税収は減少し、それでいて社会保障費は大幅に増加することになる。  そうなれば自治体の財政は逼迫し、全てのインフラが維持できなくなってくる。水道管の修理、道路の補修、学校、病院、公園など、あらゆるものを削減しなければならなくなるのだ。  現に、もうそうなっている自治体もある。その代表が、10年前に財政破綻した北海道夕張市だ。最盛期に11万人いた人口は現在9千人以下にまで減り、人口に合わせて行政サービスを縮小する「撤退戦」の最中なのだ。  市長は35歳の若さで、給与は手取りで15万8千円、交通費など公務の支出も自腹で、「撤退戦」の苦渋の決断ばかりを続けなければならず、見ていて本当に気の毒に思った。  公園や図書館は廃止、医療機関は縮小。幼少の頃からそんな様子しか見ていない中学生は将来に希望が持てず、早く地元を離れたいと思うようになる。かつては8割が地元の高校に進学を希望していたのに、今では3割ほどだという。実際、地元にいても就職先はないだろう。  一方、島根県雲南市では、財政難から住民に行政サービスを代行させている。地域ごとに住民組織を作って予算を与え、住民に水道の検針や単身高齢者の見回りなどを担わせる。このような動きは全国各地で進められているという。  しかし、住民がそれぞれ仕事を持ちながら行政サービスの代行までするにはかなりの負担がかかる上に、その住民自身も高齢化して、活動がままならなくなるという事態も起こりつつある。  このような、いま地方で起きている現象が、将来は東京でも起こると予想されているのである。

「共同体の喪失と『君の名は。』」小林よしのりライジング Vol.194
小林よしのりライジング

常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!

著者イメージ

小林よしのり(漫画家)

昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。

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