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記事 18件
  • 「竹田恒泰スラップ訴訟」小林よしのりライジング Vol.473

    2023-07-04 18:45  
    300pt
     公論イベントSpecial「愛子さまを皇太子に」開催まで3週間を切った。
    「男野系子」が参戦するという「SPA!」掲載の広告も大反響で、応募者が殺到して早々に締め切ることになったが、かなり落選者を出さなければならないかもしれない。落選した人、応募を見送った人は、ニコニコ生放送とYouTubeLIVEで行う完全無料生放送で楽しんでいただきたい。
     この戦いは勝たなければならない。そして、勝つと確信している。
     その確信を強くしてくれているのが、公論戦士たちによる「論破祭り」の連戦連勝、圧勝に次ぐ圧勝だ。
     男系派の論客はひとつ何か言えば、たちまち反論の集中砲火を浴びる。しかもその反論の仕方がひとつひとつ全て違って、あらゆる角度から論破されまくるのだから、怖くて仕方がないだろう。最初は虚勢を張ってマウントを取りに来ていた言葉の勢いが、明らかに弱々しくなっていくのが見えるのも愉快なところだ。
     中でもニセ旧皇族の竹田恒泰については、公論戦士たちがツイッター上で連日「宮さま詐欺師」と批判し続け、これをまとめて総合プロデューサー・ちぇぶがゴー宣道場ホームページにアップしている。
     すると竹田は6月26日、ツイッターに
    「詐欺師」というのは名誉毀損に該当します。削除をお勧めします。リツイートや拡散するのも同様です。見かけた方はリツイートした方に教えてあげてください。最近は言論空間での誹謗中傷は社会問題となっていて、侮辱罪も厳罰化されました。
    と投稿、続けて27日には
    【訴訟予告】警告しましたが対応がありませんので、サイトの運営責任者である有限会社よしりん企画と執筆者「ちぇぶ」への訴訟を準備します。
    と投稿した。
     議論もせずに、いきなり訴訟をチラつかせ始めたのだ。
     そもそも竹田に対して「宮さま詐欺」とか「いるいる詐欺」とか言い出したのはわしが最初だし、ゴー宣道場サイトも、ちぇぶが総合Pを務める公論イベントも、わしが主催者であることは誰にもわかるはずだ。
     それなのに竹田は「小林よしのり」だけは避けて「よしりん企画」と「ちぇぶ」をターゲットにしているわけで、これだけでも竹田の卑怯さとヘタレぶりが露わになりすぎていて、何の脅しにもなっていない。
     実際、公論戦士たちも全くひるむことなく、変わらぬペースで竹田の論破を続けている。この調子でどんどん竹田を「宮さま詐欺師」と呼んで、その事実を一般常識として定着させてほしい。
     たとえ竹田が裁判に訴えたとしても、ダメージを喰らうのは一方的に竹田だけだ。むしろ、訴えるつもりならぜひどうぞと言いたいくらいだ。
      実は竹田は以前にも、これと全く同じといっていい形で、ツイッター上の批判を「名誉毀損」として裁判を起こし、地裁・高裁で全面敗訴、最高裁で上告棄却という「完敗」を喫している。
     その裁判については、訴えられた戦史・紛争史研究家の山﨑雅弘氏が 『ある裁判の戦記 竹田恒泰との811日間の戦い』 (かもがわ出版)という著書にまとめているので、今回は同書から、竹田がやったことを紹介しておこう。
     事の発端は令和元年(2019)11月、富山県朝日町の教育委員会が町内の中高生全員に受講させる「教育講演会」の講師に、竹田を招こうとしたことだった。
     山崎氏はそれをツイッターで、こう批判した。
    竹田恒泰という人物が過去に書いたツイートを4つほど紹介するだけでも、この人物が教育現場に出してはいけない人権侵害常習犯の差別主義者だとすぐわかる。富山県朝日町の教育委員会が、何も知らずに彼をわざわざ東京から招聘するわけがない。つまり今は教育委員会にも差別主義者がいる可能性が高い。
     これに続けて山崎氏は、竹田のツイートから 「韓国は、ゆすりたかりの名人で、暴力団よりたちが悪い国だ。そういう国とは、付き合わないのが一番」「そもそも韓国に、毀損されるような名誉があるのか???」 などの発言を引用、紹介した。
     するとその数日後、山崎氏のツイートとの関連は不明だが、朝日町教委は竹田の講演会中止を発表。竹田は、山崎氏が脅威への「脅迫」を煽動したから中止にされたと言いがかりをつけ、さらに 「ツイートを削除しなければ名誉棄損で訴訟を起こす。リツイートした者も提訴を検討する」 と脅し始めた。
     竹田は今も 「ツイートを削除しなければ訴訟。リツイートした者も同様」 と脅しをかけているわけで、やっていることは全く変わらない。
     山崎氏が削除を拒否すると、竹田はツイートの削除と謝罪、そして慰謝料550万円を求めて訴えた。
     実際に提訴されると、山﨑氏は弁護士報酬など裁判費用の捻出に頭を抱えた。しかし、竹田の脅しを跳ねつけリツイートを解除しなかった思想家・内田樹氏が支援を表明して「裁判を支援する会」を立ち上げ、裁判費用の募金を呼びかけた。すると2週間で1000万円を超える寄付が集まり、裁判闘争が可能になったのだった。
  • 「マウントを取りたいだけの男系派」小林よしのりライジング Vol.469

    2023-05-16 20:45  
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     7月23日(日)13時から開催される、公論イベントSpecial「愛子さまを皇太子に」の参加者募集が今週19日、正午からスタートする。
     ゲストに 菅野志桜里氏、矢部万紀子氏 を迎えて4時間の大議論を行う他、様々な企画を用意して、愛子さまに皇太子になっていただくための一大応援イベントを繰り広げる予定である。
     入場無料だが、事前の申し込みが必要なのでぜひ早めに応募してほしい。
     わしは10年近く前、宮内庁からの呼び出しを受け、宮内庁長官と官房審議官と会談をした。
     それまでわしは、天皇(現・上皇)陛下が女性・女系天皇を認め、愛子さまを次の皇太子にしたいというご意思をお持ちだということについて、90%くらいの確信を持っていた。
      それがこの時の会談で、宮内庁側がわしの主張と完全に同調していて、ツーカーで意思疎通ができたことから、確信は100%に変わったのだった。
     ただしそのことについては、わしはその後、ごく限られた人にしか明かさないようにしてきた。
     しかし先日、ついにその禁を説き、SPA!5月2・9日合併号掲載のゴーマニズム宣言『愛子天皇論』でこれを描いた。
     わしは宮内庁側からは特に口止めもされなかったので、すぐに誰に話しても別に構わなかったのだが、10年近くの間、この件をどう扱うべきか、ものすごく悩んできたのである。
     宮内庁長官と話して、天皇陛下のご本心がわかったと言えば、いかにも強力な武器を手にした感じにはなるだろう。それはまさに「錦の御旗」を掲げているのと同じようなことになる。
     だが、わしはそこで躊躇を感じた。もしこのことを公開したら、どんな反応が返ってくるだろうかと考えたのだ。
      まず、必ず「作り話だ」と言ってくる者がいるだろう。
     では、そこで宮内庁側との会談が本当にあったことの証拠として、宮内庁長官の名刺を公開するか?
     いくらなんでも、人の名刺で自分の発言の信用性を担保しようなんて、あまりにみっともなくてわしにはとてもできないし、 「宮内庁お墨付き」を振りかざすなんてことは、完全にわしの美学に反する。
     この会談の席では、わしは 「これは皇后陛下の御本です」 として一冊の本をいただいているが、それを公表するわけにもいかなかった。
      その本には皇后陛下が貼られた 「付箋」 が何枚もついていて、そのページを見れば、皇后陛下が何をお考えかが推察できるようになっており、それは「女性天皇」を示唆しているとしか思えないものだった。
     高森明勅氏の忠告によれば、皇后陛下が勝手にそんなことをできるわけはないので、その推察できるご意思は、 そのまま天皇陛下のご意思である ということだった。その翌日にも、高森氏はわしの仕事場を訪れ、御本の付箋ページのコピーを取っていった。
     この本を見せびらかせば、立派な「錦の御旗」になるかもしれないのだが、それでは「権威主義」であり、そうはできないとわしは思った。
     わしは迷った結果、これは一般公開できることではなく、ごく限られた人にだけ、内々に明かすしかないと判断した。
      当時のゴー宣道場の設営隊員には、開場前に集合をかけて話し、今後の道場の役割がものすごく大きくなることを知らせた。
     そして、 尊皇心があって力になってくれるかもしれないと見込んだ政治家には、個別に会って話していった。
      野田佳彦元首相 は、すごく熱心に聞いてくれて、生前退位の際には非常に尽力し、引き続き皇統問題にも力を入れているが、いかんせん野党が弱体化しすぎてしまって事態を動かせない。
      石破茂氏 には、安倍政権下では冷遇されていたとはいえ、与党の有力議員としてかなり期待したのだが、結果は全然だった。
     さらには、少しは影響力があるかと思って、 田原総一朗氏 にまでこの話をして、その一部は対談本『日本人なら知っておきたい天皇論』(SB新書)にも掲載された。だが、それだけだった。
     今年2月に行った『オドレら正気か?in奈良』では、ネット非公開で会場のみの 「密教」として話したのだが、最大限でも、これくらいの内輪だけの話にしておくべきだと、この時点では思っていた。
     ところが、この「密教」の話を聞いたのか、「世界のゴー宣ファンサイト」の カレーせんべい氏が興奮して、そんなことがあるんなら、これを全部公開してしまえばすべて決着じゃないかと言い出した。
     おそらくカレー氏には、 「承詔必謹」 という感覚があったのだろう。
     戦争最末期の昭和20年(1945)8月に至っても、軍には強硬な抗戦派が存在し、政府は意見を集約することができず、天皇の「御聖断」を仰いだ。
     そして昭和天皇はポツダム宣言受諾という決断を下し、自ら「終戦の詔勅」を読み上げた。
     その「玉音放送」の放送を聞くや、それまで強硬に戦争継続を主張していた軍人たちも、一斉に武器を下ろした。一部の軍人は、天皇の意思に反してでも徹底抗戦せよと唱えたが、それが叶わないと知ると割腹して果てた。
      天皇の「詔」を承ったら、必ず謹んで従う…「承詔必謹」とは、それほどまでに当時の日本人、特に軍人にとっては絶対とされていたことなのだ。
     だからこそカレー氏は、日本の「保守」を名乗るような者なら、愛子皇太子の実現が天皇の大御心だと知れば、それに従うはずだと思ったのかもしれない。
     しかし残念ながら、今どきの自称保守なんて、「承詔必謹」が読めるかどうかすら怪しい。
      現在の日本人、特に自称保守なんて、天皇が何を考えていようが、何を望んでいようが、そんなことは知ったこっちゃないとしか思っていないのだ。
     たとえ、いま天皇陛下が「愛子を皇太子にしたい」というご意向を直接「玉音放送」で表明したところで、自称保守派は一斉に無視するか、あるいは「憲法4条違反」として天皇陛下をバッシングするのは目に見えている。
      現に、上皇陛下が生前退位のご意向を明かされた「平成の玉音放送」の際には、自称保守は陛下のご意思を一斉に完全に無視して、「死ぬまで天皇をやるべきだ」と平然と言い放った し、 天皇が自身の進退について表明することは「国政に関する権能」ではなく、憲法違反には当たらないにもかかわらず「憲法4条違反」を主張する者も数多くいたのである。
  • 「八木秀次って馬鹿なのか?知ってたけど」小林よしのりライジング Vol.464

    2023-03-28 15:30  
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     前回・前々回に続いて今回も、根も葉もない「愛子さまのお婿様候補」記事によって「門地による差別」を大推奨している週刊誌の批判をしなければならない。
     それにしても、これを仕掛けたのが男系固執派の中心人物、麗澤大学教授の八木秀次だというのはほとんどバレバレなのだから、実に間抜けな話だ。
      八木秀次って、馬鹿なのか?
      知ってたけど!
     週刊新潮には、前回批判した3月16日号のトップ記事に続き、3月30日号のトップにも 『「旧宮家筆頭」「華道のプリンス」… 「愛子さま」やんごとなき「お婿さんリスト」』 と題する特集記事が載った。
     
     ところが、意味のある新情報は皆無である。
     記事の前半は16日号と同様 「賀陽家の兄弟」 についてだが、相変わらず愛子さまと賀陽家の子息(しかも兄弟二人と?)の交流が深まっているという何の根拠もない妄想など、前の記事をただ書き写しただけ。
     そして後半は、女性自身3月28日・4月4日号が根拠なく飛ばした 「池坊家の華道王子」 の記事を臆面もなくパクっているが、女性自身が「S氏」として伏せた実名を 「専宗氏」 と晒しただけで、それ以上の情報は何もない。
     そこで、専宗氏の祖母である元衆議院議員の池坊保子氏のことを延々と書いて誌面を埋め、保子氏に取材をかけて、「あ、あ、私、ちょっとお話できませんので……」としか応えてもらえなかったことを書き、 「と言いつつ、その声は心なしか弾んでいたのだった」 と勝手な思い込みを加えて「脈あり」であるかのようにでっち上げるというデタラメぶりだ。
     こんな調子で、記事は全3ページのうち2ページと3分の2までは完全に無意味無内容だが、残り3分の1ページに見過ごせないことが書かれている。
     そこに登場するのは、例によって匿名でどこの誰だかわからない「皇室ジャーナリスト」と、唯一実名でコメントしている八木秀次で、「皇室ジャーナリスト」が言ったコメントについて、八木が後押しして「学者」的な補足をするという組み立てになっている。
      てゆーか、その「皇室ジャーナリスト」も八木だろう!
     前回も紹介したとおり、八木は自分が電話で話したことだけで週刊誌の特集記事が組まれることがあり、自分が話したことが複数の匿名人物の発言になっていることまでぶっちゃけている。
      八木秀次って、自爆しても気付かない馬鹿なのか?
      もちろん馬鹿以外の解答はないけど!
     なお、匿名の「皇室ジャーナリスト」が八木だということは、「論破祭り」で公論戦士・ふぇい氏も指摘している。
     https://aiko-sama.com/archives/24425
     ある記事に出てくる「皇室ジャーナリスト」と、別の記事に出てくる八木秀次が、 「旧宮家系男子が宮家に養子入りし、愛子さまが結婚してその妃殿下となり、男子が生まれれば『天皇直系の男系男子』になる」 という、全く同じ趣旨の発言をしていたのだ。
     これは、単に趣旨が同じだけではない。
      1. 愛子さまが宮家の当主でなければ、その子は「天皇直系」にはならず、旧宮家系の「大傍系」となる。
      2. 愛子さまが宮家の当主であれば、その子は「男系」にはならず、「女系」になる。
     という、重大な誤りを二つ同時に犯しており、このプランでは「直系」と「男系」は両立しないのだ。
     以上のことから、ふぇい氏は「こんな間違いをふたつ同時に犯すのは、同一人物とみて間違いないです」としている。
      八木秀次って、日本に二人といない馬鹿なのか?
      とっくに知り過ぎていたけど!
     週刊新潮記事には、「皇室ジャーナリスト」(たぶん八木)の発言が、次のように紹介されている。
  • 「女性誌で暗躍する男系固執派の妄想」小林よしのりライジング Vol.462

    2023-03-07 18:05  
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      最初にバラしておくが、女性誌で男系固執派が暗躍している。その目的は、旧宮家系を皇族と錯覚させること。
     そして愛子さまを旧宮家系と結婚させ、いったん賀陽愛子という民間人にして、男子を生んだら再び皇族に復帰させ、旧宮家(夫)を当主にした男系男子という位置づけにすることだ。
     これで旧宮家系は今後、男子が生まれる間はずっと皇族扱いになる。
     非常にアクロバティックで、全く実現不可能な妄想だが、もうそれしか方法がなくなったのだろう。
     6月の発売に向けて『愛子天皇論1』の制作が大詰めを迎えている。
     7月には「愛子さま応援祭り」を開催、一気に機運を盛り上げたい。
     女性週刊誌では毎週のように愛子さまに関する記事が載っている。やはり世間の関心は圧倒的に悠仁さまより愛子さまに向いているのだ。
     それはいいのだが、やはりマスコミは信用できないところがあり、とんでもない情報操作もしてくるから、しっかり警戒、監視しておく必要がある。
    「週刊女性」3月7日号に、奇妙なスキャンダル記事が載っていた。
    「旧宮家」の子孫を宮家の養子に迎えて皇族とすることで、皇位継承問題を解決するという男系固執派のプランに高森明勅氏が「お墨付き」を与えたと錯覚させる記事が載っていたものだから、びっくりした。
      言うまでもないことだが、旧宮家の子孫は全て、生まれた時から完全なる一般国民である。これを皇族にしようというのは、 国民の中で特定の家系の人だけを特別扱いすることになり、「門地による差別」を禁じた憲法14条に違反する。
     しかも、 旧宮家系男子を養子にする宮家など存在しないし、国民の権利を捨てて皇族になってもいいという旧宮家系の男も存在しない。 全く不可能な話なのである。
     ところが問題の記事では 匿名の「皇室ジャーナリスト」 が、 「愛子さまが旧宮家の男子と結婚されれば、皇位継承問題は一段落つくのではないか」 という意見があることを紹介したうえで 「旧宮家の子孫には少なくとも 10人の未婚男性がいて、ご年齢が愛子さまと近い方もいらっしゃいます」 と発言。
     そして、「なぜ、愛子さまが旧宮家の男子と結婚された場合、皇位継承問題は一段落つくのか」として、次のような高森氏のコメントを載せているのだ。
    「 例えば、愛子さまがご結婚後も皇室に残られ、ご結婚相手が旧宮家の出身者として〝皇族との養子縁組〟で皇族の身分を取得している場合、〝皇族同士のご結婚 〟となります。男子がお生まれなら皇位継承資格を持つことになるでしょう。 しかし、そのようなご結婚については、ご本人のお気持ちをどれだけ尊重したのか、との疑問が生じかねません」 
     太字で強調しているのも、雑誌掲載のままである。
     旧宮家系男子を養子に迎える皇族がいないことにも、憲法違反になることにも一切触れておらず、 旧宮家系男子が養子入りして皇族になることが可能であるかのような発言になっている。
     高森氏が、男系派が大喜びしそうなコメントをしたことになっているのである!
     なぜこんなコメントが出たのか、わしのスタッフの時浦が高森氏本人に確認した。
     すると、これは 「憲法違反云々はひとまず横に置いて、という設定」 で、 「こういうシチュエーションならそのお子様の位置付けはどう説明できますか?」 という質問に答えたものだという。
     これは明らかに罠だ。最重要問題である「憲法違反云々」を「ひとまず横において」というようなふざけた質問はあり得ない。
     しかし高森氏は人がいいから、学者らしく質問されたことに生真面目に答えて、ありえない設定の、起こるはずのないシチュエーションにおけるシミュレーションを話してしまった。そして週刊女性はそのコメントを「ありえない設定」であることも「起こるはずのないシチュエーション」であることも隠して、現実味のある話のごとく、太字で強調して載せたのである。
     もちろん女性誌の読者には、高森氏が「憲法違反で、実現するわけがない」ということを大前提にしたシミュレーションを話していることなんか、わかるわけがない。神道学者で皇室研究者の人が、旧宮家系の男子が皇室に入れば皇統問題は一段落つくと言ったものとしか受け取りようがない。
     高森氏もこの取材には 「怪しい気配を感じた」 といい、そのために質問の回答に続けて 「しかし、そのようなご結婚については、ご本人のお気持ちをどれだけ尊重したのか、との疑問が生じかねません」 とのセリフを添えたという。
     このひとことを入れておけば、たとえ「ありえない設定」のシミュレーションであることを隠して発言を使われたとしても、ご本人の気持ちを無視して愛子さまを旧宮家系男子と結婚させることはできないというのが「結論」になるから、コメントが悪用される形にはならないと高森氏は思ったようだ。
     だが、週刊誌の悪質さはそんな想像の遥か上を行っていた。
  • 「鈴木宗男の呆れた北方領土発言」小林よしのりライジング Vol.450

    2022-10-18 16:40  
    150pt
     いよいよ23日は『ゴーマニズム宣言SPECIAL ウクライナ戦争論』の発売日だ。
     これはウクライナ戦争を他人事としか思わず、「どっちもどっち」などと平気で言っている平和ボケ日本人に「覚悟」を迫る書である。
     ウクライナのゼレンスキー大統領は7日夜、ビデオ演説の冒頭で 「本日、重要な決定がなされた。歴史的だ」 と述べた。
     その歴史的に重要な決定とは、
    「ロシアに一時的に占領された北方領土を含め、日本の主権と領土の一体性を尊重することを再確認する」
    というものだった!
     そしてゼレンスキー大統領は同じ趣旨の大統領令に署名し、ウクライナ最高会議(議会)も同じ内容の決議を採択したことを明らかにした。
     確かにこれは、歴史的な決定である!
     ウクライナ議会の決議は、 「日本の北方領土は1945年にソ連が何の法的根拠もなく占領した」「全ての日本の市民を強制的に追放した」 と強調した上で、 「(北方領土は)ロシアの占領下にあり続けている」 として、 ロシアに返還を求める日本の立場を支持し、国際社会が解決のためにあらゆる手段を講じるように訴えている。
     そしてゼレンスキー大統領も演説で北方領土について、
    「ロシアはこれらの領土に何の権利も持っていない。世界中の人々がよく知っている。我々は行動しなければならない。私たちはロシアが占領する全ての土地を解放するため行動しなければならない」
    と重ねて述べ、こう訴えた。
    「ウクライナと国際法秩序に対する今回の戦争によって、かつてロシアに奪われたものすべてが真に解放されるのも時間の問題になった。ロシアはこの状況に自ら陥った」
    「侵略者は敗北しなければならない。戦争が再び起きないように。そして平和が本当に長く続くために。侵略者には何も残すべきではない。我々のパートナーの国々のために正義が復活すると信じている」
     よくぞ言ってくれた、ゼレンスキー大統領!
     ロシアに領土を不法占拠されているという点においては、ウクライナも日本も同じである。
      現在ロシアと領土問題を抱えている国は、他にもジョージア、モルドバがあり、さらに歴史をさかのぼれば、フィンランド、ポーランド、バルト三国など、ロシアに侵攻され、泣く泣く領土を放棄させられた国は数多い。
     このようなロシアの横暴は、今度こそ終わらせなければならない。これは、世界史的な転換点となる戦争である。
     ロシアに対するウクライナの戦いは、日本にとって決して他人事ではない。むしろ積極的にウクライナと共闘し、日本もロシアから北方領土を取り返し、世界に正義を復活させるための戦いを展開すべきなのである!
     ところが、このウクライナの歴史的決定に対する日本のニュースの扱いは、極めて小さかった。
     しかも報道はしても「日本政府に対して、ロシアへの制裁とウクライナへの支援を継続してほしい意向があるものとみられる」などと、いかにもウクライナ側の「打算」の産物のように示唆する、冷ややかな論調が目立った。
     何が何でも「他人事」にしておきたい、どんな事情があろうと戦争にだけは関わりたくない、頑としてお花畑に居座り続けたいという情けない日本人は、まだまだ多いと言わざるを得ない。
     とはいえ、関わり合いたくないと逃げる臆病者は、まだマシな方だと言うべきなのかもしれない。
     中には「他人事」どころか完全にロシアの側に立って、ゼレンスキーを非難する信じられない人間までいるのだ!
      日本維新の会副代表の参院議員・ 鈴木宗男 は、ゼレンスキーの北方領土発言について10日のブログにこう書いた。
    「単純に考えれば日本を支持する立場のように見えるが、有難迷惑な話である」
     宗男が「ロシアの手先」だということは、知ってる人にとっては「何を今さら」の事実なのだが、ウクライナ戦争開戦以降は、もうそれがなりふり構わぬ様相と化している。
     宗男は開戦直後・2月26日のブログで、
    「ゼレンスキー大統領になってから、ミンスク合意、停戦合意を履行しなかったことが今日の事態を招いている」 と述べ、メディアについても、
    「一方的にロシアを批判する前に、民主主義、自由主義は約束を守るのが基本である。その約束を守らなかったのはどの国で誰かをメデイアは報じないのか」 と非難した。
      宗男は戦争の原因がゼレンスキーの約束違反であり、正義はロシアの側にあり、ウクライナの自業自得であると決めつけ、その後も何があろうがロシアの立場を正当化する発言のみを続けている。 今回のゼレンスキーの発言に対する非難も、その一環である。
     宗男は北方領土についても、ロシアの支配を正当化してこう言う。
      それは、戦後の国際的諸手続き(ヤルタ協定、国連憲章、ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約等)で、ロシアが現在実行(ママ)支配しており、二国間で解決すべき問題であり、いわんやロシアを刺激しても何も得るものはない。
     まず、これが何を言っているのかよくわからない。
     普通は「国際法に基づきロシアが実効支配」と書くはずだ。
      国際法ではなく 「戦後の国際的諸手続き」 によって 「ロシアが実効支配」 とは、どういう意味なのだろうか?
     わかりにくいのも無理はない。これは宗男が自分で考えて言っているわけではなく、現在のロシアの主張をそのまんま鵜呑みにして言っているだけなのだ。
    「ヤルタ協定、国連憲章、ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約」 を基に、北方領土は合法的にソ連に移り、それをロシアが引き継いだというのは、ロシアの言い分そのものであり、 鈴木宗男は忠実なるロシアの手先として、それを繰り返しているのである。
  • 「コロナに対する哲学」小林よしのりライジング号外

    2020-03-10 14:40  
    100pt
     来る日も来る日も朝から晩まで新型コロナウイルスの話題ばっかりなので、せめてライジングくらいは話題を変えたいところなのだが、これだけいろんな人がしゃべりまくっていても、わしの考えるような本質的な話が一切出てこないのだから仕方がない。ここで語っておくしかなかろう。
     安倍首相が「対策やってるふり」のパフォーマンスのために思いつきで言い出した「全国一斉休校」のせいで、日本中が大混乱となっている。
     そもそも小中高校を一斉休校にして、イベント等も軒並み自粛させるくらいなら、 高齢者施設だって一斉休業にして、老人を自宅に帰して籠らせなければおかしい。 高齢者ばっかり集まっている施設で感染者が出たらあっという間に感染が広がってしまい、そのリスクは学校の比ではないのだから。
     ところが高齢者に対する感染防止策はほぼ皆無のままで、国会ではなぜ対応をしないのかという質問が出ると、自民党の議員が 「高齢者は歩かないから」 とヤジを飛ばす始末だから、もう無茶苦茶である。
     さらに言えば、 最も感染リスクが高いのは通勤ラッシュの満員電車であることは誰の目にも明らかなのに、その対策も全然ない。
     安倍は外交でも経済でも憲法改正でも、実際には何もやらず、やる気もないのに「やってるふり」だけ見せて7年間支持率を維持してきたが、今回も同じことである。
     そしてまたもや安倍が「対策やってるふり」パフォーマンスの思いつきで突然言い出したのが 「中韓からの入国規制」 、事実上の入国拒否である。
     今回も政府対策本部の専門家にすら一切相談もせずに決めたらしく、専門家からは疑問の声が相次いでいる。
      入国拒否は「水際対策」が有効な時期ならありうるが、本当にそれが必要な時期に、政府は逆に春節のインバウンド需要を見込んで中国人観光客を大量に入国させまくってしまった。
     今さら入国拒否をしても、既に国内に感染が広まっているのだから効果は薄く、今は国内の対策に力を入れるべき時期に入っている。 しかももはや感染地域は世界中に広がっているのだから、本気で入国拒否をするのなら、中韓に限らず世界中の感染国を対象にしなければならなくなる。
     そもそもなぜいまこれを決めたのかといえば、 「習近平の来日延期が決まり、中国に配慮しなくてよくなったから」 だというのは見え見えで、少しは真面目にものを考えろと言いたくなる。
     それでも「羽鳥慎一モーニングショー」の玉川徹は、タイミングが遅すぎることは指摘しつつも、「取れる措置は全て取るべきだ」として、今回の規制自体は支持。玉川は全国一斉休校についても、現場の混乱が報道された後になっても「正しかったと未だに思っている」と安倍支持を表明している。
     そんな大人の都合に振り回されている子供もいい迷惑だろう。テレビでは小学校低学年の子がインタビューを受けて、こんなやり取りをしていた。 
    「学校が急に休みになってどう思った?」
    「まさかって思った」
    「休みはどうするの?」
    「どうせばあちゃんち送りになるから…」
     祖母の家に預けられるのが「ばあちゃんち送り」で嫌だとは、この子にとってばあちゃんちって「収容所」か「刑務所」みたいなものなのか?と笑ってしまったが、ここは子供の言い分を聞くべきであって、いま子供を「ばあちゃんち送り」になどしてはいけないのだ。
     WHO(世界保健機関)の調査報告によれば、 新型コロナウイルスによる子供の感染例は少なく、19歳未満の感染者は全体のわずか2.4%で、感染しても症状は軽いという。
      だが高齢者や持病のある人は重症化や死亡のリスクが高く、80歳を超えた感染者の致死率は21.9%と、5人に1人以上にもなる。
     子供は感染率が低く、感染しても無症状か軽症で済むのだから、普段通りに学校に通わせておけばいいのであって、それを休みにして祖父母の家に預けさせたりして、もしもその子が無症状感染していたら、わざわざ高齢者を感染リスクにさらすことになってしまう。
     つまり「ばあちゃんち送りは嫌だ」という子供の言い分は、エゴイズムのようでいて、結果的に非常にパブリックな意見になっているのだ。
     ばあちゃんちに行きたくないという子供の声は全く正しい。子供って、非常に立派なことを言うなあと思ったものである。
     若者はエネルギーがあり余っているものだから、ひきこもりでもない限り、体調も悪くないのに急に学校が休みになったら、家で一日中じっとしてなどいられるわけがない。やっぱり、カラオケやゲームセンターなどアミューズメント施設に出かけて遊んでしまったりするのだから、これでは休校にする意味など何もない。
      北海道の感染状況を調査した専門家によれば、活発な若年層がリスクの高い場所で気付かないうちに感染し、無症状もしくは軽症の状態で道内各地に移動して、高齢者に感染させたと考えられるという。
     これを受けて政府の専門家会議は、「若者は重症化リスクは低いが、感染を広げる可能性がある」として、若者に対して活動の自粛を求めている。
     しかし、老人が感染したら死ぬかもしれないから、若者が我慢してじっとしてろと行政が言うなんて、とんでもないことだとわしは思う。
  • 「リベラル左翼の人権真理教は通用しない」小林よしのりライジング Vol.344

    2020-02-05 19:40  
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    「人権尊重」「差別反対」といった価値観は、いついかなる場合も死守しなければならないような、絶対的価値であるとは限らない。
     それくらいの認識は、大人だったら持っておくべきじゃないか?
     わしが毎日書いているブログのうち、政治・社会や芸能・文化などに関するものは、LINEが運営するニュースサイト「BLOGOS」に転載されている。
     BLOGOSは1300人以上の執筆者のブログを紹介し、通信社などのメディアの記事も掲載している。わしのブログも頻繁に紹介され、閲覧数や支持数のランキング1位になることも度々あって、特に世の中に広めたい意見があるときには役に立っている。
     ところが先週、これこそは世の中に広く訴えなければならないと思って書いたブログが掲載されず、完全に無視されるという事態が起きた。
     そのブログは、1月29日の『日本は中国人旅行者を入国禁止にすべきでは?』である。
    https://yoshinori-kobayashi.com/19692/
     中国湖北省の武漢市で発生した新型コロナウイルスは、ついにWHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を行うまでに至った。
      武漢で最初の新型コロナウイルス感染者が発見されたのは、昨年12月8日とされる。
     ところが当初、中国当局は情報を隠蔽。
     12月30日に内部報告の公文書がネットに流出、今年1月1日に中国メディアが流出文書は本物であると報道し、これでようやく事態が明るみに出て、同日ウイルスの発生源と見られる武漢市の海鮮市場が閉鎖された。
     かつてホンダの創業者・本田宗一郎は訪中後に「中華料理は何でも食材にする。4本足なら机以外は」と言ったそうだが、この市場では豚、鶏、ヒツジはもちろん、犬、タケネズミ、キツネ、ヤマアラシ、アナグマ、ラクダ、ヘビ、ワニ、コアラから絶滅危惧種のセンザンコウ(もちろん密漁品)までが生きたまま置かれ、それらの動物の肉や加工品など約150品目が売られており、感染源はここで売られていたコウモリだった可能性が高い。
     だが最初の感染者が発見されてから1か月近くもの間、事態は隠蔽され、ウイルスは無防備に拡散され続けていた。
      そして日本では今年1月6日、武漢からの帰国者に初の感染が確認された。
      ところがその後も中国政府の対応は後手もいいところで、習近平主席が「感染の蔓延を断固阻止」と表明したのが1月20日、武漢市の封鎖を命じたのは23日だった。
     中国は1月24日から30日までが春節の休暇だが、実際にはこの1週間だけではなく、この期間を挟んだ前後40日間にわたって、延べ30億人が旅行やレジャーで国内外に大移動を行う。そのため、中国政府の対応が後手に回っている間に、もう春節の大移動は始まってしまっていた。
      そして武漢市では封鎖が行われる前に、市民1100万人のうち、なんと500万人が市外に脱出していた!
     その500万人のうち7割が湖北省内の地方に行き、6万人以上が北京へ、5万人以上が上海、広州、成都へ、7000人以上が香港、6100人以上がマカオへ移動したという。また、台湾にも桃園、高雄、松山空港経由で7500人以上が入っている。
     さらには、バンコクに2万558人、シンガポール・チャンギに1万680人、そして東京・成田には9080人!
      なんと武漢から9080人もが成田経由で日本各地に入っていた。 そして、武漢からの団体観光客を乗せたツアーバスの運転手とガイドが新型コロナウイルスに感染してしまったのである。
     そんなニュースがようやく報道され始めた頃に、わしは大阪に行った。
     ちょうど春節の真っ最中で、ホテルのロビーに入ったとたん中国語が飛び交っていて、マスクをつけた中国人の旅行客ばかりが目立ち、日本人は自分しかいないのではないかと思うほどで、びっくりしてしまった。
     フロントに並んでも、エレベーターに乗っても、レストランに入っても、中国人の団体客に取り巻かれてしまうので、恐怖だった。
     新型コロナウイルスは飛沫感染だから、エレベーターのボタンなどに唾液などの飛沫が付着し、それに触れた手から感染することもありうる。とにかく日本に来ている以上、接触は避けられず、リスクはあるのだ。
     それなのにマスクをつけているのは中国人ばかりで、日本人はつけていなかった。実際にはマスクには予防効果はあまりなく、自分の飛沫を外に広げないためのエチケットの意味合いが大きいそうだが、わしはその光景を見て、日本人の危機意識の不足を感じた。
      中国政府は1月27日以降、海外への団体旅行を禁止した。ただし個人旅行は禁止していない。そして日本は中国からの観光客を受け入れ続けている。
  • 「『泥にまみれて』は男尊女卑小説か?」小林よしのりライジング Vol.336

    2019-11-19 21:15  
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     次から次へと女遊びをして、その女を自宅に連れ込み、さらに外に子供まで作って、それを妻に洗いざらい話して世話までさせる夫。そんな夫の言動に毎度のごとく驚愕させられ、全身傷だらけのような気持ちに陥れられながらも、折り合いをつけて飲み込んでいく妻。
      石川達三『泥にまみれて』 を読むと、夫を必死で受け入れようとして、自分の独占欲と闘わなければならなくなった妻の心理描写にはとても共感する部分が多いのだが、現実には、とてもじゃないがこんな男とはつきあいきれないとも思えてくる。
     そもそも夫の女が訪ねてきて悪びれる様子もなかったら、私だったらその女とつかみ合いの乱闘になり、物理的に血まみれ泥まみれの戦争を巻き起こすだろう。
      けれどもこれは、あくまでも現代っ子の、わがままで、ロマンティシズムにはまりがちな私から見た超近視眼的な感想だと思う。 もう少しこの小説を俯瞰しながら考えたい。
    ●夫と妻の決定的な違い
    『泥にまみれて』は、20代前半で結婚した夫婦が、20年間に体験した出来事を、時代背景とともに妻の目線で描いた作品だ。1925年頃に結婚し、1945年の敗戦までの様子が綴られている。
     夫は帝国大学、妻は女子大学で、社会主義思想に傾倒してマルクスの『資本論』を耽読するなど言論活動を行っていた同志で、夫はその中心人物だった。時代的に相当危険な活動をしていることになる。妻は夫についてこう語っている。
     私の心に一番強い印象をあたえたものは、ほかの社会主義者たちが一様に一種深刻めいた暗い表情をしているなかで、あの人だけが明朗闊達な性格をしておられたことでした。天衣無縫と言っては言い過ぎだろうけれど、何ものにも拘らないで押しまくって行くあの強さと、恥も外聞も問題にしないあの開けっ放しな天性とは、私にとってこの上もない魅力でした。
     
     この夫婦には、決定的な違いがある。
     調べてみると、この時代に高等教育を受けていた女性は、わずか0.1%。かなり特殊な人だ。だが妻は結婚すると、ただただ夫のことばかりを考えて生きるようになる。その一方で、夫のほうは、筋金入りの表現者として生きていくのである。
     当時は 治安維持法の時代 だ。夫は何度も弾圧を受けるが、屈することはなく、左翼劇団で社会風刺の脚本や劇評を書きつづける。特高警察に逮捕されても、自由になればまた書きはじめる。そのなかで、どうやら拷問を受けているらしいと想像させる描写もあるのだが、それが夫から語られることはない。
     中国に渡って上海の新聞に掲載されたりもし、戦況の変化に従って、ますます狂気を発して立ち向かう。あえて書けば、女子供が一緒に闘える程度の生易しさではないものと闘う男、という部分が垣間見えるのだ。 超強靭な反骨精神と闘争心を抱えた激情家の男 なのである。
     そして、この激情は権力だけではなく、女性に向かっても発揮される。劇団の女優や、劇場で出会ったピアニストなど新しい刺激をくれる女性に次々と惚れては、自分の女にしてしまうという身勝手な状態を巻き起こすのだ。
     一方の妻は、これほどの反骨精神を持つ激情家の夫に惚れ込み、子供を抱えながら夫の活動を支える人生を選ぶ。自由恋愛からはじまったため、最初は 「愛する夫に愛される私」 という幻想に浸っているが、すぐに夫の凄まじさを目の当たりにする。手始めに、結婚前に付き合っていた女をあっけらかんと紹介され、その現実によって幻想を粉砕されるのだ。
     でも、夫と生きたい。そのため妻の頭のなかはどんどん 「夫と私」の幻想 を求めるようになり、現実の夫の言動によって常に動揺させられ、自分の身の振り方にすら迷うようになる。夫は表現活動をしながら次々と女にも惚れる。ますます 「夫と私」の幸せ だけが欲しい。頭のなかが欲望に占領されてしまう。
     そうして妻は、自分の中に襲い来る数々の感情の波に揺さぶられ、それを夫にぶつけたり、夫の愛人への憎悪として心のなかに積もらせたり、夫を理解しようとするがゆえに、それらの感情を自分の内面で処理しようと論理を展開したり、理屈を編み出したりして苦悶する。
     この苦悶の果てに、ついに妻は、 「妻」という立場にこだわるのでなく、一切の我欲を捨てて「夫の母親となる」ことで、すべてを包んで安定しようという境地 を見るようになる。
    ●『泥にまみれて』に見える男尊女卑
  • 「アメリカの文明の野蛮」小林よしのりライジング Vol.335

    2019-11-06 14:40  
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     以前も紹介したが、岡本太郎は70年大阪万博のテーマ館プロデューサーに就任し、「人類の進歩と調和」というテーマに対して「人類は進歩なんかしていないし、調和もしていない」と断言した。
    「人類の進歩と調和」は「科学技術万歳」で、科学力さえ進歩すれば人類も進歩するという発想によるものだったが、それを真っ向から否定したのだ。
     50年後の今、岡本太郎は完全に正しかったと常に思わされる。
     先月27日、アメリカのトランプ大統領はホワイトハウスで「昨夜、アメリカは世界最悪のテロリストのリーダーに正義の鉄槌を下した」と演説し、米軍の軍事作戦によって武装過激派組織イスラム国(IS)の指導者、アブ・バクル・アル・バグダディが死亡したと発表した。
     米軍は数週間前にシリア北西部のバグダディの潜伏先を突き止め、2週間ほど前から秘密裏に作戦を計画。
     作戦は現地時間26日夜に実行され、米軍の特殊部隊がヘリコプター8機で潜伏先の建物を急襲。建物の正面には爆弾が仕掛けられていたため、部隊は建物の横に穴を開けて侵入し、応戦してきた戦闘員5人と、自爆ベストを着ていたバグダディの妻2人を殺害。
     バグダディは周辺のトンネルに逃げ込むが、軍用犬に追い詰められて自爆ベストを起動させ、一緒にいた3人の子供と共に死亡したという。
     トランプはホワイトハウス地下の作戦指令室で現地からの生中継を視聴、「映画を見ているようだった」と言い、自爆する直前のバグダディについて「臆病者のように泣き叫んでいた」と述べた。
     本当にバグダディが泣き叫んでいたかどうかについては、記者会見で作戦の詳細を説明した中央軍司令官が「確認できない」と述べており、トランプがバクダディを「臆病者」として印象づけるために話を「盛った」のではないかと言われている。
     ともかくトランプは、現地から遠く離れた全く安全な場所で、まるでゲームのように面白おかしくそれを見物しておけばいいのだ。
     前任の大統領で、なぜかノーベル平和賞受賞者であるオバマも、かつて同じことをやった。
     2011年、米軍が9.11テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンを殺害した際、オバマら政権中枢は今回と全く同じようにホワイトハウスの作戦指令室で現地からの生中継を見物し、ビンラディンの死亡を確認すると、記者会見で「正義はなされた」と宣言したのだった。
     科学力の進歩が、そういう事態を作り上げてしまった。アメリカという「文明国」だから、それが出来るのだ。
     わしは基本的に、イスラム国は大嫌いである。あれは日本の自称保守派と同じ男尊女卑の連中だから、潰して全然構わない。とはいえ、その指導者が無惨に殺害されていく様を、全くの他人事のように高みの見物で眺めていられる神経には、呆れ果てるばかりだ。
     トランプは、少しは自分の身に置き換えてものを考えるということができないのだろうか。
     例えばものすごく性能のいいドローンが開発されたら、トランプだってどこかの何者かからどんどん追い詰められて、暗殺されてしまうことだってあり得るのではないか?
     大国にしかできないこととは限らない。このままメカの性能がどんどん発達して行ったら、中東からの遠隔操作で暗殺ドローンが大量にホワイトハウスを襲撃することだって、不可能とはいえない。
     そんなことになったら、トランプはどんな臆病者の醜態を見せることになるだろう? 泣き叫びながら小便垂れ流して逃げ回った挙句、惨めな死にざまをさらすんじゃないか?
     そんなことを一切想像もせず、たまたま自分が圧倒的に有利な立場にいるということだけに乗っかって、追い詰められて死んでいく敗者をせせら笑う精神は、とてつもなく野蛮だとしか言いようがない。
     トランプはイスラム国を潰すために利用したクルド人を、あっさり裏切った。
     米国は2014年、イスラム国の支配圏拡大を阻止するためにクルド人に協力を要請。武器と金を渡し、訓練と後方支援を行い、戦闘に当たらせてきた。
  • 「アイドルはルックス、政治家は能力」小林よしのりライジング Vol.247

    2017-11-21 22:25  
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    第253回「アイドルはルックス、政治家は能力」  新宿ホスト風ライターの古谷経衡が、「SAPIO(11・12月号)」で『女政治家の通信簿』と題する、愚にもつかない記事を書いている。
     記事そのものに対する批判はブログでトッキーが徹底的にやっているのでそっちに任せるが、今回はそれとは別に、記事から一カ所気になったところを取り上げて、考察をしてみたい。
     古谷は、政治の世界への女性の進出が一向に進まないのは、女性の側にも応分の理由があると責任転嫁し、こう書いている。
      とりわけ女性の政治的自立や自覚が足りない。男性側には、「選抜総選挙」と銘打つ女性アイドルを愛玩動物のように消費する幼稚で後進的な女性観が寡占的で、若手批評家が「アイドルの○○推し」を公言して憚らない時期があった。誰もこれを異常と言わない。女性を個として認識せず、愛玩の対象とする異様性は日本特有のものだが、女性側もそれに異を唱えない。
     言論人で「『アイドルの○○推し』を公言して憚らない」者といえば、まずわしのことだと自負してもいいくらいで、古谷も当然わしのことを念頭に置いて書いたはずだが、わしの名前を出して批判するわけでもなく、そればかりか、「若手批評家が」として、わしのことではないかのようにして書いている。そんなにわしを敵に回すのが怖いのか?
     それはともかく、AKBの総選挙が女性アイドルを 「愛玩動物のように消費する幼稚で後進的な女性観」 による 「日本特有」 の 「異様性」 の産物だというのなら、ミスコンテストは一体どうなるのか?
     あれだって女性をずらっとステージ上に並べて「品定め」して序列をつけているんだから、女性を 「愛玩動物のように消費する幼稚で後進的な女性観」 の産物だと言えてしまうではないか。
      ミスコンは「日本特有」のものではない。むしろ海外から入ってきた文化で、世界中で行われているのだが。
     90年代、堺市の女性市民団体がミスコン反対運動を起こして、話題となったことがある。
     同団体は 「ミスコンは女性差別の集大成」 と主張し、ステージ上にエントリーした女性を並べて審査する方法については、 「昔のアメリカの奴隷制度がまかり通っていた暗黒時代の人身売買のエントリーのしかたと何ら変わりがない」 とまで言っていた。
     同団体の運動のために、一時は各地のミスコンが次々と中止に追い込まれたが、今ではかなり復活して来ている。
      古谷はこの女性団体と同意見で、ミスコン廃止を訴えているのか?
     そもそもこんなこと言い出したら、グラビアアイドルだって成立しない。
     グラドルだって、女性をルックスだけで 「愛玩の対象」 としており、 「個として認識」 していないということになってしまう。
     もちろんグラビア雑誌だって海外にもいくらでもあり、グラドルが 「日本特有」 の 「異常性」 だというわけでは全くない。
     前述の堺の女性団体は、女性をルックスだけで評価するのはけしからんとして、「大切なのは人柄なのよ」と唱えていたが、古谷が言っているのも全く同じことである。
     だが、わしはこれをそんなにイデオロギー化しては捉えられない。