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「詳しすぎるスウェーデン情報:集団免疫は失敗ではありません」小林よしのりライジング Vol.384
2021-01-12 17:30150pt説得力のある意見だと感じる専門家や、現場を知っているという人物であっても、よくよく話を聞いていると矛盾が見える場合がある。特に、スウェーデンに対する評価は、世界的なデマ、誤報、偏見が横行していることもあり、見解がぐらつきやすい。
「スウェーデンは秋冬になって感染が再拡大し、マスク着用や営業制限など方針転換を余儀なくされた。国王も『失敗』を認めた。スウェーデンは、集団免疫策に失敗した」
現在は、おおむねこのような意見が、既成事実であるかのように語られがちだ。
「失敗」については、昨年12月のスウェーデン国王の発言を「ロックダウンしなかった我が国のコロナ政策は失敗だった」という意味に誤読・曲解した世界中のメディア報道を、鵜呑みにして流されているところもあるだろう。だがそれは、第196回「”スウェーデンは失敗だ”を問い質す」で解説したとおり、立憲君主国の国王とはなにかということも、スウェーデンならではの問題も理解せずに、ただレッテルを貼っているだけだ。重なる部分もあるが、改めてさらに現状を精査しレポートする。
●スウェーデンと各国の比較
まず、スウェーデンの現状を確認しておこう。
2021年1月10日現在の最新のデータによると、スウェーデンは11月ごろから急激に感染者が増えはじめ、現在も上昇中だ。「今週が山場」という警鐘も鳴らされている。では、たびたびスウェーデンをこき下ろすアメリカ、そして、ロックダウン政策に転じたイギリスと比べてみよう。
どこも大して推移に変わりはない。そして現状、感染者数、死者数ともに一番多いのは、3回目のロックダウンに入り、小中学校まで再び閉鎖してしまったイギリスだ。
グラフを眺める私は、
「3月にデビューしたこの新しいウイルスは、最初はバッと感染して患者を出したけど、すぐにピークアウトした。でも冬になるとやっぱり風邪っぴきが増えるのと同じ経過をたどるんだな」
という風に考える。
なにしろ、 南半球のオーストラリアは、冬にあたる6~8月に見事に感染者が急増して、そして春先の9月には収束している のだ。
オーストラリアは、真夏の現在も、集団感染が発生するたびに3~6日間の超短期ロックダウンを行っている。なんの意味があるのか不明だが、窮屈で気の毒だ。
PCR検査の偽陽性にかなり慎重な姿勢をとるニュージーランドも、3月の時点でウイルスは入り込んでいた。その後、「封じ込めた」とされたものの、真冬の8月にふたたび感染者が発見されているのだから、根絶はしていない。
ほかにも「そりゃ、寒けりゃ熱出す人は増えるだろう」としか言いようのないデータは、世界中にいっぱいあって、なんだか呆れてしまう。
こう眺めると、 「スウェーデンって、そんなにおかしいか?」 としか思えない。
●「集団免疫」のとらえ方
いまスウェーデンを「失敗」と評する人々の不思議なところは、 「冬になって、結局、感染拡大した」 という点をあげつらうところだ。各国のグラフを見れば、ロックダウンしていても、冬になれば感染拡大しているのに、である。 -
「“スウェーデンは失敗だ”を問い質す」小林よしのりライジング Vol.383
2020-12-22 16:35150ptスウェーデンのグスタフ国王が、17日、スウェーデン公共放送SVTのインタビューで今年1年を総括しての感想を求められ、「私たちは失敗したと思う」と発言したことが世界的大ニュースになっている。
“We have failed.” という一文で新聞記事を調べていくと、ニューヨークタイムズにハフィントンポスト、NBC、ガーディアン、BBCなど米英のリベラル系メディアがこぞって 「スウェーデン国王が自国のコロナ対策の失敗を認め、政府を批判」 という論調で報じ、日本のマスコミはそれらの記事をそのまま翻訳したような形で追従して、6月に起きた 「テグネルが失敗を認めた!」 というデマと同じく(第170回「“スウェーデン失敗”というねつ造報道」を参照)、またもや「スウェーデン国王が失敗を認めた!」というスウェーデン叩きがはじまった。
グスタフ国王のインタビューは、12月21日夜に放送される予定の年末恒例の番組だそうで、今回はその一部がコマーシャルのためにチョイ出しされたものだ。
映像が発言ごとに細かくカットされており、1分程度に短く編集されているため、どのような質問に対して発言したのかがわからないが、次のような発言があった。
「私たちは失敗したと思います」
「亡くなったすべての人、多くの家族、そして事業を失う可能性のある多くの経営者の悲しみと悔しさを考えると、それはひどいことだと感じます」
「私はパンデミックの影響を受けたすべての家族のことを知っています」
「この困難な状況でスウェーデンの人々は苦しんでいます」
「亡くなった親族に、別れを告げることができなかったすべての家族のことを私は思い浮かべています。あたたかくお別れすることができなかったという出来事は、重くてトラウマになる経験だと思っています」
これらの発言を、スウェーデンの一部コメンテーターが、「国王がスウェーデンのコロナ戦略を叱責した」と解釈。さらに、「国王が政治的発言をしていいのか!」と国王を批判する人物も現れて、物議をかもしたらしい。
だが、コメンテーターたちの解釈そのものが間違っているのだ。
この件については、 すでにスウェーデン王室から、 国王の発言は「非政治的」なものであり、政治批判ととってはならない と強調するコメントが出されている。
宮廷の広報・報道官であるマーガレット・ソーグレン(Margareta Thorgren)氏は、AFP通信に対して
「国王はスウェーデン全体、社会全体について述べておられるのです。国王のなさっていることは、さまざまなかたちで影響を受けたすべての人々、そして、パンデミックで亡くなった人々に共感を示すことなのです」
と述べた。
立憲君主制をとるスウェーデンで、国王が政治的発言をすることはあり得ない。憲法違反になるからだ。日本で、天皇陛下が人々の苦しみや痛みに寄り添い、慰めるお言葉を述べられることはあっても、「GoToキャンペーン」や「緊急事態宣言」など個々の政策について言及されるわけがないのと同じように考えればよい。
スウェーデンの国王は、国家元首とされており、スウェーデン軍の儀式には軍服で出席するし、特別閣議や情報閣議などを通して国家の中枢に関わっているが、憲法には 「政府が王国を統治し、政府は国会に責任を負う」 と明確に記載されている。あくまでも、儀礼的・国家代表的な権能の行使のみが保障された、象徴的な立場なのだ。
スウェーデンのロベーン首相は、これを念頭に、 国王の発言は、政府がすでに認めていること(高齢者介護施設における死者を防げなかったこと)について確認されたものだ という解釈を示し、 「もちろん、非常に多くの人が亡くなったという事実は、失敗以外のなにものとも見なすことができない」 と、スウェーデンにおける高齢者介護施設の欠点について、改めて認識を述べている。
●スウェーデンの介護施設の問題 -
「マスクは憲法9条である」小林よしのりライジング号外
2020-11-10 17:25100pt先週号の「テレビと言論の自由の話」は、わしとしては今さら説明する必要もない常識だと思っていたことだったが、いざ書いてみると、予想外の反響があった。
どうやら、メディアに関わっていない人の中には、説明されなければわからなかったという向きも多かったようだ。
さてそんな反響の中で、「テレビの言論は全て、今もなおGHQが許可したものしか許されない」と書いた部分について、こんな疑問を寄せた人がいるので、今回はこれに答えることにしよう。
GHQ恐るべし。すごい影響力ですね。
しかし、今でも実際に許してくれないのは誰なのでしょうか?
TV側の単なる自主規制?
それとも、GHQの認めたこと以外をTVで流してしまうと実際にアメリカに怒られる? (Dr_mukimukiさん)
もちろん、実際に誰か特定個人が「テレビではGHQが許可した言論以外は許さない!」と命令をしているわけではないし、ましてやテレビの発言について、いちいちアメリカに怒られるなんてこともあり得ない。
また、これは確かに「自主規制」ではあるのだが、別にテレビ業界内で誰かが申し合わせて禁じているわけでもない。
では一体、誰がGHQの許可した言論以外は「許されない」ということにしているのかといえば、それはテレビ番組を作っている人のほとんどであり、テレビを見ている人の大多数である。
要するに、「テレビでは、GHQが許可した言論以外は許されない」という暗黙の原則は、GHQの洗脳の成果であるから、日本国民の大部分が無意識のうちに刷り込まれている感覚なのである。
わしは『戦争論』の第13章 「洗脳されている自覚はない」 で、戦後の占領期に、GHQが一種の洗脳工作を行っていたことを描いた。
日本は矢折れ刀尽き、主要都市をことごとく焼き尽くされ、原爆を二発も落とされ、惨憺たる敗戦を迎えた。そしてこれから占領軍がやってくる。日本人はどんな目に遭わされるかわからんぞと怯え、恐怖と不安と緊張がピークに達していた。
そんな中でやって来た占領軍は、予想に反して表向きは和やかそうにふるまっていた。 その上で、我々は日本国民の皆さんの敵ではない、皆さんは何も悪くない、軍部に騙されていただけなのだ、これからは自由と民主主義の世の中だなどと、甘い言葉を放った。 そして子供たちには、甘いチョコレートやガムをばらまいた。
日本から自由や民主主義がなくなったのは、あくまでも経済危機と戦時体制という非常事態による一時的な現象であり、その前は大正デモクラシーの時代だったのに、大人たちはそんなこともすっかり忘れ、 自由と民主主義はアメリカにプレゼントしてもらったものだと思い込んだ。
子供たちは、米兵がばらまいたガムやチョコレートの代金は日本が支払わされていることなんか、知る由もなかった。
こうして、大人も子供も洗脳されて、アメリカへの敵対心を失った。トランプVSバイデンのアメリカ大統領選の混迷で、「アメリカは民主主義のお手本だったのに」という発言をしているテレビのコメンテーターたちが、まさにGHQの洗脳の成果である。
さらにGHQはマスコミや教育を通じて 「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」 を実行。あらゆるデマ情報を駆使して、日本軍はこんな残虐なことをしていた、軍のために日本国民はこんなにひどい目にあった、我々国民は騙されていたんだという意識を刷り込み、 今後、世界で日本だけは戦争をしてはいけない、軍隊を持ってはいけないと思い込ませた上で、戦争放棄を定めた憲法9条を制定した。
日本国民はすっかりこの徹底的な洗脳工作にやられてしまい、日本の戦争にも正義があったという主張は完全なタブーとなり、マスコミや教育においては、日本軍は極悪非道であったとする意見以外は許されないものとなった。
一旦この体制が出来上がってしまうと、時代が変わり下の世代が出て来ても、上の世代がそっくりそのままの洗脳教育を施し、洗脳の再生産を繰り返していくから、いくら世代が交代してもずっと変わらずに洗脳は引き継がれていく。
むしろその時代を実際に生きて、本当はどうだったかということを知っている人が少なくなるにつれ、洗脳はより強化されていった。
そして戦後50年を過ぎた90年代後半には「自虐史観」がピークを迎え、全ての中学歴史教科書に「従軍慰安婦」が載るまでに至ったのだ。 -
「怯えた言論は憐れでしかない」小林よしのりライジング Vol.371
2020-09-09 19:15150ptテレビは、不安や恐怖を煽れば視聴率が取れる。安心感を与えても大した視聴率は期待できない。カルト宗教が人の不安に付け込んで信者を増やすのとまったく同じ理屈だ。
『ノストラダムスの大予言』も同じで、上手く恐怖を煽ったからこそ何冊も続編が書けて、売れ続けたのだ。
そんな中で、「コロナは日本ではそんなに怖くない」という「安心感」を唱える『コロナ論』は、どこまで部数を伸ばすことができるだろうか。すでに影響力を発揮している気配はある。これが10万部を超えれば、コロナ脳社会の崩壊が見られるだろう。
産経新聞は9月3日の社説で、新型コロナウイルス感染症について 「今の時点で『日本人はかかりにくい』『重症化しにくい』といった楽観論に走るのは危険すぎる」 と書いている。
そんな産経新聞にしてみれば、『コロナ論』は「危険すぎる楽観論」ということになるのだろうか?
知識人の中にも、 「現実を見る勇気のない奴が楽観主義に走る」 だの、 「不安に耐えられないから楽観主義になる」 だのと批判して、「大したことない」と言っている者を「陰謀論」と決めつける向きがある。
だがこんな非難をしてくる者は、実は自分がコロナ脳に感染して、怖くて怖くてたまらないという心理状態になっているだけである。全く憐れだ。
わしはわざわざ殊更に「楽観主義」を唱えようとして描いているわけではない。国内のインフルエンザと新コロの比較データと、世界各国のデータと、「抑圧策」の国と「緩和策」の国のデータを比較して、多角的に現実を見ているからこそ、これは大したことないと主張して来たのだ。
わしはデータに基づいて、正当な評価をしているだけだ。例えば新コロが「2類感染症」であるSARSや結核、鳥インフルエンザよりずっと弱毒性であることはデータから明らかで、それどころか「5類」の季節性インフルエンザよりも弱いと見られることから、新コロを指定感染症の2類相当から外せと主張してきた。
これがなぜ「楽観主義」になるというのか?
どっちみち分科会も指定感染症の2類から落としたいのだろうが、世論がコロナ脳一色だから、どんな非難が来るか分からず、恐れて決断が出来ないのだろう。『コロナ論』が世論を変えて、後押しするしかない。
わしはあくまでも「科学」で分析しているのだが、コロナ脳に嵌った者は、「恐怖心」を正当化するためだけに「楽観論許さず」となるから、始末に負えない。
最初に自分の恐怖感や不安感ありきで、その感情に合う言説や予言を妄信するばかりだから、「ミラノ・ニューヨークになる」だの、「火だるまになる」という過激な煽り文句に身をすくめてしまう。
そういう人は、 「恐怖におののいている自分は、ひょっとして単なる臆病者なんじゃないか?」 という疑念を抱いているから、不安を煽りまくる言説の方が、自分の抱いている恐怖心は正当なものだと自己慰撫できる。自分は決して臆病者ではないのだと精神の安定を見出す。
挙句の果ては、不安を煽られれば煽られるほど快感を覚え、怖けりゃ怖いほど安堵して、一番大げさに怖いと言う人を信じるのである。
それで、岡田晴恵や玉川徹に人気が出てしまうわけだ。もはや言ってることが正しいかどうかなんて、どうでもいいのである。
出発点がデータではなく恐怖心。しかもその感情の奥底にあるのは、自分の「臆病」を認めたくないというプライド、ただそれだけ。
不安や恐怖を煽られれば煽られるほど、「怖がってもいいんだよ」と臆病な自分を肯定された気になり、それが快感にまでなってしまう。
逆に新コロは大したウイルスではないと言っている人がいたら、自分が臆病者と責められているような気がするから、敵意をむき出しにする。
世の中には、そういう人がいるのだ。しかも結構たくさん。
ある知識人は、「8割おじさん」西浦博を「天才」と称し、このような人がいなかったら「日本は本当に危なかったと思います」と絶賛した。
おそらく、西浦が言った「42万人死亡」の予言など、彼には快感でたまらない名ゼリフだったのだ。だから、西浦の予言が外れたことに批判の声があっても、 「リスクマネジメントとしてはオーバーに行った方が正しい」 などと、屁理屈で擁護するのである。 -
「世界各地で“集団免疫の達成”報じられてます」小林よしのりライジング Vol.369
2020-08-26 16:45150ptロックダウンに反対しているイギリス人男性が、自身のSNSに 「ロックダウンしなかった日本は、スウェーデンのように集団免疫を達成している。論理的思考ができていたからだ! それに引き換え、うちのボリスは、最初は良かったのにメディアの圧力に屈したのが失敗だ……」 とボヤいているので苦笑した。
いやいや。日本は「ロックダウン」という言葉を使わないだけで、自粛を強要して、自粛警察やマスク警察などの見事な相互監視体制をナチュラルに構築し、そして、終始まったく論理的でなく、ただただ感情的で八つ墓村的な村人根性に支配されて、思考放棄状態のままなんだけど、たまたま新型コロナには耐性があって、流行しはじめたように見えても、たちまちピークアウトしてしまうだけだ。
けれど、ロックダウンしたのに大した効果がなく、ボリス・ジョンソン首相に文句を言いたくてしょうがないイギリス人から見れば、日本がさも素晴らしい判断をしたかのように見えてしまうんだろう。海外の情報は、いろんな意味でねじ曲がって受け取られていくものなんだなと、しみじみ思った。
しかし、そんなイギリスでは、いま次々と 「ロックダウンは失敗だ!」 という報道が飛び出している。
●ロックダウン評価、ひっくり返りはじめてます
8月18日には、デイリー・メールの取材に応じた専門家が、 「ロンドン、ニューヨーク、インドの一部地域は、集団免疫の達成に近づいている」 と回答。集団免疫には、通常60~70%の感染が必要だと考えられてきたが、今となっては、10~43%の感染で達成可能だと確信されており、社会的にもっとも活動的な人々の間で免疫ができれば、活動量の少ない人々(高齢者や身体の弱い人など)のことを守ることができるという。
その通りだと思う。活動的な若い世代は、本来、集団免疫の形成に一役買っている存在であり、決して「高齢者を殺す、危険な存在」「社会に迷惑をかける、けしからん存在」ではないのだ。
8月24日には、英国政府の新型コロナ対策諮問委員会のメンバーで、ボリス・ジョンソン首相に助言を行っている感染症疫学者マーク・ウールハウス教授から、
「ロックダウンは、“世界規模での記念碑的なとてつもない過ち”と見なされることになるだろう。二度とあってはならない」
とかなり強力な発言が飛び出した。
「政府の諮問員会には、所得、雇用、生活への影響を評価できる学者、子どもたちへの影響を評価できる学者、若者や成人の精神不安のレベルを評価できる精神保健の専門家、劇場やサッカーの試合に行けないことによる影響を評価できる専門家など、広範な人々を参加させなければならない」
とも述べている。
●スウェーデンの評価ひっくり返る
ロックダウンに対する評価がひっくり返ると同時に、イギリスで起きているのは、スウェーデンに対する高評価だ。8月22日には、デイリー・メールにこんな見出しが躍った。
「ロックダウンなし、マスクなし、ヒステリーなし...“問題なし”:
スウェーデンは“コロナ昏睡”に陥っていなかった。そこには素晴らしく正常な暮らしがあった」
この記事を書いた記者は、もともとロックダウン賛成派で、「経済を守れ、大恐慌に陥るぞ」と警告する人々のことを「大袈裟だ。すぐ立ち直るだろう」と軽くあしらう記事を書いていた人だ。
ところが今回の記事では、経済大打撃の現実に直面したことで当時の自分を反省し、「あまりに楽観主義だった」と振り返っている。年末までに英国内の失業者が250万人に達するという予測さえも「楽観的すぎるかもしれない」とくぎを刺し、
「国を立て直す必要があるにもかかわらず、イギリスはまだ、ほぼ末期的な麻痺状態に陥ったままだ。街の中心部は閑散としており、通勤電車は空っぽ、営業しているオフィスにもほとんど人がいない。その結果、数え切れないほどの店、パブ、レストラン、カフェが再開できていない」
と報告した。
日本では「イギリス政府が飲食代を半分負担するキャンペーンを実施し、レストランが再開」と報じられていたが、やはりそれも部分的に人が集まっている場所だけらしい。
日本でも、すでに都市部の駅近や、地価の高い地区では空き物件がかなり増えている。倒産・移転もあるが、IT化の進んでいる若い会社などは、完全テレワーク制に切り替えて、オフィスを解約するというケースも出ている。その近辺で営業していた店舗にとっては、もはや解決ならない痛手が襲い掛かっているだろう。営業再開で「すべて解決」とはならないのだ。 -
「『コロナ論』発売!」小林よしのりライジング Vol.368
2020-08-18 19:40150ptいよいよ明後日・8月20日、 『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』 (扶桑社)が発売される。
何とかして、コロナ禍の「狂った公」を治療したいと思う一念で制作した本である。
世の中を変える意気込みで描いた作品という点では、平成10年(1998)の『戦争論』にも通じるところがあるが、その作り方は『戦争論』と『コロナ論』とでは全く違っている。
思えば『戦争論』の時は、今ではありえないくらい時間をかけた。帯に「構想2年、制作1年」と書いていたように、作画作業だけでも1年かかったのだが、その前のコンテの段階で何度も何度も描いては破棄、描いては破棄を繰り返していて、その間、スタッフはペン入れする原稿がないものだから、ポカQは表紙の人形を作り、広井は背景のジオラマを作っていた。
それは『おぼっちゃまくん』で稼いだ資金があったからできる作業だった。もうそんなカネはない。
出版スケジュールは延期に延期を重ね、いったいいつ完成するのかわからないままに制作が進んだ。実際に発売されたのは平成10年6月25日で、メディアが戦争特集を組み始める時期を前にした絶好のタイミングとなったのだが、それはほとんど偶然だった。
それに対して『コロナ論』は「緊急出版」である。
『戦争論』のように練りに練り上げて描く余裕は全くない。とにかくスピード重視、早く描き上げて早く出版することを第一に考えた。
毎日毎日メディアが間違ったことばかり言ってコロナの恐怖を煽りまくり、その間に着実に経済が破滅に向かっていくという状況が、現在進行形で展開している中で、なんとかこれに歯止めをかけ、世の中の空気を変えるためには、 もっとスケールの大きい思想哲学を、一刻も早くコンパクトに世の中に提示しなければならない。
限られた時間の中で、描き下ろしを7章83ページも描いたのだが、これは相当に無理をした。
しかも雑誌連載原稿と違って、描き下ろしは原稿料が出ない。タダで描いてるんだから、全くの先行投資であり、本が売れてそれなりの印税が入って来なければ、大赤字になってしまう。
営業自粛で、固定費・従業員の給料が大きすぎて、持続化給付金を20万円もらっても無理という飲食店の店主や、零細企業のタコ社長の苦労がよく分かる。
玉川徹のような、一流企業のサラリーマン、給料不変・ボーナス確実の気楽な稼業の人間には、逆立ちしたって、飲食店の店主の苦闘など分かりはしないだろう。
出版というメディアには、大きなハンディがある。原稿を書いてからそれが世に出るまでに、タイムラグがありすぎるのだ。
漫画は絵を描くのに時間がかかるから、それが特に顕著になる。雑誌連載の場合でも、シナリオを書いてコンテにして、作画を仕上げて入稿し、編集・校正を経て、印刷・製本されて、発送されて、店頭に並ぶまで、1か月はかかってしまう。
例えば今日羽鳥モーニングショーで玉川徹や岡田晴恵がインチキな発言をして、それを作品で暴いてやろうと思っても、その『ゴー宣』が載った「SPA!」を読者が手にするのは1か月先なのだ。
書籍は雑誌よりもさらに、入稿してから世に出るまでの時間が長い。『コロナ論』が脱稿したのは7月10日だが、発売は8月20日。お盆休みを挟んでしまったせいもあるが、扶桑社に目一杯急いでもらっても、原稿が完成してから40日もかかるのだ。
『コロナ論』に収録した作品で一番早いものは、4月に描いている。 わしは、本にまとまるのが3か月、4か月先になることを念頭に、日々状況が変化する中で、3、4か月後の予測をしながら描かなければならなかった。
これほどウィルスの変異や、国民の感情の変化や、政治家の態度や、いわゆる専門家の発言や、マスコミの報道姿勢が読めない事態はないのに、3、4か月後を予測して描くことは極めてリスクが高い。
だが、いま完成した本を改めて開くと、特に予測を外した箇所などない。最初からインフルエンザとの比較で考えていたが、正解だった。
しかし世の中の専門家や知識人や発言者が、未だにインフルエンザとの比較をしないのは、どういうことなのか? 全く不思議だ。
岡田晴恵や羽鳥コロナショーに出てくる奴らは、 「2週間後には医療崩壊が起こる」 だの、 「2週間後には東京がニューヨークになる、地獄になる」 だのと言って、たった2週間後の予想を外しまくっている。
テレビで嘘の飛沫を飛び散らかしても、2週間後には大衆は忘れてしまうから、責任を感じなくていいのだろう。
書籍は残る。何十年でも、ひょっとしたら何百年でも残るかもしれない。執筆するときの緊張感が半端ではないのだ。 -
「【新型コロナ恐怖症】経済への深刻な打撃」小林よしのりライジング号外
2020-08-11 15:55100pt新型コロナ「感染症」によって日本が「地獄になる」「目を覆うようなことになる」などと「専門家」が言い続けた予言は、全て外れという結論が間もなく出ることになるだろう。
だが新型コロナ「恐怖症」によって、経済はこれから本当に地獄になり、目を覆うような事態を迎えるかもしれない。
民間の信用調査会社・帝国データバンクによると、新コロの影響で倒産した企業(破産などの法的手続きをとって倒産した企業と、事業を停止して法的整理の準備に入った企業)は、8月3日までに406社に上るという。
月別では、4月が89社、5月が86社、6月が121社、7月は91社。5月に件数が増えず、6月に急増しているのは、緊急事態宣言の発令で裁判所が自ら機能を停止してしまい、5月末の宣言解除まで破産開始決定が出なかったことが影響したからだろう。
都道府県別では、最も多いのが東京都で97社、次いで大阪府が42社、北海道が23社などとなっている。
業種別では、居酒屋やレストランなどの飲食店が最も多い56社、ホテルや旅館が48社、食品卸が27社となっており、飲食と宿泊関連で全体の3割を占めている。
帝国データバンクは、 「酒を提供する飲食店などに対し、東京都が営業時間短縮を要請することなどで、特に飲食業は再び厳しい状況に陥るおそれがある。また、これまで多かったサービス業だけでなく、製造業などにも倒産が広がらないか、注視が必要だ」 と話している。
同社情報部の丸山昌吾氏は、「週刊SPA!」8月11日・18日合併号で次のように解説している。
「当初は中国からの渡航規制の影響でホテルや観光業の落ち込みが目立ちましたが、 自粛が始まり飲食店の倒産数が追い抜いた形 です。アパレル業界も同様ですが、業界全体が落ち込んでもワークマンや西松屋など独自の商品構成で営業する企業や強いEC基盤かある一部の企業はむしろ伸びています。ただ、全体的には今は金融機関の支援である程度、倒産が抑えられている状態でしょう。 8月から年末に向けて、徐々に倒産数は増えていくと予測しています 」
金融機関の支援といっても要するに借金なのだから、当座をしのいで業績が回復して返済ができればいいが、そうならずに期限を迎えたら、倒産するしかないのである。
自粛が経済に大打撃を与えているのは、もう明らかだ。思ったとおり、特に 飲食・観光が顕著である。
前出の「SPA!」に掲載されている、観光業の現場の声も紹介しよう。
32歳の旅行会社社員は、こう語る。
「冬のボーナスはカットです。相当落胆しましたし、 そもそも基本給すら下がりました。 共働きの妻と二人暮らしなので切り詰めればなんとか生活できますが、 家や車のローンがある同僚は本当に青ざめていましたね 」
「コロナが騒がれだした3月から予約は軒並みキャンセル、 現在も予約状況は例年に比べて絶望的に少ないです。 秋口以降の予約は少しずつ入っていますが、それも感染状況次第でどうなるかわかりません。他社さんも同じようなものでしょうし、今の状況が続けば観光業に関わる小さな会社からどんどんつぶれていくでしょうね」
また、北関東のある老舗旅館の支配人はこう話す。
「3月中句から急激にお客さまが減り、 売り上げが前年比の3割まで落ち込みました。 5月は1か月休館したので売り上げはゼロ、6月に再開しても例年の2割、現在は少し戻りましたが前年比で3割の宿泊しかありません。ウチは行政からの助成金で踏みとどまっている状態ですが、 魚屋やお土産屋、リネン屋など、旅館に関わる業界も火の車 になっています。なんとか耐え抜きたいですが……」
経済産業省のホームページを見たら、とんでもない状態になっていることがはっきりわかる。
第3次産業の中で、赤で囲まれている 「生活娯楽関連サービス」 の急降下は、恐怖を感じるほどだ。
「生活娯楽関連サービス」とは名前の通り、生活や娯楽に関連する様々なサービスである。
「生活関連」は、宿泊業、飲食店や洗濯・理容・美容・浴場業、旅行業、冠婚葬祭業など。
「娯楽関連」は、映画館、劇場・興行団(プロスポーツ興行含む)、ゴルフ場などスポーツ施設提供業、遊園地・テーマパーク、パチンコなどで、他に、学習支援業、ペットクリニックなどがある。
そして、3月から5月の「生活娯楽関連サービス」の落ち込みに特に影響を与えた(寄与度が高い)業種は、いずれも1位が 「食堂、レストラン、専門店」 、2位が 「ホテル」 、3位が 「パブレストラン、居酒屋」 となっている。
4位以下は変動があるが、やはり飲食・観光関連がズラリである。
官僚も政府もこういう現状を把握しており、真っ先にここに手を打たなければならないことがわかっていたから「GoToキャンペーン」をやったのだ。
本当に観光業界が苦境に陥っている。だがもう当分は外国人観光客を迎え入れることができない。そこで国内の旅行客で何とか観光業界を救おうというのが「GoToトラベル」であり、それに続けて飲食業界を救うために「GoToイート」をやろうと考えたのであって、決していい加減な発想で始めたわけではないのである。
ところが、マスコミも専門家ぶった奴らもGoToキャンペーンをやめさせようとして叩きまくり、それに多くの大衆も乗っかった。 -
「『ニューヨークは検査・追跡・隔離で感染拡大を抑えた』は本当か?」小林よしのりライジング Vol.367
2020-08-05 18:30150pt8月3日(月曜)の東京新聞1面には「世田谷『誰でもPCR』へ」という見出しが躍った。
国会で 「東京はミラノやニューヨークの二の舞になる!」「来月になったら目を覆うことになりますよ!」 (2020.7.16 参院予算委員会)と述べた児玉龍彦氏が提唱したもので、東京都世田谷区は、1日に3000件のPCR検査を行って当日結果を出す「世田谷モデル」なる体制整備を検討しはじめたらしい。
参考にしているのはニューヨーク州だ。「無症状で自覚がない段階の感染者もすくい上げ、迅速に対応することで、同州では感染者が劇的に減少した」(東京新聞 2020.8.3)という。
同州のなかでも、特に“感染の火だるま”となったニューヨーク市は、4月の上旬には1日の死者が500人を突破して悲惨な状況が報じられたが、最近 「ニューヨークは検査・追跡・隔離で感染拡大を抑えた」 という報道がなされるようになった。
実際のところはどうなのだろう? 実態についてくわしく調べてみた。
※注意※
「ニューヨーク州(NY州)」と「ニューヨーク市(NYC)」が混同されがちのため、これより先は、 ニューヨーク=「感染の火だるまとなったニューヨーク市(NYC)」 という意味で、主に「ニューヨーク市(NYC)」のデータや実態をもとに書いています。
ニューヨーク州のクオモ知事は、 「感染を収めるには検査、追跡、隔離の徹底が重要。多くの住民が検査を受けることが経済活動再開の条件だ」 と述べており、ヘルスケア関連企業と連携して、希望者全員があちこちで「いつでも、どこでも、何度でも、無料で」検査を受けられる体制を整備したという。
ニューヨーク市の住民のスマホには、5月半ばから「検査を受けませんか?」というメッセージが届くようになり、検査の予約を勧誘されていたらしい。倉庫のような場所に集まって、綿棒で鼻をぬぐうPCR検査と、注射針で腕から採血する抗体検査とをセットで行い、数日後にメールで結果を送信しているようだ。
さらに、教師、美容師、歯科医、介護施設職員、バーテンダーなど、ガイドラインに定められた特定の職種の人たちは、2週間に1度のPCR検査が義務付けられているという。7月現在の州内の1日の検査数は7万件ほどで、8月末にはさらに増やすらしい。
『羽鳥慎一モーニングショー』でも、このニューヨークの政策は扱われている。
小池百合子東京都知事の自粛を呼びかけるやり方に対して、「あまい」と批判する玉川徹氏は、7月22日の番組内でこう述べている。
「ニューヨークは、もう本当に一時期、死者が1日で何千人も出ている状況だったのが、ゼロになりましたね。感染者も1日に5人とかそういうレベルまで下がった。なんでかと言ったらやっぱり検査なんですよね。もうアメリカでは、検査、検査、検査、追跡、隔離って言ってんですけど、まさにその通りやっている」
だから東京都も同じようにやれと言うのだ。
この時点で死者がゼロになっていたのは本当だが、「感染者も1日に5人とかそういうレベル」というのは完全なウソだ。ニューヨーク市公式データから、最近1カ月間の新規感染者数を抜き出してグラフにしてみた。
左側の目盛りをよく見てほしい。これのどこが「4人とかそういうレベル」なのか? ニューヨーク市では、いまだに1日たりとも100人を切ったことはない。
そもそも、東京都も6月24日以降、7月15日までずっと死者ゼロだった。 「7月15日以降、東京都はときどき、1人ずつ死者が出てるじゃないか」 と言うならば、 7月31日は、ニューヨーク州で死者5人だった と付け加えておく。それ以前に、全体の死者数がまったく違うのだから、ニューヨークを評価して、東京を叩くこと自体がおかしいのだが。
さらに、玉川氏のいう「隔離」も、日本で行われているものと、ニューヨークで行われているものでは内容がまったく異なる。 -
「新宿歌舞伎町と『感染防止徹底宣言ステッカー』」小林よしのりライジング Vol.366
2020-07-29 17:40150pt7月24日、西村康稔経済再生担当相が、 酒類を提供する飲食店がガイドラインを守らずに陽性者を出した場合には、感染症法に基づき店舗名を公表する と述べた。完全な脅迫であり、営業妨害だ。
飲食店にとって、店舗名の吊し上げは、公開処刑と同じである。「ガイドライン」には法的な意味など一切なく、しかも科学的な根拠によって作られたものでもない。そんなものを守らなかったからという理由で、どうして「法律」に基づいて公開処刑ができるというのか。
インフルエンザは毎年10,000人、肺炎球菌は毎年30,000人以上を死に追いやっているが、誰も「殺人ウイルス」と騒いだことなどないし、「飲食店を閉めさせろ」などと言ったこともない。いままで通りに営業したところで、それが日本国憲法における「公共の福祉」に反するとは言えないだろう。
そもそも「集団免疫しかない」という結論に至ったとき、国は、集団免疫の形成に役立っていた場所を潰したということになるが、責任をとれるのか?
西村大臣の発言をそのまま垂れ流すだけのマスコミも、どうなのか。
マスコミにだってガイドラインはある。たとえば厚労省が公表している、自殺対策のためのメディア向けガイドラインを読んでみると、こうだ。
●有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること
●自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度にくり返さないこと
●自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
●自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
(一部抜粋)
三浦春馬の自殺報道においては、とてもこれらのガイドラインが守られたとは言えない。
したがって、高市早苗総務大臣から「ガイドラインを守らずに自殺報道を行ったため、放送法と電波法に基づき停波する」と宣告されても、文句を言えないという理屈が通ることになってしまう。
自分たちに矛先が向いた時だけ戦って、そうでなければ庶民の人生を踏みつぶす側にまわるようなマスコミなら、害悪でしかないと思う。
さらに具体的に強烈な締め付けを行っているのが、小池百合子東京都知事である。
小池都知事は7月に入ってから、店舗営業者に対して、東京都の発行する 『感染防止徹底宣言ステッカー』 を店舗に掲示するようにくり返し求め続けた。記者会見では、このステッカーの掲示を急増させていくとも述べている。
東京都庁広報課ビデオより
東京ローカルのテレビCMや、YouTubeなどの差し込み広告でも、「このステッカーの貼られたお店を利用しましょう」というCMが流されている。
さらに、7月22日(水曜)の記者会見では、小池都知事自身が 『ガイドラインを守らないお店は避けて! (ステッカーのある安心なお店に!)』 と書かれたプラカードまで掲げて、アピールした。
2020.7.22 時事通信「JIJI.COM」より
このステッカー、報道で見ていたときは、犬を飼っている家が門扉や玄関扉に貼る、狂犬病予防注射済の「犬」シールぐらいの大きさのものかと思っていたのだが、
はじめて街で実物を目にしたとき、驚愕してしまった。
なんと、 1枚の大きさが A4サイズ なのである。
これは、新宿区四谷の雑居ビルで撮影したもの。それぞれの店の看板に、ラミネートされたA4ステッカーがベタベタと貼りつけられている。写真右はカラオケ店の看板なのだが、もはや 「30分:学生140円/一般180円」 という自慢の格安料金よりも、 「感染防止徹底宣言」 のほうが重要なものとして扱われているのだから、その切実さがうかがわれる。
この「感染防止徹底宣言ステッカー」は、発行の条件として、発熱している人間を入店させないこと、消毒備品の設置、混雑回避、換気などの基本的な対策のほか、
・従業員と客がマスクの着用を徹底/着用していない客にはマスクを配布
・従業員は、休憩室で対面で食事、会話をしない
・従業員に出勤前に検温や体調確認をさせ、毎日報告させる
・感染者の発生に備えて来場者の把握
・対人距離をできるだけ2メートル保つ
・客に大声で会話しないよう周知する
・カウンターには遮蔽物を設置する
・キャッシュレス化で接触を減らす
・客どうしのお酌、グラスの回し飲みを控えさせる
等々の対策が記載されたチェックシートの内容をすべて実施することが条件となっている。
さらに、このチェックシートに加えて、業界別のガイドラインに記載されている内容(客入れは今までの50%まで、料理は大皿を避ける、客に連絡先を記入させる、ダンス・シャンパンコールの自粛等)を遵守し、その上で、東京都に対して、以下の項目に同意しなければならない。 -
「ハンセン病に学ぶ【隔離】の悪法」小林よしのりライジング Vol.362
2020-06-23 20:40150pt新型コロナに関してさんざん恐怖を煽り、日本の社会・経済・文化に甚大な被害を及ぼしたテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」は、今ごろになって批判逃れ、責任逃れに向かおうとし始めているが、それは決して許されない。
特にPCR検査をできる限り全国民まで拡大して実施し、新コロ感染者は無症状者も含めて全員隔離せよと主張し続けた罪は極めて重い。
番組では玉川徹や岡田晴恵や、その他日替わりで登場した医師や研究者が 「検査して隔離」「検査して隔離」 と3週近くにわたって毎日毎日繰り返し、番組のほぼ全部をそのプロパガンダに費やしたことも何度もあった。
それはまさに「PCR真理教」とでも言うしかない有様だったが、その影響力は絶大で、本庶佑や山中伸弥といったノーベル賞学者までがこれを支持し、全国の知事たちもこれに同調し、政府もことあるごとに「PCR検査の拡充」を言わなければならない状況となっていた。
実際には、無制限なPCR検査の拡大には反対する専門家も数多くいたが、羽鳥モーニングショーはそれを全て無視した。
そもそも日本の場合、まずCTスキャン検査をして、肺炎と診断された患者に対して、肺炎の原因を確定させて有効な治療をするためにPCR検査を行うという手順が定着しており、病気の症状もない人まで全員検査などしても、何の意味もないのだ。
しかも、たとえPCR検査で陰性だったとしても、それは検査した時点で感染していなかったことを示すにすぎず、検査の帰りに感染することだってありうる。
そのうえPCR検査の精度は70%で、3割はウイルスがあっても陰性が出る(偽陰性)のだから、これは全く予防医療の役には立たないのである。
玉川徹はこのような批判には一切反論ができず、あろうことか 「PCR検査は『医療』のためではなく、『社会政策』としてやるのだ!」 と言い出した。
どこに感染者がいるか知れず、いつ自分もうつされるかわからないという状態では、安心して経済を回すことができない。だから、できる限り全国民を対象に週に1回、もしくは2週に1回PCR検査して、徹底的に感染者をあぶり出し、残らず隔離して、感染者と非感染者を完全に分離し、感染者がただのひとりも存在しない社会をつくる。そうすれば、みんな安心して外に出てきて経済活動をすることができる。
だからこれは医療ではなく、安心して経済を動かすための社会政策としてやるべきことなのだ… と言うのだ。
狂っている。1億2千万の全国民を週1回検査するなんて、現実的にできるかどうか考えなくてもわかることを、本気で言っている時点でアウトだ。
だが、さらに問題なのは 「医療ではなく、社会政策のために隔離」 というのがとんでもなく恐ろしい主張であることに、一切気づいていないところだ。
医療上の必要がない隔離を「社会政策」のために行うって、一体何の法律に従えば、それができるというのか?
現行法では、感染症患者の隔離は 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法) に定められている。
強制入院(隔離)については第19条 で、一類感染症(エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱)の蔓延防止のために必要とされる場合、都道府県知事が指定医療機関への入院を 勧告 することができ、勧告に従わない時には、 強制的に入院 させることができるとなっている。
エボラ出血熱のような毒性の強い感染症の蔓延防止という医療目的でも、まずは 「勧告」 なのだ。
それなのにたかが新コロで、しかも医療ではなく 「社会政策」 のために隔離するなんてことに法的根拠があるわけがなく、それをやったら完全に憲法違反で、 刑法220条の逮捕・監禁罪 で、違法行為である。
そもそも仮にもリベラルを名乗る人間が「隔離」という恐ろしい言葉を、ハンセン病者の隔離の歴史を一切連想もせずに、全国放送のテレビで毎日軽々しく連呼し続けたことが全く信じられない。
感染症法は、明治30年(1897)制定の伝染病予防法に代わって平成10年(1998)に制定された法律だが、これには新たな感染症の出現などと共に、 平成8年(1996)に、それまでハンセン病者の隔離を合法化していた「らい予防法」が廃止された ことが大きく影響している。
だからこそ感染症法の前文には 「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」 と特に明記して、 「感染症の患者等の人権を尊重」 すると書かれている。
たとえ一類感染症患者でも、その隔離の際はまず「勧告」ということになっているのも、そのためである。
ハンセン病者隔離についてはVol.357「隔離という人権無視」でも少し触れた。
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