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  • 「男女平等原理主義と不寛容」小林よしのりライジング Vol.286

    2018-09-25 21:30  
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     前回、国家理念として「男女平等・人権尊重・個人尊重」を掲げるイデオロギー国家・スウェーデンについて書いた。今回はその補足的な第二弾だ。
     戦後の復興需要に乗って経済発展するために、社会民主党がその理念である 「男女平等」「女性の家庭からの解放」 を急激に促進させ、女性を労働力として駆り出したスウェーデン。
     それまでは夫婦分業が成立し、妻は家事と育児を担当するのが普通だったが、イデオロギー注入によって 「専業主婦は家庭の奴隷」「家事労働など『生産性』がない」 と解釈されるようになり、現在も専業主婦は、日本で言う「ヒモ」と同等とみなされている。
     スウェーデンのある大学生が、100歳をこえた老人に「おじいさんの一生で何がもっとも重要な変化でした?」と尋ねたところ、 「家庭の崩壊だよ」 と答えたという。きっと「戦争」か、テレビやパソコンなどの「技術の発展」なんかについて話してもらえるだろうと期待したのに、高度経済成長期のスウェーデン人が体験したもっとも大きな出来事は、男女平等イデオロギーによる家庭崩壊だったのだ。
    ***
     さて、スウェーデンの「女性の地位の向上」の歴史を並べてみると、日本が江戸幕府第12代将軍・徳川家慶の時代にはもう「財産相続権の男女平等」が認められていたのだから、「日本は遅れてる。外国はすごい!」と言いたい人にとっては好材料となりそうだ。
    ●スウェーデンの《男女平等》の歴史●
    1845年 財産相続権の男女平等
    1846年 女性に一定の分野で就労が認められる
    1864年 男性が妻に体罰を加える権利を失う
    1873年 大学への入学自由(神学、法学を除く)
    1919年 女性選挙権および被選挙権
    1921年 女性議員の誕生
    1935年 男女平等の国民年金導入
    1947年 女性閣僚の誕生
    1958年 女性牧師の誕生
    1974年 7カ月間の育児休暇を両親に付与
    1975年 女性の自由意思による堕胎
    1980年 男女平等法成立、職場での性差別は違法に
    1982年 私的場所での女性虐待がすべて起訴の対象に
    1992年 雇用機会均等法
    2009年 男女平等オンブズマン制定
     最後の 「男女平等オンブズマン」 とは、職場や学校などで差別を受けた際に駆け込むところで、代わりに是正勧告をしたり、裁判の補助をしてくれる監視機関のようなものだ。日本でいう労働基準監督署の役割に近い。
     日本にも市民オンブズマン組織が行政の不正を監視しているが、「オンブズマン」は「代理人」という意味のスウェーデン語である。男女平等のほかにも、人種差別、障害者、性的指向などの差別オンブズマンが存在する。
    ●男女平等イデオロギーとイスラム教
     スウェーデンでは、《宗教》と《男女平等》の対立が何度も繰り返されている。
     「人権尊重」の国家理念上、スウェーデン政府は移民を積極的に受け入れ、差別なく国民と同等の福祉と社会保障を適用するべく支援を行ってきたが、財政的にかなりの無理があるようだ。また、一般のスウェーデン国民のなかには、自分たちと同じゲルマン民族ならまだしも、まったく異文化の移民までなぜ「国民の家」(詳細は前号を参照のこと)に入れなければならないのかという感情があるという。
     最近も 「女性蔑視のイスラム圏からの移民を、男女平等の我が国スウェーデンに受け入れていいのか?」 というジレンマが新聞で報じられていた。
     今年は、こんな裁判もあった。