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「古代の『斎王』と伊勢神宮『祭主』のこと」小林よしのりライジング Vol.499

 愛子さまがおひとりで伊勢神宮を参拝され、伊勢市の隣町・明和町の「斎宮歴史博物館」まで足を運ばれたというニュースを見た。  愛子さまは、学習院大学の卒業論文の題材に、賀茂神社の「斎院」だった式子内親王とその和歌を選ばれたそうだ。また、『源氏物語』を夢中になって読まれたそうで、そのなかには伊勢神宮の「斎王」にまつわる悲恋も登場するので、斎宮歴史博物館の展示には興味を持たれていたのだろうとのことだった。 ●「斎宮」「斎王」のこと  賀茂神社の「斎院」、伊勢神宮の「斎王」は、古代から中世南北朝時代にかけて存在した、 神の御杖代(みつえしろ=天皇に代わって「神の杖」として奉仕する者) のことだ。時の天皇が、未婚の皇族女性のなかから占いで選んで派遣した。  斎王に選ばれると、天皇から 「都のことは忘れ、もっぱら神に仕えよ」 と告げられ、「別れの小櫛」と呼ばれる櫛を髪にさしてもらう。そして都を離れ、神のそばで神聖崇高に暮らしながら、ひたすら祈りを捧げる日々を送り、天皇の崩御か退位までは解任されることはない。  伊勢神宮の斎王には、多感な時期の少女や、恋仲の男性と和歌をかわしていた女性もいたが、人恋しさ、都恋しさなどすべての思いを遮断しなければならず、寂しさをつのらせながらも伊勢の斎宮(斎王の暮らしたお宮)にこもり、神に仕えるために不浄を避け、物忌みの多い暮らしを送ったようだ。  地元には、そんな斎王の神秘性や美しさに魅了される人々が大勢いて、一目姿を見ようと押しかけ、「斎宮様!」と声をかける男たちもいたらしい。アイドル状態である。  斎王のなかには幼い子供もいて、その場合は母親が随行することもあった。『源氏物語』に登場するのは、「斎王の母親は光源氏の元恋人だった」という設定のお話だ。  7歳年下の光源氏に口説き落とされたものの、あっという間に飽きられてしまった24歳のその女性は、嫉妬に狂うあまり生霊を飛ばしてしまい、光源氏の正妻の娘や、新しくできた恋人を次々と死なせていく。ビビり上がった光源氏がご機嫌を取りに来るのだが、それをきっぱり振り切る和歌を残して伊勢へと出発。娘とともに神域で暮らすようになり、やがて心が浄化され……という内容だ。怖い。  ほかにも、30年以上務め、清らかなまま生涯を終えた斎王、優れた和歌をたくさん詠み、斎宮に文芸サロンを築いた才女の斎王もいる。斎王に選ばれたために恋人と別れ、数年間務めたのちに都に帰って、また交際を復活した斎王もいれば、都の享楽を知って育ったがために、ちょっかいをかけにきた男性を見て魔がさしてしまい、スキャンダルで解任された斎王もいる。 「斎宮歴史博物館」で見た資料に、「斎王も人間であり、女であった」と書かれていたことがとても心に残っている。斎王たちの詠んだ和歌は、事情を知ってから読みなおすと、さまざまに深い心の模様が読み取れる。   神に奉仕する「斎王」 の制度は、戦乱によって存続不能となり、14世紀の南北朝以降は廃絶されたが、 伊勢神宮の神職の長として祭祀を主宰する「祭主」 は現代まで続いている。 ●伊勢神宮の「祭主」のこと

「古代の『斎王』と伊勢神宮『祭主』のこと」小林よしのりライジング Vol.499
小林よしのりライジング

常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!

著者イメージ

小林よしのり(漫画家)

昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。

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