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口うるさい原作ファン、藤崎竜版『銀英伝』を語る。

 おそらく生まれて初めて『ヤングジャンプ』を買って、藤崎竜版の『銀河英雄伝説』を読みました。  物語ははるかな未来、銀河帝国首都星オーディンに住むジークフリード・キルヒアイス少年がとなりに越して来たラインハルト少年に出逢うところから始まります。  ほぼ原作通りの描写が続いているのですが、なるほどなあ、ここから漫画化して来るか、という感じ。  原作はラインハルトがすでに帝国軍上級大将になって一軍を率いているところからスタートしていますからね。まったく印象が違います。  ひょっとしたらこのまま少年ラインハルトの物語が続いていくのでしょうか。  そしてどこかの時点で(アスターテ会戦?)、宿敵ヤン・ウェンリーが登場する、という構成になるとか。それは面白いなあ。  描かれている出来事そのものはどれも原作に忠実なのだけれど、構成と演出が変わっているためにまったくべつの物語という印象になっている。  ここらへんはストーリーテリングのマジックで、構成フェチとしては胸が躍ります。  まだ全貌があきらかになったわけではないけれど、キャラクターデザインやファッション、メカニカルデザインは過去のアニメ、及び道原かつみ版の漫画にほぼ準拠している様子で、そこが物足りなくなくもないですね。  どうせなら完全に新しいメカデザインを用意してほしかったという気もする。  ただ、しばらく「さながら地球の中世ヨーロッパのよう」な描写が続いたあと、巨大な宇宙船が雲のなかから舞い降りて来る場面はとても印象的で、このひとコマだけでもすごくわくわくさせるものがある。  そして、「高度な科学力は意図的に隠されている」という設定が加わった結果、1500年後の未来世界の生活が大きく変わっていないように見えることが不自然ではなくなっているし、世界の設定と描写に一本芯が通った。  これはうまい手だと思います。自由惑星同盟側の描写が楽しみ。  いや、ほんとうに物語っていろいろな語り方がありえるんだな、唯一の「正解」があってほかは全部外れというわけじゃないんだな、ということがわかって、個人的には感動的ですらありますね。  最終ページは姉を皇帝に奪われたラインハルトが「僕は皇帝を斃す!!!」と宣言し、「これが後の世のいう「獅子帝」ラインハルトの出発点であった」と語られる場面で終わっているわけですが、まさに壮大なストーリーのオープニングという感じで素晴らしいです。  つまり、この時点でラインハルトの皇帝打倒計画が成功することを宣言してしまっているわけで、原作未読者は「いったいこの無力な少年がどうやって皇帝にまでなるのか?」と続きが気になるのではないでしょうか。  ぼくなどはどうしても原作を最後まで知っている人間の視点で読んでしまうわけですが、よく知らない読者のほうが多いはずで、そういう人に向けてとても親切な作りになっていると思います。  主人公の動機と目的が定まるところで第1話終了というのは、連載漫画の初回として非常にきれいな作りですね。  ぼくは口うるさい原作ファンだけれど、満足です。  あとは 

口うるさい原作ファン、藤崎竜版『銀英伝』を語る。

『封神演義』の藤崎竜、『銀英伝』を再度漫画化!

 田中芳樹『銀河英雄伝説』が藤崎竜の手で漫画化されるそうですね。  日本を代表するスペースオペラの名作を『封神演義』の作家が手がける。  期待は高まるばかりですが、さて、どんな出来になることやら。  ぼくは25年来の田中芳樹読者にして、『PSYCHO+』からのフジリューファンなので、どういった仕上がりでも受け止める覚悟はできています。どんと来い。  それにしても、『アルスラーン戦記』の漫画化&アニメ化といい、往年の田中芳樹作品の再ブームがいままさに来ていますねー。  30年前の作品がいま最先端のエンターテインメントとして堂々と通用してしまうその普遍性の高さには驚かされるばかり。  『アルスラーン』にしろ『銀英伝』にしろ、ちょっと意匠(キャラクターデザインとか)を変えただけで十分に現代の作品として読まれてしまうんだよなあ。  ここらへん、5年も経つと時代遅れになってしまう傾向がある一般のライトノベルとは格が違うかも。  まあ、『アルスラーン』はともかく、『銀英伝』はさすがにSF設定等々が古びてしまっていると思うので、そこらへん、適当にリファインして「いままで見たことがない『銀英伝』」を見せてほしいところです。  この小説はすでに再来年にふたたびアニメ化することも決まっていて、そちらのほうも気になります。うーん、凄いなあ。  いまさらいうまでもないことですが、『銀英伝』は一度、道原かつみさんの手で漫画化されています。  こちらも出来は良いのですが、何しろ遅筆寡作の方なので、『銀英伝』のような大長編を手掛けることに無理がありました。  その点、フジリューさんには『封神演義』や『屍鬼』を完結させてきた実績があるので、最後まで描き切れるのではないでしょうか。  SF的なセンスもちゃんと持ち合わせている作家さんだしなあ。  意外な組み合わせながらけっこういけるんじゃないかと推測。  だれがマッチングしたのか知らないけれど、偉い偉い。  あとは思想的なところをどう演出しなおすかですね。  30年前とはやっぱり政治状況が異なっているわけで、そのままの展開をすると古びて見えると思う。  少なくとも民主主義のシステムを至上視し、そのために血を流すヤン・ウェンリーはより悪役っぽく見えて来るのではないか。  まあ、それはそれで一興ですし、原作にたびたびの再解釈を許す奥深さがあるからこそいまなお極上のエンターテインメントとして通用しているということもいえるでしょうが。  いや、なんといっても 

『封神演義』の藤崎竜、『銀英伝』を再度漫画化!
弱いなら弱いままで。

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海燕

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