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『ダンまち』にリアリティはあるか。

 テレビアニメが続々と最終回を迎える季節です。  『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』を最終話まで観終えました。  「例の紐」絡みで、今季、ひときわ話題になった作品ですが、そこらへんのわりとどうでもいい事情を除いても、十分以上に面白い作品でした。  やっぱり成長物語はいいなあ。  少年の成長物語はいつの時代も通用する普遍的な物語パターンですが、『エヴァ』の挫折とかいろいろあってしばらく屈折を余儀なくされていた印象があります。  しかし、本質的には廃れることがないパターンであるわけで、『ダンまち』は非常に素直な展開をたどっているといえるでしょう。  主人公であるベルくんの前にはつぎつぎと試練が襲いかかってくるわけなのですが、かれは間一髪でその危機をくぐり抜けつづけます。  現実にはこううまくは行かないだろうと思うところですが、一本のお話として見ている限り、非常に面白い。  こういう、主人公の成長に合わせるかのように敵や試練もスケールアップしていくパターンのことを、「階梯的な物語構造」と呼びます。  お話の展開が階段になっているわけですね。  一方、そうではない、主人公の成長度合いを無視して試練が襲ってくるパターンの物語を「新世界の物語」と呼んでいます。  『進撃の巨人』のヒットなどを見ると、時代は「新世界の物語」を求めているのかな、と見えたこともありました。  しかし、あたりまえといえばあたりまえのことですが、主人公の成長を無視して試練が課されてしまう「新世界の物語」では、まともな物語展開は望めません。  常に一歩先に「死」が待っているかもしれないのが「新世界の物語」であるわけです。  そこで「壁」が関わってくるという話をしていたわけなのですが、それにしても「新世界の物語」を本気で突き詰めるとシャレにならないことになってしまいます。  それはリアルではあるかもしれませんが、物語として面白いものではありづらいでしょう。  つまり、「新世界の物語」とは行き止まりの物語構造でしかありえないのです。  それでは、どうすればいいのか?となったときに、ひとつの選択肢として「ふたたび階梯状の物語を描く」というものがある。  それは「新世界の物語」ほどリアルでもシリアスでもありえないかもしれないけれど、やはり魅力的な物語パターンであることには違いないわけですから。  ここで大切なのは「リアル」とは何かという話だと思うのですね。  冒険物語におけるリアルを突き詰めていくと、ありえないほど過酷な状況が突然に襲いかかってくる「突然死」の描写こそがリアルだという結論に至りかねない。  だけれど、 

『ダンまち』にリアリティはあるか。
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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