• このエントリーをはてなブックマークに追加

今なら、継続入会で月額会員費が1ヶ月分無料!

記事 11件
  • 「対韓輸出管理の反応に見るリベラルと保守の違い」小林よしのりライジング Vol.323

    2019-07-23 19:20  
    150pt
     政府は韓国向け半導体材料などの輸出規制を強化した。
     世論調査ではこれに対して 「支持する」という回答が70.7% 、 「韓国は信用できる国だと思うか」という問いにも「思わない」が74.7% にも上っている(7月14、15日 産経新聞・FNN合同世論調査)。
     わしは、これでいいと思う。
     今回の 対韓輸出規制強化 が「徴用工問題」への対抗措置なのかどうかについては、判然としていない。
     日本政府は「対抗措置ではない」とは主張しているが、その背景には徴用工問題があることを認めており、 韓国が国際法上の国と国の約束を守らないため「信頼関係が著しく損なわれ」、それにより「安保上の懸念」が生じている と説明している。
     わしはこれは正しいと思う。
     そもそも今回規制対象となった フッ化水素 などは化学兵器の生産などに軍事転用できるもので、もともと輸出規制して当然のところを、今までは信頼関係があるからということで、ほぼフリーに輸出していたのだ。その信頼関係がここまで破壊されたのだから、規制は強化して当然である。
     自民党からは「 (過去輸出した分の)行き先が分からないような事案が見つかっているわけだからこうしたことに対して措置を取るのは当然だと思う 」(萩生田光一幹事長代行)、「 今までウラン濃縮素材(フッ化水素)について韓国企業が“100欲しい”と言ったら100渡していた。しかし工業製品に使うのは70ぐらいで残りを何に使うか韓国は返答しなかった 」(小野寺五典元防衛相)といった発言があり、もっとはっきり「 北朝鮮に横流しされている 」とする報道も一部には出ていた。
      もしかしたら、政府は公式には言わないが、輸出した半導体材料がどのように流れているかの情報を秘密裡に抑えているのかもしれないし、もしそうであれば、この措置は正しいと言うしかない。
     韓国は今回の規制強化を報復と思ってギャーギャー怒っているし、日本のネトウヨなどもこれを報復だと思って、ワーワー拍手喝采している。
      わしは基本的にはこれを報復とは思っていないのだが、もし仮に報復だったとしても、もうそれでいいんじゃないかと思っている。
      ところがリベラル系の者は、こぞって輸出規制強化に反対を唱えている。
     例えば朝日新聞は3日の社説で「確かに徴用工問題での韓国政府の対応には問題がある」としながらも、 「日韓両政府は頭を冷やす時だ。外交当局の高官協議で打開の模索を急ぐべきである」 と書いている。
     東京新聞も3日の社説で 「対話の糸口を見つけ、早期収拾を図るべきだ」「確かに日韓関係は厳しい。損なわれた信頼関係を修復する努力をそれでも怠り、感情的な争いになれば、お互いが不幸な被害を受ける結末になってしまう」 と主張している。
     朝日も東京も、冷静になって話し合えと唱えているのだ。
     ここがリベラルと保守の違いなのである。
     リベラルは相手を信頼する。
     そして リベラルは、国民性の違いというものを認めない。
     人類みな兄弟、あの国の人もこの国の人も同じ人間同士。だから感情的にならず、冷静になって話せばわかると思うのだ。
      だが保守の感覚では、それぞれの国にはそれぞれの国民性があり、価値観の相違があり、これは話し合っても決して乗り越えられないと諦観しているのである。
     韓国については、もはや「反日」が国民性になってしまっていて、これを説得して変えるなんてことはできないと保守は考えるのだ。
     西郷隆盛の時代ならば、一か八かの話し合いが功を奏す可能性はあったが、それができずに、その後は日本政府が砲艦外交をやったために、両国の信頼性は失われ、朝鮮半島に「恨」が蓄積するのみになった。
     リベラルは、世界の誰とでも「話せばわかる」というが、それならば、リベラル知識人がまず話してわからせて韓国の反日をやめさせてほしい。
     だがそれは現実には絶対不可能だ。 韓国人が自分たちのアイデンティティーを保つための核が「反日」になっていて、反日をやめたら韓国は崩壊してしまう。
  • 「やっぱり慰安婦問題は終わらなかった」小林よしのりライジング Vol.322

    2019-07-16 18:40  
    150pt
     韓国に 「和解・癒し財団」 というものがあったのだが、これが登記上、正式に解散されたことがわかった。
     これでまたひとつ、安倍晋三の外交大失敗が確定した。
     財団は、慰安婦問題を 「最終的かつ不可逆的に解決」 するとして、 2015年12月28日の日韓外相会談で交わされた 「日韓合意」 に基づき、韓国政府が設立していた。
      これは日韓合意の中核となる事業であり、日本政府が国民の税金から拠出した10億円を財源に、元慰安婦には1億ウォン(約1000万円)、遺族には2000万ウォン(約200万円)の支給金の支払いなどを行っていた。
      事業の対象になったのは元慰安婦47人と遺族199人で、そのうち元慰安婦36人と遺族71人が受給を希望したという。
     ところが2017年、朴槿恵(パク・クネ)政権が倒れて文在寅(ムン・ジェイン)政権に代わると、韓国政府は 「合意には法的拘束力がない」 と言い出して日韓合意の検証作業を行い、その後、文在寅は 「政府間の約束であれ、大統領として、この合意で慰安婦問題が解決できないことを明確にする」 と表明した。
      政府間の約束でも、大統領の一存で無効にすると平気で公言するのだからデタラメにも程があるが、それが韓国というものである。
      そして昨年11月、韓国政府は一方的に財団の解散と事業終了の方針を発表し、日本政府の同意なしに手続きを進めた。 その手続きが終了して財団は正式に解散したわけだが、その際にも日本政府への通知はなされなかったという。
     これは韓国側による日韓合意の一方的破棄であり、仰々しく謳い上げた 「最終的かつ不可逆的解決」 は、たった4年も持たずに完全破綻したのだ。
     そもそも韓国は財団設立当初から「裏切り行為」を行っていたそうで、その経緯を「文春オンライン」が記事にしている。書いたのは、山尾志桜里と倉持麟太郎を追い回し、わしに対して「我々はとんでもない証拠を持っている」と見え見えのブラフをかけた赤石晋一郎だ。なんだ、マトモな記事も書けるのか。
     記事によれば、 日韓協議では両国政府が10億円ずつ拠出して「未来志向財団」のようなものを作り、慰安婦問題だけではなく、若者の留学支援など、よりよい日韓関係を築くためのバックアップを行うというプランだったそうだ。
     ところが韓国政府は10億円拠出を立ち消えにさせ、慰安婦問題のみを扱う財団を設立。当然日本政府側は「話が違う」となったが、安倍首相の目的は慰安婦問題に決着をつけ、その様子を米国始め国際社会に証人として見てもらうことにあったので、「それくらいは許容しよう」という判断になったという。
     そして財団による支給金の給付が始まると、韓国の反日団体・ 挺対協 (韓国挺身隊問題対策協議会、現在は 「日本軍性奴隷制問題解決の為の正義記憶連帯」 という、ものすごい名前になっているらしい)などによる妨害工作が始まった。
     村山政権下で発足し、元慰安婦に「償い金」を支給した「アジア女性基金」の時と同様、挺対協らは元慰安婦に 「日本の汚いお金を受け取るな」 と圧力をかけた。 「待てば倍のお金が出るから、財団のお金は受け取らないように」 と言われた元慰安婦もいた。もちろん、その後「倍のお金」など出なかった。
      元慰安婦の7割以上が支給金受け取りを希望し、中には日本国民に感謝の言葉を述べた人もいたのに、そういう事実は一切無視された。
     財団の韓国人スタッフは反対派の脅迫や嫌がらせを何回も受けた。理事長は催涙スプレーをかけられ、脅迫が家族にまで及んで辞任、ショックで外出できなくなったという。
     そして、支給金を申請した人のうち元慰安婦2人と遺族13人にはまだ支払いが済んでいなかったにもかかわらず、財団は強引に解散させられ、未払いの人たちが支給を受けられるかどうかは不明だという。
      毎度のことだが、韓国の「慰安婦支援団体」は実際には「反日」だけが目的で、問題の解決など一切望んでいない。 元慰安婦は反日の道具として利用するものとしか思っておらず、元慰安婦本人のことなど、本当はどうでもいいのだ。
  • 「トランプ大統領への手紙」小林よしのりライジング Vol.321

    2019-07-02 20:20  
    150pt
     拝啓 アメリカ合衆国大統領 ドナルド・トランプ閣下
     トランプ大統領にはこの度、素晴らしいお言葉を賜りました。
     今回のライジングでは、その感激の思いを記して大統領に捧げたいと存じます。
     思えばわしは、トランプ大統領が誕生した時からその発言に注目し、ずっと期待して参りました。
    「米国を再び偉大な国にしよう」
    「私たちは、『米国製品を買い、米国人を雇う』という2つの単純なルールに従うことになる」
    「自由貿易は恐ろしい。もし国民が賢ければ、自由貿易は素晴らしいものになる。しかし、我々の国民は愚かだ」
    「もう私たちは、この国や国民をグローバリズムの偽りの唄に溺れさせない」
    「メキシコが人々を送り込んでくるとき、それは最良の人々ではない。彼らは多くの問題を抱えた人々を送り込んでくるんだ。薬物を持っていたり、犯罪者だったり、強姦魔だったり」
     最後のメキシコ云々の発言は物議を醸しましたが、これらの発言で主張しているのは内需優先、保護主義、自由貿易・グローバリズム反対、移民制限であり、これはわしの意見とも一致する、素晴らしい政策だと思ったものです。
     北朝鮮外交ではトランプ大統領は戦争も辞さないかのように、ツイッターでこう挑発をされました。
    「北朝鮮の外相が国連で演説するのを今聞いた。もし小さなロケットマンの考えを繰り返すなら、彼らは長く続かない」
     これを北朝鮮外相が「宣戦布告」と見なし、「米国が我が国に宣戦布告をしたのだから、我々にはあらゆる対抗措置を取る権利がある」と述べた時には、ついにツイッターから戦争が始まる時代が来たかと思ったものです。
     しかし今では、大統領はツイッターで金正恩と会談したい意向を表明して、
    「もし金委員長がこの書き込みを見ていたら、握手をして挨拶をするためだけに会おうと思う」
     と書き込んでおられます。
     やっぱり大統領は、ツイッターは戦争を起こすのではなく、友好のために使った方がいいと考える、心優しいお方だったのですね。
     今はイランに対して、イスラエルを助けるために、ものすごく居丈高に振る舞っているけれども、それもきっと本心からではないのでしょう。もし偶発的にでも戦争が始まってしまったら大変なことになるということくらい、わからないはずがないですから。
     前置きが長くなりました。
     わしが素晴らしいと感じたトランプ大統領の言葉は、ズバリ「日米安保条約破棄」です。
     6月24日、米ブルームバーグ通信は大統領が「日本が米国の防衛に駆けつける義務がないのは一方的すぎる」として、「日米安全保障条約を破棄する可能性について側近に漏らしていた」と報道しました。
     この報道に対して、菅官房長官は記者会見で「米大統領府から『米政府の立場と相いれない』と確認した」と全否定、米政府側も日本の通信社などに対して「発言はなかった」と回答していました。
     ところが続く26日には、FOXビジネスニュースの電話インタビューで、大統領ご自身が 「日本が攻撃された時、アメリカは第3次世界大戦を戦い、猛烈な犠牲を払うことになるが、アメリカが攻撃されて救援が必要なとき、日本はソニーのテレビで見物するだけだ」 と安保条約への不満を公言しました。
     日米両政府が火消しに躍起になっているのも一切構わず、堂々と「日米安保条約破棄」が自身の本音であることを公言してしまう潔さは、すごいものがあります。
     思えばトランプ大統領は2016年の大統領選に当選した当時にも 「日本は駐留米軍の経費を100%払うべきだ。そうしないならアメリカ軍は撤退する。その代わりに核武装を許してやろう」 と発言しており、その考えは一貫して全くブレていません。
     とにかく「日米安保条約破棄」という、一番素晴らしいことを言ってくださって、感謝するばかりです!
      日米安保条約がある限り、日本は米軍の占領状態が継続され、主権を喪失し、軍隊を持つこともできない属国であり続ける以外になく、主権がない以上、民主主義も機能しません。
     アメリカ大統領が日米安保条約破棄に言及するということは、日本を属国にするのをやめると言っているのと同じことです。これでようやく日本が独立した民主主義国家になるチャンスが生まれてきました。これは大喜びです。パーティーでも開きたい気分です!
     トランプ大統領は24日にツイッターで 「中国は原油の91%、日本は62%、ほかの多くの国も同様にホルムズ海峡から輸入している。なぜアメリカはこれらの国のために無償で航路を守っているのか。これらの国は自国の船を自分で守るべきだ」 とも発言しています。
     全くの正論です。守りましょう、ぜひとも!
      日米安保条約さえ破棄されれば、直ちに自主防衛体制を整え、自国の船は自力で守るようにします!
     当然、沖縄から米軍基地も叩き出しますし、日本の領空を米軍が占領している状態も、すぐにもやめていただきます。オスプレイも、イージス・アショアもやめましょう! そして日本は必ずや核を自前で持ちます!
     そうすれば、日本は外交交渉も自分の意思でできます。北方領土が返還されても絶対そこに米軍基地を置かないとロシアに確約できるから、返還交渉が進む可能性も格段に高まります!
      ところがおかしなことに、日本には「日米安保は片務条約ではない」とか言って、トランプ大統領に異議を唱える人がいます。 沖縄に米軍基地を置くことで、アメリカの世界戦略に協力しているとか、しかもその駐留経費に莫大な「思いやり予算」を投じているとか言って、日本も相応の負担をしていると言い張るのです。
     親米保守派がそう言うのはまだわかるのですが、どういうわけだか最近では、左翼リベラルの論者にもそう唱える人が出てきて、「朝日より左」と言われる東京新聞までが6月29日の社説で「『安保ただ乗り論』は当たらない」と同様の主張をしており、わしは全く理解に苦しんでいます。
  • 「中高年ひきこもりは親の責任」小林よしのりライジング Vol.318

    2019-06-11 20:55  
    150pt
     中高年ひきこもりは一過性の話題では済まない。
     もはや、日本の未来を危うくする大問題となっている。
     51歳ひきこもり男が起こした川崎市の20人殺傷事件に誘発される形で、今度は76歳の 父親が44歳のひきこもり息子を刺殺する事件を起こした。
     息子を殺した熊沢英昭は、農水省トップの事務次官にまで上り詰めた元エリート官僚だった。
     殺害された息子・熊沢英一郎は、都内屈指のエリート校である私立駒場東邦中学・高校へ進むが、同校からは毎年数十人が東大に入るのに対し、英一郎が進んだのは代々木アニメーション学院だった。
     その後、数年おいて流通経済大学に入るなどもしたようだが、結局は定職にもつかず、ネットとゲーム三昧の「ネトゲ廃人」といわれる生活を送っていた。 その生活費やゲーム代は全て父親が出しており、1か月のゲーム課金額が32万円にも上っていたらしい。
     英一郎はツイッターで「元農水省トップの父」をしきりに自慢し、 「私は、お前ら庶民とは、生まれた時から人生が違うのさw」 などと他人を見下し、誹謗中傷する書き込みを繰り返していた。
     一方、母親については 「中2の時、初めて愚母を殴り倒した時の快感は今でも覚えている」「愚母を殺したい」「貴様の葬式では遺影に灰を投げつけてやる」 などと憎悪をむき出しにしている。
     また、真偽は不明だが 「私は肉体は健康だが脳は生まれつきアスペルガー症候群だし、18歳で統合失調症という呪われて産まれた身体。私が1度でも産んでくれと親に頼んだか?」 というツイートなどもあり、ネット内では「ヤバい人」として有名だったらしい。
     英一郎はここ10年ほどひとり暮らしをしていたが、近所とゴミ出しのトラブルを起こし、5月末に実家に戻ってきた。 するとたちまち両親に対して殴る蹴るの暴行を繰り返すようになり、父親は身の危険を感じたという。
     そして、川崎の事件から4日後の6月1日、 家に隣接する小学校の運動会に英一郎は 「うるせぇな、ぶっ殺してやる」 と騒ぎ、それを注意した父親と口論となった。
      そこで父親は、息子が川崎のような事件を起こすことを恐れ、台所の包丁で胸など10数か所を刺し、殺害した。英一郎が実家に戻ってから、わずか1週間ほど後のことだった。
     ひきこもりなどの自立・更生支援等の事業を手掛け、ジャーナリストとしても活動する押川剛氏が『「子供を殺してください」という親たち』(新潮文庫)という著書を出している。
     押川氏のもとには毎日のように、子供の暴力や暴言に悩む親からの相談や依頼がある。 「子供を殺してください」 は実際にその中で言われた言葉で、他にも 「いっそ子供が死んでくれたら」 などという訴えをよく聞くという。
     これは単に「家庭内暴力」の一言で済まされるような問題ではなく、その背景には重度の統合失調症、うつ病、強迫症、パニック症といった精神疾患や、薬物やアルコール、ギャンブル、ネット、ゲームへの依存症や嗜癖、ストーカー、DV、性犯罪などの問題が存在する。
     そして「ひきこもり」も、それらの問題のうちの一つなのである。
     押川氏は同書で「近年、爆発的に増えている」ケースとして、こんな特徴を挙げている。
    「年齢は三十代から四十代で、ひきこもりや無就労の状態が長くつづいている。暴言や束縛で親を苦しめる一方で、精神科への通院歴があることも多く、家族は本人をどのように導いたら良いのかわからないまま手をこまぬいている。
     そしてもう一つの典型例は、本人に立派な学歴や経歴がついていることである。中学や高校からの不登校というよりは、高校までは進学校に進みながら、大学受験で失敗した例や、大学卒業後、それなりの企業に就職したが短期間で離職した例が多い。強烈な挫折感を味わいながらも、『勉強ができる』という自負がある」
     熊沢英一郎は、完全な典型例だったのである。
     そしてその根底にある要因を、押川氏はこう指摘する。
    「その生育過程においては、親からの攻撃や抑圧、束縛などを受けてきている。過干渉と言えるほどの育て方をされる一方で、そこに心の触れ合いはなく、強い孤独を感じながら生きてきたのだ」
    「常に緊張を強いられ、安心感を得ないまま大人になったような子供が、受験や就職の失敗により人生を見失ったとき、その怒りは親に向かう」
      結局のところ、問題行動の原因は「親の愛情不足」に尽きるようだ。
     生まれてこの方、この世には愛情や信頼で成り立つ人間関係があるということを知らない。「支配・被支配」の関係しか知らない。相手を攻撃する、束縛する、支配するというコミュニケーションの取り方しか知らない。
     当然、そんな人間はどこへ行っても嫌われ、孤立する。それでひきこもりになって、自分が何もかもうまくいかないのは親のせいだと、憎悪の念を持つようになるのだ。
     押川氏は 「子供の頃に親からされたことに、今になって仕返しをしているのではないかと思うほどです」 と記している。
      自分が子供に愛情をかけず、モンスターに育ててしまったのだから、そいつが他人の子供を殺す前に自分で始末をつけるというのも、子育てに失敗した親のひとつの責任の取り方として、わしは肯定する。
     ところが、メディアではそんな意見は言ってはいけないことにされていて、「どんな理由があろうと、殺してはいけない」という意見しか許されないような状態になっている。
  • 「川崎殺傷事件:自殺テロの防ぎ方」小林よしのりライジング Vol.317

    2019-06-04 20:10  
    150pt
     何とも痛ましい事件が起こってしまった。
     川崎市の20人殺傷事件である。
     犯行は計画的で、スクールバスを待つ小学生らに背後から無言で忍び寄り、両手に持った刃渡り30㎝の柳刃包丁で手当たり次第にめった刺ししてから自殺、その間わずか十数秒だったというから、これではいくら警備を強化しても防ぎようがない。
     しかも目的が「自殺」にあるのだから、どんなに刑を厳罰化しても何の抑止力にもならない。
     それならば、同様の事件の再発を防ぐにはどうしたらいいのだろうか?
     犯人の51歳男性・岩崎隆一は両親の離婚後、父母のどちらにも引き取られず、父方の伯父夫婦家族と暮らし、中学卒業後は定職にもつかず、30年以上子供部屋に籠って社会との繋がりをほぼ拒絶して生きていた。
     NHKが取材をしても、 中学卒業後、犯行に至るまでの間の岩崎について知っている人は一人も見つからなかったというし、当人の写真も中学の卒業アルバム以降のものは、どうやら一枚も存在していないようだ。 近所の人も、事件を起こす間際に見かけるようになるまで30年以上、その家に岩崎が住んでいることも知らなかったという。
     伯父夫婦とのコミュニケーションも断絶していたようで、ひとつ屋根の下に住んでいながら、何か言うにも部屋の前に手紙を置かなければならないような状態だったらしい。
      親の愛情も、社会との関わりも何もない、一切の束縛を失った「自由」の中では、人間は狂う。 わしは『戦争論』などで何度もそのことを描いてきたが、今回もまさにその典型例と言うべきだろう。
    「自分を一番自由にしてくれる束縛は何か?それを大事に思う心を育てよう」
    『戦争論』でそう描いたのに、誰もそこを重要視しない。日本軍は正義だったか、悪だったかと、喧嘩してるばかりで、「個と公」というテーマには、右も左も熟考することがなかった。
     岩崎が「ひきこもり」傾向にあったことで、ひきこもりが「犯罪者予備軍」であるかのような偏見が助長されることが危惧されるとして、ひきこもり当事者の支援団体「ひきこもりUX会議」は声明文を発表した。
     声明文では「『ひきこもり』かどうかによらず、周囲の無理解や孤立のうちに長く置かれ、絶望を深めてしまうと、ひとは極端な行動に出てしまうことがあります」と主張している。
     確かに、今回の犯行は池田小事件の宅間守、秋葉原通り魔事件の加藤智大や、新幹線通り魔事件の小島一朗らと同種のものであり、それらの犯人たちはひきこもりだったわけではない。
     ひきこもりによる孤立感や、80代の老親が50代のひきこもりの子を養っている「8050問題」による、将来に対する絶望感が要因となったことは考えられるが、ひきこもりだから事件を起こしたというよりは、今回はたまたまひきこもりの男が、宅間守や加藤智大と同様の心理状態になって起こしたものと考えるべきであろう。
      ひきこもりかどうかに関係なく、未来に孤独と絶望しかなく、自暴自棄になって凶行に及びかねない「予備軍」は、いつどこにいるかわからないと思っておかなければならないのである。
      強い自殺願望を抱いている者が社会に恨みを持ち、一人で死ぬのは嫌だ、バカらしいと考え、誰かを巻き添えにして死のうとすることを「拡大自殺」というそうだが、わしはこれを「自殺テロ」と呼びたい。
     失うものがない「無敵の人」がヤケクソで起こした自殺テロの巻き添えで、幼い子供や将来有望な人物が犠牲になるなんてとても許せるものではなく、わしとて「死ぬなら一人で死ね!」と言いたくもなるが、公にそう言っては、かえって危ないらしい。
     自殺テロ予備軍の人間は、宅間や加藤や今回の岩崎隆一のような人間に感情移入し、自分と重ねて見ていたりするので、彼らが「一人で死ね!」と言われると、自分が「一人で死ね!」と言われているように感じ、社会から疎外されているように思い、社会に対する恨みを募らせてしまうのだという。
     勝手な被害者感情だとは思うが、そう感じるのをやめさせることはできないのだから、それならなるべく刺激しないようにしておくしかない。その代わり、社会や行政がそういう人間を孤独から救い、就職の面倒まで見るようにする施策が必要である。
     岩崎隆一は携帯もパソコンも持っておらず、かつて所有していた形跡も一切なかったという。
  • 「男系カルト・阿比留瑠比、論破まつり」小林よしのりライジング Vol.314

    2019-05-14 21:20  
    150pt
     新天皇陛下の即位により、現状では皇位継承資格者がたった3人、次世代の者は悠仁さまたった一人という恐るべき事実が誰の目にも明らかになった。
     そしてこれに対処する方法は、女性宮家を創設し、女性・女系天皇を認める以外にないということも、大多数の国民の共通認識となってきた。
     これに対して尋常ではない危機感を抱いているのが、男系男子固執の自称保守陣営だが、追い詰められて主張がどんどんトチ狂っていくのがなかなか見ものではある。
     この問題は、必ず女系(双系)公認の側が勝つ。その時に、逆賊たちが何を言っていたかは確実に歴史に残しておく必要があるので、このライジングの『ゴー宣』も、随時そんな記録の場としたいと思う。
     新天皇ご即位の記事が紙面を賑わした5月2日の産経新聞には、「皇位継承 歴史の重み 女性宮家創設には問題」という記事が載った。
     
     筆者は産経のエース記者・阿比留瑠比だが、どう見ても「問題」なのは阿比留の頭の中の方だ。
     なにしろ、阿比留は 「『女性宮家の創設』には、見逃せない陥穽(かんせい)がある」 として、こんなことを書いているのだ。
     現在、与野党を問わず女性宮家創設や、現在は皇室典範で父方の系統に天皇を持つ男系の男子に限られている皇位継承資格を、女性や女系の皇族の子孫に拡大することを検討すべきだとの意見が根強くある。
     とはいえ、これはあまりに安易に過ぎよう。
     仮に女性宮家を創設しても、一時的に皇族減少を防ぐだけで皇位継承資格者が増えるわけではなく、その場しのぎでしかない。
     何を言ってるのか、全くわからない。
      女性宮家を創設して、皇位継承資格を女性や女系の皇族まで拡大すれば、当然皇位継承資格者は増える。
     それなのに阿比留は、女性宮家を創設しても 「皇位継承資格者が増えるわけではなく、その場しのぎでしかない」 と書いている!
      どうやら阿比留は「女性宮家創設」と「女性・女系皇族への皇位継承資格拡大」を、全く別物と考えているらしい。
      女性宮家とは、皇位継承権がなく公務をするだけのものと、勝手に思っているのだ!
     確かに野田政権下で検討された「一代限りの女性宮家」はそういうもので、「公務の負担軽減」だけを目的とする「その場しのぎ」でしかなかったが、今回は違う。退位特例法の付帯決議は、こう書いているのだ。
     政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方のご年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方のご事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること。  つまり、 「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」、具体的には「女性宮家の創設等について」 検討するよう政府に求めているのである。
     ところがこの文章を、八木秀次(麗澤大教授)は信じられない解釈で読んだ。
  • 「即位のお言葉から見える主体的意思」小林よしのりライジング Vol.313

    2019-05-07 22:20  
    150pt
     実にいろいろあったが、平成から令和への御代替わりが無事に行われ、まずは安心している。
     それにしても、天皇が生前退位したら「国体の危機」だとまで言って反対した自称保守言論人たちが、いざ生前退位の実現を目の前にしても誰一人諌死するわけでもなく、それどころか相次いで祝意まで述べたのには心底呆れ果てた。
     共同通信の世論調査では、 今後の天皇についても退位を「認めるべきだ」とする回答はなんと93.5% 、 「認めるべきではない」はわずか3.5% だった。安倍政権や自称保守がいくらご譲位を「特例法」に基づく「一代限り」のものだと言おうと、今回が先例となり、今後もご譲位が行われるようになるのは確実である。 もっとも、その都度特例法を作るのではなく皇室典範を改正する必要があるし、女系・女性天皇、宮家を認める典範改正はさらに速やかに行わなければならないということは、言うまでもない。
     さて、今回は新帝陛下の天皇として最初のおことば(令和元年5月1日、即位後朝見の儀)に注目したい。
     まずは全文を掲げよう。
     日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより、ここに皇位を継承しました。
     この身に負った重責を思うと粛然たる思いがします。
     顧みれば、上皇陛下には御即位より、30年以上の長きにわたり、世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御心を御自身のお姿でお示しになりつつ、一つ一つのお務めに真摯に取り組んでこられました。上皇陛下がお示しになった象徴としてのお姿に心からの敬意と感謝を申し上げます。
     ここに、皇位を継承するに当たり、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、また、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します。
     これを、上皇陛下の天皇として最初のおことば(平成元年1月9日、即位後朝見の儀)と比較すると、興味深いものが見えてくる。
     なお文中の「大行天皇」とは、崩御した天皇が諡号を贈られるまでの呼び名で、ここでは昭和天皇のことである。
     大行天皇の崩御は、誠に哀痛の極みでありますが、日本国憲法及び皇室典範の定めるところにより、ここに、皇位を継承しました。
     深い悲しみのうちにあって、身に負った大任を思い、心自ら粛然たるを覚えます。
     顧みれば、大行天皇には、御在位60有余年、ひたすら世界の平和と国民の幸福を祈念され、激動の時代にあって、常に国民とともに幾多の苦難を乗り越えられ、今日、我が国は国民生活の安定と繁栄を実現し、平和国家として国際社会に名誉ある地位を占めるに至りました。
     ここに、皇位を継承するに当たり、大行天皇の御遺徳に深く思いをいたし、いかなるときも国民とともにあることを念願された御心を心としつつ、皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国運の一層の進展と世界の平和、人類福祉の増進を切に希望してやみません。
     構成も内容もほとんど同じで、同じ言葉も多く見られる。つまり、同じ部分は新天皇陛下が上皇陛下からそのまま引き継ごうとされていること、そして違っている部分は、新天皇陛下が新たに考えておられることであろうと推察できるわけである。
     まず目につく違いは、もちろん当然なのだが、 新天皇陛下のおことばには先帝に対する追悼がないこと で、新天皇陛下の即位が上皇陛下の時とは違い、「深い悲しみのうち」のものではなくてよかったと、改めて思わされる。
     そして今回特に話題になっているのは、最後の段で上皇陛下の時は 「日本国憲法を守り」 とおっしゃった部分が 「憲法にのっとり」 に変わったことだ。
  • 「伊藤詩織『Black Box』裁判記録とその検証〈2〉」小林よしのりライジング Vol.311

    2019-04-16 22:25  
    150pt
     伊藤詩織著『Black Box』がフランスと台湾で翻訳出版された。台湾版の帯には、元警察トップの侯友宜氏による《「正義」は私の人生の信念です。この本は社会への警笛です。性暴力の被害者は、ほかのすべての犯罪被害者と同じく、非難ではなく同じサポートを必要としていることを理解してください。》という推薦文が掲載されている。
     殴打された、刺された、轢かれた、首を絞められたなどの被害者には親身になって耳を傾けるのに、「レイプされた」となると途端に被害を受けた女性に対して「落ち度があった」という言い分が通りはじめる。それがいかに異様で、どこかにいる別の女性にまで沈黙と泣き寝入りを強いる空気を作っているのだという認識を、もっと広めていかなければならないと思う。
    ■カルバン・クラインのCMと下着
     伊藤詩織さんは「カルバン・クライン」のキャンペーン(動画はこちら)に起用されたが、そのかっこよさ、美しさはもとより、 「サイレンスブレーカー(沈黙を破る人)」 と添えられていることも印象的だった。2017年の「#MeToo運動」で、顔と実名を出して性暴力被害を訴えた女性たちを賞賛する呼称として広まったものだが、カルバン・クライン側から詩織さんへこの呼称の提案があったようだ。
    「被害を受けたなら、被害者らしくふるまえ」 というような、狭い了見と偏見の中に他人を押し込めたがる高圧的な無知とは正反対の姿勢である。
     カルバン・クラインからのオファーについて、詩織さんは次のように発言している。
     カルバンクラインから連絡をいただいた時は、いくら女性をエンパワーしたいと言われても下着と聞いて、お断りするつもりでした。被害後、自分の体が嫌で体を脱ぎ捨ててしまいたいと何度も思いました。
     しかし 「レースの下着を履いていたから同意していた」と無罪判決になったアイルランドでのニュース (※あとで解説)を見て、これまで自分自身に向けられた服装への批判などがフラッシュバックしたと同時に、このCKオファーについて考え直し、参加させていただくことにしました。
     どんな格好をしていようが、どんな下着を身につけていようがそれは同意にはなりません。
     これまで多くの方々に支えられ勇気付けられ、前を向いて歩き続けることができました。身の危険を感じ日本に帰るたびに自分を隠していた変装もやめました。
     そして今まで「被害者」をはじめ色々なラベルが付けられましたが、今回は「サイレントブレーカー」という新しいラベル付けをされました。被害者より、ずっといい。
     撮影、インタビュー中に被害について一切触れなかった、このキャンペーンに関わってくださった方々の配慮に感謝です。被害者でなく、一個人、人間として扱っていただいたそんな嬉しいものでした。ありがとうございます。
    (伊藤詩織さんfacebookへの記述より)
      アイルランドでのレースの下着による無罪判決 とは、2018年11月5日に報じられたレイプ裁判のことだ。17歳の少女が、強姦されたとして27歳男性を訴え、泥地の上を30メートル近く引きずられたことなどを証言し、また、男性が少女の首に手を当てているところを見たという目撃証言も出た。
     だが「レイプではなく、お互いに惹かれあってセックスした」と主張する被告人の弁護を担当した女性弁護士が、なんと法廷で、事件当日に少女が身に着けていた下着を広げて示し、 「少女が当時どのような姿だったかを確認してほしい。彼女はレースの紐パンツを身につけていた。彼女が男性を魅力的に思い、関係を結んだという可能性がある」 との旨を主張したのだ。
     これによって合意の上でのセックスだったのではという印象が持ち上がり、陪審員によって無罪判決が下された。12名の陪審員のうち8名は男性で、一部情報によれば、協議は1時間程度だったとも言われている。
     判決を受けて、アイルランドでは女性たちの怒りが大爆発。 「レースの下着は性行為の同意をしたことにはならない」 と抗議運動が起きた。
     この怒りには共感する。もし自分が被害者だったなら、訴え出るだけでも相当な思いをしているのに、はいていた下着を衆人の前に広げて見せつけられるなど、恥辱の極みだ。さらにその下着が誘惑的だのなんだの評されて、レイプを正当化され、責任をなすりつけられたのでは絶望してしまう。
     だが、下着を理由にレイプが正当化されたのははじめてではない。
  • 「佳子さまバッシングの卑しさ」小林よしのりライジング Vol.310

    2019-04-09 22:00  
    150pt
     新しい元号「令和」が発表された日の、祝賀ムードの盛り上がり方は本当にすさまじかった。
     昭和から平成への改元は、昭和天皇の崩御に伴うものだったから祝賀どころではなかったが、今回は国民こぞっての慶びの中での改元となるわけで、このこと自体はよかったと思う。
     だが、わしは警戒心を解いてはいない。
     いまの祝賀ムードはただ単にお祭り騒ぎがしたいだけで、空気が変われば人々はあっさり手のひらを返して、皇室バッシングを始めるのではないか?という疑念が晴れないのである。
     大衆とは、それほど無節操で残酷なものなのだ。
     現に、秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんのご結婚を、何が何でも破談にしたいというバッシングの炎は消える気配もないままで、今度は眞子さまを擁護した妹の佳子さまにまで火の手が広がっている始末だ。
     3月22日、国際基督教大学をご卒業されるにあたり、佳子さまが宮内記者会の質問に回答した文書が公表された。
     記者の質問の中には「眞子さまの結婚関連儀式の延期をどう受け止めていますか」というものがあり、これに対して佳子さまは 「私は、結婚においては当人の気持ちが重要であると考えています。ですので、姉の一個人としての希望がかなう形になってほしいと思っています」 と、小室氏との結婚を望み続けておられる眞子さまを支持する意向を示された。
     そして、続けてこう発言されたのである。
    「また、姉の件に限らず、以前から私が感じていたことですが、メディア等の情報を受け止める際に、情報の信頼性や情報発信の意図などをよく考えることが大切だと思っています。今回の件を通して、情報があふれる社会においてしっかりと考えることの大切さを改めて感じています」
     一応「姉の件に限らず」とはしているものの、これは誰が見ても眞子さまと小室さんに関して、信頼性のない報道があるということを示唆するものだった。
     これに対してメディアは反省するどころか、逆に集中砲火を浴びせたのである。
     週刊新潮と週刊文春は競って特集記事を組み、女性セブン、女性自身にも佳子さまバッシングの記事が載った。
     これに大喜びだったのが月刊「Hanada」編集長の花田紀凱で、産経新聞3月30日付の連載コラム「週刊誌ウォッチング」にこう書いた。
    『文春』は「奔放プリンセス佳子さまの乱全内幕」、『新潮』は「『佳子さま』炎上で問われる『秋篠宮家』の家庭教育」。内容的には『新潮』。
    〈「そもそも『公』より『私』を優先なさるお二人の姉宮のご様子を見るにつけ、何より『公』の重要性を理解されねばならない悠仁さまへの“帝王教育”は大丈夫なのか、と不安にならざるを得ない」〉(秋篠宮家の事情に通じる、さる関係者)
     いったい何を根拠に眞子さま、佳子さまが「『公』より『私』を優先」しているというのか? そもそも、佳子さまの回答をきちんと読んだのか?
     佳子さまは公務について、こう語っておられる。
    「公的な仕事は以前からしておりましたが、卒業後はその機会が増えることになると思います。どのような活動に力を入れたいかについては、以前にもお答えしたことがありますが、私が何をやりたいかではなく、依頼を頂いた仕事に、一つ一つ丁寧に取り組むというのが基本的な考え方です。これまで行った仕事は様々な分野のものがありました。大学生活で、一つの分野を集中的に学んだ経験も、幅広く学んだ経験もこれからの仕事に活かすことができれば嬉しく思います」
     新潮、文春ともに、佳子さまとご両親の秋篠宮殿下、紀子妃殿下が不仲であるかのように書き立てているが、佳子さまはこうおっしゃっている。
  • 「山口敬之氏手記『私を訴えた伊藤詩織さんへ』を再読する」小林よしのりライジング Vol.305

    2019-02-26 21:15  
    150pt
     いささか旧聞に属するが、2017年12月号の月刊「Hanada」で、フリージャーナリストの山口敬之氏の独占手記が掲載された。タイトルは「私を訴えた伊藤詩織さんへ」。
     掲載された当時、一読して「なんだ、この被害者ヅラは!」と、ものすごい違和感を覚えた。何しろ本論に入る前にこう書いているのだ。
    事実と異なる女性の主張によって私は名誉を著しく傷つけられ、また記者活動の中断を余儀なくされて、社会的経済的に大きなダメージを負った。  名誉? 記者活動の中断? 社会的経済的に大きなダメージ? 
     え。なに。被害者のつもりなの? 
     もう最初からこんな調子なので、少しも頷くところがない。レイプ被害に遭った女性は、名誉とか経済的ダメージなどとは次元が全く違う苦しみの中にいるんですけど? 
     この記事は、レイプ被害に遭った伊藤詩織さんが記者会見を開き、民事訴訟を起こすことを知ったため、 「自らの見解を『当該女性への書簡』という形で申し述べる」 として書かれた手記である。けれど最後まで気分の悪い違和感だけが残り、熱心にもう一度読み直すという気持ちにはなれなかった。
     ところが今回、小林先生が山口氏から名誉棄損で訴えられた。私も詩織さんの『Black Box』を読み、さらには違和感ありまくりの山口氏の手記(以下、山口手記)を再び読み返すことになった。まったく不愉快だけど、こうなったらいろいろツッコミを入れながら読んでやろう。以下に記すのは、そんな私のツッコミの記録である。
     詩織さんと山口氏は当然のことながら事実認識が異なる(性暴力の有無だけでなく、たとえば山口氏のTシャツの貸し借りの認識の相違やトイレの回数など)。今回は、その事実認識の真偽を明らかにすることが目的ではなく(そもそもそんなことはできない)、あくまでも山口手記の文章に対する私の見解を記していることを最初にお断りしておきたい。ただし、私は詩織さんが書いた『Black Box』の内容を全面的に信用している。彼女が顔と名前をさらして性暴力を告発した勇気こそ、信頼に足るものだと思うからだ。
     山口手記を読んだことがない人もいると思うので、まずはこの記事について概観しておこう。
     山口氏は、詩織さんの性暴力に対する訴えが、検察審査会の「不起訴処分は妥当」とする結論によって刑事事件としては完全に終結したこと、しかし詩織さんが民事訴訟に打って出たので、自分も主張の一部を示すとして、書簡風にそれを綴っている。その主張は、【1】「デートレイプドラッグ」、【2】「ブラックアウト」(アルコール性健忘)、【3】詩織氏特有の性質、【4】あとから作られた「魂の殺人」、【5】ワシントンでの仕事への強い執着、という5つの項目に分けられている。このうち【1】と【2】では、事件当日に飲食店2軒をハシゴしたこと、自分はデートレイプドラッグなど「聞いたことも見たこともない」こと、詩織さんはアルコールの影響で記憶を失うブラックアウトであったのではないかと主張している。その上で、酒に強く、この程度の酒量で記憶をなくしたことはないという詩織さんに対し、【3】詩織氏特有の性質がある、つまり思い込みが激しいのだと記す。また【4】では、「レイプは魂の殺人です」と訴えた詩織さんに対し、その怒りは最初から一貫していないことをあれこれと具体的な事例を挙げて説明している。続く【5】では、詩織さんが仕事を斡旋するよう執拗にメールを送ってきたと困惑気味に記し、挙句に野党議員がこの問題を取り上げ、自分が誹謗中傷にさらされていると被害者ヅラしている。
     以上が、記事の概略である。
    「なぜか」を多用するイヤらしさ
     山口手記で最初に気になったのは、「なぜか~~した」という記述が4か所もあるということ。ほかに似たようなニュアンスで「不思議なことに~~になった」とも書いている。細かいことだけど、こうした言葉の使い方には、書いた本人の意識が透けて見える。
     詩織さんの会見に先立ち、 なぜか 『週刊新潮』がセンセーショナルに報じ、 なぜか 複数の野党政治家が詩織さんの側に立って質問するようになった。そして なぜか 、こうした野党政治家の主張に共鳴する集団(共謀罪反対や反原発を唱える組織)が自分を糾弾するようになった。で、山口氏は言う。 「これはまったくの偶然なのでしょうか?」
     要するに、詩織さんがマスコミと結託し、野党政治家を巻き込み、ある特定の政治信条を持つ人々とつながり、私(と、私が支える安倍政権)を追い込もうとしているのではないか、と言いたいのである。こうした陰謀論めいた書き方は「Hanada」読者の大好物なのだろう。筆が滑ったのか、あるいはあえて書いたのか、 「 どういう思惑と連携があったかは知りませんが 、複数の野党の国会議員や支援者があなたを支援し」 云々と、陰謀が前提になっているかのような記述もある。