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なぜ『赤毛のアン』はいまなおたくさんの人々を魅了するのか?
2020-12-12 17:0250pt
Netflixで『アンという名の少女』を見ています。原作はあの『赤毛のアン』。いわずと知れた少女小説の永遠の名作です。 ただし、この場合の「少女小説」とは、「少女を主人公とした小説」のことであって、「少女向けの小説」というわけでは必ずしもありません。というのも、『赤毛のアン』の原作小説はあくまで大人向けに書かれたものだからです。
それが日本では「少女向けの小説」として定着したのは、あの高畑勲監督による非常に出来の良いアニメーションの影響があると思うのですが、とにかく原作は狭い意味での「少女小説」に収まるものではないのです。
それ故に本文には聖書やシェイクスピア作品の膨大な引用が含まれ、それはいまでも研究されているほどです。
しかし、もちろん、『赤毛のアン』がそのような学術的なことを一切知らなくても問題なく楽しめるきわめてすばらしい作品であることは論を俟ちません。
世界的に人気を集める『赤毛のアン』シリーズではありますが、殊に日本ではものすごく熱狂的なファンがたくさんいる状況で、いまも新訳のシリーズが出版中です。
おそらく日本でいちばん有名なカナダ人は、トルドー首相ではなく、このアン・シャーリーという名の架空の女の子なのでしょうね。
ドラマ版はきわめて斬新な解釈を散りばめつつ、一方で -
ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』と依存症の闇(その1)。
2020-12-05 22:2350pt
げふげふ。早くも今日も終わろうとしています。さっさと今日の分の記事を更新しておかないといけないのだけれど、何を書いたら良いものやら。とりあえず、『クイーンズ・ギャンビット』を見始めたので、その話でも。 『クイーンズ・ギャンビット』はNetflixで観れるアメリカのドラマシリーズで、全7話と比較的コンパクトにまとまっています。アメリカや韓国、あるいは中国のドラマはもうとんでもなく長いものが多いので、わりあい見やすいほうだといえるでしょう。
内容的にも密度濃くギュッとまとまっているので、Netflixに入っている人にはオススメの作品のひとつです。どうも世界的に大ヒットしているらしいのだけれど、それはよくわからない。
ただ、まだ見始めたばかりではあるものの、非常に面白い作品だとは感じているので、最後まで見終えたらまた記事を書きたいと考えています。
で、この作品の主人公にして不世出の天才チェス少女である「ベス」ことエリザベス・ハーモンは、その稀有な才能の代償というべきか、ある種の精神安定剤の依存症になっているという設定なのですね。
この物語はベスがその才能で「無双」する展開でもあるのだけれど、同時に彼女と緑色の錠剤への依存との戦いのプロセスでもある。いかにして依存を克服するのか、それともどうしようもなく破滅していってしまうのか、その戦いはある種、チェス以上にスリリングです。
ぼくは昔から依存症という現象に興味があります。人はなぜアルコールやギャンブルやドラッグやセックスの依存症になってしまうのか? そこにはどのような問題が関わっているのか? 非常につよい関心を持っているのです。
というのも、ぼく自身はドラッグはもちろん、アルコールにも性的乱行にもほとんど関心がないからで、特に依存症になるほどの執着がないからなのですね。
ぼく自身が「それなしでは生きていけない」というほどつよく執着するものをほとんど持っていないから、そういうものを必要とする人とは何が違うのだろうと考えるわけです。
いったい「執着」とか「依存」という現象の裏にあるものは何なのか? フィクションであれノンフィクションであれ、非常に気になるところです。
で、結論からいてしまうと、その答えはおそらく -
連休には『ゲーム・オブ・スローンズ』を観よう!
2017-01-06 14:1351ptあけましておめでとうございます――という時期でも既にないですね。あいかわらず更新が遅れていて申し訳ありません。
この正月、ぼくは何をしていたかというと、一心に小説を書き進めるほか、欧米を初め世界で大人気、既刊5作で7500万部突破!という超人気タイトル『氷と炎の歌』のテレビドラマ版『ゲーム・オブ・スローンズ』を借りて来ては見ないで返却したりしていました。
ええ、ぼくはいままで延滞金で数万円は使ってきた男です。これからはダウンロードオンリーにしようかな。それはそれでお金かかるけれど……。
まあ、観ずに返却しておいていうのも何ですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』は原作もドラマも傑作の評判も高く、じっさい異様に面白い作品です。
最近、やたらにレベルが上がっているという噂のアメリカのテレビドラマのなかでも、頂点に君臨する作品だといいます。
いったいどこがそんなに面白いのか? ひと言でいうと、超が付くほど重厚なんですね。この作品に、『進撃の巨人』などと同じく「壁」が登場するのですが、ちょっと世界の分厚さが桁違いという気がします。
もちろん、『進撃の巨人』も傑作なのだけれど、『ゲーム・オブ・スローンズ』のそれは、ほとんど世界が「そこにある」という感じで、ほかのファンタジーの追随を許しません。
ちょっと一読しただけでは憶えきれないほどの膨大な登場人物が錯綜し、殺し合ったり、貶め合ったり、それはもう大変なドラマを繰りひろげています。
一応、ファンタジーには違いないのですが、むしろ架空戦国絵巻という色合いのほうが強く、特に序盤では魔法とかドラゴンといった存在はほとんど出てきません。
そのあとは徐々に幻想色が強まっていきますが、それにしても『指輪物語』みたいな作品とは一線を画す印象です。いわゆるダークファンタジーの理想的結実といえるかもしれませんが、ひと口にダークといっても、その「世界の色あい」の多様性は半端ではない印象。
とうてい善悪では割り切れない、途方もなく複雑な個性をもった登場人物たちの活躍やら暗躍やら没落には、強く惹き付けられるものがあります。
作者のジョージ・R・R・マーティンは、いわゆる「天才」というべき才能ではないかもしれませんが、なまじの天才ではとても追いつけない技量に到達していると思えます。化け物め……。
まあ、あまりにも世界を拡大しすぎた結果、新刊がなかなか出ないというよくある現象が例によって発生し、遅々として出ない続刊を待つ読者たちが焦れに焦れるという事態になったりしているようですが、それも大長編ものの宿命といえるでしょう。
作者の寿命から考えて未完に終わる可能性も高いという洒落にならない事実もあるのですが……。あと2作で終わる予定なんだけれど、果たしてほんとうに完結を迎えるものなのか、神々のみぞ知るというところ。
しかしまあ、とにかく、克明きわまりない描写の積み上げによって生み出されたそのリアリティは半端じゃないものがあります。
『銀河英雄伝説』とか『グイン・サーガ』、『ベルセルク』といった大河群像劇が好きな向きは必ず嵌まると思われるので、ぜひ読んでみてください。マジパネェっすよ。
とはいえ、この作品、いったいどういうわけなのか日本での知名度はあまり高くないようです。Googleで検索してもあまり多くの記事が見つかりません。
どうしてなのかと考えてみてのですが、そもそも翻訳ファンタジーというジャンルの需要があまり高くないのだと思い至りました。このライトノベルが百花繚乱のご時世に、翻訳ファンタジーなんて読んでいる人はマニアだよね……。
まあ、先述した通り、『ゲーム・オブ・スローンズ』はシンプルにファンタジーとはいい切れない作品ではあるのですが、そこら辺は読んでみないとわからないわけで、一緒くたにされて敬遠されているのでしょう。可哀想な子!
何といってもあまりに長いし、一冊は分厚いし、登場人物は記憶力の限界に挑戦する数である上に同名の人物がたくさん出て来るし、何かととっつきづらい作品であることは間違いありません。
しかし、一旦はまったら最後、ちょっと抜け出せない程の深みがあることはぼくが保証します。おそらく、世界中のあらゆる長篇ファンタジー小説のなかでも最高の一作です。厚みが違うんだよ、厚みが。
とはいえ、先に述べた通り、未完のままなかなか続刊が出ないこともたしかで、いまとなっては何とドラマ版が原作の展開を追い抜いてしまうという奇妙なことになってしまいました。
そう、原作ではまだ未刊の第六シリーズ「冬の狂風」がドラマでは既にリリースされているのですね。このままだとほぼ確実にドラマのほうが先に完結することになるでしょう。何てこったい。
まあ、このまま原作が未完に終わったらドラマを見ればいいということかもしれないけれど、でも、そんな訳にいくか。何とかしてよ、マーティン! と思いつつ、ぼくは小説を書くのでした。いや、ほんと、未完の大長編ロマンって罪だよね……。 -
ネットフリックスを利用してみました。
2015-09-02 02:4851pt一部で話題騒然のNetflix(ネットフリックス)に登録、利用開始してみました。
ご存知ない方のために一応説明しておくと、ネットフリックスはアメリカを初め世界中で6500万人の会員を持つ動画配信サイト。
各国での成功の余波を駆ってこのたび日本に上陸することになった模様。
いままで日本ではこの種のサービスというとHulu(フールー)などがあったわけだけれど、いまひとつ成功しているようには見えない。
さて、ネットフリックスがHuluとどう差別化してきているのか、ちょっと試してみることにした。
結果的にいうと、まずまず使い勝手のいいサービスだと感じた。
会員登録にクレジットカードの登録などが必要になるのはしかたないとして、その後はきわめて快適に動画を見れる。
コンテンツは思ったほど充実しているようには感じられないが、それでもけっこうな数の動画があり、しばらくの間は暇つぶしに困らないくらいには感じられる。
数千作品くらいかな? 海外/国内の映画、ドラマなど、盛りだくさんだ。
噂のネットフリックスオリジナルコンテンツはまだ目立たないが、今後、ベストセラー小説『火花』の映像化作品を流すなど果敢にチャレンジしていくつもりではあるらしい。
操作はきわめて簡単で、動画が途中で停止するなどということもない。
非常にスムーズに映像体験を楽しめる。これが700円程度で利用できるのはたしかに安いかも。
とりあえず『グランドアトラス』、『横道世之介』、『船を編む』、『フィリップ、君を愛してる!』あたりをマイリストに入れて確保しておくことに。
レンタルビデオを途中まで見て返却してしまったままになっていた『カラスの親指』があったのは収穫。
やはり、なかなかいいサービスかもしれない。
日本語と英語を簡単に切り替えられるところもいい。
ただ、Huluと比べたとき、そこまで決定的な差があるというふうには感じられない。
このままだとやはり「知る人ぞ知る」サービスのまま終わることになるのではないだろうか。
むしろAmazonが今月スタートする動画配信サービスのほうが可能性があるのではないか、とも思える。
今後、ネットフリックスがどう次の手を打ってくるのか注目だ。
このままでは、日本での成功はおぼつかないだろう。というか、どうしてアメリカで大成功したんだろ、これ。
で、そのネットフリックスを使ってさっそく動画を一本フルで見てみた。 -
ドラマ版『DEATH NOTE』の改変が「あり」か「なし」かとは別次元で面白い。
2015-07-02 23:4651ptドラマ版『DEATH NOTE』のあらすじが公開されて話題を呼んでいるそうです。
夜神月(窪田正孝)は、警視庁捜査一課に勤務する父・総一郎(松重豊)と妹・粧裕(藤原令子)と暮らすどこにでもいるような大学生。弥海砂(佐野ひなこ)が所属する「イチゴBERRY」のライブに行く以外は、学業とアルバイトに精を出す日々だ。
http://www.ntv.co.jp/drama-deathnote/story/index.html
「どこにでもいるような大学生」。
うん、うん……。あらすじの段階からいきなり不安を煽りますね。
まあ、でも、ドラマがオリジナルの展開をたどることに文句はありません。
いまさら原作のストーリーをなぞったところで連載時のサスペンスはもうないし、「原作を改変するな!」とはまったく思わないのですが、このレベルで変えちゃうなら「夜神月」とか「ニア」といった名前を使用することもない気はする。
オリジナルの名前を使えばいいじゃんね。
ところで、メロは存在そのものを抹消されてしまったのだろうか……。
まあ、たぶん普通にありふれた失敗作として終わるでしょうが、一発逆転で原作読者をも驚かせる意外な展開が続く可能性もなくはない、かな? 期待せずに放送を待ちたいと思います。
それにしても、このドラマ版の設定を見ると、原作がヒットした理由が逆によくわかりますね。
『DEATH NOTE』の根幹にある「名前を書くとそのひとが死ぬノート」というアイディア自体は、実はそこまで秀でたものではないと思うのです。
いや、ひとつの秀抜なアイディアではあるにせよ、いってしまえばそれだけのことでしかない。
『DEATH NOTE』が傑作になっているのは、そのアイディアを物語レベルに昇華する段階での手際が飛び抜けているからでしょう。
まず、 -
ついにドラマ化! 森博嗣の傑作ミステリ小説「S&Mシリーズ」の歴史を振り返る。
2014-08-31 19:0051pt森博嗣のS&Mシリーズがテレビドラマ化されるそうですね……。
http://news.mynavi.jp/news/2014/08/26/508/
思わず「……」と付けてしまうのは、このシリーズが、たとえば東野圭吾作品あたりと比べても並外れて映像化がむずかしそうなテーマを扱っているから。
京極夏彦の妖怪シリーズと並んで、新本格ミステリのメルクマールともなった伝説的作品群だけに、果たしてまともに映像になるものか心配は募る。
いやまあ、たぶん無理だろう。なんかそれっぽいサイコスリラーみたいになるに違いない。と、頭から偏見を抱いている海燕さんなのですが、そんなかれをへこましてサーセンと云わせるだけの出来だといいな、と思います。
しかし、「少し変わり者のクールな2枚目でずぼらな性格だが、警察からも頼られるほどの天才的な分析力と考察力を持つ犀川創平」って、既に何か違うw まあいいけれど。
熱狂的ファンがたくさんいる作品だけに、半端な映像化は避けてほしいところなんだけれど、どうなるものか。一応、見てみることにしよう。
まあ、いまさら解説は不要と思われる有名作品ながら、一応、説明しておくと、S(犀川)&M(萌絵)シリーズは、N大の助教授犀川創平と学生の西之園萌絵を主人公とした全10作の本格ミステリ。
森のデビュー作にして歴史的傑作であるところの『すべてはFになる』から始まって、『冷たい密室と博士たち』、『笑わない数学者』、『詩的私的ジャック』、『封印再度』、『幻惑の死と使徒』、『夏のレプリカ』、『今はもうない』、『数奇にして模型』と続き、『有限と微小のパン』で完結している。
その後、さらにVシリーズ、Gシリーズと続いていくのだけれど、ほかの凡庸なミステリ作品と決定的に違うのは、シリーズが完璧に予定通りに刊行され、完結していること。
クイーンの国名シリーズあたりを尊敬して長大なシリーズを目論む作家は多数存在するながら、ほとんどが途中で失速しているなかで、森のスケジューリング能力は傑出している。
特に『すべてがFになる』でデビューした時、その後の刊行予定作品の名前がずらっと並んでいたことは印象的だった。そして、 -
木曜時代劇『銀二貫』は胸に沁みいる名作。
2014-05-29 21:2151ptふと気づいたら数日間も更新を休んでいました。この数日、何をしていたかといえば、何もしていなかったような気がします。まあ、ラジオとかはやりましたが、そのほか細々としたタスクをこなしたりもしましたが、究極的には何もしていない。
人間はどこまで無為に生きられるのか実験するような日々でした。うーん、その前はかなり忙しかったのですけれど、ひと通りタスクをこなしてしまったら急にやることがなくなってしまった。
こういう時は次に忙しくなる時のため色々と準備をしておけばいいようなものの、ぼくはその時になるまで何もできない男なので、そういうわけにもいきません。
さて、何をしたものか、と考えるうちに二日が過ぎ、三日が過ぎ、そしてきょうという日になってしまったわけです。ああ無情。そんな自堕落な日常のなか、ひとり寝そべりポテトチップスを齧りながら見ていたのが、NHKの木曜時代劇『銀二貫』。
これがねえ、実に面白い。筋立てそのものの出来もさることながら、芸達者ぞろいの俳優陣の演技が見どころで、毎回毎回、息詰まるような、あるいは涙こぼれ落ちるような物語が展開されています。
もう全9回のうちの8回まで終わってしまったので、いまさらオススメはしませんが、いずれ必ず再放送されるでしょうから、その時にはぜひ観てみてください。ほんとうにすばらしい作品です。
在りし日の上方の空気が伝わるような雰囲気もさることながら、やはり何といっても凄いのは各キャストの芸の力。なるほど、演技力とは凄いものだな、と思い知らされます。いやあ、ひさしぶりにいいドラマだった。
『ブラック・プレジデント』とか楽しそうに見ているうちのオヤジにも観せてやりたいけれど、こういう重厚なドラマは好きじゃないんだよね……。まあいいんだけれど。
このドラマを観ているとつくづく思い知らされるのは、禍福はあざなえる縄の如し、人生は幸福と不幸のくり返しのなかでくり広げられるものなのだな、ということです。
人生は決して歓びだけでは終わらない。哀しみがあり、苦しみがあって初めて、ひとは生きることの歓喜を知る。そう、理屈ではなく思い知らせてくれる名作です。いや、ほんとうにすばらしいですね。津川雅彦ってやっぱり凄い役者なんだなあ。
それにしても、こういう少数の幸福な例外を除外すると、テレビではほとんど時代劇を見ることはなくなってしまいました。かつてあれほどまでに隆盛をきわめ、永遠に繁栄しつづけるかとすら思われた時代劇のこの凋落は何なのでしょう。
色々な原因があるのでしょうが、 -
【無料記事】世にもいいかげんなパクリ認定屋たち。(967文字)
2012-10-24 22:15
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