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記事 3件
  • 「経済成長神話から脱却できない日本人」小林よしのりライジング Vol.134

    2015-05-26 17:00  
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     泉美木蘭さんの『中国びっくり紀行』には、毎回本当に驚かされている。
     どこまでも、どこまでも、建てて、建てて、建てまくっている高層マンション群、取材の4日間、ほとんど太陽が見えなかったという深刻な大気汚染。そして「カジュアルに死んでる」としか思えない交通事情。
     全てが経済成長、経済成長、経済成長のためにと驀進している姿なのだが、これを見て不安に思わない人などまずいないだろう。
     週刊現代5月30日号の「騒がれ出した世界経済『6月危機』」という記事によると、「中国経済の失速」は多く報じられてはいるが、その実態は大手メディアの報道よりはるかに惨憺たるものになっているそうだ。
     上海など中国経済の牽引役と言われた地域は、今では賃金上昇などで外資系企業の撤退が止まらず、関連工場が相次いで倒産。その余波で飲食店など工場従業員向けサービス業でも大量に失業者が出て、治安も悪化。上海では「盗みに気をつけろ」が合言葉になっているという。
     さらに不動産市況も、建設ラッシュに沸いた時代に比べれば新規着工件数は大幅に減少。作ったものの買い手がつかずに「ゴースト化」した高層ビルが当たり前のように存在するらしい。
     また、かつては官僚接待のためにブランド品が大量に買われていたが、「反腐敗運動」によって今では高級百貨店に閑古鳥が鳴いているという。
     そしてあまりの不況から、最近では偽札が大流行しているそうだ。
     問題を抱えているのは中国だけではない。世界で唯一好況感のあった米国経済も、実態は相当な惨状だという。
     株高で潤っているのは上位5~10%の富裕層だけで所得格差は依然大きく、引退期を迎えたベビー・ブーマー世代も、蓄えの不足から簡単には引退できない状態で、消費は盛り上がっていない。
     さらに米経済の牽引役が期待されたシェールオイル産業はすでに過剰投資状態で、今後は泡沫企業の倒産が相次ぐ公算が高い。
     グローバル企業もドル高で決算が大きく落ち込んでいるという。
     米中の経済が失速すれば、両国への依存度が高い日本経済は大打撃を受ける。
     そもそも現時点でも、政府が「景気回復まであと一歩」といくら言い続けようと、一般庶民はそんな実感は一切ない。
     円安で一部の大企業が潤い、株高で富裕層が儲けているだけで、大半の中小企業や庶民は円安による物価高と実質賃金の低下に苦しめられている。
     家計は食費以外にお金を使う余裕を失い、エンゲル係数が21年ぶりの高水準という状況だ。
     こうして日米中の経済3大国がそろって火種を抱えている中、経済のプロの間で世界経済の 「6月危機」 が語られ始めていると週刊現代は書いている。
     現在、欧州では財政難にあえぐギリシャがEU(欧州連合)などと金融支援を巡って交渉中だが、その交渉期限が6月末なのである。
     EUは支援と引き換えに大幅な財政緊縮策を求め、ギリシャはこれ以上の緊縮策は無理としながら支援も受けようとしている。
     もしこの交渉が決裂し、ギリシャがEUを離脱するなど最悪の事態になれば、一気に日米中に欧州も加えた世界危機に発展するというのだ。
      一方で、世界経済危機の引きがねを引くのは日本だという見方も強い。
  • 「アイヌ系日本人を『弱者』認定したがる差別者たち」小林よしのりライジング Vol.117

    2015-01-20 17:30  
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     1月15日、精神科医の香山リカとアイヌ問題について3時間を超える対談をした。
     その様子は2月7日発売の雑誌「創(つくる)」3月号に掲載される。堂々巡りの3時間のどこをどう切り取ってまとめるのか、両者の立場を尊重しなければならない編集長は気を遣うだろうが。
     昨年8月、札幌市議の金子快之(やすゆき)がツイッターに「アイヌ民族なんて、いまはもういない」「利権を行使しまくっているこの不合理」などと書き込み、非難を浴びた。
     その時点でのわしの見解は、「小林よしのりライジングVol.99」(2014.9.2)で書いている。
    http://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar613868
     わしは平成20年(2008)の「わしズムVol.28」で特集「日本国民としてのアイヌ」を組んで以来、数度にわたってアイヌ問題について描き、すでに結論を下しており、金子市議個人に共感を覚えなかったこともあって、それ以上深入りはしなかった。
     しかしその後、北海道大学准教授の中島岳志や、北海道出身の香山から「アイヌ民族」が存在することを前提とした発言が相次いだため、わしは11月13日のブログに以下のように書いた。
    http://yoshinori-kobayashi.com/6176/
    アイヌ語でモノを考え、アイヌ語で会話する
    人たちはいない。
    日本語で思考し、日本語で会話しているのに、
    自分を「アイヌ」だとアイデンティファイ
    している人ならいる。
    だが血脈を辿っても、和人との混血が
    進みすぎていて、純粋アイヌ人はいない。
    果たして「アイヌ民族」というほどの集団がいるのか?
     
    この問いに、香山リカ、中島岳志は答えなさい。
     これに対して反応を示したのが香山で、「創」1・2月号の連載で
    「篠田編集長、原稿料支払いしばらくペンディングでもいいですから(笑)、小林よしのり氏と対談させてください」
    と書き、これを受けて篠田編集長から対談の依頼が来たのである。
    「創」誌は原稿料の支払いも滞るほど売上不振らしいが、わしは言論の場はなるべくたくさん存続した方が「公共性」に資すると思っているので、原稿料なしで対談を引き受けた。
     ただし、わしとの対談を要望する香山の連載記事には、実に無礼と言わざるを得ないことが書かれていた。
     金子市議の発言以来、在特会系の団体がヘイト・スピーチの対象にアイヌを加えるような事態まで起きているらしいが、香山はその問題の「事実上の端緒」はアイヌに関するわしの著作と決めつけている。
     しかもそればかりか、「 実は、この小林氏の一連の主張は、独自調査というよりはある偏見に満ちたネタ本に基づくものであることがほぼわかっているのだが 」だの、「 私には、小林よしのり氏のアイヌ論は実際のアイヌの話というよりは一連の歴史修正主義のワンテーマにしか見えず 」だのということまで書いている始末であった。
      毎度おなじみの「歴史修正主義」のレッテル貼りもさることながら、「偏見に満ちたネタ本」って何のことだ? 「独自取材」をしていないなんて、何を根拠に言っているのだろうか? これこそが偏見ではないか。
     香山はさらに、アイヌ問題に関わって以降自身のツイッターに「おまえもアイヌ利権に群がろうとしているのか」だの「在日韓国人だからアイヌと手を組もうとしている」だのといったツイートが次々寄せられるようになったとした上で、これらの罵倒もわしの意見の影響であるかのように書いていた。
     これだけわしに対して悪意をむき出しにしていながら、会って話したいと言い出すのだから不可解である。
     しかも実際に会って話しても、香山は随所で明らかに悪意を感じる無礼な発言をして、わしは途中、激怒して席を立ってもいいと思ったほどだった。
  • 「総選挙に勝ったのは“いい人”か“悪い人”か?」小林よしのりライジング Vol.113

    2014-12-16 16:00  
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     第45回ゴー宣道場は12月14日、衆議院総選挙投票日に開催された。
     テーマは 「道徳教育は可能なのか?」 で、当日は小中学校の教師も多く参加し、現場の声を聞かせてくれた。
     ゲストは『僕らの新しい道徳』という著書がある評論家の 岡田斗司夫氏 。同書は岡田氏と7人の論客の対談集で、その相手の1人としてわしも呼ばれて対談し、『市民―"庶民"が"大衆"になり果てるとき』というタイトルで収録されている。
     わしや師範方の誰とも異なる感性を持つ岡田氏が参加した道場は、実に刺激的なものとなった。
     岡田氏は「道徳」と「政治」や「経済」の問題が無縁だと思っているが、わしの考えではそれは間違っている。
    「衣食足りて礼節を知る」 というが、現在子供の6人に1人が貧困状態にあり、カロリーの摂取が学校給食に頼るのみという深刻なケースもある学校で、「道徳」を教えて何になろう?
    「礼節よりもまず食べさせる」それが国家、あるいは大人の「道徳」であって、「食わせず秩序感覚だけを教え込め」というのは、北朝鮮の独裁者の考えである。
      そもそも「道徳」は、「知育」・「体育」と共に、「教育」の一つであって、国家が国民を育てる意図の下に行われる。
     国家が世界市民のような普遍的な人間を育てるためのものではない。「国民形成」の手段でもあるのだ。
     道徳教育は権力者の政治的意図が大きく関わるものなのだ。政治と経済ぬきの「道徳」はあり得ない。
     しかも「 道徳の教科化 」という文科省の要請は、安倍政権の要請であって、わしは「新しい歴史教科書をつくる会」の会合に来ていた安倍晋三とは、左翼偏向教科書の問題点を話し合っていたのだ。
     自民党の憲法草案には、表現・結社の自由に「公益や公の秩序に反しない限り」という制限がつけられているが、これについて自民党の憲法改正推進本部本部長代行を務める船田元衆院議員は、「公の秩序」を重視し、いきすぎた自由を制限する旨の発言をしている。
     また、草案には憲法の本旨である「国民の国家権力に対する命令」に加え、国民に対する義務規定や道徳規制などが含まれており、船田は「 道徳的側面は現在の日本人の規範意識が薄れてきている実情を考えるとどうしても書き込まざるを得なかった 」と言っている。
      日本社会の秩序が乱れてきたから、憲法にも「道徳」を書き込み、「道徳教育」も強化しようというのが、自民党が重要視する「道徳」の原点なのだ。
     これから新自由主義の政策がさらに加速され、貧困層が膨大に増えていく。そこで権力や政治に対する不満が爆発すると、政権が覆されるかもしれない。
     だから子供のうちから「秩序」を教え込み、権力に反抗できないような精神を植え付けてしまおうという魂胆の「道徳教育」という側面もあると警戒しておくのが大人である。
     岡田氏の言う「道徳」と「政治・経済」は関係ないという考えは、実にナイーブなもので、わし自身の今までの政治的行動も、大いに関係しているのである。
      権力に従順な国民を育てる装置として「道徳教育」が利用されうることは、中国を見れば明らかである。
      中国の道徳教育は「社会科」と合科になっており、徹底した「愛国教育」を行なっている。
     この愛国教育では日本の「侵略」を撃退した中国共産党の「功績」を徹底的に称賛することが行われる。
     実際に日本軍と戦っていたのはほとんどが国民党軍であり、共産党軍はその間戦力を温存して「漁夫の利」を得ただけなんてことは、絶対に教えられない。
     こうして「中国共産党を正統と認めよ」という教育が行われ、中国人は子供の頃から中国共産党への忠誠心を刷り込まれるのである。