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  • 「恐るべき実態!深刻化する女性の貧困」小林よしのりライジング Vol.84

    2014-05-06 13:20  
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     4月27日に放送されたNHKスペシャル「調査報告 女性たちの貧困~新たな連鎖の衝撃」で見たが、若い女性の貧困化がもの凄いことになっている。
     都内のインターネットカフェで、41歳の母親と、19歳と14歳の娘2人がそれぞれ別のブースでもう2年半も暮らしている。
     母親は10年前離婚し、看護助手として女手ひとつで子供を育てていたが、子育てと仕事の両立に疲れ、生活が困窮、アパートの家賃が払えなくなってここにたどりついたという。
     妹は中学3年だが、もう半年近く学校に通っていないという。
     姉は生活苦で高校を中退、コンビニのバイト代10万円と母親からの数万円が姉妹の生活費だが、1日1食。空腹の時は店内の無料のドリンクバーでしのいでいるという。
     1個のパンを分け合い、ツナ缶をつついている様子は衝撃的だった。
     明日の食事の心配をしなくていい暮らしがしたいというのが、今の姉妹の願いなのだそうだ。
     今は派遣で働いているという母親の姿は映されなかったが、生活に行き詰っても周囲の人や行政には頼らなかったというから、もう少しなんとかなったのではないかという感もある。
     だが、女性の貧困の問題が深刻化しているということは紛れもない事実である。
     番組では、他にも真面目に長時間働きながら貧困から脱出できない女性が何名も登場し、彼女たちは異口同音に、特別な望みはない、ただ普通の暮らしがしたいと言っていた。
      今や働く女性の約6割が非正規雇用である。
     非正規雇用で働く若年女性(15~34歳)の 81.5% 、289万人が、国が生活支援の対策で困窮状態の目安としている 年収200万円を下回っている。
     さらに 国が「貧困」と位置づける 年収114万円未満 は、働く世代の単身女性の 3分の1 、約110万人に上るという。
     安倍政権は女性の活用が成長戦略の柱だとか言っている。
     首相官邸ホームページの「女性が輝く日本へ」を見ると、その政策として挙げているのは「待機児童の解消」「女性役員・管理職の増加」「職場復帰・再就職の支援」「子育て後の起業支援について」の4点だ。
     これを見る限り、 安倍政権がまず念頭に置いているのは企業で役員や管理職になれたり、自ら起業したりという、正規雇用やフリーでバリバリ働ける、ごく少数の有能な女性の活用である。
     あとは、正規社員の職場復帰や、スキルを身に付けた人の再就職支援くらいである。
      どうやら、上記の例に表れているような非正規雇用の女性は、安倍政権の眼中にはないようだ。
     圧倒的多数の普通の女性は、弱肉強食の社会の中に自己責任で放ったらかしでいいと思っているらしい。
      安倍政権の言う「女性が輝く日本へ」なんてものは完全なまやかしである。
     最初から「勝ち組」の女性だけが「輝く女性」として安倍政権の広告塔に使われるだけのことだ。
      結局のところ、女性登用を看板に掲げながら、実は男女共に強者優遇の勝ち組支援、男女共に貧困層切り捨てという政策に過ぎないのだ。
     かつての高度経済成長は人口の爆発的増加という条件があって、会社が家族共同体であり、企業は男性社員の嫁候補として女性を雇っていた。
     給料が必ず上がるから将来の不安がなく、低賃金でも結婚できたし、専業主婦が多かったから貧困化する女性は少なかった。
      だが今にして思えば、専業主婦は潜在的な貧困層だったとも言える。
     グローバリズムの中、少子高齢化時代に突入した日本でさらに「経済成長」のみにこだわれば、限られたパイを勝者が独占する新自由主義を採用するしかない。
     会社が株主のものとなり、終身雇用制が崩れ、会社の共同体としての役割が消滅。格差の米国型拡大で、貧困層を増え続けさせるのである。
      そうなれば、男より女の方がより貧困率は高くなっていく。