• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 6件
  • 「竹田恒泰スラップ訴訟」小林よしのりライジング Vol.473

    2023-07-04 18:45  
    300pt
     公論イベントSpecial「愛子さまを皇太子に」開催まで3週間を切った。
    「男野系子」が参戦するという「SPA!」掲載の広告も大反響で、応募者が殺到して早々に締め切ることになったが、かなり落選者を出さなければならないかもしれない。落選した人、応募を見送った人は、ニコニコ生放送とYouTubeLIVEで行う完全無料生放送で楽しんでいただきたい。
     この戦いは勝たなければならない。そして、勝つと確信している。
     その確信を強くしてくれているのが、公論戦士たちによる「論破祭り」の連戦連勝、圧勝に次ぐ圧勝だ。
     男系派の論客はひとつ何か言えば、たちまち反論の集中砲火を浴びる。しかもその反論の仕方がひとつひとつ全て違って、あらゆる角度から論破されまくるのだから、怖くて仕方がないだろう。最初は虚勢を張ってマウントを取りに来ていた言葉の勢いが、明らかに弱々しくなっていくのが見えるのも愉快なところだ。
     中でもニセ旧皇族の竹田恒泰については、公論戦士たちがツイッター上で連日「宮さま詐欺師」と批判し続け、これをまとめて総合プロデューサー・ちぇぶがゴー宣道場ホームページにアップしている。
     すると竹田は6月26日、ツイッターに
    「詐欺師」というのは名誉毀損に該当します。削除をお勧めします。リツイートや拡散するのも同様です。見かけた方はリツイートした方に教えてあげてください。最近は言論空間での誹謗中傷は社会問題となっていて、侮辱罪も厳罰化されました。
    と投稿、続けて27日には
    【訴訟予告】警告しましたが対応がありませんので、サイトの運営責任者である有限会社よしりん企画と執筆者「ちぇぶ」への訴訟を準備します。
    と投稿した。
     議論もせずに、いきなり訴訟をチラつかせ始めたのだ。
     そもそも竹田に対して「宮さま詐欺」とか「いるいる詐欺」とか言い出したのはわしが最初だし、ゴー宣道場サイトも、ちぇぶが総合Pを務める公論イベントも、わしが主催者であることは誰にもわかるはずだ。
     それなのに竹田は「小林よしのり」だけは避けて「よしりん企画」と「ちぇぶ」をターゲットにしているわけで、これだけでも竹田の卑怯さとヘタレぶりが露わになりすぎていて、何の脅しにもなっていない。
     実際、公論戦士たちも全くひるむことなく、変わらぬペースで竹田の論破を続けている。この調子でどんどん竹田を「宮さま詐欺師」と呼んで、その事実を一般常識として定着させてほしい。
     たとえ竹田が裁判に訴えたとしても、ダメージを喰らうのは一方的に竹田だけだ。むしろ、訴えるつもりならぜひどうぞと言いたいくらいだ。
      実は竹田は以前にも、これと全く同じといっていい形で、ツイッター上の批判を「名誉毀損」として裁判を起こし、地裁・高裁で全面敗訴、最高裁で上告棄却という「完敗」を喫している。
     その裁判については、訴えられた戦史・紛争史研究家の山﨑雅弘氏が 『ある裁判の戦記 竹田恒泰との811日間の戦い』 (かもがわ出版)という著書にまとめているので、今回は同書から、竹田がやったことを紹介しておこう。
     事の発端は令和元年(2019)11月、富山県朝日町の教育委員会が町内の中高生全員に受講させる「教育講演会」の講師に、竹田を招こうとしたことだった。
     山崎氏はそれをツイッターで、こう批判した。
    竹田恒泰という人物が過去に書いたツイートを4つほど紹介するだけでも、この人物が教育現場に出してはいけない人権侵害常習犯の差別主義者だとすぐわかる。富山県朝日町の教育委員会が、何も知らずに彼をわざわざ東京から招聘するわけがない。つまり今は教育委員会にも差別主義者がいる可能性が高い。
     これに続けて山崎氏は、竹田のツイートから 「韓国は、ゆすりたかりの名人で、暴力団よりたちが悪い国だ。そういう国とは、付き合わないのが一番」「そもそも韓国に、毀損されるような名誉があるのか???」 などの発言を引用、紹介した。
     するとその数日後、山崎氏のツイートとの関連は不明だが、朝日町教委は竹田の講演会中止を発表。竹田は、山崎氏が脅威への「脅迫」を煽動したから中止にされたと言いがかりをつけ、さらに 「ツイートを削除しなければ名誉棄損で訴訟を起こす。リツイートした者も提訴を検討する」 と脅し始めた。
     竹田は今も 「ツイートを削除しなければ訴訟。リツイートした者も同様」 と脅しをかけているわけで、やっていることは全く変わらない。
     山崎氏が削除を拒否すると、竹田はツイートの削除と謝罪、そして慰謝料550万円を求めて訴えた。
     実際に提訴されると、山﨑氏は弁護士報酬など裁判費用の捻出に頭を抱えた。しかし、竹田の脅しを跳ねつけリツイートを解除しなかった思想家・内田樹氏が支援を表明して「裁判を支援する会」を立ち上げ、裁判費用の募金を呼びかけた。すると2週間で1000万円を超える寄付が集まり、裁判闘争が可能になったのだった。
  • 「コロナ禍の後始末」小林よしのりライジング Vol.472

    2023-06-20 16:30  
    300pt
     ついに『愛子天皇論』が発売された。さあ大逆転の始まりだ。
     この戦いは、勝つまで続ける。長期戦になるか、短期決戦となるかはまだわからないが、その戦いの途中経過についても今後、ここで書いていくことになるだろう。
     だがその前に今回は、コロナ禍から派生した諸問題の後始末をしておきたい。
     2日、東京都の福祉保健局は、新型コロナの無料PCR検査を行っていた588の事業者のうち11事業者が、検査数を水増しするなどの手口で、都の補助金を不正に申請していたと発表した。
      不正申請の額は合計183億円に上り、そのうち16億7000万円余りが交付されていた。
     一部の事業者は不正を認めて返還に応じている一方、不正を認めていない事業者もあり、既に破産手続きをしている者もいるという。
     ただし、国や地方公共団体からの補助金を不正受給した場合は、破産したからといって免責はされない。
      破産法253条の規定により、個人が不正に受給した各種給付金・補助金などは、法的に自己破産しても、税金と同じで返還の支払義務が残り続ける。
     個人の持続化給付金ならば、不正受給額プラス20%のペナルティに年3%の利率を加えて返還しなければならず、この義務は利息も含めて全額払い終わるまで、一生ついてくるのだ。
     医療法人等が受給した場合は、破産手続をすれば法人が消滅するので、不正受給した補助金の返還義務も消滅する。
     だが、法人の代表者や実質的経営者の責任が消滅するわけではない。破産によって返還できないという場合には、「計画倒産」の可能性や「隠し財産」の有無などが厳しく精査され、その結果によっては、 詐欺破産罪 等の罪に問われることになる。
     都は警視庁に情報提供を行うとともに、今後も調査を進める方針で、都の担当者は「税金によってまかなわれる事業で不正があったことはゆゆしきことだ。徹底的に調査し、厳正に対処していく」と表明している。
      大阪府では370の事業者に無料PCR検査を委託していたが、そのうち15事業者を抽出調査したところ、少なくとも7事業者に不正申請が発覚、 不正申請額は約42億円に上るという。 大阪府は残りの事業者も調査し、悪質事案は警察への告訴も検討するとしている。
     さらに 新型コロナワクチン接種では、近畿日本ツーリストが全国の自治体から請け負った事業で、過去3年間に最大で約16億円もの過大請求をしていた可能性があると発表。 詐欺容疑で大阪市の支店長ら3人が逮捕されたが、これが個人の犯罪であるとは思えず、企業ぐるみの巨額詐欺事件に発展する可能性もある。
      他にも新型コロナ絡みの補助金・給付金等の不正受給に関する報道は枚挙にいとまがなく、日本全国詐欺だらけという様相だが、これでも氷山の一角のはずだ。
     そして、 いくら法律的には「逃げ得」が許されないようになっているとはいえ、それでも現実的には、全額を回収するのはおそらく不可能だろう。
     そうなったら、我々の税金が無駄に消えていくことになるのだが、それでいいのだろうか?
      その損失は、本来、コロナを煽った奴らが埋めるべきであろう。マスコミの煽り魔どもが大衆の恐怖を煽り、PCR検査やワクチン接種を勧めまくり、とにかく非常時だから迅速に事業を進めなければならないということになって、性善説で杜撰な手続きによって補助金を出しまくったからこそ、こんなことになってしまったのだ。
     その責任は全て、煽った者にある。全額、煽った奴らが払え!!
     さて、11日に開催した『オドレら正気か?LIVE コロナと陰謀論』のゲスト、在宅緩和ケア専門医・萬田緑平氏は大好評で迎えられ、 「全ての病気は『老化』に名前をつけたもの」で、誰も老化は避けられない といった萬田氏の「死生観」などについての話は、大いに参加者の賛同を得た。
     ただ、 萬田氏がコロナワクチンの被害に遭った人のことを 「仕方がない」 という言い方をした時には、若干引いた人もいたようだ。
     わしも、萬田氏の言葉に同感するところなきにしもあらずだが、全面的に「自己責任」にすることには躊躇を覚える。
  • 「〈ビル・ゲイツの人口削減計画〉の正体」小林よしのりライジング Vol.471

    2023-06-06 16:30  
    300pt
     6月11日午後2時から、在宅緩和ケア専門医・萬田緑平氏を迎え、オドレら正気か?LIVE『コロナと陰謀論』を開催、生放送でも配信する。
     
     ゲストにはもうひとり、大阪市立大学名誉教授・井上正康氏を予定していたが、キャンセルした。これまでの公論イベントで、一度依頼したゲストをこちらからキャンセルした前例はないはずだが、もう仕方がない。
     井上正康氏には、わしは『コロナ論』シリーズを描く際、新型コロナウイルスやワクチンに関して非常に多くを学び、『コロナ論3』で対談して以降、漫画の中にも何度も登場させている。
     それだけに、最近の井上氏がすっかり「陰謀論」に嵌ってしまったことは、『コロナ論』シリーズの信用にかかわる大問題である。
     全5巻の『コロナ論』のうち4巻までは既に文庫化されたが、最終5巻の文庫は、とっくに巻末の「解説」も入稿してもらったのに、未だ出版されていない。この「陰謀論」の問題を総括しないまま、出すわけにはいかなくなったからである。
     5巻の解説は、新聞の「意見広告」で子供へのワクチン接種の再考を訴える運動を展開した「たけし社長」に頼んだが、その意見広告も井上氏の学識を基に作成していたわけだから、なおのこと陰謀論には文庫版『コロナ論5』でカタをつけなければならないのだ。
     たけし社長と共に意見広告運動に尽力した「世界のゴー宣ファンサイト」のカレーせんべい氏も怒り心頭の様子で、井上氏がメルマガやネット生放送などで主張する陰謀論をその都度収集して、同サイトで晒している。
     いちいち井上氏のネット上の発言までチェックする余裕のないわしには非常に有難いのだが、それにしても井上氏は、驚き呆れることばかり言っている。
     曰く、 「『人口削減計画』が予定通りの手順で進められており、日本がその最初のターゲットとなる可能性がある」 (メルマガ・5月20日)
     曰く、 「ディープステートの人たちが、日本人をモルモットにしていろんなことをやっている」 (ネット動画・5月27日。発言自体は対談相手の原口一博衆院議員のものだが、井上氏も完全に同意している)
     曰く、 「ビル・ゲイツがリンゴなどの表面にワックスを塗って、それを食べた幼児が死んだ疑いがある」 (ネット生放送・5月26日)
     まだまだあるが、以下は略しておく。
     前回の「陰謀論というSNS劣化現象」でも書いたが、
     https://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar2151345
     こんなものは「常識的な思考」ができている人ならば、いちいち事の真偽を確かめるまでもなく、聞いた瞬間に「ありえない!」と一蹴するはずだ。
      もしこれが本当だというのなら、 「ビル・ゲイツを殺人罪で逮捕しろ」 と主張したらどうだ? 間違いなく頭がおかしいと思われるから。
    「ディープステート」 って何だ? そんな、仮面ライダーの敵「ショッカー」みたいな闇の組織なんかあるのか? どこにいる、誰のことだ?
    「人口削減計画」 だって!? そんなもんなくても、日本の人口はどんどん減少していて、少子化対策をしているほどじゃないか。知らないのか?
     もしも日本の少子化までが陰謀の結果だというのなら、なぜインドではその人口削減計画とやらが行われていないのか!?
     最近の陰謀論では、人口削減計画でも何でもかんでもビル・ゲイツが企んだことになっていて、井上氏も完全にそのパターンどおりの発言を繰り返しているが、なぜビル・ゲイツがそんなことを言わなければならない? 人口が増えた方が、マイクロソフトの製品が売れていいはずじゃないか?
     前回は「人口削減計画」を「最近の陰謀論のトレンド」と書いたが、もう少し調べてみたら、 これはトレンドというよりも古典的な大定番で、ずっと前から陰謀論者が繰り返し言い続けてきたものだということがわかった。
     そして、その起源は『宇宙戦争』『透明人間』『タイム・マシン』などの作品で「SFの父」といわれる イギリスの作家、H.G.ウェルズ (1866-1946)にさかのぼるらしい。
     ウェルズは1900年以降、上記のような科学ロマン的な空想小説に代わって文明批評的な小説を書くようになり、社会主義に傾倒。社会改良運動家としても精力的に活動した。
     ウェルズは1905年の小説『モダン・ユートピア』で、「世界国家」が完成して戦争が根絶され、何よりも個人の自由が重視されている社会を描いた。
     またウェルズは、議論を好まないダーウィンの代わりに進化論論争の最前線で戦って「ダーウィンの番犬」と呼ばれた生物学者、T.H.ハクスリーを尊敬して生物学・進化論を学び、優生主義者になっていた。
      もともとユートピア思想と優生思想は非常に親和性が高い。 例えばユートピアを、健康で美しい人々が理性的に暮らしている「理想的」な社会とイメージすれば、それは逆に言えば、ある基準に満たない人々が暗黙のうちに排除されている社会であることを意味するわけで、そこには優生思想が一体となって入り込んでいるのである。
  • 「陰謀論というSNS劣化現象」小林よしのりライジング Vol.470

    2023-05-23 14:30  
    150pt
     影の組織が世界政治を裏から支配しているとか、日々の主要な出来事は全て誰かが操って起こしているとかいう、 「陰謀論」 を信じてしまう人がいる。
     それは古くから世界中に存在する現象ではあるが、現在の自称保守派の多くが信じ込んでいるという事態には、やはり異常さを感じざるを得ない。
     先週、月刊WiLL別冊の 『この1冊で世界のウラが丸わかり! もう陰謀論とは言わせない』 と題する本が発行された。
     このタイトルだけでも、相当にイタイ。何しろ 「世界のウラが丸わかり」 という言い回し自体が陰謀論者の常套句なのに、それを堂々と掲げているのだから始末に負えない。もちろん、 「もう陰謀論とは言わせない」 とか言っても、中身は陰謀論のオンパレードである。
     最初に定義をしておくが、わしは 「陰謀論」 を、 「ある事件や出来事を、何者かの陰謀・策略によって起こされたとする、事実や常識的な思考では検証も理解もできない説」 と認識している。
     ポイントは 「事実や常識的な思考では検証も理解もできない」 というところだ。
    「陰謀」自体は、現実に存在する。例えばベトナム戦争の引き金になったトンキン湾事件は米国の陰謀であり、それは確たる証拠によって証明されている。
     だが「陰謀論」はそれとは全く異なる、荒唐無稽で一切論証できない妄説なのだ。
     問題の本の巻頭記事は 『コロナ・ワクチン・昆虫食・LGBT問題…「陰謀」が明るみに出る時代になった』 と題する、 元駐ウクライナ大使・馬渕睦夫 と、日本近現代史研究家・渡辺惣樹の対談である。
      馬渕睦夫 は 『ディープステート 世界を操るのは誰か』 という著書で、 近現代の世界史における大きな出来事の全ては「ディープステート」という「世界を陰から支配する勢力」 が起こしたと主張している。 ウクライナ戦争もディープステートがプーチンに仕掛けた陰謀 だとしており、全面的にプーチンを援護する論陣を張っている、当代随一の陰謀論者だ。
     その馬渕を巻頭に出しているというだけでも、これがどういう本かは明白というものだが、そもそも馬渕の著書『ディープステート』の版元も、「WiLL」と同じワック出版なのである。
     対談の冒頭、馬渕は 「今まで隠されていた事実が、どんどん明るみに出ています」 と切り出し、渡辺は 「ええ、特にコロナ関連が顕著です」 と応える。
     こうしてまずコロナ関連、特にワクチンの危険性についての話題となり、河野太郎・初代ワクチン接種推進担当大臣が「私は運び屋に過ぎない」と逃げを打ったことを批判するのだが、渡辺はここでこう言うのだ。
    「ワクチン接種を推奨したのが、ビル・ゲイツです。ゲイツは周知の通り『人口削減論者』です」
     ビル・ゲイツが人口削減の陰謀のためにワクチンを推奨した!?
     この対談ではこんな陰謀論と、ワクチンの危険性やマスクの無意味さといった、わしの『コロナ論』シリーズの主張とも共通する論点が、ごっちゃに混在している。これではわしにとっては、迷惑でたまらない。
      ビル・ゲイツが「人口削減」の陰謀を企てているというのは最近の陰謀論者のド定番だが、これは完全なデマである。
     デマの出所は、ビル・ゲイツが2010年に行った講演だ。
     ここでゲイツは世界の人口爆発とそれに伴うCO2排出量増加への対策について話しているのだが、その趣旨は、
    「ワクチンによって発展途上国の公衆衛生を改善すれば死亡率が下がり、子供が死ぬことへの不安が解消され、出生率も下がる。それと正しい避妊の普及も併せて、人口増加を抑制することができ、CO2排出量を減らすことができる」
    ということであり、特におかしな主張ではない。
      それを陰謀論者は、ビル・ゲイツが「殺人ワクチン」を普及させて世界人口の削減を図っているなどという、異次元の曲解をして大騒ぎしているのだ。
     そもそも「常識的な思考」さえできれば、こうやってわざわざ事の真偽を確かめなくても、「ビル・ゲイツが人口削減計画を実行している」と聞いた瞬間に「ありえない!」と一蹴するはずだ。
     こんな話は、フィクションの世界にしかない。というか、今どきこんなのフィクションでも陳腐すぎてボツになりそうな話だ。それが現実に起きていると疑いもなく思えるだけで、もう完全に常識がぶっ壊れているのだ。
     どうやら、最近の陰謀論のトレンドは 「人口削減計画」 らしい。
     馬渕は 「昆虫食」 についても 「何か邪悪な意図が隠されているはず」 と根拠もなく言い出し、 「そもそも昆虫食を食べなければいけないほど、食糧難なのでしょうか」 と疑問を呈し、しまいには 「気候変動とあわせて、食糧難を煽り、人口を少しでも抑制したいと考えているのでしょう」 とまで飛躍する。
     そしてさらに呆れたのは、この発言だ。
    「LGBT理解増進」政策にしても、人口削減計画の一環ではありませんか。男女の性交への関心を低下させれば、子孫を減らすことができます。
     馬渕は、LGBTへの理解が増せば同性愛者が増えて、男女間の性交への関心が低下して、人口が減ると本気で思っている! ど うやら、自分が気に食わないことや、腑に落ちないことがあれば、何でもかんでも「人口削減計画」の「陰謀」にしてしまうようだ。
     そしてさらに馬渕・渡辺は、米大統領ジョン・F・ケネディと弟のロバート・ケネディの暗殺も陰謀、9.11世界同時多発テロも米政府による陰謀、ウクライナ戦争も陰謀で、被害映像はヤラセということにしていく。
     しかしもっと驚いたのは、馬渕が 「安倍晋三元首相の暗殺の背景に、今回のウクライナ戦争が大いにかかわっているとみています」 と言っていることだ。
  • 「陰謀論に嵌る馬鹿」小林よしのりチャンネル Vol.430

    2022-03-15 18:40  
    150pt
     ある場面では、少数派の情報や意見が正しいこともあるし、また全く別の場面では、多数派の方が正しいこともある。それはその都度その都度判断していく以外にない。
     そんなことは言うまでもない当たり前のはずなのに、こんな幼児に諭すような話をいちいちしておかなければならないとは、情けない限りだ。
      ロシアのウクライナ侵攻は全く正当化のできない侵略戦争であり、プーチンが悪であって、ウクライナに義があり、ゼレンスキー大統領は英雄である。
      この構図を価値相対化したって何の意味もない。いまさらポストモダンでもあるまいし、オウム真理教は悪ではないと言ってたクソサヨクと一緒だ。
     マスコミの論調も「プーチン=悪」の路線に乗っているが、これに対してネット内では 「ウクライナにも非はある! プーチンは悪くない!」 の大合唱が起きた。
     既視感すごい。「麻原彰晃は真の宗教家だ」「上祐さんは頭いい」「青山さんは嘘つかない」、オウムを批判するわしに寄せられた馬鹿どもの手紙やはがきは膨大だった。
     今現在、プーチン肩入れ派のネット民が、わしを批判する根拠は、プーチンが侵攻を正当化するために言った 「ウクライナはネオナチ政権であり、我々はネオナチと戦っている」 というデマ・プロパガンダだった。
     普通、こんなこと聞いたら「はあ?」と疑問符の嵐だろう。
     即座に「お前のやってることの方がナチくさいじゃないか!」とツッコミを入れるのが常識というものだ。
     世界中でも大多数の人がそう思ったし、だからこそすぐさま「プーチンは精神に異常を来たしている」説が唱えられたのだ。
      ところが、たったそれだけの常識がない人も、ネットの情報でかく乱される者が一定数いるのである。
      ウクライナ語は、ロシア語・ベラルーシ語とは同系統ではあるが別の言語であり、ウクライナは独立国家を形成していた時期もある。
     国を失い、ロシア帝国・ソビエト連邦の一部とされた時代が長かったが、 ウクライナ人には独自の言語と文化を持つという民族アイデンティティとナショナリズムが脈々と受け継がれ、ソ連崩壊の後、1991年に念願の独立を果たしたのだ。
     ただし、歴史的にこの地ではウクライナ人の他にロシア人やユダヤ人なども混住しており、西部地域はヨーロッパの、東部地域はロシアの影響が強い。
     独立後も、 住民の半数以上をロシア人が占めているクリミア半島ではロシアへの帰属を求める声が高く、民族紛争の火種を抱えていた。
      そして2014年、クリミア半島で親ロシア派の武装勢力が蜂起し (というが、これ自体ロシアの関与が疑われる) 、議会、空軍基地などを占領。ロシアはこれに軍を投入 (いきなり他国に軍隊を入れたら主権侵害なのは当然) 、クリミアは住民投票 (他国の軍が入っているうちに住民投票は異常) を経て、独立とロシア編入を宣言した。
      ただし国際連合はこれを認めず、国際的承認は得られていない。
     侵略の方法論としては実に巧妙で学ぶところがあるが、国際法違反なのは間違いない。
      武装蜂起?は同じくロシア系住民が多い東部のドンバス地方にも飛び火し、 「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」 を名乗り、ウクライナからの独立を宣言した。
      だがこれも、国連は国家として承認していない。
     クリミアと同じ匂いがするからだろう。
     両国はクリミア同様ロシアへの編入を求め、ロシアはそれには応じなかったが、両国の軍の維持などはロシアが非公式に援助していると見られている。
     そして今回、この ドネツク・ルガンスクで、 「ウクライナの「ネオナチ」がロシア系住民を虐殺している」 として、 プーチンは住民保護を口実に戦争に踏み切り、ネット民はこぞってプーチンの言い分を信じたのである。
     だがプーチンも、その主張を信じる者も、 「ウクライナのネオナチがロシア系住民を虐殺している」 という確たる証拠を何も示していない。
     そもそも 虐殺が本当なら、なぜロシアはそれを国連安保理で訴えて、開戦に対する国際社会の同意を取り付けなかったのか?
     プーチンは開戦時の演説で、アメリカが証拠もなく「イラクが大量破壊兵器を保有している」と主張し、これを開戦理由に戦争を起こしたことを非難しているのに、 自分が主張する開戦理由については、国連安保理にかけることすらしなかった。
     これだけで、虐殺などデマだと断言していい。
     一方、「ウクライナのネオナチ」の証拠として挙げられたのが「アゾフ連隊」という武装右翼組織の存在だ。
  • 「体操競技には体罰が必要ではないか?」小林よしのりライジング Vol.284

    2018-09-11 22:30  
    153pt
     今度は体操界でパワハラ騒動だ。もうスポーツ界にマトモなところはないのかと思わされて、ひたすら再来年の東京オリンピックへのうんざり感が募っていく。
     今回の騒動は、まず宮川紗江選手に速見佑斗コーチが暴力を振るい、それを利用して、日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長が速見コーチを排除し、宮川選手を自分のクラブに引き抜こうと企て、その過程でパワハラがあったという構図らしい。
     だがここでわしが気になるのは、暴力を振るって行うスポーツ指導は是か非かという問題だ。
     暴力、あるいは体罰、あるいは愛のムチ、あるいはシゴキ、のような指導は、今の時代ではもう古いとされている。だが、特に体操という競技の指導においては、暴力を一切使わないことにしてしまっていいのかという疑問が湧くのだ。
     そもそも体操は、超危険な競技である。
     体操選手は、こんな無茶なことをやってていいのかと思うような競技をやっている。鉄棒から飛んで、空中で体をひねりまくり、足元がピクリとも動かないように着地するなんて尋常じゃないし、平均台の宙返りなんか、足を滑らせたら半身不随か死をも招くほどの危険性があり、見ていてハラハラしてしまう。
     ちょっとでも気のゆるみがあったら、選手は人生を終えてしまうほどの無茶な競技なのだ。
     油断したら死ぬぞということを思い知らせるためには、選手が気を抜いているようなところを見つけたら、コーチは「おまえ何をやってるんだ!」とぶん殴るくらいのことをやらなければならないのではないか。
     体罰によって、緊張感を取り戻し、集中力が高まる。体操は100%の集中力が必要な競技であり、そこまで集中力を高めるために暴力・体罰というものは役に立つとわしは思う。
     選手のことを考えたら、体操の指導で暴力を使うことを封じてはならないのではないか?
     わし自身にはあいにく暴力に対する嫌悪感ができあがっていて、妻に対しても一度も手を挙げたことはないし、絶対に人に暴力を振るいたくはないと思っている。
     それなのに、なぜ体操の指導においては暴力を肯定するのかというと、わし自身の幼少時の経験があるからだ。
     わしの父は、わしに暴力を振るってしつけをしたため、そのせいでわしは暴力を憎むようになり、決して暴力は使わないようになった。
     だがその一方で、わしは父の暴力によってストレスを感じながら、そのストレスが同時に緊張感や、集中力というものに繋がっていたように感じられるのだ。
     わしは家庭だけでなく、学校でも暴力を受けていた。