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記事 3件
  • 「田原総一朗のデマはたちが悪い」小林よしのりライジング Vol.326

    2019-08-20 17:30  
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     ゴー宣道場は10年目に突入し、前回で83回を数えたが、前もって用意していたテーマについて、ほとんど議論できないままに終わってしまったという事態は、これが初めてだった。
     8月4日に開催した第83回ゴー宣道場のゲストには、本人の強い要望で田原総一朗を招いた。
     テーマは「皇室と憲法における平和主義」と設定し、以下のような議題について話し合う予定だった。
    「昭和天皇は平和主義者だったのか? ならば戦争責任はなかったのか? なぜ戦後どこかの時点で、退位されなかったのか?」
    「上皇陛下は戦争の反省を使命として慰霊の旅をなさったのか? それは国政に関わる行為にならないか? 日本国として大東亜戦争を反省することにならないか?」
    「現憲法は本当に平和主義なのか? 沖縄基地は米軍の兵站ではないのか? イージス・アショアは米国を守るためではないのか?」
    「イラク戦争の反省をなぜ日本人はしないのか? イラン戦争が勃発したら、日本はどうなるのか? 言論は戦争を防ぐことができるのか? ジャーナリズムは権力の監視になっているのか?」
     いずれも田原の日頃の発言などを考慮し、田原が興味を持ち、意見を述べたがりそうな事柄を絞り込んだつもりだった。
     ところが、田原はテーマを無視した脈絡のない話や自慢話をするばかりで、全く議論にならないまま、無駄に時間が流れてしまった。
     中でも特に困ったのが、田原が事実に反する発言を平然とすることだった。
     田原は 「左翼はもういないよ!」「いま護憲派なんかいない!」 と言い放った。
     何を根拠にそんな断言ができるのか全くわからない。 田原の認識においては、日本共産党は「いない」ことになっているのだろうか?
     いないどころか、ゴリゴリの左翼も護憲派もまだたくさんいて、立憲民主党に食い込んでいる。だから枝野幸男代表も「立憲的改憲」を全く言わず、護憲一辺倒になってるんじゃないか!
     この日の第2部には参院選に立民から立候補して惜敗したフリーアナウンサーの安田真理が登壇したが、その日、彼女のツイッターにはこんな罵詈雑言が殺到した。
    「バカウヨの元凶となり、ヘイトの元凶となり、歴史修正主義を蔓延させた、女性蔑視、韓国蔑視の小林よしのりとの関係を断つべき」
    「山尾倉持の改憲論に簡単に乗ってしまうところに立憲の危うさを感じる。与党と同じだ」
    「もうこれだけで立憲民主党の支持をやめていい話」
    「あなたにがっかりした」
     これらのコメントをした人々のツイッターの書き込み内容には、 「共産党支持」「天皇制反対」「レイシスト反対」「アイヌヘイト反対」「ネトウヨを罵倒する」「アホウヨはブロック」 …などの言葉が散見された。
      これこそ100%左翼じゃないか。極左じゃないか!
     呆れたことに、田原が言った「左翼はいない」がデマであることは、その日のうちに証明されてしまった。
     天皇退位については、わしが 「天皇退位させないっていうのが安倍首相だったんだから。それをこっちがねじ込んだんだよ、退位させるように」 と言うと、田原はムキになったように 「こっちがねじ込んだなんてんじゃない。圧倒的国民が退位って言ったんだよ。小林さんが言ったからじゃない。僕も安倍に直接言ったよ!こんなもんやんなきゃダメだと。安倍もそのとおりだと思うと言ったよ!」 と言い返し、ゴー宣道場の功績を完全否定した。
     田原は控室で、SPA!の『ゴー宣』もFLASHの『よしりん辻説法』も読んでいると言っていた。
     だったら、ゴー宣道場がなければ退位は実現しなかったという事実を描いた『ゴー宣』第44章「退位を阻止しようとした者たち」(SPA!4月30日・5月7日号)も読んだはずだ。
     にもかかわらず田原は、 圧倒的国民の声があったから自動的に退位が決まったか 、 あるいは自分が安倍に直言したから実現した かのように言ったのだ!
    「圧倒的国民の声」は大前提だが、世論調査の結果が即、政権によって実現されたら、「間接民主制」の否定になり、「直接民主制」ならば「独裁制」に限りなく近くなる。田原は「圧倒的国民の声」を受けて、軍部が戦争に邁進していった事実に、まだ正面から向き合っていない。学習能力というものがないのだろう。
      しかも残念ながら、安倍は圧倒的国民の声に反して、政府の有識者会議に退位反対論者ばかり呼んで、退位を妨害しようとしていた。それは紛れもない事実である。
  • 「キャッシュレス化とアメリカからの要望書」小林よしのりライジング Vol.309

    2019-04-02 20:20  
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     ライジングvol.307「キャッシュレス化と国民性」に関する追跡調査をしたので報告したい。
     政府は「外国人観光客」を理由にキャッシュレス化を推進するつもりのようで、前回は「2027年までにカードや電子マネーによる決済を4割程度にまで増やすようだ」と書いたが、その後調べてみると、平成30年10月に経済産業省がまとめた『キャッシュレス社会への仕組み』という資料が手に入り、新たな記述を見つけた。
     
      経済産業省「キャッシュレス社会への取組み」(平成30年10⽉)
     ここに、こんな記述がある。
    ● 大阪・関西万博(2025年) に向けて、「未来投資戦略2017」で設定した キャッシュレス決済⽐率40%の⽬標を前倒しし、 より⾼いキャッシュレス決済⽐率の実現を検討会として宣⾔。
    ●さらに、 将来的には、世界最⾼⽔準のキャッシュレス決済⽐率80%を⽬指し、必要な環境整備を進めていく。
     なんと、韓国やスウェーデンに追いつくべく、 キャッシュレス80% を目指す計画なのだ。もちろん技術の進歩にはついて行かねばならないとは私も思っているが、もう政府の頭の中は、すっかり爆走モードである。
     この資料は、日本が世界と比べていかにキャッシュレス化が遅れているかということと、キャッシュレスを推進すれば、どれほど経済的メリットがあるかということがまとめられているのだが、特に「QRコード」による決済は国を挙げて標準化に持っていきたいらしい。
     
      QRコード。
      ★ところでこのコードは何を示しているでしょうか? 気になる人はスマホで撮影してみてね。
     資料を読むと、日本でキャッシュレス化が普及しにくい背景としては、やはり 「治安の良さや偽札の少なさ等の社会情勢」 がまず挙げられており、つぎに 「コスト」「現金に不満なし」「キャッシュレスは不安」 と分析されている。
     
     治安の良さに由来しており、不満もないのだから、そのままでいいじゃないかと思うが、これは「キャッシュレス化推進」のための資料だから、安心材料はまるっと無視され、コスト問題や不安払拭こそが“課題”とされている。
     ちなみに、男性よりも、女性のほうがキャッシュレス化に反対しており(男性41.3%、女性61.5%)、その理由トップ3は、 「浪費しそうだから」「お金の感覚が麻痺しそうだから」「お金のありがたみがなくなりそうだから」 。日本人女性はなんて堅実なのだろうと思った。だが、政府はその感覚を無視する方向へと舵を切るらしい。
    ●「信用情報」が物を言う社会
    「QRコード標準化」なんて聞くと、IT企業の金儲けのためだろうとしか思えなくなるが、クレジットカードにせよ電子化された決済にせよ、必要になってくるのは 「与信」 だ。
     例えば、クレジットカードには、よほどの大金持ち以外は、人それぞれに与信枠=「使用限度額」がある。カードを契約したり、ローンを組んだりする際に、金融機関がその人の年収や仕事内容、過去の借金や返済履歴などの信用情報を調査して、信用の枠を与えるものだ。買い物をして、金融機関が先に代金を肩代わりするという仕組みだから、 「この利用者は、いくらまでなら必ず期日までに返済すると信じていいのか?」 と審査されるのは当然である。
      この与信審査に必要な個人の信用情報は、各機関で共有されている。 A社で返済履歴が滞ったりすると、他社・他機関にもその情報は共有され、B社で新たなカードを作ろうとしても審査が通りにくくなったり、限度額が低く抑えられたりするのだ。住宅ローンや自動車ローンも組めなくなる場合もある。
     私も、金融公庫から借金をしていた間は、銀行のクレジットカードの限度額がずっと低いままだった。完済して何年か経った頃、急に銀行から「限度額を倍額にする」と通知があったので、慄いた。
    「ちゃんと完済されたことを評価して、あなたの信用度が高くなりましたから、いままでの2倍、あなたを信じて支払いの肩代わりをしますし、現金が必要なら貸しますよ」
    という意味である。やっと返したのに、また貸す貸す言うなよって感じだが。
     この信用情報の共有は、利用者にとっては雪だるま式に借金を増やさないためのストッパーにもなるが、困窮しているのにどこからも借り入れを断られてしまったり、ギャンブルや買い物に依存して歯止めが効かなくなったりすると、いよいよヤミ金に手を出すしかなくなる人もいる。そこでは信用調査が甘い分、取り立てが異様に厳しくなるという仕組みだ。
     殺伐とした現実だが、「QRコード」なんていう浮かれたネーミングの決済手段だって、最終的な支払いは金融機関が担うのだから、利用者に対する与信、信用調査は当然発生するだろう。 そして、キャッシュレス化社会にするということは、この 「信用情報」の調査結果が物を言う社会になる ということでもある。
  • 「キャッシュレス化と国民性」小林よしのりライジング Vol.307

    2019-03-19 22:40  
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     1月の引越しにともなう出費が、今月のクレジットカードの請求額を跳ね上げている。「頭が痛い」という比喩を超えて、もう皮膚が痛い。払えない金額を使ったわけではないが、借金の返済に長期間苦労しすぎた私は、一定額以上の請求を見ると不安とともに変な体内物質が分泌されて皮下組織をつんつん攻撃するという、強迫観念的な節約神経痛症を患っているのだ。(ほんまやで)
     クレジットカードは「借金の積み重ね」と考えるから、使うたび気が重い。なるべく現金で払いたい。現金がすき。現金だーいすき♡ 「デビットカードなら即引き落としだから借金にならないよ」と冷静な顔で言われても、やっぱり現金。財布と相談して、現金という存在を確認しながら、すっきり支払いたい。そして、その消費の実感を節約につなげたいのだ。
     ……そりゃ本音を言えば、小銭は煩わしいし、財布がぱんぱんになるし、カードは便利だ。要はカードでさっと済ませて、なんの心配もせずにいられる心の余裕を持ちたいだけでもあるのだけど。
     そんな節約神経痛症の私の胸に最近引っかかっているのは 「キャッシュレス化」の推進 だ。 政府は、東京五輪、大阪万博を目標に掲げ、「外国人観光客向け」にどんどん「キャッシュレス化」を進めるという。2027年までには、民間のクレジットカード、デビットカード、電子マネーなどによる決済を4割程度にまで増やすそうだ。 キャッシュレス推進論者たちによると、どうやら 日本は世界でもかなりキャッシュレス決済の「遅れている」国 らしい。
    ■キャッシュレス決済比率(2016年算出)■
    韓国 …… 96.4%
    イギリス …… 68.7%
    中国 …… 60.0%
    アメリカ …… 46.0%
    日本 …… 19.8%
    ドイツ …… 15.6%
    野村総合研究所
    「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」より
     推進論者の意見をまとめると、「世界の潮流はキャッシュレス化」で、「仮想通貨の技術」などが進み、世界はいまや現金なしでの生活が当たり前になりつつある国や地域が増加しており、 「日本を訪れた外国人観光客は、現金主義に不便を感じている」 と言う。
     また、キャッシュレスに関してたびたび取り上げられる米国の経済学者ケネス・S・ロゴフの著書『現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか』によれば、現金はマネーロンダリングなど地下経済の決済手段として暗躍するものだから、特に高額紙幣については廃止すべきなのだそうだ。えー? と思うが、シンガポールでは約83万円相当にもなる「1万シンガポールドル紙幣」があり、すでに発行中止になったらしい。EUでも約62500円相当の「500ユーロ紙幣」が今年1月から回収されている。「高額の闇取引など、犯罪の対価として使われやすい」というのがその理由で、別名「ビンラディン紙幣」とまで呼ばれていたようだ。