• このエントリーをはてなブックマークに追加

今なら、継続入会で月額会員費が1ヶ月分無料!

記事 24件
  • 「トランプ大統領への手紙」小林よしのりライジング Vol.321

    2019-07-02 20:20  
    150pt
     拝啓 アメリカ合衆国大統領 ドナルド・トランプ閣下
     トランプ大統領にはこの度、素晴らしいお言葉を賜りました。
     今回のライジングでは、その感激の思いを記して大統領に捧げたいと存じます。
     思えばわしは、トランプ大統領が誕生した時からその発言に注目し、ずっと期待して参りました。
    「米国を再び偉大な国にしよう」
    「私たちは、『米国製品を買い、米国人を雇う』という2つの単純なルールに従うことになる」
    「自由貿易は恐ろしい。もし国民が賢ければ、自由貿易は素晴らしいものになる。しかし、我々の国民は愚かだ」
    「もう私たちは、この国や国民をグローバリズムの偽りの唄に溺れさせない」
    「メキシコが人々を送り込んでくるとき、それは最良の人々ではない。彼らは多くの問題を抱えた人々を送り込んでくるんだ。薬物を持っていたり、犯罪者だったり、強姦魔だったり」
     最後のメキシコ云々の発言は物議を醸しましたが、これらの発言で主張しているのは内需優先、保護主義、自由貿易・グローバリズム反対、移民制限であり、これはわしの意見とも一致する、素晴らしい政策だと思ったものです。
     北朝鮮外交ではトランプ大統領は戦争も辞さないかのように、ツイッターでこう挑発をされました。
    「北朝鮮の外相が国連で演説するのを今聞いた。もし小さなロケットマンの考えを繰り返すなら、彼らは長く続かない」
     これを北朝鮮外相が「宣戦布告」と見なし、「米国が我が国に宣戦布告をしたのだから、我々にはあらゆる対抗措置を取る権利がある」と述べた時には、ついにツイッターから戦争が始まる時代が来たかと思ったものです。
     しかし今では、大統領はツイッターで金正恩と会談したい意向を表明して、
    「もし金委員長がこの書き込みを見ていたら、握手をして挨拶をするためだけに会おうと思う」
     と書き込んでおられます。
     やっぱり大統領は、ツイッターは戦争を起こすのではなく、友好のために使った方がいいと考える、心優しいお方だったのですね。
     今はイランに対して、イスラエルを助けるために、ものすごく居丈高に振る舞っているけれども、それもきっと本心からではないのでしょう。もし偶発的にでも戦争が始まってしまったら大変なことになるということくらい、わからないはずがないですから。
     前置きが長くなりました。
     わしが素晴らしいと感じたトランプ大統領の言葉は、ズバリ「日米安保条約破棄」です。
     6月24日、米ブルームバーグ通信は大統領が「日本が米国の防衛に駆けつける義務がないのは一方的すぎる」として、「日米安全保障条約を破棄する可能性について側近に漏らしていた」と報道しました。
     この報道に対して、菅官房長官は記者会見で「米大統領府から『米政府の立場と相いれない』と確認した」と全否定、米政府側も日本の通信社などに対して「発言はなかった」と回答していました。
     ところが続く26日には、FOXビジネスニュースの電話インタビューで、大統領ご自身が 「日本が攻撃された時、アメリカは第3次世界大戦を戦い、猛烈な犠牲を払うことになるが、アメリカが攻撃されて救援が必要なとき、日本はソニーのテレビで見物するだけだ」 と安保条約への不満を公言しました。
     日米両政府が火消しに躍起になっているのも一切構わず、堂々と「日米安保条約破棄」が自身の本音であることを公言してしまう潔さは、すごいものがあります。
     思えばトランプ大統領は2016年の大統領選に当選した当時にも 「日本は駐留米軍の経費を100%払うべきだ。そうしないならアメリカ軍は撤退する。その代わりに核武装を許してやろう」 と発言しており、その考えは一貫して全くブレていません。
     とにかく「日米安保条約破棄」という、一番素晴らしいことを言ってくださって、感謝するばかりです!
      日米安保条約がある限り、日本は米軍の占領状態が継続され、主権を喪失し、軍隊を持つこともできない属国であり続ける以外になく、主権がない以上、民主主義も機能しません。
     アメリカ大統領が日米安保条約破棄に言及するということは、日本を属国にするのをやめると言っているのと同じことです。これでようやく日本が独立した民主主義国家になるチャンスが生まれてきました。これは大喜びです。パーティーでも開きたい気分です!
     トランプ大統領は24日にツイッターで 「中国は原油の91%、日本は62%、ほかの多くの国も同様にホルムズ海峡から輸入している。なぜアメリカはこれらの国のために無償で航路を守っているのか。これらの国は自国の船を自分で守るべきだ」 とも発言しています。
     全くの正論です。守りましょう、ぜひとも!
      日米安保条約さえ破棄されれば、直ちに自主防衛体制を整え、自国の船は自力で守るようにします!
     当然、沖縄から米軍基地も叩き出しますし、日本の領空を米軍が占領している状態も、すぐにもやめていただきます。オスプレイも、イージス・アショアもやめましょう! そして日本は必ずや核を自前で持ちます!
     そうすれば、日本は外交交渉も自分の意思でできます。北方領土が返還されても絶対そこに米軍基地を置かないとロシアに確約できるから、返還交渉が進む可能性も格段に高まります!
      ところがおかしなことに、日本には「日米安保は片務条約ではない」とか言って、トランプ大統領に異議を唱える人がいます。 沖縄に米軍基地を置くことで、アメリカの世界戦略に協力しているとか、しかもその駐留経費に莫大な「思いやり予算」を投じているとか言って、日本も相応の負担をしていると言い張るのです。
     親米保守派がそう言うのはまだわかるのですが、どういうわけだか最近では、左翼リベラルの論者にもそう唱える人が出てきて、「朝日より左」と言われる東京新聞までが6月29日の社説で「『安保ただ乗り論』は当たらない」と同様の主張をしており、わしは全く理解に苦しんでいます。
  • 「イージス・アショアは媚米購入」小林よしのりライジング Vol.319

    2019-06-18 17:35  
    150pt
    「アングロサクソンについていけば、日本は100年安泰」
     安倍晋三は師匠・岡崎久彦の遺訓を忠実に実行しているようだが、これを非難できる日本国民は、いったいどれだけいるだろうか?
     安倍政権は現在、北朝鮮の弾道ミサイルから日本を守るためとして、米国製の地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備を進めている最中だ。
     「アショア(Ashore)」とは「岸に、海岸に、陸に」という意味で、「Aegis Ashore(イージス・アショア)」は「陸地のイージス」という意味である。
     これまで日本の対北朝鮮ミサイル防衛は、海上自衛隊のイージス艦に搭載されたミサイル「SM3」が大気圏外で迎撃、撃ち漏らした場合は地上配備型の「PAC3」が高度十数キロで迎撃するという構想だったが、新たにイージス・アショアを導入することにしたのである。
      イージス・アショアの配備予定地は、秋田県秋田市の陸上自衛隊新屋演習場と、山口県萩市の陸上自衛隊むつみ演習場の2カ所とされている。
     しかし、なぜ秋田と山口なのか? 
     防衛省は5月27日、青森、秋田、山形3県の国有地計19カ所を調査した結果、秋田の新屋演習場が東日本で唯一の適地だとする報告書を公表した。
     だがこの報告書に対して、「『新屋ありき』で数値を改竄した」との疑念が噴出。
     報告書では19カ所のうち9カ所を、弾道ミサイルを追尾するレーダーを遮ってしまう山が周囲にあるという理由で「不適」としたが、その根拠である山頂を見上げた「仰角」が、いずれも実際より大きく記されており、仰角15度としていたところが、実際には4度しかなかった箇所まであったのだ。
      6月8日に秋田市で行われた住民説明会では、このような重大事態が発覚した後だというのに、出席していた東北防衛局の職員が居眠りをして、怒号の飛び交う大紛糾となった。
     このため、もうひとつの配備地である山口県萩市でも、「結論ありき」で進められているのではないかという不信感が広がっている。
     そして実際に、これはあまりにも呆れた理由による「結論ありき」だったことが明らかになった。
     6月13日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」の「そもそも総研」で、玉川徹氏が軍事ジャーナリストの田岡俊次氏と共同通信社編集局編集委員の石井暁氏に取材したところ、両者の見解は全く一致していた。
      北朝鮮からハワイに向けての弾道ミサイルを撃ったら、秋田がちょうどその軌道の真下。グアムに向けて撃てば、山口がその真下になる。
     ミサイルは真正面から来た方が迎撃しやすいため、イージス・アショアは予想される軌道の真下にあることが望ましい。
      つまりイージス・アショアは日本を守るためではなく、ハワイとグアムを守るために配備されるのだ!
     
     イージス・アショアの射程は2500kmもあるから、1基あれば、どこに置こうが日本全体をカバーできる。できるだけ真正面から迎撃した方がいいということを考えれば、理想的な配備地は、東京を守るためなら能登半島、大阪を守るためなら隠岐諸島あたりである。
     ところがわざわざ、秋田と山口に1基ずつ置くのだから、これはハワイとグアムの防衛が目的としか考えようがないのだ!
      しかも何より危険なのは、イージス・アショアが敵の攻撃対象になるということである。
     北朝鮮からすれば、イージス・レーダーがある限り、ミサイルをいくら飛ばしても迎撃されるわけだから、まず先にこれを破壊しなければならない。
      移動式のイージス艦と違い、イージス・アショアは地上配備型であり、一定の地域に固定されているから、当然その場所が攻撃される。
     戦争のセオリーとしては、「誤爆」として基地周辺の街を破壊するのが効果的とされているともいうから、地域住民がその巻き添えで殺されることも十分ありうる。地域住民が怒るのは、あまりにも当然なのである。
      また、住民にとっては、レーダーの電磁波による健康被害も不安要素である。
  • 「核廃絶運動の先頭に立て!」小林よしのりライジング Vol.236

    2017-08-15 22:35  
    150pt
     今年7月7日、国連加盟国の6割以上となる122か国の賛成によって、 「核兵器禁止条約」 が採択された。
      国際法上、核兵器は違法とされ、禁止されたのである。
      ところが日本は、この条約の交渉会議にすら参加しなかった。
     わしはこれにものすごい違和感を覚え、罪悪感がこみあげてきた。
     8月9日、長崎の原爆の日の式典において、田上富久長崎市長は平和宣言で次のように日本政府を強く非難した。
      日本政府に訴えます。
     核兵器のない世界を目指してリーダーシップをとり、核兵器を持つ国々と持たない国々の橋渡し役を務めると明言しているにも関わらず、核兵器禁止条約の交渉会議にさえ参加しない姿勢を、被爆地は到底理解できません。唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への一日も早い参加を目指し、核の傘に依存する政策の見直しを進めてください。日本の参加を国際社会は待っています。
     8月6日の広島市長平和宣言が、例年通り被爆の悲惨さを訴えることに大半を費やし、核兵器禁止条約については最後に少し触れた程度で、政府批判にまでは踏み込まなかったのに対し、長崎平和宣言では、毎年最初に語っていた被爆の惨状を後回しにして、 冒頭から半分を核兵器禁止条約に関する言葉に割き、政府を批判したのである。
     これは原爆の日の平和宣言としては全く異例のことであり、市長自身が特に強くこだわって決めたものだった。
     また式典後には、毎年恒例となっている首相と被爆者団体の面会で、団体側が冒頭、 「総理、あなたはどこの国の総理ですか」 と、用意していた文書にはない言葉で政府へのいらだちを表した。
     これらの気持ちは、全く理解できる。
     だが結局、安倍は条約への参加は明言せず、被爆者団体の議長は 「条約に賛成する気は全くないという政権の姿勢が明確になった」 と憤ったという。
     国連では核兵器禁止条約の採択に向け、カナダなどに住んでいる日本人被爆者やその子孫が運動をしていたらしい。わしだって、もし自分がその立場だったら、絶対に運動に加わっていたと思う。
     それを日本政府が一切支援せず、条約の交渉会議にすら参加しなかったなんて、全くおかしい。
      しかも国連において、核不拡散、核廃絶について被爆国じゃない国々が必死に考えているのに、唯一の戦争被爆国である日本がそれに加わろうともしないというのは、どう考えても理が通らない。
     あまりにも欺瞞に満ちており、わしはこんな理不尽には耐えられない。
      安倍は、日本はアメリカの核の傘に守られているのだから、核兵器禁止条約になど参加できないと思っているのだろうし、自称保守・ネトウヨ連中もみんなそんな考えなのだろう。
      確かに、核の傘に守られておきながら、核廃絶を訴えるというのは矛盾がある。
      だが、それよりもはるかに酷い欺瞞は、歴史上唯一の被爆国でありながら、核廃絶に全く同意しないことである。 これほど理に反することはなく、これ以上の欺瞞はない。
     
     8月12日の「朝まで生テレビ」でこの話題が出た際、元防衛大臣の森本敏氏が、核兵器禁止条約の交渉会議に対して日本政府がどう対応したのかを説明していた。
  • 「危うかったTPP協定の正体」小林よしのりライジング Vol.202

    2016-11-22 17:45  
    150pt
     先週号では、来年発足するトランプ米政権がTPPを完全に葬り去ることができるか、それとも「言うだけ番長」に終わるかという疑問を呈したが、答えはたちまち出た。
      昨日(11月21日)トランプは動画メッセージを発表、公約通り就任初日にTPP(環太平洋連携協定)を離脱すると明言した。
     TPPは署名12か国の合計GDPの85%以上となる、6か国以上が批准しなければ発効しない。署名国GDPの60%を占める米国が批准しなければ絶対に発効しないので、これでTPPもご破算である。
     すっかり恥さらしな結果となったのは安倍晋三首相である。
     そもそもまだ就任もしていない次期大統領に会いに行くこと自体が異例で、それも当選からわずか1週間後という超スピードですっ飛んで行ったのは、異常と言ってもいいほどだ。
     安倍は会見で「トランプ次期大統領」ではなく「トランプ大統領」と連呼している。現大統領のオバマにも失礼だし、外交上も相当非常識なのだが、そんなことにも気づかないほど舞い上がっていたのだ。
     非公式会談だったためその内容は明らかにされていないが、 安倍は「自由貿易の重要さ」を説き、TPPを離脱しないよう説得したらしい。
     そして笑顔で握手を交わしておべっかを使いまくり、「トランプ氏は信頼できるリーダーだ」とまで言ったのだが、その「信頼」はたった3日で裏切られたわけだ。
     結局、安倍は自己宣伝の上手いトランプに利用されただけだった。トランプに対してまだ先進国のリーダー達が、やや距離を置いて様子見をしている中で、日本の首相がわざわざやってきて「トランプ氏は信頼できるリーダーだ」と発言したのは、かなりの効果があっただろう。
     その一方で、今回安倍がトランプから引き出したものは何ひとつなかったのだ。安倍とトランプでは、ほとんど子供と大人ほどの違いに見える。
      安倍はトランプとの会談後、ペルーのリマで開幕したAPEC(アジア太平洋経済協力会議)でも「自由貿易の重要性」を熱弁しまくった。
     その努力もひとまず水泡に帰することとなったのだが、もしTPPが発効していたらどういうことになっていたのか、検証しておくことは今後のためにも重要である。
     日本の政治家や官僚が、どこまで国を売ろうとするのか、こいつらがいかに警戒しなければならない人間であるかは、知っておかなければならない。
     TPPに先行するケースとして参考になるのは、米国、カナダ、メキシコの3カ国間で1994年に発効した NAFTA(北米自由貿易協定) だ。
     メキシコの主食はトウモロコシ粉のパン・トルティーヤで、メキシコのトウモロコシは日本のコメのようなものである。
      メキシコ国内では 「NAFTAに参加すればトルティーヤが安くなる」 と宣伝され、当初、国民の多くはこれに賛成していた。
     NAFTAの発効により、アメリカからの輸入トウモロコシが激増、さらにトルティーヤを加工・販売するアメリカ資本の食品企業が入ってきて、確かに一時的にトルティーヤは安くなった。
      だが、地域に密着していた従来の中小のトルティーヤの店はことごとく潰れ、メキシコのトウモロコシ農家は壊滅した。
      そうなるとトルティーヤの値段は釣り上げられ、ついにはNAFTA発効前の8倍にまでなったという。
      米国は食糧を「武器」とみなしており、国内の農業に補助金をつけて大増産させ、安価で大量輸出して相手国の農業を壊滅させ、生殺与奪の権を奪うという戦略を繰り広げているのだ。
  • 「トランプは『暴言王』か『言うだけ番長』か?」小林よしのりライジング Vol.201

    2016-11-15 17:35  
    150pt

     ドナルド・トランプは、ヘイトスピーチをがなり立て、セクハラやり放題の馬鹿オヤジという雰囲気なので、これが自国のリーダーだったら、そりゃあ残念だろう。
     けれどもアメリカ大統領なのだからザマミロと思っておけばいい。
     ブッシュ大統領のときも酷い単細胞な奴がなったなあと思ってたら、たちまちアフガン・イラク戦争にのめり込んで、米国の国力を著しく弱めてしまった。
     そのせいでオバマ大統領は「もう世界の警察官ではない」と言わざるを得ず、世界中の紛争に介入できなくなってしまった。米国は「内向き」になってしまったのだ。
     トランプがヘイトスピーチをがなり立てるので、戦争を起こすと思ってる馬鹿が日本のサヨク知識人には多いが、トランプはオバマより「内向き」で米国ファーストなのだから、むやみに戦争なんかするわけがない。
     それどころか在日米軍まで本音では撤退させたいと思ってるので、安倍政権はあわてているのである。
     トランプの政治的主張に限って言えば、日本にとっては素晴らしく都合がいいのだから、「隠れトランプ支持」だったわしは、彼が「まとも」にならないことだけを祈っている。
    「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」
    「メキシコは問題のある人間を(米国に)送り込んでいる。彼らは強姦犯だ」
    「メキシコとの国境に『万里の長城』を建設し、メキシコにその費用を払わせる」
     これらがトランプの暴言の一例として挙げられるが、メキシコとの間の国境は、わしとしては気持ちは分かる。国境が陸続きの国の混乱は日本人には分からないだろう。
     だが、他にも人種差別的なヘイトスピーチや、女性差別意識を露わにしているが、まさかここまで暴言を乱発しても、当選するとは思わなかった。よっぽど格差社会の犠牲者たちの不満が膨張していたのだろう。
     ヒラリーは富裕層の代表で、体制側・エリート側、既得権益者の側に立つだけで、オバマ政権が変えられなかったものをヒラリーが変えられるはずがないという判断は全く正しい。
     自由貿易の犠牲になって崩壊しつつある中産階級や、ブルーカラーのアメリカ人も 「TPP」 を恐れているのだ。せめて 「TPP脱退」 だけでもやってくれればトランプ大統領誕生は日本にとっては天の助けである。
     もっとも、アメリカ在住のコラムニスト・町山智浩氏は、そんなトランプの発言について、以前から 「これはすべて演技なんです。ウケるから言っているだけです」 と断言していた。
  • 「自主防衛のコストは大したことない」小林よしのりライジング Vol.178

    2016-05-31 19:40  
    150pt
     11月のアメリカ大統領選挙は、米国メディアも「大統領選史上、最も不人気な候補同士」という、共和党ドナルド・トランプと民主党ヒラリー・クリントンの対決となることがほぼ確実だが、最近の世論調査では、初めてトランプの支持率がヒラリーを上回ったという。
     そして「トランプ大統領」が誕生するという事態を、本気で恐れおののいているのが自称保守派の連中だ。
      トランプが、 「日本は在日米軍の駐留経費を全額負担せよ、さもなければ米軍を日本から撤退させる」 といった発言をしているのが、自称保守派は恐ろしくてたまらないらしい。
     かつて自称保守派は、共和党政権であれば日米関係は盤石で、「親中派」のヒラリーが大統領になることは「最悪の事態」のように認識していたはずだが、今はヒラリーの方がいいと思っているのだろう。
      日本が独立国であれば、他国の大統領が誰になろうが、あくまでもその国の問題だと構えていられるはずで、アメリカ大統領が誰になるかで右往左往する態度こそ、属国根性そのものである。
     ともかく自称保守にとっては「在日米軍撤退」とは想像もしたくない悪夢のようで、 産経新聞は5月24日、25日の2日間にわたり、「日米同盟が消える日」という特集を組んで怯え、こう狼狽しまくっていた。
      米軍が撤退すれば、すぐに中国は尖閣に上陸する。「専守防衛」しかできない自衛隊では、最後には尖閣は中国に取られてしまう。
     在日米軍の撤退は在韓米軍の引き揚げに直結し、朝鮮半島の軍事的均衡も崩れる。
    中国による台湾侵攻が現実味を帯び、南シナ海は完全に「中国の海」と化す。国際情勢は一気に予測不能に陥る――
    http://www.sankei.com/politics/news/160524/plt1605240006-n1.html
    http://www.sankei.com/politics/news/160525/plt1605250003-n1.html
     もう、アメリカ様がいなければ夜も日も明けぬといった有様である。
     自称保守はさんざん「中国恐るるに足らず」みたいなことを言っていたはずだが、結局はそれもアメリカ様が頼りだったようである。
     自衛隊では何もできず、米軍がいなくなったら必ず中国にやられちゃうと怯えながら、空威張りしていたのだ。
     もちろんそんな自称保守の性質はとっくに見抜いていたが、こうも無残な本性をさらしながら、それがみっともないということに気づいてもいない狼狽ぶりには、苦笑するしかない。
     そもそも、在日米軍がいなくなったら、日本は国を守れないのか?
     在日米軍を撤退させ、代わりに自衛隊を置いて自主防衛することはできないのか?
      実を言えば、在日米軍がいようがいまいが、日本の防衛はまず自衛隊がすることになっているのだ。
     昨年4月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)会合で勧告された「新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)」には、こう明記されている。
  • 「アメリカ教からの脱却のために」小林よしのりライジング Vol.171

    2016-03-22 18:35  
    150pt
     先週号のQ&Aコーナーに、こういう質問をもらった。
     慰安婦問題について質問です。
     ライジングでキリスト教文化圏では売春は職業とは認められず「性奴隷」と見なされてしまうと書かれていましたがヨーロッパの多くの国では売春は合法ですよね。
     彼女たちは「性奴隷」と見なされているのですか?合法なのだから職業と見なされているのではないのですか?
     売春が合法の国々が国際的に非難を受けていると聞いたことありません。逆に国際的に売春は合法化の流れにあると聞きます。
     この問題は価値観の違いというより単に日本が欧米各国と中韓からいじめられているだけのような気がするのですが?
     確かに鋭い質問である。
     どうやら「キリスト教文化圏」で一括りにしたことが間違いだったようだ。
      調べてみたところ、ヨーロッパでは、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、ベルギー、ギリシャ、チェコ、オーストリア、スイスなどで売春が合法であることがわかった。
     その形態は、大きく二つに分かれる。
      オランダやドイツなどは完全に合法で、売春は職業として正式に公認されている。
     正規の娼婦は個人自由業で、開業届けを出して登録される。所得税も払うので社会福祉年金も出るし、失業手当も出る。
      一方、イタリアやスペインなどは、正確には「合法」というより「グレーゾーン」であり、違法とはされていないものの、法的な位置づけは曖昧になっている。
     イタリアには「売春防止法」があり、業種としての売春は認められていないが、個人による売春行為自体は適法だという。要するに、人身売買などの犯罪が伴わない限り「黙認」というわけだ。
      日本の場合はというと、実態は「イタリア型」に近い。
     日本では「 売春防止法 」の第3条で「 何人も、売春をし、またはその相手方となってはならない 」と規定されており、 明確に売春も買春も「違法」である。 だが、これで売買春が一切禁止されているのかというと、厳密にはそうなっていない。
      売春防止法第3条は罰則規定がない「訓示規定」であり、違反しても法的効力はないのだ。 これは、売春せざるをえない状況にある人を社会的弱者として捉え、保護するという視点から定められたものだという。
     その代わり、売春防止法では売春の勧誘や、売春の斡旋、売春を行う場所を提供したり、売春をさせる業を営んだりという行為を処罰対象としている。だから売春防止法違反で逮捕されるのは必ず風俗業の経営者で、売春をしている当人やその客が逮捕されることはない。
     つまり日本では、個人による売春は「違法だが処罰しない」という「グレーゾーン」で、事実上の「黙認」になっているのだ。
     ソープランドも建前としては、店はただ風呂付き個室を貸しているだけで、売春はあくまでも女性と客が個人的にやっているということになっている。だから客はフロントでまず「入浴料」を支払い、「サービス料」を別途、個室内で女性に直接手渡すという仕組みになっているのだそうだ。
      フランスでは、個人による売春行為自体は合法だが、「売春斡旋」は法律で禁じられている。
  • 「日韓慰安婦『合意』という売国」小林よしのりライジング Vol.166

    2016-02-18 16:15  
    150pt
     第53回ゴー宣道場 「慰安婦〈合意〉は正しかったのか?」 を2月14日、拓殖大学客員教授・藤岡信勝氏を迎えて開催した。
     今年は、当時の中学歴史教科書7社全てに「従軍慰安婦」が登場し、この異常事態に対抗すべく「新しい歴史教科書をつくる会」を設立する動きが始まってからちょうど20年に当たる。このとき西尾幹二氏とともに「つくる会」を創設し、その活動にわしを招こうと提案したのが藤岡氏である。
     それから20年、「つくる会」の活動やわしの『戦争論』の影響により、中学歴史教科書から「従軍慰安婦」は消え、日本人の「自虐史観」(この言葉を普及させたのも藤岡氏である)も相当に払拭されたかに見える中、昨年末に唐突に慰安婦問題の「日韓合意」が行われた。
     自称保守論壇の中にはこれを評価・歓迎する向きもあるが、果たしてそれでいいのだろうか?
     論点は多岐にわたるが、今回は事前にブログで以下の5つの論点を提示した。
    1)なぜこのタイミングで日韓合意?
       アメリカの圧力で、ではないのか? 他に理由があるのか?
    2)日韓合意のメリット・デメリット
       本当に韓国を追い込んだと言えるのか?
       7対3で日本の勝利などと言う新聞記者もいるが本当か?
       再び教科書に記述されて、日本が再び自虐史観に戻ることはないのか?
    3)安全保障か、歴史の真実か
       安全保障のためなら譲歩やむなしなら、歴史戦はすべて敗北しかないのではないか?
    4)慰安婦の真実が伝わらない理由
       なぜ慰安婦の真実は伝わらないのか?
    5)慰安婦問題の解決はありえるのか
         前々回のゲスト、松竹さんは「保守先鋒の安倍首相が謝罪する」ことで解決すると言っていたが、今回の〈合意〉で日韓共に解決ということか?
     藤岡氏は、今回の「日韓合意」は「 全く評価できない、やるべきではなかった。大失敗だった。日本外交の世紀の失態だ 」という。この認識はわしも同意である。
     ではこの5つの論点に沿って、当日の議論を整理しておこう。
    1)なぜこのタイミングで日韓合意?
     藤岡氏は、まずアメリカの世界戦略の変化を挙げる。
     中東政策が大失敗し、対ロシア外交でもやられっぱなしという状況の中で、アメリカの世界覇権が怪うくなる一方、世界第二の覇権国である中国が台頭。尖閣諸島をめぐって日本と摩擦を起こし、南沙諸島を軍事拠点化しようとしている。
     ここにきてアメリカは中国との対決姿勢をとるようになり、そのために日本に対して協力を求めている。
      アメリカは4年前の野田政権の頃から、日本と韓国の手を結ばせようと水面下で動いていた。
     これが表面化したのは昨年3月、中国が提唱するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に、韓国がアメリカの制止を無視する形で参加、さらにヨーロッパ諸国がこぞって参加するという事態に危機感を抱いたアメリカが、同盟国の締め付けを図った。
     昨年11月の日韓首脳会談で、朴槿恵大統領は安倍首相に慰安婦問題の年内の妥結を求め、このとき安倍は期限を区切ることを拒否。12月15日の外務省の交渉も不調で、年越しは確実と思われていた。
      ところが24日に安倍首相は突如、岸田外務大臣を韓国に送る決定を下し、28日に「日韓合意」となる。
     この急転直下の原因は不明だが、アメリカの圧力なしには考えられないという。
  • 「成立した従米安保法案のペテンを教える」小林よしのりライジング Vol.149

    2015-09-22 18:50  
    150pt
     安保法案がついに成立してしまい、日本は集団的自衛権を行使できることとなった。
     集団的自衛権を使う際の前提となる3つの条件の1つに、 「存立危機事態」 というのがある。
     その定義は、以下のとおりである。
    「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」
     これ、平たく言えば、 「米軍が攻撃されたことによって、日本が存立危機になった時」 と書いてあるのだ。
     つまり わが国が「存立危機事態」にある場合しか、集団的自衛権を行使できない ということであり、この条件は、集団的自衛権を無限定に行使させないための「歯止め」とされている。
     ほとんど日本が滅亡の危機に瀕している状態と言うべき「存立危機事態」の時しか行使できないというのだから、一見、非常に厳しい縛りのように思えるのだが、実際には、これは全く無意味な条件なのである。
      そもそも「集団的自衛権」とは「他国を防衛する権利」である。
    「 自国が攻撃されていなくても、他国に対する攻撃を自国に対する攻撃と同じとみなして反撃する 」というのが「集団的自衛権」である。
      ところがこの「存立危機事態」の定義は、「日本は攻撃されていないのに、アメリカが攻撃を受けたことで、滅亡の危機に瀕している事態」というものなのだ。
     一体全体、何のこっちゃ!?
     そんな奇妙奇天烈な状況って、ありうるのか!?
     政府が説明する際に具体例として挙げたのは、日本海で米軍のイージス艦を北朝鮮が攻撃しようとした時に、自衛隊が守るというものだった。
     だが、たとえ米軍のイージス艦が攻撃されたって、それで日本が滅亡の危機に瀕するなんてことがあるわけがなく、これが「存立危機事態」だなんて言えないのは明白である。
     それでも米艦の防護をするというのは、要するに友軍だから絶対に守らなければならないというだけのことである。
      実際には日本の存立危機に何も関係なくても米艦を守ることになっているわけで、「存立危機事態」なるものを設定することに、何の意味もないのである。
     政府は集団的自衛権行使が「限定的容認」だと言い続けてきたが、「限定的」とするための「歯止め」として設定した「存立危機事態」という条件には全く実体がなく、 事実上は歯止めなしの無限定容認となっているのだ。
     そうなっている以上、中東で米軍が襲撃されたら、日本の存立危機に何の関係もなくても、自衛隊を派遣しなければならなくなることは間違いない。
      要するに、日米同盟の信頼性が揺らぐことが「存立危機事態」になっているのだ。
      アメリカの信頼を失ったら、日本は滅亡してしまう、これこそが「存立危機事態」だということになってしまっているのである。
    「存立危機事態」については、もう一つおかしな話がある。
  • 「中国の軍事パレードは有難かった」小林よしのりライジング号外

    2015-09-07 14:50  
    100pt
    ゴーマニズム宣言 「中国の軍事パレードは有難かった」  中国が坑日戦勝記念日としている9月3日、中国共産党と軍、政府は「抗日戦争勝利70周年」の記念式典を開き、大規模な軍事パレードを行った。
     他の戦勝国の多くは、日本が東京湾上の戦艦ミズーリで「降伏文書」に調印した9月2日を対日戦争勝利の記念日としているが、中国では国内で祝賀行事が行われた翌3日を記念日としているそうだ。
     10年前の終戦60年の際も記念式典は行われたが、この日に記念行事を開催することが定例化されていたわけでもなく、 法律で9月3日が「抗日戦争勝利記念日」と定められたのは習近平体制になってから。この日に軍事パレードが行われたのは、今年が初めてである。
     中国の軍拡・覇権主義路線に対しては、国際社会、特に欧米からの不信感が増大している最中である。G7の西側諸国の首脳がこの行事に出席しなかったのは、もはや中国の「反日プロパガンダ」が過剰で歪んでいるということを先進諸国が周知しているからであり、「軍事パレード」という覇権主義の誇示が野蛮だという認識も共有されているからである。
     西側諸国のこの反応は習近平にとっては誤算だっただろう。
      日本は「抗日」という言葉に過剰反応する必要はない。支那の兵法の伝統は「指桑罵槐」(しそうばかい)であって、「桑を指さして槐(えんじゅ)を罵る」だから、抗日と言いつつ、武器の陳列を見れば、対アメリカの核弾頭ミサイルが一番目立つ。
      国内的には共産党政権が軍事を一手に握っていることを誇示し、統治を安定 させる目的がある。
     その目論見はある程度は成功し、テレビでパレードを見た庶民の多くは自国が強国であると実感し、好意的に受け止めたらしい。
     とはいえ、この日の北京を青空にするだけのために、周辺地域1万以上の工場が操業停止、車の量や建設工事まで激減させられ、北京周辺の経済状況は一時マヒ状態となった。
     折しも中国経済は減速が懸念されている時でもあり、「こんなことにお金をかけている場合か」と冷ややかに受け止める市民もいて、反応には温度差があったという。
     こんな軍事パレードの映像を朝から晩まで見せられれば、日本人は恐怖を感じるだろう。またしても中国脅威論が感情的に高まることは確実で、安保法制賛成の世論が増えてしまうかもしれない。
      これでは、中国はまるで安倍総理を応援しているようだ。不思議なことに、安保法制成立の最大の応援団が中国という状態である。
      アメリカでは、9月2日の対日戦勝記念日に合わせた声明でオバマ大統領が日米関係について「 かつての敵国が最も安定した同盟国となり、和解の力を表す手本だ 」と称賛し、暗に中国を牽制した。
     こうなると、あたかも日米が手を組み、日本海を挟んで中国と対峙するという、「新冷戦」的な対立図式が出来上がったかのような感覚が生じる。そして、その緊張状態に恐怖して、日本はますますアメリカの属国化を加速させて行くのだ。
      韓国の朴槿恵大統領は記念式典と軍事パレードに出席し、破格の厚遇を受けていたが、これは外交上、完全な失敗である。
     今回の記念式典や軍事パレードには、中国の覇権主義を警戒して西側諸国の首脳が全く出席していない。中国はその点で明らかにメンツをつぶされている。そんな中で韓国だけが出席したのだから、そりゃ厚遇もするだろう。